(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記チューブの内部表面に含まれた金属は、電極集電体に比べて電極活物質との過電圧が小さい金属;または電極活物質と多層相(multiphase)を有する金属;である請求項1に記載の構造体。
上記チューブの自由体積(free volume)に対するリチウム金属の体積比αは、下記式2によって計算され、上記リチウム金属の体積比αは0<α≦1である請求項11に記載の構造体:
[式2]
α=VLi/VF
上記VFはチューブの自由体積で、VLiはリチウム金属の体積であり、
上記VFは下記式3によって計算される:
[式3]
VF=π(Din/2)2L
上記Dinはチューブの内径で、Lはチューブの長さである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をより詳しく説明する。
【0021】
本明細書及び請求範囲で使われた用語や単語は、通常的や時点的な意味で限定して解釈されてはならないし、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0022】
構造体1
本発明は、電極活物質を担持することができる構造体に係り、例えば、上記構造体が負極活物質としてリチウム金属を担持する場合、リチウム金属電池の負極でリチウム金属がデンドライト(dendrite)形態で成長することを防ぐと同時に、上記リチウム金属と電解液が直接的に反応することを防止することができる構造体に関する。
【0023】
以下、図面を参照して本発明をより詳しく説明する。
【0024】
図1a及び
図1bは、本発明の一具現例による構造体の模式図である。
【0025】
図1aを参照すれば、構造体10は両側面が開放されたチューブ11;及びチューブ11の内部表面に形成された金属13;を含んでもよい。チューブ11は、両側面が開放された形態を例示しているが、一側面が開放された形態であってもよい。
【0026】
図2a及び2bはそれぞれ、本発明の一具現例による構造体において、チューブの縦断面及び横断面を示した模式図である。
【0027】
図2a及び
図2bを参照すれば、チューブ11縦断面の縦横比(aspect ratio、a)は1超であってもよい。
【0028】
この時、チューブ11縦断面の縦横比は、下記式1で計算することができる。
[式1]
a=L/D
ex
ここで、Lはチューブ11の長さで、D
exはチューブ11の外径である。
【0029】
例えば、チューブ11の長さLは2μmないし25μm、好ましくは、3μmないし15μm、より好ましくは、4μmないし10μmであってもよい。上記範囲未満であれば、上記式1によって縦横比1以上のチューブを具現し難いことがあって、上記範囲を超えると、充填密度(packing density)が低くて、圧延を行った後も電極の空隙が大きくなって、電池体積当たりエネルギー密度が低くなる問題がありえる。
【0030】
チューブ11の外径D
exは、0.2μmないし2μm、好ましくは、0.3μmないし1.2μm、より好ましくは、0.5μmないし1μmであってもよい。上記範囲未満であれば、構造体10で内部に含まれるリチウム金属14の体積が減少されるので、リチウムデンドライト抑制効果と、電池サイクル寿命が低下されて活物質の比容量と電池の重量当たりエネルギー密度が低くなり、上記範囲を超えると、製造工程の際にチューブ形状を保ちがたいし、電極製造及び圧延工程時にもチューブ形状が崩れることでリチウムデンドライト抑制効果が低下する。
【0031】
チューブ11の実の大きさ、例えば、長さL、外径D
ex及び内径D
inは、SEM(scanning electron microscope)またはTEM(transmission electron microscope)で測定することができる。
【0032】
構造体10は、上述したように、縦横比が1超(a>1)であるチューブ11形状を有し、また、チューブ11は炭素系高分子を含むので、構造体10自体が電気伝導の経路としての機能をすることができる。
【0033】
また、チューブ11は、両側面が開放された円筒状であって、それ自体が電気伝導の経路になりえるし、電解液ウェッティング(wetting)によってイオン伝導性が向上することができる。
【0034】
一方、上記構造体が球(sphere)状の中孔型カプセルであれば、閉鎖された形状によって開放されたチューブ形態に比べて電解液の含浸が難しく、構造体の内部までリチウムイオンを伝達することが難しく、内部に満たされるリチウム金属の体積を調節し難いため、球形の模様によって電極を構成する時、電気伝導性が低下することがある問題がある。
【0035】
チューブ11のシェルは電気伝導性を示すことができるし、リチウムイオン伝導性を共に示すことができる。
【0036】
この時、チューブ11のシェルが炭素を含んでもよく、上記炭素は非晶質炭素であってもよい。
【0037】
また、チューブ11、具体的にはチューブ11のシェルは多孔性であってもよく、この場合は、チューブの外径が大きくなる場合に強度増加のためにシェルの厚みが厚くなるしかないが、この時、シェルが気孔を有する場合、シェルの内部まで電解液が侵透できるようにして電池抵抗減少の効果がある。気孔の大きさは、2nmないし200nmの大きさを有してもよく、チューブの強度を保つために気孔度は0%ないし50%の値を維持した方がよい。
【0038】
一方、金属13はチューブ11の内部表面に形成された形態で含まれてもよく、構造体10、すなわち、チューブ11と金属13の全体重量を基準にして金属13は0.1ないし25重量%、好ましくは、0.1ないし15重量%、より好ましくは、0.5ないし10重量%で含まれてもよい。
【0039】
金属13の重量が上記範囲未満であれば、電極活物質が結合できるサイト(site)が十分でないこともあり、上記範囲を超えると、金属13の量が過度になって、電極活物質が満たされる量が相対的に減るようになるので、電極活物質の比容量が減少することがある。
【0040】
金属13は、粒子の形態でチューブ11の内部表面に形成されてもよく、金属13の粒径は1ないし50nm、好ましくは、5ないし40nm、より好ましくは、10ないし30nmであってもよい。上記範囲未満であれば、電極活物質が結合することができる面積が十分でないため、電極活物質の円滑な成長を誘導することができないし、上記範囲を超えると、金属13が形成される面積が大きくなって電極活物質の比容量が減少することがある。
【0041】
本発明において、チューブ11は電極活物質担持用であってもよい。
【0042】
電極活物質は、通常使用される正極活物質または負極活物質であってもよい。
【0043】
上記正極活物質は、リチウムのインターカレーションが可能な構造を有するリチウムと遷移金属からなる酸化物であってもよく、例えば、下記化学式1で表されてもよい。
[化1]
Li
aNi
1−x−yCo
xMn
yM
bO
2
上記化学式1において、a=1、0.1≦x≦0.3、0.15≦y≦0.25、0≦b≦0.05であり、Mは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、Zn及びこれらの組み合わせからなる群から選択される遷移金属またはランタン族元素から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0044】
上記負極活物質は、代表的な例として、黒鉛系炭素、難黒鉛化炭素などの非晶質系炭素、晶質系炭素などを挙げることができるし、その他LixFe
2O
3(0≦x≦1)、LixWO
2(0≦x≦1)、Sn
xMe
1−xMe’
yO
z(Me:Mn、Fe,Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;珪素系合金;スズ系合金;SnO、SnO
2、PbO、PbO
2、Pb
2O
3、Pb
3O
4、Sb
2O
3、Sb
2O
4、Sb
2O
5、GeO、GeO
2、Bi
2O
3、Bi
2O
4、Bi
2O
5などの金属酸化物;ポリアセンチレンなどの導電性高分子;Li−Co−Ni系材料などを使用してもよいが、これらだけで限定されることではなく、通常使用する負極活物質であれば制限されずに使用することができる。金属13は、電極集電体に比べて電極活物質との過電圧が小さい金属;または電極活物質と多層相(multiphase)を有する金属;であってもよい。
【0045】
例えば、電極活物質がリチウム金属である場合、リチウム金属を形成する時、Cu(集電体)に比べて過電圧が小さい金属は、リチウム金属と反応する時、界面エネルギーが低い金属または金属表面でのLiイオンの拡散エネルギー障壁の大きさがLiと同等、またはそれ以下の金属であって、Au、Zn、Mg、Ag、Al、Pt、In、Co、Ni、Mn及びSiからなる群から選択される1種以上であってもよく、上記リチウム金属と多層相(multiphase)を有する金属は、リチウム金属と反応することができるサイト(site)が複数個の金属としてCaであってもよい。
【0046】
また、チューブ11は、半導体元素及び上記半導体元素の酸化物を含んでもよい。
【0047】
半導体性元素の酸化物は、炭素を除いた周期表14族半導体性元素の酸化物を含んでもよい。上記半導体性元素の酸化物はSi、Ge、またはSn元素の酸化物を含んでもよい。
【0048】
上記半導体性元素の酸化物SiOx(ここで、0.3≦x≦1.2)、GeOy(ここで、0.2≦y≦1.1)、SnOz(ここで、0.3≦z≦1.2)、またはこれらの組み合わせを含んでもよく、例えば、上記半導体性元素の酸化物は、SiOx(ここで、0.3≦x≦1.2)またはGeOy(ここで、0.2≦y≦1.1)であってもよい。
【0049】
構造体2
本発明はまた、電極活物質を担持して電池の安全性を向上させることができる構造体に係り、例えば、上記構造体が負極活物質としてリチウム金属を担持する場合、リチウム金属電池の負極でリチウム金属がデンドライト(dendrite)形態で成長することを防止すると同時に、上記リチウム金属と電解液が直接的に反応することを防止することができる。
【0050】
本発明は、一側面または両側面が開放されたチューブ11;チューブ11の内部表面に含まれた金属13;及び金属13上に形成されたリチウム金属14;を含む構造体10に関する(
図1b)。
【0051】
リチウム金属電池の場合、リチウムデンドライトを抑制しても高い反応性によって電解液との副反応が発生するので、サイクル効率が良くない。よって、500サイクル以上の長寿を有する電池を開発するにあたり、チューブ11内部にリチウム金属14を含む構造体10をリチウム金属電池の負極に適用する場合、リチウム金属14を含まない場合よりもっと有利になることがある。
【0052】
チューブの縦横比、電気伝導性とリチウムイオン伝導性を表すチューブの物性、シェルとコアの材質、組成及び金属に関する詳細な説明は上述したとおりである。
【0053】
金属13とリチウム金属14の間には、金属13とリチウム金属14の合金が形成されたものであってもよく、上記合金はLi
xAuであってもよく、この時、xは0<x≦3.75の実数であってもよい。
【0054】
一方、上述したような金属13が含まれたチューブ11内部の中孔12は、リチウム金属14で満たされてもよい。
【0055】
リチウム金属14は、金属13に結合して成長しながら中孔12の内部を満たすことができ、中孔12内部に満たされるリチウム金属14の体積は、チューブ11の自由体積(free volume)に対するリチウム金属の体積比αによって、下記式2で計算されることができるし、0<α≦1である。
[式2]
α=V
Li/V
F
上記式2において、V
Fはチューブの自由体積で、V
Liはリチウム金属の体積であり、
上記V
Fは下記式3で計算される:
[式3]
V
F=π(D
in/2)
2L
上記式3において、D
inはチューブの内径で、Lはチューブの長さである。
【0056】
0<α≦1の範囲内で、α値が増加するほど構造体10に含まれたリチウム金属14の体積が増加するようになるので、電池のサイクル寿命が向上することができる。
【0057】
例えば、チューブ11の長さLは、2μmないし25μm、好ましくは、3μmないし15μm、より好ましくは、4μmないし10μmであってもよい。上記範囲未満であれば、上記式1によって縦横比1以上のチューブを具現し難いことがあって、上記範囲を超えると充填密度(packing density)が低くて、圧延した後も電極の空隙が大きくなって電池体積当たりエネルギー密度が低くなる問題がありえる。
【0058】
チューブ11の内径D
inは、0.1μmないし1.8μm、好ましくは、0.2μmないし1.1μm、より好ましくは、0.4μmないし0.9μmであってもよい。上記範囲未満であれば、構造体10で内部に含まれるリチウム金属14の体積が減少されるので、リチウムデンドライト抑制効果と電池サイクル寿命が低下し、活物質の比容量と電池の重量当たりエネルギー密度が低くなり、上記範囲を超えると、製造工程時にチューブ形状を保ちがたく、電極製造及び圧延工程時にもチューブ形状が崩れることによってリチウムデンドライト抑制効果が低下することがある。
【0059】
構造体の製造方法
本発明は、(S1)金属前駆体溶液及び炭素系高分子溶液を電気放射してチューブ前駆体を形成する段階;
(S2)上記チューブ前駆体を第1熱処理する段階;及び
(S3)上記第1熱処理されたチューブ前駆体を第2熱処理する段階;を含む構造体の製造方法に係り、(S4)上記(S3)段階で得たチューブの内部にリチウム金属を形成させる段階;をさらに含んでもよい。
【0060】
本発明による構造体の製造方法において、上記第1熱処理及び第2熱処理温度は全て相違し、第1熱処理温度に比べて第2熱処理温度が相対的に高いことがある。
【0061】
以下、本発明による構造体の製造方法を各段階別に詳しく説明する。
【0062】
(S1)段階では、金属前駆体溶液及び炭素系高分子溶液を電気放射してチューブ前駆体を形成することができる。
【0063】
電気放射は、内側及び外側ノズルを含む二重ノズルを利用する電気放射法によって行われ、高圧電気放射器を利用して、SUS(steel use stainless)をコレクターとして使用し、10ないし20kVの電圧範囲と、5ないし20cmのTCD(tip to collector distance)範囲で行われてもよい。
【0064】
上記電気放射は、当業界で通常使われてもよい電気放射方法を利用することができる。例えば、
図3に図示されたようなデュアル−ノズルシステム(Adv. Mater.、2010、22、496)を利用してもよい。
【0065】
上記金属前駆体溶液及び炭素系高分子溶液をそれぞれ上記内側及び外側ノズルに注入して電気放射し、コア−シェル形状のチューブ前駆体を形成することができる。
【0066】
金属前駆体溶液は、金属前駆体及び高分子を溶媒に溶解させて製造されてもよい。
【0067】
この時、上記金属前駆体溶液は、金属前駆体0.1ないし5重量%、高分子1ないし20重量%、及び溶媒75ないし95重量%を含んでもよい。
【0068】
上記金属前駆体は、金属を含むアルコキシド、アセチルアセテート、ナイトレート、シュウ酸塩、ハロゲン化物及びシアン化物からなる群から選択された1種以上であってもよく、具体的に、上記金属はAu、Zn、Mg、Ag、Al、Pt、In、Co、Ni、Mn、Si及びCaからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0069】
また、上記金属がAuの場合、Auの前駆体は、HAuCl
4、HAuCl
4・3H
2O、HAuCl
4・4H
2O、AuCl
3及びAuClからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0070】
上記金属前駆体が0.1重量%未満であれば、リチウム金属の成長のためのシード金属の役割をする金属を構造体の内部に十分形成することができないため、リチウム金属を望む程チューブ内部に満たすことができないし、5重量%超であれば、構造体全体重量に対比して形成される金属の量が多くなって、構造体内部に形成されるリチウム金属の量が相対的に減少することがあるので、電池のサイクル寿命特性が低下されることがある。
【0071】
また、上記高分子は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアセテート(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選択される1種以上であってもよいが、通常的に炭素系高分子の炭化温度で除去できる高分子を広範囲で使用することができる。
【0072】
上記高分子が1重量%未満であれば、電気放射によるチューブ前駆体が形成し難いことがあって、20重量%超であれば、第1熱処理の際に高分子が十分に除去されずに残って電池性能を低下させることがある。
【0073】
上記溶媒は、NMP(Methylpyrrolidone)、DMF(Dimethylformamide)、DMAc(dimethylacetamide)、DMSO(dimethyl sulfoxide)及びTHF(Tetrahydrofuran)からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0074】
上記溶媒が75重量%未満であれば、金属前駆体溶液を製造し難いことがあって、95重量%超であれば、金属前駆体と高分子の量が相対的に減少して、構造体の内部に望む程の金属を形成し難いことがある。
【0075】
炭素系高分子溶液は、炭素系高分子を溶媒に溶解させて製造されることがある。
【0076】
上記炭素系高分子は、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile:PAN)、ポリアニリン(Polyaniline:PANI)、ポリピロール(Polypyrrole:PPY)、ポリイミド(Polyimide:PI)、ポリベンズイミダゾール(Polybenzimidazole:PBI)、ポリピロリドン(Polypyrrolidone:Ppy)、ポリアミド(Polyamide:PA)、ポリアミドイミド(Polyamide−imide:PAI)、ポリアラミド(Polyaramide)、メラミン(Melamine)、メラミン−ホルムアルデヒド(Melamineformaldehyde)及びフッ素雲母(Fluorine mica)からなる群から選択される1種以上であってもよい。一方、チューブに含まれた炭素の密度(Carbon density)は2.0ないし2.5g/cm
3であってもよい。
【0077】
上記炭素系高分子溶液は、上記炭素系高分子1ないし20重量%を上記溶媒80ないし99重量%に溶解させて製造されてもよい。
【0078】
上記炭素系高分子が1重量%未満であれば、チューブを形成することができるほど炭素系高分子の重量が十分ではないため、電気放射後にチューブが形成されないこともあって、20重量%超であれば、炭素系高分子溶液の濃度が過度に高くて電気放射が円滑に行われないこともある。
【0079】
上記溶媒が80重量%未満であれば、炭素系高分子溶液の濃度が過度に高くて電気放射が円滑に行われないこともあって、99重量%超であれば、電気放射後にチューブ形態が形成されないこともある。
【0080】
上記金属前駆体溶液及び炭素系高分子溶液を製造する時使用される溶媒は、同一または相違してもよい。
【0081】
(S2)段階では、上記チューブ前駆体を加熱して第1熱処理し、上記チューブ前駆体のコアに含まれた高分子を取り除くことができる。
【0082】
この時、第1熱処理時の加熱温度は、200℃ないし700℃であってもよく、昇温させながら熱処理してもよい。上記第1熱処理時の昇温過程において、上記チューブ前駆体のコアに含まれた高分子が除去され、金属前駆体が還元されて金属が形成されてもよい。
【0083】
上記第1熱処理温度が200℃未満であれば、上記チューブ前駆体のコアに含まれた高分子が除去されないし、同時に金属前駆体が還元されないこともあり、700℃超であれば、チューブの内部表面だけでなく、チューブの外部表面上にも金属が形成される問題点がある。
【0084】
上記熱処理を通じる還元反応を介してチューブの内部表面に金属が形成され、金属は粒子形態であって、粒子の大きさは1ないし50nmのナノサイズであってもよい。
【0085】
一方、上記第1熱処理は不活性雰囲気下で行われてもよく、具体的に、上記不活性雰囲気は、Ar、N
2、He、Ne及びNeからなる群から選択される1種以上の不活性ガスによって形成されてもよい。
【0086】
(S3)段階では、上記第1熱処理されたチューブ前駆体を加熱して第2熱処理し、上記チューブ前駆体のシェルを炭化させ、炭素を含むチューブ構造体を形成させることができる。
【0087】
この時、上記第2熱処理時の加熱温度は、700℃超及び1000℃以下であってもよく、上記第2熱処理温度が700℃以下であれば、炭化が完全に行われないことがあり、1000℃超であれば、高温熱処理によって形成されるチューブ構造体の物性が低下される。
【0088】
特に、第2熱処理時に、加熱温度700〜1000℃の範囲内で、800℃前後の加熱温度でチューブシェルに大きさが制御された気孔を形成することができる。例えば、上記第2熱処理時に、加熱温度範囲内で800℃を超えて高くなるほど気孔が小くなり、800℃以下で加熱温度が低いほど気孔が大きくなるので、上記加熱温度の範囲内で温度を調節して、気孔の大きさを制御することができる。
【0089】
(S4)段階では、上記チューブ構造体の内部にリチウム金属を形成させることができる。
【0090】
上記チューブ構造体の内部にリチウム金属を形成させる方法は、電解めっき、非電解めっき及び蒸着からなる群から選択される1種の方法であってもよいが、これに制限されないし、チューブ構造体の内部にリチウム金属を形成させて満たすことができる方法を広範囲に使用することができる。
【0091】
上記リチウム金属を形成するためのリチウムソースは、リチウム塩、リチウムインゴット及びリチウム金属酸化物からなる群から選択された1種以上であってもよいが、リチウムイオンを提供できる化合物であれば、これに制限されない。
【0092】
上記リチウム塩は、LiPF
6、LiClO
4、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAl0
4、LiAlCl
4、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9SO
3、LiN(C
2F
5SO
3)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(CaF
2a+1SO
2)(CbF
2b+1SO
2)(ただし、a及びbは自然数、好ましくは、1≦a≦20で、1≦b≦20である)、LiCl、LiI及びLiB(C
2O
4)
2からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0093】
上記リチウム金属酸化物は、LiMO
2(M=Co、Ni、Mn)、Li
1+xMn
2−xO
4+(0≦x≦0.3)及びLiNi
1−xM
xO
2(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaで、0.01≦x≦0.3)からなる群から選択される1種以上であってもよい。例えば、上記リチウム金属酸化物は、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
2O
4、Li(Ni
aMn
bCo
c)O
2(a+b+c=1)、LiNi
0.5Mn
1.5O
4またはLiNi
0.5Mn
0.5O
2であってもよい。
【0094】
このような方法で製造されたリチウム金属が担持された構造体は、リチウム金属電池の負極活物質で適用され、従来リチウム金属電池の慢性的な問題点であるリチウム金属デンドライト形成と、それに伴う界面不安定問題を解決することができる。
【0095】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を示すが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者において自明なことであり、このような変更及び修正が添付された特許請求範囲に属することも当たり前である。
【0096】
実施例1:構造体製造
1−1.電気放射によるチューブ前駆体形成
金属前駆体であるHAuCl
4 0.5重量%、高分子であるPMMA 11重量%を溶媒88.5重量%に溶解させて金属前駆体溶液を製造した。この時、溶媒はジメチルホルムアミド(DMF)とアセトンを85:15の重量比で混合した混合溶媒を使用した。
【0097】
炭素系高分子であるPAN 13重量%を溶媒であるジメチルホルムアミド(DMF)87重量%に溶解させて炭素系高分子溶液を製造した。
【0098】
内部ノズル及び外部ノズルを含むデュアル−ノズルシステム(Adv. Mater.、2010、22、496)の内部ノズル及び外部ノズルにそれぞれ上記金属前駆体溶液及び炭素系高分子溶液を投入し、電気放射してチューブ前駆体を形成した。
【0099】
電気放射時の条件は下記のように設定して実施した。
【0100】
−相対湿度(relative humidity):15%
−電気放射パワー:14.5kV
−放射溶液アウトプット(flow rate)
:Core=0.9mL/h(1.3/2raito)、Shell=1.4mL/h
1−2.第1熱処理及び還元
280℃のファーネスで上記チューブ前駆体を熱処理してチューブ前駆体のコアに含まれたPMMAを除去し、昇温してHAuCl
4を還元させてチューブ前駆体シェルの内部表面にAu粒子を形成させた。
【0101】
1−3.第2熱処理及び炭化
その後、850℃で上記チューブ前駆体のPANを炭化させ、構造体を製造した。
【0102】
実施例2:リチウム金属が形成された構造体の製造
上記実施例1のAuが内部表面に形成されたチューブ構造体の内部に電解めっきを通してリチウム金属を形成した。この時、リチウムソースとしてはリチウム塩であるLiClO
4を使用した。
【0103】
この時、電解めっきは下記のような方法で製造されたリチウム半電池に1mA/cm
2の電流密度で電流を流して実施した。
【0104】
負極製造
実施例1で製造された構造体、導電材であるSuper−P carbon及びバインダーであるPVdFを95:2.5:2.5の重量比で混合した後、これをCu集電体に塗布及び乾燥して負極を製造した。
【0105】
電解液
電解液としてDME(1,2−dimethoxyethane)とDOL(1,3−dioxolane)の混合溶媒(体積比1:1)に1M LiTFSI(lithiumbis−trifluoromethanesulfonimide)が溶解された電解液と1%LiNO
3電解液を混合して使用した。
【0106】
分離膜
分離膜は、ポリエチレン分離膜を使用した。
【0107】
上記製造された負極、ポリエチレン分離膜及び電解液を使用してリチウム半電池を製造した。
【0108】
比較例1
Bare Cu foilを準備した。
【0109】
比較例2
実施例1と同様の方法で、チューブの内部表面に金属を含まないチューブ形状の構造体を製造した。
【0110】
製造例:リチウム半電池の製造
負極製造
実施例1及び比較例2でそれぞれ製造された構造体、導電材であるSuper−P carbon及びバインダーであるPVdFを95:2.5:2.5の重量比で混合した後、これをCu集電体に塗布及び乾燥して負極を製造した。
【0111】
電解液
電解液としてDME(1,2−dimethoxyethane)とDOL(1,3−dioxolane)の混合溶媒(体積比1:1)に1M LiTFSI(lithiumbis−trifluoromethanesulfonimide)が溶解された電解液と1%のLiNO
3電解液を混合して使用した。
【0112】
分離膜
分離膜は、ポリエチレン分離膜を使用した。
【0113】
上記製造された負極、ポリエチレン分離膜及び電解液を使ってリチウム半電池を製造した。
【0114】
実験例1:充放電特性実験
上記製造例において、実施例1及び比較例2の構造体をそれぞれ利用して製造されたリチウム半電池と、比較例1のCu集電体に対して充放電を実施した。充放電テストは、1mA/cm
2の電流密度で放電容量1mAh/cm
2、充電電圧1V cut−off条件で実施した。
【0115】
図4aないし
図4cは、本発明の実施例及び比較例の構造体を利用して製造されたリチウム半電池に対する充放電実験結果を示したグラフである。
【0116】
図4aないし
図4cを参照すれば、実施例1で製造された構造体を利用して製造されたリチウム半電池は、300サイクルまで容量減少が見られないことが分かる。
【0117】
実験例2:充放電による構造体の形態変化観察
実験例1のリチウム半電池で充放電特性実験前(Pristine)と充放電時、実施例1のチューブ型構造体が示す形態変化を観察した。
【0118】
図5は、実施例1の構造体を利用して製造されたリチウム半電池の充放電前及び後の形態変化を観察したTEM(Transmission electron microscopy)の写真である(Pristine:充放電前、20
th D:20回目の放電後、20
th C:20回目の充電後)。
【0119】
図5を参照すれば、充放電の前にはチューブ型構造体のチューブ内面に粒径15ないし20nmのAuが均一に分散されていることが分かる。また、充放電時にリチウム金属がチューブの内部でAuと先に結合してLi
xAu形態の合金が形成されることが分かるし、特に、20回目の充放電後には、リチウム金属がチューブ内のみに形成された後で抜け出ることが分かる。
【0120】
実験例3:リチウム金属の成長形態観察
実験例1の充放電特性実験中、20回目の充電後、リチウム金属の成長形態を観察した。
【0121】
図6は、実施例及び比較例の構造体を利用して製造されたリチウム半電池の充電時のリチウム金属の成長形態を観察したSEM(scanning electron microscope)写真である。
【0122】
図6を参照すれば、実施例1で製造された構造体を利用して製造されたリチウム半電池の場合、20回目の充電後、リチウム金属デンドライトの形成が比較例に比べて減少することが分かる。
【0123】
以上、本発明は、限定された実施例と図面によって説明されたが、本発明はこれに限定されないし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって、本発明の技術思想と下記の特許請求範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは勿論である。