【実施例】
【0093】
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0094】
実施例1(本発明化合物(K−40)の合成)
【0095】
<ステップ1 化合物Aの合成>
【化30】
化合物(1)2.0g、トリフルオロメタンスルホン酸銀1.06g、ジクロロメタン110ml、メタノール2.5mlをアルゴン雰囲気下、25℃で17時間撹拌させた。反応終了後に、反応溶液をセライト層に通して不溶物を除去した。ろ液を濃縮乾固することで、化合物(A)を収率99%で得た。
【0096】
<ステップ2 化合物Bの合成>
【化31】
化合物(A)2.64g、配位子(L−1)2.27g、メタノール60ml、エタノール60mlを、アルゴン雰囲気下、75℃で72時間加熱反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、析出した固体をろ取し、メタノールで洗浄した。さらに、この固体をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒)で分離精製し、化合物(B)を収率40.9%で得た。化合物(B)の
1H−NMRデータを以下に示す。化合物(B)はフェイシャル体であった。
1H−NMR(400MHz/アセトン−d
6):δ(ppm) 8.28(d,1H),8.09(m,3H),7.79(m,5H),7.69(m,3H),7.56(d,2H),7.20(d,2H),7.09(m,4H),6.92(m,5H),6.84(m,2H),2.32(s,3H).
【0097】
<ステップ3 化合物Cの合成>
【化32】
化合物(B)670mgとジクロロメタン100mlの混合物を、遮光下で0℃に冷却した。この溶液にN−ブロモスクシンイミド160mgを加え、室温下で17時間撹拌させた。反応終了後、ジクロロメタンを減圧留去し固体を得た。この固体をHPLCで分析したところ、所望とする化合物(C)のほか、化合物(B)と化合物(D)が含まれていることが明らかになった。その割合は、化合物(B)12%、化合物(C)78%、化合物(D)10%であった。これ以上の精製は行わずに、次のステップ4ではこの混合物のまま用いた。
【0098】
<ステップ4 化合物Eの合成>
【化33】
ステップ3で得られた化合物(C)1.05g、ビス(ピナコラト)ジボロン635mg、酢酸カリウム1.1g、1,4−ジオキサン50ml、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(Pd(dppf)
2Cl
2・CH
2Cl
2)153mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)104mgをアルゴン雰囲気下で17時間加熱還流した。反応終了後、室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し不溶物を除去した。ろ液を減圧濃縮し固体を得た。これをさらに、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)で分離精製し、幾何異性体の混合物からなる目的化合物(E)を510mg得た。収率は84%であった。化合物(E)の
1H−NMRデータとESI−MSデータを以下に示す。
1H−NMR(400MHz/アセトン−d
6):δ(ppm) 8.26(dd,1H),8.08−8.13(m,3H),8.03(s,1H),7.74−7.80(m,4H),7.62−7.68(m,3H),7.52−7.55(m,2H),7.17(d,2H),7.03−7.10(m,5H),6.80−6.98(m,4H),6.73(dd,1H),2.31(s,3H),1.29(s,12H).
ESI−MS:m/z=871.8([M+H]
+)
【0099】
<ステップ5 化合物(K−40)の合成>
【化34】
ステップ4で得られた化合物(E)250mg、SPhos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)24mg、リン酸カリウム183mg、1−ブロモ−3,5−ジメチルベンゼン160mg、トルエン40ml、水4mlの混合物へ、アルゴンガスを30分間通気した後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)5.2mgを加え、アルゴン雰囲気下で17時間、加熱還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し、不溶物を除去した。ろ液にジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)により分離精製し、幾何異性体の混合物からなる本発明化合物(K−40)を90mg得た。収率は37%であった。本発明化合物(K−40)の
1H−NMRデータとESI−MSデータを以下に示す。
1H−NMR(アセトン−d
6,400MHz):δ8.25−8.29(m,2H),8.10(d,1H),8.03−8.05(m,2H),7.62−7.81(m,7H),7.53−7.56(m,2H),7.26(s,2H),7.18(dd,2H),7.02−7.08(m,5H),6.91−6.97(m,4H),6.83(t,1H),6.73(t,1H),2.30(d,9H).
ESI−MS:m/z=850.8([M+H]
+)
【0100】
実施例2(本発明化合物(K−39)の合成)
【化35】
化合物(E)150mg、SPhos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)14mg、リン酸カリウム110mg、1−ブロモ−4−(トリフルオロメチル)ベンゼン116mg、トルエン40ml、水4mlの混合物へ、アルゴンガスを30分間通気した後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)3.1mgを加え、アルゴン雰囲気下で17時間、加熱還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し、不溶物を除去した。ろ液にジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)により分離精製し、幾何異性体の混合物からなる本発明化合物(K−39)を30mg得た。収率は20%であった。本発明化合物(K−39)の
1H−NMRデータとESI−MSデータを以下に示す。
1H−NMR(アセトン−d
6,400MHz):δ8.34(d,1H),8.29(dd,1H),8.17(t,1H),8.13(d,1H),8.05(dd,1H),7.89(dd,2H),7.68−7.85(m,10H),7.53−7.56(m,2H),7.01−7.20(m,7H),6.84−6.94(m,3H),6.72−6.76(m,1H),2.31(d,3H).
ESI−MS:m/z=889.8([M+H]
+)
【0101】
実施例3(本発明化合物(K−41)の合成)
【化36】
化合物(E)300mg、SPhos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)28mg、リン酸カリウム220mg、5’−ブロモ−4,4”−ジイソプロピル−1,1−3’,1”−ターフェニル406.2mg、トルエン50ml、水5mlの混合物へ、アルゴンガスを30分間通気した後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)6.2mgを加え、アルゴン雰囲気下で17時間、加熱還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し、不溶物を除去した。ろ液にジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)により分離精製し、幾何異性体の混合物からなる本発明化合物(K−41)を180mg得た。収率は48.6%であった。本発明化合物(K−41)の
1H−NMRデータとESI−MSデータを以下に示す。
1H−NMR(アセトン−d
6,400MHz):δ8.37−8.40(m,1H),8.25−8.31(m,2H),8.10−8.13(m,1H),8.05−8.07(m,1H),7.87−7.88(m,2H),7.69−7.83(m,12H),7.54−7.56(m,2H),7.34−7.37(m,4H),7.17−7.24(m,3H),6.92−7.12(m,7H),6.83−6.86(m,1H),6.73−6.77(m,1H),2.93−3.00(m,2H),2.31(s,3H),1.28(dd,12H).
ESI−MS:m/z=1057.9([M+H]
+)
【0102】
実施例4(本発明化合物(K−16)の合成)
【化37】
化合物(E)360mg、SPhos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)34mg、リン酸カリウム263mg、5−ブロモ−2−tert−ブチルピリミジン267mg、トルエン50ml、水5mlの混合物へ、アルゴンガスを30分間通気した後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)7.5mgを加え、アルゴン雰囲気下で17時間、加熱還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し、不溶物を除去した。ろ液にジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)により精製し、幾何異性体の混合物からなる本発明化合物(K−16)を180mg得た。収率は50.0%であった。本発明化合物(K−16)の
1H−NMRデータとESI−MSデータを以下に示す。
1H−NMR(アセトン−d
6,400MHz):δ8.98(d,2H),8.39(d,1H),8.29(dd,1H),8.16−8.17(m,1H),8.10−8.13(m,1H),8.06−8.07(m,1H),7.69−7.88(m,7H),7.54−7.56(m,2H),7.02−7.20(m,8H),6.85−6.94(m,3H),6.72−6.77(m,1H),2.31(d,3H),1.39(d,9H).
ESI−MS:m/z=880.3([M+H]
+)
【0103】
実施例5(本発明化合物(K−34)の合成)
【化38】
化合物(E)200mg、SPhos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)19mg、リン酸カリウム146mg、4−ブロモジベンゾチオフェン182mg、トルエン40ml、水4mlの混合物へ、アルゴンガスを30分間通気した後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)4.1mgを加え、アルゴン雰囲気下で17時間、加熱還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し、不溶物を除去した。ろ液にジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)により精製し、幾何異性体の混合物からなる本発明化合物(K−34)を70mg得た。収率は32.9%であった。本発明化合物(K−34)の
1H−NMRデータとESI−MSデータを以下に示す。
1H−NMR(アセトン−d
6,400MHz):δ8.19−8.33(m,5H),8.10−8.15(m,1H),8.06(dd,1H),7.91−7.95(m,1H),7.74−7.85(m,6H),7.70(dd,1H),7.55−7.57(m,4H),7.47−7.50(m,2H),6.95−7.20(m,10H),6.84−6.87(m,1H),6.75−6.80(m,1H),2.31(s,3H).
ESI−MS:m/z=928.2([M+H]
+)
【0104】
実施例6(本発明化合物(K−10)の合成)
【化39】
化合物(E)150mg、SPhos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)14.1mg、リン酸カリウム101mg、2−ブロモ−4,6−ジフェニルピリミジン161mg、トルエン40ml、水4mlの混合物へ、アルゴンガスを30分間通気した後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)3.1mgを加え、アルゴン雰囲気下で17時間、加熱還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し、不溶物を除去した。ろ液にジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)により精製し、幾何異性体の混合物からなる本発明化合物(K−10)を11mg得た。収率は5.9%であった。本発明化合物(K−10)の
1H−NMRデータとESI−MSデータを以下に示す。
1H−NMR(アセトン−d
6,400MHz):δ9.11(dd,1H),8.46−8.49(m,4H),8.28−8.32(m,3H),8.05−8.13(m,3H),7.71−7.88(m,7H),7.53−7.59(m,8H),7.05−7.21(m,7H),6.92−7.00(m,2H),6.82−6.89(m,1H),6.72−6.79(m,1H),2.31(d,3H).
ESI−MS:m/z=975.9([M+H]
+)
【0105】
実施例7(本発明化合物(K−46)の合成)
【0106】
<ステップ1 化合物(K−42)の合成>
【化40】
化合物(K−41)50mgとジクロロメタン15mlの混合物を、0℃まで冷却した。この反応溶液に遮光下でN−ブロモスクシンイミド13.5mgを加え、25℃で17時間撹拌した。反応終了後、反応溶液を減圧留去し固体を得た。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン)にて分離精製し、幾何異性体の混合物からなる本発明化合物(K−42)を得た。
【0107】
<ステップ2 化合物(K−46)の合成>
【化41】
化合物(K−42)54mg、SPhos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)156mg、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(20%水溶液)245mg、ボロン酸エステル化合物(BE−1)156mg、THF3mlの混合物へ、アルゴンガスを30分間通気した後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)6mgを加え、アルゴン雰囲気下で17時間、加熱還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し、不溶物を除去した。ろ液にジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)により分離精製し、幾何異性体の混合物からなる本発明化合物(K−46)を16mg得た。収率は24.4%であった。化合物(K−46)の
1H−NMRデータとESI−MSデータを以下に示す。
1H−NMR(アセトン−d
6,400MHz):δ8.38−8.46(m,2H),8.30−8.35(m,3H),8.10(s,1H),7.90−7.92(m,4H),7.79−7.82(m,2H),7.74−7.77(m,14H),7.57(d,2H),7.52(d,4H),7.36(d,4H),7.26−7.30(m,2H),7.06−7.20(m,9H),2.93−2.99(m,2H),2.31(s,3H),1.36(s,18H),1.28(d,12H).
ESI−MS:m/z=1398.6([M+H]
+)
【0108】
実施例8(本発明化合物(K−11)の合成)
【化42】
化合物(E)200mg、SPhos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)19mg、リン酸カリウム146mg、2−ブロモ−4,6−ジ−ターシャルブチルピリミジン156mg、トルエン50ml、水5mlの混合物へ、アルゴンガスを30分間通気した後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)4.2mgを加え、アルゴン雰囲気下で17時間、加熱還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し、不溶物を除去した。ろ液にジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:THFとヘキサンの混合溶媒)により精製し、幾何異性体の混合物からなる本発明化合物(K−11)を1mg得た。本発明化合物(K−11)のESI−MSデータを以下に示す。
ESI−MS:m/z=936.3([M+H]
+)
【0109】
実施例9(本発明化合物(K−44)の合成)
【0110】
<ステップ1 化合物Gの合成>
【化43】
化合物(F)300mgとジクロロメタン150mlの混合物を、遮光下で0℃に冷却した。この溶液にN−ブロモスクシンイミド57.5mgを加え、室温下で17時間撹拌させた。反応終了後、ジクロロメタンを減圧留去し固体を得た。この固体をHPLCで分析したところ、所望とする化合物(G)のほか、化合物(F)が含まれていることが明らかになった。その割合は、化合物(F)50%、化合物(G)50%であった。これ以上の精製は行わずに、次のステップ2ではこの混合物のまま用いた。
【0111】
<ステップ2 化合物Hの合成>
【化44】
ステップ1で得られた化合物(G)を全量と、ビス(ピナコラト)ジボロン165mg、酢酸カリウム286mg、1,4−ジオキサン60ml、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(Pd(dppf)
2Cl
2・CH
2Cl
2)49mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)27mgをアルゴン雰囲気下で17時間加熱還流した。反応終了後、室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し不溶物を除去した。ろ液を減圧濃縮し固体を得た。これをさらに、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)で分離精製し、幾何異性体の混合物からなる目的化合物(H)を60mg得た。収率は35%であった。化合物(H)のESI−MSデータを以下に示す。
ESI−MS:m/z=1052.5([M+H]
+)
【0112】
<ステップ3 化合物(K−44)の合成>
【化45】
化合物(H)80mg、SPhos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)6.2mg、リン酸カリウム42mg、5’−ブロモ−4,4”−ジイソプロピル−1,1−3’,1”−ターフェニル90mg、トルエン20ml、水2mlの混合物へ、アルゴンガスを30分間通気した後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)1.4mgを加え、アルゴン雰囲気下で17時間、加熱還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し、不溶物を除去した。ろ液にジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)により分離精製し、幾何異性体の混合物からなる本発明化合物(K−44)を60mg得た。収率は64%であった。本発明化合物(K−44)のESI−MSデータを以下に示す。
ESI−MS:m/z=1238.6([M+H]
+)
【0113】
実施例10(本発明化合物(K−43)の合成)
【0114】
<ステップ1 化合物Jの合成>
【化46】
化合物(I)940mgとジクロロメタン940mlの混合物を、遮光下で0℃に冷却した。この溶液にN−ブロモスクシンイミド198mgを加え、室温下で17時間撹拌させた。反応終了後、ジクロロメタンを減圧留去し固体を得た。この固体をHPLCで分析したところ、所望とする化合物(J)のほか、化合物(I)が含まれていることが明らかになった。その割合は、化合物(I)13%、化合物(J)87%であった。これ以上の精製は行わずに、次のステップ2ではこの混合物のまま用いた。
【0115】
<ステップ2 化合物Kの合成>
【化47】
ステップ1で得られた化合物(J)を全量と、ビス(ピナコラト)ジボロン565mg、酢酸カリウム983mg、1,4−ジオキサン150ml、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物(Pd(dppf)
2Cl
2・CH
2Cl
2)136mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)93mgをアルゴン雰囲気下で17時間加熱還流した。反応終了後、室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し不溶物を除去した。ろ液を減圧濃縮し固体を得た。これをさらに、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)で分離精製し、幾何異性体の混合物からなる目的化合物(K)を370mg得た。収率は35%であった。化合物(K)のESI−MSデータを以下に示す。
ESI−MS:m/z=972.1([M+H]
+)
【0116】
<ステップ3 化合物(K−43)の合成>
【化48】
化合物(K)370mg、SPhos(2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル)31.2mg、リン酸カリウム66mg、5’−ブロモ−4,4”−ジイソプロピル−1,1−3’,1”−ターフェニル450mg、トルエン100ml、水10mlの混合物へ、アルゴンガスを30分間通気した後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)7mgを加え、アルゴン雰囲気下で17時間、加熱還流した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、反応溶液をセライト層に通してろ過し、不溶物を除去した。ろ液にジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を減圧濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)により分離精製し、幾何異性体の混合物からなる本発明化合物(K−43)を70mg得た。収率は16%であった。本発明化合物(K−43)の
1H−NMRデータとESI−MSデータを以下に示す。
1H−NMR(400MHz/アセトン−d
6):δ(ppm) 9.13−9.17(m,1H),8.99−9.03(m,1H),8.63(d,1H),8.22−8.32(m,2H),8.07(d,1H),7.85−7.94(m,4H),7.72−7.81(m,10H),7.58−7.65(m,2H),7.51−7.55(m,3H),7.43−7.47(m,1H),7.33−7.39(m,5H),7.10−7.29(m,5H),6.89−7.07(m,4H),6.75−6.83(m,1H),2.92−3.00(m,2H),2.29−2.30(m,3H),1.26−1.28(m,12H).
ESI−MS:m/z=1158.2([M+H]
+)
【0117】
<比較例1> トリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III)を用いた化合物(K−40)の合成
トリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III)200mg、配位子(L−1)175mg、配位子(L−2)185mg、2−フェニルピリジン111mg、エチレングリコール5mlをアルゴン雰囲気下、210℃で17時間、加熱反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、メタノールを加え析出した固体をろ取した。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒)により精製したが、多様な生成物の中から本発明化合物(K−40)を単離することはできなかった。
【化49】
【0118】
<比較例2> 非特許文献1に記載の方法による化合物(K−40)の合成
塩化イリジウム・3水和物300mg、配位子(L−1)314mg、配位子(L−2)331mg、2−エトキシエタノール6.3ml、水2.1mlをアルゴン雰囲気下、15時間、加熱還流した。反応溶液を室温まで冷却後に析出した固体をろ取し、水とメタノールで洗浄した。さらに、この固体をジクロロメタンとメタノールで再結晶し、塩素架橋イリジウムダイマーの混合物401mgを得た。引き続いて、塩素架橋イリジウムダイマー混合物200mg、ナトリウムアセチルアセトナート167mg、2−エトキシエタノール40ml、アルゴン雰囲気下、17時間加熱還流させた。室温まで冷却後に反応溶液を減圧留去し、ここへ水を加え析出した固体をろ取し、水とメタノールで洗浄した。さらにこの固体をジクロロメタンとメタノールで再結晶し、黄色固体を得た。ここで得られた生成物には、化合物(A−1)、化合物(A−2)、化合物(A−3)などが含まれていた。この混合物をカラムクロマトグラフィーで分離精製したが、本発明化合物(K−40)の前駆体である化合物(A−3)を単離することができなかった。したがって、本発明化合物(K−40)を得ることはできなかった。
【化50】
【0119】
以上述べてきたように、従来法では合成が極めて困難であった、3つの芳香族複素環配位子の構造が全て異なったトリスシクロメタル化イリジウム錯体を、本発明の製造方法で簡便に幅広く合成することが可能になった。本発明の製造方法により、有機電界発光素子等に適用できるトリスシクロメタル化イリジウム錯体のバリエーションを大幅に増やし、燐光材料の開発とその実用化に貢献することが可能である。
【0120】
次に本発明の製造方法で合成した新規骨格のトリスシクロメタル化イリジウム錯体の発光特性について説明する。
【0121】
実施例11(本発明化合物(K−40)のTHF中での発光)
本発明化合物(K−40)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、浜松ホトニクス株式会社製の絶対PL量子収率測定装置(C9920)を用いて、室温下での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、緑色発光(発光極大波長:520.0nm)を示した。発光量子収率は0.89であった。発光スペクトルの半値幅は71.9nmであった。
【0122】
実施例12(本発明化合物(K−41)のTHF中での発光)
本発明化合物(K−41)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、浜松ホトニクス株式会社製の絶対PL量子収率測定装置(C9920)を用いて、室温下での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、緑色発光(発光極大波長:519.3nm)を示した。発光量子収率は0.88であった。発光スペクトルの半値幅は67.8nmであった。
【0123】
実施例13(本発明化合物(K−16)のTHF中での発光)
本発明化合物(K−16)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、浜松ホトニクス株式会社製の絶対PL量子収率測定装置(C9920)を用いて、室温下での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、緑色発光(発光極大波長:518.5nm)を示した。発光量子収率は0.89であった。発光スペクトルの半値幅は69.3nmであった。
【0124】
実施例14(本発明化合物(K−34)のTHF中での発光)
本発明化合物(K−34)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、浜松ホトニクス株式会社製の絶対PL量子収率測定装置(C9920)を用いて、室温下での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、緑色発光(発光極大波長:519.3nm)を示した。発光量子収率は0.88であった。発光スペクトルの半値幅は68.0nmであった。
【0125】
実施例15(本発明化合物(K−10)のTHF中での発光)
本発明化合物(K−10)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、浜松ホトニクス株式会社製の絶対PL量子収率測定装置(C9920)を用いて、室温下での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、緑色発光(発光極大波長:515.6nm)を示した。発光量子収率は0.87であった。発光スペクトルの半値幅は66.8nmであった。
【0126】
実施例16(本発明化合物(K−46)のTHF中での発光)
本発明化合物(K−46)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、浜松ホトニクス株式会社製の絶対PL量子収率測定装置(C9920)を用いて、室温下での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、緑色発光(発光極大波長:520.8nm)を示した。発光量子収率は0.88であった。発光スペクトルの半値幅は70.7nmであった。
【0127】
比較例3(Ir(ppy)
3のTHF中での発光)
Ir(ppy)
3([化1]のイリジウム錯体)をTHFに溶解させ、アルゴンガスを通気した後、浜松ホトニクス株式会社製の絶対PL量子収率測定装置(C9920)を用いて、室温下での発光スペクトル(励起波長:350nm)を測定したところ、緑色発光(発光極大波長:514.8nm)を示した。発光量子収率は0.84であった。発光スペクトルの半値幅は72.7nmであった。
【0128】
次に本発明の製造方法で合成した新規骨格のトリスシクロメタル化イリジウム錯体の溶媒に対する溶解性について説明する。
【0129】
実施例17(本発明化合物の溶解性)
実施例1〜実施例6で合成した(K−40)、(K−39)、(K−41)、(K−16)、(K−34)、(K−10)の溶媒(クロロホルム、トルエン)に対する溶解性を確認するために、0.1wt%の溶液をそれぞれ作製し、目視により確認したところ、完全に溶解することがわかった。
【0130】
比較例4(比較化合物の溶解性)
Ir(ppy)
3の溶媒(クロロホルム、トルエン)に対する溶解性を確認するために、0.1wt%の溶液を作製し、目視により確認したところ、かなりの溶け残りが生じた。
【0131】
比較例5(比較化合物の溶解性)
実施例1のステップ2で合成した化合物(B)の溶媒(クロロホルム、トルエン)に対する溶解性を確認するために、0.1wt%の溶液を作製し、目視により確認したところ、かなりの溶け残りが生じた。
【0132】
実施例11〜16と比較例3より、本発明の一般式(1)で表されるイリジウム錯体はIr(ppy)
3よりも高い発光量子収率を示した。さらに、本発明の一般式(1)で表されるイリジウム錯体の発光スペクトルの半値幅は、Ir(ppy)
3よりも狭いことが明らかになった。本発明の一般式(1)で表されるイリジウム錯体は、本発明の製造方法により初めて合成された新規化合物であり、、Ir(ppy)
3よりも高発光効率でシャープな形状の発光スペクトルを示すことから、特にディスプレイ用途の燐光材料として有用である。
【0133】
さらに、実施例17と比較例4、5より、3つの芳香族複素環配位子の構造が全て異なった本発明のイリジウム錯体は、芳香族複素環配位子が全て同じ構造のイリジウム錯体(Ir(ppy)
3)、ならびに、芳香族複素環配位子の構造が1つだけ異なったイリジウム錯体(化合物(B))より、溶媒に対する溶解性が優れていることがわかる。実施例17に記載の本発明のイリジウム錯体は、化合物(B)に置換基を導入することで合成されたものであり、3つの芳香族複素環配位子の構造が全て異なる構造的特徴により、溶媒に対し高い溶解性を示すことが明らかになった。