(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマー(A)がオキシアルキレン構造を有するものであり、前記オキシアルキレン構造の全量に対する、前記オキシエチレン構造の質量割合が90質量%〜100質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインク吐出安定性付与剤。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のインク吐出安定性付与剤は、後述するポリマー(A)を必須成分とし、必要に応じてその他の任意成分を含有するものである。
【0015】
前記ポリマー(A)としては、シンクロトロン放射光を用いた小角X線散乱法によって求められる散乱プロファイルのKratky plotにおいて、散乱ベクトルqが0nm
−1〜2nm
−1の範囲内に少なくとも1つの極小値を有し、かつ、前記ポリマー(A)及び水を含有する、前記ポリマー(A)の濃度が20質量%である水溶液の平行光線透過率が85%以上であるものを使用する。
【0016】
本発明で使用するポリマー(A)は、前記したとおり、シンクロトロン放射光を用いた小角X線散乱法によって求められる散乱プロファイルのKratky plotにおいて、散乱ベクトルqが0nm
−1〜2nm
−1の範囲内に少なくとも1つの極小値を有する。これは、前記ポリマー(A)が、前記ポリマー(A)及び水を含有する組成物において、巨視的(目視)には水に溶解しているものの、微視的には粒子として振舞っていることを示している。
【0017】
前記極小値の有無は、前記小角X線散乱法によって散乱プロファイルを測定し、得られた散乱プロファイルをKratky Plotに変換したものをもとに判断することができる。
【0018】
小角X線散乱法とは、1nm〜100nm程度の大きさの物質の構造を非破壊で分析する手法である。物質にX線を照射すると、物質を構成する原子や分子の電子密度を反映して、X線が散乱される。特に、物質を透過したX線の小角度領域(散乱角0.1°<(2θ)<10°)に表れるX線の散乱を測定する手法を小角X線散乱法という。また、本発明では、前記小角領域に加え、0°<(2θ)≦0.1°の領域に現れるX線の散乱を測定する超小角X線散乱法を採用してもよい。
【0019】
前記ポリマー(A)の水中での形状および大きさを測定するためには、高輝度な入射X線を使用することが好適である。現実的な時間で精度よく測定するためには、入射X線の輝度が10
16(photons/sec/mm
2/mrad
2/0.1%bandwidth)以上であることが好ましく、より好ましくは10
18以上である。
【0020】
10
16以上の高輝度X線は、たとえば兵庫県のSPring−8や茨城県のPhoton Factory等の光源を備えた大型高輝度放射光施設で使用することができる。
【0021】
前記小角X線散乱法による散乱プロファイルの測定には、以下の装置を使用する。
【0022】
測定装置:大型高輝度放射光施設:SPring−8内のフロンティアソフトマター開発産学連合体が所有するビームライン:BL03XU 第2ハッチ
測定モード:小角X線散乱(SAXS)
測定条件:波長0.1nmのX線、カメラ長約8m(USAXS)2m(SAXS)、ビームスポットサイズ 140μm×80μm、アテネーターなし、露光時間 30秒、2θ=0.01°〜10°
解析ソフト:2次元散乱データの散乱プロファイル化にはFit2D(European Synchrotron Radiation Facilityのホームページ[http://www.esrf.eu/computing/scientific/FIT2D/]より入手)を使用した。
【0023】
はじめに、前記ポリマー(A)と、純水等の水とを含有する組成物(前記組成物の全量に対する前記ポリマー(A)の質量割合が0.5質量%)を準備した。
【0024】
前記組成物を石英ガラス管に入れたものを上記測定装置にセットし、上記測定モード及び測定条件でX線を入射させることによって二次元散乱データを得た。
【0025】
前記二次元散乱データを、Fit2Dを使用して処理することによって、目的とする散乱プロファイルを得た。
【0026】
前記散乱プロファイルを構成する散乱ベクトルqは、式(1)で定義される。
【0028】
λはX線の波長、2θは散乱角を示す。前記X線の波長及び散乱角としては、実測値を使用する。
【0029】
次に、前記方法で求めた散乱プロファイルを、Kratky plotに変換する。
【0030】
前記Kratky plotは、前記散乱プロファイルで示される散乱ベクトルqを横軸とし、散乱強度Iと前記散乱ベクトルqの二乗との積[I×q
2]を縦軸としてプロットしたものを指す。
【0031】
前記Kratky plotにおいて、前記散乱ベクトルqが0nm
−1〜2nm
−1である範囲内に少なくとも1つの極小値を有するポリマー(A)は、微視的に粒子構造を有するとみなした(参考文献、放射光、2006、11月号、vol.19、No.6、p345)。
【0032】
前記ポリマー(A)としては、前記Kratky plotにおいて、前記散乱ベクトルqが0nm
−1〜2nm
−1である範囲内に極小値を1以上有するものを使用することが好ましく、1有するものを使用することが、後述するコアシェル型のポリマーを製造でき、かつ、インクの吐出性をより一層向上可能なインク吐出安定性付与剤を得るうえでより好ましい。なお、前記散乱ベクトルが小さい領域(例えば、0nm
−1以上0.2nm
−1未満)は、測定精度の影響をうけやすいため、前記極小値は、前記散乱ベクトルqが0.2nm
−1以上2nm
−1以下の範囲内に1以上有することが好ましい。
【0033】
前記ポリマー(A)としては、前記Kratky plotにおいて、極大値を1以上有するものを使用することが好ましく、2以上有するものを使用することがより好ましく、2つ有するものを使用することが、後述するコアシェル型のポリマーを製造でき、かつ、インクの吐出性をより一層向上可能なインク吐出安定性付与剤を得るうえでより好ましい。
【0034】
前記極大値は、前記散乱ベクトルqが0nm
−1〜2nm
−1である範囲内に1以上存在することが好ましく、2以上存在することがより好ましく、2〜5存在することがより好ましく、2つ存在することが、後述するコアシェル型のポリマーを製造でき、かつ、インクの吐出性をより一層向上可能なインク吐出安定性付与剤を得るうえでより好ましい。
【0035】
また、前記ポリマー(A)としては、前記ポリマー(A)水溶液の前記平行光線透過率が85%以上のものを使用する。前記平行光線透過率は、ポリマー(A)の水溶性の指標であり、平行光線透過率が大きいほど、目視では前記ポリマー(A)の水溶液が透明であることを示す。
【0036】
前記平行光線透過率は、以下の方法で測定された値を指す。
【0037】
前記平行光線透過率を測定する際に使用する試料としては、前記ポリマー(A)と水を含有する水溶液を使用する。前記水溶液としては、例えば常温〜80℃の水に前記ポリマー(A)を供給し、目視で前記ポリマー(A)が水に溶解するまで攪拌することによって得られたものを使用する。前記ポリマー(A)の一部または全部が水に溶解せず、目視で沈殿物を確認できたものについては、前記平行線透過率が85%以上であるとはしない。
【0038】
前記試料に前記ポリマー(A)及び水以外の成分が含まれることは、前記平行光線透過率を測定するうえで好ましくない。そのため、前記試料を調製する際には、前記ポリマー(A)及び水以外の成分が混入しないよう留意する。
【0039】
前記ポリマー(A)及び水以外の成分は、前記水溶液の全量に対して1質量%以下であることが好ましく、0質量%〜0.5質量%であることが特に好ましい。
【0040】
前記試料としては、前記水溶液の全量に対してポリマー(A)を20質量%含むものを使用する。
【0041】
前記水としては、前記平行光線透過率を正確に測定するうえで、不純物が少ないイオン交換水や純水や超純水を使用することが好ましい。
【0042】
前記試料の平行光線透過率の測定には、積分球式光電光度法の濁度計を使用する。測定装置としては特に制限は無いが、本発明では、日本電色工業株式会社製NDM2000(D65)で測定した値を示す。NDM2000の測定原理はJISK7136に準じたものである。前記方法で調製した試料を角型液体用セル(10mm×36mm×55mm)の中に泡が入らないように注入し、光路10mmの条件で平行光線透過率を測定する。
【0043】
前記ポリマー(A)としては、平行光線透過率が85%以上のものを使用することが好ましく、90%以上のものを使用することが、所定の極小値や透過率を有するポリマー(A)を製造でき、かつ、インクの吐出性をより一層向上可能なインク吐出安定性付与剤を得るうえでより好ましい。
【0044】
前記平行光線透過率を有するポリマー(A)は、目視では水に溶解したと判断できるものである。前記ポリマー(A)としては25℃の水100gに対して溶解するものを使用することが好ましい。
【0045】
一方、前記ポリマー(A)は、前記所定の極小値を有することからして、微視的には粒子としての挙動を有するものである。
【0046】
本発明は、従来知られた数多くのポリマーのなかから、上記したような特定の振る舞いをするポリマーを選択し、それをインクジェット印刷用のインクの添加剤に使用した場合に、インクの吐出性を著しく向上させることのできる発明である。
【0047】
前記ポリマー(A)としては、例えば極性の異なる構造を有するポリマーを使用することが好ましく、より具体的には親水性の構造及び疎水性の構造を有し、それらが局在化した構造を有するポリマーを使用することが好ましい。
【0048】
前記親水性の構造としては、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有する構造が挙げられ、ノニオン性基を有する構造であることが、微視的に粒子としての挙動を発現させる上で好ましい。
【0049】
前記ノニオン性基としては、例えばオキシエチレン構造を有するものを使用することが好ましい。
【0050】
前記ポリマー(A)としては、前記ポリマー(A)の全量に対するオキシエチレン構造の割合が10モル%以上有するものを使用することが好ましく、13モル%〜30モル%有するものを使用することがより好ましい。
【0051】
前記ポリマー(A)としては、前記オキシエチレン構造以外のオキシプロピレン構造等のオキシアルキレン構造を有するものも使用できるが、所定の極小値や透過率を有するポリマー(A)を製造でき、かつ、インクの吐出性をより一層向上可能なインク吐出安定性付与剤を得るうえでオキシプロピレン構造等の含有量はできるだけ少ない方が好ましい。
【0052】
前記ポリマー(A)としては、前記オキシアルキレン構造の全量に対する前記オキシエチレン構造の質量割合が90質量%〜100質量%であるものを使用することが好ましく、95質量%〜100質量%であるものを使用することがより好ましい。
【0053】
前記ポリマー(A)としては、より具体的にはアクリル重合体等のビニル重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等を使用できるが、なかでも微視的に粒子としての挙動を発現させる設計の自由度が高いことから、ビニル重合体を使用することが好ましい。
【0054】
前記ビニル重合体のうち、前記ノニオン性基を有するビニル重合体としては、より具体的には主鎖であるビニル重合体の側鎖としてポリオキシエチレン鎖を有する重合体を使用することが、所定の極小値や透過率を有するポリマー(A)を製造でき、かつ、インクの吐出性をより一層向上可能なインク吐出安定性付与剤を得るうえでより好ましい。
【0055】
主鎖であるビニル重合体の側鎖としてポリオキシエチレン構造を有するビニル重合体としては、前記ビニル重合体を構成する単量体成分の全量に対するオキシエチレン単位の割合が10モル%以上であるものを使用することが好ましく、13モル%以上であることが好ましく、23モル%〜45モル%であることが所定の極小値や透過率を有するポリマー(A)を製造でき、かつ、インクの吐出性をより一層向上可能なインク吐出安定性付与剤を得るうえでより好ましい。
【0056】
前記ビニル重合体としては、前記コアシェル型のビニル重合体を使用することが好ましい。前記コアシェル型のビニル重合体としては、例えば、前記したオキシエチレン構造を有するビニル重合体を使用することが好ましい。具体的には前記オキシエチレン構造を有するビニル重合体としては、主鎖であるビニル重合体によって構成されるコア部と、その側鎖であるポリオキシエチレン構造によって構成されるシェル部とを有するものを使用することが、所定の極小値や透過率を有するポリマー(A)を製造でき、かつ、インクの吐出性をより一層向上可能なインク吐出安定性付与剤を得るうえで好ましい。
【0057】
前記オキシエチレン構造を有するビニル重合体をはじめとするビニル重合体は、例えば単量体成分を重合させることによって製造することができる。
【0058】
前記単量体成分としては、例えば前記オキシエチレン構造を有するアクリル重合体を製造する場合であれば、ポリオキシエチレングリコール(メタ)アクリレートや、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを使用することができる。具体的な商品名としては、新中村化学(株)製 NKエステルM−90G、NKエステルM−130Gや、NKエステルM−230G、共栄社化学(株)製ライトアクリレート130A、(株)日油製ブレンマーPME−200、PME−400、PME−1000、PME−4000、AME−400などが挙げられる。なかでも新中村化学(株)製NKエステルM−230Gや(株)日油製ブレンマーPME−1000など、オキシエチレン構造の繰り返し単位数が、15単位以上50単位以下あるものを使用することが、親水性を付与することに加え、微視的に粒子としての挙動を付与するうえでより好ましい。
【0059】
また、前記単量体としては、前記ポリマー(A)に前記疎水性の構造を導入するうえで、例えばスチレン等の芳香族を有するビニル単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のビニル単量体を使用することができる。
【0060】
また、前記ポリマー(A)としては、アニオン性基を有するものを使用することができる。前記ポリマー(A)としては、前記ノニオン性基とアニオン性基とを両方有するものを使用することが好ましい。
【0061】
前記ポリマー(A)として前記アニオン性基を有するものを使用する場合、単量体としては(メタ)アクリル酸などの一塩基酸に加え、マレイン酸、イタコン酸などの二塩基酸等を使用することができる。
【0062】
前記ポリマー(A)としては、前記平行線透過率を85%以上に設定するうえで、前記アニオン性基を、前記ポリマー(A)全体に対して3〜10モル%有するものを使用することが好ましい。
【0063】
前記方法で得られたポリマー(A)としては、水溶性で、インクの吐出性をより一層向上可能なインク吐出安定性付与剤を得るうえで、重量平均分子量30000以下のものを使用することが好ましく、5000〜20000の範囲のものを使用することがより好ましい。
【0064】
前記ポリマー(A)は、もっぱらインクに吐出安定性を付与するための添加剤(インク吐出安定性付与剤)に使用することができる。
【0065】
前記インク吐出安定性付与剤としては、前記インク吐出安定性付与剤の全量に対して、前記ポリマー(A)を0.1質量%〜40質量%の範囲で含有するものを使用することが好ましく、10質量%〜30質量%の範囲で含有するものを使用することが、吐出性向上効果とインクの粘度、表面張力等の他の物性とのバランスを図る上でより好ましい。
【0066】
前記インク吐出安定性付与剤としては、前記ポリマー(A)の他に、必要に応じてその他の成分を含有するものを使用することができる。
【0067】
本発明のインク吐出安定性付与剤は、例えばインクジェット印刷インクをはじめとする各種インクに、経時的に吐出ノズルの詰まりを引き起こしにくく、また、経時的にインクの吐出方向が変化することがないレベルの吐出安定性を付与することができる。
【0068】
本発明のインク吐出安定性付与剤は、水性インク及び溶剤インクのどちらに対して使用できるが、水性インクに対して使用することがより好ましい。
【0069】
前記インク吐出安定性付与剤は、前記水性インクの全量に対して0.1質量%〜10質量%の範囲で使用することが好ましく、1.0質量%〜5.0質量%の範囲で使用することが、より一層優れた吐出性向上効果とインクの粘度、表面張力等の他の物性とのバランスを取る上で特に好ましい。
【0070】
前記水性インクとしては、例えば顔料インクや染料インクが挙げられる。前記水性インクのうち顔料を含有するものとしては、例えば顔料と顔料分散樹脂と水性媒体とを含有し、さらに前記インク吐出安定性付与剤を含有する水性インクが挙げられる。
【0071】
前記水性インクとしては、水性インクの良好な保存安定性を維持するうえで、前記水性インク100質量部に対して、前記顔料を好ましくは1質量〜20質量部含有し、前記顔料分散樹脂を好ましくは0.1質量部〜2質量部含有し、前記インク吐出安定性付与剤を好ましくは前記した範囲含有し、残りの成分として水や水溶性有機溶剤等の溶媒を含有するものが挙げられる。
【0072】
前記顔料としては、有機顔料や無機顔料を使用することができ、未処理顔料、処理顔料のいずれでも使用することができる。
【0073】
前記無機顔料としては、例えば酸化鉄、カーボンブラック等が挙げられる。
【0074】
前記有機顔料としては、例えばアゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0075】
前記顔料分散樹脂としては、親水性を付与する観点から、カルボキシ基、スルホン酸基または燐酸基を含有するものを使用することができる。
【0076】
前記アニオン性基を有する化合物としては、例えばアニオン性基を有するポリビニル系樹脂、アニオン性基を有するポリエステル系樹脂、アニオン性基を有するアミノ系樹脂、アニオン性基を有するアクリル系共重合体、アニオン性基を有するエポキシ系樹脂、アニオン性基を有するポリウレタン系樹脂、アニオン性基を有するポリエーテル系樹脂、アニオン性基を有するポリアミド系樹脂、アニオン性基を有する不飽和ポリエステル系樹脂、アニオン性基を有するフェノール系樹脂、アニオン性基を有するシリコーン系樹脂、アニオン性基を有するフッ素系高分子化合物等が挙げられ、なかでも、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体等を使用することが好ましい。
【0077】
前記水溶性有機溶剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらと同族のジオールなどのジオール類;ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルの各エーテル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブ、グリセリンのポリエチレン付加物、グリセリンのポリオキシプロピレン付加物、グリセリンのポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレン付加物などのグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、およびこれらと同族のアルコールなどのアルコール類;あるいは、スルホラン;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、γ-ブチロラクトンなどのラクタム類;グリセリンおよびその誘導体等を単独または2種以上組合せ使用することができる。
【0078】
また、前記水性インクとしては、印刷物の耐擦過性の向上や、印刷濃度の向上を目的として、さらにバインダー(B)を含有する水性インクを使用することができる。
【0079】
前記バインダー(B)は、前記水性インクの全量に対して、0.1質量%〜15質量%の範囲で使用することが好ましく、0.5質量%〜10質量%の範囲で使用することが、印刷物の耐擦過性や印刷濃度等をより一層向上させるうえでより好ましい。
【0080】
前記した範囲のバインダー(B)を含有する水性インクは、通常、粘度の上昇傾向を示すため、経時的な吐出安定性の低下を引き起こす場合がある。とりわけ、布帛等への印刷物の耐擦過性の向上を目的とする場合には、前記バインダー(B)を比較的多く(概ね6質量%〜10質量%)含有するインクを使用する場合があり、このようなインクは、他のインクと比較して吐出安定性の低下を引き起こしやすい場合がある。
【0081】
しかし、本発明のインク吐出安定性付与剤を含有するインクであれば、前記バインダー(B)を比較的多く含む場合であっても、インクの優れた吐出安定性を維持でき、かつ、バインダー(B)を使用することによる印刷物の耐擦過性や印刷濃度の向上といった効果も奏することができる。
【0082】
前記バインダー(B)としては、例えば、にかわ、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、アラビアゴム、フィッシュグリューなどの天然タンパク質やアルギン酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、芳香族アミド、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル酸−アクリル酸エステル類の共重合体、スチレン−マレイン酸、スチレン−アクリル酸樹脂等を使用することができる。前記バインダー(B)としては、布帛等への印刷物の耐擦過性の向上を目的とする場合、様々な種類の布帛に印刷した場合であっても良好な耐擦過性を付与でき、かつ、良好な耐擦過性とインク粘度の過度な上昇防止とを両立するうえでポリウレタンを使用することが好ましい。
【0083】
本発明のインク吐出安定性付与剤を含有するインクは、もっぱらインクジェット印刷方式での印刷に使用することが好ましい。
【0084】
前記インクジェット印刷方式としては、サーマル型インクジェット印刷方式とピエゾ型インクジェット印刷方式が挙げられる。
【0085】
耐擦過性等に優れ高濃度の印刷物を製造可能な従来の高付加価値インクの多くは、ピエゾ型インクジェット印刷方式用に開発されたものであるため、かかるインクを、単にサーマル型インクジェット印刷方式に転用しても、インクを吐出することができない場合が多い。これは、前記インクの高付加価値化のために、前記バインダー(B)を使用することに起因すると考えられる。
【0086】
一方、産業界では、近年、サーマル型インクジェット印刷方式で耐擦過性や高印刷濃度の印刷物を製造可能なインクの開発が求められている。とりわけ、衣服やカーテン等の繊維製品の製造場面では、木綿等の布帛の繊維基材に、サーマル型インクジェット印刷方式で、耐擦過性や高印刷濃度の印刷画像を形成することが求められている。
【0087】
本発明のインク吐出性付与剤は、サーマル型インクジェット印刷方式ではほとんど吐出できない従来のピエゾ型インクジェット印刷インクやバインダー(B)を含有するインクに添加し使用することによって、サーマル型インクジェット印刷方式で吐出することを可能にする。
【0088】
本発明のインク吐出安定性付与剤を含有するインクは、もっぱら布帛等の繊維製品への印刷に使用する捺染剤として使用することができる。
【0089】
本発明のインク吐出安定性付与剤を含有するインクを用いて印刷可能な被記録媒体としては、前記した布帛、普通紙(PPC紙)等の吸収性の記録媒体、インクの吸収層を有する記録媒体、インクの吸収性を有しない非吸水性の記録媒体、インクの吸水性の低い難吸収性の記録媒体等が挙げられ、特に布帛や普通紙(PPC紙)等を使用することができる。
【0090】
本発明のインク吐出安定性付与剤を含有するインクを用いて被記録媒体に印刷された印刷物としては、例えばTシャツ等の衣服等が挙げられる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例でより具体的に説明する。
【0092】
(実施例1)
機械式撹拌機、熱電対、窒素導入口、滴下用漏斗2個及び還流管を備えた5リットルのフラスコに、酢酸ブチル2250g、スチレン143.6g、NKエステルAM−230G(新中村化学(株)製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)300.2g及びアクリル酸6.3gを仕込み95℃まで加熱した。95℃到達後、ベンゾイルペルオキシド8.0gを添加し反応を開始した。
【0093】
前記反応開始1時間後、モノマーフィードとして、スチレン335.0g、NKエステルAM−230G(新中村化学(株)製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)700.4g及びアクリル酸14.7gの混合物の前記フラスコへの滴下を開始した。前記滴下は、前記フラスコの内温を95℃に維持し、前記モノマーフィードを60分かけて均等に行った。
【0094】
前記滴下が完了した後、フラスコ内の物質を300分間還流させた。
【0095】
その後、前記フラスコ内の酢酸ブチルを蒸留して除くことによって、主鎖であるビニル重合体の側鎖としてポリオキシエチレン構造を有する粘稠液状のポリマー(A−1)(重量平均分子量10000)を得た。前記で得たポリマー(A−1)と、水酸化カリウム水溶液とを混合し、前記ポリマー(A−1)が有するカルボキシル基をすべて中和することによって、インク吐出安定性付与剤を得た。
【0096】
前記ポリマー(A−1)全体に対するオキシエチレン構造の割合は、14.5モル%であり、前記ポリマー(A−1)が有するオキシアルキレン構造の全量に対する、前記オキシエチレン構造の質量割合が100質量%であった。
【0097】
(実施例2)
機械式撹拌機、熱電対、窒素導入口、滴下用漏斗2個及び還流管を備えた5リットルのフラスコに、酢酸ブチル2250g、スチレン143.6g、NKエステルAM−90G(新中村化学(株)製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)300.2g及びアクリル酸6.3gを仕込み95℃まで加熱した。95℃到達後、ベンゾイルペルオキシド8.0gを添加し反応を開始した。
【0098】
前記反応開始1時間後、モノマーフィードとして、スチレン335.0g、NKエステルAM−90G(新中村化学(株)製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)700.4g及びアクリル酸14.7gの混合物の前記フラスコへの滴下を開始した。前記滴下は、前記フラスコの内温を95℃に維持し、前記モノマーフィードを60分かけて均等に行った。
【0099】
前記滴下が完了した後、フラスコ内の物質を300分間還流させた。
【0100】
その後、前記フラスコ内の酢酸ブチルを蒸留して除くことによって、主鎖であるビニル重合体の側鎖としてポリオキシエチレン構造を有する粘稠液状のポリマー(A−2)(重量平均分子量10000)を得た。前記で得たポリマー(A−2)と、水酸化カリウム水溶液とを混合し、前記ポリマー(A−2)が有するカルボキシル基をすべて中和することによってインク吐出安定性付与剤を得た。
【0101】
前記ポリマー(A−2)全体に対するオキシエチレン構造の割合は、24.7モル%であり、前記ポリマー(A−2)が有するオキシアルキレン構造の全量に対する、前記オキシエチレン構造の質量割合が100質量%であった。
【0102】
(実施例3)
機械式撹拌機、熱電対、窒素導入口、滴下用漏斗2個及び還流管を備えた5リットルのフラスコに、酢酸ブチル2250g、スチレン143.6g、NKエステルAM−230G(新中村化学(株)製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)300.2g及びアクリル酸6.3gを仕込み95℃まで加熱した。95℃到達後、ベンゾイルペルオキシド15.0gを添加し反応を開始した。
【0103】
前記反応開始1時間後、モノマーフィードとして、スチレン335.0g、NKエステルAM−230G(新中村化学(株)製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)700.4g及びアクリル酸14.7gの混合物の前記フラスコへの滴下を開始した。前記滴下は、前記フラスコの内温を95℃に維持し、前記モノマーフィードを60分かけて均等に行った。
【0104】
前記滴下が完了した後、フラスコ内の物質を300分間還流させた。
【0105】
その後、前記フラスコ内の酢酸ブチルを蒸留して除くことによって、主鎖であるビニル重合体の側鎖としてポリオキシエチレン構造を有する粘稠液状のポリマー(A−3)(重量平均分子量5000)を得た。前記で得たポリマー(A−3)と、水酸化カリウム水溶液とを混合し、前記ポリマー(A−3)が有するカルボキシル基をすべて中和することによってインク吐出安定性付与剤を得た。
【0106】
前記ポリマー(A−3)全体に対するオキシエチレン構造の割合は、14.5モル%であり、前記ポリマー(A−3)が有するオキシアルキレン構造の全量に対する、前記オキシエチレン構造の質量割合が100質量%であった。
【0107】
(比較例1)
機械式撹拌機、熱電対、窒素導入口、滴下用漏斗2個及び還流管を備えた5リットルのフラスコに、酢酸ブチル2250g、スチレン143.6g、EMF−063(HANNONG CHEMICALS INC製、ポリエチレンポリプロピレングリコールメタクリレート)300.2g及びアクリル酸6.3gを仕込み95℃まで加熱した。95℃到達後、ベンゾイルペルオキシド8.0gを添加し反応を開始した。
【0108】
前記反応開始1時間後、モノマーフィードとして、スチレン335.0g、EMF−063(HANNONG CHEMICALS INC製、ポリエチレンポリプロピレングリコールメタクリレート)700.4g及びアクリル酸14.7gの混合物の前記フラスコへの滴下を開始した。前記滴下は、前記フラスコの内温を95℃に維持し、前記モノマーフィードを60分かけて均等に行った。
【0109】
前記滴下が完了した後、フラスコ内の物質を300分間還流させた。
【0110】
その後、前記フラスコ内の酢酸ブチルを蒸留して除くことによって、主鎖であるビニル重合体の側鎖としてポリオキシエチレン構造を有する粘稠液状のポリマー(A−4)(重量平均分子量10000)を得た。前記で得たポリマー(A−4)と、水酸化カリウム水溶液とを混合し、前記ポリマー(A−4)が有するカルボキシル基をすべて中和することによってインク吐出安定性付与剤を得た。
【0111】
前記ポリマー(A−4)全体に対するオキシエチレン構造の割合は16.4モル%、オキシプロピレン構造の割合は8.2モル%であり、前記ポリマー(A−4)が有するオキシアルキレン構造の全量に対する、前記オキシエチレン構造の質量割合が66.7質量%であった。
【0112】
(比較例2)
機械式撹拌機、熱電対、窒素導入口、滴下用漏斗2個及び還流管を備えた5リットルのフラスコに、酢酸ブチル2250g、スチレン143.6g、NKエステルAM−230G(新中村化学(株)製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)300.2g及びアクリル酸6.3gを仕込み95℃まで加熱した。95℃到達後、ベンゾイルペルオキシド3.0gを添加し反応を開始した。
【0113】
前記反応開始1時間後、モノマーフィードとして、スチレン335.0g、NKエステルAM−230G(新中村化学(株)製、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート)700.4g及びアクリル酸14.7gの混合物の前記フラスコへの滴下を開始した。前記滴下は、前記フラスコの内温を95℃に維持し、前記モノマーフィードを60分かけて均等に行った。
【0114】
前記滴下が完了した後、フラスコ内の物質を300分間還流させた。
【0115】
その後、前記フラスコ内の酢酸ブチルを蒸留して除くことによって、主鎖であるビニル重合体の側鎖としてポリオキシエチレン構造を有する粘稠液状のポリマー(A−5)(重量平均分子量50000)を得た。前記で得たポリマー(A−5)と、水酸化カリウム水溶液とを混合し、前記ポリマー(A−5)が有するカルボキシル基をすべて中和することによってインク吐出安定性付与剤を得た。
【0116】
前記ポリマー(A−5)全体に対するオキシエチレン構造の割合は、14.5モル%であり、前記ポリマー(A−5)が有するオキシアルキレン構造の全量に対する、前記オキシエチレン構造の質量割合が100質量%であった。
【0117】
(比較例3)
スチレン56g、アクリル酸19.09g、メタクリル酸24.81g及びアクリル酸nブチル0.1gをラジカル重合し乾燥等することによって粉体状のポリマー(重量平均分子量6300、酸価280mgKOH/g、ガラス転移点126℃)を得た。
【0118】
次に、純水17.28gと水酸化カリウム34%水溶液4.12gとの混合物に、前記粉体状のポリマー5gを添加し攪拌することによって得られた水溶液を、本発明のインク吐出安定性付与剤の代わりに使用した。
【0119】
(比較例4)
ハイドランWLS−213(DIC株式会社製、ウレタンディスパージョン、固形分35質量%)を固形分が20質量%となるよう純水で希釈したものを、本発明のインク吐出安定性付与剤の代わりに使用した。
【0120】
[シンクロトロン放射光を用いた小角X線散乱法によって求められる散乱プロファイルのKratky plotの求め方]
【0121】
測定装置としては大型高輝度放射光施設:SPring−8内のフロンティアソフトマター開発産学連合体が所有するビームライン:BL03XU 第2ハッチを利用し、測定モードは小角X線散乱(SAXS)を用いた。
【0122】
測定試料としては、実施例及び比較例で得られたポリマーと純水とを混合して得られた、前記ポリマーの含有割合が0.5質量%の組成物を使用した。
【0123】
測定条件としては波長0.1nmのX線、カメラ長約8m(USAXS)2m(SAXS)、ビームスポットサイズ 140μm×80μm、アテネーターなし、露光時間 30秒、2θ=0.01°〜10°であり、解析ソフトは2次元散乱データの散乱プロファイル化にはFit2D(European Synchrotron Radiation Facilityのホームページ[http://www.esrf.eu/computing/scientific/FIT2D/]より入手)を使用した。
【0124】
[ポリマー溶液の平行光線透過率の測定法]
平行光線透過率を測定する際に使用する試料としては、前記ポリマーと純水を含有する水溶液を使用した。常温の純水と、実施例及び比較例で得たポリマーとを混合し、攪拌することによって、前記ポリマーの濃度が20質量%であるポリマー水溶液を得た。なお、前記ポリマーの一部または全部が純水に溶解せず、目視で沈殿物を確認できたものについては、前記平行線透過率が85%以上ではないと判断した。
【0125】
前記試料の平行光線透過率の測定には、日本電色工業株式会社製NDM2000(D65)を使用した。前記試料を角型液体用セル(10mm×36mm×55mm)の中に泡が入らないように注入し、光路10mmの条件で平行光線透過率を測定した。
【0126】
インク吐出安定性付与剤に含まれるラジカル重合体の小角X線散乱法によって求められた散乱プロファイルのKratky plotに基づく極大値及び極小値の数と、平行線透過率の評価結果を表1に示す。平行線透過率の測定において、前記ラジカル重合体の一部または全部が水に溶解せず、沈殿していることを目視で確認できたものは「不溶」とした。
【0127】
【表1】
【0128】
(実施例4 水性顔料分散体の製造)
顔料分散樹脂(スチレン/アクリル酸/メタクリル酸/アクリル酸nブチル=74.00/11.26/14.64/0.10(質量比)のラジカル重合体、酸価175、重量平均分子量11000)を5質量部、キナクリドン系顔料として「FASTOGEN Super Magenta RY(DIC株式会社製)」48.75質量部、キナクリドン系顔料誘導体としてフタルイミド化メチル付加物1.25質量部を、プラネタリーミキサー(商品名:ケミカルミキサーACM04LVTJ−B 株式会社愛工舎製作所製)に仕込み、ジャケットを加温することで内容物の温度が80℃に達した後、自転回転数:80回転/分、公転回転数:25回転/分で混練した。前記混合開始から5分後、トリエチレングリコールを50質量部、34質量%水酸化カリウム水溶液を0.75質量部加えた。
【0129】
プラネタリーミキサーの電流値が最大電流値を示してから120分を経過した時点まで混練を継続し混練物を得た。前記混練物に含まれる前記キナクリドン系顔料及びキナクリドン系顔料誘導体の合計質量に対する前記顔料分散樹脂の質量比率(R/P)は0.100であった。
【0130】
得られた混練物80質量部をジャケットから取出し、1cm角状に切断した後、市販のジューサーミキサーに入れた。そこに純水80質量部を加え10分間ミキサーにかけて混合、希釈し純水に分散させた。
【0131】
さらに純水とトリエチレングリコールを加え、キナクリドン系顔料の濃度が14.5質量%、前記キナクリドン系顔料に対するトリエチレングリコールの濃度が100質量%の水性顔料分散体を得た。
【0132】
前記水性顔料分散体を純水で顔料濃度12質量%に希釈して得た希釈液33.33質量部に、実施例1で得たインク吐出安定性付与剤を2質量部、2−ピロリジノン8質量部、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル8質量部、精製グリセリン3質量部、サーフィノール440 (エアープロダクツ社製)0.5質量部、WLS−213(DIC株式会社製、ウレタンディスパージョン、固形分35質量%)17.14質量部、及び、純水30.03質量部を混合することによって、顔料濃度4質量%のインクジェット記録用水性インクを得た。
【0133】
(実施例5)
実施例1で得たインク吐出安定性付与剤の代わりに、実施例2で得たインク吐出安定性付与剤を使用したこと以外は、実施例4と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。
【0134】
(実施例6)
実施例1で得たインク吐出安定性付与剤の代わりに、実施例3で得たインク吐出安定性付与剤を使用したこと以外は、実施例4と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。
【0135】
(比較例5)
実施例1で得たインク吐出安定性付与剤の代わりに、水を使用したこと以外は、実施例4と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。
【0136】
(比較例6)
実施例1で得たインク吐出安定性付与剤の代わりに、比較例1で得たインク吐出安定性付与剤を使用したこと以外は、実施例4と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。
【0137】
(比較例7)
実施例1で得たインク吐出安定性付与剤の代わりに、比較例2で得たインク吐出安定性付与剤を使用したこと以外は、実施例4と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インク
【0138】
(比較例8)
実施例1で得たインク吐出安定性付与剤の代わりに、比較例3で得たインク吐出安定性付与剤を使用したこと以外は、実施例4と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。
を得た。
【0139】
(比較例9)
実施例1で得たインク吐出安定性付与剤の代わりに、比較例4で得たインク吐出安定性付与剤を使用したこと以外は、実施例4と同様の方法で水性顔料分散体及びインクジェット記録用水性インクを得た。
【0140】
(インクジェット記録用水性インクの評価)
(粘度測定方法)
25℃のインクジェット記録用水性インクの粘度を、ViscometerTV−20(東機産業株式会社製)を用いて測定した。
【0141】
(吐出安定性の評価)
恒温恒湿室(室温25℃、湿度50%)において、サーマル型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置(ヒューレットパッカード社製 ENVY4500)に、前記インクジェット記録用水性インクを装填し、20枚のPPC用紙に連続印刷した。
【0142】
G:インク吐出ノズルの目詰り無く、20枚連続で印刷できた。
M:インク吐出ノズルの目詰り無く10枚連続で印刷できたが、それ以後はインク吐出ノズルの目詰まりが発生し20枚連続で印刷することができなかった。
N:インク吐出ノズルの目詰りが発生し10枚連続で印刷することができなかった。
【0143】
【表2】
【0144】
本発明のインク吐出安定性付与剤を使用することによって、例えばインクジェット印刷インクをはじめとするインクに優れた吐出安定性を付与することができた。
【0145】
また、本発明のインク吐出安定性付与剤を使用することによって、例えばバインダーを比較的多く含有するインクに優れた吐出安定性を付与することができた。
【0146】
また、本発明のインク吐出安定性付与剤を使用することによって、例えばバインダーを比較的多く含有する捺染剤に優れた吐出安定性を付与することができた。