(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769105
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】セリア粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01F 17/235 20200101AFI20201005BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20201005BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20201005BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20201005BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20201005BHJP
【FI】
C01F17/235
C09K3/14 550D
H01L21/304 622B
B24D3/00 340
B24D3/00 320A
B24D3/00 330D
B24B37/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-97278(P2016-97278)
(22)【出願日】2016年5月13日
(65)【公開番号】特開2017-202967(P2017-202967A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2019年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】南 久貴
(72)【発明者】
【氏名】桜田 剛史
(72)【発明者】
【氏名】金丸 真美子
【審査官】
若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/123203(WO,A1)
【文献】
特開2007−009214(JP,A)
【文献】
特開2012−158500(JP,A)
【文献】
特表2008−508175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 17/00−17/38
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
B01J 21/00−38/74
B24B 3/00−3/60
21/00−39/06
B24D 3/00−99/00
C01F 1/00−17/00
H01L 21/304
21/463
Scopus
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウムを含むと共に、少なくとも一部がポリカルボン酸のアルカリ土類金属塩で被覆された粒子を焼成する焼成工程と、
前記焼成工程後の焼成物に含まれるアルカリ土類金属の酸化物の少なくとも一部を、酸成分を含む溶解液で溶解してセリア粒子を得る工程と、を備え、
前記アルカリ土類金属に対する前記酸成分のモル比(前記酸成分/前記アルカリ土類金属)が0.4以上である、セリア粒子の製造方法。
【請求項2】
溶媒と、セリウムを含む原料と、ポリカルボン酸と、アルカリ土類金属塩と、を混合して、前記粒子を含有する混合液を得る工程を更に備え、
前記焼成工程において、前記混合液から前記溶媒の少なくとも一部を除去して得られる残留物を焼成する、請求項1に記載のセリア粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ポリカルボン酸のカルボキシル基に対する前記原料のセリウム元素のモル比が0.1〜500である、請求項2に記載のセリア粒子の製造方法。
【請求項4】
前記ポリカルボン酸のカルボキシル基に対する前記アルカリ土類金属塩のアルカリ土類金属のモル比が0.01〜100である、請求項2又は3に記載のセリア粒子の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ土類金属塩のアルカリ土類金属が、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、
前記アルカリ土類金属塩が、前記アルカリ土類金属の硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、酢酸塩及び乳酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセリア粒子の製造方法。
【請求項6】
前記ポリカルボン酸が、アクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体、アクリル酸の共重合体、及び、メタクリル酸の共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセリア粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリア粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、セリア粒子は、排ガス処理触媒、紫外線吸収剤、砥粒(研磨粒子)等に用いられている。中でも、ガラスや半導体素子の平坦化加工を行う際には、必須の材料となっている。
【0003】
現在の半導体素子製造工程において、半導体素子の高密度・微細化のための加工技術の一つであるCMP(ケミカルメカニカルポリッシング:化学機械研磨)は、絶縁材料の平坦化、STI(シャロートレンチアイソレーション)形成工程、プラグ形成工程、埋め込み金属配線形成工程(ダマシン工程)等を行う際に必須の技術となってきている。CMP工程(CMP技術を用いた平坦化工程)は、一般に、研磨パッド(研磨布)と、被研磨材料との間にCMP用研磨液を供給しながら、前記被研磨材料を研磨することによって行われる。
【0004】
前記CMPに用いるCMP用研磨液としては、種々のものが知られている。CMP用研磨液に含まれる砥粒によって分類すると、砥粒として酸化セリウム(セリア)粒子を含むセリア系研磨液、砥粒として酸化ケイ素(シリカ)粒子を含むシリカ系研磨液、砥粒として酸化アルミニウム(アルミナ)粒子を含むアルミナ系研磨液、砥粒として有機樹脂粒子を含む樹脂粒子系研磨液等が知られている。
【0005】
半導体素子製造工程において、酸化珪素等の絶縁材料を研磨するための研磨液としては、シリカ系研磨液と比較して無機絶縁材料に対する研磨速度が速い観点から、セリア系研磨液が多く使用されている。
【0006】
セリア系研磨液として、下記特許文献1には、高純度酸化セリウム砥粒を用いた半導体用のCMP用研磨液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−106994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
セリア粒子は、一般的に、セリウムを含む原料を600℃以上の高温で焼結して作製される。しかし、この焼結の際にセリア粒子(一次粒子)間の融着により結合が生じ、一次粒子が結合した二次粒子となってしまう問題点がある。そのため、分散性に優れたセリア粒子の製造方法が求められる。
【0009】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、分散性に優れたセリア粒子を得ることが可能なセリア粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るセリア粒子の製造方法は、セリウムを含むと共に、少なくとも一部がポリカルボン酸のアルカリ土類金属塩で被覆された粒子を焼成する焼成工程と、前記焼成工程後の焼成物に含まれるアルカリ土類金属の酸化物の少なくとも一部を溶解してセリア粒子を得る工程と、を備える。
【0011】
本発明に係るセリア粒子の製造方法によれば、ポリカルボン酸のアルカリ土類金属塩で被覆された粒子を用いることにより粒子間の融着が防止されること等により、分散性に優れ、粒径を小さく保ちつつ分散可能なセリア粒子を得ることができる。
【0012】
ところで、従来、セリア粒子の二次粒子を粉砕して粒子の大きさを制御することが行われているが、粉砕後のセリア粒子の形状は、セリウムを含む原料の形状とは大きく異なってしまう問題点がある。これに対し、本発明に係るセリア粒子の製造方法によれば、原料の形状を維持しつつ原料を酸化してセリア粒子を得ることができる。本発明に係るセリア粒子の製造方法によれば、原料の形状を維持しつつ粒径の小さなセリア粒子を得ることができる。
【0013】
本発明に係るセリア粒子の製造方法は、溶媒と、セリウムを含む原料と、ポリカルボン酸と、アルカリ土類金属塩と、を混合して、前記粒子を含有する混合液を得る工程を更に備え、前記焼成工程において、前記混合液から前記溶媒の少なくとも一部を除去して得られる残留物を焼成する態様であってもよい。
【0014】
前記ポリカルボン酸のカルボキシル基に対する前記原料のセリウム元素のモル比は、0.1〜500であることが好ましい。
【0015】
前記ポリカルボン酸のカルボキシル基に対する前記アルカリ土類金属塩のアルカリ土類金属のモル比は、0.01〜100であることが好ましい。
【0016】
本発明に係るセリア粒子の製造方法は、前記アルカリ土類金属塩のアルカリ土類金属が、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含み、前記アルカリ土類金属塩が、前記アルカリ土類金属の硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、酢酸塩及び乳酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む態様であってもよい。
【0017】
前記ポリカルボン酸は、アクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体、アクリル酸の共重合体、及び、メタクリル酸の共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、分散性(例えば、液体中における分散性)に優れたセリア粒子を得ることができる。本発明によれば、原料の形状を維持しつつ粒径の小さなセリア粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1のセリウム原料のSEM像を示す図である。
【
図2】実施例1のセリア粒子のSEM像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
<セリア粒子の製造方法>
本実施形態に係るセリア粒子の製造方法は、セリウムを含むと共に、少なくとも一部がポリカルボン酸のアルカリ土類金属塩で被覆された粒子(セリウム含有粒子)を焼成する焼成工程と、前記焼成工程後の焼成物に含まれるアルカリ土類金属の酸化物の少なくとも一部を溶解してセリア粒子を得る溶解工程と、を備える。本実施形態に係るセリア粒子の製造方法は、焼成工程の前に、セリウム含有粒子を含有する混合液を得る混合液調製工程を備えていてもよい。以下、各工程について詳細に説明する。
【0022】
(混合液調製工程)
混合液調製工程では、セリウム含有粒子を含有する混合液(例えば分散液)を得る。混合液調製工程では、溶媒と、セリウムを含む原料(以下、「セリウム原料」という)と、ポリカルボン酸と、アルカリ土類金属塩と、を混合して前記混合液を得てもよく、溶媒と、セリウム原料と、ポリカルボン酸のアルカリ土類金属塩と、を混合して前記混合液を得てもよい。
【0023】
混合液調製工程では、例えば、セリウム原料をポリカルボン酸のアルカリ土類金属塩でコーティングすることができる。混合液調製工程では、溶媒に分散させたセリウム原料に、ポリカルボン酸及びアルカリ土類金属塩をこの順に混合することが好ましい。これにより、ポリカルボン酸のアルカリ土類金属塩がセリウム原料の周りを容易に万遍なく覆うことができる。
【0024】
溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン等の極性溶媒が好ましい。溶媒は、取り扱いの容易さの観点から、水及びエタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、水がより好ましい。水としては、特に制限されないが、脱イオン水、イオン交換水及び超純水等が好ましい。溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
セリウム原料としては、特に制限はなく、公知のものを使用できる。具体的には、炭酸塩、オキシ炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の無機酸塩及びその水和物;シュウ酸塩、マロン酸塩等の有機酸塩などを使用することができる。セリウム原料としては、溶媒(例えば水)への溶解度を低くしやすい観点から、炭酸塩、炭酸塩の水和物、オキシ炭酸塩、オキシ炭酸塩の水和物、シュウ酸塩及びシュウ酸塩の水和物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。セリウム原料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
ポリカルボン酸としては、セリウム原料への吸着力に優れる観点から、アクリル酸の単独重合体(ポリアクリル酸)、メタクリル酸の単独重合体(ポリメタクリル酸)、アクリル酸の共重合体、及び、メタクリル酸の共重合体(アクリル酸の共重合体を除く)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。ポリカルボン酸は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
ポリカルボン酸の重量平均分子量は、セリウム原料(炭酸セリウム等)への吸着力を高める観点から、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましく、4000以上が更に好ましく、5000以上が特に好ましく、7000以上が極めて好ましい。ポリカルボン酸の重量平均分子量は、砥粒の過剰な凝集を防ぎやすい観点から、50万以下が好ましく、20万以下がより好ましく、10万以下が更に好ましく、5万以下が特に好ましく、1万以下が極めて好ましい。ポリカルボン酸の重量平均分子量は、標準ポリスチレンの検量線を用いて、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定できる。
(条件)
試料:10μL
標準ポリスチレン:東ソー株式会社製、標準ポリスチレン(分子量;190000、17900、9100、2980、578、474、370、266)
検出器:株式会社日立製作所製、RI−モニター、商品名「L−3000」
インテグレーター:株式会社日立製作所製、GPCインテグレーター、商品名「D−2200」
ポンプ:株式会社日立製作所製、商品名「L−6000」
デガス装置:昭和電工株式会社製、商品名「Shodex DEGAS」
カラム:日立化成株式会社製、商品名「GL−R440」、「GL−R430」、「GL−R420」をこの順番で連結して使用
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:23℃
流速:1.75mL/min
測定時間:45分
【0028】
アルカリ土類金属塩のアルカリ土類金属としては、特に制限はないが、アルカリ土類金属の酸化物の溶解液への溶解度が高くなりやすい観点から、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、アルカリ土類金属塩としては、アルカリ土類金属の酸化物の溶解液への溶解度が高くなりやすい観点から、アルカリ土類金属の硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、酢酸塩及び乳酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。アルカリ土類金属塩は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
ポリカルボン酸のカルボキシル基(カルボキシル基数)に対するセリウム原料のセリウム元素のモル比(モル数の比。セリウム元素/ポリカルボン酸のカルボキシル基)の下限値としては、セリウム原料をポリカルボン酸のアルカリ土類金属塩で覆いやすい観点から、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1以上が更に好ましく、10以上が特に好ましく、20以上が極めて好ましい。ポリカルボン酸のカルボキシル基数(モル数)は、例えばポリカルボン酸の配合量(g)を構成モノマの分子量(g/mol)で除算することにより算出することができる。
【0030】
ポリカルボン酸のカルボキシル基(カルボキシル基数)に対するセリウム原料のセリウム元素のモル比(モル数の比。セリウム元素/ポリカルボン酸のカルボキシル基)の上限値としては、セリウム原料をポリカルボン酸のアルカリ土類金属塩で覆いやすい観点から、500以下が好ましく、300以下がより好ましく、200以下が更に好ましく、150以下が特に好ましく、120以下が極めて好ましい。
【0031】
ポリカルボン酸のカルボキシル基(カルボキシル基数)に対するアルカリ土類金属塩のアルカリ土類金属(アルカリ土類金属元素)のモル比(モル数の比。アルカリ土類金属/ポリカルボン酸のカルボキシル基)の下限値としては、ポリカルボン酸のアルカリ土類金属塩の生成を促進させる観点から、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.08以上が更に好ましく、0.1以上が特に好ましい。
【0032】
ポリカルボン酸のカルボキシル基(カルボキシル基数)に対するアルカリ土類金属塩のアルカリ土類金属(アルカリ土類金属元素)のモル比(モル数の比。アルカリ土類金属/ポリカルボン酸のカルボキシル基)の上限値としては、ポリカルボン酸のアルカリ土類金属塩の生成を促進させる観点から、100以下が好ましく、80以下がより好ましく、60以下が更に好ましく、40以下が特に好ましく、20以下が極めて好ましい。
【0033】
(焼成工程)
焼成工程では、セリウム含有粒子を焼成(例えば焼結)する。焼成工程では、例えば、混合液調製工程によって得られる混合液(例えば分散液)から溶媒の少なくとも一部を除去して得られる残留物(セリウム含有粒子を含む残留物。例えば固体)を焼成する。溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、遠心分離、減圧乾燥、常圧乾燥等の方法を用いることができる。また、得られた残留物を焼成する方法としては、特に制限はなく、ロータリーキルンや電気炉を用いた焼成法等の方法を用いることができる。
【0034】
焼成工程における焼成温度は、セリウム含有粒子を酸化しやすい観点から、300℃以上が好ましく、500℃以上がより好ましく、600℃以上が更に好ましい。焼成工程における焼成温度は、粒子が過度に結晶化することを防ぎやすい観点から、1500℃以下が好ましく、1200℃以下がより好ましく、1000℃以下が更に好ましい。
【0035】
(溶解工程)
溶解工程では、焼成工程後の焼成物に含まれるアルカリ土類金属の酸化物の少なくとも一部を溶解してセリア粒子を得る。溶解工程では、得られた焼成物(例えば粒子)を溶解液に分散させてアルカリ土類金属の酸化物を溶解させることが好ましい。
【0036】
溶解に用いる溶解液は、アルカリ土類金属の酸化物を溶解させやすい観点から、酸成分(例えば、無機酸(硝酸、硫酸、塩酸等)及び有機酸(酢酸、シュウ酸等))で液性が酸性に調整された溶液(例えば水溶液)を用いることが好ましい。
【0037】
アルカリ土類金属に対する酸成分のモル比(酸成分/アルカリ土類金属)は、アルカリ土類金属の酸化物が溶解しても液性を酸性に容易に保つことができる観点から、0.4以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましい。
【0038】
アルカリ土類金属の酸化物を溶解させやすい観点から、溶解は、超音波を印加させながら行うことが好ましい。
【0039】
セリア粒子の平均粒径(D50)は、1μm以下が好ましく、0.7μm以下がより好ましく、0.5μm以下が更に好ましい。セリア粒子の平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:Microtrac MT3300EXII)で測定することができる。
【0040】
セリウム原料及びセリア粒子の形状は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することができる。例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製S−4800を用いて形状を観察することができる。
【0041】
本実施形態のセリア粒子は、排ガス処理触媒、紫外線吸収剤、砥粒(例えば、CMP用研磨液の砥粒)等として用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
<セリア粒子の作製>
下記の手順に従ってセリア粒子を作製した。なお、下記説明中、A〜Fで示される値は、表1及び表2にそれぞれ示される値である。
【0044】
市販のセリウム原料A[kg]を純水B[kg]に分散させた後、200rpmで撹拌して分散液(セリウム分散液)を得た。この分散液に、ポリカルボン酸としてポリアクリル酸(重量平均分子量:8000、アクリル酸の単独重合体)C[kg]を添加した後、15分撹拌した。さらに、アルカリ土類金属塩D[kg]を添加した後、30分撹拌した。なお、表1の「セリウム元素/PAA」及び「金属元素/PAA」は、ポリカルボン酸のカルボキシル基数に対する量(モル比)を示す。また、炭酸セリウム水和物としては、炭酸セリウム八水和物を用いた。
【0045】
次に、アルカリ土類金属塩を含む分散液を60℃で乾燥させることで、白色の粉末を得た。この粉末をアルミナ製容器に入れ、800℃、空気中で1時間焼成することにより、白色から黄白色の粉末を得た。
【0046】
得られた粉末100gをE[質量%]の硝酸水溶液F[kg]に分散させた後、超音波分散機でアルカリ土類金属の酸化物を溶解させてセリア分散液を得た。超音波分散は、超音波周波数400kHz、分散時間90分で行った。
【0047】
<相同定>
実施例及び比較例で得られたセリア分散液を更に遠心分離して上澄みを除去し、60℃で乾燥することで粉末を得た。この粉末の相同定をX線回折法で行ったところセリア(酸化セリウム)であることを確認した。
【0048】
<平均粒径の測定>
実施例及び比較例で得られたセリア分散液中におけるセリア粒子の平均粒径(D50)を、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:Microtrac MT3300EXII)で測定した。測定結果を表2に示す。実施例で得られたセリア粒子は、比較例とは異なり、凝集沈殿することなく1μm以下の粒径を有することが確認された。
【0049】
<SEM観察>
実施例1について、セリウム原料、及び、前記相同定と同様の操作により得られた粉末(セリア粒子)をSEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製のS−4800)で観察した。観察結果を
図1及び
図2に示す。
図1は、セリウム原料のSEM像を示す図である。
図2は、セリア粒子(溶解工程後の粒子)のSEM像を示す図である。実施例1で用いたセリウム原料(
図1)及びセリア粒子(
図2)のSEM像を確認したところ、形状が変わらないことが確認された。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】