【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【0035】
<実験1>ノズル注出口の形状についての検討
(実施例1−1)
殺菌済みの液卵(全卵)2.7Kgと、キサンタンガム10g、デキストリン20g、アセチル化タピオカ澱粉20g、カロチン色素5gを水245gに溶解、分散させた水溶液300gと、を攪拌機で混ぜ合わせて3Kgの卵液を作製した。
【0036】
次いで、酸化馬鈴薯澱粉0.6Kg、生馬鈴薯澱粉1.2Kg、水28.2Kgに加熱溶解した熱水30Kgをかき玉子製造用タンクに入れ、90℃以上となるように加熱調整した。この時の熱水の粘度は、0.9Pa・Sであった。
【0037】
ついで、作製した卵液を卵液タンクに入れて、50℃に加温し、送液ポンプを用いて送液ホースの先端に取り付けた
図2記載のようなノズルでノズル注出口の形状が1mm x 10mmの長方形形状のものから卵液を熱水の内部にノズル注出口が沈むような状態で100g/minとなるように注出した(10g/mm
2/min)。
【0038】
注出した卵液が熱凝固し、かき玉子が出来上がったら、熱水の加熱調製を止め、金網でかき玉子をすくい上げ、かき玉子の大きさ、薄さの外観を確認した。また、凍結用のトレー(縦3cm,横4cm,高さ2cm)が一杯に充填されるようにすくい上げたかき玉子を充填し、粗熱が取れたところで−30℃のプレハブ式急速凍結庫にて一晩凍結し冷凍かき玉子を製造した。
【0039】
さらに、凍結した冷凍かき玉子を真空凍結乾燥機(東洋技研株式会社製TFD10LF4)にて0.1torr以下で、棚温が60℃、品温が58℃になるまで乾燥し、凍結乾燥かき玉子とした。
【0040】
(実施例1−2)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を0.3mm x 10mmとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm
2/minとなるように調整した。
【0041】
(実施例1−3)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を0.5mm x 10mmとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm
2/minとなるように調整した。
【0042】
(実施例1−4)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を2mm x 10mmとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm
2/minとなるように調整した。
【0043】
(実施例1−5)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を4mm x 10mmとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm
2/minとなるように調整した。
【0044】
(実施例1−6)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を5mm x 10mmとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm
2/minとなるように調整した。
【0045】
(実施例1−7)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を短径1mm x 長径10mmの楕円形状とする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm
2/minとなるように調整した。
【0046】
(実施例1−8)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を短径1mm x 長径6mmの楕円形状とする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm
2/minとなるように調整した。
【0047】
(実施例1−9)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を短径1mm x 長径20mmの楕円形状とする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm
2/minとなるように調整した。
【0048】
(実施例1−10)
かき玉子を製造するノズルのノズル注出口の形状を短径1mm x 長径40mmの楕円形状とする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm
2/minとなるように調整した。
【0049】
(比較例1−1)
実施例1−1の方法に従って、卵液及び熱水を作製し、特許文献1に記載されたような5mm径の円形を多数有するノズルを用い、ノズルを熱水上に設けて卵液を10g/mm
2/minとなるように熱水に滴下投入することでかき玉子を製造する以外は、実施例1−1の方法に従って、かき玉子、冷凍かき玉子、凍結乾燥かき玉子を製造した。尚、卵液の注出量は10g/mm
2/minとなるように調整した。
【0050】
実験1で製造したかき玉子の形状(大きさ、厚み)について評価を行った。大きさについては、比較例1−1を基準として、比較例1−1よりも全体的に小さいものが目立つものを×、比較例1−1と同等のものを△、比較例1−1よりも大きいものを○、比較例1−1よりも明らかに大きいものを◎とした。厚みについては、官能評価で行い、全体的に薄すぎるまたは厚すぎるものを×、厚みムラがあるものを△、厚みムラや厚さが概ね良好なものを○、厚ムラなく適度な厚みの物を◎とした。評価結果を下記表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実験1で示すように、従来方法である熱水の外から卵液を投入することにより、かき玉子を作製する比較例1−1の方法に比べ、熱水中に卵液を直接注出する実施例1−1〜実施例1−10の方法は、かき玉子の大きさを大きくできることがわかる。
【0053】
実施例1−1〜実施例1−4で示すように短辺の厚みは、0.3〜5.0mmであれば、良好な厚みを有するかき玉子を製造することができる。また、より好ましい範囲としては、短辺の厚みが0.5〜2.0mmであることがわかる。
【0054】
実施例1−1及び実施例1−7で示すように注出口の形状は、長方形であっても楕円であってもかき玉子の形状(大きさ、厚み)はほぼ同じであった。
【0055】
実施例1−1、実施例1−8〜実施例1−10で示すように長径については、長いほど幅広の形状の大きなかき玉子を製造できた。ただし、実施例1−10で示すように40mmを超えると、幅広の形状が安定して製造しにくいことが示唆された。
【0056】
食感については、評価は記載していないが、比較例1−1の従来法にくらべ、実施例1−1〜1−10は、ツルミを強く感じた。その他の食感については、かき玉子の大きさや厚みによって差異はあるものの、概ね良好であった。
【0057】
また、実験1で作製した冷凍かき玉子及び凍結乾燥かき玉子について調理して確認した。冷凍かき玉子は、350ccの水を入れた鍋で3分間加熱解凍して調理した。凍結乾燥かき玉子は、400ccの熱湯を注湯し、3分間保持した後、軽く攪拌して調理した。
【0058】
冷凍かき玉子については、各試験区ともに外観、食感とも凍結前のかき玉子とほぼ同等であった。
【0059】
また、凍結乾燥かき玉子については、実施例1−5は復元性が若干悪かったが各試験区ともに概ね復元した。外観は、凍結前のかき玉子と同等であり、食感は、実施例1−5が硬い部分が若干あるものの、各試験区共に概ね良好であった。
【0060】
<実験2>卵液の注出量についての検討
(実施例2−1)
卵液の注出量を30g/minとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子を製造した(3g/mm
2/min)。
【0061】
(実施例2−2)
卵液の注出量を50g/minとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子を製造した(5g/mm
2/min)。
【0062】
(実施例2−3)
卵液の注出量を300g/minとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子を製造した(30g/mm
2/min)。
【0063】
(実施例2−4)
卵液の注出量を500g/minとする以外は、実施例1−1の方法に従ってかき玉子を製造した(50g/mm
2/min)。
【0064】
実験2で製造したかき玉子を実験1と同様に評価を行った。結果について下記表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
実験2で示すように卵液を注出する速度が遅すぎると注出口付近で卵液が固まって大きさや厚みにムラを生じ、速すぎても卵液が固まる前に切れて長さが短くなったり、厚みにムラを生じたりする。熱湯の量、温度及び粘度並びに卵液の配合、温度及び粘度等により好ましい値は変化すると考えられるが、ノズル注出口の面積当たりの卵液の注出量は、3〜50g/mm
2/minの範囲が好ましく、より好ましくは5〜30g/mm
2/minとなるように卵液を注出することが好ましいと考えられた。