【実施例】
【0068】
以下、本発明について、実施例によって、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例によって制限されるものではない。
実験方法:
取り立てて言及がない限り、以下の実施例においては、次の実験方法を使用した。
【0069】
1.CMLマウスモデル製造
研究のために、CML類似疾患のさまざまに異なるマウスモデルを利用した。
【0070】
まず、CML疾患誘導のために、テトラサイクリン(tet)誘導性CMLマウスモデルを利用した。FVB/N遺伝的背景をそれぞれ有する、Tal1−tTAマウス(JAXデータベースストレイン#006209)及びTRE−BCR−ABL1形質転換マウス(JAXデータベースストレイン#006202)を、Jackson実験室から購入した。Tal1−tTA x TRE−BCR−ABL1二重形質転換マウスを生産するように、Tal1−tTA及びTRE−BCR−ABL1形質転換マウスを相互交配させた。二重形質転換マウスを20mg/Lのドキシサイクリン(Sigma−Aldrich)を含んだ飲用水が供給されるケージで飼育した。出生5週目、ドキシサイクリン含有飲用水を一般飲用水で代替することにより、BCR−ABL1発癌遺伝子(oncogene)の発現を誘導した。ドキシサイクリン中断後約5週目、二重形質転換突然変異体において、CML類似疾患が発病した。この動物を「テトラサイクリン誘導性CML発病マウス」と命名した。
【0071】
Foxo3a欠乏tet誘導性CMLマウスモデルを確立するために、Foxo3a欠乏マウス42(C57BL/6;F5)と、C57BL/6背景で、5世代の間逆交配されたTal−tTA及びTRE−BCR−ABL1形質転換マウスとをそれぞれ交配させた。
【0072】
BCR−ABL1形質導入/移植基盤CMLモデル(BCR−ABL1 CMLマウス)をまた利用した。簡略には、正常KLS
+細胞(レシピエントマウス当たり4−5x10
3細胞)を、ヒトBCR−ABL1−iresGFPレトロウイルスで形質導入し、放射線照射された(9Gy)レシピエントC57BL/6マウスに移植した(Sankyo−Lab Service、Tsukuba、日本)。CML類似疾患が、移植12−20日目にレシピエントに発病した。
【0073】
IM+セファドロキシルの組み合わせ投与のインビボ効果を調査するために、BCR−ABL1 CML発病マウスに、ビヒクル[人工胃液溶液(2.0g NaCl、7ml conc.HCl及び3.2gペプシンを含んだ900ml ddH
2O)]、またはビヒクル中のイマチニブメシレート(IM;Gleevec(登録商標)100mg/kg/day;Novartis)、及び/またはビヒクル中のセファドロキシル(36mg/kg/day;Sigma−Aldrich)を投与した。移植8ないし90日目まで、経口摂食(oral gavage)によって処理した。Ly2228820単独投与の効果を調査するために、BCR−ABL1 CML発病マウスに、移植8ないし60日目まで経口摂食によって、ビヒクル、またはビヒクル中のLy2228820(3日ごとに、2.5mgKg
−1;Axon Medchem)を投与した。ダサチニブ+Ly2228820の組み合わせ投与の効果を調査するために、tet誘導性CML発病マウスに、DOX中断後1−30日、ビヒクル単独、またはビヒクル中のダサチニブ(5mgKg
−1day
−1;Brystol−Myers Squibb)を投与し、かつ/またはDOX中断7−28日、経口摂食によって、ビヒクル中のLy2228820(3日ごとに、2.5mgKg
−1;Axon Medchem)を投与した。全ての動物ケアは、神奈川大学の動物及び組み換えDNA実験指針を守った。
【0074】
2.細胞分離(cell sorting)
ドキシサイクリン中断5週目、骨髄(BM)単核細胞(MNC)を、テトラサイクリン誘導性CML発病マウス(Tal1−tTA
+TRE−BCR−ABL1
+)及び正常健康なリタメイト(littermate)マウス(Tal1−tTA
+)の2本の後足から分離した。BM MNCを、最初に、抗FcγIII/II受容体(2.4G2)抗体(BDBiosciences)でインキュベーションさせ、その次に、抗Sca−1(E13−161.7)−PE、抗CD4(L3T4)−FITC、抗CD8(53−6.7)−FITC、抗B220(RA3−6B2)−FITC、抗TER119(Ly−76)−FITC、抗Gr−1(RB6−8C5)−FITC及び抗Mac1(M1/70)−FITC(いずれも、BD Biosciences製);抗CD48(HM48−1)−APC−Cy7及び抗CD150/SLAM(TC15−12F12.2)−Pacific blue(二つとも、BioLegend製);及び抗cKit(ACK2)−APC及び抗CD135/Flk2/Flt3(A2F10)−ビオチン(二つとも、eBiosciences製)抗体でインキュベーションした。ビオチン化された一次抗体を、ストレプトアビジン−PE−Cy7(BD Biosciences)を利用して視覚化した。
【0075】
メタボロミックス(metabolomics)分析のために、FACS AriaIIIセルソーター(BD Biosciences)を利用して、公表された標準システムによって、非成熟KLS
+(cKit
+Lineage−Sca−1
+)細胞、前駆細胞(progenitor)KLS
−(cKit
+Lineage
−Sca−1
−)細胞、及び分化されたLin
+(Lineage
+)細胞を含む分画で、免疫染色された細胞を分離した。
【0076】
次世代RNAシーケンシング及びDuolink(登録商標)インサイチュPLA分析のために、KLS
+細胞を初生(the most primitive)長期(LT:long−term)癌幹細胞(CD150
+CD48
−CD135
−KLS
+)、短期(ST:short−term)癌幹細胞(CD150
−CD48
−CD135
−KLS
+)、CD48
+細胞(CD48
+CD135
−KLS
+)及び多能性前駆細胞類似(MPP:multipotent progenitor-like)細胞(CD135
+KLS
+)で精製した。
【0077】
CML癌幹細胞の連続移植(serial tranplantation)のために、GFP/BCR
−ABL1
+CML KLS
+細胞をBCR−ABL1 CML発病マウスのBM MNCから精製した。レトロウイルス及びレンチウイルスの形質導入のために、GFP/BCR
−ABL1
+CML KLS
+細胞及びGFP/BCR
−ABL1
+CML KLS
−を、BCR−ABL1 CML発病マウスのBM MNCから精製した。HSC競争的再構成分析(competitive reconstitution assay)のために、正常KLS
+細胞を、C57BL6コンジニック(CD45.1)マウスのBM MNCから精製した。
【0078】
3.メタボロミックス(metabolomics)
メタボロミックスプロファイリングのために、ドキシサイクリン中断5週目、CML発病Tal1−tTA
+TRE−BCR−ABL1
+マウス(3個の独立実験それぞれにおいて、n=4マウス)、及びリタメイト正常健康(Tal1−tTA
+)マウス(2個の独立実験それぞれにおいて、n=6マウス)から、1.8−2.5x10
5KLS
+非成熟造血幹細胞、KLS
−前駆細胞及びLin
+分化細胞を単離した。また、8週齢及び24週齢(2個の独立実験それぞれにおいて、n=6マウス)のC57BL/6マウスから単離した1.0−1.8x10
5非成熟KLS
+細胞において、代謝産物(metabolite)を測定した。
【0079】
また、インビボにおいて、ジペプチド吸収阻害のために、30日間経口摂食によって、ビヒクルまたはセファドロキシル(36mgKg
−1day
−1)を投与したtet誘導性CML発病(Tal1−tTA
+TRE−BCR−ABL1
+)マウス(3個の独立実験それぞれにおいて、n=4マウス)、及びリタメイト正常健康(Tal1−tTA
+)マウス(2個の独立実験それぞれにおいて、n=6マウス)から、非成熟KLS
+細胞を単離した。インビボにおいて、IM投与のために、健康なリタメイトマウス(2個の独立実験それぞれにおいて、n=6マウス)、及びビヒクルまたはセファドロキシル(36mgKg
−1day
−1)を投与されたCML発病マウス(3個の独立実験それぞれにおいて、n=4マウス)から、非成熟KLS
+細胞を単離した。インビトロにおいて、タンパク質分解/ターンオーバーの抑制のために、CML発病マウス(各3個の独立実験において、n=8マウス)由来CML KLS
+細胞を、低酸素(3%O
2)条件下で、無血清SF−03筋細胞培地(Sanko Junyaku)中にプレーティングし、2時間、ビヒクル、100nMボルテゾミブ(Cell Signaling、#2204)または100nMバフィロマイシンA1(Sigma、B1793)で処理した。全ての場合において、単離された細胞ペレットは、得られた後、すぐに−80℃で凍結させた。
【0080】
メタボロミックプロファイリングを、超高速遂行液体クロマトグラフィー/質量分析機(UPLC/MS/MS)、及び気体クロマトグラフィー/質量分析機(GC/MS)を利用して、Metabolon Inc.(Durham、NC)によって行った。Metabolon LIMS(Laboratory Information Management System)を利用して、データをコンパイリングした。プラットホームのUPLC/MS/MS領域は、Waters Acquity UPLC(Waters)、熱処理された電気噴霧イオン化(HESI−II)ソース、及びOrbitrap質量分析機(mass analyzer)に連結されたQ−Exactive high resolution/accurate mass spectrometer(Thermo Scientific)に基づいた。GC/MSは、electron impact ionization(Thermo-Finnigan)を利用して、Trace DSQ fast-scanning single-quadrupole mass spectrometerによって遂行した。
【0081】
4.次世代RNAシーケンシング(next-generation RNA sequencing)
全体正常造血幹細胞及びCML細胞から単離されたLT−癌幹細胞、ST−癌幹細胞及びKLS−前駆細胞を、200μl Isogene(Nippon Gene)溶液で直接分離した。Hokkaido System Science Co.Ltd.(札幌、日本)によって、RNA抽出及びシーケンシングを行った。RNA定性分析を、Nanodrop(Thermo Fisher Scientific)及びAgilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies)を利用して確認した。全てのRNA試料は、>8.5のRNAインテグリティナンバー(RNA integrity number)を有し、RNAシーケンシングに対する品質臨界値を凌駕した。Illumina Sequencing(Takara Clontech)のSMARTer Ultra Low Input RNA Kitを利用して、全体RNAからライブラリを構築した。RNAを断片化し、オリゴ−dTプライミング(priming)を利用して、単一鎖cDNAに転換させた。HiSeq2000(Illumina)を利用して、100塩基のペアドエンド(paired-end)判読を行った。FastQ formatで判読された配列を、FastQCを利用して品質を評価した。該配列を、DNAnexus Inc.(Mountain View、CA)(https://dnanexus.com/)によって、SeqNovaTM CSを利用して、マウスゲノム標準(Musmusculus;mm9、NCBIBuild 37)からマッピングした。
【0082】
5.定量リアルタイムRT−PCR分析
RNeasyキット(QIAGEN)を利用して、RNA試料を、DOX中断5週目、6匹のtet誘導性CML発病(Tal1−tTA
+TRE−BCR−ABL1
+)マウス、及び8匹のリタメイト対照群(Tal1−tTA
+)マウスから単離した4−5x10
4LT−幹細胞、ST−幹細胞、CD48
+KLS
+細胞、MPP及びKLS
−前駆細胞から精製した。RNA試料を、Advantage RT−for−PCRキット(Takara-Clontech)を利用して逆転写した。Mx3000P(登録商標)Real-time PCRシステム(Stratagene)によって、SYBRグリーンプレミックスEXTaq(Takara)に利用して、リアルタイム定量PCRを遂行した。
【0083】
6.[3H]GlySar吸収によるSlc15A2トランスポーター活性の分析
Slc15A2トランスポーター活性を、酸性トランスポーター培地(pH.6.0)中に浮遊した細胞による[3H]GlySar吸収を測定する、良好に確立された分析法を利用して測定した。簡略には、正常KLS
+細胞またはCML KLS
+細胞(1x10
5)を、100μMセファドロキシル(Sigma−Aldrich)の存在または不存在のトランスポーター培地(125mM NaCl、4.8mM KCl、5.6mM D−グルコース、1.2mM CaCl
2−2H
2O、1.2mM KH
2PO
4、1.2mM MgSO
4−7H
2O及び25mM MES、pH.6.0)に浮遊させた。[3H]GlySar(Moravek Biochemicals、Brea、CA)を、トランスポーター反応開始のために、前記細胞懸濁液に添加した。60分または120分後、細胞によって内在化された[3H]GlySarの放射能を液体シンチレーションカウンターを利用して測定した。
【0084】
7.cDNA構築及びレトロウイルス製造
テンプレートで、ヒトWT Smad3 cDNA(Dr.Anita B.Roberts、NCI、NIH、Bethesda、MDによって提供される)を利用して、ヒトSmad3野生型(WT)、Smad3 3SA(Ser422、Ser423及びSer425は、いずれもAlaに転換される)、及びSmad3 S208A(Ser208は、Alaに転換される)をコーディングするレトロウイルス発現ベクターを構築した。簡略には、Smad3 3SA及びS208A突然変異をコーディングするcDNAを、pCR2 TOPOベクター(Invitrogen)中において、High−Fidelity DNAポリメラ−ゼKOD Plus2キット(Toyobo)またはQuikChange部位指定突然変異誘発キット(Stratagene)を利用して構築した。DNA配列を、ABI−3730xlinstrument(Applied Biosystems)を利用して、Operon Biotechnology(東京、日本)によって確認した。
【0085】
EcoRI/XhoI切断されたcDNA断片を、レトロウイルスベクターMSCV−ires−GFP中に挿入した。レトロウイルスパッケージング細胞(Plat−E)を、FuGene6(Roche)を利用して、対照群GFPベクター(MSCV−ires−GFP)またはMSCV−ires−GFP−Smad3WT,MSCV−ires−GFP−Smad3 3SAまたはMSCV−ires−GFP−Smad3 S208Aプラスミドで一時的に形質感染させた。形質感染2日目、培養上澄み液を0.45μmフィルタで濾過し、16時間6,500xgで遠心分離した。ウイルス含有ペレットを、0.1% BSA(#09300;幹細胞Technology)及びペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco)を含んだ無血清SF−03培地(Sanko Junyaku)である幹細胞培地で再懸濁し、KLS
+細胞感染のために利用されるレトロウイルス溶液を生産した。
【0086】
8.KLS
+細胞のレトロウイルス感染及びマウス移植
KLS
+CML開始(initiating)細胞を、テトラサイクリン誘導性CML発病マウスの2本の後足から得たBM MNCから精製した。この細胞を、100ng/mlヒトトロンボポエチン(TPO、PeproTech)及び100ng/mlマウス幹細胞因子(SCF、和光純薬)に補充された200μl幹細胞培地を含んだ96ウェルプレート内で、37℃、3%O
2インキュベータで一晩培養した。翌日、この細胞を、レトロネクチン(TakaraBio)であらかじめ処理された96ウェルプレートに移し、マグネチックプレート(OZ Biosciences)上で、Combimag(OZ Biosciences)を利用して、前記150μlのレトロウイルスと共に、30分間インキュベーションさせた。上澄み液の上側半分を注意深く除去した後、感染された細胞に、TPO及びSCFで補充された100μlの新鮮な幹細胞培地を追加し、37℃、3%インキュベータで一晩中培養した。レトロウイルス感染されたCML開始細胞(約1.0−1.5x10
5cells/mouse)を、致命的放射能処理された(9.0Gy)FVBコンジェニック(congenic)レシピエントマウスに静脈注射した。
【0087】
9.インビボでのLT−CML幹細胞維持
移植30日目、レシピエントマウスにおいて、LT−CML癌幹細胞のインビボ維持を評価した。移植レシピエントのBMから単離された全体MNCを、抗Sca−1(E13−161.7)−PE、抗CD4(L3T4)−ビオチン、抗CD8(53−6.7)−ビオチン、抗B220(RA3−6B2)−ビオチン、抗TER119(Ly−76)−ビオチン、抗Gr−1(RB6−8C5)−ビオチン、抗Mac1(M1/70)−ビオチン抗体(いずれもBD Biosciences);抗CD135/Flk2/Flt3(A2F10)−ビオチン及び抗c−Kit(ACK2)−APC抗体(二つとも、eBiosciences);及び抗CD48(HM48−1)−APC−Cy7及び抗CD150/SLAM(TC15−12F12.2)−Pacific blue(二つともBioLegend)で免疫染色した。ビオチン化された一次抗体を、ストレプタビジン−PE−Cy7(BD Biosciences)で視覚化した。
【0088】
全体GFP(Smad3)+KLS+CML開始細胞内において、GFP(Smad3)+LT−CML幹細胞の頻度を、FACS Aria IIIセルソーター(BD Biosciences)を利用して測定した。
【0089】
10.Duolink(登録商標)インサイチュ近接接合分析(Duolink(登録商標) in situ proximity ligation assay(PLA))
Smad2、Smad3、p38MAPK、AMPK及びS6リボソームタンパク質のリン酸化、及びFoxo3a−Smad2及びFoxo3a−Smad3相互作用を調査するために、Duolink(登録商標)インサイチュPLA分析法(Olink Bioscience)を利用した。CML発病マウスから新鮮に単離されたLT−CML幹細胞、ST−幹細胞、CD48
+,MPP及びKLS
−CML細胞、並びに正常健康なリタメイトから新鮮に単離されたLT−正常HSCを、直ちに4%パラホルムアルデヒドで30分間固定化した。
【0090】
インビトロ阻害剤実験のために、LT−CML癌幹細胞を、ビヒクル(対照群;人工胃液溶液(2.0g NaCl、7ml conc.HCl及び3.2gペプシン含有900ml ddH
2O))、5μM Ly364947(TGF−βタイプI受容体カイネースAlk5阻害剤;Merck)、5μM SB203580(p38MAPK阻害剤;LC Laboratories)、5μM GlySar(ジペプチドトランスポーター阻害剤;Sigma−Aldrich)、5μMセファドロキシル(ジペプチドトランスポーター阻害剤;Sigma−Aldrich)または100nMラパマイシン(mTORC1阻害剤;Cell Signaling Technologies)でインキュベーションし、3%O
2、37℃で30分間培養した。処理された細胞を、4%パラホルムアルデヒドで30分間固定化し、0.25%トリトン−X100で15分間処理し、洗浄した後、1時間5% FBS TBS内でインキュベーションすることにより遮断させた。
【0091】
ブロッキングされた細胞を、下記表1に羅列された抗体の組み合わせと共に、4℃で一晩インキュベーションした。該抗体の近接結合を、一つは、マイナスストランドPLAプローブに連結され、他の一つは、プラスストランドに連結された2個の二次抗体セットを使用する、Duolink(登録商標)インサイチュPLAシステムを利用して測定した。核を、DNAマーカーDAPI(Sigma)で染色した。染色されたスライドを、Fluoromount Plus(Diagnostic Biosystems)を利用して装着し、蛍光イメージを、共焦点顕微鏡(FV10i、Olympus)及びPhotoshopソフトウェア(Adobe)によって得た。単一細胞当たり蛍光焦点(fluorescent foci)の数をDuolink(登録商標)Image Toolソフトウェア(Olink Bioscience)を利用して定量した。
【0092】
【表1】
【0093】
Smad3リン酸化のための陽性及び陰性の対照群として、インビトロにおいて、LT−CML癌幹細胞に、TGF−β1(1ng/ml;R&D Systems)またはLy364947(5μM;Merck)をそれぞれ添加し、3%O
2において、30分間インキュベーションした。mTORC1活性化のための陰性対照群として、インビトロにおいて、LT−CML幹細胞に、ラパマイシン(100nM;Cell Signaling Technologies)を添加してインキュベーションした。
図3、及び
図13ないし
図15に示されているように、適切な蛍光焦点が、この対照群実験で探知された(あるいは、探知されていない)。D−PLAのための技術的陰性対照群として、インビトロにおいて、LT−CML癌幹細胞を、単一抗マウス一次抗体で処理し、
図8及び
図9に示されているように、いかなる蛍光焦点も探知することができないということを確認した。
【0094】
11.コロニー形成分析
LT−CML幹細胞またはLT−正常HSC(1x10
3/plate)を、ビヒクル(対照群)またはジペプチドトランスポーター阻害剤セファドロキシル(5μM)の存在下で、OP−9ストローマ細胞上で、5日間共培養した。細胞を収去し、PBSで洗浄した後、SCF、IL−3、IL−6及びエリスロポエチン(Methocult GF M3434;Stem Cell Technologies)を含んだ半固体メチルセルロース培地にプレーティングした。37℃、5%CO
2を含んだ湿潤大気中で7日間成長させた後、コロニー数を光学顕微鏡でカウンティングした。
【0095】
ジペプチドトランスポーター阻害剤+チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の組み合わせ処理のために、LT−CML癌幹細胞(3x10
3)のセファドロキシル(5μM)の存在下で、OP−9ストローマ細胞上にプレーティングした。培養24時間後、細胞にさらなるDMSOまたは1μM IM(Axon Medchem)を処理し、さらにもう4日間インキュベーションした(総5日)。処理された細胞をPBSで洗浄し、半固体培地に移した後、7日後、コロニー形成を前述のように評価した。
【0096】
12.短いヘアピン(sh:short hairpin)RNA targetting Slc15A2 mRNA
pGFP−C−shLentiに基づいて、マウスSlc15A2遺伝子を標的化する29−mershRNA配列(マウスSlc15A2shB:5’-GAA CCG TTC TGA GGA CAT TCC AAA GCG AC-3’、マウスSlc15A2shD:5’-TAT CGG CTG ATC TCC AAG TGC GGA GTT AA-3’)を保有する3世代(third generation)HuSHTM shRNAレンチウイルスベクター、及び対照群スクランブルド(scrambled)shRNAを、Origene(Rockville、MD)から購入した。pCMV−VSV−G及びpCMV−dR8.2 dvpr Addgene(Cambridge、MA)から提供された。KSL+細胞のレトロウイルスの形質導入において、前述のように293TN生産者細胞(System Biosciences;Mountain View、CA)を、FuGene6(Roche)を利用して、pGFP−C−shLentiベクター(100mmプレート当たり6μg)、pCMV−VSV−G(1.5μg)及びpCMV−dR8.2dvpr(4.5μg)で一時的に形質感染させた。形質感染2日目、培養上澄み液を0.45μmフィルタで濾過し、16時間6,500xgで遠心分離した。ウイルス含有ペレットを幹細胞培地で再懸濁し、マウスSlc15A2 mRNAまたはスクランブルドshRNAを標的化するshRNAを保有するレンチウイルス溶液を生産した。tet誘導性CML発病マウスから単離されたCML KLS+細胞及びCML KLS−細胞を前記レンチウイルスで感染させ、GFP+CML KLS
+及びGFP+CML KLS
−細胞を、感染3日目に細胞分離(cell sorting)によって単離した。インビトロにおいて、コロニー形成能を調査するために、該細胞を低酸素条件(3%O
2)下で、OP−9ストローマ細胞上で5日間共培養し、コロニー形成を前述のように評価した。
【0097】
13.正常HSCに対する競争的再構成分析(competitive reconstitution assay)
C57BL/6(Ly5ローカスに対するCD45.2)マウス及びコンジェニックC57BL/6(Ly5ローカスに対するCD45.1;B6−Ly5.1)マウスを、Sankyo−Lab Service(Tsukuba、日本)から購入した。致死量に照射された(9 Gy)C57BL/6(CD45.2)レシピエントマウスを、コンジェニックC57BL/6(CD45.1)(B6−Ly5.1)マウス由来1x10
4個の正常KLS
+細胞(HSC)で、C57BL/6(CD45.2)マウス由来5x10
5個の未分画化BM MNCと競争させて再構成した。0ないし8週目、移植されたレシピエントに、ビヒクルまたはセファドロキシル(36mgKg
−1day
−1)を投与した。ドナー由来細胞(CD45.1)の再構成を、移植4週目及び8週目に、CD45.2(104)−FITC及びCD45.1(A20)−PEに対するmAbで染色した末梢血液単核細胞の流細胞分析によってモニターした。
【0098】
14.CML癌幹細胞の連続移植(serial transplantation)
インビトロにおいてセファドロキシル、及び/またはインビボにおいてIMでマウスを処理した後、疾患誘導能のCML癌幹細胞の維持を調査するために、処理されたBCR−ABL1 CML発病マウスにおいて、GFP/BCR−ABL1+CML KLS
+細胞数を測定し、該細胞の後続二次移植を行った。簡略には、CML発病マウスに、経口摂食によって、BM移植30日間、前述のように投与した。処理されたCML発病マウスの2本の後足から得たBM MNCから単離した全体GFP/BCR−ABL1+CML細胞内において、GFP/BCR−ABL1+CML KLS
+細胞の数を流細胞分析法によって評価した。その後、新鮮に精製されたGFP/BCR−ABL1
+CML KLS
+細胞(3x10
4)を、C57BL/6マウス由来5x10
5個の正常BM MNCと共に、致死量に照射されたコンジェニックレシピエントマウスの二次セットに連続的に移植した。マウス生存及び疾患再発を90日間モニターした。
【0099】
15.ヒトCML患者でのSLC15A2 mRNA発現
ヒトCML患者において、SLC15A2 mRNAレベルに係わるデータを、9人の健康なドナー、9人のCML患者、及びIMで治療後1月が経過した同一の9人のCML患者のマイクロアレイ分析を含む共用データベース遺伝子発現(GEO、ID:GSE33075)から得た。ワンサイド標本t検定(one-sided paired t-test)を、CML患者及びIM治療後のSLC15A2発現を比較するために利用した。独立試料に係わる、CML患者及び健康なドナーのSLC15A2発現を比較するために利用した。
【0100】
16.ヒトCML白血病開始細胞のコロニー形成能
慢性段階CMLを有する3人のヒト患者由来の生きているBM MNCを、Allcells(#06−255、#06−620及び#147742、Alameda、CA、米国)から購入した。該患者の公知に立脚した同意を確認する文書は、http://www.veritastk.co.jp/attached/3978/AllCells_BM_Informed_Consent_Form.pdfで利用可能である。該細胞を、抗CD34(8G12)、抗CD38(HIT2)、抗CD3(SK7)、抗CD16(3G8)、抗CD19(SJ25C1)、抗CD20(L27)、抗CD14(MμP9)及び抗CD56(NCAM16.2)Ab(いずれも、BD Biosciences)で染色した。CD3、CD16、CD19、CD20、CD14及びCD56を認識するmAbの混合物を、Lin−細胞を確認するために利用し、CD34
+CD38
−Lin
−細胞を精製した。セファドロキシル(5μM)単独、またはセファドロキシルと、IM(1μM;Axon Medchem)またはダサチニブ(500nM;LC laboratories)との組み合わせでの処理効果を調査するために、CD34
+CD38
−Lin
−細胞を、低酸素条件(3%O
2)下で、OP−9ストローマ細胞上で培養した。収去及びPBSによる洗浄後、初生ヒトCML白血病開始細胞(LICs)のコロニー形成能を、SCF、GM−CSF、IL−3、IL−6、G−CSF及びエリスロポエチン(Methocult GF+H4435;Stem Cell Technologies)を含む半固体メチルセルロース培地で、培養によって評価した。低酸素(3%O
2)条件下で、37℃で7日間成長後、コロニー数を光学顕微鏡でカウンティングした。
【0101】
17.統計分析
統計的差を、p値については、アンペアドスチューデントt−検定(Student’s t-test)を利用し、生存曲線については、ロングランク非母数的検定(long-rank non-parametric test)を利用して測定した。メタボロミックデータに対する統計的分析は、プログラム「R」(http://cran.r-project.org/)を利用して遂行した。
【0102】
実施例1:CML癌幹細胞は、さまざまなジペプチド種(species)を蓄積
CML癌幹細胞維持(maintenance)のために要求される栄養供給は、CML癌幹細胞を根絶するための新規治療剤の標的候補でもある。標的候補の正常造血幹細胞に対する有害な効果を減らすために、CML癌幹細胞と正常HSCとを区別させる、変更された作用メカニズムを理解することが本質的である。従って、栄養信号伝逹差を確認するために、正常HSCと、テトラサイクリン誘導性CML発病マウスから単離したCML癌幹細胞との全般的な代謝比較を行った。
【0103】
テトラサイクリン誘導性CMLマウスモデルは、Tal1−tTA形質転換マウス及びTRE−BCR−ABL1形質転換マウス(FVB/N背景)を交配し、Tal1−tTA x TRE−BCR−ABL1二重形質転換マウスを得た。それら子孫は、ドキシサイクリン(DOX:doxycycline)投与を中断する場合、CML癌幹細胞の生成と共に、CML疾患の誘導が同時に発生する。健康な対照群(Tal1−tTA
+)マウス及びCML発病マウス(Tal1−tTA
+TRE−BCR−ABL1
+)から、正常HSC及びCML癌幹細胞(白血病開始細胞(LIC)でも知られる)を含む非成熟KLS
+(cKit
+Lineage
−Sca−1
+)集団、コミティッド(committed)前駆細胞KLS
−(cKit
+Lineage
−Sca−1
−)集団;成熟Lin
+(Lineage
+)集団の細胞サブセット(subset)を単離した。
【0104】
この細胞の代謝物質を調査するために、複雑なメタボロミック技法を適用した。報告されたところによれば、静止した正常HSCが、嫌気性当該過程を介して、アデノシン5’−トリホスフェート(ATP)を生産するが、正常KLS
+細胞及びCML KLS
+細胞の間で、グルコース、フラクトース1,6−ビスホスフェート(F−1,6−bP)、またはピルベートのレベル差がほぼないことを観察した(
図1a)。アデノシン5’−モノホスフェート(AMP)レベルは、CML KLS
+細胞で若干高かったが、ATPは、両細胞集団において検出されなかった。従って、正常KLS
+細胞及びCML KLS
+細胞は、いずれも相対的エネルギー欠乏状態を示す高いAMP/ATP比を示した(データ未表示)。
【0105】
多様な単一アミノ酸レベルを測定したとき、正常KLS
+細胞及びCML KLS
+細胞の間において、いかなる差も観察することができなかった(
図1b)。しかし、驚くべきことに、さまざまなジペプチド種は、健康なリタメイト(FVB/N)マウス(
図1c)、または8及び24週齢の健康なC57BL/6対照群マウス(データ未表示)から単離された正常KLS
+細胞と比較したとき、CML KLS
+細胞において、劇的に増加するということを見い出した。各段階において、CML細胞対正常細胞のジペプチドレベル比の計算は、非成熟CML KLS
+集団が、成熟CML細胞と比較し、最も高いジペプチド含量を有する傾向を示した(
図2)。一部ジペプチドが、CML KLS
−前駆細胞集団において増加したが、かような増加は、CML前駆細胞増殖支持のために増加されたタンパク質のターンオーバー(turn over)/分解によると推定される。従って、正常HSC及び成熟CML細胞とは異なり、CML癌幹細胞は、ジペプチドプールにアミノ酸を保存する。
【0106】
実施例2:CML癌幹細胞は、ジペプチドトランスポーターを介してジペプチド内在化
非成熟CML細胞になぜジペプチドが蓄積されるかということを調査するために、上流遺伝子発現パターンを分析した。健康なリタメイト対照群及びCML発病マウスから、初生長期(LT:long−term)CML癌幹細胞(CD150
+CD48
−CD135
−KLS
+ cells)、短期(ST:short−term)幹細胞(CD150
−CD48
−CD135
−KLS
+ cells)及びKLS
−前駆細胞を単離し、次世代RNAシーケンシングを利用して、遺伝子発現プロファイリングを行った。LT−CML癌幹細胞においては、上向き調節されるが、CML KLS
−細胞または正常LT−HSCではない遺伝子をスクリーニングし、107個のそのような遺伝子を同定した。それらのうち、定量リアルタイムRT−PCR分析を介して、オリゴ/ジペプチドトランスポーターをコーディングするSlc15A2遺伝子が、CML KLS
−前駆細胞及び正常LT−HSCと比較し、LT−CML癌幹細胞において、高く発現されることを確認した(
図19)。
【0107】
Slc15A2活性が、実際に前記実施例1で確認されたジペプチドの蓄積に対する原因になるか否かということを分析するために、CML KLS
+細胞を、[3H]標識されたグリシルサルコシン([3H]GlySar)で、インビトロにおいて、インキュベーションした。前記グリシルサルコシンは、Slc15Aファミリトランスポーターの基質として作用するが、代謝されることがないジペプチド類似体である。その結果、CMLKLS
+細胞は、正常KLS
+細胞よりさらに多くの[3H]GlySarを内在化し、かような吸収は、Slc15A2特異化学的抑制剤、セファドロキシルの存在下で著しく減少した(
図20)。
【0108】
また、欠陥があるタンパク質分解が、CML癌幹細胞のジペプチド蓄積に寄与する可能性を評価した。この細胞を、ボルテゾミブ(26Sプロテアソーム抑制剤)またはバフィロマイシンA1(オートファジー阻害剤)で処理する場合、単一アミノ酸レベルは、低下する傾向を示したが、一方ジペプチド蓄積が有意に増大するということを確認した(
図21)。従って、プロテアソーム分解またはオートファジーは、CML癌幹細胞において、ジペプチド蓄積の主要原因ではないということが分かった。
【0109】
前記インビトロ結果に基づき、セファドロキシルが、インビボにおいて、CML癌幹細胞のジペプチド内在化を低減させることができるか否かということを調査した。CML発病マウスに、30日間セファドロキシルを経口で投与し、細胞内ジペプチドを測定するために、CML癌幹細胞のメタボロミック分析を行った。その結果、セファドロキシルに対する露出は、非成熟CML KLS
+細胞において、さまざまなジペプチドレベルを低下させるということを見い出し、それは、ジペプチド種の低減された吸収を意味する(
図5)。前記インビトロデータ結果及びインビボ結果の組み合わせは、Slc15A2トランスポーター活性が、CML癌幹細胞において、ジペプチド蓄積の主要推進者であるということを意味する。
【0110】
CML癌幹細胞において、ジペプチド吸収の生物学的役割を理解するために、ジペプチドトランスポーターの抑制が、CML癌幹細胞にいかなる影響を及ぼすかということを、インビトロにおいて調査した。セファドロキシル処理は、LT−CML癌幹細胞のコロニー形成能を有意に低下させたが、一方セファドロキシル処理されたHSCは、正常レベルのコロニー形成能を維持した(
図6)。Slc15A2 mRNAをターゲットにする短いヘアピンRNA(shRNA)のレンチウイルス形質転換も、CML KLS
+細胞のコロニー形成能を低下させたが、CML KLS
−細胞では、低下させなかった(
図22)。このデータは、ジペプチドSlc15A2トランスポーターを介するジペプチド吸収が、インビトロにおいて、CML癌幹細胞生存を維持させるということを示唆する。
【0111】
次に、インビトロにおいて、LT−CML癌幹細胞の自己再生能に対する阻害されたジペプチド吸収の効果を、正常HSCと比較することによって調査した。ジペプチド吸収と関連した細胞内栄養信号伝逹を媒介する経路を確認するために、まずLT−CML癌幹細胞に対する、GlySarまたはセファドロキシルのインビトロ処理が、mTORC1経路を介する信号伝逹に影響を及ぼすか否かということを調査した。5μM GlySarまたはセファドロキシルに、LT−CMLを30分間露出させた後、高敏感Duolink(登録商標)インサイチュ近接接合分析(D−PLA)を利用して、Raptor−Ser863及びS6リボソームタンパク質のリン酸化を調査した。予想通り、処理されていない対照群LT−CML癌幹細胞は、フォクソ−Raptor−Ser863及びフォクソ−S6の二つをいずれも示したが(
図3)、GlySar処理後またはセファドロキシル処理後のLT−CML癌幹細胞は、mTORC1阻害剤、ラパマイシンの処理と類似した結果である、Raptor Ser863及びS6のリン酸化の低減を示した(
図3及び
図4)。該結果は、LT−CML癌幹細胞において、競争的または化学的な阻害剤によるSlc15A2媒介されたジペプチド吸収の妨害が、mTORC1媒介された栄養信号伝達を低下させるということを示す。
【0112】
AMPKは、低エネルギー状態または栄養飢餓状態を経る細胞においてリン酸化され、それは、下流mTORC1経路の抑制をもたらす。公知されたAMPKの活性剤であるメトホルミンによるLT−CML癌幹細胞処理は、AMPK及びRaptor−Ser792のリン酸化を増大させ、フォクソ−Raptor−Ser792は、mTORC1活性を抑制する。LT−CML癌幹細胞のGlySarまたはセファドロキシルの処理が、リン酸化AMPKを増加させるが、該物質は、Raptor−Ser792のリン酸化を増大させない。従って、AMPK経路は、Slc15A2媒介されたジペプチド吸収の抑制を経るLT−CML癌幹細胞で示されるmTORC1経路の抑制に対して、不要であるということを確認した。
【0113】
実施例3:Smad3 Ser208リン酸化は、LT−CML癌幹細胞生存を支持
ジペプチドがmTORC1経路(
図3及び
図4参照)を介して、栄養信号伝達が影響を及ぼすということを見い出したが、ラパマイシン処理は、CML発病マウスの生存を延長させないということが報告された。それは、mTORC1信号伝逹が、インビボにおいて、CML幹細胞の維持に対して重要ではないということを示唆する。TGF−β−FOXO−BCL6信号伝逹経路が、CML癌幹細胞維持に本質的であるために、ジペプチド仲裁された栄養信号伝逹と、インビボにおいて、CML癌幹細胞維持を増進させることができる軸(axis)との連結関係があるか否かということを調査した。栄養信号伝逹とTGF−β−FOXO−BCL6軸との潜在的相互交差(cross-talk)、及びそれによるCML癌幹細胞能の原因になる核心分子を確認するために、TGF−β信号伝逹の下流エフェクタ、Smad2/3がCML癌幹細胞において、栄養信号伝逹の原因になるか否かということをどうかを調査した。その結果、Smad2及びSmad3のいずれも、関連C末端部位でリン酸化されるということを見い出したが、LT−CML癌幹細胞のD−PLA分析は、以前の報告と一致するように、Smad3だけがFoxo3aと相互作用するということを示した(
図8)。当該結果は、CML癌幹細胞維持の原因になるTGF−β−FOXO信号伝逹カスケードに、Smad3が含まれもよいということを示唆する。
【0114】
Smad3は、知られた幹細胞能成長因子であるために、Smad3が、CML癌細胞の幹細胞能維持を増進させるか否かということを測定することが関心対象であるので、従って、TGF−β−処理及び対照群LT−CML癌幹細胞において、Smad3のリン酸化の位置を調査した。D−PLAは、TGF−β処理されたLT−CML癌幹細胞において、Thr179、Ser204、Ser208、Ser213及びSer423/425残基において、Smad3の全体リン酸化を検出した一方、新鮮に精製されたLT−CML癌幹細胞は、Ser423/425及びSer208でのみSmad3のリン酸化を示した(
図9)。興味あることとして、Smad3 Ser423/425位置は、またST−CML癌幹細胞、並びにCD48
+、MPP(CD135
+KLS
+)及びKLS−CML細胞でリン酸化されたが、Smad3 Ser208リン酸化は、Smad3−Foxa3a相互作用であるインビボにおいて、初生LT−CML癌幹細胞で特異的であった(
図10)。該データは、Smad3のSer208位置でのリン酸化が、LT−CML癌幹細胞において、Foxo3aを活性化させることを許容するということを示唆する。前記Foxo3a全社的活性は、インビボにおいて、CML癌幹細胞維持を支持することができる。
【0115】
Ser423/425及びSer208において、Smad3リン酸化の関連性を調査するために、リン酸化されることがない2個のヒトSmad3の突然変異体を利用した:Ser422/423/425が、いずれもAlaに転換されたSmad3 3SA;及びSer208がAlaに転換されたSmad3 S208A。対照群GFP、Smad3野生型(WT)、Smad3−3SAまたはSmad3−S208Aを発現するレトロウイルスベクターでCML KLS
+細胞を感染させ、コンジェニック(congenic)レシピエントマウスにこの細胞を移植した。その後、インビボにおいて、CML癌幹細胞維持を、流細胞分析によって評価した。移植30日目、Smad3突然変異は、GFP
+(Smad3
+)CML KLS
+細胞集団の大きさに影響を及ぼさなかった(
図11の上端)。しかし、Smad3−S208Aを発現するCMLKSL+細胞に移植されたマウスの初生LT−CML癌幹細胞頻度の著しい低下を見い出した(
図11の下段及び
図12)。従って、非正規Smad3 Ser208リン酸化の阻害は、インビボにおいて、LT−CML癌幹細胞での自己再生能の維持を損傷させる。
【0116】
Smad3−Ser208リン酸化及びSmad3−Foxo3a相互作用は、いずれもLT−CML癌幹細胞でのみ検出されるために(
図10)、CML癌幹細胞において、Smad3−Ser208のリン酸化が最近報告されたFoxo3aの機能規制に含まれるか否かということを調査するために、セファドロキシルによって誘導されたLT−CML癌幹細胞コロニー形成能の抑制が、Foxo3a破壊されたLT−CML癌幹細胞で減減されるか否かということを分析した。
【0117】
Foxo3a欠乏CMLマウスモデルを確立するために、Foxo3a−/−tet誘導性CMLマウス及びFoxo3a+/+リタメイト対照群を生産した。Foxo3a−/−及びFoxo3a+/+CML発明リタメイトか、らDOX中断5週後、LT−CML癌幹細胞を単離した。Foxo3a−/−LT−CML癌幹細胞は、Foxo3a+/+LT−CML癌幹細胞と比較し、インビトロコロニー形成能で低下を示したが、Foxo3a−/−LT−CML癌幹細胞によって形成されたコロニー数は、セファドロキシル処理によっては変更されなかった。また、D−PLAは、Foxo3a+/+LT−CML癌幹細胞において、Foxo3a−/−LT−CML癌幹細胞で発生しないフォクソ−Smad3−Ser208及びFoxo3a間の相互作用を示した(
図23)。かような結果は、内在化されたジペプチドによるSmad3−Ser208リン酸化が、Foxo3a依存方式で、CML癌幹細胞を維持するということを示唆する。
【0118】
Smad3 Ser208リン酸化が、LT−CML癌幹細胞維持に重要であるために、癌幹細胞での増加したジペプチド摂取が、Smad3 Ser208の活性化が関連性があるか否かということを調査した。そのために、GlySarまたはセファドロキシルによって処理されたLT−CML癌幹細胞を、D−PLA分析に適用させた。興味あることに、GlySarまたはセファドロキシルによる処理は、Smad3 Ser208のリン酸化を遮断した(
図14)。対照的に、ラパマイシン処理は、Smad3 Ser208リン酸化を阻害せず、それは、内在化されたジペプチドが、mTORC1及びSmad3 Ser208による栄養信号伝逹経路をいずれも同時に刺激するということを示唆する。かような結果は、少なくとも、LT−CML癌幹細胞において、ジペプチド種が、p38MAPKを介する栄養信号伝逹の活性化を誘発することができ、そのSmad3 Ser208の下流リン酸化を推進することができるということを示す。
【0119】
インビボにおいて、セファドロキシル投与が、正常HSCの機能を変更しないということを確認するために、良好に確立された競争的再構成分析(competitive reconstitution assay)を利用した。放射線照射されたCD45.2レシピエントマウスに、1x10
4個のコンジェニックCD45.1マウス由来精製された正常KLS
+細胞+5x10
5個の健康なCD45.2マウス由来未分画BM単核細胞(MNCs)を共移植させた。該動物は、移植8週間、セファドロキシルまたはビヒクルを毎日投与された。重要なこととして、セファドロキシル投与の4または8週後、レシピエントの末梢血液(PB)から、ドナー由来CD45.1MNCの頻度においては、いかなる増加もなかった。付随的に、セファドロキシルが存在するにせよ存在しないにせよ、ドナー由来正常KLS
+細胞に起源するキメリズムの程度においては、比較するほどの増加があった。結局、セファドロキシルのインビボ投与は、正常HSCの再構成力において、何ら検出するほどの効果を示していない。
【0120】
実施例4:ジペプチド栄養信号伝逹は、CML癌幹細胞を根絶
LT−CML癌幹細胞に対するジペプチド誘導栄養信号伝達の特異性は、該経路が、可能な治療的ターゲットにもなるか、すなわち、ジペプチド内在化の破壊が、CML癌幹細胞の根絶及び疾患再発において、低減を誘導することができるか否かということを調査するように刺激した。まず、CML発病マウスでのように、ヒトCML患者において、SLC15A2遺伝子が上向き調節されるか否かということを調査するために、共用データベース遺伝子発現オムニバス(GEO:GSE33075)に記録されたCML患者細胞のSLC15A2のレベルに係わるデータを収集した。興味深いことに、IM療法以前、SLC15A2 mRNAレベルは、実際に9人の健康な個人BM造血細胞においてよりも、9人のCML患者のBM白血病細胞(leukaemia cell)においてさらに高かった。しかし、驚くべきことに、IM療法後、同一9人のCML患者のSLC15A2 mRNAレベルが、健康な個人のものよりも、比較に値するレベルに低下した。前記発見についてさらに深く調査するために、CML KLS
+を、1ヵ月ビヒクルまたはIMを投与されたCML発病マウスから単離されたCML KLS
+細胞のジペプチドレベルを比較した。ヒトCML患者で観察したところと一致するように、前記マウスに対するメタボロミック分析は、IM処理が、CML KLS
+細胞において、ジペプチドレベルを低下させる傾向があるというのを示した(
図24)。また、インビトロにおいて、murine LT−CML癌幹細胞に対するIM処理は、フォクソ−Smad3−Ser208のレベルを低下させた。この結果は、ジペプチド種の蓄積が、疾患再発の原因になるCML癌幹細胞集団において、TKI耐性の直接的原因ではないということを示す。しかし、それは、確認されたSLC15A2媒介栄養供給が、ヒトCML白血病誘発(leukemogenesis)において支援の役割を行うということを示唆する。
【0121】
次に、Slc15A2媒介栄養信号伝逹を抑制するセファドロキシルと共に、BCR−ABL1キナーゼの活性を遮断する、TKIの組み合わせ投与に対する潜在的治療的利点を評価した。インビトロにおいて、セファドロキシル+IMと共に、murine LT−CML癌幹細胞を培養したとき、コロニー形成は、IM単独処理と比較して減少した(
図16)。インビボにおいて、CML発病マウスのIM単独処理は、ビヒクル処理群と比較し、疾患発病を遅延させたが、予想した通り、該動物は、治療中断後、結局BCR−ABL1+疾患の再発を経た(
図17)。不思議なことに、セファドロキシル単独投与は、疾患発病を促進すると分かった。しかし、IM+セファドロキシルの組み合わせ投与は、IM単独処理群と比較し、BCR−ABL1+再発率を有意に低下させた(
図17)。
【0122】
セファドロキシル投与が、実際にインビボにおいて、CML発病マウスの初生CML癌幹細胞をなくすことができるか否かということを調査した。明らかに、CML発病マウスのBMから単離されたGFP/BCR−ABL1+CML細胞内において、CML KLS
+細胞数は、インビボにおいて、セファドロキシル露出によって有意に減少した(
図25及び
図26)。たとえIM単独も、CML KLS
+細胞の数を減少させるにしても、IM+セファドロキシルの組み合わせ投与は、該細胞集団において、はるかに大きい抑制効果を有する(
図25)。
【0123】
特に、連続移植実験において、セファドロキシル処理されたCML発病マウスから単離されたCML KLS
+細胞は、完璧に新たなレシピエントにおいて、BCR−ABL1+疾患を推進する能力を喪失し、90日を越えるほど生存するように許容した(
図26)。対照的に、ビヒクル処理されたCML発病動物由来CML KLS
+細胞を投与された全てのマウスは、BCR−ABL1+疾患が発病し、80日になる前に死亡した。それは、非処理CML KLS
+細胞が、それらのCML開始能を保有しているということを立証する。該結果は、ジペプチド吸収を抑制するセファドロキシルの経口投与が、インビボにおいて、CML癌幹細胞の維持に重要な栄養信号伝達を遮断することができ、またTKIと組み合わせたセファドロキシルは、CML癌幹細胞をなくすことにより、CML発病マウスの生存を改善することができることを示唆する。
【0124】
最後に、ヒトCML治療と本発見との関連性を調査するために、インビトロにおいて、ヒト慢性段階CML患者から得たCML−LICに対するセファドロキシル処理効果を評価した。3人のCML患者のBM MNCから、CD34
+CD38
−Lin
−CML−LICを単離し、インビトロにおいて、この細胞をセファドロキシルで処理した。予想通り、セファドロキシルは、インビトロにおいて、全ての3人のヒトCML−LIC試料のコロニー形成能を抑制した(
図27)。重要なこととして、TKI(IMまたはダサチニブ)+セファドロキシルの組み合わせで、ヒトCML−LICの併用処理が、TKI単独の抑制効果よりはるかにコロニー形成を有意に低減させた(
図28)。総合して見れば、前記結果は、内在化されたジペプチド種によって活性化されたSmad3を介する栄養信号伝逹が、CML癌幹細胞で本質的であるということを示す。従って、かような栄養供給、及びその下流信号伝逹経路がCML癌幹細胞をなくす新規治療的ターゲットの候補を提供することができる。前記データは、TKI療法との組み合わせに利用される該経路の阻害剤が、ヒトCML患者に対する具体的な臨床利益を提供することができる。