特許第6765878号(P6765878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6765878
(24)【登録日】2020年9月18日
(45)【発行日】2020年10月7日
(54)【発明の名称】基板液処理方法及び基板液処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20200928BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20200928BHJP
【FI】
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 648G
   H01L21/306 R
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-134313(P2016-134313)
(22)【出願日】2016年7月6日
(65)【公開番号】特開2018-6647(P2018-6647A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀行
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】小佐井 一 樹
(72)【発明者】
【氏名】大 塚 貴 久
(72)【発明者】
【氏名】篠 原 和 義
(72)【発明者】
【氏名】鈴 木 啓 之
(72)【発明者】
【氏名】八 谷 洋 介
(72)【発明者】
【氏名】東 博 之
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−010242(JP,A)
【文献】 特開2015−213105(JP,A)
【文献】 特開2013−201418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する基板の中心部に処理液を供給する工程と、
前記処理液を供給する工程の後に、回転する前記基板の中心部にリンス液を供給し、前記基板上に前記リンス液の液膜を形成する工程と、を含み、
前記リンス液の液膜を形成する工程の前に、前記処理液の液膜が途切れた前記基板の周縁部に前記処理液の液膜を形成する工程を有し、
前記処理液を供給する工程では、第1回転数で回転する前記基板に前記処理液が供給され、
前記周縁部に前記処理液の液膜を形成する工程では、前記第1回転数よりも速い第2回転数で回転する前記基板に前記処理液が供給されることによって、前記リンス液を供給する工程の前に前記処理液の液膜が形成される基板液処理方法。
【請求項2】
前記第1回転数で回転する前記基板に供給された前記処理液は、前記基板の中心部に液膜を形成し、前記周縁部では前記処理液の液膜が途切れている請求項に記載の基板液処理方法。
【請求項3】
前記第1回転数は、前記基板の処理面の全域に前記処理液の液膜を形成することが可能な回転数である請求項又はに記載の基板液処理方法。
【請求項4】
前記リンス液を供給する工程では、前記第1回転数よりも速い第2回転数で回転する前記基板に前記リンス液が供給される請求項のいずれか一項に記載の基板液処理方法。
【請求項5】
前記リンス液の液膜を形成する工程において、第1供給量よりも多い供給量の前記リンス液が前記基板に供給され、その後、前記基板に供給される前記リンス液の供給量は低減される請求項のいずれか一項に記載の基板液処理方法。
【請求項6】
前記処理液を供給する工程は、前記基板の全域にわたって前記処理液の液膜を形成する工程を有し、
前記リンス液を供給する工程では、前記基板の全域にわたって前記処理液の液膜が形成された状態で、前記基板に対する前記リンス液の供給が開始される請求項1〜のいずれか一項に記載の基板液処理方法。
【請求項7】
前記処理液によって酸化膜が除去された前記基板の接触角は、前記酸化膜が形成された前記基板の接触角よりも大きい請求項1〜のいずれか一項に記載の基板液処理方法。
【請求項8】
前記処理液は、フッ酸を含有し、
前記リンス液は、純水である請求項1〜のいずれか一項に記載の基板液処理方法。
【請求項9】
基板を保持して回転させる基板保持部と、
前記基板保持部によって保持された前記基板に処理液を供給する処理液供給部と、
前記処理液供給部によって前記処理液が供給された後に、前記基板保持部によって保持された前記基板にリンス液を供給し、前記基板上に前記リンス液の液膜を形成するリンス液供給部と、
前記基板保持部、前記処理液供給部及び前記リンス液供給部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記処理液供給部を制御して、回転する前記基板の中心部に前記処理液を供給し、
前記リンス液供給部を制御して、前記基板に前記処理液を供給した後に、回転する前記基板の中心部にリンス液を供給して、前記基板上に前記リンス液の液膜を形成し、
前記処理液供給部は、
前記基板上に前記リンス液の液膜が形成される前に、前記処理液の液膜が途切れた前記基板の周縁部に前記処理液の液膜を形成し、
回転する前記基板の中心部に前記処理液を供給する際、第1回転数で回転する前記基板に前記処理液を供給し、
前記基板上に前記リンス液の液膜が形成される前に前記周縁部に前記処理液の液膜を形成する際、前記第1回転数よりも速い第2回転数で回転する前記基板に前記処理液を供給する、基板液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に処理液及びリンス液を供給して液処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の基板に薬液処理及びリンス処理などの液処理を施すために、水平姿勢に保持された基板を鉛直軸線周りに回転させ、基板の処理面の中央部近傍に対してDHF(Diluted HydroFluoric acid)などの処理液やDIW(DeIonized Water)などのリンス液を供給する手法が一般に採用されている(例えば特許文献1参照)。この手法では、基板の中央部近傍に供給された処理液やリンス液が遠心力により拡散し、拡散した処理液やリンス液が基板の処理面を覆うことによって薬液処理及びリンス処理が行われる。
【0003】
上述の薬液処理を行う場合、基板全体を均一に液処理することを目的として、処理液の流量及び処理液供給時の基板の回転数が設定される。
【0004】
半導体ウエハ等の表面に形成される回路が微細化していくと、微小なパーティクルが問題になることが分かっている。近年では微小なパーティクルが測定できるようになったため、今まで見えなかったパーティクルが見えてきた。そして、本件発明者は、そのようなパーティクルがウォーターマークに起因するもので、基板周縁部に発生しやすいことを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−59895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ウォーターマークなどの微少パーティクルの発生を安定的に抑えることができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、回転する基板の中心部に処理液を供給する工程と、処理液を供給する工程の後に、回転する基板の中心部にリンス液を供給し、基板上にリンス液の液膜を形成する工程と、を含み、リンス液の液膜を形成する工程の前に、処理液の液膜が途切れた基板の周縁部に処理液の液膜を形成する工程を有する、基板液処理方法に関する。
【0008】
本発明の他の態様は、基板を保持して回転させる基板保持部と、基板保持部によって保持された基板に処理液を供給する処理液供給部と、処理液供給部によって処理液が供給された後に、基板保持部によって保持された基板にリンス液を供給し、基板上にリンス液の液膜を形成するリンス液供給部と、基板保持部、処理液供給部及びリンス液供給部を制御する制御部と、を備え、制御部は、リンス液の液膜を形成する前に、処理液の液膜が途切れた基板の周縁部に処理液の液膜を形成する、基板液処理装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ウォーターマークなどの微少パーティクルの発生を安定的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る処理ユニットを備える基板処理システムの概要を示す平面図である。
図2図2は、処理ユニットの概要を示す縦断側面図である。
図3図3は、処理ユニット及び制御部の具体的な構成を例示する図である。
図4図4は、液処理流体がウエハの処理面の一部のみにわたって液膜を形成する例を示す断面図である。
図5図5は、液処理流体がウエハの処理面の全域にわたって液膜を形成する例を示す断面図である。
図6図6は、基板液処理方法のフローチャートである。
図7図7は、第1薬液処理工程、第2薬液処理工程及びリンス処理工程におけるウエハ回転数、時間及び液供給流量の関係を示すグラフである。
図8図8は、第1薬液処理工程、第2薬液処理工程及びリンス処理工程におけるウエハ回転数、時間及び液供給流量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
まず本発明を適用可能な基板処理システムの典型例について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0014】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0015】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、本実施形態では半導体ウエハ(以下ウエハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0016】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0017】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0018】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0019】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板処理を行う。
【0020】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0021】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0022】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0023】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0024】
次に、処理ユニット16の典型例について図2を参照して説明する。
【0025】
図2に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持機構30と、処理流体供給部40と、回収カップ50とを備える。
【0026】
チャンバ20は、基板保持機構30と処理流体供給部40と回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0027】
基板保持機構30は、保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備える。保持部31は、ウエハWを水平に保持する。支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。かかる基板保持機構30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された保持部31を回転させ、これにより、保持部31に保持されたウエハWを回転させる。
【0028】
処理流体供給部40は、ウエハWに対して処理流体を供給する。処理流体供給部40は、処理流体供給源70に接続される。
【0029】
回収カップ50は、保持部31を取り囲むように配置され、保持部31の回転によってウエハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から処理ユニット16の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給される気体を処理ユニット16の外部へ排出する排気口52が形成される。
【0030】
以上に概略構成を説明した処理ユニット16及び制御部18は、本発明の実施形態に係る基板液処理装置の少なくとも一部を構成する。例えば、上述の保持部31、支柱部32及び駆動部33は、処理面に酸化膜が形成されたウエハWを保持して回転させる基板保持部として機能する。また上述の処理流体供給源70及び処理流体供給部40は、基板保持部によって保持されたウエハWに、酸化膜を除去する処理液であるDHFを供給する処理液供給部として機能する。同様に、処理流体供給源70及び処理流体供給部40は、基板保持部によって保持されたウエハWに対し、処理液供給部によってDHFが供給された後にリンス液であるDIWを供給し、ウエハWの処理面上にDIWの液膜を形成するリンス液供給部としても機能する。そして制御部18は、これらの基板保持部、処理液供給部及びリンス液供給部を制御する。
【0031】
以下、これらの処理ユニット16及び制御部18の詳細な構成について図3を参照して説明する。
【0032】
図3は、処理ユニット16及び制御部18の具体的な構成を例示する図である。
【0033】
処理ユニット16は、図2に示すチャンバ20内に設けられた回収カップ50及び処理流体供給部40を備え、チャンバ20内に搬入されたウエハWの処理を行う。図1に示すように搬送部15の両側に設けられた複数の処理ユニット16は、それぞれ図示しない搬入出口を搬送部15側に向けて配置されている。図3には、新たにX’軸、Y’軸、Z’軸を用いて各処理ユニット16内の方向が示されている。これらの軸の方向に関し、搬入出口が設けられている方向をY’軸方向の前方側とし、このY’軸に直交するX’軸及びZ’軸を規定し、特にZ’軸正方向を鉛直上向き方向とした。
【0034】
図3に示すように、処理流体供給部40は、第1ノズル400を具備するノズルヘッド41と、このノズルヘッド41が先端部に取り付けられたノズルアーム42と、ノズルアーム42の基端部を支持する回転駆動部43と、を備える。回転駆動部43は、ノズルアーム42の基端部を回転軸としてノズルアーム42を水平方向へ回転させることができる。第1ノズル400は、ノズルアーム42の回転に応じ、ウエハWの中央部上方側に設定された処理位置と、回収カップ50の側方に退避した退避位置との間で移動させられる。ウエハWに対してDHFやDIWを供給して薬液処理やリンス処理を行う場合、第1ノズル400は処理位置に配置される。一方、そのような薬液処理やリンス処理を行わない場合、第1ノズル400は退避位置に配置される。
【0035】
回転駆動部43は、さらにノズルアーム42を昇降させることができ、ノズルアーム42を回転させるときの上方側の高さ位置と、ウエハWにDHFやDIWを供給するための下方側の高さ位置との間で、ノズルアーム42及び第1ノズル400を鉛直方向へ移動させることができる。
【0036】
第1ノズル400には、リンス液供給路711及びDHF供給路713が接続されている。リンス液供給路711及びDHF供給路713は、上述の処理流体供給源70を構成するDIW供給源701及びDHF供給源702にそれぞれ接続されている。DIW供給源701は、DIWを貯留する貯留部や、DIWの供給のためのポンプ及び流量調節バルブなどを備える。同様に、DHF供給源702は、DHFを貯留する貯留部や、DHFの供給のためのポンプ及び流量調節バルブなどを備える。これらのDIW供給源701及びDHF供給源702は、制御部18からの制御信号によって制御される。この制御信号に応じて、DIW供給源701からリンス液供給路711及びノズルアーム42の供給管を介して第1ノズル400にDIWが供給され、またDHF供給源702からDHF供給路713及びノズルアーム42の供給管を介して第1ノズル400にDHFが供給される。
【0037】
制御部18は、更に駆動部33にも制御信号を送る。駆動部33は制御部18からの制御信号によって制御され、この制御信号に応じて、支柱部32の鉛直軸まわりの回転数が調整され、支柱部32に固定された保持部31に保持されるウエハWの回転数も変えられる。
【0038】
<微少パーティクルの発生の防止>
回転するウエハWの中心部に向けて、DHFを供給する薬液処理及びDIWを供給するリンス処理は連続的に行われる。通常、薬液の供給量または基板の回転数は、ウエハWの表面を均一に処理できる条件に設定される。本件発明者は、このような条件では、ウエハWの疎水性の処理面に供給される液体がDHFからDIWに切り替えられる際、液で被膜されているはずのウエハWの周縁部が露出することを発見した。そして、このことがウォーターマークなどの微少パーティクルを誘発することが分かった。
【0039】
本件発明者は、ウエハWの疎水性の処理面に供給される液体がDHFからDIWに切り替えられる際のウエハWの周縁部に対する液被覆性に注目し、当該液被覆性を改善することによって、ウォーターマーク等の微少パーティクルを安定的に低減できるという知見を新たに得た。具体的には、薬液処理の終盤(例えば薬液処理完了前の数秒程度)においてウエハWの回転数やDHFの供給量を増大させ、DHFの液膜によりウエハWの処理面の全域を覆った状態でDIWの供給を開始することで、微少なウォーターマークの発生を効果的に抑制できる。すなわち、薬液処理が行われている段階でウエハWの処理面に対する液被覆性を向上させ、液被覆性が十分に向上した状態で薬液処理からリンス処理に移行することで、処理面に対する液被覆性が不完全な状態になる時間を著しく短縮若しくは無くし、微少なウォーターマークの発生を非常に効果的に抑制することが可能である。
【0040】
上述の考察を踏まえ、図3に示す制御部18は、DHF及びDIWを用いた液処理工程における微少パーティクルの発生を防ぐために、以下の制御を行う。
【0041】
すなわち制御部18は、基板保持部を構成する駆動部33及び処理液供給部を構成するDHF供給源702を制御して、ウエハWの中心部にDHFを供給し処理面の全域にわたってDHFの液膜を形成する。なお制御部18は、DIWの液膜を形成する前に、DHFの液膜が途切れたウエハWの周縁部にDHFの液膜を形成するように、駆動部33及びDHF供給源702を制御する。そして制御部18は、リンス液供給部を構成するDIW供給源701及び駆動部33を制御して、ウエハWの中心部にDIWを供給し、処理面の全域にわたってDHFの液膜が形成された状態で、ウエハWに対するDIWの供給を開始する。
【0042】
図4は、液処理流体LがウエハWの処理面Wsの一部のみにわたって液膜を形成する例を示す断面図である。図5は、液処理流体LがウエハWの処理面Wsの全域にわたって液膜を形成する例を示す断面図である。図4及び図5に示される液処理流体Lは、上述のDHF及びDIWを代表的に表している。
【0043】
回転軸線Awを中心に回転するウエハWの処理面Wsに対して第1ノズル400から液処理流体Lが供給されると、液処理流体Lは、ウエハWとともに回転し、ウエハWの径方向外側に向かって働く遠心力の影響を受けてウエハWの外周部Wpに向かって拡がる。
【0044】
例えば、ウエハWの回転数が十分に大きくない場合やウエハWに対する液処理流体Lの供給量が十分に多くない場合には、図4に示すように、液処理流体Lによって形成される液膜がウエハWの外周部Wpにまで拡がることができず、液処理流体Lは、ウエハWの中央部を中心とした一部範囲にのみ液膜を形成する。一方、ウエハWの回転数が十分に大きい場合やウエハWに対する液処理流体Lの供給量が十分に多い場合には、図5に示すように、液処理流体Lによって形成される液膜がウエハWの外周部Wpにまで拡がり、ウエハWの処理面Wsの全域にわたって液処理流体Lの液膜が形成される。
【0045】
なお、液膜の形成に寄与しない余剰な液処理流体Lは、液膜からちぎれて液滴となる。特に図4に示すようにウエハWの処理面Wsの一部範囲にのみ液処理流体Lの液膜が形成されている状態において、液膜からちぎれた液処理流体Lの液滴は、ウエハWの外周部Wp側へ流れた後に、ウエハWから振り切られる。ただし、液膜からちぎれて外周部Wp側へ流れた液滴の全てがウエハWから振り切られるとは限らず、一部の液処理流体LはウエハWの外周部Wpに液滴の形態で残存してしまうことがある。特に、ウエハWの外周部Wpにおいて液滴として存在する液処理流体LがDIWである場合に、ウォーターマークなどの微少パーティクルの発生が誘発される。本実施形態の基板液処理装置及び基板液処理方法では、そのような微少パーティクルの発生を抑えるために、ウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜を形成し、その後、処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜が形成された状態でウエハWに対するDIWの供給を開始する。
【0046】
以下、本実施形態における基板液処理方法について詳述する。本実施形態の基板液処理方法は、回転するウエハWの中心部にDHFを供給する工程と、DHFを供給する工程の後に、回転するウエハWの中心部にDIWを供給し、ウエハW上にDIWの液膜を形成する工程と、を含む。さらにこの基板液処理方法は、DIWの液膜を形成する工程の前に、DHFの液膜が途切れたウエハWの周縁部にDHFの液膜を形成する工程を有する。
【0047】
図6は、基板液処理方法のフローチャートである。本実施形態の基板液処理方法では、基板準備工程S11、第1薬液処理工程S12、第2薬液処理工程S13及びリンス処理工程S14が順次行われる。
【0048】
基板準備工程S11は、処理面に酸化膜が形成されたウエハWを準備する工程である。処理面に自然酸化物等の酸化膜が形成されているウエハWは、図1に示す基板搬送装置17によって搬送部15内を搬送され、DHF及びDIWを使った液処理を行う処理ユニット16内に搬入出口を介して搬入され、ウエハWは保持部31によって保持される。なお、ウエハWが保持ピン311に受け渡された後、基板搬送装置17は処理ユニット16から退出する。
【0049】
第1薬液処理工程S12及び第2薬液処理工程S13は、それぞれ、酸化膜を除去するDHFを、回転するウエハWに供給する工程である。第1薬液処理工程S12では、ウエハWの処理面Wsの一部(特に中心部)のみにわたってDHFの液膜が形成される(図4参照)。一方、第2薬液処理工程S13では、ウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜が形成される(図5参照)。
【0050】
DHFによる酸化物の除去処理が進行するに従ってウエハWの処理面Wsの特性は変化するため、第1薬液処理工程S12における処理面Ws上でのDHFの液膜の状態も変化しうる。そのため、第1薬液処理工程S12においてウエハWを第1回転数で回転させた場合に、DHFの供給開始当初にはウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜を形成することが可能であったとしても、DHFにより酸化膜がエッチングされると、処理面Ws上でDHFの液膜が途切れ、ウエハWの周縁部にはDHFの液膜が形成されなくなる。そのため本実施形態では、DHFの液膜が途切れたウエハWの周縁部に、第2薬液処理工程S13においてDHFの液膜が形成される。このように本実施形態において、第1回転数で回転するウエハWにDHFを供給する工程は、ウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜が形成される工程と、ウエハWの処理面Wsの一部領域(特に中央部)のみにわたってDHFの液膜が形成される工程とを含む。
【0051】
なお、薬液処理の条件はウエハWの処理面Wsが均一に処理されるように設定されるので、第1薬液処理工程S12ではウエハWの処理面Ws上にDHFの液膜が形成されない場合もある。この場合にも、第2薬液処理工程S13で、ウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜が形成され、DHFの液膜が途切れたウエハWの周縁部にDHFの液膜が形成されることで、同様の作用効果が得られる。なお薬液処理の均一性を考慮すると、ウエハWの回転数を上げることができない場合がある。例えば、ウエハWの回転数を増大させ過ぎると、ウエハWから一旦振り切られたDHFが、周囲の回収カップ50により跳ね返されてウエハWに再び付着してしまう懸念があり、そのような再付着したDHFによってウエハWは汚染される。
【0052】
リンス処理工程S14は、DHFを供給する上述の第2薬液処理工程S13の後に行われ、回転するウエハWにDIWを供給し、ウエハWの処理面Ws上にDIWの液膜を形成する工程である。リンス処理工程S14は、上述の第2薬液処理工程S13の直後に行われ、ウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜が形成された状態で、ウエハWに対するDIWの供給が開始される。なおウエハWに対するDIWの供給が開始された後においても、処理面Wsの全域にわたって液膜が形成された状態が維持されるように、ウエハWに対するDIWの供給量及びウエハWの回転数が調整される。したがって、ウエハWに対するDIWの供給の開始直後は、DHF及びDIWの混合液によって処理面Ws上に液膜が形成されるが、DIWの供給開始から時間が経つに従って徐々に液膜中のDIWの比率が増し、最終的にはDIWのみによって液膜が形成される。
【0053】
このように、DIWの供給開始前にDHFによってウエハWの処理面Wsの全域にわたって液膜を形成しておき、処理面Wsの全域にDHFの液膜が形成された状態でDIWの供給が開始される。これにより、DIWの液膜がウエハWの処理面Wsの一部のみに形成されてDIWの液滴がウエハWの外周部Wpに存在しうる図4に示すような状態を、回避することができる。上述のようにウエハWの外周部Wpに発生するウォーターマークなどの微少パーティクルは、主として、DIWの液膜がウエハWの処理面Wsの一部のみに形成されている状態で、液膜からちぎれたDIWの液滴がウエハWの外周部Wpに存在することに起因する。したがって、上述のようにDIWの液膜がウエハWの処理面Wsの一部のみに形成される状態を回避し、ウエハWの外周部WpにDIWの液滴が存在しないようにすることで、ウエハWの外周部Wpにおけるウォーターマークなどの微少パーティクルの発生を防ぐことができる。
【0054】
次に、本実施形態の変形例であるウエハWの回転数を調整してウエハWの処理面Wsの全域に液膜を形成する手法について説明する。
【0055】
図7は、第1薬液処理工程S12、第2薬液処理工程S13及びリンス処理工程S14におけるウエハ回転数、時間及び液供給流量の関係を示すグラフである。図7において、横軸は時間(秒)を示し、左側の縦軸はウエハWの回転数(rpm:revolutions per minute)を示し、右側の縦軸はウエハWに対するDHF及びDWIの液供給流量(ml/min)を示す。符号「R1」によって示される実線は、本実施形態に係る「時間」及び「ウエハWの回転数」の関係を示す。符号「R2」によって示される点線は、比較例に係る「時間」及び「ウエハWの回転数」の関係を示す。符号「F1」によって示される一点鎖線は「時間」及び「DHFの液供給量」の関係を示し、符号「F2」によって示される二点鎖線は「時間」及び「DIWの液供給量」の関係を示す。
【0056】
なお符号「F1」及び「F2」で示される線は本実施形態及び比較例において共通しており、ウエハWに対するDHFの供給量及びDIWの供給量は、本実施形態及び比較例において同じである。すなわち本実施形態に係る基板液処理方法及び比較例に係る基板液処理方法のいずれにおいても、ウエハWに対するDHFの供給量(符号「F1」参照)は時間にかかわらず一定であり、またウエハWに対するDIWの供給量(符号「F2」参照)も時間にかかわらず一定であり、DHFの供給量とDIWの供給量とは同じである。
【0057】
符号「R2」で表される比較例では、上述の第1薬液処理工程S12及び第2薬液処理工程S13の両工程において、ウエハWの回転数は第1回転数N1で一定の割合で回転し、DHFがウエハWに供給されている間は、図4に示すようにDHFの液膜がウエハWの処理面Wsの一部のみに形成される。そして、ウエハWに対するDHFの供給が終了してDIWの供給が開始されると、ウエハWの回転数は徐々に増大し、第1回転数N1から第2回転数N2までウエハWの回転数が増大される。
【0058】
この比較例において、ウエハWの回転数が第1回転数N1から第2回転数N2まで増大される間には、ウエハWにはDIWが供給される一方で、ウエハWの処理面Ws上に形成される液膜が外周部Wpに存在しない期間が存在する。そのため、ウエハWの回転数が第1回転数N1から第2回転数N2まで増大される期間のうち、液膜がウエハWの処理面Wsの一部のみに形成されている間は、液膜からちぎれたDIWを含有する液滴が外周部Wpに存在しうる。上述のように、ウエハWの外周部Wpに発生するウォーターマークなどの微少パーティクルは、DIWの液滴がウエハWの外周部Wpに存在することに起因するため、この比較例では微少パーティクルの発生が誘発される。
【0059】
一方、符号「R1」で表される本実施形態では、DHFを供給する工程が、第1回転数N1で回転するウエハWにDHFが供給される第1薬液処理工程S12と、第1回転数N1よりも速い第2回転数N2で回転するウエハWにDHFが供給される第2薬液処理工程S13とを有する。第1薬液処理工程S12において、第1回転数N1で回転するウエハWに供給されたDHFは、ウエハWの処理面Wsの中心部に液膜を形成し、ウエハWの周縁部ではDHFの液膜が途切れている。一方、第2薬液処理工程S13において、第1回転数N1よりも速い第2回転数N2で回転するウエハWにDHFが供給されることにより、DIWを供給するリンス処理工程S14の前に、ウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜が形成される。より具体的には、第2薬液処理工程S13では、ウエハWの回転数が第1回転数N1から第2回転数N2まで比例的に増大され、その後、ウエハWの回転数が第2回転数N2に維持される。これにより、ウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜が形成される。そしてリンス処理工程S14では、ウエハWの回転数が第2回転数N2に維持され、第1回転数N1よりも速い第2回転数N2で回転するウエハWにDIWが供給される。これにより、処理面Wsの全域にわたって液膜が形成された状態で、ウエハWに対するDIWの供給が行われる。
【0060】
このようにリンス処理工程S14の前段階で、ウエハWの回転数を調整してウエハWの処理面Wsの全域にDHFの液膜を形成しておき、リンス処理工程S14中も処理面Wsの全域にわたって液膜が形成されるようにウエハWの回転数が調整される。これにより、DIWを含有する液膜がウエハWの処理面Wsの一部のみに形成されることを防いで、DIWを含有する液滴が外周部Wpに存在しうる期間を回避することができ、外周部Wpにおけるウォーターマークなどの微少パーティクルの発生を抑えることができる。
【0061】
なお上述の図7に示す例では、第2薬液処理工程S13においてウエハWの回転数を第2回転数N2まで増大しているが、ウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜を形成することができるのであれば、第2薬液処理工程S13におけるウエハWの回転数は第2回転数N2に限定されない。ただし第2薬液処理工程S13の最終段階で、リンス処理工程S14において求められるウエハWの回転数と同じ回転数までウエハWの回転数を増大させることで、第2薬液処理工程S13からリンス処理工程S14への移行を簡便に行うことができる。
【0062】
次に、液供給量を調整してウエハWの処理面Wsの全域に液膜を形成する手法について説明する。
【0063】
図8は、第1薬液処理工程S12、第2薬液処理工程S13及びリンス処理工程S14におけるウエハ回転数、時間及び液供給流量の関係を示すグラフである。図8において、横軸は時間(秒)を示し、左側の縦軸はウエハWの回転数(rpm)を示し、右側の縦軸はウエハWに対するDHF及びDWIの液供給流量(ml/min)を示す。符号「R1」によって示される実線は、本実施形態に係る「時間」及び「ウエハWの回転数」の関係を示す。符号「F1」によって示される一点鎖線は「時間」及び「DHFの液供給量」の関係を示し、符号「F2」によって示される二点鎖線は「時間」及び「DIWの液供給量」の関係を示す。
【0064】
図8に示す例においてDHFを供給する工程は、第1供給量P1のDHFがウエハWに供給される第1薬液処理工程S12と、第1供給量P1よりも多い第2供給量P2のDHFがウエハWに供給される第2薬液処理工程S13とを有する。第1薬液処理工程S12において、第1供給量P1でウエハWに供給されたDHFは、ウエハWの処理面Wsの中心部に液膜を形成し、ウエハWの周縁部では処理液の液膜が途切れている。一方、第2薬液処理工程S13において、第1供給量P1よりも多い供給量のDHFがウエハWに供給されることによって、ウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜が形成される。より具体的には、第2薬液処理工程S13では、DHFの供給量が第1供給量P1から第2供給量P2まで比例的に増大され、その後、DHFの供給量が第2供給量P2に維持される。これにより、ウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜が形成される。なお第1薬液処理工程S12及び第2薬液処理工程S13の間、ウエハWは第1回転数N1で回転され、ウエハWの回転数は一定に維持されている。
【0065】
そしてリンス処理工程S14では、ウエハWの回転数が第1回転数N1から第2回転数N2に増大される一方で、DIWの供給量が第2供給量P2で供給を開始し、その後第1供給量P1に低減される。このようにウエハWの回転数が第1回転数N1から第2回転数N2に増大され且つDIWの供給量が第2供給量P2から第1供給量P1に低減される間、ウエハWの処理面Wsの全域にわたって液膜が形成された状態が維持される。またリンス処理工程S14において、ウエハWの回転数が第2回転数N2に到達した後はウエハWの回転数は第2回転数N2に維持され、またDIWの供給量が第1供給量P1に到達した後はDIWの供給量は第1供給量P1に維持される。このようにウエハWの回転数が第2回転数N2に維持され且つDIWの供給量が第1供給量P1に維持されている間も、ウエハWの処理面Wsの全域にわたって液膜が形成された状態が維持される。
【0066】
このようにリンス処理工程S14の前段階で、DHFの供給量を調整してウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜を形成しておき、リンス処理工程S14中も処理面Wsの全域にわたって液膜が形成されるように、DIWの供給量及びウエハWの回転数が調整される。これにより、DIWを含有する液膜がウエハWの処理面Wsの一部のみに形成されることを防いで、DIWを含有する液滴が外周部Wpに存在しうる期間を回避することができ、ウエハWの外周部Wpにおけるウォーターマークなどの微少パーティクルの発生を抑えることができる。
【0067】
なお上述の図8に示す例では、ウエハWにDHFが供給される第1薬液処理工程S12及び第2薬液処理工程S13の間は、ウエハWの回転数が一定に維持されているが、ウエハWの回転数は必ずしも一定である必要はない。例えば、ウエハWの回転数が第1回転数N1かつDHFの供給量が第3供給量(ただし「第1供給量P1<第3供給量<第2供給量P2」の関係を満たす)では、DHFの液膜がウエハWの処理面Wsの全域にわたっては形成されない場合がある。また、ウエハWの回転数が第3回転数(ただし「第1回転数N1<第3回転数<第2回転数N2」の関係を満たす)かつDHFの供給量が第1供給量P1では、DHFの液膜がウエハWの処理面Wsの全域にわたっては形成されない場合がある。その一方で、ウエハWの回転数が第3回転数かつDHFの供給量が第3供給量では、DHFの液膜をウエハWの処理面Wsの全域にわたって形成することができる場合がある。この場合、第2薬液処理工程S13におけるDHFの供給量の増大の程度を抑えることができ、DHFの消費量を節約することができる。また第2薬液処理工程S13において、ウエハWの回転数を第1回転数N1より速い回転数に調整することにより、その後のリンス処理工程S14において、より短時間で、ウエハWの回転数を目標回転数である第2回転数N2に調整することができる。第2薬液処理工程S13からリンス処理工程S14への移行をスムーズに行う観点からは、第2薬液処理工程S13におけるウエハWの最終的な目標回転数を、リンス処理工程S14におけるウエハWの目標回転数と同じにすることが好ましい。
【0068】
また上述の図8に示す例では、図3に示す制御部18がDHF供給源702を制御することによって、ウエハWに対するDHFの供給量が増加されているが、ウエハWに対するDHFの供給を補助する補助手段が更に設けられてもよい。すなわち、上述のDHF供給源702とは別個にDHF供給補助部を設けて、当該DHF供給補助部が、制御部18の制御下で追加的にDHFをウエハWに供給することでウエハWに対するDHFの供給量を増加してもよい。なお、このDHF供給補助部の具体的な構成は特に限定されない。例えば、DHF供給補助部は、図3に示すノズルアーム42の供給管や第1ノズル400をDHF供給源702と共用してもよいし、ノズルアーム42及び第1ノズル400とは別個の専用の供給管及びノズルを有していてもよい。
【0069】
以上説明したように本実施形態及び変形例の基板液処理方法及び基板液処理装置によれば、ウエハWの処理面Wsの全域にわたってDHFの液膜が形成された状態で、ウエハWに対するDIWの供給が開始される。これにより、DIWを含有する液滴がウエハWの外周部Wpに存在しうる期間が生じることを防ぎ、ウォーターマークなどの微少パーティクルの発生を安定的に抑えることができる。
【0070】
なお本発明は、上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形が加えられた各種態様も本発明の範囲に含まれうるものであり、本発明によって奏される効果も上述の事項に限定されない。したがって、本発明の技術的思想及び趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲及び明細書に記載される各要素に対して種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【0071】
例えば上述の実施形態では、DHFを処理液として使用し、DIWをリンス液として使用する例について説明したが、処理液及びリンス液は特に限定されない。フッ酸を含有する溶液を処理液として好適に使用することができる。酸化膜のエッチング除去などの所望の薬液処理に必要な任意の液体を処理液として使用することが可能であり、そのような処理液を適切に洗い流すことができる任意の液体をリンス液として使用することが可能である。
【0072】
またウエハWの組成も特に限定されず、典型的には高純度のシリコンによってウエハWが構成される。特に、上述の基板液処理方法及び基板液処理装置は、処理液によって酸化膜が除去された処理面Wsの接触角が、酸化膜が形成された処理面Wsの接触角よりも大きくなるウエハWに対して、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
18 制御部
30 基板保持機構
40 処理流体供給部
W ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8