特許第6767844号(P6767844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6767844
(24)【登録日】2020年9月24日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20201005BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20201005BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H01L21/31 C
   H01L21/316 X
   C23C16/455
【請求項の数】12
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-220589(P2016-220589)
(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公開番号】特開2018-78233(P2018-78233A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 繁博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
【審査官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−254181(JP,A)
【文献】 特表2013−503971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/314−21/318
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、
該処理室内に設けられ、基板を上面に周方向に沿って載置可能な基板載置領域を有する回転テーブルと、
前記基板の全体を覆うことができるように該回転テーブルの半径方向に延在し、該回転テーブルの上方に該回転テーブルと第1の間隔を有して設けられた原料ガス供給手段と、
前記回転テーブルの前記半径方向の軸側の所定領域を覆うように、前記回転テーブルと前記第1の間隔よりも広い第2の間隔を有して設けられた軸側補助ガス供給手段と、
前記回転テーブルの前記半径方向の外周側の所定領域を覆うように、前記回転テーブルと前記第2の間隔と等しいかそれよりも広い第3の間隔を有して設けられた外周側補助ガス供給手段と、を有し、
前記原料ガス供給手段、前記軸側補助ガス供給手段及び前記外周側補助ガス供給手段は、シャワーヘッドとして一体的に構成されており、
前記シャワーヘッドは、前記回転テーブルの前記周方向の一部を扇形に覆う形状を有する成膜装置。
【請求項2】
前記原料ガス供給手段、前記軸側補助ガス供給手段及び前記外周側補助ガス供給手段は、前記シャワーヘッドの底面に、前記回転テーブルの前記半径方向に沿って直線状に配列された複数のガス吐出孔を各々有する請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記複数のガス吐出孔は、前記シャワーヘッドの前記底面内で、前記回転テーブルの回転方向の上流側の所定位置に配置された請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記原料ガス供給手段、前記軸側補助ガス供給手段及び前記外周側補助ガス供給手段は、各々独立して流量及びガス組成を変更可能なように、個別の供給ラインとして構成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記原料ガス供給手段は少なくとも原料ガス供給源に接続され、
前記軸側補助ガス供給手段及び前記外周側補助ガス供給手段は少なくとも不活性ガス供給源に接続された請求項1乃至4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記原料ガス供給手段、前記軸側補助ガス供給手段及び前記外周側補助ガス供給手段は、前記扇形の左右対称の中心よりも前記回転テーブルの回転方向の上流側寄りに設けられている請求項1乃至5のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項7】
処理室と、
該処理室内に設けられ、基板を上面に周方向に沿って載置可能な基板載置領域を有する回転テーブルと、
前記回転テーブルの周方向の一部に設けられた原料ガス供給領域において、該回転テーブルの半径方向に延在し、該回転テーブルの半径全体を覆うように該回転テーブルの上方に該回転テーブルと第1の間隔を有して設けられた原料ガス供給手段と、
前記原料ガス供給領域において、前記回転テーブルの前記半径方向の軸側の所定領域を覆うように、前記回転テーブルと前記第1の間隔よりも広い第2の間隔を有して設けられた軸側補助ガス供給手段と、
前記原料ガス供給領域において、前記回転テーブルの前記半径方向の外周側の所定領域を覆うように、前記回転テーブルと前記第2の間隔と等しいかそれよりも広い第3の間隔を有して設けられた外周側補助ガス供給手段と、を有し、
前記原料ガス供給手段から供給される原料ガスはシリコン含有ガスであり、
前記軸側補助ガス供給手段及び前記外周側補助ガス供給手段から供給される補助ガスは、膜厚を調整するための膜厚調整用ガスである成膜装置。
【請求項8】
処理室内に設けられた回転テーブル上に載置された基板に、前記回転テーブルの周方向の一部に設けられた原料ガス供給領域において、前記回転テーブルの上方で前記回転テーブルの半径全体を覆うように、前記回転テーブルと第1の間隔を有して設けられた原料ガス供給手段から、前記回転テーブルを回転させながら原料ガスを供給する工程と、
前記原料ガス供給領域において、前記回転テーブルの軸側の所定領域を覆うように、前記回転テーブルと前記第1の間隔よりも広い第2の間隔を有して設けられた軸側補助ガス供給手段から、前記回転テーブルを回転させながら膜厚を調整するための所定の軸側補助ガスを供給する工程と、
前記原料ガス供給領域において、前記回転テーブルの外周側の所定領域を覆うように、前記回転テーブルと前記第2の間隔と等しいかそれよりも広い第3の間隔を有して設けられた外周側補助ガス供給手段から、前記回転テーブルを回転させながら膜厚を調整するための所定の外周側補助ガスを供給する工程と、を有し、
前記原料ガスを供給する工程、前記軸側補助ガスを供給する工程及び前記外周側補助ガスを供給する工程は、同時に継続的に行われ、
前記原料ガス供給手段から供給される原料ガスはシリコン含有ガスであり、
前記軸側補助ガス供給手段及び前記外周側補助ガス供給手段から供給される前記軸側補助ガス及び前記外周側補助ガスは、不活性ガスを含むガスである成膜方法。
【請求項9】
処理室内に設けられた回転テーブル上に載置された基板に、前記回転テーブルの周方向の一部に設けられた原料ガス供給領域において、前記回転テーブルの上方で前記回転テーブルの半径全体を覆うように、前記回転テーブルと第1の間隔を有して設けられた原料ガス供給手段から、前記回転テーブルを回転させながら原料ガスを供給する工程と、
前記原料ガス供給領域において、前記回転テーブルの軸側の所定領域を覆うように、前記回転テーブルと前記第1の間隔よりも広い第2の間隔を有して設けられた軸側補助ガス供給手段から、前記回転テーブルを回転させながら膜厚を調整するための所定の軸側補助ガスを供給する工程と、
前記原料ガス供給領域において、前記回転テーブルの外周側の所定領域を覆うように、前記回転テーブルと前記第2の間隔と等しいかそれよりも広い第3の間隔を有して設けられた外周側補助ガス供給手段から、前記回転テーブルを回転させながら膜厚を調整するための所定の外周側補助ガスを供給する工程と、を有し、
前記軸側補助ガス供給手段及び前記外周側補助ガス供給手段は、前記原料ガスの濃度を低下させるように前記軸側補助ガス及び前記外周側補助ガスを供給する成膜方法。
【請求項10】
前記原料ガス供給手段、前記軸側補助ガス供給手段及び前記外周側補助ガス供給手段は、シャワーヘッドとして一体的に構成され、前記原料ガス、前記軸側補助ガス及び前記外周側補助ガスは、前記シャワーヘッドの底面から供給される請求項8又は9に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記原料ガスは、30sccm以下の流量で供給される請求項8乃至10のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記シャワーヘッドは、前記回転テーブルの前記周方向の一部を扇形に覆う形状を有し、
前記原料ガス供給手段、前記軸側補助ガス供給手段及び前記外周側補助ガス供給手段は、前記扇形の左右対称の中心よりも前記回転テーブルの回転方向の上流側寄りに設けられている請求項10に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウェハ等の基板上にシリコン酸化膜(SiO)等の薄膜の成膜を行う方法の一つとして、互いに反応する複数種類の処理ガス(反応ガス)をウェハの表面に順番に供給し、反応生成物を堆積させるALD(Atomic Layer Deposition)法が知られている。ALD成膜装置の一つに、サセプターを回転させてALD成膜を行う回転テーブル式ALD装置がある(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1に記載のALD成膜装置では、回転テーブル上に5枚又は6枚のウェハを周方向に沿って配置し、回転テーブルの回転により移動するウェハの軌道上に原料ガス供給部やガスをプラズマ化するためのアンテナを順次配置している。
【0003】
かかる特許文献1に記載のALD成膜装置を用いて高品質SiO成膜を実施する場合、例えば、原料ガス供給領域で3DMAS(Tris(dimethylamino)silane)、有機アミノシランガス等のSi含有ガス、酸化ガス供給領域でO等の酸化ガス、改質領域でアルゴンと酸素と水素の混合ガスプラズマをそれぞれ供給し、回転テーブルを高速回させてウェハに3つのガス供給領域を高速で通過させ、高品質SiO膜を成膜する方法がある。かかる方法によれば、原料ガス供給領域でウェハに吸着したSiソースは酸化ガス供給領域で1層分酸化された後に改質領域でプラズマにより改質され、その後に再び原料ガス供給領域でSi吸着というように、連続的に成膜と改質のステップが繰り返されるため、容易に面内均一性の高い成膜を行うことができる場合が多い。
【0004】
しかしながら、回路パターンの微細化に伴って、例えばトレンチ素子分離構造におけるトレンチや、ライン・スペース・パターンにおけるスペースのアスペクト比が大きくなるにつれて、分子層成膜法においても、トレンチやスペースを埋め込むことが困難な場合がある。
【0005】
例えば、約30nmの幅を有するスペースを酸化シリコン膜で埋め込もうとすると、狭いスペースの底部に反応ガスが進入し難いため、スペースを画成するライン側壁の上端部近傍での膜厚が厚くなり、底部側で膜厚が薄くなる傾向がある。そのため、スペースに埋め込まれた酸化シリコン膜にはボイドが生じる場合がある。そのような酸化シリコン膜が、例えば後続のエッチング工程においてエッチングされると、酸化シリコン膜の上面に、ボイドと連通する開口が形成される場合がある。そうすると、そのような開口からボイドにエッチングガス(又はエッチング液)が進入して汚染が生じたり、又は、後のメタライゼーションの際にボイド中に金属が入り込み、欠陥が生じたりするおそれがある。
【0006】
このような問題は、分子層成膜法に限らず、化学的気相堆積(CVD、Chemical Vapor Deposition)法においても生じ得る。例えば、半導体基板に形成される接続孔を導電性物質の膜で埋め込んで導電性の接続孔(いわゆるプラグ)を形成する際に、プラグ中にボイドが形成されてしまう場合がある。そこで、かかるボイドの発生を抑制するため、有機アミノシランガスの酸化により生成された酸化シリコン膜上にOH基を吸着させ、更に酸素プラズマに曝すことにより、トレンチの開口部付近のOH基を減少させるとともに底部付近のOH基を多く残留させてSiO成膜を行う方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。OH基は、有機アミノシランガスの吸着サイトとして働き、OH基の分布に応じて有機アミノシランガスが吸着するため、有機アミノシランガスも底部付近に多く吸着し、開口部付近に少なく吸着する。よって、酸化シリコン膜は、トレンチの底部付近において厚くなり、開口に向かって薄くなるように成膜される。例えば、このような成膜技術を用いて、高アスペクト比のトレンチを有する回路パターンへのボトムアップ的な埋め込みをボイドレスで行うことができる。
【0007】
しかしながら、このようなプラズマによりOH基分布を制御し、有機アミノシランガスの吸着量を制御する成膜方法は、1層分原料ガスを吸着させて酸化、改質を行う成膜方法と比較して、良好な面内均一性を得ることが困難な場合が多い。即ち、回転テーブル式のALD成膜装置において、プラズマソースによりOH基分布を制御する方法は、回転テーブルの軸側と外周部とで角速度が異なるため、軸側に酸化プラズマが多く供給され、外周部には酸化プラズマが少なく供給されてしまう。そうすると、軸側のOH基が相対的に少なくなり、外周部のOH基が相対的に多くなるため、外周部の有機アミノシランガスの吸着量が軸側よりも多くなり、外周部の膜厚が軸側よりも厚くなる事態が発生する。
【0008】
かかる回転テーブルの軸側と外周部のプラズマ供給の不均衡を是正すべく、通常の回転テーブルの半径全体にプラズマガスを供給するノズルの他、軸側、外周部にプラズマガスを供給するノズルを個別に設けたALD装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。かかる特許文献3に記載のALD装置によれば、外周部のプラズマガスの供給量を局所的に増加させることができるので、プラズマ処理量の面内均一性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−45903号公報
【特許文献2】特開2013−162154号公報
【特許文献3】特開2015−220293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、プラズマを用いた改質領域における面内均一性の向上のみでは、不十分な場合がある。例えば、原料ガスの流量が大きく変化した場合、例えば、量産化に向けて低流量でのプロセスが要求された場合、回転テーブルの軸付近に供給されているパージガスの影響を受け、原料ガス供給の面内均一性を十分に確保できない場合もあり得る。
【0011】
そこで、本発明は、原料ガス供給の面内均一性を向上させることができる成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る成膜装置は、処理室と、
該処理室内に設けられ、基板を上面に周方向に沿って載置可能な基板載置領域を有する回転テーブルと、
前記基板の全体を覆うことができるように該回転テーブルの半径方向に延在し、回転テーブルの上方に該回転テーブルと第1の間隔を有して設けられた原料ガス供給手段と、
前記回転テーブルの前記半径方向の軸側の所定領域を覆うように、前記回転テーブルと前記第1の間隔よりも広い第2の間隔を有して設けられた軸側補助ガス供給手段と、
前記回転テーブルの前記半径方向の外周側の所定領域を覆うように、前記回転テーブルと前記第2の間隔と等しいかそれよりも広い第3の間隔を有して設けられた外周側補助ガス供給手段と、を有し、
前記原料ガス供給手段、前記軸側補助ガス供給手段及び前記外周側補助ガス供給手段は、シャワーヘッドとして一体的に構成されており、
前記シャワーヘッドは、前記回転テーブルの前記周方向の一部を扇形に覆う形状を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原料ガス供給の面内均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る成膜装置を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る成膜装置の真空容器内の構成を示す概略斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る成膜装置の真空容器内の構成を示す概略平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る成膜装置の回転テーブルの同心円に沿った真空容器の概略断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る成膜装置の別の概略断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る成膜装置のシャワーヘッドの底面板の下面の構成の一例を示した図である。
図7】本発明の実施形態に係る成膜装置のシャワーヘッドの底面板の上面の構成の一例を示した図である。
図8】本発明の実施形態に係る成膜装置のシャワーヘッドの全体構成の一例を示した斜視図である。
図9】本発明の実施形態に係る成膜装置のシャワーヘッドの原料ガス供給部に沿って切断した斜視断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る成膜装置に設置したシャワーヘッドを原料ガス供給部を通るラインで切断した斜視断面図である。
図11】本発明の実施形態に係る成膜装置に設置したシャワーヘッドを軸側補助ガス供給部及び外周側補助ガス供給部を通るラインで切断した斜視断面図である。
図12】本実施形態に係るプラズマ発生部の一例の縦断面図である。
図13】本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置のプラズマ発生部の一例の分解斜視図である。
図14】本発明の実施形態に係る成膜装置のプラズマ処理装置のプラズマ発生部に設けられる筐体の一例の斜視図である。
図15】本発明の実施形態に係る成膜装置の回転テーブルの回転方向に沿って真空容器を切断した縦断面図である。
図16】本発明の実施形態に係る成膜装置のプラズマ処理領域に設けられた処理ガスノズルを拡大して示した斜視図である。
図17】本実施形態に係る成膜装置のプラズマ発生部の一例の平面図である。
図18】本実施形態に係る成膜装置のプラズマ発生部に設けられるファラデーシールドの一部を示した斜視図である。
図19】シミュレーション実験1に係る成膜結果を示した図である。
図20】シミュレーション実験2の解析結果を示した図である。
図21】シミュレーション実験3の解析結果を示した図である。
図22】シミュレーション実験4に用いる成膜装置のシャワーヘッドの底面板の下面の構成を示した図である。
図23】シミュレーション実験4の解析結果を示した図である。
図24】本実施形態に係る成膜装置を用いて成膜処理を実施した実施例1の実施結果を示した図である。
図25】本実施形態に係る成膜装置を用いて成膜処理を実施した実施例2の実施結果を示した図である。
図26】本実施形態に係る成膜装置を用いて成膜処理を実施した実施例3の実施結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0016】
[成膜装置]
まず、本発明の実施形態に係る成膜装置について説明する。図1から図3までを参照すると、成膜装置は、ほぼ円形の平面形状を有する扁平な真空容器1と、真空容器1内に設けられ、真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は、内部に収容したウェハの表面上に成膜処理を行うための処理室である。真空容器1は、有底の円筒形状を有する容器本体12と、容器本体12の上面に対して、例えばOリングなどのシール部材13(図1)を介して気密に着脱可能に配置される天板11とを有している。
【0017】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底部14を貫通し、下端が回転軸22(図1)を鉛直軸回りに回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。ケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0018】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数(図示の例では5枚)の基板である半導体ウェハ(以下「ウェハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお、図3には便宜上1個の凹部24だけにウェハWを示す。この凹部24は、ウェハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きい内径と、ウェハWの厚さにほぼ等しい深さとを有している。したがって、ウェハWが凹部24に収容されると、ウェハWの表面と回転テーブル2の表面(ウェハWが載置されない領域)とが同じ高さになる。凹部24の底面には、ウェハWの裏面を支えてウェハWを昇降させるための例えば3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(いずれも図示せず)が形成されている。
【0019】
図2及び図3は、真空容器1内の構造を説明するための図であり、説明の便宜上、天板11の図示を省略している。図2及び図3に示すように、回転テーブル2の上方には、原料ガス供給領域P1を構成するシャワーヘッド30の底面板31、各々例えば石英からなる処理ガスノズル60、処理ガスノズル61、及び分離ガスノズル41、42が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向(図3の矢印A))に互いに間隔をおいて配置されている。図示の例では、後述の搬送口15から時計回り(回転テーブル2の回転方向)に、処理ガスノズル61、分離ガスノズル41、底面板31、分離ガスノズル42、処理ガスノズル60がこの順番で配列されている。シャワーヘッド30の底面板31には、原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33、外周側補助ガス供給部34が形成されている。原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33、外周側補助ガス供給部34は、各々、原料ガス、軸側補助ガス、外周側補助ガス(以下、「軸側補助ガス」及び「外周側補助ガス」をまとめて「補助ガス」と呼んでもよいこととする。)を供給するためのガス供給手段であり、各々の底面には、図示しない複数のガス吐出孔が形成され、回転テーブル2の径方向に沿って原料ガス、補助ガスを供給する。原料ガス供給部32は、ウェハWの全体を覆うことができるように回転テーブル2の半径方向に沿って半径全体に亘り延在している。一方、軸側補助ガス供給部33は、回転テーブル2の軸側の原料ガス供給部32の1/3程度の所定領域にのみ延在しており、外周側補助ガス供給部34は、回転テーブル2の外周側の原料ガス供給部32の1/3程度の所定領域にのみ延在している。いずれのガス供給部32〜34も、回転テーブル2の半径方向に沿って配置されている。後に詳細に説明するが、原料ガス供給部32と回転テーブル2との間隔よりも、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34と回転テーブル2との間隔は広く形成されている。これは、補助ガス供給部33、34が、原料ガス供給部32から供給される原料ガスの流れを妨げることなく面内均一性を高める膜厚調整用の補助ガスを供給するためであるが、その点については後述する。
【0020】
ガスノズル60、61、41、42は、各ノズル60、61、41、42の基端部であるガス導入ポート60a、61a、41a、42a(図3)を容器本体12の外周壁に固定することにより、真空容器1の外周壁から真空容器1内に導入され、容器本体12の半径方向に沿って回転テーブル2に対して水平に伸びるように取り付けられている。
【0021】
一方、原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34は、図示しないシャワーヘッド30の底面板31に設けられているので、シャワーヘッド30に導入された原料ガス及び補助ガスが原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34を介して真空容器1内に導入されることになる。
【0022】
本実施形態においては、図3に示されるように、原料ガス供給部32は、配管110及び流量制御器120などを介して、原料ガスの供給源130に接続されている。軸側補助ガス供給部33は、配管111及び流量制御器121などを介して、軸側補助ガスの供給源131に接続されている。更に、外周側補助ガス供給部34は、配管112及び流量制御器122などを介して、外周側補助ガスの供給源132に接続されている。なお、原料ガスは、例えば、有機アミノシランガス等のシリコン含有ガスや、TiCl等のチタン含有ガス等である。また、軸側補助ガス及び外周側補助ガスは、例えば、Ar等の希ガスや窒素ガス等の不活性ガスであったり、原料ガスと同じガスであったり、これらの混合ガスであったり、それとも異なる他の種類のガスであったりしてもよい。補助ガスは、用途及びプロセスに応じて、膜厚の調整等、面内均一性を高めるのに好ましいガスが適宜選択されて用いられる。
【0023】
なお、各供給源130〜132は、原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34に個別に1対1で接続された構成が示されているが、混合ガスを供給する場合には、更に配管を増加させて供給路同士を接続し、適切な混合比で原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34に最終的に個別にガスを供給する構成としてもよい。つまり、原料ガス供給部32及び軸側補助ガス供給部33の双方に同一のガスを含んだ混合ガスを供給する場合には、共通のガス供給源130〜132から、同一種類のガスを導入し、各々に最終的な混合ガスを個別に供給する構成としてもよい。即ち、最終的に原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34の各々に個別にガスを供給できる構成であれば、途中のガス供給路の接続構成は問わない。
【0024】
処理ガスノズル60は、配管113及び流量制御器123等を介して、反応ガスの供給源133に接続されている。反応ガスは、原料ガスと反応して反応生成物を生成するガスであり、例えば、シリコン含有ガスに対してはO等の酸化ガス、チタン含有ガスに対してはNH等の窒化ガス等が該当する。
【0025】
処理ガスノズル61は、配管114及び流量制御器124等を介して、改質ガスの供給源134に接続されている。改質ガスは、生成した反応生成物の膜質を高めるため、プラズマを生成し得るガスであり、多くの場合、反応ガスと同様の性質を有するガスが用いられる。例えば、シリコン含有ガスに対してはO、O等の酸化ガス、チタン含有ガスに対してはNH、N等の窒化ガス等が用いられる。
【0026】
なお、必要に応じて、処理ガスノズル61の他、軸側に局所的に改質ガスを供給する軸側ノズルや、害種側に局所的に改質ガスを供給する外周側ノズルを更に備えていてもよい。図3においては、プラズマガス供給用のノズルとして、処理ガスノズル61が1本のみ設けられた例を挙げているが、後の説明においては、3本のプラズマガス供給用のノズルを用いた例についても説明する。
【0027】
分離ガスノズル41、42は、いずれも不図示の配管及び流量制御バルブなどを介して、分離ガスの供給源(図示せず)に接続されている。分離ガスとしては、ヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスや窒素(N)ガスなどの不活性ガスを用いることができる。本実施形態では、Arガスを用いる例を挙げて説明する。
【0028】
処理ガスノズル60、61には、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔64(図4参照)が、処理ガスノズル60、61の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。シャワーヘッド30の底面板31の下方領域は、第1の反応ガスをウェハWに吸着させるための第1の処理領域P1となる。処理ガスノズル60の下方領域は、第1の処理領域P1においてウェハWに吸着した第1の反応ガスと反応する反応ガスを供給し、反応生成物の分子層を生成する第2の処理領域P2となる。なお、反応生成物の分子層が、成膜される膜を構成する。処理ガスノズル61の下方領域は、第2の処理領域P2において生成した反応生成物(膜)に改質用のプラズマガスを供給し、膜を改質する第3の処理領域P3となる。ここで、第1の処理領域P1は、原料ガスを供給する領域であるので、原料ガス供給領域P1と呼んでもよいこととする。同様に、第2の処理領域P2は、原料ガスと反応して反応生成物を生成可能な反応ガスを供給する領域であるので、反応ガス供給領域P2と呼んでもよいこととする。また、第3の処理領域P3は、第3の反応ガス、つまり改質用のプラズマガスを用いてプラズマ処理を行う領域であるので、改質領域P3又はプラズマ処理領域P3と呼んでもよいこととする。
【0029】
なお、第3の処理領域P3の上方には、プラズマ発生部81が設けられる。図3において、プラズマ発生部81は、破線で簡略化して示されている。プラズマ発生部81の詳細については後述する。
【0030】
再び図2及び図3を参照すると、真空容器1内には2つの凸状部4が設けられている。立体形状の詳細は後述するが、凸状部4は、分離ガスノズル41、42とともに分離領域Dを構成するため、回転テーブル2に向かって突出するように天板11の裏面に取り付けられている。また、凸状部4は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有し、本実施形態においては、内円弧が突出部5(後述)に連結し、外円弧が、真空容器1の容器本体12の内周面に沿うように配置されている。
【0031】
図4は、シャワーヘッド30の底面板31から処理ガスノズル60まで回転テーブル2の同心円に沿った真空容器1の断面を示している。図示のとおり、天板11の裏面に凸状部4が取り付けられているため、真空容器1内には、凸状部4の下面である平坦な低い天井面44(第1の天井面)と、この天井面44の周方向両側に位置する、天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)とが存在する。天井面44は、頂部が円弧状に切断された扇型の平面形状を有している。また、図示のとおり、凸状部4には周方向中央において、半径方向に伸びるように形成された溝部43が形成され、分離ガスノズル42が溝部43内に収容されている。もう一つの凸状部4にも同様に溝部43が形成され、ここに分離ガスノズル41が収容されている。また、高い天井面45の下方の空間に、シャワーヘッド30の底面板31及び処理ガスノズル60がそれぞれ設けられている。処理ガスノズル60は、天井面45から離間したウェハWの近傍に設けられている。なお、図4に示すように、高い天井面45の下方の右側の空間481に底面板31が設けられ、高い天井面45の下方の左側の空間482に処理ガスノズル60が設けられる。
【0032】
また、凸状部4の溝部43に収容される分離ガスノズル41、42には、回転テーブル2に向かって開口する複数のガス吐出孔42h(図4参照)が、分離ガスノズル41、42の長さ方向に沿って、例えば10mmの間隔で配列されている。
【0033】
シャワーヘッド30の底面板31に設けられた原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34は、ガス吐出孔32a、33a(図4には図示せず)、34aを各々有する。図4に示されるように、原料ガス供給部32のガス吐出孔32aは、他の処理ガスノズル60、分離ガスノズル42のガス吐出孔64、43hとほぼ同じ高さに設けられているが、外周側補助ガス供給部34のガス吐出孔34aは、それよりも高い位置に設けられている。つまり、底面板31は、低底面領域31aと高底面領域31bとを有し、ガス吐出孔32aは低底面領域31aに設けられ、ガス吐出孔34aは高底面領域31bに設けられている。なお、図4には示されていないが、軸側補助ガス供給部33も、外周側補助ガス供給部34と同様、高底面領域31bに設けられている。かかる構成の技術的意義については、後に実施例を示して説明するが、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34は、飽くまで補助であり、調整用であるので、原料ガス供給部32から供給される原料ガスの流れを阻害するようだと、原料ガスの吸着の面内均一性を良好にするという役割を果たせない。つまり、原料ガスの流れを阻害しない範囲での影響に留める必要があり、ウェハWの表面への距離が原料ガス供給部32よりも遠い方が好ましい。よって、本実施形態に係る成膜装置においては、原料ガス供給部32と回転テーブル2との間隔d1よりも、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34と回転テーブル2との間隔d2が広く設定してある。なお、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34と回転テーブル2との間隔d2は、原料ガス供給部32と回転テーブル2との間隔d1よりも広ければ、種々の値に設定してよいが、例えば、間隔d2を間隔d1の1.1〜3倍の範囲に設定してもよく、好ましくは1.5〜2.5倍の範囲、更に好ましくは略2倍に設定してもよい。実際の幅としては、例えば、間隔d1を1.5mmに設定したら、間隔d2をその2倍の3mmに設定するようにしてもよい。
【0034】
また、軸側補助ガス供給部33と外周側補助ガス供給部34の高さは必ずしも同一とする必要は無く、原料ガス供給部32よりも高い位置に設定される限り、両者を異ならせてもよい。例えば、軸側補助ガス供給部33と回転テーブル2との間の間隔をd3としたときに、d1<d3<d2となるように設定し、外周側補助ガス供給部34と回転テーブル2との間隔d2が、軸側補助ガス供給部d3よりも広くなるように設定してもよい。
【0035】
天井面44は、狭隘な空間である分離空間Hを回転テーブル2に対して形成している。分離ガスノズル42の吐出孔42hからArガスが供給されると、このArガスは、分離空間Hを通して空間481及び空間482へ向かって流れる。このとき、分離空間Hの容積は空間481及び482の容積よりも小さいため、Arガスにより分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くすることができる。すなわち、空間481及び482の間に圧力の高い分離空間Hが形成される。また、分離空間Hから空間481及び482へ流れ出るArガスが、第1の処理領域P1からの原料ガスと、第2の領域P2からの反応ガスとに対するカウンターフローとして働く。したがって、第1の領域P1からの原料ガスと、第2の領域P2からの反応ガスとが分離空間Hにより分離される。よって、真空容器1内において原料ガスと反応ガスとが混合し、反応することが抑制される。
【0036】
なお、回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さh1は、成膜時の真空容器1内の圧力、回転テーブル2の回転速度、供給する分離ガス(Arガス)の供給量などを考慮し、分離空間Hの圧力を空間481及び482の圧力に比べて高くするのに適した高さに設定することが好ましい。
【0037】
一方、天板11の下面には、回転テーブル2を固定するコア部21の外周を囲む突出部5(図2及び図3)が設けられている。この突出部5は、本実施形態においては、凸状部4における回転中心側の部位と連続しており、その下面が天井面44と同じ高さに形成されている。
【0038】
図5は、天井面44が設けられている領域を示す断面図である。図5に示すように、扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)には、回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲する屈曲部46が形成されている。この屈曲部46は、凸状部4と同様に、分離領域Dの両側から反応ガスが侵入することを抑制して、両反応ガスの混合を抑制する。扇型の凸状部4は天板11に設けられ、天板11が容器本体12から取り外せるようになっていることから、屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の上面に対する天井面44の高さと同様の寸法に設定されている。
【0039】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図4に示すように屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底部14に亘って外方側に窪んでいる。以下、説明の便宜上、概ね矩形の断面形状を有する窪んだ部分を排気領域と記す。具体的には、第1の処理領域P1に連通する排気領域を第1の排気領域E1と記し、第2の処理領域P2に連通する領域を第2の排気領域E2と記す。これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、図1から図3に示すように、それぞれ、第1の排気口610及び第2の排気口620が形成されている。第1の排気口610及び第2の排気口620は、図1及び図3に示すように各々排気管630、631を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ640、641に接続されている。また、第1の排気口610と真空ポンプ640との間の排気管630には圧力調整手段である自動圧力制御機器(APC、Auto Pressure Controller)650が設けられている。同様に、第2の排気口620と真空ポンプ641との間の排気管631には圧力調整手段である自動圧力制御器651が設けられ、第1の排気口610及び第2の排気口620の排気圧力が、各々独立して制御可能に構成されている。
【0040】
回転テーブル2と真空容器1の底部14との間の空間には、図1及び図5に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられ、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウェハWが、プロセスレシピで決められた温度(例えば450℃)に加熱される。回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域E1、E2に至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画して回転テーブル2の下方領域へのガスの侵入を抑えるために、リング状のカバー部材71が設けられている(図5)。このカバー部材71は、回転テーブル2の外縁部及び外縁部よりも外周側を下方側から臨むように設けられた内側部材71aと、この内側部材71aと真空容器1の内壁面との間に設けられた外側部材71bと、を備えている。外側部材71bは、分離領域Dにおいて凸状部4の外縁部に形成された屈曲部46の下方にて、屈曲部46と近接して設けられ、内側部材71aは、回転テーブル2の外縁部下方(及び外縁部よりも僅かに外側の部分の下方)において、ヒータユニット7を全周に亘って取り囲んでいる。
【0041】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近におけるコア部21に接近するように上方側に突出して突出部12aをなしている。この突出部12aとコア部21との間は狭い空間になっており、また底部14を貫通する回転軸22の貫通穴の内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間はケース体20に連通している。そしてケース体20にはパージガスであるArガスを狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底部14には、ヒータユニット7の下方において周方向に所定の角度間隔で、ヒータユニット7の配置空間をパージするための複数のパージガス供給管73が設けられている(図5には一つのパージガス供給管73を示す)。また、ヒータユニット7と回転テーブル2との間には、ヒータユニット7が設けられた領域へのガスの侵入を抑えるために、外側部材71bの内周壁(内側部材71aの上面)から突出部12aの上端部との間を周方向に亘って覆う蓋部材7aが設けられている。蓋部材7aは例えば石英で作製することができる。
【0042】
また、真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるArガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50を介して回転テーブル2のウェハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出される。空間50は分離ガスにより空間481及び空間482よりも高い圧力に維持され得る。したがって、空間50により、第1の処理領域P1に供給されるSi含有ガスと第2の処理領域P2に供給される酸化ガスとが、中心領域Cを通って混合することが抑制される。すなわち、空間50(又は中心領域C)は分離空間H(又は分離領域D)と同様に機能することができる。
【0043】
このように、回転テーブル2の軸側には、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72からAr等の希ガス又はN等の不活性ガス(以下、まとめて「パージガス」と呼んでもよいこととする。)が上下から供給され、原料ガスの流量を小流量、例えば30sccm以下に設定すると、軸側のArガスの影響を受けてしまい、原料ガスの濃度が回転テーブル2の軸側で薄くなり、膜厚の面内均一性が低下する場合がある。本実施形態に係る成膜装置では、軸側に軸側補助ガス供給部32を設け、補助ガスを供給することにより、軸側から制御されずに流出するパージガスの影響を低下させ、原料ガスの濃度を適切に制御することができる。かかる観点から、軸側補助ガス供給部33と外周側補助ガス供給部34では、軸側補助ガス供給部33の果たす役割の方が大きいため、本実施形態に係る成膜装置のガスシャワーヘッド30の底面板31は、原料ガス供給部32及び軸側補助ガス供給部33のみを有する構成とされてもよい。かかる構成でも、回転テーブル2の軸側の膜厚低下を防ぐことができ、十分な効果を得ることができる。但し、より多様なプロセスに対応し、より正確な膜厚調整を行うためには、軸側補助ガス供給部33のみでなく、阿木周側補助ガス供給部34も備えていることが好ましい。
【0044】
真空容器1の側壁には、図2図3に示すように、外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウェハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉される。また回転テーブル2におけるウェハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウェハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウェハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0045】
また、本実施形態による基板処理装置には、図1に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には、制御部100の制御の下に、後述する基板処理方法を基板処理装置に実施させるプログラムが格納されている。このプログラムは後述の基板処理方法を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記録媒体102に記憶されており、所定の読み取り装置により記憶部101へ読み込まれ、制御部100内にインストールされる。
【0046】
次に、本発明の実施形態に係る成膜装置の底面板31を含むシャワーヘッド30の構成についてより詳細に説明する。
【0047】
図6は、シャワーヘッド30の底面板31の底面(下面)の構成の一例を示した図である。図6に示されるように、底面板31の下面には、高底面領域31aと低底面領域31bが形成され、高底面領域31aに原料ガス供給部32が形成され、低底面領域31bに軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34が形成されている。底面板31は、全体として、軸側を中心として全体として略扇形の平面形状を有する。高底面領域31aは、低底面領域31bに比較して1/5〜1/4程度の狭い領域となっている。高底面領域31aは、回転テーブル2の回転方向の上流側に設けられ、原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34は総て、扇形の左右対称の中心よりも回転テーブル2の回転方向の上流側寄りに設けられている。軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34は、原料ガス供給部32の近傍に設けられ、原料ガス供給部32から供給される原料ガスの濃度調整を行うことが可能な位置に設けられている。
【0048】
なお、高底面領域31aの原料ガス供給部32よりも更に上流側には、クリーニングガス供給部35が設けられている。クリーニングガス供給部35は、真空容器1内をクリーニングする際にクリーニング用のガスを供給するガス供給手段であり、メインテナンスの際に必要に応じて用いられる。クリーニングガス供給部35は、必須ではなく、必要に応じて設けるようにしてよい。
【0049】
図7は、シャワーヘッド30の底面板31の上面の構成の一例を示した図である。図7に示されるように、図6と対応する位置に原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33、外周側補助ガス供給部34及びクリーニングガス供給部35が設けられる。また、図7において、原料ガス供給部32の底面に設けられた原料ガス吐出孔32aと、原料ガス供給部32に接続された原料ガス供給路32bが示されている。同様に、軸側補助ガス供給部33の底面には軸側補助ガス吐出孔33aが設けられ、軸側補助ガス供給部33に接続された軸側補助ガス供給路33bが設けられている。更に、外周側補助ガス供給部34の底面には外周側補助ガス吐出孔34aが設けられ、外周側補助ガス供給部34に接続された外周側補助ガス供給路34bが設けられている。また、クリーニングガス供給部35の底面にも、クリーニングガス吐出孔35aが設けられている。なお、クリーニングガス供給部35には、ガス供給路が接続されていないが、クリーニングガスの供給路は異なる高さに設けられており、底面板31には設けられていないためである。
【0050】
なお、各ガス吐出孔32a、33a、34a、35aは、直線状に形成されたガス供給部32、33、34、35の底面に、やはり直線状に配列されて設けられている。また、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34は、図2、3、6に示した形状よりも長い形状を有するが、図7に示した軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34の中央部の不要な部分を埋め込むことにより、図6と同様の形状に構成することができる。このように、用途に応じて、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34の長さを調整することができる。
【0051】
図8は、シャワーヘッド30の全体構成の一例を示した斜視図である。図8に示されるように、シャワーヘッド30は、底面板31と、中段部36と、上段部37と、中央部38と、ガス導入部39とを有する。なお、シャワーヘッド30は、底面板31を含めて、例えば、アルミニウム等の金属材料で構成されてもよい。
【0052】
ガス導入部39は、外部から原料ガス及び補助ガス、更に必要に応じてクリーニングガスを導入するための導入口であり、例えば、継手として構成される。ガス導入部39は、4つのガス供給路32〜35に対応して4個設けられており、個別にガスの供給が可能な構成となっている。なお、ガス導入部39の下方には、ガス導入路39aが形成され、図7で説明したガス供給路32a、33a、34aに直接的に接続が可能な構成となっている。
【0053】
中央部38は、ガス導入部39及びガス導入路39aを有するとともに、回転可能に構成されている。これにより、シャワーヘッド30の角度を調整することができ、プロセスに応じて原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34の位置を微調整することができる。
【0054】
上段部37は、上部のフレームとして機能し、天板11に設置可能な構造を有する。また、中段部36は、上段部37と底面板31とを接続する役割を果たすとともに、クリーニングガス供給部35のクリーニングガス供給路が内部に形成されており、クリーニングガスの供給路としても機能する。
【0055】
図9は、シャワーヘッド30の原料ガス供給部32に沿って切断した斜視断面図である。図9に示されるように、ガス導入部39の1つから供給された原料ガスが、原料ガス供給路32bを経由してガス供給部32に供給され、原料ガス吐出孔32aから原料ガスがシャワー状に供給される構成となっている。
【0056】
図10は、成膜装置に設置した状態におけるシャワーヘッド30を、原料ガス供給部32を通るラインで切断した斜視断面図である。図18に示されるように、回転テーブル2の半径方向に沿って、少なくともウェハWの直径をカバーできる長さで直線的に原料ガス供給部32及びガス吐出孔32aが配置される。なお、中段部36には、クリーニングガス供給部35に接続されるクリーニングガス供給路35b、35cが形成されている。
【0057】
図11は、成膜装置に設置した状態におけるシャワーヘッド30を軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34を通るラインで切断した斜視断面図である。図11に示されるように、回転テーブル2の半径方向に沿って、ウェハWの軸側及び外周側の所定範囲をカバーできる長さで直線的に軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34が配置されている。なお、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34の長さが埋め込みにより調整可能である点は、図7において説明した通りである。軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34の底面に補助ガス吐出孔33a、34aが直線的に配列されている点も、図7で説明した通りである。また、図18と同様に、中段部36には、クリーニングガス供給部35に接続されるクリーニングガス供給路35b、35cが設けられている。
【0058】
かかる構成により、本実施形態に係る成膜装置は、原料ガス供給部32に加えて、原料ガス供給部32と回転テーブル2との間隔d1よりも回転テーブル2との間の間隔d3が広い軸側補助ガス供給部33を有することにより、膜厚の面内均一性を高めつつ小流量の原料ガスの供給で成膜を行うことができる。更に、必要に応じて、回転テーブル2との間隔d2が軸側補助ガス供給部33と回転テーブル2との間隔d3と等しいかそれよりも広い外周側補助ガス供給部34を備えることにより、更に膜厚の面内均一性を高めつつ小流量の原料ガスの供給で成膜を行うことができる。
【0059】
なお、図6〜11においては、ガス導入口39から、ガス導入路39a及び原料ガス供給路32b、補助ガス供給路33b、34bを経由して原料ガス及び補助ガスを導入する例を挙げて説明したが、ガス導入口39の配置によっては、原料ガス供給路32b、補助ガス供給路33b、34bを経由せずに、ガス導入口39及びガス導入路39aのみを経て原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34に原料ガス及び補助ガスを供給することも可能である。その場合には、底面板31は、図2、3に示した構成となる。
【0060】
更に、本実施形態においては、原料ガス供給手段及び補助ガス供給手段を、一体的に構成したシャワーヘッドを用いて構成する例を挙げて説明したが、回転テーブル2との間隔d1、d2、d3との関係を満たすようにすれば、処理ガスノズル60、61と同様に、ガスノズルを用いた構成とすることも可能である。ガスの供給方法が異なるだけであり、実質的な差異は無いため、原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34を各々独立した処理ガスノズルとして構成しても何ら問題は無い。
【0061】
次に、本実施形態に係る成膜装置に必要に応じて搭載されるプラズマ発生部81について説明する。
【0062】
図12に、本実施形態に係るプラズマ発生部の一例の縦断面図を示す。また、図13に、本実施形態に係るプラズマ発生部の一例の分解斜視図を示す。
【0063】
プラズマ発生部81は、金属線等から形成されるアンテナ83をコイル状に例えば鉛直軸回りに3重に巻回して構成されている。また、プラズマ発生部81は、平面視で回転テーブル2の径方向に伸びる帯状体領域を囲むように、且つ回転テーブル2上のウエハWの直径部分を跨ぐように配置されている。
【0064】
アンテナ83は、整合器84を介して周波数が例えば13.56MHz及び出力電力が例えば5000Wの高周波電源85に接続されている。そして、このアンテナ83は、真空容器1の内部領域から気密に区画されるように設けられている。なお、図1及び図3などおける参照符号86は、アンテナ83と整合器84及び高周波電源85とを電気的に接続するための接続電極である。
【0065】
図12及び図13に示すように、処理ガスノズル61〜63の上方側における天板11には、平面視で概略扇形に開口する開口部11aが形成されている。
【0066】
開口部11aには、図12に示すように、開口部11aの開口縁部に沿って、この開口部11aに気密に設けられる環状部材82を有する。後述する筐体90は、この環状部材82の内周面側に気密に設けられる。即ち、環状部材82は、外周側が天板11の開口部11aに臨む内周面11bに対向すると共に、内周側が後述する筐体90のフランジ部90aに対向する位置に、気密に設けられる。そして、この環状部材82を介して、開口部11aには、アンテナ83を天板11よりも下方側に位置させるために、例えば石英等の誘導体により構成された筐体90が設けられる。筐体90の底面は、プラズマ処理領域P3の天井面46を構成する。
【0067】
また、図12に示されるように、回転テーブル2の外周側において、回転テーブル2よりも僅かに下位置には、カバー体であるサイドリング100が配置されている。サイドリング100の上面には、互いに周方向に離間するように例えば2箇所に排気口610、620が形成されている。別の言い方をすると、真空容器1の床面には、2つの排気口が形成され、これら排気口に対応する位置におけるサイドリング100には、排気口610、620が形成されている。
【0068】
図14は、本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置のプラズマ発生部に設けられる筐体の一例の斜視図である。筐体90は、図14に示すように、上方側の周縁部が周方向に亘ってフランジ状に水平に伸び出してフランジ部90aをなすと共に、平面視において、中央部が下方側の真空容器1の内部領域に向かって窪むように形成されている。
【0069】
筐体90は、この筐体90の下方にウェハWが位置した場合に、回転テーブル2の径方向におけるウェハWの直径部分を跨ぐように配置されている。なお、環状部材82と天板11との間には、O−リング等のシール部材11cが設けられる。
【0070】
真空容器1の内部雰囲気は、環状部材82及び筐体90を介して気密に設定されている。具体的には、環状部材82及び筐体90を開口部11a内に落とし込み、次いで環状部材82及び筐体90の上面であって、環状部材82及び筐体90の接触部に沿うように枠状に形成された押圧部材91によって筐体90を下方側に向かって周方向に亘って押圧する。さらに、この押圧部材91を図示しないボルト等により天板11に固定する。これにより、真空容器1の内部雰囲気は気密に設定される。なお、図13においては、簡単のため、環状部材82を省略して示している。
【0071】
図14に示すように、筐体90の下面には、当該筐体90の下方側の処理領域P2を周方向に沿って囲むように、回転テーブル2に向かって垂直に伸び出す突起部92が形成されている。そして、この突起部92の内周面、筐体90の下面及び回転テーブル2の上面により囲まれた領域には、前述した処理ガスノズル61〜63が収納されている。なお、処理ガスノズル61〜63の基端部(真空容器1の内壁側)における突起部92は、処理ガスノズル61〜63の外形に沿うように概略円弧状に切り欠かれている。
【0072】
筐体90の下方(第2の処理領域P3)側には、図12に示すように、突起部92が周方向に亘って形成されている。シール部材11cは、この突起部92によって、プラズマに直接曝されず、即ち、第2の処理領域P2から隔離されている。そのため、第2の処理領域P2からプラズマが例えばシール部材11c側に拡散しようとしても、突起部92の下方を経由して行くことになるので、シール部材11cに到達する前にプラズマが失活することとなる。
【0073】
図15は、回転テーブル2の回転方向に沿って真空容器1を切断した縦断面図である。図15に示されるように、プラズマ処理中には回転テーブル2が時計周りに回転するので、Nガスがこの回転テーブル2の回転に連れられて回転テーブル2と突起部92との間の隙間から筐体90の下方側に侵入しようとする。そのため、隙間を介して筐体90の下方側へのNガスの侵入を阻止するために、隙間に対して筐体90の下方側からガスを吐出させている。具体的には、処理ガスノズル61のガス吐出孔64について、図12及び図15に示すように、この隙間を向くように、即ち回転テーブル2の回転方向上流側且つ下方を向くように配置している。鉛直軸に対する処理ガスノズル61のガス吐出孔64の向く角度θは、図15に示すように例えば45°程度であってもよいし、突起部92の内側面に対向するように、90°程度であってもよい。つまり、ガス吐出孔36の向く角度θは、Arガスの侵入を適切に防ぐことができる45°〜90°程度の範囲内で用途に応じて設定することができる。
【0074】
図16は、プラズマ処理領域P3に設けられた処理ガスノズル61〜63を拡大して示した斜視図である。図16に示されるように、処理ガスノズル61は、ウェハWが配置される凹部24の全体をカバーでき、ウェハWの全面にプラズマ処理用ガスを供給可能なノズルである。一方、処理ガスノズル63は、プラズマ発生用ガスノズル61よりもやや上方に、回転テーブル2の外周部を覆うとともに、プラズマ発生用ガスノズル61と略重なるように設けられた、処理ガスノズル61の半分程度の長さを有するノズルである。また、処理ガスノズル62は、真空容器1の外周壁から扇型のプラズマ処理領域P3の回転テーブル2の回転方向下流側の半径に沿うように延び、中心領域C付近に到達したら中心領域Cに沿うように直線的に屈曲した形状を有している。以後、区別の容易のため、全体をカバーする処理ガスノズル61をベースノズル61、外側のみカバーする処理ガスノズル63を外側ノズル63、内側まで延びた処理ガスノズル62を軸側ノズル62と呼んでもよいこととする。
【0075】
ベースノズル61は、プラズマ処理用ガスをウェハWの全面に供給するためのガスであり、図15で説明したように、プラズマ処理領域P3を区画する側面を構成する突起部92の方に向かってプラズマ処理用ガスを吐出する。
【0076】
一方、外側ノズル63は、ウェハWの外側領域に重点的にプラズマ処理用ガスを供給するためのノズルである。プラズマ処理領域P3内に供給されるプラズマ処理用ガスは、プラズマ発生部81に近いプラズマ処理領域の最上部を通過することによりプラズマ化される。つまり、プラズマ発生部81は、プラズマ処理領域P3の上方に設けられているため、プラズマ処理領域P3の天井面46付近を沿うように流れたプラズマ処理用ガスがプラズマ化し、プラズマ処理に寄与する。換言すれば、プラズマ処理領域P3の天井面46付近がプラズマ発生領域を形成しており、この領域を通過したプラズマ処理用ガスが適切にプラズマ化される。外側ノズル63は、プラズマ処理後のウェハW上に形成された膜のプラズマ処理の処理量を取得し、外側の処理量が少ない傾向があるという結果であったときに、外側ノズル63から供給されるプラズマ処理用ガスの流量を増加させ、外側のプラズマ処理用ガスの流速を高めるような処理を行う。プラズマ処理用ガスの流速が高くなれば、時間当たりのプラズマ化するプラズマ処理用ガスの量が増加するので、プラズマ処理が促進されることになる。よって、かかる観点から、外側ノズル63のガス吐出孔36(図示せず)は上側を向いてプラズマ処理領域P3の天井面46と対向するように設けられ、供給されるプラズマ処理用ガスはプラズマ処理領域P3の天井面46に向かうように構成されている。
【0077】
軸側ノズル62は、ウェハWの回転テーブル2の軸側に近い領域にプラズマ処理用ガスを重点的に供給するためのノズルである。よって、軸側ノズル62の先端の中心領域Cに沿った部分のみガス吐出孔36(図示せず)が形成されており、ウェハWの中心側の領域にプラズマ処理用ガスを供給する構成となっている。軸側ノズル62においても、ガス吐出孔36は上側を向き、プラズマ処理領域P3の天井面46と対向する位置に設けられている。これにより、軸側ノズル62から供給されたプラズマ処理用ガスは直ちにプラズマ発生領域に向かい、効率的にプラズマ化されることになる。プラズマ処理後のウェハW上の膜の面内処理分布を取得し、ウェハWの軸側の領域のプラズマ処理が不足している場合には、軸側ノズル62から供給されるプラズマ処理用ガスの流量を増加させ、プラズマ処理用ガスの流速を高めることにより、ウェハWの軸側の領域のプラズマ処理を促進することができる。
【0078】
このように、ベースノズル61の他、外側ノズル63及び軸側ノズル62を設けたことにより、プラズマ処理用ガスの流速を領域毎に調整することができ、これによりウェハW上の膜の面内処理量を調整することができる。
【0079】
なお、面内処理量の調整は、プラズマ処理の面内均一性を向上させるために行われるのが一般的であるが、領域毎に処理量に差を付けたい場合には、処理量を多くしたい領域のノズル63、62から供給されるプラズマ処理用ガスの流量を増加させ、その流速を高めればよいので、面内均一性の向上のみならず、種々の処理量の調整が可能である。
【0080】
また、外側ノズル63及び軸側ノズル62の流量は相対的なものであるので、処理量を低下させたい方の領域に対応する処理ガスノズル63、62からの流量を低減させる調整も当然に可能である。
【0081】
このように、領域別の流速調整用の処理ガスノズル63、62を設けたことにより、プラズマ処理の面内処理量の調整を容易かつ正確に行うことができる。また、図16においては、3本の処理ガスノズル61〜63を設けた例が示されているが、更に多くのプラズマ処理用ノズルを設置し、面内処理量の調整をもっときめ細かく、かつ正確に行うようにしてもよい。処理ガスノズル61〜63の数、形状、設置場所等は、用途に応じて種々変更することができる。
【0082】
次に、プラズマ発生部81のファラデーシールド95について、より詳細に説明する。
図13は、本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置のプラズマ発生部の一例の分解斜視図である。
図12及び図13に示すように、筐体90の上方側には、当該筐体90の内部形状に概略沿うように形成された導電性の板状体である金属板例えば銅などからなる、接地されたファラデーシールド95が収納されている。このファラデーシールド95は、筐体90の底面に沿うように水平に係止された水平面95aと、この水平面95aの外終端から周方向に亘って上方側に伸びる垂直面95bと、を備えており、平面視で例えば概略六角形となるように構成されていても良い。
【0083】
図17に本実施形態に係るプラズマ発生部の一例の平面図を示し、図18に本実施形態に係るプラズマ発生部に設けられるファラデーシールドの一部を示す斜視図を示す。
【0084】
回転テーブル2の回転中心からファラデーシールド95を見た場合の右側及び左側におけるファラデーシールド95の上端縁は、各々、右側及び左側に水平に伸び出して支持部96を為している。そして、ファラデーシールド95と筐体90との間には、支持部96を下方側から支持すると共に筐体90の中心部領域C側及び回転テーブル2の外縁部側のフランジ部90aに各々支持される枠状体99が設けられている。
【0085】
電界がウェハWに到達する場合、ウェハWの内部に形成されている電気配線等が電気的にダメージを受けてしまう場合がある。そのため、図18に示すように、水平面95aには、アンテナ83において発生する電界及び磁界(電磁界)のうち電界成分が下方のウェハWに向かうことを阻止すると共に、磁界をウェハWに到達させるために、多数のスリット97が形成されている。
【0086】
スリット97は、図17及び図18に示すように、アンテナ83の巻回方向に対して直交する方向に伸びるように、周方向に亘ってアンテナ83の下方位置に形成されている。ここで、スリット97は、アンテナ83に供給される高周波に対応する波長の1/10000以下程度の幅寸法となるように形成されている。また、各々のスリット97の長さ方向における一端側及び他端側には、これらスリット97の開口端を塞ぐように、接地された導電体等から形成される導電路97aが周方向に亘って配置されている。ファラデーシールド95においてこれらスリット97の形成領域から外れた領域、即ち、アンテナ83の巻回された領域の中央側には、当該領域を介してプラズマの発光状態を確認するための開口部98が形成されている。なお、図2においては、簡単のために、スリット97を省略しており、スリット97の形成領域例を、一点鎖線で示している。
【0087】
図13に示すように、ファラデーシールド95の水平面95a上には、ファラデーシールド95の上方に載置されるプラズマ発生部81との間の絶縁性を確保するために、厚み寸法が例えば2mm程度の石英等から形成される絶縁板94が積層されている。即ち、プラズマ発生部81は、筐体90、ファラデーシールド95及び絶縁板94を介して真空容器1の内部(回転テーブル2上のウェハW)を覆うように配置されている。
【0088】
なお、本実施形態において、プラズマ発生部81を設けることは必須では無く、必要に応じて設けるようにしてよい。また、プラズマ発生部81を設ける場合であっても、3本の処理ガスノズル61〜63を設ける構成の他、図2、3で示したような1本の処理ガスノズル61のみを設ける構成としてもよい。
【0089】
[成膜方法]
次に、本発明の実施形態に係る成膜方法について、上述の成膜装置を用いて実施される場合を例に挙げ説明する。このため、これまでに参照した図面を適宜参照する。
【0090】
先ず、回転テーブル2を下降済みの状態で、図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15(図3)を介してウェハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。回転テーブル2の下降は、制御部100が、昇降機構17を制御することにより行ってよい。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器1の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウェハWの受け渡しを、回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウェハWを載置する。その際、ウェハWに反りが生じ得るが、回転テーブル2が下降しており、上方に空間が形成されているため、ウェハWの反りが収束するのを待つ前に、次々と回転テーブル2を間欠的に回転させ、凹部24上に複数枚のウェハWを載置する。ウェハWの載置が終了し、ウェハWの反りが十分に低減したら、制御部100は、昇降機構17を制御して回転テーブル2を上昇させ、基板処理を行うのに適切な位置で停止させる。
【0091】
続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ640により真空容器1を最低到達真空度まで排気した後、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるArガス又はNガスを所定の流量で吐出し、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72、73からもArガス又はNガスを所定の流量で吐出する。これに伴い、自動圧力制御器650、651により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整するとともに、第1の排気口610と第2の排気口620とが適切な差圧となるように排気圧力を設定する。上述のように、真空容器1内の設定圧力に応じて、適切な圧力差を設定する。
【0092】
次いで、回転テーブル2を時計回りに例えば5rpmの回転速度で回転させながらヒータユニット7によりウェハWを例えば400℃に加熱する。
【0093】
この後、シャワーヘッド30及び処理ガスノズル60から夫々、Si含有ガス等の原料ガス及びOガス等の反応ガス(酸化ガス)を吐出する。ここで、シャワーヘッド30の原料ガス供給部32からはSi含有ガスがAr等のキャリアガスとともに供給されるが、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34からは、Arガス等のキャリアガスのみが供給されてもよいし、原料ガス供給部32から供給される原料ガスとは異なる混合比のSi含有ガスとArガスの混合ガスが供給されてもよい。これにより、原料ガスの軸側及び外周側の濃度を調整することができ、面内均一性を高めることができる。また、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34は、原料ガス供給部33よりも回転テーブル2との間隔が広いので、原料ガス供給部32から供給される原料ガスの流れを妨げることなく供給される。なお、原料ガスの流量は、30sccm以下、例えば10sccm程度に設定されてもよい。また、軸側補助ガス供給部33のみを設け、軸側補助ガスのみを補助ガスとして供給しても良い点も、上述の通りである。
【0094】
必要に応じて、処理ガスノズル61〜63から、所定の流量比で混合されたArガス、Oガス、及びHガスの混合ガスを真空容器1内に供給し、高周波電源からプラズマ発生器80のアンテナに高周波電力を例えば700Wの電力で供給する。これにより、プラズマが生成され、成膜された膜の改質が行われる。
【0095】
ここで、回転テーブル2が一回転する間、以下のようにしてウェハWにシリコン酸化膜が成膜される。すなわち、ウェハWが、先ず、反応ガスノズル31の下方の第1の処理領域P1を通過する際、ウェハWの表面にはSi含有ガスが吸着する。Si含有ガスは、例えば、有機アミノシランガスであってもよい。次に、ウェハWが、反応ガスノズル32の下方の第2の処理領域P2を通過する際、反応ガスノズル32からのOガスによりウェハW上のSi含有ガスが酸化され、酸化シリコンの一分子層(又は数分子層)が形成される。次いで、ウェハWが、プラズマ発生部81の下方を通過する場合には、ウェハW上の酸化シリコン層は酸素ラジカルを含む活性化されたガスに晒される。酸素ラジカルなどの活性酸素種は、例えばSi含有ガスに含まれ酸化シリコン層中に残留した有機物を酸化することによって酸化シリコン層から離脱させるように働く。これにより、酸化シリコン層を高純度化することができる。
【0096】
所望の膜厚を有する酸化シリコン膜が形成される回数だけ回転テーブル2を回転した後、Si含有ガスと、補助ガスと、Oガスと、必要に応じて供給するArガス、Oガスを含むプラズマ処理用の混合ガスとの供給を停止することにより成膜処理を終了する。続けて、分離ガスノズル41、42、分離ガス供給管51、及びパージガス供給管72、73からのArガスの供給も停止し、回転テーブル2の回転を停止する。この後、真空容器1内にウェハWを搬入したときの手順と逆の手順により、真空容器1内からウェハWが搬出される。
【0097】
なお、本実施形態においては、原料ガスとしてシリコン含有ガス、反応ガスとして酸化ガスを用いた例を挙げて説明したが、原料ガスと反応ガスの組み合わせは、種々の組み合わせとすることができる。例えば、原料ガスとしてシリコン含有ガス、反応ガスとしてアンモニア等の窒化ガスを用い、シリコン窒化膜を成膜するようにしてもよい。また、原料ガスをチタン含有ガス、反応ガスを窒化ガスとし、窒化チタン膜を成膜してもよい。このように、原料ガスは有機金属ガス等の種々のガスから選択可能であるし、反応ガスも、酸化ガス、窒化ガス等の原料ガスと反応して反応生成物を生成可能な種々の反応ガスを用いることができる。
【0098】
[シミュレーション結果]
次に、本発明の実施形態に係る成膜装置及び成膜方法を実施したシミュレーション実験の結果について説明する。なお、理解の容易のため、上述の実施形態で説明した構成要素に対応する構成要素には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。実施例に用いた成膜装置は、上述の実施形態で説明した成膜装置と同様の構成を有し、原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34の総てを備えたシャワーヘッド30を有する成膜装置である。原料ガス供給部32と回転テーブル2との間の間隔d1は1.5mm、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34と回転テーブル2との間の間隔d3、d2は3mmに設定されている。また、シャワーヘッド30の底面板31も高底面領域31bと回転テーブル2との間隔も3mmに設定されている。
【0099】
図19は、シミュレーション実験1に係る成膜結果を示した図である。シミュレーション実験1においては、真空容器1内の圧力を2Torrに設定し、排気口610、620の排気圧力を50Torrに設定した。ウェハWの温度は400℃に設定している。回転テーブルの回転速度は5rpmとしている。原料ガス供給部32からは、有機アミノシランガス1010sccmの流量で供給している。また、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34からは、Arガスを各々5sccmの流量で供給している。処理ガスノズル60からは、Oガスを500sccmの流量で供給している。また、分離ガスノズル41、42からはArガスを5slmの流量で供給している。軸側上方の分離ガス供給管51からはArガスを1slmの流量で供給し、軸側下方のパージガス供給管72からは、Arガスを3slmの流量で供給している。また、プラズマ処理領域P3においては、ベースノズル61からはArガス1を14.8slm、Oガスを75sccmの流量で供給した。また、軸側ノズル62からArガスを0.1slmの流量で供給し、外側ノズル63からArガスを0.1slmの流量で供給している。
【0100】
図19(a)は、シミュレーション実験1の原料ガスの濃度分布の解析結果を示した図である。図19(a)においては、原料ガスの濃度が供給濃度の50%以上の領域を飽和基準領域(フルスケール領域)とし、それよりも濃度の低い領域を、所定の濃度幅でランク分けして分布を示している。ランクは、濃度の高い順にJ、K、L、M、N、Oの6段階で示されている。
【0101】
図19(a)において、濃度は原料ガス供給部32から周方向に沿って略均一に分布しており、良好な濃度分布特性を示している。
【0102】
図19(b)は、シミュレーション実験1の原料ガスの流れの軌跡の解析結果を示した図である。図19(b)に示されるように、原料ガスは、周方向に沿って流れており、回転テーブル2の半径方向において略均一に供給されていることが示されている。
【0103】
このように、本実施形態に係る成膜装置を用いて成膜を行った場合には、原料ガスの分布を均一にし、膜厚の面内均一性を高めることが可能な解析結果が得られた。
【0104】
図20は、シミュレーション実験2の解析結果を示した図である。シミュレーション実験2においては、シミュレーション実験1と同じ成膜装置を用いて、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34からのArガスの流量を10sccmに増加させた。原料ガス供給部32からの有機シランガスの流量は10sccmでシミュレーション実験1と同様である。また、他の条件もシミュレーション実験1と同様である。
【0105】
図20(a)は、シミュレーション実験2の原料ガスの濃度分布の解析結果を示した図である。図20(a)においても、濃度分布の表示方法は図19(a)と同様であり、濃度分布が周方向に沿って分布する略均一で良好な原料ガス濃度分布が示されている。
【0106】
図20(b)は、シミュレーション実験2の原料ガスの流れの軌跡の解析結果を示した図である。図20(b)において、外周側の原料ガスが原料ガス供給部32よりも左側、つまり回転テーブル2の回転方向の上流側に向かって移動しており、若干の逆流が生じていることが示されている。全体としては良好であるが、図19(b)よりは、原料ガスの流れが不均一になったことが示されている。このように、軸側補助ガス供給部33及び外周部補助ガス供給部34の補助ガスの流量を変化させることにより、原料ガスの流れの方向や分布に影響を与えることができることが分かる。
【0107】
図21は、シミュレーション実験3の解析結果を示した図である。シミュレーション実験3においては、シミュレーション実験1、2と同じ成膜装置を用いて、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34からのArガスの流量を20sccmに増加させた。原料ガス供給部32からの有機シランガスの流量は10sccmでシミュレーション実験1、2と同様である。また、他の条件もシミュレーション実験1、2と同様である。
【0108】
図21(a)は、シミュレーション実験2の原料ガスの濃度分布の解析結果を示した図である。図21(a)において、必ずしも周方向に沿って濃度が均一に分布しておらず、濃度分布に不均衡が生じていることが分かる。
【0109】
図21(b)は、シミュレーション実験3の原料ガスの流れの軌跡の解析結果を示した図である。図21(b)において、外周側の原料ガスが原料ガス供給部32よりも左側、つまり回転テーブル2の回転方向の上流側に向かって相当量移動しており、図20(b)よりも多く逆流が生じていることが示されている。つまり、図20(b)よりも更に原料ガスの流れが不均一になったことが示されている。このように、軸側補助ガス供給部33及び外周部補助ガス供給部34の補助ガスの流量を変化させることにより、原料ガスの流れの方向や分布に影響を与えることができることが分かる。
【0110】
図22は、シミュレーション実験4に用いる成膜装置のシャワーヘッドの底面板231の底面(下面)の構成を示した図である。シミュレーション実験4に係る成膜装置では、原料ガス供給部32、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34の高さを同一とし、回転テーブル2との間隔を総て原料ガス供給部22と同じ1.5mmに設定した。
【0111】
図23は、シミュレーション実験4の解析結果を示した図である。シミュレーション実験4においては、図22に示した底面板231を有するシャワーヘッドを備えた成膜装置を用いて、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34からのArガスの流量を10sccmに設定し、シミュレーション実験2と同じ設定とした。原料ガス供給部32からの有機シランガスの流量は10sccmでシミュレーション実験1〜3と同様である。また、他の条件もシミュレーション実験1〜3と同様である。
【0112】
図23(a)は、シミュレーション実験4の原料ガスの濃度分布の解析結果を示した図である。図23(a)において、必ずしも周方向に沿って濃度が均一に分布しておらず、濃度分布に不均衡が生じていることが分かる。
【0113】
図23(b)は、シミュレーション実験3の原料ガスの流れの軌跡の解析結果を示した図である。図23(b)において、外周側の原料ガスが原料ガス供給部32よりも左側、つまり回転テーブル2の回転方向の上流側に向かって相当量移動しており、同じ条件の図20(b)よりも更に多く逆流が生じていることが示されている。つまり、図20(b)よりも更に原料ガスの流れが不均一になったことが示されている。このように、軸側補助ガス供給部33及び外周側補助ガス供給部34の高さを原料ガス供給部32と同一とし、回転テーブル2との間隔を同一とすると、原料ガス供給の面内均一性が悪化することが示された。
【0114】
[実施例]
図24は、本実施形態に係る成膜装置を用いて成膜処理を実施した実施例1の実施結果を示した図である。実施例1においては、原料ガス供給部32からの原料ガスである有機シランガスの流量を10sccmで一定とし、軸側補助ガス供給部33からのArガスの流量を種々変化させた。また、外周側補助ガス供給部34からは、ガスの供給を行わなかった。
【0115】
実施例1においては、ウェハWの温度は400℃、真空容器1内の圧力は2.0Torrに設定した。また、回転テーブル2の回転速度は5rpmに設定した。プラズマ用の高周波電源85の出力は4kWに設定した。処理ガスノズル60からの酸化ガスは、Oガスの流量を300g/mとし、Oガスの流量を6000sccmに設定し、O/O混合ガスを供給した。
【0116】
実施例1において、軸側補助ガス供給部33からのArガスの流量を、0sccm、20sccm、40sccmと変化させた。なお、軸側補助ガス供給部33からのArガスの流量を0sccmに設定した場合には、原料ガスのみを供給する場合と、原料ガスとキャリアArガス40sccmを併せて供給する場合の2つの場合を実施した。
【0117】
図24において、横軸はY座標(回転テーブル2の半径方向に沿った方向における座標)であり、縦軸は膜厚(Å)である。図24に示される通り、軸側補助ガス供給部33からArガスの流量を増加させるにつれて、軸側の膜厚が低下していることが分かる。これは、軸側にArガスが供給された結果、軸側の原料ガスの濃度が低下し、膜厚が薄くなったことを意味する。このように、軸側補助ガス供給部33からArガスを供給することにより、軸側の膜厚を低下させる制御が可能であることが示された。
【0118】
図25は、本実施形態に係る成膜装置を用いて成膜処理を実施した実施例2の実施結果を示した図である。実施例2においては、原料ガス供給部32からの原料ガスである有機シランガスの流量を25sccmで一定とし、外周側補助ガス供給部34からのArガスの流量を種々変化させた。また、軸側補助ガス供給部33からは、ガスの供給を行わなかった。その他の条件は、実施例1と同一である。
【0119】
実施例2においては、外周側補助ガス供給部34からのArガスの流量を、0sccm、50sccm、100sccmと変化させた。
【0120】
図25に示される通り、外周側補助ガス供給部34からArガスの流量を増加させるにつれて、外周側の膜厚が低下していることが分かる。これは、外周側にArガスが供給された結果、外周側の原料ガスの濃度が低下し、膜厚が薄くなったことを意味する。このように、外周側補助ガス供給部34からArガスを供給することにより、軸側の膜厚を低下させる制御が可能であることが示された。
【0121】
図26は、本実施形態に係る成膜装置を用いて成膜処理を実施した実施例3の実施結果を示した図である。実施例3においては、原料ガス供給部32からの原料ガスの流量を5sccmで一定とし、軸側補助ガス供給部33から原料ガスである有機アミノシランガスを供給するとともに、その流量を0sccm、5sccm、10sccmと変化させた。また、外周側補助ガス供給部34からの補助ガスの供給は行わなかった。また、軸側補助ガス供給部33からの原料ガスの流量が0sccmの場合に、原料ガス供給部32からの原料ガスの流量を10倍の50sccmとした場合も併せて実施した。
【0122】
図26(a)は、Y軸における膜厚分布を示した図である。図26(a)に示される通り、軸側補助ガス供給部33から供給される原料ガスの流量を増加させるにつれて、軸側の膜厚が増加していることが分かる。そして、軸側補助ガス供給部33からの原料ガスの流量を10sccmとした場合には、原料ガス供給部32からの原料ガスの流量を10倍の50sccmとした場合と同じである。つまり、原料ガス供給部32から5sccmの流量、軸側補助ガス供給部33から10sccmの合計15sccmの原料ガスを供給した膜厚は、この3倍以上の50sccmの流量で原料ガス供給部32のみから原料ガスを供給した場合とほぼ同一であり、原料ガスの供給量が大幅に低減できていることが分かる。
【0123】
図26(b)は、実施例3の平均膜厚と面内均一性を示した図である。図26(b)において、棒グラフの上側の数字が平均膜厚を示しており、棒グラフ内の数字が面内均一性を示している。図26(b)に示される通り、原料ガス供給部32からの原料ガスの流量が10sccm、軸側補助ガス供給部33からの原料ガスの流量が5sccmの場合が、面内均一性が5.5と最も良好であり、単に原料ガス供給部32から50sccmの原料ガスを供給した場合の7.6よりも良好である。このように、本実施形態に係る成膜装置によれば、軸側補助ガス供給部33から供給される補助ガスの種類及び流量を適切に設定することにより、少ない原料ガスの供給で良好な面内均一性を得ることができることが示された。
【0124】
また、図24に示した実施例1の結果と相俟って、軸側補助ガス供給部33からArガスを供給すれば軸側の膜厚を低減させることができ、原料ガスを供給すれば軸側の膜厚を増加させることができることが分かる。つまり、軸側補助ガス供給部33からの用途に応じた補助ガスの供給により、成膜プロセスにおける膜厚を制御することができることが示された。
【0125】
更に、軸側補助ガス供給部33のみからの補助ガスの供給で、膜厚の大幅な制御が可能であることから、軸側補助ガス供給部33のみ設けるようにしても、十分な効果を得ることができることも示された。
【0126】
更に、外周側補助ガス供給部34では、原料ガスのみを供給する実施例を実施していないが、図26(a)、(b)の結果から、外周側補助ガス供給部34から原料ガスを供給した場合には、外周側の膜厚を増加させることが可能であると言える。
【0127】
このように、本実施形態に係る成膜装置及び成膜方法によれば、小流量の原料ガスの供給で、面内均一性に優れた成膜を実現することができる。
【0128】
なお、本実施形態に係る成膜装置及び成膜方法が、シリコン含有ガスを用いた酸化膜の成膜プロセスに限定されず、シリコン含有ガスを用いた窒化膜の成膜プロセス、チタン含有ガスを用いた窒化膜の成膜プロセスにも適用可能であることは、上述の通りである。
【0129】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0130】
1 真空容器
2 回転テーブル
24 凹部
30 シャワーヘッド
31 底面板
32 原料ガス供給部
33 軸側補助ガス供給部
34 外周側補助ガス供給部
32a〜34a ガス供給路
39 ガス導入口
39a ガス導入路
81 プラズマ発生部
120〜123 流量制御器
130〜133 ガス供給源
P1〜P3 処理領域
W ウェハ
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