(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサのうち一方と前記チャンバとの間の流路長Lb、及び、前記第1の圧力センサと前記第2の圧力センサのうち他方と前記チャンバとの間の流路長Lsは、Lb≧Ls、且つ、0.54≦Ls/Lb≦1を満たす、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0017】
図1は、一実施形態に係る基板処理装置の流量制御器によって出力されるガスの出力流量を求める方法を示す流れ図である。
図1に示す方法MTは、所謂ビルドアップ法によって、基板処理装置の流量制御器の出力流量を求める方法である。基板処理装置は、任意の基板処理装置であり得るものであり、例えばプラズマ処理装置であり得る。
【0018】
図2は、
図1に示す方法が適用され得る基板処理装置の一例を概略的に示す図である。
図2に示す基板処理装置10は、チャンバ本体12、複数の流量制御器14、圧力制御器16、排気装置18、第1の圧力センサ20、及び、第2の圧力センサ22を備えている。
【0019】
チャンバ本体12は、容器であり、その内部空間をチャンバ12cとして提供している。チャンバ12c内には、ステージ24が設けられている。ステージ24は、チャンバ12c内に配置された基板Wを支持するように構成されている。
【0020】
複数の流量制御器14の各々は、指定される設定流量に応じて、チャンバ12cに供給するガスの出力流量を調整する装置である。複数の流量制御器14の各々は、マスフローコントローラ、又は、圧力制御式の流量制御器であり得る。なお、基板処理装置10が備える流量制御器14の個数は、一以上の任意の個数であり得る。
【0021】
複数の流量制御器14の各々の上流側(一次側)には、一次バルブ26が設けられている。複数の流量制御器14の各々は、一次バルブ26を介してガスソース28に接続されている。ガスソース28は、基板処理用のガスのソースである。複数の流量制御器14の各々の下流側(二次側)には、二次バルブ30が設けられている。複数の流量制御器14の各々は、二次バルブ30及び配管32を介して、チャンバ12cに接続されている。
【0022】
第1の圧力センサ20及び第2の圧力センサ22は、チャンバ12cの圧力を測定し、当該圧力の測定値を出力するセンサである。第1の圧力センサ20及び第2の圧力センサ22の各々は、例えば、キャパシタンスマノメータであり得る。第2の圧力センサ22は、第1の圧力センサ20が測定可能な最大圧力よりも高い最大圧力を測定可能である。第1の圧力センサ20が測定可能な最大圧力は、例えば1333Pa(10Torr)であり、第2の圧力センサ22が測定可能な最大圧力は、例えば133300Pa(1000Torr)以上である。
【0023】
第1の圧力センサ20には、配管36aの一端が接続されている。配管36aの他端は、バルブ38に接続されている。バルブ38は、例えば、二方弁である。バルブ38には、配管36bの一端が接続されている。配管36bの他端は、配管40に接続されている。第2の圧力センサ22には、配管42aの一端が接続されている。配管42aの他端は、バルブ44に接続されている。バルブ44は、例えば、二方弁である。バルブ44には、配管42bの一端が接続されている。配管42bの他端は、配管40に接続されている。配管40は、チャンバ12cに接続している。したがって、第1の圧力センサ20及び第2の圧力センサ22には、チャンバ12cに供給されたガスの一部が到達可能になっている。
【0024】
圧力制御器16は、チャンバ12cに接続されている。圧力制御器16は、例えば自動圧力制御器であり、圧力制御弁を有している。圧力制御器16の下流側には、バルブ46が設けられている。圧力制御器16は、バルブ46を介して排気装置18に接続されている。排気装置18は、ドライポンプ、ターボ分子ポンプといった一以上の排気装置を含み得る。
【0025】
一実施形態では、基板処理装置10は、制御部50を更に備え得る。制御部50は、基板処理、及び、後述する方法MTの実行において、基板処理装置10の各部を制御するよう構成されている。制御部50は、コンピュータ装置であってもよく、プロセッサ50p、メモリといった記憶装置50s、キーボードといった入力装置等を備え得る。記憶装置50sには、基板処理においてプロセッサにより実行される制御プログラム、及び、基板処理用のレシピデータが記憶されている。また、記憶装置50sには、方法MTの実行のためのプログラム、及び、方法MTにおいて利用されるデータが記憶されている。
【0026】
以下、基板処理装置10の一つの流量制御器14の出力流量を求める場合を例にとって、方法MTを説明する。方法MTは、制御部50による基板処理装置10の各部の制御によって自動的に実行され得る。
【0027】
方法MTでは、流量制御器14の出力流量の算出において、チャンバ12cの容積が利用される。チャンバ12cの容積は事前に定められた既知の容積であり得る。方法MTでは、
図1に示す一つ目の工程の実行前に、チャンバ12cの容積が求められてもよい。以下、
図3を参照しつつ、チャンバ12cの容積を求める処理について説明する。
図3は、チャンバの容積を求める処理の一例を示す流れ図である。
【0028】
図3に示す処理SPは、制御部50による基板処理装置10の各部の制御によって自動的に実行され得る。
図3に示す処理SPは、工程S101で開始する。工程S101では、チャンバ12cの排気が行われる。具体的に、工程S101では、バルブ38、バルブ44、バルブ46、及び、圧力制御器16の圧力制御弁が開かれ、排気装置18が作動される。また、工程S101では、一次バルブ26が閉じられる。なお、工程S101では、二次バルブ30は閉じられていても、開かれていてもよい。
【0029】
続く工程S102では、流量制御器14に指定される設定流量が決定される。設定流量は、例えば、オペレータによって決定されて、制御部50に入力される。工程S102において決定される設定流量は、後述する方法MTの工程S2において決定される設定流量と同一である。
【0030】
続く工程S103では、圧力センサの選択が行われる。具体的に、工程S103では、設定流量と閾値との比較の結果に応じて、第1の圧力センサ20又は第2の圧力センサが選択される。なお、工程S103における圧力センサの選択は、後述する方法MTの工程S3における圧力センサの選択と同様に行われるので、その詳細については、工程S3に関する後述の説明を参照されたい。
【0031】
続く工程S104では、チャンバ12cの圧力が到達すべき目標圧力が決定される。工程S104では、工程S102において決定された設定流量に応じて目標圧力が決定される。なお、工程S104における目標圧力の決定は、後述する方法MTの工程S4における目標圧力の決定と同様に行われるので、その詳細については、工程S4に関する後述の説明を参照されたい。
【0032】
続く工程S105では、圧力制御器16の調整が行われる。具体的には、後述する工程S106においてチャンバ12cに対するガスの導入が開始された後に、チャンバ12cの圧力が所定の圧力となるように、圧力制御器16の圧力制御弁の開度が調整される。
【0033】
続く工程S106では、チャンバ12cに対するガスの導入が開始される。具体的に、工程S106では、一つの流量制御器14の上流に設けられた一次バルブ26及び当該流量制御器14の下流側に設けられた二次バルブ30が開かれ、当該流量制御器14が設定流量に応じた出力流量でのガスの出力を開始する。なお、他の流量制御器14の上流に設けられた一次バルブ26及び当該他の流量制御器14の下流側に設けられた二次バルブ30は閉じられる。
【0034】
続く工程S107では、チャンバ12cの圧力が所定の圧力で安定しているか否かが判定される。工程S107では、例えば、工程S106におけるガスの導入の開始後に所定時間が経過したときに、チャンバ12cの圧力が安定したものと判定される。或いは、工程S107では、第1の圧力センサ20又は第2の圧力センサ22によって取得されたチャンバ12cの圧力の測定値から、所定の圧力に対するチャンバ12cの圧力の変動量が求められ、当該変動量が所定値よりも小さい場合に、チャンバ12cの圧力が安定しているものと判定される。工程S107においてチャンバ12cの圧力が安定していないと判定される場合には、チャンバ12cの圧力が安定するまで、工程S107の判定が再び繰り返される。一方、工程S107においてチャンバ12cの圧力が安定していると判定される場合には、処理は工程S108に移行する。
【0035】
工程S108では、圧力制御器16の圧力制御弁が閉じられる。続く工程S109では、チャンバ12cの圧力が目標圧力に到達したか否かが判定される。具体的には、工程S103において選択された圧力センサによって取得されるチャンバ12cの圧力の測定値が、目標圧力に到達したか否かが判定される。工程S109においてチャンバ12cの圧力が目標圧力に到達していないと判定される場合には、チャンバ12cの圧力が目標圧力に到達するまで、工程S109の判定が再び繰り返される。一方、工程S109においてチャンバ12cの圧力が目標圧力に到達していると判定される場合には、処理は工程S110に移行する。
【0036】
工程S110では、サンプリング間隔が決定される。具体的に、工程S110では、圧力制御器16の圧力制御弁が閉じられた時点からチャンバ12cの圧力が目標圧力に到達した時点までの期間において、複数且つ所定個のサンプル値(チャンバ12cの圧力の測定値)が得られるように
サンプリング間隔が決定される。例えば、当該期間において10個のサンプル値が得られるように、サンプリング間隔が決定される。
【0037】
続く工程S111では、チャンバ12cの排気が行われる。工程S111は、工程S101と同様の工程である。続く工程S112では、圧力制御器16の調整が行われる。工程S112は、後述する工程S113においてチャンバ12cに対するガスの導入が開始された後に、チャンバ12cの圧力が所定の圧力となるように、圧力制御器16の圧力制御弁の開度が調整される。
【0038】
続く工程S113では、チャンバ12cに対するガスの導入が開始される。工程S113は、工程S106と同様の工程であり、一つの流量制御器14から設定流量に応じた出力流量でのガスの出力が開始される。続く工程S114では、チャンバ12cの圧力が所定の圧力で安定しているか否かが判定される。工程S114は、工程S107と同様の工程である。続く工程S115では、圧力制御器16の圧力制御弁が閉じられる。工程S115は、工程S108と同様の工程である。
【0039】
続く工程S116では、工程S103において選択された圧力センサによるチャンバ12cの圧力の測定値の取得、即ち、チャンバ12cの圧力のサンプリングが、工程S110において決定されたサンプリング間隔で行われる。
【0040】
続く工程S117では、工程S116において取得された圧力の測定値が目標圧力に到達したか否かが判定される。工程S117においてチャンバ12cの圧力が目標圧力に到達していないと判定される場合には、工程S116のサンプリングが繰り返される。一方、工程S117においてチャンバ12cの圧力が目標圧力に到達していると判定される場合には、処理は工程S118に移行する。
【0041】
工程S118では、チャンバ12cの容積Vが算出される。チャンバ12cの容積Vは、下式(1)により算出される。
V=KQ/(ΔP/Δt) …(1)
(1)式は、気体の状態方程式から導出される式である。(1)式において、Qは、流量制御器14に指定された設定流量である。(1)式において、ΔP/Δtは、時間に対するチャンバ12cの圧力の
上昇率である。ΔP/Δtは、工程S116の繰り返しにより取得されたチャンバ12cの圧力の複数個の測定値と、これら複数個の測定値それぞれが取得された複数の時点から求められる。例えば、時間軸と圧力軸を有する直交二軸座標系において、複数の時点のうち一つの時点と複数個の測定値のうち当該一つの時点において取得された測定値を各々が含む複数個のデータに対して、直線をフィッティングし、当該直線の傾きをΔP/Δtとして求めることができる。また、(1)式において、Kは、下式(2)で定義される。
K=RT/(22.4×10
3) …(2)
(2)式において、Rは、気体定数であり、62.36(Torr・l・mol
−1・K
−1)である。また、Tは、チャンバ12cにおけるガスの温度であり、チャンバ12cに接続された温度センサによって測定されてもよく、或いは、一定の温度(例えば、22℃)であってもよい。Tが22℃である場合には、Kは0.82(Torr)である。
【0042】
以下、再び
図1を参照して、方法MTについて説明する。方法MTでは、
図1に示すように、工程S1が実行される。工程S1は、処理SPの工程S101と同様の工程である。続く工程S2では、流量制御器14に指定される設定流量が決定される。工程S2において決定される設定流量は、処理SPの工程S102において決定された設定流量と同一の設定流量である。一実施形態では、工程S102においてオペレータによって制御部50に入力された設定流量が、工程S2においても用いられる。
【0043】
続く工程S3では、圧力センサの選択が行われる。具体的に工程S3では、設定流量と閾値との比較の結果に応じて、第1の圧力センサ20又は第2の圧力センサが選択される。設定流量が閾値よりも小さい場合には、第1の圧力センサ20が選択される。一方、設定流量が閾値以上である場合には、第2の圧力センサ22が選択される。閾値は、例えば1000sccmである。
【0044】
続く工程S4では、チャンバ12cの圧力が到達すべき目標圧力が決定される。工程S4では、工程S2において決定された設定流量に応じて目標圧力が決定される。目標圧力は、指定される設定流量の大きさに比例して、又は、当該設定流量の大きさに応じて段階的に大きくなるように設定される。例えば、流量に比例して、又は、流量の大きさに応じて段階的に大きくなる目標圧力を出力する関数に、制御部50により設定流量が入力されることにより、目標圧力が決定される。或いは、制御部50により、流量と目標圧力との関係を予め規定したテーブル50tが設定流量を用いて参照されることにより、目標圧力が決定される。なお、このテーブル50tは、制御部50の記憶装置50sに記憶されている。このテーブルは、後述する工程S15において圧力制御器16の圧力制御弁が閉じられる時点からチャンバ12cの圧力が目標圧力に到達する時点までの期間が所定時間長以上の時間長を有するように、流量と目標圧力との関係を予め規定している。なお、所定時間長は、20秒以上の時間長であり得る。
【0045】
続く工程S5は、処理SPの工程S105と同様の工程である。工程S5では、圧力制御器16の調整が行われる。具体的には、後述する工程S6においてチャンバ12cに対するガスの導入が開始された後に、チャンバ12cの圧力が所定の圧力となるように、圧力制御器16の圧力制御弁の開度が調整される。
【0046】
続く工程S6は、処理SPの工程S106と同様の工程である。工程S6では、チャンバ12cに対するガスの導入が開始される。具体的に、工程S6では、一つの流量制御器14の上流に設けられた一次バルブ26及び当該流量制御器14の下流側に設けられた二次バルブ30が開かれ、当該流量制御器14が設定流量に応じた出力流量でのガスの出力を開始する。なお、他の流量制御器14の上流に設けられた一次バルブ26及び当該他の流量制御器14の下流側に設けられた二次バルブ30は閉じられる。
【0047】
続く工程S7は、処理SPの工程S107と同様の工程である。工程S7では、チャンバ12cの圧力が所定の圧力で安定しているか否かが判定される。工程S7では、例えば、工程S6におけるガスの導入の開始後に所定時間が経過したときに、チャンバ12cの圧力が安定したものと判定される。或いは、工程S7では、第1の圧力センサ20又は第2の圧力センサ22によって取得されたチャンバ12cの圧力の測定値から、所定の圧力に対するチャンバ12cの圧力の変動量が求められ、当該変動量が所定値よりも小さい場合に、チャンバ12cの圧力が安定しているものと判定される。工程S7においてチャンバ12cの圧力が安定していないと判定される場合には、チャンバ12cの圧力が安定するまで、工程S7の判定が再び繰り返される。一方、工程S7においてチャンバ12cの圧力が安定していると判定される場合には、処理は工程S8に移行する。
【0048】
工程S8は、処理SPの工程S108と同様の工程である。工程S8では、圧力制御器16の圧力制御弁が閉じられる。続く工程S9は、処理SPの工程S109と同様の工程である。工程S9では、チャンバ12cの圧力が目標圧力に到達したか否かが判定される。具体的には、工程S3において選択された圧力センサによって取得されるチャンバ12cの圧力の測定値が、目標圧力に到達したか否かが判定される。工程S9においてチャンバ12cの圧力が目標圧力に到達していないと判定される場合には、チャンバ12cの圧力が目標圧力に到達するまで、工程S9の判定が再び繰り返される。一方、工程S9においてチャンバ12cの圧力が目標圧力に到達していると判定される場合には、処理は工程S10に移行する。
【0049】
工程S10は、処理SPの工程S110と同様の工程である。工程S10では、サンプリング間隔が決定される。具体的に、工程S10では、圧力制御器16の圧力制御弁が閉じられた時点からチャンバ12cの圧力が目標圧力に到達した時点までの期間において、複数且つ所定個のサンプル値(チャンバ12cの圧力の測定値)が得られるように
サンプリング間隔が決定される。例えば、当該期間において10個のサンプル値が得られるように、サンプリング間隔が決定される。
【0050】
続く工程S11は、工程S1と同様の工程である。工程S11では、チャンバ12cの排気が行われる。続く工程S12は、工程S5と同様の工程である。工程S12では、圧力制御器16の調整が行われる。工程S12では、後述する工程S13においてチャンバ12cに対するガスの導入が開始された後に、チャンバ12cの圧力が所定の圧力となるように、圧力制御器16の圧力制御弁の開度が調整される。
【0051】
続く工程S13は、工程S6と同様の工程である。工程S
13では、チャンバ12cに対するガスの導入が開始される。具体的に、工程S6では、一つの流量制御器14から設定流量に応じた出力流量でのガスの出力が開始される。続く工程S14は、工程S7と同様の工程である。工程S14では、チャンバ12cの圧力が所定の圧力で安定しているか否かが判定される。続く工程S15は、工程S8と同様の工程である。工程S15では、圧力制御器16の圧力制御弁が閉じられる。
【0052】
続く工程S16では、工程S3において選択された圧力センサによるチャンバ12cの圧力の測定値の取得、即ち、チャンバ12cの圧力のサンプリングが、工程S10において決定されたサンプリング間隔で行われる。
【0053】
続く工程S17では、工程S16において取得された圧力の測定値が目標圧力に到達したか否かが判定される。工程S17においてチャンバ12cの圧力が目標圧力に到達していないと判定される場合には、工程S16のサンプリングが繰り返される。一方、工程S17においてチャンバ12cの圧力が目標圧力に到達していると判定される場合には、処理は工程S18に移行する。
【0054】
工程S18では、流量制御器14の出力流量Qが算出される。流量制御器14の出力流量Qは、下式(3)により算出される。
Q=V/K×(ΔP/Δt) …(3)
(3)式は、気体の状態方程式から導出される式である。(3)式において、Vは、チャンバ12cの既知の容積である。容積Vは、処理SPにより求められた容積であり得る。(
3)式において、ΔP/Δtは、時間に対するチャンバ12cの圧力の
上昇率である。ΔP/Δtは、工程S16の繰り返しにより取得されたチャンバ12cの圧力の複数個の測定値と、これら複数個の測定値それぞれが取得された複数の時点から求められる。例えば、時間軸と圧力軸を有する直交二軸座標系において、複数の時点のうち一つの時点と複数個の測定値のうち当該一つの時点において取得された測定値を各々が含む複数個のデータに対して、直線をフィッティングし、当該直線の傾きをΔP/Δtとして求めることができる。また、(1)式において、Kは、式(2)で定義される。式(2)において、Tは、チャンバ12cに接続された温度センサによって測定されてもよく、或いは、一定の温度(例えば、22℃)であってもよい。Tが22℃である場合には、Kは0.82(Torr)である。
【0055】
方法MTでは、第1の圧力センサ20に加えて、比較的大きい最大圧力を測定可能な第2の圧力センサ22が用いられている。この方法では、流量制御器14に指定される設定流量が閾値より大きい場合には、第2の圧力センサ22が選択され、また、チャンバ12cの圧力が到達すべき目標圧力が大きい圧力に設定される。したがって、チャンバ12cの圧力が圧力制御器16の圧力制御弁が閉じられた時点の初期の圧力から目標圧力に到達するまでの期間の時間長として十分な時間長が確保される。故に、流量制御器14が大流量のガスをチャンバに出力する場合であっても、時間に対するチャンバの圧力の上昇率を精度良く求めることが可能となり、ひいては、流量制御器14の出力流量を精度良く求めることが可能となる。
【0056】
以下、チャンバにガスを充填する時間長とチャンバの到達圧力の関係に関する二つのシミュレーションの結果について説明する。
【0057】
第1のシミュレーションでは、20リットルの容積のチャンバにガスを充填する時間長とチャンバの到達圧力を、ガスの流量をパラメータとして求めた。
図4は、第1のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図4のグラフの横軸は、ガスを充填する時間長であり、縦軸は、チャンバの到達圧力である。
【0058】
第2のシミュレーションでは、チャンバに30slmの流量のガスを充填する時間長とチャンバの到達圧力を、チャンバの容積をパラメータとして求めた。
図5は、第
2のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図5のグラフの横軸は、ガスを充填する時間長であり、縦軸は、チャンバの到達圧力である。
【0059】
図4に示すように、20リットルの容積のチャンバに対しては、第1のシミュレーションに用いた流量のうち最も大きい64000sccmの流量のガスをチャンバに充填する時間長が20秒であっても、チャンバの到達圧力は1000Torr以下であった。また、
図5に示すように、第2のシミュレーションに用いたチャンバの容積のうち最も小さい10リットルのチャンバに、30slmの流量のガスを充填する時間長が20秒であっても、チャンバの到達圧力は1000Torr以下であった。したがって、第2の圧力センサが測定可能な最大圧力が1000Torr(133300Pa)以上である場合には、相当に小さい容積のチャンバに対して流量制御器から相当に大きな流量のガスが供給されても、チャンバの圧力が初期の圧力から最終の到達圧力(目標圧力)に到達するまでの期間の時間長として、十分に長い時間長を確保することが可能であり、ひいては、流量制御器の出力流量を精度良く求めることが可能となることが確認された。
【0060】
以下、第1の圧力センサ20と第2の圧力センサ22のうち一方とチャンバ12cとの間の流路長Lbと、第1の圧力センサ20と第2の圧力センサ22のうち他方とチャンバ12cとの間の流路長Lsとが満たすことが望ましい関係について説明する。
【0061】
チャンバ12cの圧力が、第1の圧力センサ20の測定可能範囲にあり、且つ、第2の圧力センサ22の測定可能範囲にある場合には、第1の圧力センサ20のチャンバ12cの圧力の測定値P1と第2の圧力センサ22のチャンバ12cの圧力の測定値P2は同一であることが望ましい。したがって、流路長Lsと流路長Lbは、理想的には同一である。
【0062】
しかしながら、基板処理装置10の部品のレイアウトの都合により、流路長Lbと流路長Lsを同一にできないことがある。流路長Lbと流路長Lsとの間に差がある場合には、チャンバ12cと第1の圧力センサ20との間の流路のコンダクタンスと、チャンバ12cと第2の圧力センサ22との間の流路のコンダクタンスに差が生じる。したがって、測定値P1と測定値P2との間に差が生じる。方法MTの運用においては、チャンバ12cの圧力が、第1の圧力センサ20の測定可能範囲にあり、且つ、第2の圧力センサ22の測定可能範囲にある場合において、測定値P1と測定値P2との間の差の許容可能な最大値は15mTorrである。
【0063】
基板処理装置10の一例では、流路長Lbであるチャンバ12cと第1の圧力センサ20との間の流路長が220.4mmであり、流路長Lsであるチャンバ12cと第2の圧力センサ22との間の流路長が127.0mmであるときに、測定値P1と測定値P2との間の差は13mTorrであった。この差は、方法MTの運用において許容可能な差である。
【0064】
以上のことから、以下の式(4)が導出される。
(220.4−127.0)/127.0 : 13=r : 15 …(4)
式(4)において、rは0.8485である。そして、流路長Lbの最大値であるLmaxは、下記の式(5)から234.8mmとなる。
(Lmax−127.0)/127.0=0.8485 …(5)
また、許容可能なLs/Lbの最小値は、127.0/234.8から、0.54となる。
【0065】
したがって、一実施形態では、流路長Lb及び流路長Lsは、Lb≧Ls、且つ、0.54≦Ls/Lb≦1を満たすように、設定される。また、一実施形態では、流路長Lbは、234.8mm以下であり得る。
【0066】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、方法MTにおいて流量制御器14の出力流量の算出に用いられるチャンバ12cの容積は、処理SPにより求められなくてもよく、方法MTの実行の前に既知である数値であってもよい。