特許第6765640号(P6765640)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765640
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】コネクタ及びコネクタ付きケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/72 20110101AFI20200928BHJP
   H01R 24/60 20110101ALI20200928BHJP
【FI】
   H01R12/72
   H01R24/60
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-13949(P2017-13949)
(22)【出願日】2017年1月30日
(65)【公開番号】特開2018-125070(P2018-125070A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】深作 泉
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−167136(JP,A)
【文献】 特表2013−522848(JP,A)
【文献】 特開平10−335019(JP,A)
【文献】 特表2018−503261(JP,A)
【文献】 実開昭59−033272(JP,U)
【文献】 特開昭51−076571(JP,A)
【文献】 特開昭51−077863(JP,A)
【文献】 特開平08−148789(JP,A)
【文献】 特開2003−142791(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0288534(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00−12/91
H01R24/00−24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの端部に設けられるコネクタであって、
接続対象の機器と前記ケーブルとを電気的に接続するパドルカード基板と、
前記パドルカード基板の一端部に前記機器への挿入方向に対して複数列形成され、前記機器に電気的に接続される複数の機器側電極と、
前記機器への挿入方向に対して隣接する前記機器側電極同士の間に形成され、前記パドルカード基板の表面を保護する保護部と、を備え、
前記保護部は、前記挿入方向に対して金属製の複数の保護パッドが互いに所定間隔を離間して形成されているコネクタ。
【請求項2】
前記保護部は、前記挿入方向に対して2つの前記保護パッドが互いに0.05mm以上0.25mm以下離間して形成されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記保護部は、離間している前記複数の保護パッドの間に樹脂部材を設けた請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
ケーブルと、
ケーブルの端部に設けられるコネクタと、を備え、
前記コネクタは、
接続対象の機器と前記ケーブルとを電気的に接続するパドルカード基板と、
前記パドルカード基板の一端部に前記機器への挿入方向に対して複数列形成され、前記機器に電気的に接続される複数の機器側電極と、
前記機器への挿入方向に対して隣接する前記機器側電極同士の間に形成され、前記パドルカード基板の表面を保護する金属製の保護部と、を備え、
前記保護部は、前記挿入方向に対して複数の保護パッドが互いに所定間隔を離間して形成されているケーブル付きコネクタ。
【請求項5】
ケーブルの端部に設けられるコネクタであって、
接続対象の機器と前記ケーブルとを電気的に接続するパドルカード基板と、
前記パドルカード基板の一端部に前記機器への挿入方向に対して複数列形成され、前記機器に電気的に接続される複数の機器側電極と、
前記機器への挿入方向に対して隣接する前記機器側電極同士の間に形成され、前記パドルカード基板の表面を保護する非金属製の保護部と、を備える
コネクタ。
【請求項6】
前記保護部は、パドルカード基板の基材よりも耐摩耗性が高く、かつ摩擦係数が低い請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
ケーブルと、
ケーブルの端部に設けられるコネクタと、を備え、
前記コネクタは、
接続対象の機器と前記ケーブルとを電気的に接続するパドルカード基板と、
前記パドルカード基板の一端部に前記機器への挿入方向に対して複数列形成され、前記機器に電気的に接続される複数の機器側電極と、
前記機器への挿入方向に対して隣接する前記機器側電極同士の間に形成され、前記パドルカード基板の表面を保護する非金属製の保護部と、を備えるケーブル付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及びコネクタ付きケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーバやネットワーク機器等のいわゆるIT(Information Technology)装置が備える基板は、一般に“マザーボード”と呼ばれており、このマザーボードには複数のコネクタ付きケーブルが接続される。
【0003】
コネクタ付きケーブルは、複数の差動信号伝送用ケーブルを内蔵したケーブルと、ケーブルの両端に設けられたコネクタとからなるものが用いられている。
コネクタには、IT装置等の機器とケーブルとを電気的に接続するパドルカード基板が内蔵されている。パドルカード基板の一端には、機器に電気的に接続される複数の機器側電極が形成されている。
【0004】
IT装置等の高性能化に伴い、コネクタ付きケーブルで伝送できる帯域を広げることが望まれている。伝送できる帯域を広げる方法として、コネクタ付きケーブルのチャンネル数を増やす方法がある。この方法をとるためには、パドルカード基板における機器側電極を増やす必要がある。例えば、特許文献1のように機器側電極を複数列設けることで、パドルカード基板上における機器接続用電極を増やすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−335019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7にパドルカード基板200上の一端側に機器側電極40a,40bを複数列設けた例を示す。機器側電極40aは、パドルカード基板の一端面から所定間隔を離間して設けられている。機器側電極40bは、パドルカード基板の一端面から機器側電極40aよりも離間して設けられている。パドルカード基板200をIT装置等の機器と接続する際には、機器側電極40a,40bをそれぞれ、機器のコネクタハウジング10内に設けられ、マザーボード(図示しない)と電気的に接続されている複数の接触子11a,11bと接触させる。パドルカード基板200を機器と接続する際には、パドルカード基板200は、接触子11a,11bを表面で摺動させつつコネクタハウジング10内をスライドさせ、対応する機器側電極40a,40bと接触子11a,11bとを接触させることにより、コネクタ付きケーブルと機器との接続が完了する。
【0007】
しかしながら、接触子11a,11bがパドルカード基板200上を摺動する際に、機器側電極40a,40bが設けられておらずパドルカード基板200の表面に露出する基材が傷つけられる、または削られるおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、パドルカード基板を機器に接続する際に、パドルカード基板の表面に露出する基材が傷つられることや削られることを抑制することができるコネクタ及びコネクタ付きケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ケーブルの端部に設けられるコネクタであって、接続対象の機器と前記ケーブルとを電気的に接続するパドルカード基板と、前記パドルカード基板の一端部に前記機器への挿入方向に対して複数列形成され、前記機器に電気的に接続される複数の機器側電極と、前記機器への挿入方向に対して隣接する前記機器側電極同士の間に形成され、前記パドルカード基板の表面を保護する金属製の保護部と、を備え、前記保護部は、前記挿入方向に対して金属製の複数の保護パッドが互いに所定間隔を離間して形成されているコネクタである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パドルカード基板を機器に接続する際に、パドルカード基板表面の傷つきや削れを抑制することができるコネクタ及びコネクタ付きケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るコネクタ付きケーブルを示す平面図である。
図2図1のA−A線断面図で示したパドルカードの断面図と機器に設けられるコネクタハウジングを示す図である。
図3】比較例1に係るパドルカード基板の一端を示す図である。
図4】(a)は第1実施形態のパドルカード基板におけるクロストークの影響をシミュレーションした結果であり、(b)は比較例1のパドルカード基板におけるクロストークの影響をシミュレーションした結果である。
図5】本発明の第2実施形態に係るコネクタ付きケーブルを構成するパドルカード基板5Aを示す図である。
図6】第2実施形態のパドルカード基板におけるクロストークの影響をシミュレーションした結果である。
図7図7は従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るコネクタ付きケーブル1の平面図である。
【0013】
図1に示すように、コネクタ付きケーブル1は、複数の差動信号伝送用ケーブル2a,2b,2c,2dを備えたケーブル2と、ケーブル2の両端に設けられたコネクタ3と、コネクタ3に内蔵され、接続対象の機器(図示せず)に電気的に接続される第1機器側電極4a,第2機器側電極4b,第3機器側電極4c,第4機器側電極4dが基材53の一端51に形成されると共に、他端52に差動信号伝送用ケーブル2が電気的に接続され、機器と差動信号伝送用ケーブル2とを電気的に接続する多層基板からなるパドルカード基板5と、を備えている。
【0014】
本実施形態では、2チャンネルの送受信が可能にコネクタ付きケーブル1を構成する場合を説明する。この場合、送信用と受信用にそれぞれ2本ずつ、合計4本の差動信号伝送用ケーブル2a,2b,2c,2dが備えられる。例えば、コネクタ付きケーブル1は、25Gbpsの信号を送受信するために用いられる。
【0015】
パドルカード基板5(基材53)の他端52(ケーブル3の接続側の端部)には、差動信号伝送用ケーブル2aが電気的に接続されるケーブル接続用電極6aと、差動信号伝送用ケーブル2bが電気的に接続されるケーブル接続用電極6bと、差動信号伝送用ケーブル2cが電気的に接続されるケーブル接続用電極6cと、差動信号伝送用ケーブル2dが電気的に接続されるケーブル接続用電極6dと、が形成されている。
【0016】
ケーブル接続用電極6aは、差動信号伝送用ケーブル2aが接続された側とは反対側に、多層基板の内層を介してカップリングコンデンサ7aが接続される。ケーブル接続用電極6bは、差動信号伝送用ケーブル2bが接続された側とは反対側にカップリングコンデンサ7bが接続される。ケーブル接続用電極6cは、差動信号伝送用ケーブル2cが接続された側とは反対側に、多層基板の内層を介してカップリングコンデンサ7cが接続される。ケーブル接続用電極6dは、差動信号伝送用ケーブル2dが接続された側とは反対側にカップリングコンデンサ7dが接続される。
【0017】
カップリングコンデンサ7aは、ケーブル接続用電極6aが接続された端子とは反対側の端子に、多層基板の内層を介して第1機器側電極4aに接続される。カップリングコンデンサ7bは、ケーブル接続用電極6bが接続された端子とは反対側の端子に多層基板の内層を介して第2機器側電極4bに接続される。カップリングコンデンサ7cは、ケーブル接続用電極6cが接続された端子とは反対側の端子に多層基板の内層を介して第3機器側電極4cに接続される。カップリングコンデンサ7dは、ケーブル接続用電極6dが接続された端子とは反対側の端子に多層基板の内層を介して第4機器側電極4dに接続される。
【0018】
つまり、第1機器側電極4aは、カップリングコンデンサ7a,ケーブル接続用電極6aを介して差動信号伝送用ケーブル2aと接続される。第2機器側電極4bは、カップリングコンデンサ7b,ケーブル接続用電極6bを介して差動信号伝送用ケーブル2bと接続される。第3機器側電極4cは、カップリングコンデンサ7c,ケーブル接続用電極6cを介して差動信号伝送用ケーブル2cと接続される。第4機器側電極4dは、カップリングコンデンサ7d,ケーブル接続用電極6dを介して差動信号伝送用ケーブル2dと接続される。
【0019】
機器側電極4a,4b,4c,4dは、パドルカード基板5の一端51に機器への挿入方向に対して複数列形成される。パドルカード基板の一端51の端面51aより機器への挿入方向に対して所定距離(D1)離れた位置に、端面51aに対して平行に並べられた第1機器側電極4a,第3機器側電極4cが形成されている。パドルカード基板の一端部の端面51aより機器への挿入方向に対して所定距離(D2)離れた位置に、端面51aに対して平行に並べられた第2機器側電極4b,第4機器側電極4dが形成されている。ここで、D2はD1よりも大きく、第2機器側電極4b,第4機器側電極4dは、第1機器側電極4a,第3機器側電極4cよりもパドルカード基板の一端51の端面51aより機器への挿入方向に対して離れて形成されている。すなわち、第1機器側電極4a,第3機器側電極4cが1列目の電極群を形成し、第2機器側電極4b,第4機器側電極4dが2列目の電極群を形成している。
【0020】
第1機器側電極4aと第2機器側電極4bとの対向する端面は、例えば2.0mm以上の間隔(D3)を空けて離間している。同様に、第3機器側電極4cと第4機器側電極4dとの対向する端面は、例えば2.0mm以上の間隔(D3)を空けて離間している。
【0021】
パドルカード基板5の表面の一端51には、機器側電極4a,4b,4c,4dの他に、グランドパターンや電源用電極(図示せず)、制御信号用電極(図示せず)等が整列して形成されており、カードエッジコネクタが構成されている。
【0022】
グランドパターンは、第1機器側電極4a,第3機器側電極4cを挟みこむように形成された第1グランドパターン81と、第2機器側電極4b,第4機器側電極4dを挟み込むように形成された第2グランドパターン82と、第1グランドパターン81と第2グランドパターンとの間に形成された第3グランドパターン83と、ケーブル接続用電極6a,6b,6cを挟みこむように形成された第4グランドパターン84と、第1機器側電極4a,第2機器側電極4b,第3機器側電極4c,第4機器側電極4dとケーブル接続用電極6a,6b,6c,6dとの間の伝送路上に形成された第5グランドパターン85とから構成される。
【0023】
第2グランドパターン82と第4グランドパターン84と第5グランドパターン85とは連なっており、一体のパターンとして形成されている。第1グランドパターン81と第3グランドパターン83は、他のパターンとは連なっておらず、一体のパターンとして形成されていない。
【0024】
パドルカード基板5の表面には、第1機器側電極4aと第2機器側電極4bとの間に金属製の第1保護部91が形成されている。パドルカード基板5の表面には、第3機器側電極4cと第4機器側電極4dとの間に金属製の第2保護部92が形成されている。第1保護部91は、パドルカード基板の機器への挿入方向に対して所定間隔を離間した2つの保護パッド91a,91bから形成される。第2保護部92は、パドルカード基板の機器への挿入方向に対して所定間隔を離間した2つの保護パッド92a,92bから形成される。保護パッド91aと保護パッド91b、及び保護パッド92aと保護パッド92bは互いに0.05mm以上0.25mm以下の間隔(D4)を空けて離間している。D4は、0.5mm未満であると、保護パッド91a,91b,92a,92bを形成することが製造上難しくなる。D4は、0.25mmを超えると、保護パッド91aと保護パッド91b、及び保護パッド92aと保護パッド92bの間の間隔が広くなりすぎ、パドルカード基板5の表面を保護する機能が十分でなくなる。
【0025】
パドルカード基板5の端面51aと第1機器側電極4aとの間には、金属製の第3保護部93が形成されている。パドルカード基板5の端面51aと第3機器側電極4cとの間には、金属製の第4保護部94が形成されている。
【0026】
第1保護部91,第2保護部92,第3保護部93,第4保護部94は、各機器側電極やグランドパターンに電気的に接続されておらず、他の電極から電気的に浮いた状態である。
【0027】
第1保護部91,第2保護部92,第3保護部93,及び第4保護部94は、第1機器側電極4a,第2機器側電極4b,第3機器側電極4c,第4機器側電極4dと同じ材料からなる。これらの材料を同じにすることにより、パドルカード基板5の基材53上に機器側電極4a,4b,4c,4dを形成する工程で第1保護部91,第2保護部92,第3保護部93,及び第4保護部94を同時に形成することができる。
【0028】
つぎに、図2を用いてコネクタ付きケーブル1を機器に設けられたコネクタハウジング10に挿入する際の動作を説明する。図2は、図1のA−A線断面図で示したパドルカード5の断面図と機器に設けられるコネクタハウジング10を示す。図2では、第5グランドパターン、ケーブル2等の記載を省略している。
【0029】
コネクタ付きケーブル1を機器に接続する際には、コネクタ付きケーブル1をコネクタハウジング10内にスライドさせて挿入し、コネクタハウジング10の奥側に設けられた第1接触子11aと第1機器側電極4aとを接触させ、コネクタハウジング10の手前側に設けられた第2接触子11bと第2機器側電極4bとを接触させる。第1接触子11aと第1機器側電極4a、第2接触子11bと第2機器側電極4bをそれぞれ接触させることによって、それぞれが電気的に接続される。
【0030】
第1接触子11aは、第1機器側電極4aと接触する位置までパドルカード基板5上をスライドする過程で、第3保護部93を摺動する。第2接触子11bは、第2機器側電極4bと接触する位置までパドルカード基板5上をスライドする過程で、第3保護部93,第1機器側電極4a,第1保護部91の保護パッド91a,91bを摺動する。パドルカード基板5は、第3保護部93,保護パッド91a,91bが設けられていることにより、第1接触子11a,第2接触子11bによって表面に露出した基材53上を摺動されることを抑制し、表面の傷つきや削れを抑制することができる。説明を省略するが、同様に、パドルカード基板5は、第4保護部94,及び第2保護部92により、図示しない他のコネクタハウジング10内の接触子によって表面に露出した基材53上を摺動されることを抑制し、表面の傷つきや削れを抑制する抑制することができる。
【0031】
以下では、比較例1を参照しながら、第1保護部91及び第2保護部92についてさらに説明する。図3は、比較例1に係るパドルカード基板500の一端を示す図である。比較例1のパドルカード基板500では、第1実施形態のパドルカード基板5と比較して、第1保護部910及び第2保護部920がそれぞれ1つの保護パッドから形成されている。その他の構成は比較例1と第1実施形態とで同じである。
【0032】
第1実施形態のパドルカード基板5及び比較例1のパドルカード基板500について、各機器側電極4a,4b,4c,4dに加えられた信号が隣接する他の機器側電極4a,4b,4c,4dに与える影響を検討した。具体的には、第2機器側電極4bに信号を加えたときに、第1機器側電極4aに表れる信号を電磁界解析によりシミュレーションした。すなわち、第2機器側電極4bに信号を加えたときの第1機器側電極4aへのクロストークの影響をシミュレーションした。シミュレーション結果を図4(a),(b)に示す。図4(a)は第1実施形態のパドルカード基板5におけるクロストークの影響をシミュレーションした結果であり、図4(b)は比較例1のパドルカード基板500におけるクロストークの影響をシミュレーションした結果である。
【0033】
図4(a),図4(b)のシミュレーション結果より、比較例1のパドルカード基板500では、20GHz付近、及び40GHz付近の帯域でクロストークのピークが現れている。実施形態1のパドルカード基板5では、クロストークのピークが比較例1よりも低く、かつクロストークの周波数に対する積分値も小さく現れている。よって、実施形態1は、比較例1と比較してクロストークの影響が小さいことが分かる。すわなち、第1実施形態のコネクタ付きケーブル1では、第1保護部91(第2保護部92)を2つ(複数)の部材で構成することにより、クロストークの影響を抑制することができる。
【0034】
第1保護部91における保護パッド91aと保護パッド91bの隙間に樹脂部材を設けてもよい。樹脂部材は、パドルカード基板5の基材53よりも耐摩耗性が高く、摩擦係数が低いことが好ましい。例えば、パドルカード基板5の基材53はFR4(Flame Retardant Type4)からなる。例えば、樹脂部材はテフロン(登録商標)樹脂からなる。保護パッド91aと保護パッド91bの隙間に樹脂部材が設けられることにより、パドルカード基板5は、第1接触子11a,第2接触子11bによって表面に露出した基材53上を摺動されることを抑制することができる。同様に、第2保護部92における保護パッド92aと保護パッド92bの隙間に樹脂部材を設けてもよい。
【0035】
第1グランドパターン81,第2グランドパターン82,第3グランドパターン83は、連なった1つのパターンとして形成されてもよい。
【0036】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態におけるコネクタ3及びコネクタ付きケーブル1は、パドルカード基板5の表面の第1機器側電極4aと第2機器側電極4bとの間、及び第3機器側電極4cと第4機器側電極4dとの間に、金属製の第1保護部91、及び第2保護部92が形成されている。よって、パドルカード基板5を機器に接続する際に、パドルカード基板5の表面に露出する基材53が傷つけられることや削られることを抑制することができる。
【0037】
また、第1保護部91(第2保護部92)は、パドルカード基板5の機器への挿入方向に対して所定間隔を離間した金属製の複数の保護パッド91a,91b(92a,92b)から形成されことにより、第1保護部91及び第2保護部92がそれぞれ1つの保護パッドから形成される場合と比較して、隣接する機器側電極同士のクロストークの影響を抑制することができる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図5を参照して説明する。第1実施形態のコネクタ付きケーブル1と第2実施形態のコネクタ付きケーブルとの差分は、パドルカード基板の一端にあるため、以下では第2実施形態のパドルカード基板5Aの一端について説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係るコネクタ付きケーブルを構成するパドルカード基板5Aを示す図である。第1実施形態に係るパドルカード5について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0039】
第2実施形態に係るパドルカード基板5Aは、第1機器側電極4aと第2機器側電極4bとの間に金属製の保護部は形成されず、代わりに非金属製の第1保護部91Aが形成されている。同様に、パドルカード基板5Aは、パドルカード基板第3機器側電極4cと第4機器側電極4dとの間に金属製の保護部は形成されず、代わりに非金属製の第2保護部92Aが形成されている。第1保護部91A,第2保護部92Aは、例えば樹脂やセラミック等からなる。第1保護部91A,第2保護部92Aは、パドルカード基板5Aの基材53よりも耐摩耗性が高く、摩擦係数が低い材料であることが好ましい。
【0040】
第1実施形態と同様に、第2実施形態のパドルカード基板5Aについて、各機器側電極4a,4b,4c,4dに加えられた信号が隣接する他の機器側電極4a,4b,4c,4dに与える影響を検討した。具体的には、第2機器側電極4bに信号を加えたときに、第1機器側電極4aに表れる信号を電磁界解析によりシミュレーションした。すなわち、第2機器側電極4bに信号を加えたときの第1機器側電極4aへのクロストークの影響をシミュレーションした。シミュレーション結果を図6に示す。
【0041】
図6図4(b)のシミュレーション結果より、比較例1のパドルカード基板500では、20GHz付近、及び40GHz付近の帯域でクロストークのピークが現れている。第2実施形態のパドルカード基板5Aでは、クロストークのピークが比較例1よりも低く、かつクロストークの周波数に対する積分値も小さく現れている。よって、第2実施形態は、比較例1と比較してクロストークの影響が小さいことが分かる。すわなち、第2実施形態のコネクタ付きケーブルでは、第1保護部91(第2保護部92)を非金属製の部材で構成することにより、クロストークの影響を抑制することができる。
【0042】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態におけるコネクタ及びコネクタ付きケーブルは、パドルカード基板5Aの表面の第1機器側電極4aと第2機器側電極4bとの間、及び第3機器側電極4cと第4機器側電極4dとの間には、非金属製の第1保護部91A、及び第2保護部92Aが形成されている。よって、パドルカード基板5Aを機器に接続する際に、パドルカード基板5の表面に露出する基材53が傷つけられることや削られることを抑制することができる。
【0043】
また、第1保護部91A及び第2保護部92Aは、非金属製の部材で構成されることから、隣接する機器側電極同士のクロストークの影響を抑制することができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0045】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、パドルカード基板5,5Aの一方の表面に各機器側電極や保護部等を形成することを説明したが、他方の表面にも同様に機器側電極や保護部等が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…コネクタ付きケーブル、2…ケーブル、3…コネクタ、4a…第1機器側電極、4b…第2機器側電極、4c…第3機器側電極、4d…第4機器側電極、5,5A…パドルカード基板、91…第1保護部、92…第2保護部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7