(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
検体と試薬を反応させる担体を有するカートリッジが着脱自在に装填されるカートリッジ装填部であって、前記カートリッジ装填部内における前記カートリッジの水平方向の所定範囲内の移動を許容しつつ、前記カートリッジを保持するカートリッジ装填部と、
前記カートリッジ装填部が装置本体の内部に押し込まれて収容される収容位置と、前記カートリッジ装填部に対して前記カートリッジが着脱可能な位置であって、前記カートリッジ装填部が前記装置本体の外部へ水平方向に引き出される引き出し位置との間で前記カートリッジ装填部を移動させる移動機構と、
前記収容位置において、前記カートリッジ装填部と干渉することなく前記カートリッジと直接係合して前記カートリッジを位置決めする位置決め部と、
を備える生体試料検査装置。
前記カートリッジ装填部は、前記カートリッジが載置されるキャリアと、前記キャリアに設けられ、前記キャリア上の前記カートリッジと当接して、前記キャリア上の前記カートリッジの水平方向における所定範囲を超える移動を規制する規制部とを有し、
前記規制部と前記カートリッジとの間に確保された隙間によって、前記カートリッジ装填部内における前記カートリッジの水平方向の所定範囲内の移動を許容する請求項1に記載の生体試料検査装置。
前記位置決め部は、前記カートリッジ装填部の移動方向と直交する、前記カートリッジの幅方向の両側面のそれぞれと係合する一対の係合部を備えている請求項1または2に記載の生体試料検査装置。
カートリッジ装填部が設けられる装填口を覆う閉じ位置と前記装填口を開放する開き位置との間で開閉する蓋部であって、前記開き位置から前記閉じ位置に移動する際に前記カートリッジ装填部と当接して前記カートリッジ装填部を前記引き出し位置から前記収容位置に向けて押し込む蓋を備えている請求項1から4のいずれか1項に記載の生体試料検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1および
図2において、免疫検査装置10は、例えば病院等の医療機関に設置される。免疫検査装置10は装置本体10Aを有する。免疫検査装置10は、装置本体10A内に、体液などの検体が点着された専用のカートリッジ15を受け入れ、検体に対して免疫検査を行う。カートリッジ15には、試薬と検体を反応させる担体30(
図3参照)を有するカートリッジである。検体は、例えば患者から採取した咽頭ぬぐい液、鼻腔ぬぐい液等の体液を所定の抽出液に混和した溶液である。
【0022】
装置本体10Aの前面下部には、開口16と、開口16を覆う開閉可能な蓋17と、カートリッジ15が装填されるトレイ状のカートリッジ装填部18とが設けられている。開口16は、カートリッジ装填部18にカートリッジ15を装填するための装填口として機能する。
【0023】
カートリッジ装填部18には、検体と試薬を反応させる担体を有するカートリッジ15が着脱自在に装填される。カートリッジ装填部18は、カートリッジ15が載置される載置面を有するキャリア18Aを有しており、後述するように、キャリア18A上においてカートリッジ15の水平方向の所定範囲内の移動を許容しつつ、カートリッジ15を保持する。
【0024】
また、カートリッジ装填部18は、装置本体10Aの内部に押し込まれて収容される収容位置と、
図2に示すように、カートリッジ装填部18に対してカートリッジ15が着脱可能な位置であって、カートリッジ装填部18が装置本体10Aの外部へ水平方向(
図1および
図2においてX方向)に引き出される引き出し位置との間で移動する。このスライド移動は、蓋17の開閉と連動しており、蓋17を開くと、収容位置から引き出し位置に移動し、蓋17が閉じる際には蓋17がカートリッジ装填部18と当接して、カートリッジ装填部18を装置本体10Aの内部の収容位置に押し込む。
【0025】
装置本体10Aの前面上部は傾斜面となっており、その傾斜面にタッチパネル19が取り付けられている。タッチパネル19には、医療スタッフ等のユーザからの操作指示が入力され、かつ免疫検査に関する情報が表示される。操作指示には、検査の開始指示、中止指示、検体内に被検物質が存在するとの測定結果の印刷出力指示等がある。免疫検査に関する情報には、検体を採取した患者を識別するための患者ID(Identification Data)、検査開始からの経過時間、測定結果等がある。
【0026】
カートリッジ15は、内部に担体30(
図3参照)等を収容するケース15Aを有する。ケース15Aの上面には、検体が点着される逆円錐状の点着口20が設けられている。また、ケース15Aの上面には、患者ID等が記されたラベル21が貼り付けられている。
【0027】
図3および
図4に示すように、カートリッジ15のケース15A内には、長手方向に沿って帯状の担体30が収容されている。担体30は例えばニトロセルロース膜からなり、2つのテストラインA、BとコントロールラインCで構成されるテスト領域31を有する。テストラインAには、第1被検物質と結合して呈色する第1試薬が固定されている。テストラインBには、第2被検物質と結合して呈色する第2試薬が固定されている。コントロールラインCは、測定に適切な量の検体が正常に担体30を流れたか否かを判定するラインであり、測定に適切な量の検体が正常に担体30に流れた場合は呈色する。
【0028】
例えば、第1被検物質はA型インフルエンザウイルス、第2被検物質はB型インフルエンザウイルスである。そして、第1試薬は、抗A型インフルエンザウイルス抗体、抗A型インフルエンザウイルス抗体結合金コロイド、抗A型インフルエンザウイルス抗体結合着色ラテックス等で構成される。また、第2試薬は、抗B型インフルエンザウイルス抗体、抗B型インフルエンザウイルス抗体結合金コロイド、抗B型インフルエンザウイルス抗体結合着色ラテックス等で構成される。このように、第1試薬、第2試薬はインフルエンザウイルスの抗体を含む。
【0029】
ケース15Aの下面には、これらテストラインA、B、およびコントロールラインCの呈色状態を観察するための観察窓32が形成されている。カートリッジ装填部18および保持部45にも、このケース15Aの観察窓32に対応する位置に、開口33および開口34がそれぞれ形成されている。
【0030】
ケース15A内には、担体30の他に、送液パッド35、吸液パッド36、還元液ポット37および増感液ポット38が収容されている。これらは、増感処理を行うための構成である。増感処理は、第1試薬や第2試薬の呈色の濃度が低い場合に、還元液および増感液をテストラインに流して呈色の濃度を高める処理であり、増感処理を行わずに測定した結果に基づいて必要に応じて行われる。還元液ポット37および増感液ポット38は、こうした還元液および増感液を貯留する貯留部である。
【0031】
装置本体10A内には、還元液ポット37および増感液ポット38を押しつぶす押圧部を有する薬液展開部(図示せず)が設けられている。押圧機構によって還元液ポット37が押しつぶされると、還元液は、送液パッド35を通じてテスト領域31に送液され、吸液パッド36で吸収される。増感液ポット38が押しつぶされると、増感液はテスト領域31に送液される。
【0032】
図2において、装置本体10A内には、保持部45と、測定部43が設けられている。保持部45は、カートリッジ装填部18を、引き出し位置と収容位置との間で移動自在に保持する。
【0033】
測定部43は、カートリッジ15が収容位置にある場合に、ケース15Aの観察窓32およびカートリッジ装填部18の開口33と対向する位置に配置されている。測定部43は、観察窓32および開口33を通じて、テストラインA、B、およびコントロールラインCで構成されるテスト領域31に光を照射する一対の光源50と、テスト領域31を撮像する撮像素子51とで構成される。
【0034】
光源50は、例えばLED(Light Emitting Diode)が内蔵されたモジュールであり、白色光を発する。なお、光源50は、増感処理の前後の色度の区別が付くのであれば、単色光を発するものであってもよい。また、光源50は、異なる波長の単色光を発する複数のモジュールで構成することもできる。撮像素子51は、例えば複数のフォトダイオードがライン状に配列されたラインセンサ、あるいはマトリックス状に配列されたエリアセンサであり、フォトダイオードの受光光量に応じた撮像信号を出力する。
【0035】
また、図示しない薬液展開部は、還元液ポット37および増感液ポット38を押圧する押圧部と、この押圧部を駆動するモータ等で構成される。
【0036】
図5から
図7において、装置本体10A内に設けられる、カートリッジ15の装填機構を示す。装填機構は、カートリッジ装填部18を保持する保持機構、移動機構、およびカートリッジ15の位置決め機構を含んでいる。装填機構は、台座部55、保持部45、カートリッジ装填部18、ガイド軸46、コイルバネ47、一対のサイドカバー48、49を備えている。以下において説明の便宜上、装置本体10Aの方向を表す場合において、X方向を前後方向と呼び、X方向において、蓋17が設けられている方を前方、反対側を後方という。また、X方向と直交するY方向を幅方向という。
【0037】
台座部55は、開口16の奥に配置されており、装置本体10Aに設けられている。台座部55には保持部45が取り付けられている。そして、保持部45は、カートリッジ装填部18を、
図5に示す収容位置と
図6に示す引き出し位置との間で移動自在に保持する。
【0038】
図7に示すように、保持部45には、開口34の両脇に、一対のガイドレール45Aが形成されている。ガイドレール45Aは、保持部45の下面に形成された凸部(図示せず)と係合して保持部45の移動方向をガイドする。また、保持部45には、ガイド軸46を移動自在に保持する軸受け部45Bが設けられている。ガイド軸46は、例えば、断面が円形の円筒形状である。軸受け部45Bには、ガイド軸46の外径とほぼ同径の内径を持つ挿通孔45Cが形成されている。
【0039】
ガイド軸46は、挿通孔45Cに挿通された状態で、一端がカートリッジ装填部18に固定される。ガイド軸46の他端には、フランジ形状の抜け止め46Aが設けられている。抜け止め46Aは、軸受け部45Bと係合して、ガイド軸46が軸受け部45Bから離脱することを防止する。
【0040】
また、ガイド軸46の外周には、コイルバネ47が取り付けられる。コイルバネ47は、一端がカートリッジ装填部18と当接し、他端が軸受け部45Bと当接する。コイルバネ47は、保持部45に対して、カートリッジ装填部18を引き出し位置に向けて付勢する付勢力を発生する付勢部である。コイルバネ47によってカートリッジ装填部18は、引き出し位置に向けて付勢されるが、ガイド軸46の抜け止め部46Aが、カートリッジ装填部18が保持部45から離脱することを防止する。
【0041】
また、保持部45には、取り付けられたカートリッジ装填部18の移動方向(X方向)と平行な長手方向と直交する幅方向(Y方向)の両側に、サイドカバー48、49を取り付けるための取り付け部45D、45Eが設けられている。
【0042】
図8および
図9に示すように、カートリッジ装填部18は、カートリッジ15が載置されるキャリア18Aと、キャリア18Aの外周に設けられた枠体18Bと、キャリア18A上のカートリッジ15の外側面と当接して、キャリア18A上のカートリッジ15の水平方向における所定範囲を超える移動を規制する規制部18Cとを有している。キャリア18Aは、カートリッジ15の平面サイズよりも一回り大きな平面サイズを有し、カートリッジ15が載置される、X−Y平面と平行な載置面を有している。キャリア18Aの載置面の中央には、開口33が形成されている。
【0043】
枠体18Bは、キャリア18Aの外周に形成され、キャリア18AからZ方向に立ち上がる壁を形成し、キャリア18A上のカートリッジ15の外側面を囲う。この枠体18Bにより、カートリッジ15がキャリア18Aから離脱することが防止される。また、枠体18Bを設けることによって、カートリッジ15の装填位置をユーザに示すことができる。
【0044】
規制部18Cは、カートリッジ15の外側面、すなわち、カートリッジ15の前端および後端に位置する、幅方向(Y方向)と平行な各側面15B、および、カートリッジ15の幅方向(Y方向)の両側に位置する、長手方向(X方向)に沿った各側面15Cのそれぞれと対向する位置にそれぞれ2個ずつ合計8個設けられている。規制部18Cは、カートリッジ装填部18内におけるカートリッジ15の外側面と当接して、水平方向(X−Y平面)の所定範囲を超える移動を規制する。一方、
図8に示すように、規制部18Cとカートリッジ15の各側面15B、15Cの間には、隙間Gが確保されている。カートリッジ装填部18は、このように確保された隙間Gによって、カートリッジ装填部18内におけるカートリッジ15の水平方向の所定範囲内の移動を許容する。
【0045】
また、カートリッジ装填部18には、キャリア18Aの後端にガイド軸46の一端が固定されるスリーブ18Dが設けられている。スリーブ18Dには、コイルバネ47の一端が取り付けられ、コイルバネ47の一端は、キャリア18Aの後端と当接する。
【0046】
また、カートリッジ装填部18には、サイドカバー48が配置される左側に、ラックギヤ18Eが設けられている。ラックギヤ18Eは、ピニオンギヤ53と係合する。ピニオンギヤ53は、サイドカバー48に回転自在に取り付けられている。ピニオンギヤ53には、ピニオンギヤ53の回転に対して抵抗となるような負荷を発生させる負荷機構54が取り付けられている。
【0047】
カートリッジ装填部18が移動するとラックギヤ18Eとピニオンギヤ53が係合して、ピニオンギヤ53が回転する。負荷機構54はピニオンギヤ53の回転に対して抵抗力となる負荷を発生させる。このため、コイルバネ47がカートリッジ装填部18に対して与える付勢力が減衰される。すなわち、ラックギヤ18E、ピニオンギヤ53および負荷機構54は、コイルバネ47の付勢力を減衰するダンパとして機能する。こうしたダンパの作用によって、カートリッジ装填部18がコイルバネ47の付勢力によって勢いよく移動することが防止され、また、コイルバネ47の振動が抑制されるため、カートリッジ装填部18の安定した移動が可能となる。
【0048】
また、
図6に示すように、カートリッジ装填部18の前端には、蓋17の内面に設けられたローラ部17Bと当接して、ローラ部17Bからの押圧を受ける被押圧部18Fが設けられている。蓋17は、下端側にヒンジ17Aが設けられており、ヒンジ17Aを介して装置本体10Aに回動自在に設けられている。
【0049】
蓋17を、
図6に示す開き位置から
図5に示す閉じ位置に向けて回動させると、ローラ部17Bが被押圧部18Fを押圧して、カートリッジ装填部18が収容位置に向けて押し込まれる。カートリッジ装填部18は、コイルバネ47によって引き出し位置に向けて付勢されているため、蓋17を閉じ位置に回動させる際には、コイルバネ47の付勢に抗しながら閉じ位置に向けて回動される。
【0050】
装置本体10Aには、閉じ位置にある蓋17と係合する、図示しないラッチ機構が設けられている。ラッチ機構は、蓋17が閉じ位置まで回動すると、蓋17と係合して開き位置への回動を規制して、蓋17を閉じ位置に保持する。カートリッジ装填部18はコイルバネ47によって引き出し位置に向けて付勢されている。そのため、蓋17が閉じ位置にある間も、蓋17は、カートリッジ装填部18の被押圧部18Fからローラ部17Bが押圧を受ける。しかし、ラッチ機構の作用によって、コイルバネ47の付勢力によって蓋17が開いてしまうことはない。また、蓋17が閉じ位置に保持されている間は、カートリッジ装填部18も収容位置に保持される。
【0051】
一方、例えば、閉じ位置にある蓋17を少し押し込むとラッチ機構が解除される。ラッチ機構が解除されると、蓋17は、コイルバネ47の付勢力によってカートリッジ装填部18からの押圧を受けながら、開き位置に回動する。蓋17が開き位置に回動する際には、上述したダンパが機能して、蓋17がゆっくりと開く。
【0052】
図7に示すように、サイドカバー48、49は、保持部45の取り付け部45D、45Eにそれぞれ取り付けられ、
図5、
図10および
図11に示すように、収容位置にあるカートリッジ装填部18の幅方向(Y方向)の両脇に配置される。
図7に示すように、サイドカバー48、49のそれぞれには、収容位置にあるカートリッジ15の上方において、カートリッジ15の幅方向の両側から中央に向かって突き出して、カートリッジ15の上面の一部を覆うカバー部48A、49Aが設けられている。
【0053】
また、サイドカバー48、49には、X方向に沿って後方に延びる位置決め部48B、49Bが設けられている。位置決め部48B、49Bは、カートリッジ15の幅方向(Y方向)の各側面15Cとそれぞれが係合して、カートリッジ15のX方向およびY方向を含む水平方向の位置決めを行う。位置決め部48B、49Bの後端には、係合部48C、49Cが設けられている。
図10および
図11に示すように、各係合部48C、49Cは、カートリッジ15の各側面15Cに向けて突出する凸形であり、X−Y平面における断面形状が略半円形をしている。
【0054】
カートリッジ15の幅方向(Y方向)の各側面15Cには、各係合部48C、49Cのそれぞれと係合する被係合部15Dが設けられている。
図10および
図11に加えて、
図12にも示すとおり、被係合部15Dは、各側面15Cにおいて、幅方向の中央に向かって凹んだ凹形であり、この凹形の被係合部15Dに凸形の各係合部48C、49Cがはまる。各係合部48C、49Cは、カートリッジ装填部18の移動方向(X方向)と直交する、カートリッジ15の幅方向(Y方向)の両側面15Cのそれぞれと係合する一対の係合部に相当する。
【0055】
位置決め部48B、49Bは、
図5に示すように、Z方向の位置が、カートリッジ装填部18の上端よりも高い位置に配置されているので、X方向に移動するカートリッジ装填部18と一切当接することがない。そのため、各係合部48C、49Cは、カートリッジ装填部18と干渉することなく、カートリッジ15の各側面15Cの被係合部15Dと直接係合して、カートリッジ15の水平方向(X−Y平面内)の位置決めを行う。
【0056】
以下、上記構成による作用について、
図13から
図15も参照しながら説明する。まず、免疫検査装置10を使用して免疫検査を行う医療スタッフ等のユーザは、被検者の検体を、カートリッジ15の点着口20を通じて、担体30に点着する。ユーザは、点着が完了したカートリッジ15を、免疫検査装置10に装填する。
【0057】
カートリッジ15の装填に際して、ユーザは、まず、
図2および
図6に示すように、免疫検査装置10の蓋17を開ける。カートリッジ装填部18は、コイルバネ47によって引き出し位置に付勢されている。蓋17が閉じ位置にある状態では、コイルバネ47によって引き出し位置に向けて付勢されるカートリッジ装填部18は収容位置に保持されている。蓋17が開くと、蓋17の開き位置への開放に連動して、コイルバネ47によって付勢されるカートリッジ装填部18は、引き出し位置に向けて移動する。
【0058】
また、このカートリッジ装填部18に対するコイルバネ47の付勢力は、ラックギヤ18E、ピニオンギヤ53および負荷機構54で構成されるダンパによって減衰される。そのため、カートリッジ装填部18が勢いよく引き出し位置に向けて飛び出してしまうことはない。
【0059】
図2および
図6に示すように、蓋17が開き、カートリッジ装填部18が引き出し位置にある状態で、ユーザはカートリッジ15をカートリッジ装填部18のキャリア18A上に載置する。カートリッジ15は、各側面15B、15Cが規制部18Cと当接することにより、カートリッジ装填部18内での水平方向の所定範囲を超える移動が規制される。さらに、カートリッジ15は、枠体18Bによって周囲が囲われるため、カートリッジ装填部18からの離脱が防止される。
【0060】
また、
図9に示したように、カートリッジ装填部18において、規制部18Cと、カートリッジ15の外側面15B、15Cのそれぞれとの間には隙間Gが確保されている。そのため、カートリッジ15は、カートリッジ装填部18内において所定範囲内の水平方向の移動が許容される。また、隙間Gが有ることで、隙間Gが無い場合と比較して、カートリッジ15をキャリア18Aに載置する際の負荷が少ない。隙間Gが無いと、規制部18Cとカートリッジ15の側面との摩擦力によって抵抗が生じるが、隙間Gが有るとそのような抵抗が生じないためである。
【0061】
カートリッジ15がカートリッジ装填部18に装填された後、蓋17が閉じられる。
図5および
図6に示すように、蓋17が閉じ位置に向けて回動すると、蓋17のローラ部17Bが、カートリッジ装填部18の被押圧部18Fを押圧する。この押圧により、引き出し位置にあるカートリッジ装填部18が収容位置に向けて押し込まれる。
【0062】
図13に示すように、カートリッジ装填部18は、ガイド軸46と軸受け部45Bの係合によってガイドされながらX方向に沿って収容位置に向けて押し込まれる。この押し込みの際に、コイルバネ47が圧縮する。また、カートリッジ15は、サイドカバー48、49によって幅方向の両側がカバーされるため、カートリッジ15がカートリッジ装填部18の幅方向に離脱することが確実に防止される。カートリッジ装填部18は、収容位置に向けて押し込まれると、位置決め部48B、49Bの各係合部48C、49Cにカートリッジ15が近づく。
【0063】
図14に示すように、蓋17が閉じ位置に向けてさらに回動すると、カートリッジ装填部18がさらに押し込まれて、位置決め部48B、49Bの各係合部48C、49Cがカートリッジ15の後端と当接する。位置決め部48B、49Bは外側に広がるように弾性変形して、各係合部48C、49Cがカートリッジ15の各側面15Cに乗り上げる。
【0064】
図15に示すように、さらに、蓋17が閉じ位置に達して、カートリッジ装填部18が収容位置まで押し込まれると、蓋17は図示しないラッチ機構によって、コイルバネ47の付勢に抗して閉じ位置に保持される。蓋17が閉じ位置に保持されることで、カートリッジ装填部18も収容位置に保持される。
【0065】
この収容位置において、各係合部48C、49Cはカートリッジ15の各被係合部15Dと係合する。カートリッジ装填部18において、カートリッジ15と規制部18Cとの間に隙間Gが確保されている。隙間Gにより、カートリッジ装填部18内において、カートリッジ15の水平方向の所定範囲内の移動が許容される。そして、位置決め部48B、49Bとカートリッジ装填部18は干渉することなく、位置決め部48B、49Bはカートリッジ15と直接係合する。
【0066】
カートリッジ装填部18は蓋17によって収容位置に保持されている。そのため、カートリッジ15と、位置決め部48B、49Bの各係合部48C、49Cとの係合により、カートリッジ15は、カートリッジ装填部18内において所定範囲内で移動して、カートリッジ15の水平方向の位置が位置決めされる。
【0067】
このように、免疫検査装置10において、カートリッジ装填部18は、カートリッジ15の水平方向の所定範囲内の移動を許容しつつ、カートリッジ15を保持する。そして、カートリッジ装填部18の収容位置において、位置決め部48B、49Bは、カートリッジ装填部18と干渉することなくカートリッジ15と直接係合してカートリッジ15を位置決めする。これにより、カートリッジ15を装填する際に、カートリッジ15に対して与える振動が少なく、かつ、カートリッジの位置決め精度を向上することが可能となる。
【0068】
すなわち、本例において、カートリッジ15の位置決めは、位置決め部48B、49Bがカートリッジ15と直接係合することにより行うため、従来のようにカートリッジ装填部18を突き当てに押し付ける必要はない。そのため、カートリッジ装填部18に加わる衝撃が少なく、カートリッジ15に加わる振動も少ない。また、カートリッジ装填部18の収容位置への移動に際してカートリッジ装填部18に振動が加わっても、カートリッジ装填部18内においてカートリッジ15は所定範囲内の移動が許容されているので、カートリッジ15に伝わる振動も抑制される。
【0069】
また、カートリッジ装填部18内においてカートリッジ15は所定範囲内の移動が許容されているので、位置決め部48B、49Bがカートリッジ15に当接する際の衝撃も緩和される。これにより、カートリッジ15に加わる振動も抑制される。
【0070】
このように、カートリッジ15に加わる振動が抑制されるため、検体が体液のような液体である場合でも、担体の内部で検体が移動してしまうことが抑制され、測定結果に影響するおそれも低減される。このように、本発明は、検体が液体である場合に特に有効である。
【0071】
また、従来の免疫検査装置の中には、カートリッジ装填部18を使用することなく、カートリッジ15を直接装填口に装填する装置も存在する。このような装置においては、カートリッジの装填口の奥に配置されるスロットをカートリッジの寸法に合わせて形成することで、カートリッジの幅方向の位置決めがされる。この場合、カートリッジの位置決めを高精度にするためには、スロットの幅を狭くせざるをえず、そうするとカートリッジを押し込む際の抵抗が大きく、カートリッジ装填時の負荷が大きい。カートリッジ装填時の負荷が大きいと、カートリッジを挿入しにくいばかりか、カートリッジに対して過度に力が加わるため、カートリッジに対して大きな振動が加わりやすかった。
【0072】
本例の免疫検査装置10は、こうした従来技術と異なり、幅方向の位置決めのために、カートリッジ15を装填するスロットをカートリッジ15のサイズに合わせて狭く形成する必要がない。そのため、カートリッジ15を装填する際の負荷も少ないので、カートリッジ15に加わる振動を抑制することができる。
【0073】
また、本例のように位置決め部48B、49Bを用いることで、カートリッジ15は適切に精度よく位置決めがなされる。位置決め部48B、49Bがカートリッジ15と係合するため、単にカートリッジ装填部18やカートリッジ15を突き当てに押し付けるという方法と比べて、装置本体10Aに衝撃が加わってもカートリッジ15が移動して位置ずれが生じるおそれが少ない。
【0074】
カートリッジ15は、担体30における検体の反応状態が測定部43によって光学的に測定されるため、位置決めが精度良く行われ、かつ、位置ずれが生じるおそれが低減することにより、測定精度が向上する。以上より、本発明によれば、カートリッジ15を装填する際に、カートリッジ15に対して与える振動が少なく、かつ、カートリッジ15の位置決め精度を向上することができる。
【0075】
また、本例のように、カートリッジ15の突き当てへの押し付けが不要であったり、カートリッジ15の装填時の負荷が少ないと、複数台の免疫検査装置10が間隔を空けずに並べて配置される場合でも、カートリッジ15の装填をスムーズに行うことができるという付随的効果も期待できる。この付随的効果は、次のとおりである。
【0076】
すなわち、カートリッジ15の突き当てへの押し付けが必要だったり、カートリッジ15の装填時の負荷が大きいと、カートリッジ15の幅方向の両側を手でしっかりと掴んで、カートリッジ15を装置本体10Aの奥に押し込む操作が必要になる。カートリッジ15をしっかりと掴もうとすると、軽く摘む場合と比べて、掴む手は、装置本体10Aの幅方向に広がってしまう。装置本体10Aの幅が狭いと、カートリッジ15を掴む手が装置本体10Aの幅からはみ出てしまい、隣接して配置されている別の装置に手が当たってカートリッジ15をうまく押し込めない場合があった。
【0077】
医療現場においては、複数の検査を同時並行で処理できるようにするために、複数台の免疫検査装置10を横に並べて配置して使用する場合も多い。しかも、免疫検査装置10の設置スペースとして狭いスペースしか確保できない場合も多く、その場合には、複数台の免疫検査装置10は間隔を空けずに並べて配置されることも多い。このような場合に、カートリッジ15を掴む手が隣接する他の装置と干渉するおそれが高く、カートリッジ15をスムーズに装填することができなかった。
【0078】
これに対して、本例の免疫検査装置10は、カートリッジ15およびカートリッジ装填部18をコイルバネ47の付勢に抗して収容位置に押し込むだけで、装填が可能となる。カートリッジ15の位置決めは、位置決め部48B、49Bによって行われるため、カートリッジ15の押し込みに際しては、カートリッジ15を手でしっかりと掴んで力を掛けて押し込むという操作は不要であり、コイルバネ47の付勢に対抗できる程度の力を加えるだけで済む。そのため、複数台の免疫検査装置10が間隔を空けずに並べて配置される場合でも、カートリッジ15の装填をスムーズに行うことができるという付随的効果が期待できる。
【0079】
また、このようにカートリッジ15の装填時の負荷が小さいため、本例のように、カートリッジ装填部18の収容位置への押し込みを、蓋17の開閉に連動させることも可能となる。
【0080】
また、位置決め部48B、49Bの各係合部48C、49Cは、カートリッジ15の幅方向の各側面15Cと係合する一対の係合部であるため、例えば、カートリッジ15の後端面を押し付ける突き当てと比較して、衝撃が少ない。
【0081】
しかも、一対の係合部48C、49Cは、カートリッジ15の移動方向(X方向)に沿った両側面15Bのそれぞれに形成された被係合部15Dと係合して、移動方向(X方向)の位置決めを行う。加えて、一対の係合部48C、49Cは、カートリッジ15の両側面15Bを両側から挟み込むことで、カートリッジ15の幅方向(Y方向)の位置決めを行う。このように、一対の係合部48C、49Cは、カートリッジ15の移動方向(X方向)と、移動方向(X方向)と直交する幅方向(Y方向)との両方の位置決めを行うことができるため、カートリッジ15の幅方向と移動方向を別々の部材で位置決めする場合と比較して、構成を簡略化できる。
【0082】
また、蓋17の開閉とカートリッジ装填部18の引き出し位置と収容位置の移動とが連動しているので、操作性がよい。
【0083】
また、ラックギヤ18E、ピニオンギヤ53および負荷機構54で構成されるダンパを備えているため、カートリッジ装填部18を引き出し位置に付勢するコイルバネ47の付勢力が減衰される。そのため、蓋17を開けた際に、カートリッジ装填部18が勢いよく飛び出してしまうことはない。
【0084】
本例では、蓋17の開閉とカートリッジ装填部18の移動とを連動させているが、必ずしも連動させなくてもよい。蓋17と連動させない場合には、コイルバネ47の付勢に抗してカートリッジ装填部18を収容位置に保持するためのラッチ機構を、蓋17に設ける代わりに、保持部45などに設ける必要がある。
【0085】
また、上記例のダンパの構成は一例であり、他の構成でもよい。例えば、上記例では保持部45にダンパを構成する部品を設けているが、保持部45にダンパを構成する部品を設ける代わりに、蓋17にダンパを設けてもよい。
【0086】
また、上記例においては、カートリッジ15の水平方向と直交する高さ方向(Z方向)の位置決めについては、カートリッジ15が載置される、カートリッジ装填部18のキャリア18Aの載置面の高さによって規定されている。カートリッジ装填部18において、カートリッジ15は、その下面がキャリア18A上に載置されている状態で支持されているのみで、下方からカートリッジ15を押し上げる部材があれば、カートリッジ15を上方に移動させることが可能である。つまり、カートリッジ装填部18は、カートリッジ15を、高さ方向(Z方向)においての移動も許容する状態で保持している。
【0087】
そのため、カートリッジ15の高さ方向の位置決めに関しては、キャリア18Aで行う代わりに、カートリッジ装填部18とは別の部材でカートリッジ15をキャリア18A上から持ち上げることで行ってもよい。この場合の高さ方向の位置決め用の別の部材としては、例えば、保持部45が使用される。
【0088】
保持部45には、例えば、カートリッジ装填部18が収容位置にある際に、カートリッジ装填部18のキャリア18Aの開口33内に進入して、高さ位置決め部が設けられる。高さ位置決め部は、カートリッジ15の下面を支持することによりカートリッジ15の高さを位置決めする。カートリッジ装填部18が引き出し位置から収容位置に移動する際に、保持部45の高さ位置決め部がキャリア18Aの開口33内に進入して、キャリア18A上に載置されるカートリッジ15が、保持部45の高さ位置決め部に乗り上げて、カートリッジ15の高さ方向の位置決めが行われる。
【0089】
このようにカートリッジ装填部18とは別の部材によってカートリッジ15の高さを位置決めすることにより、カートリッジ15を装填する際の高さ方向の位置決めにおいても、カートリッジ装填部18からカートリッジ15に伝わる振動をより軽減できるという効果がえられる。
【0090】
本発明は、上述の種々の実施形態や種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記各実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。例えば、被検物質はインフルエンザウイルスに限らない。アデノウイルス、ロタウイルス、肝炎ウイルス、肺炎球菌等でもよい。また、免疫検査も定性反応検査に限らない。さらに、免疫検査装置を例に説明したが、免疫検査装置以外の生体試料検査装置でもよい。