(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
[リチウムイオン二次電池用正極材料]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料は、中心粒子と、中心粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを含み、炭素質被膜のラマンスペクトル分析において、1200〜1400cm
−1の波数帯域におけるスペクトルのピーク強度をD値、1400〜1550cm
−1の波数帯域におけるスペクトルの最低強度をV値、1550〜1700cm
−1の波数帯域におけるスペクトルのピーク強度をG値としたとき、D/Gの平均値が0.77以上0.98以下であり、かつV/Gの平均値が0.50以上0.66以下であり、D/G及びV/Gの変動係数が、それぞれ2%以下である。
以下、リチウムイオン二次電池用正極材料を、単に、正極材料と称することがある。リチウムイオン二次電池用正極を、単に、正極と称することがある。リチウムイオン二次電池を、単に、電池と称することがある。
【0017】
(ラマンスペクトル特性)
既述のように、炭素質被膜の炭化度合いはラマンスペクトルにて調べることができる。1200〜1400cm
−1の波数帯域におけるスペクトルのピーク強度(D値)からは、炭素質被膜を構成する炭素の縮合環構造の呼吸振動が把握される。1550〜1700cm
−1の波数帯域におけるスペクトルのピーク強度(G値)からは、炭素質被膜を構成する炭素の二重結合の伸縮振動が把握される。
本発明では、更に、1400〜1550cm
−1の波数帯域におけるスペクトルの最低強度(V値)に着目し、D値又はG値との関連性から電池の特性を良化する手法を見出した。具体的には、炭素の二重結合の均質性を示すV/G及びその平均値、並びに、炭素の縮合環構造の呼吸振動と伸縮振動との比率を示すD/G及びその平均値から導き出される変動係数が、炭素質被膜の炭化状態を示すことを見出した。D/Gの変動係数、及びV/Gの変動係数が、それぞれ2%以下であるときに、電池の放電容量を高めることができ、サイクル特性を向上することができる。
【0018】
D/Gの平均値が0.98を超えると、電池のサイクル特性が悪化する。サイクル特性を向上する観点から、D/Gの平均値は、0.98以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.92以下であることが更に好ましい。
D/Gの平均値が0.77未満となると、電池のレート特性が悪化する。レート特性を向上する観点から、D/Gの平均値は、0.77以上であることが好ましく、0.79以上であることがより好ましく、0.81以上であることが更に好ましい。
【0019】
V/Gの平均値が0.66を超えると、電池のサイクル特性が悪化する。サイクル特性を向上する観点から、V/Gの平均値は、0.66以下であることが好ましく、0.64以下であることがより好ましく、0.62以下であることが更に好ましい。
V/Gの平均値が0.50未満となると、電池のレート特性が悪化する。レート特性を向上する観点から、V/Gの平均値は、0.50以上であることが好ましく、0.52以上であることがより好ましく、0.54以上であることが更に好ましい。
【0020】
D/Gの変動係数、及びV/Gの変動係数は、それぞれ、2%以下である。
D/G及びV/Gの変動係数が2%を超えるということは、D/Gと、V/Gが大きな分布を持つことを意味し、高レートでの電圧低下、サイクル特性の悪化が生じる。
電池の放電容量をより向上し、サイクル特性を高める観点から、D/Gの変動係数は、0.2%以上2%以下であることが好ましく、0.4%以上1.95%以下であることがより好ましく、0.6%以上1.9%以下であることが更に好ましい。
同様の観点から、V/Gの変動係数は0.2%以上2%以下であることが好ましく、0.4%以上1.95%以下であることがより好ましく、0.6%以上1.9%以下であることが更に好ましい。
【0021】
なお、各変動係数CVは、標準偏差σと平均値x
aとから、式(1)により求められる。
【数1】
【0022】
また、標準偏差σは、n個のデータxの平均値をx
aとしたとき、式(2)により求められる。
【0024】
D/Gの変動係数は、次のようにして求められる。
正極材料のラマンスペクトル分析において、例えば、300点(n=300)のD/Gデータ(x=D/G)を測定し、D/Gの平均値をx
aとして、式(1)から標準偏差σを求める。得られた標準偏差σとD/Gの平均値とから、式(2)によりD/Gの変動係数が求まる。V/Gの変動係数も同様にして求められる。
【0025】
(中心粒子)
本実施形態の正極材料は、一般式Li
xA
yD
zPO
4(但し、AはCo、Mn、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群から選択される少なくとも1種、DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、ScおよびYからなる群から選択される少なくとも1種、0.9<x<1.1、0<y≦1、0≦z<1、0.9<y+z<1.1)で表わされる中心粒子を含む一次粒子およびその凝集体を主成分とすることが好ましい。
「その凝集体」とは、一次粒子の集合体である二次粒子を意味する。
より具体的には、本実施形態の正極材料は、一般式Li
xA
yD
zPO
4で表わされる正極活物質からなる中心粒子と、中心粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを含み、炭素質被覆正極活物質の一次粒子およびその凝集体を主成分とすることが好ましい。
「主成分とする」とは、正極材料中の、炭素質被覆正極活物質の一次粒子およびその凝集体の質量が70質量%以上であることを意味し、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。
【0026】
一般式Li
xA
yD
zPO
4は、高放電容量、高エネルギー密度、安全性及びサイクル安定性の観点から、次の構成であることが好ましい。
AはCo、Mn、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群から選択される少なくとも1種であり、中でも、Mn及びFeが好ましく、Feがより好ましい。
DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、ScおよびYからなる群から選択される少なくとも1種であり、中でも、Mg、Ca、Al、及びTiが好ましい。
xは、0.9より大きく1.1未満(0.9<x<1.1)であり、1が好ましい。
yは、0より大きく1以下(0<y≦1)であり、0.5以上1以下が好ましく、1がより好ましい。
zは、0以上1未満(0≦z<1)であり、0以上0.5以下が好ましく、0がより好ましい。
なお、yとzは、y+zが、0.9より大きく1.1未満(0.9<y+z<1.1)であり、1が好ましい。
【0027】
前記一般式で表される正極活物質は、オリビン構造を有することが好ましく、LiFePO
4及び該LiFePO
4において、Feの一部がMnで置換されたLi(Fe
x1Mn
1−x1)PO
4(但し、0<x1<1)であることがより好ましい。
【0028】
前記一般式で表される正極活物質は、固相法、液相法、気相法等の従来の方法により製造したものを用いることができる。
Li
xA
yD
zPO
4は、例えば、Li源と、A源と、D源と、P源と、水と、を混合して得られるスラリー状の混合物を水熱合成し、得られた沈殿物を水洗して得られる。また、水熱合成により正極活物質前駆体を生成し、さらに正極活物質前駆体を焼成することでも同様の正極活物質が得られる。水熱合成には耐圧密閉容器を用いることが好ましい。
【0029】
ここで、Li源としては、酢酸リチウム(LiCH
3COO)、塩化リチウム(LiCl)等のリチウム塩及び水酸化リチウム(LiOH)等が挙げられ、酢酸リチウム、塩化リチウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0030】
A源としては、Mn、Fe、Co、及びNiからなる群より選択される少なくとも1種を含む塩化物、カルボン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
例えば、A源がFeである場合、Fe源としては、塩化鉄(II)(FeCl
2)、酢酸鉄(II)(Fe(CH
3COO)
2)、硫酸鉄(II)(FeSO
4)等の2価の鉄塩が挙げられ、塩化鉄(II)、酢酸鉄(II)、及び硫酸鉄(II)からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0031】
D源としては、同様に、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、ScおよびYの塩化物、カルボン酸塩、硫酸塩等を用いることができる。
【0032】
P源としては、リン酸(H
3PO
4)、リン酸二水素アンモニウム(NH
4H
2PO
4)、リン酸水素二アンモニウム((NH
4)
2HPO
4)等のリン酸化合物が挙げられ、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、及びリン酸水素二アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0033】
Li源、A源、D源及びP源の物質量比(Li:A:D:P)は、所望する正極活物質が得られ、不純物の生成が無いよう、適宜選択される。
【0034】
中心粒子の形状は、特に制限されないが、球状、特に真球状であることが好ましい。中心粒子が球状であることで、造粒された顆粒体の内部細孔が均一となりやすく、良好な電解液保持能が発現する。また、顆粒体とすることで、本実施形態の正極材料を用いて正極形成用ペーストを調製する際の溶媒量を低減させることができるとともに、正極形成用ペーストの集電体への塗工も容易となる。なお、正極形成用ペーストは、例えば、本実施形態の正極材料と、バインダー樹脂(結着剤)と、溶媒とを混合して調製することができる。
【0035】
(炭素質被膜)
中心粒子を被覆する炭素質被膜は、例えば、炭素質被膜の原料となる糖類及びイオン性有機物を含む有機物を炭化することにより得られる。
糖類としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、マルトース、スクロース、ラクトース、セルロース、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、グリコーゲン、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナン、キチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、アガロース等が挙げられる。糖類は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
イオン性有機物(糖類を除く)としては、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリカルボン酸系高分子、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、カルボン酸変性ポリビニルアルコールの塩、スルホン酸変性ポリビニルアルコールの塩、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、イオン性界面活性剤等が挙げられる。イオン性有機物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
有機物は、糖類及びイオン性有機物以外の有機物も加えて用いることができ、そのような糖類及びイオン性有機物以外の有機物としては、中心粒子の表面に炭素質被膜を形成できる化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエーテル、2価アルコール、3価アルコール、非イオン性界面活性剤等を好適に用いることができる。
これらの糖類及びイオン性有機物以外の有機物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機物と中心粒子との混合が容易で、均一な炭素質被膜の被覆を得るためには、用いる有機物は溶媒可溶性であることが好ましく、取扱いの容易さ、安全性、価格等の点で水溶性であることがより好ましい。
【0037】
炭素質被膜で被覆された中心粒子(炭素質被覆正極活物質)の一次粒子の平均粒子径は、40nm以上400nm以下であることが好ましくは、45nm以上360nm以下であることがより好ましく、50nm以上340nm以下であることがさらに好ましく、60nm以上340nm以下であることがよりさらに好ましい。
炭素質被覆正極活物質の一次粒子の平均粒子径が40nm以上であると、正極作成のために必要な結着剤の量を低減することができ、正極中の正極活物質量を増加させ、電池の容量を高めることができる。また、結着力不足による炭素質被膜の剥離を抑制することができる。
一方、炭素質被覆正極活物質の一次粒子の平均粒子径が400nm以下であると、十分な高速充放電性能を得ることができる。
ここで、一次粒子の平均粒子径とは、個数平均粒子径のことである。一次粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)観察により測定した200個以上の粒子の粒子径を個数平均することにより求めることができる。
【0038】
中心粒子を被覆する炭素質被膜の厚さ(平均値)は、0.5nm以上6nm以下であることが好ましく、0.8nm以上5nm以下であることがより好ましく、0.8nm以上3nm以下であることがさらに好ましい。
炭素質被膜の厚さが0.5nm以上であると炭素質被膜中の電子の移動抵抗の総和が高くなることを抑制できる。これによりリチウムイオン電池の内部抵抗の上昇を抑制でき、高速充放電レートにおける電圧低下を防止することができる。
一方、炭素質被膜の厚さが6nm以下であるとリチウムイオンが炭素質被膜中を拡散することを妨害する立体障害の形成を抑制することができ、これによりリチウムイオンの移動抵抗が低くなる。その結果、電池の内部抵抗の上昇が抑えられ、高速充放電レートにおける電圧低下を防止することができる。
なお、炭素質被膜の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて炭素質被覆正極活物質を撮影し、得られた断面の画像から炭素質被膜の厚さを100箇所測定し、その平均値から求めることができる。
【0039】
中心粒子に対する炭素質被膜の被覆率は60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。炭素質被膜の被覆率が60%以上であることで、炭素質被膜の被覆効果が十分に得られる。
なお、炭素質被膜の被覆率は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)、エネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive X−ray microanalyzer、EDX)等を用いて炭素質被覆正極活物質を観察し、正極活物質表面を覆っている部分の割合を算出し、その平均値から求めることができる。
【0040】
炭素質被膜の密度は、0.2g/cm
3以上2g/cm
3以下であることが好ましく、0.5g/cm
3以上1.5g/cm
3以下であることがより好ましい。炭素質被膜の密度とは、炭素質被膜の単位体積当たりの質量である。
炭素質被膜の密度が0.2g/cm
3以上であると炭素質被膜が十分な電子伝導性を示すことができる。一方、2g/cm
3以下であると炭素質被膜中に層状構造からなる黒鉛の結晶が少量であるため、リチウムイオンが炭素質被膜中を拡散する際に黒鉛の微結晶による立体障害が生じない。これにより、リチウムイオン移動抵抗が高くなることがない。その結果、リチウムイオン電池の内部抵抗が上昇することがなく、リチウムイオン電池の高速充放電レートにおける電圧低下が生じない。
【0041】
正極材料の炭素含有率(正極材料に含まれる炭素含有量)は、0.9質量%以上2.5質量%以下であることが好ましく、0.9質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましく、0.9質量%以上1.8質量%以下であることが更に好ましく、1.0質量%以上1.6質量%以下であることがより更に好ましい。
正極材料の炭素含有率が0.9質量%以上であると、電子伝導性を十分に高めることができる。一方、正極材料の炭素含有率が2.0質量%以下であると、電極密度を高めることができる。
なお、正極材料の炭素含有率は、炭素分析計(例えば、株式会社堀場製作所製、炭素硫黄分析装置:EMIA−810W)を用いて測定することができる。
【0042】
X線回折測定により解析した正極材料の結晶子径は、40nm以上200nm以下であることが好ましい。
正極材料の結晶子径が40nm以上であると、中心粒子表面を炭素質被膜で十分に被覆するために必要な炭素量が抑えられ、また、結着剤の量を抑えることができるため、正極中の正極活物質量を増やすことができ、電池の容量を高めることができる。また、結着力不足による炭素質被膜の剥離を生じにくくすることができる。
一方、正極材料の結晶子径が200nm以下であると正極活物質の内部抵抗が抑えられ、電池を形成した場合に、高速充放電レートにおける放電容量を高めることができる。
正極材料の結晶子径は、50nm以上180nm以下であることがより好ましく、60nm以上170nm以下であることがさらに好ましく、70nm以上160nm以下であることがより更に好ましい。
なお、正極材料の結晶子径は、X線回折装置(例えば、RINT2000、RIGAKU製)により測定し、得られる粉末X線回折図形の(020)面の回折ピークの半値幅、及び回折角(2θ)を用い、シェラーの式により算出することができる。
【0043】
上記凝集粒子を含む正極材料の累積粒度分布を次のように制御することで、D/GとV/Gの各変動係数を2%以下とし易く、電池の特性を向上し易い。
【0044】
上記凝集粒子を含む正極材料の累積粒度分布における累積百分率10%の粒子径(d10)は、0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、0.8μm以上4μm以下であることがより好ましく、1.1μm以上3μm以下であることが更に好ましい。
d10が上記範囲内であると、正極形成用ペーストをアルミニウム集電体に塗工し、乾燥した正極合材層の構造を均一化することができ、充放電反応に伴う局所的な過電圧が抑制され、金属溶出量を低減することができる。
【0045】
上記凝集粒子を含む正極材料の累積粒度分布における累積百分率50%の粒子径(d50)は、2μm以上12μm以下であることが好ましく、3μm以上10μm以下であることがより好ましく、3.5μm以9μm以下であることが更に好ましい。
d50が上記範囲内であると、正極形成用ペーストをアルミニウム集電体に塗工し、乾燥した正極合材層の構造を均一化することができ、充放電反応に伴う局所的な過電圧が抑制され、金属溶出量を低減することができる。
【0046】
また、上記凝集粒子を含む正極材料の累積粒度分布における累積百分率90%の粒子径(d90)は、25μm以下であることが好ましく、23μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。
d90が20μm以下であると、正極合材層の厚みに対し凝集粒子径が大きくなり過ぎず、正極合材層表面に凹凸が生じにくく、正極合材層の構造が均一となる。
また、d90の下限値は特に限定されないが、好ましくは7μm以上である。
【0047】
[リチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法]
本実施形態の正極材料の製造方法は、正極材料が、中心粒子と、前記中心粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを含み、かつ、既述のラマンスペクトル特性を備え得る方法であれば、特に制限されない。
例えば、炭素源となる糖類及びイオン性有機物を含む有機物と、正極活物質及び正極活物質前駆体から選ばれる1種以上と、溶媒とを混合してスラリーを得る第一工程と;
スラリーを乾燥し、造粒する第二工程と;
第二工程で得られた造粒物を、目開き25μm以上50μm以下の篩にかけて粗大粒子を除去する第三工程と;
前記第三工程で得られた造粒物を、焼成し、炭素源を炭化する第四工程とを有する方法により、正極材料を製造することができる。
【0048】
(第一工程)
本工程は、炭素源となる糖類及びイオン性有機物を含む有機物と、正極活物質及び正極活物質前駆体から選ばれる1種以上と、溶媒とを混合してスラリーを得る工程である。
糖類、糖類以外の有機物、正極活物質及び正極活物質前駆体としては、それぞれ前述したものを用いることができる。
【0049】
まず、有機物と、正極活物質及び正極活物質前駆体から選ばれる1種以上とを溶媒に溶解又は分散させて、混合物を調製する。有機物と、正極活物質及び正極活物質前駆体から選ばれる1種以上とを溶媒に溶解又は分散させる方法としては、特に限定されないが、例えば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、アトライタ等の分散装置を用いることができる。
【0050】
前記溶媒としては、たとえば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびγ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミドおよびN−メチルピロリドン等のアミド類;ならびにエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの溶媒の中で、好ましい溶媒は水である。
なお、必要に応じて分散剤を添加してもよい。
【0051】
有機物と、正極活物質及び正極活物質前駆体から選ばれる1種以上との配合比は、正極活物質及び正極活物質前駆体から選ばれる1種以上から得られる活物質100質量部に対して、有機物から得られる炭素質量で、好ましくは0.5質量部以上10質量部以下である。実際の配合量は加熱炭化による炭化量(炭素源の種類、炭化条件等)により異なるが、おおむね1質量部から8質量部程度である。
【0052】
また、有機物と、正極活物質及び正極活物質前駆体から選ばれる1種以上とを溶媒に溶解又は分散する際には、正極活物質及び正極活物質前駆体から選ばれる1種以上を溶媒に分散させた後、有機物を添加し撹拌することが好ましい。
【0053】
(第二工程)
本工程は、スラリーを乾燥し、造粒する工程である。
スラリーを乾燥する方法は特に限定されないが、例えば、噴霧乾燥、流動層乾燥、凍結乾燥等の造粒乾燥法を用いることができる。
例えば、噴霧乾燥法としてスプレードライヤーを用いて、不純物が除去されたスラリーを、乾燥し、造粒することで、造粒物を得ることができる。
【0054】
(第三工程)
本工程は、第二工程で得られた造粒物を、目開き25μm以上50μm以下の篩にかけて粗大粒子を除去する工程である。
後述する第四工程で造粒物を焼成する前に、造粒物から粗大粒子を除去し、造粒物の粒径を揃えておくことで、中心粒子表面を被覆する有機物の焼きムラが抑制され、炭素質被膜の炭化度合いのムラを抑制することができる。その結果、正極材料のラマンスペクトルにおいて、D/G及びV/Gの分布が小さくなり、各変動係数を2%以下にすることができる。
【0055】
第三工程において粗大粒子を除去した後、第四工程に進む前に、更に、造粒物を、2μm以上10μm以下の篩にかけて破片粒子を除去する後工程を有することが好ましい。
粗大粒子に加え、破片粒子も除去することで、造粒物の粒径がより一層揃いやすく、中心粒子表面を被覆する有機物の焼きムラがより一層抑制され、炭素質被膜の炭化度合いのムラもより一層抑制することができる。従って、正極材料のラマンスペクトルにおいて、D/G及びV/Gの分布をより小さくすることができ、各変動係数を2%以下にしやすくなる。
【0056】
有機物の焼きムラと、炭素質被膜の炭化度合いのムラをより抑制する観点から、粗大粒子除去のための篩の目開きは、30μm以上45μm以下であることが好ましく、32μm以上42μm以下であることがより好ましい。
炭素質被膜の炭化度合いのムラをより抑制する観点、及び作業効率の観点から、破片粒子を除去するための篩の目開きは、3μm以上8μm以下であることが好ましく、4μm以上6μm以下であることがより好ましい。
【0057】
(第四工程)
本工程は、第三工程で得られた造粒物を、焼成し、炭素源を炭化する工程である。
焼成する方法は特に限定されないが、管状炉、ロータリーキルン、ローラーハースキルン等の炉を用いることができる。
例えば、管状炉を用いた場合は、第三工程で篩分けされ、粒径の揃った造粒物を600℃以上1000℃以下で焼成することで、中心粒子表面を被覆する有機物の焼きムラが抑制され、炭素質被膜の炭化度合いのムラを抑制することができる。
【0058】
焼成温度が1000℃以下であることで、D/Gの平均値を0.98以下とし易く、また、V/Gの平均値を0.66以下とし易くなり、サイクル特性に優れる電池を製造し易い。
焼成温度が600℃以上であることで、D/Gの平均値を0.77以上とし易く、また、V/Gの平均値を0.50以上とし易くなり、レート特性に優れる電池を製造し易い。
焼成温度は、650℃以上900℃以下であることが好ましく、700℃以上850℃以下であることがより好ましく、700℃以上800℃以下であることが更に好ましい。
また、造粒物の焼成時間は、通常、1〜24時間であり、1〜10時間であることが好ましく、1〜6時間であることがより好ましく、1〜3時間であることが更に好ましい。
【0059】
第四工程での焼成は、非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気としては、窒素(N
2)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましく、より酸化を抑えたい場合には水素(H
2)等の還元性ガスを数体積%程度含む還元性雰囲気が好ましい。また、熱処理時に非酸化性雰囲気中に蒸発した有機分を除去する目的で、酸素(O
2)等の支燃性または可燃性ガスを不活性雰囲気中に導入してもよい。
【0060】
[リチウムイオン二次電池用正極]
本実施形態の正極は、電極集電体と、該電極集電体上に形成された正極合剤層とを備えたリチウムイオン二次電池用正極であって、前記正極合剤層は、既述の本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含有する。
より詳細には、本実施形態の正極は、金属箔からなる電極集電体と、その電極集電体上に形成された正極合剤層と、を備え、正極合剤層が、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含有するものである。すなわち、本実施形態の正極は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を用いて、電極集電体の一主面に正極合剤層が形成されてなるものである。
本実施形態の正極は、本実施形態の正極材料を含むため、本実施形態の正極を用いたリチウムイオン二次電池は、放電容量が高く、サイクル特性に優れる。
【0061】
本実施形態の正極を作製するには、上述の正極材料と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒とを混合して、正極形成用塗料又は正極形成用ペーストを調製する。この際、必要に応じてカーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛等の導電助剤を添加してもよい。
結着剤、すなわちバインダー樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
正極材料とバインダー樹脂との配合比は、特に限定されないが、例えば、正極材料100質量部に対してバインダー樹脂を1質量部以上30質量部以下、好ましくは3質量部以上20質量部以下とする。
【0062】
正極形成用塗料又は正極形成用ペーストに用いる溶媒としては、バインダー樹脂の性質に合わせて適宜選択すればよい。
例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等を挙げることができる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0063】
次いで、正極形成用塗料又は正極形成用ペーストを、金属箔の一方の面に塗布し、その後、乾燥し、上述の正極材料とバインダー樹脂との混合物からなる塗膜が一方の面に形成された金属箔を得る。
次いで、塗膜を加圧圧着し、乾燥して、金属箔の一方の面に正極材料層を有する集電体(正極)を作製する。
【0064】
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、非水電解質とを備えるリチウムイオン二次電池であって、正極として、既述の本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極を備える。本実施形態の正極を用いた本実施形態の電池は、放電容量が高く、サイクル特性に優れる。
本実施形態の電池では、負極、電解液、セパレーター等は特に限定されない。例えば、負極としては、金属Li、炭素材料、Li合金、Li
4Ti
5O
12等の負極材料を用いることができる。また、電解液とセパレーターの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、実施例に記載の形態に限定されるものではない。
例えば、本実施例では、導電助剤としてアセチレンブラックを用いているが、カーボンブラック、グラファイト、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛などの炭素材料を用いてもよい。また、対極に天然黒鉛を用いた電池で評価しているが、当然ながら人造黒鉛、コークスのような他の炭素材料、Li金属Li合金等の金属負極、Li
4Ti
5O
12の様な酸化物系負極材料を用いてもよい。また、非水電解液(非水電解質溶液)として1mol/LのLiPF
6を含む、炭酸エチレンと炭酸エチルメチルを体積%で3:7に混合したものを用いているが、LiPF
6の代わりにLiBF
4LiClO
4等;炭酸エチレンの代わりに炭酸プロピレン炭酸ジエチル等を用いてもよい。また、電解液とセパレーターの代わりに固体電解質を用いてもよい。
【0066】
<製造例:正極活物質(LiFePO
4)の製造>
LiFePO
4の合成は、以下のようにして水熱合成で行った。
Li源としてLiOH、P源としてNH
4H
2PO
4、Fe源(一般式におけるAの原料)としてFeSO
4・7H
2Oを用い、これらを物質量比でLi:Fe:P=3:1:1となるように純水に混合して200mlの均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量500mLの耐圧密閉容器に入れ、170℃で12時間、水熱合成を行った。この反応後に室温(25℃)になるまで冷却して、沈殿しているケーキ状態の反応生成物を得た。この沈殿物を蒸留水で複数回、十分に水洗し、乾燥しないように含水率30%に保持し、ケーキ状物質とした。このケーキ状物質を若干量採取し、70℃で2時間真空乾燥させて得られた粉末を、X線回折装置(製品名:RINT2000、RIGAKU社製)で測定したところ、単相のLiFePO
4が形成されていることが確認された。
【0067】
<実施例1>
製造例で得られたLiFePO
4(正極活物質)20gと、炭素源としてスクロース0.73gを総量で100gとなるように水に混合し、0.1mmφのジルコニアビーズ150gとともに、ビーズミルで粉砕混合して、分散粒径(d50)が100nmとなるスラリー(混合物)を得た(第一工程)。
次いで、得られたスラリーを、スプレードライヤーを用いて乾燥出口温度が60℃となる温度で乾燥、造粒した(第二工程)。
得られた造粒粉を目開き38μmの篩をかけて、粗大粒子を除去し(第三工程)、その後、5μmの篩で破片粒子を除去した(後工程)。
その後、管状炉を用い、造粒粉を温度770℃で2時間、熱処理(焼成)を行い、炭素質被覆電極活物質からなる正極材料を得た(第四工程)。
なお、炭素質被覆電極活物質は、LiFePO
4からなる中心粒子と、炭素質被膜とからなり、中心粒子表面が炭素質被膜で覆われた構造である。
【0068】
<実施例2>
管状炉の焼成温度を730℃にした以外は実施例1と同様にして、炭素質被覆活物質からなる正極材料を得た。
【0069】
<実施例3>
目開き5μmの篩で破片粒子を除去しなかった(後工程を行わなかった)以外は実施例1と同様にして、炭素質被覆活物質からなる正極材料を得た。
【0070】
<実施例4>
分散粒径(d50)が60nmとなるまで、ビーズミルによる分散を行った以外は実施例2と同様にして、炭素質被覆活物質からなる正極材料を得た。
【0071】
<実施例5>
分散粒径(d50)が200nmとなるまで、ビーズミルによる分散を行った以外は実施例1と同様にして、炭素質被覆活物質からなる正極材料を得た。
【0072】
<比較例1>
管状炉での焼成温度を850℃にした以外は実施例1と同様にして、炭素質被覆活物質からなる正極材料を得た。
【0073】
<比較例2>
スプレードライヤーにて得られた造粒粉を篩にかけることなく管状炉で焼成した(第三工程と後工程のどちらも行わなかった)以外は実施例1と同様にして、炭素質被覆活物質からなる正極材料を得た。
【0074】
<比較例3>
管状炉での焼成温度を600℃にした以外は実施例1と同様にして、炭素質被覆活物質からなる正極材料を得た。
【0075】
<リチウムイオン電池の作製>
実施例及び比較例で得られた正極材料と、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂とを、正極材料:AB:PVdF=90:5:5の質量比で、N−メチルピロリドン(NMP)に混合し、正極形成用ペーストとした。得られたペーストを、厚さ30μmのアルミニウム箔上に塗布し、乾燥後、所定の密度となるように圧着して電極板とした。得られた電極板を、塗布面の面積が3×3cm
2で、その周りにタブしろを有する板状に打ち抜き、タブを溶接して試験電極を作製した。
一方、対極には天然黒鉛を塗布した塗布電極を用いた。
セパレーターとしては、多孔質ポリプロピレン膜を採用した。
また、非水電解液(非水電解質溶液)として、1mol/Lのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)溶液を用いた。なお、このLiPF
6溶液に用いられる溶媒としては、炭酸エチレンと炭酸ジエチルを体積基準で1:1に混合し、添加剤として炭酸ビニレン1質量%を加えたものを用いた。
そして、以上のようにして作製した試験電極、対極および非水電解液を用いて、ラミネート型のセルを作製し、実施例および比較例の電池とした。
【0076】
〔正極材料の評価〕
実施例及び比較例で得られた正極材料、及び該正極材料が含む成分について物性を評価した。評価方法は、以下の通りである。結果を表1に示す。
【0077】
(1)ラマンスペクトル特性
ラマン顕微鏡(HORIBA製、ラマン顕微鏡XploRA PLUS)を用い、正極材料のラマン分光を測定した。測定波長は532nmを使用し、600〜2000cm
−1の間で測定を行った。
1200〜1400cm
−1の波数帯域におけるスペクトルのピーク強度(ピークの高さ)をD値;
1400〜1550cm
−1の波数帯域におけるスペクトルの最低強度(ボトムの高さ)をV値;及び
1550〜1700cm
−1の波数帯域におけるスペクトルのピーク強度(ピークの高さ)をG値として算出した。
各値を同じ試料の別視野で300点測定し、各測定点にてD/GとV/Gを算出し、その平均を算出した。求められたD/G及びその平均値、並びにV/G及びその平均値を既述の式(1)と(2)に当てはめ、D/Gの変動係数及びV/Gの変動係数を算出した。
【0078】
(2)正極活物質の粒度分布
正極材料を水に分散させ、分散液に含まれる正極材料の粒度分布を、粒度分布計(商品名:LA−920、株式会社堀場製作所製)を用い、JIS Z8825「粒子径解析−レーザ回折・散乱法」に準ずる方法で測定した。
【0079】
(3)正極材料の炭素含有率
炭素分析計(株式会社堀場製作所製、炭素硫黄分析装置:EMIA−810W)を用いて、正極材料の炭素含有率(質量%)を測定した。
【0080】
(4)正極材料の結晶子径
正極材料の粉末X線回折図形を、X線回折装置(製品名:RINT2000、RIGAKU製)により測定した。粉末X線回折図形の(020)面の回折ピークの半値幅、及び回折角(2θ)を用い、シェラーの式により、正極材料の結晶子径(nm)を算出した。
【0081】
〔正極及びリチウムイオン電池の評価〕
実施例及び比較例で得られたリチウムイオン電池を用いて、下記方法にて、放電容量とサイクル試験による容量維持率を測定した。カットオフ電圧は2.5−3.7V(vsカーボン負極)とした。結果を表1に示す。
【0082】
(1)放電容量
環境温度25℃にて、充電電流を1C、放電電流を10Cとして、定電流充放電により放電容量を測定した。
許容範囲は、112mAh/g以上である。
【0083】
(2)容量維持率
環境温度25℃にて、充電電流を2C、放電電流を2Cとして、定電流充放電により放電容量を測定し、測定された値を初期放電容量とした。その後環境温度を45℃に設定し、充電電流を2C、放電電流を2Cとして定電流充放電を600回行い、その後、再度、環境温度を25℃にて、充電電流を2C、放電電流を2Cとして、定電流充放電により放電容量を測定し、サイクル後の放電容量を得た。
サイクル試験容量維持率=サイクル後の放電容量/初期放電容量
として、サイクル試験による容量維持率を算出した。
許容範囲は、74%以上である。
【0084】
【表1】
【0085】
(結果のまとめ)
実施例の正極材料は、平均D/Gが0.77〜0.98、かつ平均V/Gが0.50〜0.66であり、D/G及びV/Gの変動係数がそれぞれ2%以下であるラマンスペクトル特性を有している。これらの正極材料を用いた電池は、放電容量が高く、サイクル特性に優れた。
一方、平均D/G及び平均V/Gが、本発明の所定の上限を超える比較例1の正極材料を用いて製造された電池は、放電容量が比較的大きいものの許容範囲には入らず、また、サイクル試験の容量維持率が低下した。
平均D/G及び平均V/Gが、本発明の所定の下限を下回る比較例3の正極材料を用いて製造された電池は、サイクル試験の容量維持率が大きいものの、放電容量が低下した。
D/Gの変動係数及びV/Gの変動係数がいずれも2%を超えた比較例2の正極材料を用いて製造された電池は、サイクル試験の容量維持率が大きいものの、放電容量は小さかった。
【0086】
図1及び
図2に、ラマンスペクトル強度比の、D/G(縦軸)に対するV/G(横軸)のプロットを示すグラフを示した。
図1には、実施例1の結果を示し、
図2には、比較例2の結果を示した。
図1の実施例1においては、D/G及びV/Gのプロットが、纏まっており、変動が小さいことがわかる。一方、
図2の比較例2においては、D/G及びV/Gのプロットが、ばらけてしまい、変動が大きいことがわかる。
【課題】放電容量が高く、サイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができるリチウムイオン二次電池用正極材料、該正極材料を用いてなるリチウムイオン二次電池用正極、及び該正極を備えたリチウムイオン二次電池を提供する。
のスペクトルのピーク強度をGとしたとき、平均D/Gが0.77〜0.98、かつ平均V/Gが0.50〜0.66であり、D/G及びV/Gの変動係数が、それぞれ2%以下であるリチウムイオン二次電池用正極材料。