【実施例】
【0130】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0131】
本実施例においては、リチウム金属複合酸化物(正極活物質)の評価、正極およびリチウム二次電池の作製評価を、次のようにして行った。
【0132】
(1)リチウム二次電池用正極活物質の評価
1.リチウム二次電池用正極活物質の組成分析
後述の方法で製造されるリチウム金属複合酸化物の組成分析は、得られたリチウム金属複合酸化物の粉末を塩酸に溶解させた後、誘導結合プラズマ発光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SPS3000)を用いて行った。
【0133】
2.リチウム二次電池用正極活物質の一次粒子径の測定
測定するリチウム金属複合酸化物の粒子を、サンプルステージの上に貼った導電性シート上に載せ、日本電子株式会社製JSM−5510を用いて、加速電圧が20kVの電子線を照射してSEM観察を行った。SEM観察により得られた画像(SEM写真)から任意に50個の一次粒子を抽出し、それぞれの1次粒子について、一次粒子の投影像を一定方向から引いた平行線ではさんだ平行線間の距離(定方向径)を一次粒子の粒子径として測定した。得られた粒子径の算術平均値を、リチウム金属複合酸化物の平均一次粒子径とした。
【0134】
3.リチウム二次電池用正極活物質の二次粒子径の測定
測定するリチウム金属複合酸化物の粉末0.1gを、0.2質量%ヘキサメタりん酸ナトリウム水溶液50mlに投入し、該粉末を分散させた分散液を得た。得られた分散液についてマルバーン社製マスターサイザー2000(レーザー回折散乱粒度分布測定装置)を用いて、粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得た。得られた累積粒度分布曲線において、50%累積時の微小粒子側から見た粒子径(D
50)の値を、リチウム金属複合酸化物の平均二次粒子径とした。
【0135】
4.リチウム二次電池用正極活物質の結晶子サイズ測定
リチウム金属複合酸化物の粉末X線回折測定は、X線回折装置(X‘Prt PRO、PANalytical社)を用いて行った。得られたリチウム金属複合酸化物を専用の基板に充填し、Cu−Kα線源を用いて、回折角2θ=10°〜90°の範囲にて測定を行うことで、粉末X線回折図形を得た。粉末X線回折パターン総合解析ソフトウェアJADE5を用い、該粉末X線回折図形からピークAに対応するピークの半価幅およびピークBに対応するピークの半値幅を得て、Scherrer式により、結晶子径を算出した。
ピークA : 2θ=18.7±1°
ピークB : 2θ=44.6±1°
【0136】
5.リチウム二次電池用正極活物質の水銀圧入法による細孔分布測定
前処理としてリチウム金属複合酸化物を120℃、4時間、恒温乾燥した。オートポアIII9420(Micromeritics 社製)を用いて、下記の測定条件にて細孔分布測定を実施した。なお水銀の表面張力は480dynes/cm、水銀と試料の接触角は140°とした。
【0137】
測定条件
測定温度 : 25℃
測定圧力 : 1.07psia〜59256.3psia
【0138】
6.リチウム二次電池用正極活物質のBET比表面積測定
測定するリチウム金属複合酸化物の粉末1gを窒素雰囲気中、150℃で15分間乾燥させた後、マイクロメリティックス製フローソーブII2300を用いて測定した。
【0139】
(2)正極活物質の加圧試験、及び加圧前後の二次粒子径の変化
測定するリチウム金属複合酸化物の粉末0.5gを、φ13mmの金型に充填し、一軸プレス機を用い50MPaでプレスした。その後金型から粉末を取り出し、上記3と同様の手法にて、プレス(加圧)後のリチウム二次電池用正極活物質の二次粒子径を測定した。
本実施例において、加圧前後の二次粒子径の変化(ΔD
50)が1.0μm以上であると、正極活物質が潰れてしまっていることを示す。
【0140】
(実施例1)
1.正極活物質A1の製造
攪拌機およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加した。
【0141】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が0.315:0.330:0.355となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0142】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加し、反応槽内の溶液の温度を50℃に保持しながら、pHが12.1になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得た。得られた粒子を、濾過後水洗し、100℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、38.6m
2/gであった。
【0143】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.085となるように秤量して混合した後、大気雰囲気下950℃で10時間焼成して、目的の正極活物質A1すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A1を得た。
【0144】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A1の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mnのモル比は、1.09:0.315:0.330:0.355であった。この時、xは、0.04であった。
【0145】
正極活物質A1の二次粒子径は、2.1μmであった。
【0146】
正極活物質A1のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ778Å、510Åであった。
【0147】
正極活物質A1の細孔分布測定結果から、92nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.039cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.4m
2/gであった。
【0148】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、1.7μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.4μmであった。
【0149】
(実施例2)
1.正極活物質A2の製造
反応槽内の溶液のpHを11.7に設定したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、32.5m
2/gであった。実施例1と同様にしてリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A2を得た。
【0150】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A2の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mnのモル比は、1.13:0.315:0.330:0.355であった。この時、xは、0.06であった。
【0151】
正極活物質A2の二次粒子径は、4.3μmであった。
【0152】
正極活物質A2のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ830Å、508Åであった。
【0153】
正極活物質A2の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.037cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.4m
2/gであった。
【0154】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、4.0μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.3μmであった。
【0155】
(実施例3)
1.正極活物質A3の製造
反応槽内の溶液のpHを11.3に設定したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、29.7m
2/gであった。実施例1と同様にしてリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A3を得た。
【0156】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A3の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mnのモル比は、1.12:0.315:0.330:0.355であった。この時、xは、0.06であった。
【0157】
正極活物質A3の二次粒子径は、5.2μmであった。
【0158】
正極活物質A3のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ746Å、434Åであった。
【0159】
正極活物質A3の細孔分布測定結果から、134nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.033cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.1m
2/gであった。
【0160】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、4.6μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.6μmであった。
【0161】
(実施例4)
1.正極活物質A4の製造
反応槽内の溶液の温度を40℃に、pHを11.3に設定したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、22.1m
2/gであった。実施例1と同様にしてリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A4を得た。
【0162】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A4の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mnのモル比は、1.10:0.315:0.330:0.355であった。この時、xは、0.05であった。
【0163】
正極活物質A4の二次粒子径は、8.2μmであった。
【0164】
正極活物質A4のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ879Å、546Åであった。
【0165】
正極活物質A4の細孔分布測定結果から、121nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.031cm
3/gであった。また、BET比表面積は、1.9m
2/gであった。
【0166】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、7.6μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.6μmであった。
【0167】
(実施例5)
1.正極活物質A5の製造
反応槽内の溶液の温度を40℃に、pHを11.1に設定したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、18.6m
2/gであった。実施例1と同様にしてリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A5を得た。
【0168】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A5の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mnのモル比は、1.10:0.315:0.330:0.355であった。この時、xは、0.05であった。
【0169】
正極活物質A5の二次粒子径は、9.8μmであった。
【0170】
正極活物質A5のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ820Å、511Åであった。
【0171】
正極活物質A5の細孔分布測定結果から、112nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.030cm
3/gであった。また、BET比表面積は、1.6m
2/gであった。
【0172】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、9.2μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.6μmであった。
【0173】
(比較例1)
1.正極活物質B1の製造
反応槽内の溶液の温度を30℃に、pHを12.7に設定したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、46.6m
2/gであった。実施例1と同様にしてリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物B1を得た。
【0174】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質B1の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mnのモル比は、1.09:0.315:0.330:0.355であった。この時、xは、0.04であった。
【0175】
正極活物質B1の二次粒子径の測定は、1.5μmであった。
【0176】
正極活物質B1のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ895Å、504Åであった。
【0177】
正極活物質B1の細孔分布測定結果から、53nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.042cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.9m
2/gであった。
【0178】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、0.4μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は1.1μmであった。
【0179】
(比較例2)
1.正極活物質B2の製造
反応槽内の溶液の温度を30℃に、pHを12.0に設定したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、19.2m
2/gであった。実施例1と同様にしてリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物B2を得た。
【0180】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質B2の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mnのモル比は、1.10:0.315:0.330:0.355であった。この時、xは、0.05であった。
【0181】
正極活物質B2の二次粒子径は、11.5μmであった。
【0182】
正極活物質B2のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ976Å、623Åであった。
【0183】
正極活物質B2の細孔分布測定結果から、76nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.013cm
3/gであった。また、BET比表面積は、1.3m
2/gであった。
【0184】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、10.2μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は1.3μmであった。
【0185】
(比較例3)
1.正極活物質B3の製造
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が0.334:0.333:0.333となるように混合して混合原料液を調整し、反応槽内の溶液の温度を30℃に、pHを12.4に設定したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、21.3m
2/gであった。実施例1と同様にしてリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物B3を得た。
【0186】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質B3の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mnのモル比は、1.11:0.334:0.333:0.333であった。この時、xは、0.05であった。
【0187】
正極活物質B3の二次粒子径は、3.0μmであった。
【0188】
正極活物質B3のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ1006Å、605Åであった。
【0189】
正極活物質B3の細孔分布測定結果から、86nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.020cm
3/gであった。また、BET比表面積は、1.6m
2/gであった。
【0190】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.0μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は1.0μmであった。
【0191】
(比較例4)
1.正極活物質B4の製造
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が0.334:0.333:0.333となるように混合して混合原料液を調整し、反応槽内の溶液の温度を30℃に、pHを11.1に設定したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、11.6m
2/gであった。実施例1と同様にしてリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物B4を得た。
【0192】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質B4の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mnのモル比は、1.10:0.334:0.333:0.333であった。この時、xは、0.05であった。
【0193】
正極活物質B4の二次粒子径は、8.9μmであった。
【0194】
正極活物質B4のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ1187Å、721Åであった。
【0195】
正極活物質B4の細孔分布測定結果から、極大の細孔ピークを有さなかった。また、BET比表面積は、0.6m
2/gであった。
【0196】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、7.8μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は1.1μmであった。
【0197】
(比較例5)
1.正極活物質B5の製造
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が0.334:0.333:0.333となるように混合して混合原料液を調整し、反応槽内の溶液の温度を40℃に、pHを11.0に設定したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、10.2m
2/gであった。実施例1と同様にしてリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物B5を得た。
【0198】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質B5の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mnのモル比は、1.10:0.334:0.333:0.333であった。この時、xは、0.05であった。
【0199】
正極活物質B5の二次粒子径は、11.8μmであった。
【0200】
正極活物質B5のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ1201Å、743Åであった。
【0201】
正極活物質B5の細孔分布測定結果から、極大の細孔ピークを有さなかった。また、BET比表面積は、0.6m
2/gであった。
【0202】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、10.5μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は1.3μmであった。
【0203】
(比較例6)
1.正極活物質B6の製造
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が0.334:0.333:0.333となるように混合して混合原料液を調整し、反応槽内の溶液のpHを11.1に設定したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、22.3m
2/gであった。
実施例1と同様にしてリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物B6を得た。
【0204】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質B6の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mnのモル比は、1.11:0.334:0.333:0.333であった。この時、xは、0.05であった。
【0205】
正極活物質B6の二次粒子径は、4.3μmであった。
【0206】
正極活物質B6のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ1046Å、661Åであった。
【0207】
正極活物質B6の細孔分布測定結果から、167nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.029cm
3/gであった。また、BET比表面積は、1.4m
2/gであった。
【0208】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、3.2μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は1.1μmであった。
【0209】
(比較例7)
1.正極活物質B7の製造
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が0.35:0.30:0.35となるように混合して混合原料液を調整し、反応槽内の溶液のpHを11.4に設定したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、20.0m
2/gであった。実施例1と同様にしてリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物B7を得た。
【0210】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質B7の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mnのモル比は、1.11:0.35:0.30:0.35であった。この時、xは、0.05であった。
【0211】
正極活物質B7の二次粒子径は、4.2μmであった。
【0212】
正極活物質B7のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ920Å、526Åであった。
【0213】
正極活物質B7の細孔分布測定結果から、168nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.039cm
3/gであった。また、BET比表面積は、1.7m
2/gであった。
【0214】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、3.2μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は1.0μmであった。
【0215】
下記表1に、実施例1〜5、比較例1〜7のそれぞれについて、組成比(Ni/Co/Mn)、二次粒子径(μm)、結晶子サイズ(ピークA/ピークB、単位;Å)、細孔ピークの極大(nm)、10nm〜200nmにおける細孔容積(cm
3/g)、BET比表面積(m
2/g)及び二次粒子径の変化(表1中「ΔD
50」と記載する。単位:μm)をまとめて記載する。
【0216】
【表1】
【0217】
評価の結果、実施例1〜5のリチウム金属複合酸化物を用いた正極活物質では、加圧前後の二次粒子径の変化(ΔD
50)が0.6μm以下と小さく、加圧時の正極活物質の潰れは大幅に抑制されていた。
これに対し、比較例1〜7のリチウム金属複合酸化物を用いた正極活物質は、加圧前後の二次粒子径の変化(ΔD
50)が1.0μm以上と大きく、加圧時に正極活物質が潰れてしまった。
【0218】
(実施例6)
1.正極活物質A6の製造
攪拌機およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加した。
【0219】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が0.315:0.330:0.355となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0220】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加し、反応槽内の溶液の温度を50℃に保持しながら、pHが12.3になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得た。得られた粒子を、濾過後水洗し、100℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末を得た。このニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のBET比表面積は、34.7m
2/gであった。
【0221】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、Mg/(Ni+Co+Mn+Mg)=0.001となるようにMgOを添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A6すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A6を得た。
【0222】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A6の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Mgのモル比は、1.13:0.317:0.329:0.353:0.001であった。この時、xは、0.06であった。
【0223】
正極活物質A6の二次粒子径は、3.1μmであった。
【0224】
正極活物質A6のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ905Å、533Åであった。
【0225】
正極活物質A6の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.032cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.2m
2/gであった。
【0226】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.5μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.6μmであった。
【0227】
(実施例7)
1.正極活物質A7の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0228】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、Mg/(Ni+Co+Mn+Mg)=0.005となるようにMgOを添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A7すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A7を得た。
【0229】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A7の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Mgのモル比は、1.14:0.316:0.327:0.353:0.004であった。この時、xは、0.07であった。
【0230】
正極活物質A7の二次粒子径は、3.1μmであった。
【0231】
正極活物質A7のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ936Å、543Åであった。
【0232】
正極活物質A7の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.036cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.2m
2/gであった。
【0233】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.4μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.7μmであった。
【0234】
(実施例8)
1.正極活物質A8の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0235】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、Mg/(Ni+Co+Mn+Mg)=0.03となるようにMgOを添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A8すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A8を得た。
【0236】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A8の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Mgのモル比は、1.14:0.306:0.321:0.344:0.029であった。この時、xは、0.07であった。
【0237】
正極活物質A8の二次粒子径は、3.2μmであった。
【0238】
正極活物質A8のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ947Å、550Åであった。
【0239】
正極活物質A8の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.034cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.1m
2/gであった。
【0240】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.6μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.6μmであった。
【0241】
(実施例9)
1.正極活物質A9の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0242】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、Al/(Ni+Co+Mn+Al)=0.001となるようにAl
2O
3を添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A9すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A9を得た。
【0243】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A9の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Alのモル比は、1.13:0.317:0.328:0.354:0.001であった。この時、xは、0.06であった。
【0244】
正極活物質A9の二次粒子径は、3.2μmであった。
【0245】
正極活物質A9のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ875Å、530Åであった。
【0246】
正極活物質A9の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.035cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.3m
2/gであった。
【0247】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.4μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.8μmであった。
【0248】
(実施例10)
1.正極活物質A10の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0249】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、Al/(Ni+Co+Mn+Al)=0.005となるようにAl
2O
3を添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A10すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A10を得た。
【0250】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A10の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Alのモル比は、1.13:0.316:0.327:0.352:0.005であった。この時、xは、0.06であった。
【0251】
正極活物質A10の二次粒子径は、3.1μmであった。
【0252】
正極活物質A10のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ885Å、533Åであった。
【0253】
正極活物質A10の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.034cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.3m
2/gであった。
【0254】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.5μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.6μmであった。
【0255】
(実施例11)
1.正極活物質A11の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0256】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、Al/(Ni+Co+Mn+Al)=0.03となるようにAl
2O
3を添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A11すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A11を得た。
【0257】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A11の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Alのモル比は、1.12:0.308:0.319:0.344:0.029であった。この時、xは、0.06であった。
【0258】
正極活物質A11の二次粒子径は、3.2μmであった。
【0259】
正極活物質A11のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ895Å、565Åであった。
【0260】
正極活物質A11の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.032cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.3m
2/gであった。
【0261】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.5μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.7μmであった。
【0262】
(実施例12)
1.正極活物質A12の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0263】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、Zr/(Ni+Co+Mn+Zr)=0.001となるようにZrO
2を添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A12すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A12を得た。
【0264】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A12の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Zrのモル比は、1.13:0.315:0.330:0.354:0.001であった。この時、xは、0.06であった。
【0265】
正極活物質A12の二次粒子径は、3.1μmであった。
【0266】
正極活物質A12のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ915Å、550Åであった。
【0267】
正極活物質A12の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.032cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.1m
2/gであった。
【0268】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.6μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.5μmであった。
【0269】
(実施例13)
1.正極活物質A13の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0270】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、Zr/(Ni+Co+Mn+Zr)=0.005となるようにZrO
2を添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A13すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A13を得た。
【0271】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A13の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Zrのモル比は、1.13:0.315:0.328:0.352:0.005であった。この時、xは、0.06であった。
【0272】
正極活物質A13の二次粒子径は、3.2μmであった。
【0273】
正極活物質A13のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ875Å、530Åであった。
【0274】
正極活物質A13の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.034cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.3m
2/gであった。
【0275】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.3μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.9μmであった。
【0276】
(実施例14)
1.正極活物質A14の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0277】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、Zr/(Ni+Co+Mn+Zr)=0.03となるようにZrO
2を添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A14すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A14を得た。
【0278】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A14の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Zrのモル比は、1.10:0.308:0.318:0.342:0.032であった。この時、xは、0.05であった。
【0279】
正極活物質A14の二次粒子径は、3.2μmであった。
【0280】
正極活物質A14のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ866Å、533Åであった。
【0281】
正極活物質A14の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.035cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.5m
2/gであった。
【0282】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.4μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.8μmであった。
【0283】
(実施例15)
1.正極活物質A15の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0284】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、V/(Ni+Co+Mn+V)=0.001となるようにV
2O
5を添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A15すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A15を得た。
【0285】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A15の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Vのモル比は、1.13:0.317:0.329:0.353:0.001であった。この時、xは、0.06であった。
【0286】
正極活物質A15の二次粒子径は、3.1μmであった。
【0287】
正極活物質A15のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ905Å、558Åであった。
【0288】
正極活物質A15の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.033cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.1m
2/gであった。
【0289】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.2μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.9μmであった。
【0290】
(実施例16)
1.正極活物質A16の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0291】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、V/(Ni+Co+Mn+V)=0.005となるようにV
2O
5を添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A16すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A16を得た。
【0292】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A16の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Vのモル比は、1.12:0.314:0.328:0.352:0.005であった。この時、xは、0.06であった。
【0293】
正極活物質A16の二次粒子径は、3.2μmであった。
【0294】
正極活物質A16のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ895Å、550Åであった。
【0295】
正極活物質A16の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.033cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.2m
2/gであった。
【0296】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.4μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.8μmであった。
【0297】
(実施例17)
1.正極活物質A17の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0298】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、V/(Ni+Co+Mn+V)=0.03となるようにV
2O
5を添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A17すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A17を得た。
【0299】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A17の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Vのモル比は、1.07:0.308:0.318:0.343:0.030であった。この時、xは、0.03であった。
【0300】
正極活物質A17の二次粒子径は、3.3μmであった。
【0301】
正極活物質A17のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ970Å、572Åであった。
【0302】
正極活物質A17の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.027cm
3/gであった。また、BET比表面積は、1.9m
2/gであった。
【0303】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.5μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.8μmであった。
【0304】
(実施例18)
1.正極活物質A18の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0305】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、Sn/(Ni+Co+Mn+Sn)=0.001となるようにSnOを添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A18すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A18を得た。
【0306】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A18の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Snのモル比は、1.14:0.317:0.329:0.353:0.001であった。この時、xは、0.07であった。
【0307】
正極活物質A18の二次粒子径は、3.2μmであった。
【0308】
正極活物質A18のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ959Å、547Åであった。
【0309】
正極活物質A18の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.031cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.2m
2/gであった。
【0310】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.5μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.7μmであった。
【0311】
(実施例19)
1.正極活物質A19の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0312】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、Sn/(Ni+Co+Mn+Sn)=0.005となるようにSnOを添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A19すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A19を得た。
【0313】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A19の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Snのモル比は、1.13:0.315:0.328:0.352:0.005であった。この時、xは、0.06であった。
【0314】
正極活物質A19の二次粒子径は、3.1μmであった。
【0315】
正極活物質A19のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ915Å、543Åであった。
【0316】
正極活物質A19の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.034cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.1m
2/gであった。
【0317】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.6μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.5μmであった。
【0318】
(実施例20)
1.正極活物質A20の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0319】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量し、Sn/(Ni+Co+Mn+Sn)=0.03となるようにSnOを添加して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いで大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A20すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A20を得た。
【0320】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A20の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Snのモル比は、1.10:0.308:0.320:0.344:0.028であった。この時、xは、0.05であった。
【0321】
正極活物質A20の二次粒子径は、3.1μmであった。
【0322】
正極活物質A20のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ936Å、569Åであった。
【0323】
正極活物質A20の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.033cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.2m
2/gであった。
【0324】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.4μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.7μmであった。
【0325】
(実施例21)
1.正極活物質A21の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0326】
WO
3を61g/Lで溶解したLiOH水溶液を作製した。作製したW溶解LiOH水溶液をレディゲミキサーにてW/(Ni+Co+Mn+W)=0.005となるように前記ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物に被着させた。得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.09となるように秤量して混合した後、690℃で5時間焼成し、大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A21すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A21を得た。
【0327】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A21の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Wのモル比は、1.11:0.315:0.329:0.351:0.005であった。この時、xは、0.05であった。
【0328】
正極活物質A21の二次粒子径は、3.2μmであった。
【0329】
正極活物質A21のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ875Å、496Åであった。
【0330】
正極活物質A21の細孔分布測定結果から、90nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.043cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.4m
2/gであった。
【0331】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.7μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.5μmであった。
【0332】
(実施例22)
1.正極活物質A22の製造
実施例6と同様にしてニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
【0333】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物の乾燥粉末と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.1となるように秤量して混合した後、690℃で5時間焼成した。次いでこの焼成粉にW/(Ni+Co+Mn+W)=0.001となるようにWO
3を添加し、大気雰囲気下925℃で6時間焼成して、目的の正極活物質A22すなわちリチウム−ニッケルコバルトマンガン複合酸化物A22を得た。
【0334】
2.リチウム金属複合酸化物の評価
得られた正極活物質A22の組成分析を行ったところ、Li:Ni:Co:Mn:Wのモル比は、1.13:0.317:0.329:0.353:0.001であった。この時、xは、0.06であった。
【0335】
正極活物質A22の二次粒子径は、3.2μmであった。
【0336】
正極活物質A22のピークA、ピークBから算出される結晶子サイズは、それぞれ936Å、569Åであった。
【0337】
正極活物質A22の細孔分布測定結果から、108nmに極大の細孔ピークを有し、10nmから200nmの範囲での細孔容積は0.035cm
3/gであった。また、BET比表面積は、2.2m
2/gであった。
【0338】
3.正極活物質の加圧後の二次粒子径
前記加圧試験条件にて正極活物質の加圧試験を実施した後の二次粒子径は、2.5μmであり、二次粒子径の変化(ΔD
50)は0.7μmであった。
【0339】
下記表2に、実施例6〜22のそれぞれについて、組成比(Li/Ni/Co/Mn/M)、金属Mの種類、二次粒子径(μm)、結晶子サイズ(ピークA/ピークB、単位;Å)、細孔ピークの極大(nm)、10nm〜200nmにおける細孔容積(cm
3/g)、BET比表面積(m
2/g)及び二次粒子径の変化(表1中「ΔD
50」と記載する。単位:μm)をまとめて記載する。
【0340】
【表2】