特許第6765101号(P6765101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6765101バイオディーゼル燃料の製造方法及び脱炭酸触媒並びにバイオディーゼル燃料の製造に用いられた脱炭酸触媒の再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765101
(24)【登録日】2020年9月17日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】バイオディーゼル燃料の製造方法及び脱炭酸触媒並びにバイオディーゼル燃料の製造に用いられた脱炭酸触媒の再生方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 3/00 20060101AFI20200928BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20200928BHJP
   B01J 38/02 20060101ALI20200928BHJP
   B01J 21/12 20060101ALI20200928BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   C10G3/00 Z
   B01J35/08 A
   B01J38/02
   B01J21/12 M
   B01J37/02 101Z
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-171625(P2016-171625)
(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公開番号】特開2018-35311(P2018-35311A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(73)【特許権者】
【識別番号】518178718
【氏名又は名称】株式会社ドーワテクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】森口 哲次
(72)【発明者】
【氏名】崎田 康一
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−526928(JP,A)
【文献】 特開2000−086292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物を中空多孔質の粒状物に担持させた脱炭酸触媒を、カルボン酸と共に加熱して脱炭酸反応させ、バイオディーゼル燃料を製造することを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のバイオディーゼル燃料の製造方法において、前記粒状物はシラスバルーンであることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバイオディーゼル燃料の製造方法において、前記金属酸化物は、にがり由来のものであること特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項4】
バイオディーゼル燃料の製造に用いられる脱炭酸触媒において、金属酸化物を中空多孔質の粒状物に担持させたものであることを特徴とする脱炭酸触媒。
【請求項5】
請求項4記載の脱炭酸触媒において、前記粒状物はシラスバルーンであることを特徴とする脱炭酸触媒。
【請求項6】
請求項4又は5記載の脱炭酸触媒において、前記金属酸化物は、にがり由来のものであること特徴とする脱炭酸触媒。
【請求項7】
バイオディーゼル燃料の製造の際、金属酸化物を中空多孔質の粒状物に担持させた脱炭酸触媒が加熱装置によってカルボン酸と共に加熱されて、該金属酸化物が炭酸塩となった反応後脱炭酸触媒を、焼成し、該炭酸塩を該金属酸化物にして前記脱炭酸触媒に戻すことを特徴とする脱炭酸触媒の再生方法。
【請求項8】
請求項7記載の脱炭酸触媒の再生方法において、前記反応後脱炭酸触媒を、前記加熱装置で焼成することを特徴とする脱炭酸触媒の再生方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載の脱炭酸触媒の再生方法において、前記粒状物はシラスバルーンであることを特徴とする脱炭酸触媒の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂からバイオディーゼル燃料を製造するバイオディーゼル燃料の製造方法及びそのバイオディーゼル燃料の製造に用いられる脱炭酸触媒並びにバイオディーゼル燃料の製造に用いられた脱炭酸触媒の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の使用は、大気中の二酸化炭素を増加させることから、地球温暖化に多大な影響を与える。これに対し、バイオディーゼル燃料は、大気中の二酸化炭素を取り込んだ植物を由来とする油脂から製造されるため、その使用は、カーボンニュートラルの考えにおいて、大気中に新たに二酸化炭素を増加させないものであり、地球温暖化の抑制が期待できるとされている。
【0003】
バイオディーゼル燃料の製造には、油脂にメタノール及び触媒を加えてエステル化して脂肪酸メチルエステルを主成分とするバイオディーゼル燃料を得る方法の他、容器内において350℃〜500℃の環境下でカルボン酸と脱炭酸触媒を接触させて炭化水素油を得る方法が存在し、その具体例が、例えば、特許文献1、2、3に記載されている。なお、カルボン酸は、油脂をメタノール及び触媒でエステル化する際に、残渣として得られる。
特許文献1、2、3には、脱炭酸触媒として、シリカ等の担体に金属酸化物を担持させた粒状物を採用した旨が記載され、特許文献3には、担体に多孔質体のものが好ましい旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5353893号公報
【特許文献2】特開2016−74852号公報
【特許文献3】WO2013/069737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本願発明者らは、多孔質体のシリカに金属酸化物を担持させた粒状物からなる脱炭酸触媒を用いて得られるバイオディーゼル燃料は不純物を多く含むことを実験的検証によって確認した。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、不純物の含有が抑制されたバイオディーゼル燃料を製造するバイオディーゼル燃料の製造方法及び脱炭酸触媒並びにバイオディーゼル燃料の製造に用いられた脱炭酸触媒の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係るバイオディーゼル燃料の製造方法は、金属酸化物を中空多孔質の粒状物に担持させた脱炭酸触媒を、カルボン酸と共に加熱して脱炭酸反応させ、バイオディーゼル燃料を製造する。
【0007】
第1の発明に係るバイオディーゼル燃料の製造方法において、前記粒状物はシラスバルーンであるのが好ましい。
【0008】
第1の発明に係るバイオディーゼル燃料の製造方法において、前記金属酸化物は、にがり由来のものであるのが好ましい。
【0009】
前記目的に沿う第2の発明に係る脱炭酸触媒は、バイオディーゼル燃料の製造に用いられる脱炭酸触媒において、金属酸化物を中空多孔質の粒状物に担持させたものである。
【0010】
第2の発明に係る脱炭酸触媒において、前記粒状物はシラスバルーンであるのが好ましい。
【0011】
第2の発明に係る脱炭酸触媒において、前記金属酸化物は、にがり由来のものであるのが好ましい。
【0012】
前記目的に沿う第3の発明に係る脱炭酸触媒の再生方法は、バイオディーゼル燃料の製造の際、金属酸化物を中空多孔質の粒状物に担持させた脱炭酸触媒が加熱装置によってカルボン酸と共に加熱されて、該金属酸化物が炭酸塩となった反応後脱炭酸触媒を、焼成し、該炭酸塩を該金属酸化物にして前記脱炭酸触媒に戻す。
【0013】
第3の発明に係る脱炭酸触媒の再生方法において、前記反応後脱炭酸触媒を、前記加熱装置で焼成するのが好ましい。
【0014】
第3の発明に係る脱炭酸触媒の再生方法において、前記粒状物はシラスバルーンであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係るバイオディーゼル燃料の製造方法は、金属酸化物を中空多孔質の粒状物に担持させた脱炭酸触媒を、カルボン酸と共に加熱して脱炭酸反応させる。また、第2の発明に係る脱炭酸触媒は、金属酸化物を中空多孔質の粒状物に担持させたものである。該脱炭酸触媒を採用することで、製造されるバイオディーゼル燃料の不純物の含有を抑制可能であることを実験的検証によって確認している。
また、第3の発明に係る脱炭酸触媒の再生方法は、金属酸化物を中空多孔質の粒状物に担持させた脱炭酸触媒が加熱装置によってカルボン酸と共に加熱されて、金属酸化物が炭酸塩となった反応後脱炭酸触媒を、焼成し、炭酸塩を金属酸化物にして脱炭酸触媒に戻すので、脱炭酸触媒をバイオディーゼル燃料の製造のために複数回利用することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る脱炭酸触媒の模式図であり、(B)は比較例に係る脱炭酸触媒の模式図である。
図2】脱炭酸触媒が反応後脱炭酸触媒になった様子を示す説明図である。
図3】比較例に係る脱炭酸触媒を用いて得たサンプルAを同定した結果を示す説明図である。
図4】比較例に係る脱炭酸触媒を用いて得たサンプルBを同定した結果を示す説明図である。
図5】実施例に係る脱炭酸触媒を用いて得たサンプルCを同定した結果を示す説明図である。
図6】実施例に係る脱炭酸触媒を用いて得たサンプルDを同定した結果を示す説明図である。
図7】実施例に係る脱炭酸触媒を用いて得たサンプルEを同定した結果を示す説明図である。
図8】実施例に係る脱炭酸触媒を用いて得たサンプルFを同定した結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)に示すように、本発明の一実施の形態に係る脱炭酸触媒10は、バイオディーゼル燃料の製造に用いられる触媒であって、金属酸化物11を中空多孔質の粒状物12に担持させたものである。
【0018】
本実施の形態において、粒状物12はシラス(火山噴出物)を熱処理して発砲させた中空のシラスバルーンであり、粒状物12の中空領域15を覆う外周層13に中空領域15まで達する複数の孔14が形成されている。粒状物12は直径が10〜300μmの大きさである。なお、図1(A)には、1つの中空領域15が形成された粒状物12を記載しているが、複数の中空領域が形成された粒状物を採用してもよい。金属酸化物11は、にがり由来のものであり、にがりの主成分であるマグネシウム塩のMgがOと反応して生成された酸化マグネシウム(MgO)である。
【0019】
脱炭酸触媒10は、にがりに水を加えたにがり溶液と粒状物12とを容器内に入れて攪拌した後、加熱濾過によって水分を蒸発させ、残渣を焼成して固体化させたものである。脱炭酸触媒10は、粒状物12の中空領域15内、孔14内、及び、粒状物12の表面に金属酸化物11が万遍なく付着した状態であることを、電子顕微鏡によって確認している。
【0020】
これに対し、比較例に係る図1(B)に示す脱炭酸触媒20は、シリカビーズ22に酸化マグネシウム23を担持させたものである。シリカビーズ22は、中空領域を有さず、複数のひび割れ24が存在する。シリカビーズ22は透明に見えることからひび割れ24の幅は可視光の波長以下で、300nm以下であると考えられる。なお、図1(B)において、酸化マグネシウム23をその直径がひび割れ24の幅より長いように記載しているが、実際には、酸化マグネシウム23の直径はひび割れ24の幅より短い。そのため、酸化マグネシウム23には、ひび割れ24内に入っているものもあると考えられる。
【0021】
また、本発明の一実施の形態に係るバイオディーゼル燃料の製造方法は、カルボン酸を原材料とし脱炭酸触媒10を用いてバイオディーゼル燃料を製造するものである。本実施の形態では、カルボン酸及び脱炭酸触媒10を攪拌式加熱炉(加熱装置の一例)に投入し、350〜500℃で加熱しながら攪拌することにより、カルボン酸に脱炭酸処理(脱炭酸反応)を行って、炭化水素油である軽油成分(バイオディーゼル燃料)を得るようにしている。
【0022】
カルボン酸及び脱炭酸触媒10の攪拌により、カルボン酸は、粒状物12の表面に接触し、あるいは、粒状物12の中空領域15及び孔14に進入し、粒状物12に付着している金属酸化物11に接触する。
脱炭酸触媒10の粒状物12は中空多孔質であることから、中空でない多孔質のものや、中空であるが多孔質でないものに比べ単位体積あたりの質量が軽く、攪拌機によって安定的に攪拌される。そのため、各脱炭酸触媒10は、カルボン酸と効率的に接触することができる。
【0023】
そして、金属酸化物11は粒状物12の中空領域15内、孔14内、及び、粒状物12の表面に万遍なく付着していることから、粒状物12の表面に接触したカルボン酸及び粒状物12の中空領域15や孔14に進入したカルボン酸が金属酸化物11に接触する機会を高めることができる。従って、脱炭酸触媒10を用いることで、バイオディーゼル燃料を効率的に製造可能である。
カルボン酸の脱炭酸処理によって、図2に示すように、金属酸化物11は炭酸塩25(本実施の形態ではMgCO)となる。なお、脱炭酸触媒10の金属酸化物11が炭酸塩25となったものを、以下、反応後脱炭酸触媒26とする。
【0024】
また、反応後脱炭酸触媒26は、350〜500℃の範囲で加熱装置によって加熱され、焼成されることで、炭酸塩25が、加熱分解によって、金属酸化物11となり脱炭酸触媒10に戻る。
従って、本発明の一実施の形態に係る脱炭酸触媒の再生方法は、バイオディーゼル燃料の製造の際、脱炭酸触媒10が加熱装置によってカルボン酸と共に加熱されて、金属酸化物11が炭酸塩25となった反応後脱炭酸触媒26を、焼成し、炭酸塩25を金属酸化物11にして、炭酸触媒10に戻すものである。
【0025】
そして、反応後脱炭酸触媒26の焼成に、バイオディーゼル燃料を製造する際に用いた攪拌式加熱炉(加熱装置)を使用することで、脱炭酸触媒10の再生用に、バイオディーゼル燃料製造の際に用いる加熱装置とは別の加熱装置を用意する必要がない。
【実施例】
【0026】
次に、本発明の効果を確認するために行った実験について説明する。
金属酸化物をシリカビーズに担持させた脱炭酸触媒(比較例、図1(B)参照)とカルボン酸とを混合して反応釜内で加熱することによって得たサンプルAをガスクロマトグラフィーによって同定した結果を図3に示す。図3に示すグラフより、サンプルAには、軽油成分を示す複数のピーク群が5〜45分の領域に表れた。
【0027】
一方、2〜4分の領域に複数の大きなピークが出現しており、このピークは、脱炭酸反応の副生成物である環状ラクトン群を示すと考えられる。カルボン酸が脱炭酸反応を経てアルカン群へと変化する過程で、加熱されたカルボン酸と金属酸化物との接触が不十分であると脱炭酸がなされず、分子内環化反応によって環形成したエステル(ラクトン)になることが分かっている。よって、比較例に係る脱炭酸触媒を採用した場合、カルボン酸が、当該脱炭酸触媒に担持された金属酸化物に効率的に接触することができなかったことが考えられる。
【0028】
そして、サンプルAを反応釜に投入して加熱し、180℃以下の温度で蒸留分取したサンプルBをガスクロマトグラフィーによって同定した結果を図4に示す。図3図4に示すグラフより、サンプルBは、サンプルAと比較して、成分の大きな差異が見られず、環状ラクトン群とみられるピークが2〜4分の領域に表れている。
【0029】
また、にがり由来の金属酸化物をシラスバルーンに担持させた脱炭酸触媒(以下、「実施例に係る脱炭酸触媒」とも言う)とカルボン酸とを混合して反応釜内で加熱することによって得たサンプルC、D、Eをガスクロマトグラフィーで同定した結果をそれぞれ図5図6図7に示す。
サンプルC、Dの採取に用いたカルボン酸は同一のものであり、サンプルEの採取に用いたカルボン酸と、サンプルC、Dの採取に用いたカルボン酸は異なる日時に生成されたものである。サンプルCを採取した温度は380〜400℃であり、サンプルDを採取した温度は400〜450℃であり、サンプルEを採取した温度は400〜420℃であった。
【0030】
図5より、サンプルCは、軽油成分(炭化水素成分)のピーク(12〜36分の領域にあるピーク、以下同様)が存在し、低沸点のラクトン成分のピーク(2〜4分の領域にあるピーク、以下同様)は軽油成分のピークと比べて低いことが分かる。図6より、サンプルDは、低沸点のラクトン成分のピークが軽油成分の最も高いピークより低いことが確認された。そして、図7より、サンプルEは、低沸点のラクトン成分のピークが軽油成分のピークに比べ極めて低いことが確認された。
従って、サンプルC、D、Eは、サンプルA、Bに比べて、低沸点のラクトン成分の含有比率が少ないものと考えられる。
【0031】
また、サンプルEの採取に用いたカルボン酸と実施例に係る脱炭酸触媒とを混合して反応釜内で加熱して脱炭酸反応させる工程を2回行って得たサンプルFをガスクロマトグラフィーで同定した結果を図8に示す。図8より、低沸点のラクトン成分のピークが軽油成分のピークに比べ極めて低いことが確認された。
【0032】
また、カルボン酸を実施例に係る脱炭酸触媒と混合して加熱し得られたサンプルC、D、Eのカルボン酸に対する軽油成分の収率は約50%であった。そして、金属酸化物が炭酸塩となった反応後炭酸触媒を焼成し、炭酸塩を金属酸化物にして脱炭酸触媒に戻した後、その脱炭酸触媒とカルボン酸を混合して加熱し得られたサンプルのカルボン酸に対する軽油成分の収率は約40%であった。よって、再生した脱炭酸触媒を用いた際の軽油成分の収率は、カルボン酸の脱炭酸処理に用いられていない脱炭酸触媒を用いた際の軽油成分の収率の約80%であった。
【0033】
これに対し、カルボン酸の脱炭酸処理に用いられて金属酸化物が炭酸塩となったシリカビーズを焼成し再生処理したものを、カルボン酸と混合して加熱し得られたサンプルのカルボン酸に対する軽油成分の収率は、シリカビーズを焼成したものをカルボン酸と混合し加熱し得られたサンプルのカルボン酸に対する軽油成分の収率の50〜60%であった。更に、再生処理したシリカビーズを用いてカルボン酸から得たサンプルは、カルボン酸の脱炭酸処理に用いられていないシリカビーズを用いてカルボン酸から得たサンプルに比べ、タール成分(不純物の一例)が増加するという実験結果を得ている。
【0034】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、中空多孔質の粒状物の大きさは、直径10μm未満(例えば2μm以上10μm未満)であってもよいし、直径300μm超(例えば300μm超1.5mm以下)であってもよい。また、中空多孔質の粒状物はシラスバルーンである必要はなく、例えば、アルミナ、チタニア又はシリカによって中空多孔質の粒状物を形成することもできる。
【0035】
そして、金属酸化物は、にがり由来のものである必要はなく、更にMgOに限定されない。例えば、金属酸化物にCaO、SrOを採用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10:脱炭酸触媒、11:金属酸化物、12:粒状物、13:外周層、14:孔、15:中空領域、20:脱炭酸触媒、22:シリカビーズ、23:酸化マグネシウム、24:ひび割れ、25:炭酸塩、26:反応後脱炭酸触媒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8