(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被処理体に対する成膜方法であって、該被処理体は支持基体と被処理層とを備え、該被処理層は該支持基体の主面に設けられ複数の凸領域を備え、該複数の凸領域のそれぞれは該主面の上方に延びており、該複数の凸領域のそれぞれの端面は該主面上から見て露出しており、当該方法は、
(a)前記複数の凸領域のそれぞれの前記端面に第1の膜および第2の膜を含む膜を形成する工程と、
(b)前記膜を異方的にエッチングし、複数の前記端面を選択的に露出させる工程と、
を備え、
前記(a)は、
(a−1)前記第1の膜をコンフォーマルに形成することと、
(a−2)前記第1の膜上に前記主面から離れる程膜厚が増加するように、第2の膜を形成することと、
を備える、
成膜方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。以下、
図1を参照して、プラズマ処理装置10を用いて実施し得る成膜方法(方法MT)について説明する。
図1は、一実施形態の方法を示す流れ図である。
図1に示す一実施形態の方法MTは、被処理体(以下、「ウエハ」ということがある)に対する成膜方法の一例である。
【0017】
一実施形態の方法MTでは、一連の工程を単一のプラズマ処理装置を用いて実行することが可能である。
図2は、プラズマ処理装置の一例を示す図である。
図2には、被処理体を処理する方法の種々の実施形態で利用可能なプラズマ処理装置10の断面構造が概略的に示されている。
図2に示すように、プラズマ処理装置10は、平行平板の電極を備えるプラズマエッチング装置であり、処理容器12を備えている。処理容器12は、略円筒形状を有している。処理容器12は、例えば、アルミニウムから構成されており、処理容器12の内壁面には陽極酸化処理が施されている。処理容器12は保安接地されている。
【0018】
処理容器12の底部上には、略円筒状の支持部14が設けられている。支持部14は、例えば、絶縁材料から構成されている。支持部14を構成する絶縁材料は、石英のように酸素を含み得る。支持部14は、処理容器12内において、処理容器12の底部から鉛直方向に延在している。処理容器12内には、載置台PDが設けられている。載置台PDは、支持部14によって支持されている。
【0019】
載置台PDは、載置台PDの上面においてウエハWを保持する。載置台PDは、下部電極LEおよび静電チャックESCを有している。下部電極LEは、第1プレート18aおよび第2プレート18bを含んでいる。第1プレート18aおよび第2プレート18bは、例えばアルミアルミニウム等の金属から構成されており、略円盤形状をなしている。第2プレート18bは、第1プレート18a上に設けられており、第1プレート18aに電気的に接続されている。
【0020】
第2プレート18b上には、静電チャックESCが設けられている。静電チャックESCは、導電膜である電極を、一対の絶縁層の間または一対の絶縁シートの間に配置した構造を有している。静電チャックESCの電極には、直流電源22がスイッチ23を介して電気的に接続されている。静電チャックESCは、直流電源22からの直流電圧により生じるクーロン力等の静電力によりウエハWを吸着する。これにより、静電チャックESCは、ウエハWを保持し得る。
【0021】
第2プレート18bの周縁部上には、ウエハWのエッジおよび静電チャックESCを囲むようにフォーカスリングFRが配置されている。フォーカスリングFRは、エッチングの均一性を向上させるために設けられている。フォーカスリングFRは、エッチング対象の膜の材料によって適宜選択される材料から構成されており、例えば、石英から構成され得る。
【0022】
第2プレート18bの内部には、冷媒流路24が設けられている。冷媒流路24は、温調機構を構成している。冷媒流路24には、処理容器12の外部に設けられたチラーユニット(図示略)から配管26aを介して冷媒が供給される。冷媒流路24に供給される冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻される。このように、冷媒流路24には、冷媒が循環するように供給される。この冷媒の温度を制御することによって、静電チャックESCによって支持されたウエハWの温度が制御される。
【0023】
プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャックESCの上面とウエハWの裏面との間に供給する。
【0024】
プラズマ処理装置10には、加熱素子であるヒータHTが設けられている。ヒータHTは、例えば、第2プレート18b内に埋め込まれている。ヒータHTには、ヒータ電源HPが接続されている。ヒータ電源HPからヒータHTに電力が供給されることにより、載置台PDの温度が調整され、載置台PD上に載置されるウエハWの温度が調整されるようになっている。なお、ヒータHTは、静電チャックESCに内蔵されていてもよい。
【0025】
プラズマ処理装置10は、上部電極30を備えている。上部電極30は、載置台PDの上方において、載置台PDと対向配置されている。下部電極LEと上部電極30とは、互いに略平行に設けられている。上部電極30と下部電極LEとの間には、ウエハWにプラズマ処理を行うための処理空間Sが提供されている。
【0026】
上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、処理容器12の上部に支持されている。絶縁性遮蔽部材32は、絶縁材料から構成されており、例えば、石英のように酸素を含み得る。上部電極30は、電極板34および電極支持体36を含み得る。電極板34は処理空間Sに面しており、当該電極板34には複数のガス吐出孔34aが設けられている。電極板34は、一実施形態では、シリコンを含有する。別の実施形態では、電極板34は、酸化シリコンを含有し得る。
【0027】
電極支持体36は、電極板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。電極支持体36は、水冷構造を有し得る。電極支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。ガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。電極支持体36には、ガス拡散室36aにガスを導くガス導入口36cが形成されており、ガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0028】
ガス供給管38には、バルブ群42および流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを有している。一実施形態に係る複数のガスソースを以下に一例を示するが、当該一例に限定されない。複数のガスソースは、有機含有されたアミノシラン系ガスのソース、フルオロカーボン系ガス(C
xF
yガス(x、yは1〜10の整数))のソース、酸素原子を有するガス(例えば酸素ガス等)のソース、NF
4ガスのソース、水素含有ガス(例えば水素ガス、SiH
4ガス等)のソース、および、希ガス(例えばArガス等)のソースを含み得る。フルオロカーボン系ガスとしては、CF
4ガス、C
4F
6ガス、C
4F
8ガスといった任意のフルオロカーボン系ガスが用いられ得る。アミノシラン系ガスとしては、アミノ基の数が比較的に少ない分子構造のものが用いられることができ、例えば、モノアミノシラン(H
3−Si−R(Rは有機を含んでおり置換されていても良いアミノ基))が用いられ得る。また、上記のアミノシラン系ガス(後述の第1のガスG1に含まれるガス)は、1〜3個のケイ素原子を有し得るアミノシランを含むことができ、または、1〜3個のアミノ基を有するアミノシランを含むことができる。1〜3個のケイ素原子を有するアミノシランは、1〜3個のアミノ基を有するモノシラン(モノアミノシラン)、1〜3個のアミノ基を有するジシラン、または、1〜3個のアミノ基を有するトリシランであり得る。さらに、上記のアミノシランは、置換されていてもよいアミノ基を有し得る。さらに、上記のアミノ基は、メチル基、エチル基、プロピル基、および、ブチル基の何れかによって置換され得る。さらに、上記のメチル基、エチル基、プロピル基、または、ブチル基は、ハロゲンによって置換され得る。希ガスとしては、Arガス、Heガスといった任意の希ガスが用いられ得る。
【0029】
バルブ群42は複数のバルブを含んでおり、流量制御器群44はマスフローコントローラといった複数の流量制御器を含んでいる。ガスソース群40の複数のガスソースのそれぞれは、バルブ群42の対応のバルブおよび流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。したがって、プラズマ処理装置10は、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択された一以上のガスソースからのガスを、個別に調整された流量で、処理容器12内に供給することが可能である。
【0030】
プラズマ処理装置10では、処理容器12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、処理容器12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。デポシールドは、Y
2O
3の他に、例えば、石英のように酸素を含む材料から構成され得る。
【0031】
処理容器12の底部側、且つ、支持部14と処理容器12の側壁との間には排気プレート48が設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材にY
2O
3等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。排気プレート48の下方、且つ、処理容器12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、処理容器12の処理空間Sを所望の真空度まで減圧し得る。処理容器12の側壁にはウエハWの搬入出口12gが設けられており、搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0032】
プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62および第2の高周波電源64を更に備えている。第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の第1の高周波電力を発生する電源であり、27〜100[MHz]の周波数、一例においては60[MHz]の高周波電力を発生する。第1の高周波電源62は、整合器66を介して上部電極30に接続されている。整合器66は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。なお、第1の高周波電源62は、整合器66を介して下部電極LEに接続されていてもよい。
【0033】
第2の高周波電源64は、ウエハWにイオンを引き込むための第2の高周波電力、すなわち高周波バイアス電力を発生する電源であり、400[kHz]〜40.68[MHz]の範囲内の周波数、一例においては13.56[MHz]の周波数の高周波バイアス電力を発生する。第2の高周波電源64は、整合器68を介して下部電極LEに接続されている。整合器68は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスを整合させるための回路である。
【0034】
プラズマ処理装置10は、電源70を更に備えている。電源70は、上部電極30に接続されている。電源70は、処理空間Sに存在する正イオンを電極板34に引き込むための電圧を、上部電極30に印加する。一例においては、電源70は、負の直流電圧を発生する直流電源である。このような電圧が電源70から上部電極30に印加されると、処理空間Sに存在する正イオンが、電極板34に衝突する。これにより、電極板34から二次電子および/またはシリコンが放出される。
【0035】
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、制御部Cntを更に備え得る。制御部Cntは、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。具体的に、制御部Cntは、バルブ群42、流量制御器群44、排気装置50、第1の高周波電源62、整合器66、第2の高周波電源64、整合器68、電源70、ヒータ電源HP、およびチラーユニットに接続されている。
【0036】
制御部Cntは、入力されたレシピに基づくプログラムに従って動作し、制御信号を送出する。制御部Cntからの制御信号により、ガスソース群40から供給されるガスの選択および流量、排気装置50の排気、第1の高周波電源62および第2の高周波電源64からの電力供給、電源70からの電圧印加、ヒータ電源HPの電力供給、チラーユニットからの冷媒流量および冷媒温度を制御することが可能である。なお、本明細書において開示される被処理体を処理する方法MTの各工程は、制御部Cntによる制御によってプラズマ処理装置10の各部を動作させることにより、実行され得る。
【0037】
図1に戻って、方法MTについての説明を続ける。以下の説明では、
図1と共に、
図2〜
図13を参照する。まず、
図1に示す方法MTの工程ST1において準備されるウエハWの主要な構成を
図3を参照して説明する。工程ST1において準備されるウエハWは、
図3に示すウエハWである。
図3に示すウエハWは、支持基体BEと被処理層ELとを備える。被処理層ELは、支持基体BEの主面BE1に設けられている。主面BE1は、面直方向DRに垂直に延びている。面直方向DRは、
図2に示すようにウエハWが静電チャックESC上に載置されている状態で、鉛直方向に対応する。
【0038】
被処理層ELは、複数の凸領域(例えば凸領域PJ1、凸領域PJ2等)を備える。被処理層ELの複数の凸領域のそれぞれは、主面BE1の上方に延びている。被処理層ELの複数の凸領域のそれぞれは、端面を備える。凸領域PJ1は、端面TE1を備える。凸領域PJ2は、端面TE2を備える。被処理層ELの複数の凸領域のそれぞれの端面は、主面BE1上から見て露出されている。凸領域PJ1の端面TE1、および、凸領域PJ2の端面TE2は、共に、主面BE1上から見て露出されている。
【0039】
凸領域の高さは、主面BE1から当該凸領域の端面までの距離である。凸領域PJ1の高さTT1は、主面BE1から端面TE1までの距離である。凸領域PJ2の高さTT2は、主面BE1から端面TE2までの距離である。被処理層ELの複数の凸領域のそれぞれの高さは、凸領域ごとに異なり得る。凸領域PJ1は凸領域PJ2よりも低い(凸領域PJ1の高さTT1の値は、凸領域PJ2の高さTT2の値よりも小さい)。
【0040】
支持基体BEの材料は、例えばSi(シリコン)等を含有する材料である。被処理層ELの材料は、例えばシリコン窒化物(例えばSiN)等を含有する材料であり、一実施形態においてはSiNである。被処理層ELの材料は、シリコン窒化物と異なる他の材料でもあり得る。ウエハWは、具体的には、例えばFinFET(フィン電界効果トランジスタ)の形成に用いられる基板生産物であり得る。この場合、ウエハWの凸領域PJ1はFinFETのフィン領域に対応し、ウエハWの凸領域PJ2はFinFETのゲート電極に対応する。フィン領域は、ドレイン電極およびソース電極を含み、ゲート電極に交差して延びる。フィン領域の一の端部にはドレイン電極が設けられ、フィン領域の他の一の端部にはソース電極が設けられる。
【0041】
被処理層ELの複数の凸領域(凸領域PJ1、凸領域PJ2等)の端部(端面TE1、端面TE2等の端面を含む領域)は、先細る形状(テーパ形状)であってもよい。この場合、各凸領域において、端面(端面TE1、端面TE2等)の幅は、基端側(支持基体BEに近い側)の幅よりも短い。被処理層ELの各凸領域がこのような先細り形状を有する場合には、各凸領域の端部によって画定される開口の幅が比較的に広くなるので、各凸領域の端部における堆積物の形成が十分に抑制され得る。
【0042】
工程ST1に引き続き、
図2に示すようにウエハWが静電チャックESC上に載置されている状態で、被処理層ELの複数の凸領域(凸領域PJ1および凸領域PJ2を含む)のそれぞれの端面に膜を形成する工程(第1の工程)を実行する。当該工程は、
図1に示す工程ST2(第1の工程および第3の工程)および工程ST3(第1の工程および第4の工程)を備え、当該膜は、後述する第1の膜SF1および第2の膜SF2を含む。当該膜は、一例としてシリコン酸化物(例えばSiO
2膜)を含んでもよく、または、シリコン酸化物と異なる他の材料(例えばSiN、金属等)を含んでもよい。
【0043】
工程ST1に引き続く工程ST2は、
図2に示すようにウエハWが静電チャックESC上に載置されている状態で、被処理層ELの表面EL1(特に被処理層ELの複数の凸領域のそれぞれの端面)に第1の膜SF1をコンフォーマルに形成する。工程ST2の詳細は、
図9に示される。
図9に示すように、工程ST2は、工程ST2a(第5の工程)、工程ST2b(第6の工程)、工程ST2c(第7の工程)、工程ST2d(第8の工程)、工程ST2eを備える。工程ST2a〜工程ST2dは、シーケンスSQ1(第1のシーケンス)を構成する。工程ST2において、シーケンスSQ1は一回以上実行される。シーケンスSQ1および工程ST2eは、ALD(Atomic Layer Deposition)法と同様の方法によって、
図4に示すように被処理層ELの表面EL1に第1の膜SF1をコンフォーマルに形成する工程である。シーケンスSQ1および工程ST2eの一連の工程が実行されることによって、ウエハWの表面(具体的には、被処理層ELの表面EL1)に対して、精度良く制御されたコンフォーマルな膜厚の第1の膜SF1が形成される。以下、一実施形態として、第1の膜SF1がシリコン酸化物(例えばSiO
2膜)を含む場合に行われる工程ST2の詳細が説明されるが、第1の膜SF1がシリコン酸化物を含むシリコン酸化膜以外の膜であって他の材料を含む場合には以下に示すガス種だけではなく他のガス種も利用され得る。
【0044】
工程ST2aは、ウエハWが配置される処理容器12の処理空間Sに第1のガスG1を供給する。具体的には、工程ST2aにおいて、
図12の(a)部に示すように、処理容器12の処理空間Sに第1のガスG1を導入する。第1のガスG1は、有機含有のアミノシラン系ガスを含む。ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択したガスソースから有機含有のアミノシラン系ガスの第1のガスG1を処理容器12の処理空間Sに供給する。第1のガスG1は、有機含有のアミノシラン系ガスとして、例えばモノアミノシラン(H
3−Si−R(Rは有機含有のアミノ基))が用いられる。工程ST2aでは、第1のガスG1のプラズマを生成しない。
【0045】
第1のガスG1の分子は、
図12の(b)部に示すように、反応前駆体(層Ly1)としてウエハWの表面(被処理層ELの表面EL1を含む)に付着する。第1のガスG1の分子(モノアミノシラン)は、化学結合に基づく化学吸着によって被処理層ELの表面EL1に付着するのであり、プラズマは用いられない。化学結合によって被処理層ELの表面EL1に付着可能であって且つシリコンを含有するものであれば、モノアミノシラン以外のガスの利用も可能である。第1のガスG1に含まれるアミノシラン系ガスは、モノアミノシランの他に、1〜3個のケイ素原子を有するアミノシランを含んでいても良く、また、第1のガスG1に含まれるアミノシラン系ガスは、1〜3個のアミノ基を有するアミノシランを含んでいても良い。
【0046】
以上のように、第1のガスG1が有機含有のアミノシラン系ガスを含むので、工程ST2aによって、シリコンの反応前駆体(層Ly1)がウエハWの表面の原子層に沿ってウエハWの表面に形成される。
【0047】
工程ST2aに引き続く工程ST2bは、処理容器12の処理空間Sをパージする。具体的には、工程ST2aにおいて供給された第1のガスG1が排気される。工程ST2bにおいて、パージガスとして窒素ガスまたは希ガス(例えばAr等)ガスといった不活性ガスを処理容器12に供給してもよい。すなわち、工程ST2bのパージは、不活性ガスを処理容器12の処理空間Sに流すガスパージ、または、真空引きによるパージの何れであってもよい。工程ST2bにおいて、ウエハW上に過剰に付着した分子も除去され得る。以上によって、反応前駆体の層Ly1は、極めて薄い単分子層となる。
【0048】
工程ST2bに引き続く工程ST2cにおいて、
図12の(b)部に示すように、処理容器12の処理空間Sにおいて第2のガスのプラズマP1を生成する。第2のガスは、酸素原子を含有するガスを含み、例えば酸素ガスを含み得る。ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択したガスソースから酸素原子を含有するガスを含む第2のガスを処理容器12の処理空間Sに供給する。そして、第1の高周波電源62から高周波電力を供給する。この場合、第2の高周波電源64のバイアス電力を印加することもできる。また、第1の高周波電源62を用いずに第2の高周波電源64のみを用いてプラズマを生成することもできる。排気装置50を動作させることによって処理容器12の処理空間Sの空間の圧力を予め設定された圧力に設定する。このようにして、第2のガスのプラズマP1が処理容器12の処理空間Sにおいて生成される。
図12の(b)部に示すように、第2のガスのプラズマP1が生成されると、酸素の活性種、例えば、酸素ラジカルが生成され、
図12の(c)部に示すように、シリコン酸化膜である層Ly2(第1の膜SF1に対応している)が単分子層として形成される。
【0049】
以上のように、第2のガスが酸素原子を含むので、工程ST2cにおいて、当該酸素原子が反応前駆体(層Ly1)と結合することによって、シリコン酸化膜の層Ly2がコンフォーマルに形成され得る。従って、シーケンスSQ1においては、ALD法と同様に、一回(単位サイクル)のシーケンスSQ1の実行によって、シリコン酸化膜の層Ly2を、ウエハWの表面上にコンフォーマルに形成し得る。
【0050】
工程ST2cに引き続く工程ST2dにおいて、処理容器12の処理空間Sをパージする。具体的には、工程ST2cにおいて供給された第2のガスが排気される。工程ST2dでは、パージガスとして窒素ガスまたは希ガス(例えばAr等)といった不活性ガスを処理容器12に供給してもよい。すなわち、工程ST2dのパージは、不活性ガスを処理容器12の処理空間Sに流すガスパージ、または、真空引きによるパージの何れであってもよい。
【0051】
シーケンスSQ1に引き続く工程ST2eにおいて、シーケンスSQ1の実行を終了するか否かを判定する。具体的には、工程ST2eにおいて、シーケンスSQ1の実行回数が予め設定された回数に達したか否かを判定する。シーケンスSQ1の実行回数の決定によって、
図4に示す被処理層ELの表面EL1上に形成される第1の膜SF1の膜厚が決定される。すなわち、一回(単位サイクル)のシーケンスSQ1の実行によって形成されるシリコン酸化膜の膜厚とシーケンスSQ1の実行回数との積によって、最終的に被処理層ELの表面EL1上に形成される第1の膜SF1の膜厚が実質的に決定され得る。従って被処理層ELの表面EL1上に形成される第1の膜SF1の所望の膜厚に応じて、シーケンスSQ1の実行回数が設定され得る。このように、シーケンスSQ1が繰り返し実行されることによって、被処理層ELの表面EL1にシリコン酸化膜の第1の膜SF1がコンフォーマルに形成される。
【0052】
工程ST2eにおいてシーケンスSQ1の実行回数が予め設定された回数に達していないと判定される場合には(工程ST2e:NO)、シーケンスSQ1の実行が再び繰り返される。一方、工程ST2eにおいてシーケンスSQ1の実行回数が予め設定された回数に達していると判定される場合には(工程ST2e:YES)、シーケンスSQ1の実行が終了される。これによって、
図4に示すように、被処理層ELの表面EL1にシリコン酸化膜である第1の膜SF1が形成される。すなわち、シーケンスSQ1が予め設定された回数だけ繰り返されることによって、予め設定された膜厚を有する第1の膜SF1がコンフォーマルに被処理層ELの表面EL1に形成される。第1の膜SF1の膜厚は、シーケンスSQ1を繰り返し実行することによって、精度良く制御され得る。以上のように、シーケンスSQ1および工程ST2eの一連の工程は、ALD法と同様の方法によって、被処理層ELの表面EL1上に第1の膜SF1をコンフォーマルに形成できる。
【0053】
工程ST2に引き続く工程ST3は、
図2に示すようにウエハWが静電チャックESC上に載置されている状態で、工程ST2によって形成された第1の膜SF1上に第1の膜SF1と同じ材料の第2の膜SF2を形成する。工程ST3は、支持基体BEの主面BE1から離れる程に、膜厚が増加するように、第2の膜SF2を形成する。より具体的に、工程ST3によって、第2の膜SF2が、
図5に示すように、第1の膜SF1のうち、被処理層ELの複数の凸領域の各端面(凸領域PJ1の端面TE1、凸領域PJ2の端面TE2等))に形成される。工程ST3の成膜処理は、
図10の(a)部に示す工程ST31(第4の工程)にって実行される、または、
図10の(b)部に示す工程ST32(第4の工程)によって実行される。
図10の(a)部に示す工程ST31は工程ST3の一例であり、
図10の(b)部に示す工程ST32は工程ST3の他の一例である。
【0054】
第2の膜SF2の材料は、第1の膜SF1と同様である。
図5に示すように、第2の膜SF2のうち凸領域PJ1の端面TE1上に形成される部分の膜厚TH1は、第2の膜SF2のうち凸領域PJ2の端面TE2上に形成される部分の膜厚TH2aよりも薄い。凸領域PJ1の端面TE1と支持基体BEの主面BE1との間の距離(凸領域PJ1の高さTT1)は、凸領域PJ2の端面TE2と支持基体BEの主面BE1との間の距離(凸領域PJ2の高さTT2)よりも短い。このように、工程ST3による成膜は、支持基体BEの主面BE1からの距離(凸領域の高さ)に応じて、成膜する膜の膜厚を調節することができる。支持基体BEの主面BE1に設けられた被処理層ELの複数の凸領域(凸領域PJ1、凸領域PJ2を含む)において、支持基体BEの主面BE1からの高さが高い程、各凸領域の端面(凸領域PJ1の端面TE1、凸領域PJ2の端面TE2等)上に形成される第2の膜SF2の膜厚は厚い。
【0055】
工程ST3の成膜処理が、
図10の(a)部に示す工程ST31によって実行される場合について説明する。一実施形態として、第1の膜SF1、第2の膜SF2がシリコン酸化物(例えばSiO
2膜)を含む場合に行われる工程ST31の詳細が説明されるが、第1の膜SF1、第2の膜SF2がシリコン酸化物を含むシリコン酸化膜以外の膜であって他の材料を含む場合には以下に示すガス種だけではなく他のガス種も利用され得る。工程ST31は、工程ST31a、工程ST31bを備える。工程ST31aにおいて、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択したガスソースから第3のガスを処理容器12の処理空間Sに供給する。第3のガスは、シリコン原子を含み、且つ、塩素原子または水素原子を含む。第3のガスは、SiCl
4ガスまたはSiH
4ガスを含む。第3のガスは、例えばSiCl
4ガス、Arガス、酸素ガスを含む混合ガスである。第3のガスにおいて、SiCl
4ガスをSiH
4ガスに替えて用いてもよい。そして、第1の高周波電源62から高周波電力を供給し、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力を供給し、排気装置50を動作させることによって処理容器12の処理空間Sの圧力を予め設定された圧力に設定する。このようにして、ウエハWが配置される処理容器12の処理空間Sに第3のガスのプラズマが生成される。
【0056】
工程ST3の成膜処理が、
図10の(b)部に示す工程ST32によって実行される場合について説明する。
図10の(b)部に示すように、工程ST32は、工程ST32a(第9の工程)、工程ST32b(第10の工程)、工程ST32c(第11の工程)、工程ST32d(第12の工程)、工程ST32eを備える。工程ST32a〜工程ST32dは、シーケンスSQ2(第2のシーケンス)を構成する。工程ST32において、シーケンスSQ2は一回以上実行される。シーケンスSQ2および工程ST32eは、工程ST2に類似する方法によって、第1の膜SF1に対して第2の膜SF2を形成する工程である。シーケンスSQ2および工程ST32eの一連の工程が実行されることによって、第1の膜SF1(より具体的には、被処理層ELの複数の凸領域の各端面(凸領域PJ1の端面TE1、凸領域PJ2の端面TE2等)に対して、第1の膜SF1と同様の材料の第2の膜SF2が形成される。以下、一実施形態として、第1の膜SF1、第2の膜SF2がシリコン酸化物(例えばSiO
2膜)を含む場合に行われる工程ST32の詳細が説明されるが、第1の膜SF1、第2の膜SF2がシリコン酸化物を含むシリコン酸化膜以外の膜であって他の材料を含む場合には以下に示すガス種だけではなく他のガス種も利用され得る。
【0057】
工程ST32aは、処理容器12の処理空間Sに第4のガスG4を供給する。具体的には、工程ST32aにおいて、
図12の(a)部に示すように、処理容器12の処理空間Sに、第4のガスG4を導入する。工程ST32aにおいて、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択したガスソースから第4のガスG4を処理容器12の処理空間Sに供給する。第4のガスG4は、シリコン原子および塩素原子を含む。第4のガスG4は、例えば、SiCl
4ガスおよびArガスを含む混合ガスであり得る。工程ST32aでは、第4のガスG4のプラズマを生成しない。第4のガスG4の分子は、
図12の(b)部に示すように、反応前駆体(層Ly1)としてウエハWの表面(被処理層ELの表面EL1を含む)に付着する。
【0058】
工程ST32aに引き続く工程ST32bは、処理容器12の処理空間Sをパージする。具体的には、工程ST32aにおいて供給された第4のガスG4が排気される。工程ST32bにおいて、パージガスとして窒素ガスまたは希ガス(例えばAr等)ガスといった不活性ガスを処理容器12に供給してもよい。すなわち、工程ST32bのパージは、不活性ガスを処理容器12の処理空間Sに流すガスパージ、または、真空引きによるパージの何れであってもよい。工程ST32bにおいて、ウエハW上に過剰に付着した分子も除去され得る。
【0059】
工程ST32bに引き続く工程ST32cにおいて、
図12の(b)部に示すように、処理容器12の処理空間Sにおいて第5のガスのプラズマP2を生成する。ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択したガスソースから第5のガスを処理容器12の処理空間Sに供給する。第5のガスは、酸素原子を含む。第5のガスは、例えば、酸素ガスおよびArガスを含む混合ガスであり得る。そして、第1の高周波電源62から高周波電力を供給する。この場合、第2の高周波電源64のバイアス電力を印加することもできる。また、第1の高周波電源62を用いずに第2の高周波電源64のみを用いてプラズマを生成することもできる。排気装置50を動作させることによって処理容器12の処理空間Sの圧力を予め設定された圧力に設定する。このようにして、第5のガスのプラズマP2が処理容器12の処理空間Sにおいて生成される。
図12の(b)部に示すように、第5のガスのプラズマP2が生成されると、酸素の活性種、例えば、酸素ラジカルが生成され、
図12の(c)部に示すように、シリコン酸化膜である層Ly2(第2の膜SF2に対応している)が形成される。従って、シーケンスSQ2においては、工程ST2のように、一回(単位サイクル)のシーケンスSQ2の実行によって、シリコン酸化膜の層Ly2を、第1の膜SF1上に形成し得る。
【0060】
工程ST32cに引き続く工程ST32dにおいて、処理容器12の処理空間Sをパージする。具体的には、工程ST32cにおいて供給された第5のガスが排気される。工程ST32dでは、パージガスとして窒素ガスまたは希ガス(例えばAr等)といった不活性ガスを処理容器12に供給してもよい。すなわち、工程ST32dのパージは、不活性ガスを処理容器12の処理空間Sに流すガスパージ、または、真空引きによるパージの何れであってもよい。
【0061】
シーケンスSQ2に引き続く工程ST32eにおいて、シーケンスSQ2の実行を終了するか否かを判定する。具体的には、工程ST32eにおいて、シーケンスSQ2の実行回数が予め設定された回数に達したか否かを判定する。シーケンスSQ2の実行回数の決定によって、第2の膜SF2の膜厚が概ね決定され得る。すなわち、一回(単位サイクル)のシーケンスSQ2の実行によって形成されるシリコン酸化膜の膜厚とシーケンスSQ2の実行回数との積によって、最終的に第2の膜SF2の膜厚が実質的に決定され得る。従って第2の膜SF2の所望の膜厚に応じて、シーケンスSQ2の実行回数が設定され得る。
【0062】
工程ST32eにおいてシーケンスSQ2の実行回数が予め設定された回数に達していないと判定される場合には(工程ST32e:NO)、シーケンスSQ2の実行が再び繰り返される。一方、工程ST32eにおいてシーケンスSQ2の実行回数が予め設定された回数に達していると判定される場合には(工程ST32e:YES)、シーケンスSQ2の実行が終了される。これによって、シーケンスSQ2が予め設定された回数だけ繰り返されることによって、所望の膜厚を有する第2の膜SF2が第1の膜SF1(特に、第1の膜SF1のうち、被処理層ELの複数の凸領域の各端面(凸領域PJ1の端面TE1、凸領域PJ2の端面TE2等))に形成され得る。
【0063】
工程ST3に引き続く工程ST4(第2の工程)において、
図2に示すようにウエハWが静電チャックESC上に載置されている状態で、工程ST2および工程ST3によって形成された膜(第1の膜SF1および第2の膜SF2)を、異方的にエッチングすることによって、部分的に(より具体的には、第1の膜SF1および第2の膜SF2のうち、被処理層ELの複数の凸領域の一または複数の端面(例えば
図5に示す凸領域PJ1の端面TE1)上にある部分を)除去する。すなわち、工程ST4は、工程ST2および工程ST3によって形成された膜(第1の膜SF1および第2の膜SF2)を異方性エッチングし、一または複数の端面(例えば
図6に示す凸領域PJ1の端面TE1)を選択的に露出させる。
【0064】
工程ST2および工程ST3によって形成された膜は、支持基体BEの主面BE1からの高さが高い程、膜厚が厚いので、支持基体BEの主面BE1からの高さが低い程、工程ST4の異方性エッチングによって除去される部分が多い。従って、工程ST4の異方性エッチングは、工程ST4のプロセス条件を調整することによって、例えば、
図6に示すように、被処理層ELの複数の凸領域のうち支持基体BEの主面BE1からの高さが最も低い凸領域の端面(例えば、凸領域PJ1の端面TE1)上に形成された膜(第1の膜SF1および第2の膜SF2)のみを除去することが可能である。また、工程ST4の異方性エッチングは、工程ST4のプロセス条件を更に調整することによって、被処理層ELの複数の凸領域のうち支持基体BEの主面BE1からの高さの最も低い方(第1番目)から順に第n番目(nは2以上の整数であり、以下同様)までの複数の凸領域の各端面(例えば、凸領域PJ1の端面TE1から凸領域PJ2の端面TE2までの間にある複数の端面のそれぞれ)上に形成された膜(第1の膜SF1および第2の膜SF2)のみを除去することが可能である。このように、工程ST4の異方性エッチングによって、被処理層ELの複数の凸領域の各端面のうち、支持基体BEの主面BE1からの高さが最も低い凸領域の端面上に形成された膜(第1の膜SF1および第2の膜SF2)のみを、または、支持基体BEの主面BE1からの高さの最も低い方(第1番目)から順に第n番目までの複数の凸領域の各端面上に形成された膜(第1の膜SF1および第2の膜SF2)のみを、選択的に露出させることができる。
【0065】
工程ST4のプロセスを説明する。以下、一実施形態として、第1の膜SF1、第2の膜SF2がシリコン酸化物(例えばSiO
2膜)を含む場合に行われる工程ST4の詳細が説明されるが、第1の膜SF1、第2の膜SF2がシリコン酸化物を含むシリコン酸化膜以外の膜であって他の材料を含む場合には以下に示すガス種だけではなく他のガス種も利用され得る。ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択したガスソースから第6のガスを処理容器12の処理空間Sに供給する。第6のガスは、フルオロカーボン系ガス(C
xF
yはCF
4、C
4F
8、CHF
3)を含み得る。そして、第1の高周波電源62から高周波電力を供給し、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力を供給し、排気装置50を動作させることによって処理容器12の処理空間Sの圧力を予め設定された圧力に設定する。このようにして、第6のガスのプラズマが生成される。生成されたプラズマ中のフッ素を含む活性種は、高周波バイアス電力による鉛直方向(面直方向DR)への引き込みによって、工程ST2および工程ST3によって形成された膜(第1の膜SF1および第2の膜SF2)のうち、被処理層ELの複数の凸領域の各端面上にある部分を、異方的に(優先的に)エッチングする。工程ST4の異方性エッチングの結果、被処理層ELの複数の凸領域のうち支持基体BEの主面BE1からの高さが最も低い端面(例えば、
図6に示す凸領域PJ1の端面TE1)のみが、または、被処理層ELの複数の凸領域のうち支持基体BEの主面BE1からの高さが最も低い方(第1番目)から順に第n番目までの複数の凸領域の各端面(例えば、凸領域PJ1の端面TE1から凸領域PJ2の端面TE2までの間にある複数の端面)のみが、選択的に露出され得る。工程ST4の実行前における凸領域PJ1の端面TE2上に形成された第2の膜SF2の膜厚TH2aは、工程ST4のエッチングによって、工程ST4の実行後においては、膜厚TH2aよりも薄い膜厚TH2bとなる。
【0066】
工程ST4に引き続く工程ST5(第13の工程)において、
図2に示すようにウエハWが静電チャックESC上に載置されている状態で、被処理層ELを異方性エッチングする。工程ST5は、ALE(Atomic Layer Etching)法と同様の方法によって、被処理層ELの表面EL1うち、工程ST4の異方性エッチングによって選択的に露出された端面(例えば
図7に示す端面TE1であり、以下、露出端面という場合がある)を原子層毎に面直方向DRに異方性エッチングする。工程ST5の詳細は、
図11に示される。
図11に示すように、工程ST5は、工程ST5a、工程ST5b、工程ST5c、工程ST5d、工程ST5eを備える。工程ST5a〜工程ST5dは、シーケンスSQ3を構成する。工程ST5において、シーケンスSQ3は一回(単位サイクル)以上実行される。シーケンスSQ3を繰り返し実行し、工程ST4によって露出された露出端面を原子層毎に除去することによって、当該露出端面に対して選択的に異方性エッチングを行う。以下、一実施形態として、第1の膜SF1、第2の膜SF2がシリコン酸化物(例えばSiO
2膜)を含む場合に行われる工程ST5の詳細が説明されるが、第1の膜SF1、第2の膜SF2がシリコン酸化物を含むシリコン酸化膜以外の膜であって他の材料を含む場合には以下に示すガス種だけではなく他のガス種も利用され得る。
【0067】
工程ST5aは、ウエハWが配置される処理空間Sにおいて第7のガスのプラズマを生成し、
図7に示すように、被処理層ELの露出端面の原子層に、第7のガスのプラズマに含まれるイオンを含む混合層MXを形成する。例えば、工程ST5aにおいて、第7のガスのプラズマに第2の高周波電源64から高周波バイアス電力を面直方向DRに印加して、被処理層ELの露出端面の原子層に対し、第7のガスのプラズマに含まれるイオンを含む混合層MXを形成し得る。
【0068】
工程ST5aにおいて、処理容器12の処理空間Sに第7のガスを供給し、第7のガスのプラズマを生成する。第7のガスは、水素原子および酸素原子を含み、具体的にはH
2ガスおよびO
2ガスの混合ガスを含み得る。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択したガスソースから第7のガスを処理容器12の処理空間Sに供給する。そして、第1の高周波電源62から高周波電力を供給し、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力を供給し、排気装置50を動作させることによって処理容器12の処理空間Sの圧力を予め設定された圧力に設定する。第7のガスのプラズマが処理容器12の処理空間Sにおいて生成され、第7のガスのプラズマに含まれるイオン(水素原子のイオン)が、第2の高周波電源64から供給される高周波バイアス電力による鉛直方向(面直方向DR)への引き込みよって、被処理層ELの露出端面に接触し、当該露出端面が異方的に改質される。このようにして、第7のガスのプラズマに第2の高周波電源64からバイアス電力を印加して、工程ST4によって露出された露出端面の原子層に第7のプラズマに含まれるイオンを含む混合層MXを形成する。工程ST5aにおいて、被処理層ELの表面EL1(具体的には、被処理層ELの複数の凸領域の各端面)のうち異方的に改質された箇所が、混合層MXとなる。
【0069】
図13は、(a)部、(b)部、および、(c)部を備え、
図11に示す方法(シーケンスSQ3)におけるエッチングの原理を示す図である。
図13において、白抜きの円(白丸)は、被処理層ELを構成する原子(例えばSiNを構成する原子)を示しており、黒塗りの円(黒丸)は、第7のガスのプラズマに含まれるイオン(水素原子のイオン)を示しており、円で囲まれた「×」は、後述の第8のガスのプラズマに含まれるラジカルを示している。
図13の(a)部に示すように、工程ST5aによって、第7のガスのプラズマに含まれる水素原子のイオン(黒塗りの円(黒丸))が、被処理層ELの露出端面の原子層に対して、面直方向DRから、異方的に供給される。このように、工程ST5aによって、被処理層ELを構成する原子と第7のガスの水素原子とを含む混合層MXが、
図7に示すように、被処理層ELの露出端面の原子層に形成される。
【0070】
工程ST5aに引き続く工程ST5bでは、処理容器12の処理空間Sをパージする。具体的には、工程ST5aにおいて供給された第7のガスが排気される。工程ST5bでは、パージガスとして希ガス(例えばArガス等)といった不活性ガスを処理容器12に供給してもよい。すなわち、工程ST5bのパージは、不活性ガスを処理容器12の処理空間Sに流すガスパージ、または真空引きによるパージの何れであってもよい。
【0071】
工程ST5bに引き続く工程ST5cでは、処理容器12の処理空間Sにおいて第8のガスのプラズマを生成し、このプラズマに含まれるラジカルによって(当該ラジカルを用いたケミカルエッチングによって)混合層MXを除去する。工程ST5cにおいて生成される第8のガスのプラズマは、混合層MXを除去するラジカルを含む。
図13の(b)部に示す円で囲まれた「×」は、第8のガスのプラズマに含まれるラジカルを示している。第8のガスは、フッ素原子を含む。第8のガスは、例えば、NF
3ガスおよびO
2ガスを含む混合ガスを含み得る。なお、第8のガスは、NF
3ガスおよびH
2ガスを含む混合ガスを含んでいてもよい。具体的には、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択したガスソースから第8のガスが処理容器12の処理空間Sに供給される。そして、第1の高周波電源62から高周波電力を供給し、第2の高周波電源64から高周波バイアス電力を供給し、排気装置50を動作させることによって処理容器12の処理空間Sの圧力を予め設定された圧力に設定する。このようにして、第8のガスのプラズマが処理容器12の処理空間Sにおいて生成される。工程ST5cにおいて生成された第8のガスのプラズマ中のラジカルは、混合層MXに接触する。
図13の(b)部に示すように、工程ST5cによって、混合層MXに第8のガスの原子のラジカルが供給されることによって、混合層MXがケミカルエッチングされ被処理層ELから除去され得る。
【0072】
以上のように、
図8および
図13の(c)部に示すように、工程ST5cにおいて、工程ST5aによって形成された混合層MXは、第8のガスのプラズマに含まれるラジカルによって、被処理層ELの露出端面から除去され得る。
【0073】
工程ST5cに引き続く工程ST5dにおいて、処理容器12の処理空間Sをパージする。具体的には、工程ST5cにおいて供給された第8のガスが排気される。工程ST5dでは、パージガスとして希ガス(例えばArガス等)といった不活性ガスを処理容器12に供給してもよい。すなわち、工程ST5dのパージは、不活性ガスを処理容器12の処理空間Sに流すガスパージ、または真空引きによるパージの何れであってもよい。
【0074】
シーケンスSQ3に引き続く工程ST5eにおいて、シーケンスSQ3の実行を終了するか否かを判定する。具体的には、工程ST5eにおいて、シーケンスSQ3の実行回数が予め設定された回数に達したか否かを判定する。シーケンスSQ3の実行回数の決定によって、被処理層ELの露出端面に対するエッチング量(エッチングによって被処理層ELの当該露出端面に形成される溝の深さ)が決定される。シーケンスSQ3は、被処理層ELの露出端面に対するエッチング量が予め設定された値に至るまで、被処理層ELの露出端面がエッチングされるように、繰り返し実行され得る。シーケンスSQ3の実行回数の増加に伴って、被処理層ELの露出端面に対するエッチング量も増加(ほぼ線形的に増加)する。従って、一回(単位サイクル)のシーケンスSQ3の実行によってエッチングされる厚み(一回の工程ST5aで形成される混合層MXの厚み)とシーケンスSQ3の実行回数との積が予め設定された値となるように、シーケンスSQ3の実行回数が決定され得る。
【0075】
工程ST5eにおいてシーケンスSQ3の実行回数が予め設定された回数に達していないと判定される場合には(工程ST5e:NO)、シーケンスSQ3の実行が再び繰り返される。一方、工程ST5eにおいてシーケンスSQ3の実行回数が予め設定された回数に達していると判定される場合には(工程ST5e:YES)、シーケンスSQ3の実行が終了される。
【0076】
シーケンスSQ3および工程ST5eの一連の工程によって、被処理層ELのうち工程ST4において露出された露出端面に対してのみ、ALE法と同様の方法によって、選択的な異方性エッチングが原子層毎に精密に行われ得る。
【0077】
一実施形態において、工程ST4の後に実行されるエッチング処理として、工程ST5が実行されるが、他の様々なエッチング処理が用いられ得る。例えば、工程ST5において用いられるガス種と異なるガス種を用いて工程ST5と同様の処理プロセスを行うエッチング処理、CW(連続放電)を用いたエッチング処理、等方性エッチングによるエッチング処理等を工程ST4の後に行っても良い。
【0078】
以上説明した一実施形態に係る方法MTによれば、それぞれ端面を有する被処理層ELの複数の凸領域(凸領域PJ1、凸領域PJ2等)に対し、まず工程ST2および工程ST3によって各端面(端面TE1、端面TE2等)に膜(第1の膜SF1および第2の膜SF2)が形成され、工程ST4によって特定の一または複数の端面(例えば凸領域PJ1の端面TE1)上の膜のみが選択的に除去される。特に工程ST2においては、第1の膜SF1がコンフォーマルに形成され、工程ST3においては、第1の膜SF1上に第2の膜SF2が、支持基体BEの主面BE1から離れる程に膜厚が増加するように形成される。従って、工程ST2および工程ST3によれば、工程ST2および工程ST3によって形成される膜の膜厚は支持基体BEの主面BE1からの距離に応じて異なるので、比較的に膜厚の薄い膜が設けられた端面が工程ST4によって選択的に露出される。
【0079】
工程ST2によれば、被処理層ELの複数の凸領域の各端面には、いずれも、均一な膜厚の第1の膜SF1がコンフォーマルに形成される。
【0080】
工程ST2aによれば、モノアミノシランを含む第1のガスを用いてシリコンの反応前駆体の形成が一実施形態において可能となる。
【0081】
工程ST2aによれば、第1のガスに含まれるアミノシラン系ガスには、1〜3個のケイ素原子を有するアミノシランを用いることが一実施形態において可能となり、第1のガスに含まれるアミノシラン系ガスには、1〜3個のアミノ基を有するアミノシランを用いることが一実施形態において可能となる。
【0082】
工程ST31(工程ST3)によれば、シリコン原子を含み、且つ、塩素原子または水素原子を含む第3のガス、例えばSiCl
4ガスまたはSiH
4ガスを含む第3のガスのプラズマによって、工程ST3前の工程ST2においてコンフォーマルに形成されたシリコン酸化膜の第1の膜SF1上に対して更にシリコン酸化膜の第2の膜SF2の成膜が一実施形態において可能になる。
【0083】
工程ST32(工程ST3)によれば、シリコン原子および塩素原子を含む第4のガス、例えばSiCl
4ガスおよびArガスを含む混合ガスを含む第4のガスを用いた工程ST32aと、酸素原子を含む第5のガスのプラズマを用いた工程ST32cとを含むシーケンスSQ2が繰り返し実行されることによって、工程ST3前の工程ST2においてコンフォーマルに形成されたシリコン酸化膜の第1の膜SF1上に対して更にシリコン酸化膜の第2の膜SF2の成膜が一実施形態において可能になる。
【0084】
工程ST4によれば、一実施形態において、フルオロカーボン系ガスのプラズマを用いた異方性エッチングによって、比較的に膜厚の薄い膜が設けられた端面が選択的に露出される。
【0085】
工程ST5によれば、工程ST4によって露出された端面が工程ST5aにおいて原子層毎に改質されて混合層が形成され、工程ST5aによって改質された領域(混合層MXに対応する領域)が工程ST5cにおいて除去され得るので、工程ST5aおよび工程ST5cを含むシーケンスSQ3が繰り返し実行されることによって、工程ST4によって露出された端面が所望の程度にまで選択的にエッチングされる。工程ST5aによれば、混合層MXは、第7のガスにバイアス電力が印加されることによって、工程ST4によって露出された端面の原子層に選択的に形成される。工程ST5cによれば、一実施形態において、NF
3ガスおよびO
2ガスを含む混合ガスを含む第8のガスのプラズマを用いて、工程ST5aによって形成された混合層が除去される。
【0086】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【0087】
例えば、第1〜第8のガスのそれぞれのガス種は上記した一実施形態のガス種に限られず、上記した一実施形態の効果が奏され得る他のガス種が適用され得る。また、被処理層ELの材料についても、上記した一実施形態の効果が奏され得る他の材料が適用され得る。