特許第6765764号(P6765764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765764
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】かき玉子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20200928BHJP
【FI】
   A23L15/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-54234(P2017-54234)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-153154(P2018-153154A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好亮
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 次朗
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−089073(JP,A)
【文献】 特開平03−157401(JP,A)
【文献】 特開昭60−141230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱水中にノズル注出口を沈めた状態で前記ノズル注出口から卵液を前記熱水中に注出することで、前記卵液を薄膜状に加熱凝固させてかき玉子を製造することを特徴とするかき玉子の製造方法。
【請求項2】
前記ノズル注出口の形状が略長方形または楕円形であり、短辺または短径が0.3〜5.0mmであることを特徴とする請求項1記載のかき玉子の製造方法。
【請求項3】
前記卵液の熱水中への注出量が、前記ノズル注出口の面積当たり3g/mm/min〜50g/mm/minであることを特徴とする請求項1または2何れか一項記載のかき玉子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3何れか一項記載の製造方法により製造されたかき玉子を凍結することを特徴とする冷凍かき玉子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3何れか1項記載の製造方法により製造されたかき玉子を凍結した後、減圧下で凍結乾燥することを特徴とする凍結乾燥かき玉子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かき玉子の製造方法並びに該製造方法により製造されたかき玉子を用いた冷凍かき玉子の製造方法及び凍結乾燥かき玉子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かき玉子は、味噌汁やスープ(ラーメン、うどん及び春雨等のめん類のスープを含む)の具材として用いられている。一般的に家庭においては、熱したスープに溶いた液卵を注ぎ入れることで容易に大きな薄膜状のかき玉を作製することができる。
【0003】
かき玉子の工業的な製造装置として、特許文献1には、掻き玉の大きさを適宜決定することができる液卵投入装置が記載されている。しかしながら、この装置を用いても掻き玉の大きさについては、未だ満足するものが得られなかった。
【0004】
また、即席スープや即席麺用の具材として、かき玉子を乾燥した凍結乾燥かき玉子が知られている。また、凍結乾燥かき玉子の製造方法としては、一般的に粘性のある熱水に卵液を投入攪拌して加熱凝固させ、かき玉子を作製し、これを凍結乾燥する方法が採用されている(例えば、特許文献2及び特許文献3)。これらの方法は、保形性に優れ、薄膜状のかき玉が製造できる点で優れた方法であるが、かき玉子の大きさについては、未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3367048号公報
【特許文献2】特公平3−13855号公報
【特許文献3】特許第4058229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、薄膜状で大きな形状を有するかき玉子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、料理人が調理したような薄膜状で大きな形状のかき玉子を工業的に製造する方法を鋭意研究した。その結果、従来行われていた、卵液を熱水の外部から投入する方法ではなく、卵液を直接熱水中に注ぎ出すことにより、従来の方法と比較して薄膜状で大きな形状を有するかき玉子を安定的に製造できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、熱水中にノズル注出口を沈めた状態で前記ノズル注出口から卵液を前記熱水中に注出することで、前記卵液を薄膜状に加熱凝固させてかき玉子を製造することを特徴とするかき玉子の製造方法である。
【0009】
また、本発明に係るかき玉子の製造方法おいて使用する卵液を注出させるためのノズルのノズル注出口の形状は、略長方形または楕円形が好ましく、短辺または短径が0.3〜5mmであることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るかき玉子の製造方法における卵液の熱水中への注出量は、ノズル注出口の面積当たり3g/mm/min〜50g/mm/minであることが好ましい。
【0011】
本発明に係るかき玉子の製造方法により製造したかき玉子は、凍結して冷凍かき玉子とすることもでき、凍結した後、減圧下で凍結乾燥することにより凍結乾燥かき玉子とすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、薄膜状で大きな形状を有するかき玉子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るかき玉子の製造方法の一実施形態を示した説明図である。
図2】本発明に係るかき玉子の製造方法に使用するノズルの一実施形態を示した図である。
図3】本発明に係るかき玉子の製造方法に使用するノズルのノズル注出口の形状を 例を示した図である。
【符号の説明】
【0014】
1 かき玉子製造タンク
2 熱水
3 卵液タンク
4 卵液
5 送液ポンプ
6 送液ホース
7 ノズル
8 ノズル基部
9 ノズル注出部
10 ノズル注出口
11 短辺または短径
12 長辺または長径
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0016】
本発明に使用する卵液は、通常のかき玉子の製造に使用する原料を使用することができる。具体的に例を挙げると、液卵の他に、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米粉澱粉及び豆澱粉などの各種澱粉、並びにこれら澱粉をα化、架橋化、アセチル化、エーテル化、酸化及びこれら加工を組み合わせた加工等を施した加工澱粉、デキストリン、キサンタンガム、グアガム、タマリンドシードガム、ローストビーンガム、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等の増粘多糖類、食塩、砂糖、乳糖、果糖、麦芽糖、トレハロース、水あめ及び還元水あめ等の糖類、醤油、だし汁、グルタミン酸ナトリウム、各種アミノ酸、核酸及び蛋白加水分解物等のうま味調味料、色素、酸化防止剤、水等を使用することができる。これらの原料を攪拌してかき玉子製造用の卵液とする。
【0017】
本発明に使用する熱水は、水のみからでも、デキストリンや澱粉、加工澱粉、増粘多糖類等を添加した水溶液からでも、更には、味付けしたスープからなってもよい。熱水に粘度がある方が薄膜状に卵液が凝固しやすく、形状が安定しやすいため、熱水に粘度がある方が好ましい。熱水に粘度をつける場合は、粘度については、0.05〜1.0pa/sとなるように調整することが好ましい。水のみからなる熱水を本発明に使用する場合は、卵液が加熱凝固の際に分散しにくいように通常よりも卵液に粘度をもたせる方が良い。尚、粘度の測定はハンディータイプの粘度計で測定すればよく、例えば、東機産業社製TVC−5のローター3番で測定すればよい。
【0018】
次いで、かき玉子を製造する。図1は、本発明の一実施形態を示した説明図であるが、図1で示すようにかき玉子製造タンク1に熱水2を入れたところに、ノズル7のノズル注出部9を熱水2中に沈めた状態で、作製した卵液4を入れた卵液タンク3から送液ポンプ5を用いて送液ホース6を通してノズル7から卵液4を直接熱水2中に注出することでかき玉子を製造する。
【0019】
このとき、熱水2の温度は、特に限定はないが、卵液4がノズル7から注出される際に早く固まるように85℃以上、好ましくは90℃以上の温度であることが好ましい。卵液4が注出されることにより熱水2の温度が低下するため、熱水2の温度が一定となるように、かき玉子製造タンク1を加温調整することが好ましい。また、熱水2の温度が一定になるように攪拌機を用いて熱水2を攪拌してもよい。このとき、攪拌を強くし過ぎるとかき玉子が細かくなるため、できるだけ緩やかに攪拌することが好ましい。
【0020】
卵液4の温度が低すぎるとノズル7から注出された卵液4の固まりが遅く、形状が固定されにくい。卵液4の温度が高すぎると卵液4を送液中に凝固してしまうため、卵液4をうまく注出できない。したがって、作製した卵液4は、35〜55℃に加温しておくことが好ましく、卵液タンク3や送液ホース6を加温することで温度調整することが好ましい。
【0021】
卵液4を注出するノズル7は、図2で示すようにノズル基部8とノズル注出口10を有するノズル注出部9からなり、卵液4は、図1で示すようにノズル7のノズル注出口10を有するノズル注出部9が熱水2中に沈んだ状態でノズル注出口10から熱水2中へ直接注出される。ノズル注出口10が熱水2の外部にある場合は、卵液4が熱水2に投入されるときの衝撃により、熱水2の水面が乱れるため形状が不安定となり、薄膜状で大きな形状を有するかき玉子を作ることが難しくなる。上述したようにノズル注出口10を熱水2内部に沈めた状態で卵液4を注出することで、できあがるかき玉子の形状が安定し、薄膜状で大きな形状を有するかき玉子を安定的に製造することできる。
【0022】
ノズル7の形状は、特に限定しないが、図2で示すようにノズル基部8からノズル注出部9に向けて横幅が広がっており、縦幅が細くなるような幅広先細形状が好ましい。幅広にすることでノズル注出口10の形状よりも幅広く卵液4を注出することができ、幅広のかき玉子を製造することができる。また、先細にすることで、かき玉子の厚みを薄くすることができ、さらに注出する卵液4の速度を速めることができる。
【0023】
ノズル7のノズル注出口10の形状は特に限定はないが、図3(a)、(b)で示すように略長方形または楕円形であることが好ましい。略長方形とは、図3の(c)、(d)で示すように必ずしも4つの角が直角である必要はなく、角が丸まった形状でもよいことを意味する。また、図3(e)で示すようにノズル7に複数個のノズル注出口10が存在してもよい。
【0024】
また、略長方形または楕円形の形状としては、短辺または短径11の長さが0.3〜5.0mm程度が好ましい。5.0mmよりも大きくなると、できるかき玉子の厚みが肉厚なものとなる。逆に0.3mm未満となるとかき玉子の厚みが薄すぎて破れたり千切れたりして形状が安定しにくい。より好ましくは、0.5mm〜2.0mmが好ましい。
【0025】
また、長辺または長径12の長さについては、特に限定はないが、略長方形または楕円形が幅広形状であることが好ましく、短辺または短径11の長さに対して2倍以上であることが好ましい。幅広形状とすることで幅広い形状のかき玉子が製造することができる。具体的には、3mm以上、より好ましくは6mm以上、さらに好ましくは10mm以上が好ましい。長辺または長径12の長さは、長くても特に問題はなくかき玉子は製造でき最大値については特に限定しないが、安定的に卵液を供給するには、100mm以下、好ましくは40mm以下が好ましい。求めるかき玉子の大きさに合わせて適宜設定すればよい。
【0026】
卵液4を注出する速度は、早すぎると卵液4の凝固が安定せず、かき玉子が破れたり千切れたりして、長くつながった形状のかき玉子が得られにくい。遅すぎると卵液4がノズル7内で凝固してしまい安定した形状のかき玉子を製造することが難しい。したがって、好ましい卵液の注出量の範囲としては、ノズル注出口の面積当たり、3g/mm/min〜50g/mm/min、より好ましくは5g/mm/min〜30g/mm/minの範囲が好ましい。
【0027】
また、卵液4は、ノズル7が定位置に固定された状態で熱水2中に注出されてもよく、ノズル7が移動しながら熱水2中に注出されてもよい。
【0028】
このようにして作製したかき玉子は、熱水が粘度や調味がなされている場合は、熱水ごとそのまま使用してもよく、金網等でかき玉子を回収してからスープ等に添加して使用することができる。
【0029】
また、作製したかき玉子は、凍結用の容器に入れて凍結して冷凍かき玉子としてもよく、該冷凍かき玉子を鍋や電子レンジ等で解凍して使用することができる。凍結のための手段は、従来技術を適用することができる。例えば、エアブラスト式のトンネルフリーザー、スパイラルフリーザー、ワゴンフリーザーや急速凍結庫、ブライン式のフレキシブルフリーザー等が適用できる。例えば、約−30℃のプレハブ式急速凍結庫を利用して急速に行うことができる。
【0030】
また、作製したかき玉子は、凍結用のトレーに充填し、凍結し、減圧下で凍結乾燥することで凍結乾燥かき玉子を製造することができる。
【0031】
冷凍かき玉子と同様に凍結のための手段は、従来技術を適用することができる。凍結方法は特に限定しないが、かき玉子の品温が−18℃以下となるようにしっかりと凍結する。また、−1〜−5℃の最大氷結晶生成帯を30分以内に通過するように凍結する方が、凍結乾燥かき玉子をお湯等で復元した際のつるみがよく好ましい。
【0032】
次いで、凍結したかき玉子を真空乾燥機を用いて減圧下で凍結乾燥する。凍結乾燥条件は特に限定されず、凍結したかき玉子が解凍しない程度の真空度、棚加熱温度で乾燥すればよい。好ましい範囲としては真空度が1.5torr以下、棚加熱温度が80℃以下、乾燥後の水分としては1〜5重量%となるように乾燥すればよい。
【0033】
以上のように、ノズルの注出口を熱水中に沈めて卵液を直接熱水内に注出することにより、卵液を加熱凝固することで、従来の熱水の外部から卵液を投入する方法に比べ薄膜状で大きな形状を有するかき玉子を製造することができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【0035】
<実験1>ノズル注出口の形状についての検討
(実施例1−1)
殺菌済みの液卵(全卵)2.7Kgと、キサンタンガム10g、デキストリン20g、アセチル化タピオカ澱粉20g、カロチン色素5gを水245gに溶解、分散させた水溶液300gと、を攪拌機で混ぜ合わせて3Kgの卵液を作製した。
【0036】
次いで、酸化馬鈴薯澱粉0.6Kg、生馬鈴薯澱粉1.2Kg、水28.2Kgに加熱溶解した熱水30Kgをかき玉子製造用タンクに入れ、90℃以上となるように加熱調整した。この時の熱水の粘度は、0.9Pa・Sであった。
【0037】
ついで、作製した卵液を卵液タンクに入れて、50℃に加温し、送液ポンプを用いて送液ホースの先端に取り付けた図2記載のようなノズルでノズル注出口の形状が1mm x 10mmの長方形形状のものから卵液を熱水の内部にノズル注出口が沈むような状態で100g/minとなるように注出した(10g/mm/min)。
【0038】
注出した卵液が熱凝固し、かき玉子が出来上がったら、熱水の加熱調製を止め、金網でかき玉子をすくい上げ、かき玉子の大きさ、薄さの外観を確認した。また、凍結用のトレー(縦3cm,横4cm,高さ2cm)が一杯に充填されるようにすくい上げたかき玉子を充填し、粗熱が取れたところで−30℃のプレハブ式急速凍結庫にて一晩凍結し冷凍かき玉子を製造した。
【0039】
さらに、凍結した冷凍かき玉子を真空凍結乾燥機(東洋技研株式会社製TFD10LF4)にて0.1torr以下で、棚温が60℃、品温が58℃になるまで乾燥し、凍結乾燥かき玉子とした。
【0040】
(実施例1−2)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を0.3mm x 10mmとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm/minとなるように調整した。
【0041】
(実施例1−3)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を0.5mm x 10mmとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm/minとなるように調整した。
【0042】
(実施例1−4)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を2mm x 10mmとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm/minとなるように調整した。
【0043】
(実施例1−5)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を4mm x 10mmとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm/minとなるように調整した。
【0044】
(実施例1−6)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を5mm x 10mmとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm/minとなるように調整した。
【0045】
(実施例1−7)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を短径1mm x 長径10mmの楕円形状とする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm/minとなるように調整した。
【0046】
(実施例1−8)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を短径1mm x 長径6mmの楕円形状とする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm/minとなるように調整した。
【0047】
(実施例1−9)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を短径1mm x 長径20mmの楕円形状とする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm/minとなるように調整した。
【0048】
(実施例1−10)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を短径1mm x 長径40mmの楕円形状とする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm/minとなるように調整した。
【0049】
(比較例1−1)
実施例1−1の方法に従って、卵液及び熱水を作製し、特許文献1に記載されたような5mm径の円形を多数有するノズルを用い、ノズルを熱水上に設けて卵液を10g/mm/minとなるように熱水に滴下投入することでかき玉子を製造する以外は、実施例1−1の方法に従って、かき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm/minとなるように調整した。
【0050】
実験1で製造したかき玉子の形状(大きさ、厚み)について評価を行った。大きさについては、比較例1−1を基準として、比較例1−1よりも全体的に小さいものが目立つものを×、比較例1−1と同等のものを△、比較例1−1よりも大きいものを○、比較例1−1よりも明らかに大きいものを◎とした。厚みについては、官能評価で行い、全体的に薄すぎるまたは厚すぎるものを×、厚みムラがあるものを△、厚みムラや厚さが概ね良好なものを○、厚ムラなく適度な厚みの物を◎とした。評価結果を下記表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実験1で示すように、従来方法である熱水の外から卵液を投入することにより、かき玉子を作製する比較例1−1の方法に比べ、熱水中に卵液を直接注出する実施例1−1〜実施例1−10の方法は、かき玉子の大きさを大きくできることがわかる。
【0053】
実施例1−1〜実施例1−4で示すように短辺の厚みは、0.3〜5.0mmであれば、良好な厚みを有するかき玉子を製造することができる。また、より好ましい範囲としては、短辺の厚みが0.5〜2.0mmであることがわかる。
【0054】
実施例1−1及び実施例1−7で示すように注出口の形状は、長方形であっても楕円であってもかき玉子の形状(大きさ、厚み)はほぼ同じであった。
【0055】
実施例1−1、実施例1−8〜実施例1−10で示すように長径については、長いほど幅広の形状の大きなかき玉子を製造できた。ただし、実施例1−10で示すように40mmを超えると、幅広の形状が安定して製造しにくいことが示唆された。
【0056】
食感については、評価は記載していないが、比較例1−1の従来法にくらべ、実施例1−1〜1−10は、ツルミを強く感じた。その他の食感については、かき玉子の大きさや厚みによって差異はあるものの、概ね良好であった。
【0057】
また、実験1で作製した冷凍かき玉子及び凍結乾燥かき玉子について調理して確認した。冷凍かき玉子は、350ccの水を入れた鍋で3分間加熱解凍して調理した。凍結乾燥かき玉子は、400ccの熱湯を注湯し、3分間保持した後、軽く攪拌して調理した。
【0058】
冷凍かき玉子については、各試験区ともに外観、食感とも凍結前のかき玉子とほぼ同等であった。
【0059】
また、凍結乾燥かき玉子については、実施例1−5は復元性が若干悪かったが各試験区ともに概ね復元した。外観は、凍結前のかき玉子と同等であり、食感は、実施例1−5が硬い部分が若干あるものの、各試験区共に概ね良好であった。
【0060】
<実験2>卵液の注出量についての検討
(実施例2−1)
卵液の注出量を30g/minとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子を製造した(3g/mm/min)。
【0061】
(実施例2−2)
卵液の注出量を50g/minとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子を製造した(5g/mm/min)。
【0062】
(実施例2−3)
卵液の注出量を300g/minとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子を製造した(30g/mm/min)。
【0063】
(実施例2−4)
卵液の注出量を500g/minとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子を製造した(50g/mm/min)。
【0064】
実験2で製造したかき玉子を実験1と同様に評価を行った。結果について下記表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
実験2で示すように卵液を注出する速度が遅すぎると注出口付近で卵液が固まって大きさや厚みにムラを生じ、速すぎても卵液が固まる前に切れて長さが短くなったり、厚みにムラを生じたりする。熱湯の量、温度及び粘度並びに卵液の配合、温度及び粘度等により好ましい値は変化すると考えられるが、ノズル注出口の面積当たりの卵液の注出量は、3〜50g/mm/minの範囲が好ましく、より好ましくは5〜30g/mm/minとなるように卵液を注出することが好ましいと考えられた。
図1
図2
図3