(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記角部分割電極と辺部分割電極とに分割された径方向分割電極は、前記複数の径方向分割電極のうち、最も外周側に位置するものであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
前記角部分割電極と辺部分割電極との少なくとも一方に設けられたインピーダンス調整部は、前記複数の角部分割電極に対して、または前記複数の辺部分割電極に対して共通化されていることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
前記角部分割電極と辺部分割電極とに分割された径方向分割電極以外の径方向分割電極の少なくとも1つには、前記カソード電極から、プラズマを介して各径方向分割電極の接地端に至る回路のインピーダンスを調整するためのインピーダンス調整部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
前記カソード電極には、互いに周波数の異なる複数の高周波電源が接続され、前記インピーダンス調整部が設けられた分割電極の接地端側には、前記複数の高周波電源の各周波数に対応した複数のインピーダンス調整部が並列に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本例のプラズマ処理装置1は、矩形の被処理基板である、例えば、FPD用の基板G上に薄膜トランジスタを形成する際のメタル膜、ITO(Tin-doped Indium Oxide、)膜、酸化膜などを形成する成膜処理やこれらの膜をエッチングするエッチング処理、レジスト膜のアッシング処理などの各種プラズマ処理に用いることができる。ここで、FPDとしては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence;EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)などが例示される。また、プラズマ処理装置1は、FPD用の基板Gに限らず、太陽電池パネル用の基板Gに対する上述の各種プラズマ処理にも用いることができる。
【0011】
以下、
図1、2を参照しながら、短辺の長さが730mm以上、長辺の長さが920mm以上の大型のガラス基板(以下単に基板と記す)G上に成膜された膜のエッチング処理を行うエッチング装置として構成されたプラズマ処理装置1について説明する。
図1に示すように、プラズマ処理装置1は、導電性材料、例えば、内壁面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる角筒形状の容器本体10を備え、当該容器本体10は電気的に接地されている。容器本体10の上面(後述の枠体部11)には開口が形成され、この開口はアノード電極部3によって気密に塞がれる。これら容器本体10及びアノード電極部3によって囲まれた空間は基板Gの処理空間100となり、アノード電極部3の上方側は、後述のインピーダンス調整部51、52などが配置される導電性材料製の上部カバー50によって覆われている。また処理空間100の側壁には、基板Gを搬入出するための搬入出口101、及び搬入出口101を開閉するゲートバルブ102が設けられている。
【0012】
処理空間100の下部側には、基板Gを載置するための載置台13が、前記アノード電極部3と上下に対向するようにして設けられている。載置台13は、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成されている。載置台13に載置された基板Gは、不図示の静電チャックにより吸着保持される。載置台13は絶縁体枠14内に収納され、この絶縁体枠14を介して容器本体10の底面に設置されている。
【0013】
載置台13には、各々、整合器151、161を介して第1、第2の高周波電源152、162が接続されている。
第1の高周波電源152からは、例えば10〜30MHzの範囲内の周波数の高周波電力が供給される。第1の高周波電源152から供給される電力は、載置台13とアノード電極部3との間に高密度の容量結合プラズマPを形成する役割を果たす。
【0014】
一方、第2の高周波電源162からは、バイアス用の高周波電力、例えば2〜6MHzの範囲内の周波数の高周波電力が印加される。このバイアス用の高周波電力により生成されたセルフバイアスによって、処理空間100内に生成されたプラズマP中のイオンを基板Gに引き込むことができる。
【0015】
アノード電極部3との間にプラズマPを形成するため、第1、第2の高周波電源152、162から高周波電力が供給される載置台13は、本実施の形態のカソード電極に相当する。なお、載置台13に対して互いに周波数の異なる複数の高周波電源(第1の高周波電源152、第2の高周波電源162)を接続することは必須の要件ではない。例えば、載置台13に対して第1の高周波電源152のみを接続してもよい。
さらに、載置台13内には、基板Gの温度を制御するために、セラミックヒータなどの加熱手段と冷媒流路とからなる温度制御機構、温度センサー、基板Gの裏面に熱伝達用のHeガスを供給するためのガス流路が設けられている(いずれも図示せず)。
【0016】
また例えば容器本体10の底面には、排気口103が形成され、この排気口103の下流側には真空ポンプなどを含む真空排気部12が接続されている。処理空間100の内部は、この真空排気部12によってエッチング処理時の圧力に真空排気される。
【0017】
図1、2に示すように、容器本体10の側壁の上面側には、アルミニウムなどの金属からなる矩形状の枠体である枠体部11が設けられている。容器本体10と枠体部11との間には、処理空間100を気密に保つためのシール部材110が設けられている。ここで容器本体10及び枠体部11は本実施の形態の処理容器を構成している。
【0018】
アノード電極部3は、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムなどにより構成される。また、本例のアノード電極部3は複数の分割電極32(32a、32b)、33、34が組み合わされて配置されることにより、全体として矩形状のアノード電極部3を構成している。
【0019】
図2を参照しながら本例のアノード電極部3の詳細な構成について説明すると、アノード電極部3は枠体部11に形成された開口の内側に配置されている。アノード電極部3と枠体部11との間には絶縁部材31が設けられ、アノード電極部3は、枠体部11や容器本体10から絶縁された状態となっている。アノード電極部3は、載置台13に載置される基板Gに対応した矩形の平面形状を有する。例えばアノード電極部3の短辺は基板Gの短辺よりも長く、またアノード電極部3の長辺は基板Gの長辺よりも長く形成されている。
【0020】
さらにアノード電極部3は、載置台13上の基板Gと短辺及び長辺の向きを揃え、且つ、載置台13上の基板Gの中心(矩形の対向する頂点同士を結んだ2本の対角線が交差する位置)とアノード電極部3の中心とが揃うように配置されている。この結果、アノード電極部3の輪郭を載置台13側へ向けて投影したとき、基板Gはアノード電極部3の輪郭の内側に配置された状態となる。
【0021】
上述のアノード電極部3おいて、その中心(中央側)から輪郭側(外周側)へ向かう方向を径方向としたとき、アノード電極部3は径方向に向けて複数、例えば3つに分割されている。これら分割された電極(内側分割電極34、中間分割電極33、外周分割電極32)は、本例の径方向分割電極に相当する。
3つに分割された径方向分割電極のうち、
図2中、砂状のハッチングが付されている内側分割電極34は、アノード電極部3の中央部側に配置されている。例えば内側分割電極34は、長方形の平面形状を有する。
【0022】
図2中、グレーで塗りつぶされた中間分割電極33は、内側分割電極34の外周を囲む角環状の平面形状を備えている。さらに中間分割電極33の外周を囲む角環状の領域には、外周分割電極32が設けられている。
図2に示すように、内側分割電極34と中間分割電極33との間、中間分割電極33と外周分割電極32との間には絶縁部材31が設けられ、これら内側分割電極34、中間分割電極33、外周分割電極32は互いに絶縁されている。
【0023】
上述の径方向分割電極(内側分割電極34、中間分割電極33、外周分割電極32)のうち、最も外周側に位置する外周分割電極32は、さらに周方向に向けて例えば8つに分割されている。即ち、外周分割電極32はアノード電極部3の頂点を含む角部側の4つの角部分割電極32b(
図2中、左下がりの斜線のハッチングを付してある)と、隣り合う頂点間を結ぶ辺部側に位置する4つの辺部分割電極32a(
図2中、右下がりの斜線のハッチングを付してある)とに分割されている。隣り合う角部分割電極32bと辺部分割電極32aとの間には絶縁部材31が設けられ、各角部分割電極32b、辺部分割電極32aは互いに絶縁されている。
ここで、図2に示すように、各々の角部分割電極32bは、中央側に隣り合って配置された他の径方向分割電極である中間分割電極33における、アノード電極部3の角部側の形状に沿って伸びるL字状の辺を有している。また同じく図2に示すように、各々の辺部分割電極32aは、中央側に隣り合って配置された中間分割電極33における、アノード電極部3の辺部側の形状に沿って伸びる直線状の辺を有している。
【0024】
図2に示すように、内側分割電極34、中間分割電極33、角部分割電極32b、辺部分割電極32aは、各々、接地端104に接続されている。例えば接地端104としては、接地された容器本体10の上面に設けられ、当該容器本体10と電気的に導通している上部カバー50が用いられる。
図1に示すように当該上部カバー50の内壁面に対して、各分割電極34、33、32b、32aを接続する(
図1には角部分割電極32b、辺部分割電極32aを接続した例を示してある)ことにより、これらの分割電極34、33、32b、32aが接地される。
【0025】
上述の構成により、プラズマ処理装置1には、第1、第2の高周波電源152、162に接続された載置台(カソード電極)13から、容量結合プラズマPを介して各分割電極34、33、32b、32aを通り接地端104に至る回路が形成される。
【0026】
さらに、本例のアノード電極部3は処理ガス供給用のシャワーヘッドを兼ねている。
図1に示すようにアノード電極部3を構成する各分割電極(内側分割電極34、中間分割電極33、角部分割電極32b、辺部分割電極32a)の内部には、処理ガスを拡散させる処理ガス拡散室301が形成されている。また、各分割電極34、33、32b、32aの下面には、処理ガス拡散室301から処理空間100に対して処理ガスを供給するための複数の処理ガス吐出孔302が形成されている。そして各分割電極34、33、32b、32aの処理ガス拡散室301は、ガス供給管41を介して処理ガス供給部42に接続されている(
図1)。処理ガス供給部42からは、基板G上の膜のエッチング処理に必要な処理ガスであるエッチングガスが供給される。
【0027】
なお図示の便宜上、
図1には、一部の分割電極(角部分割電極32b、辺部分割電極32a)の処理ガス拡散室301や処理ガス吐出孔302のみを例示してある。また
図1においては、1つの分割電極(角部分割電極32b)に処理ガス供給部42を接続した状態を示してある。実際には、全ての分割電極(内側分割電極34、中間分割電極33、角部分割電極32b、辺部分割電極32a)に処理ガス拡散室301及び処理ガス吐出孔302が設けられ、各処理ガス拡散室301が処理ガス供給部42に連通している。
【0028】
さらに
図1に示すように、このプラズマ処理装置1には制御部6が設けられている。制御部6は不図示のCPU(Central Processing Unit)と記憶部とを備えたコンピュータからなり、この記憶部には基板Gが配置された処理空間100内を真空排気し、載置台13とアノード電極部3との間に供給されたエッチングガスをプラズマ化して基板Gをエッチング処理する動作を実行させる制御信号を出力するためのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリカードなどの記憶媒体に格納され、そこから記憶部にインストールされる。
【0029】
ここで上述の構成を備える本例のプラズマ処理装置1に対し、既述のように複数の分割電極(内側分割電極34、中間分割電極33、角部分割電極32b、辺部分割電極32a)を組み合わせて構成されたアノード電極部3に替えて、当該アノード電極部3と同じ短辺及び長辺の長さを有する1枚の矩形電極により構成されたアノード電極部3aを用いる従来のプラズマ処理装置について検討する。
【0030】
例えば1枚の矩形電極からなるアノード電極部3aを用い、当該アノード電極部3aを接地端104に接続して、載置台13とアノード電極部3aとの間にプラズマP’を形成し、基板Gのエッチング処理を行う場合を考える。一般に、平行平板型のプラズマ処理装置1の処理空間100内でプラズマを発生させると、プラズマ密度の高い領域は処理空間100の中央部に集中しようとする傾向がある。
【0031】
上述の特性を踏まえると、アノード電極部3aの下方側(処理空間100内)においては、アノード電極部3aの頂点近傍の角部側にてプラズマP’の密度が低くなる傾向がみられることを発明者らは把握している。この結果、プラズマP’が形成される領域を上面側から見ると、
図3にプラズマP’の密度が高い領域の輪郭を破線で模式的に示すように、アノード電極部3aの短辺や長辺の近傍の辺部側にてプラズマP’の密度が相対的に高くなり、上述の角部側にてプラズマP’の密度が相対的に低くなる。
【0032】
このようにアノード電極部3aの外周側の領域を周方向に沿って見たとき、隣り合う領域(角部側と辺部側)で密度が相違するプラズマP’を用いて基板Gのエッチング処理を行うと、当該プラズマP’の密度分布に対応して、基板Gの面内でエッチング速度などが変化し、均一なエッチング処理の結果を得られない場合がある。この傾向は、既述のように短辺の長さが730mm以上にもなる大型の基板Gの処理を行う際に顕著になる。
【0033】
そこで
図2に示すように、本例のプラズマ処理装置1は外周分割電極(外周側の径方向分割電極)32を構成する角部分割電極32bと接地端104との間、及び辺部分割電極32aと接地端104との間に、載置台13から各角部分割電極32b、辺部分割電極32aを通って接地端104に至る回路のインピーダンスを調整するためのインピーダンス調整部52、51を設けている。
【0034】
図1に示すように、カソード電極である載置台13に対しては、互いに周波数の異なる複数の高周波電源(第1の高周波電源152、第2の高周波電源162)が接続されている。そこで本例のプラズマ処理装置1においては、これら複数の周波数に対応した複数のインピーダンス調整部52a、52b、51a、51bが、角部分割電極32bと接地端104との間、及び辺部分割電極32aと接地端104との間に並列に設けられている。なお、
図2においては、これら各周波数に対応したインピーダンス調整部52a、52b、51a、51bをまとめて表示してある(インピーダンス調整部52、51)。
【0035】
上述のインピーダンス調整部52、51の設置に加え、中間分割電極33や内側分割電極34の一部、または全部(角部分割電極32bと辺部分割電極32aとに分割された外周分割電極32以外の径方向分割電極である)にインピーダンス調整部53を設けてもよい。このとき、載置台13に接続された第1、第2の高周波電源152、162の各周波数に対応させて、中間分割電極33や内側分割電極34に対しても複数のインピーダンス調整部53、53を設けてもよいことは勿論である。なお
図2には、内側分割電極34と接地端104との間にインピーダンス調整部53を設け、中間分割電極33は直接、接地端104に接続した例を示してある。
【0036】
図2に示すように、各インピーダンス調整部51〜53は、例えば可変容量コンデンサ502とインダクタ501とを含み、可変容量コンデンサ502の容量を変化させることによって、載置台13から接地端104に至る回路のインピーダンスを個別に調整することができる。
【0037】
ここで、インピーダンス調整部51〜53の具体的な構成は、可変容量コンデンサ502とインダクタ501との組み合わせに限定されるものではない。可変容量コンデンサ502を単独で設ける場合や、固定容量コンデンサと可変容量コンデンサ502とを組み合わせる場合、可変インダクタと固定容コンデンサとを組み合わせる場合を例示することができる。また、インピーダンス調整部51〜53が、インピーダンス値を変更可能であることも必須の要件ではない。例えば固定容量コンデンサにより、予め設定されたインピーダンス値を持つインピーダンス調整部51〜53を構成してもよい。
【0038】
以下、上述の構成を備えた本実施の形態に係るプラズマ処理装置1の作用について説明する。
初めに、ゲートバルブ102を開き、搬送機構により、隣接する真空搬送室から搬入出口101を介して処理空間100内に基板Gを搬入する(搬送機構及び真空搬送室は不図示)。次いで、載置台13上に基板Gを載置して、不図示の静電チャックにより基板Gを固定する一方、処理空間100から搬送機構を退避させてゲートバルブ102を閉じる。
【0039】
しかる後、処理ガス供給部42から、処理ガス拡散室301を介して処理空間100内にエッチングガスを供給すると共に、真空排気部12より処理空間100内の真空排気を行って、処理空間100内を例えば0.66〜26.6Pa程度の圧力雰囲気に調節する。また不図示のガス流路から基板Gに、熱伝達用のHeガスを供給する。
【0040】
次いで、第1の高周波電源152からアノード電極部3に高周波電力を印加すると、載置台13とアノード電極部3との間の容量結合により、処理空間100内でエッチングガスがプラズマ化し、高密度のプラズマPが生成される。そして、第2の高周波電源162から載置台13に印加されたバイアス用の高周波電力により、プラズマ中のイオンが基板Gに向けて引き込まれ、基板Gに対するエッチング処理が行われる。
【0041】
このとき、
図3を用いて説明したアノード電極部3aを用いる従来例と比較して、本例のプラズマ処理装置1においては外周側に位置する外周分割電極32が周方向に向けて角部分割電極32bと辺部分割電極32aとに分割され、これらの分割電極32b、32aには個別にインピーダンス調整部52、51が設けられている。
【0042】
そこで辺部分割電極32aの下方側の領域に対して、角部分割電極32bの下方側の領域にてプラズマPの密度が同程度になるようにインピーダンス調整部52、51のインピーダンス値を調整する。具体的には、プラズマPの密度が高い領域をアノード電極部3の角部側まで広げる。この結果、
図3を用いて説明した従来のアノード電極部3を用いて発生させたプラズマP’によるエッチング処理と比較して、アノード電極部3の角部側と辺部側とのプラズマPの密度差を小さくして、より面内均一性の高いエッチング処理を行うことができる。
【0043】
従来と比べて、アノード電極部3の角部側におけるプラズマP’の密度を高くする手法としては、後述の参考例に実験結果を示すように、角部分割電極32bまたは辺部分割電極32aに接続されたインピーダンス調整部52、51を用い、載置台13から角部分割電極32bを通って接地端104に至る回路において、辺部分割電極32a側の同回路と比較したとき、載置台13側の高周波数電圧の直流成分が同程度、または大きくなるようにインピーダンス調整を行う手法を例示することができる。
【0044】
さらに例えばアノード電極部3の中央部側に集中しようとするプラズマPの特性により、内側分割電極34の下方側の領域にて、その外周側(中間分割電極33や外周分割電極32の下方側)の領域よりもプラズマ密度が高くなりエッチング速度が大きくなる傾向がみられる場合もある。
【0045】
この場合には、内側分割電極34の下方側の領域のプラズマPの密度を下げて、外周側のプラズマPの密度と揃えることにより、これらの領域間のプラズマPの密度差を小さくして、より面内均一性の高いエッチング処理を行うことができる。内側分割電極34の下方側の領域のプラズマPの密度を下げる手法としては、後述の参考例に実験結果を示すように、内側分割電極34に接続されたインピーダンス調整部53を用い、載置台13から内側分割電極34を通って接地端104に至る回路において、載置台13側の高周波数電圧の直流成分が小さくなるようにインピーダンス調整を行う手法を例示することができる。
【0046】
さらにインピーダンス調整部51〜53を用いてインピーダンス調整を行うことに伴う効果を挙げる。後述の実験結果に示すように、発明者らは、アノード電極部3の各内側分割電極34、中間分割電極33、外周分割電極32を流れる電流が大きくなると、プラズマPによって各分割電極34、33、32の表面が削られることによる肉厚減少(以下、「消耗」という)が大きくなる傾向があることを把握した。そこで、既述のようにアノード電極部3の面内でプラズマPの密度が揃うように各インピーダンス調整部51〜53のインピーダンス値を調整した後、エッチング処理の面内均一性に影響のない範囲で、載置台13から接地端104に至る各回路を流れる電流ができるだけ小さくなるようにさらにインピーダンス調整部51〜53のインピーダンス値の微調整を行うことにより、各分割電極34、33、32の消耗を低減することもできる。
【0047】
以上に説明したインピーダンス調整が行われたアノード電極部3を用いて処理空間100にプラズマPを発生させ、予め設定した時間だけエッチング処理を行ったら、各高周波電源152、162からの電力供給、処理ガス供給部42からのエッチングガス供給、及び処理空間100内の真空排気を停止し、搬入時とは反対の順序で基板Gを搬出する。
【0048】
本実施の形態に係るプラズマ処理装置1によれば以下の効果がある。矩形の基板Gのエッチング処理を行う平行平板型のプラズマ処理装置1にて、基板Gと対向するように配置され、平面形状が矩形であるアノード電極部3の外周側に位置する外周分割電極32について、角部側に位置する角部分割電極32bと、辺部側に位置する辺部分割電極32aとに分割する。そして、載置台(カソード電極)13から、プラズマPを介して接地端104に至る回路のインピーダンスを調整するためのインピーダンス調整部51〜53を設けている。この結果、前記角部と辺部とに対応する位置の基板Gに対して均一なエッチング処理を行うことができる。
【0049】
上述の効果が得られるのは、エッチング処理を行うエッチング装置としてプラズマ処理装置1が構成されている場合に限られない。プラズマ処理装置1が、基板Gに対して成膜処理を行う成膜装置や、レジスト膜のアッシング処理を行うアッシング装置として構成されている場合についても同様に、基板Gの面内で均一な処理を行うことができる。
【0050】
ここでアノード電極部3は、径方向に向けて少なくとも2分割されていればよい。また、「外周側に位置する径方向分割電極」とは、径方向に分割された複数の径方向分割電極のうち、アノード電極部3の中心からアノード電極部3の外縁(既述の短辺や長辺)までの距離の1/2よりも外側の領域内に配置されたものであれば、角部分割電極32bと辺部分割電極32aと分割してインピーダンス調整を行うことにより、既述の作用効果を発揮することができる。
【0051】
ここで
図2を用いて説明したように、本例のアノード電極部3は、最も外周側に位置する外周分割電極32のうち、角部側に位置する4つの角部分割電極32bが共通のインピーダンス調整部52に接続され、辺部側に位置する4つの辺部分割電極32aが共通のインピーダンス調整部51に接続されている。一方で、4つの角部分割電極32bに対してインピーダンス調整部52を共通化し、また4つの辺部分割電極32aに対してインピーダンス調整部51を共通化することは必須の要件ではなく、角部分割電極32b、各辺部分割電極32aに対して個別にインピーダンス調整部52、51を設けてもよい。
【0052】
また、角部分割電極32b及び辺部分割電極32aの双方をインピーダンス調整部52、51と接続することも必須の要件ではない。角部分割電極32bまたは辺部分割電極32aの少なくとも一方をインピーダンス調整部52、51と接続してインピーダンス調整を行えば、アノード電極部3の角部側と辺部側とのプラズマPの密度差を小さくして、プラズマ処理の面内均一性を向上させる作用効果を得ることができる。
【0053】
また、周方向に分割する径方向分割電極は、最も外周側に配置された外周分割電極32に限られない。3つに分割された径方向分割電極(内側分割電極34、中間分割電極33、外周分割電極32)のうち、例えば中間分割電極33を周方向に分割してもよい。
図4に示すアノード電極部3bのように、中間分割電極33を角部分割電極33b及び辺部分割電極33aに分割したとき、角部分割電極33bがアノード電極部3の角部側のプラズマPの密度に影響を及ぼすことが可能な領域に配置されている場合には、これら角部分割電極33b、辺部分割電極33aの少なくとも一方をインピーダンス調整部52、51に接続して既述のインピーダンス調整を行うことにより、プラズマ処理の面内均一性の向上に寄与することができる。
【0054】
この他、周方向に分割する径方向分割電極は1つに限定されない。
図5に示すアノード電極部3cのように外周分割電極32を周方向に向けて角部分割電極32bと辺部分割電極32aとに分割することに加えて、中間分割電極33を周方向に向けて角部分割電極33bと辺部分割電極33aとに分割してもよい。この場合には、中間分割電極33の角部分割電極33bは、外周分割電極32の角部分割電極32bとは異なるインピーダンス調整部に接続することが好ましく、また中間分割電極33の辺部分割電極33aは、外周分割電極32の辺部分割電極32aとは異なるインピーダンス調整部に接続することが好ましい。
【0055】
なお例えば
図5に示すアノード電極部3cにおいて、(i)中間分割電極33の角部分割電極33b、辺部分割電極33aを共通のインピーダンス調整部に接続した場合、(ii)各角部分割電極33b、辺部分割電極33aを別々のインピーダンス調整部に接続し、載置台13から、容量結合プラズマPを介して各分割電極33b、33aを通り接地端104に至る回路において、例えばプラズマP側から見て、分割電極33b、33aの単位面積あたりのインピーダンスが揃うようにインピーダンス調整した場合、(iii)中間分割電極33の角部分割電極33b、辺部分割電極33aにインピーダンス調整部を接続せずに、直接、接地端104に接続した場合を考える。これらの場合には、各分割電極33b、33aの下方側に形成されるプラズマPの状態は、分割されていない中間分割電極33の下方側に形成されるプラズマPの状態と変わらない。
【0056】
従って、(i)〜(iii)の場合には、中間分割電極33が構成上、複数の分割電極33b、33aに分割されていたとしても、容量結合プラズマPを形成するうえでは、一体に構成された中間分割電極33を用いている場合と相違ないといえる。例えば
図2に示す中間分割電極33、内側分割電極34には、分割されたうえで(i)〜(iii)のいずれかの構成となっているものも含まれる。
【0057】
さらには、アノード電極部3を径方向に向けて複数に分割して得られる径方向分割電極の形状は、
図2に示した矩形状(内側分割電極34)、角環状(中間分割電極33、外周分割電極32)の場合に限定されない。例えば、内側分割電極34を楕円形状に構成し、中間分割電極33は当該内側分割電極34の外周を囲む楕円環状に構成してもよい。この場合には、外周分割電極32は、矩形状のアノード電極部3から、楕円形上の内側分割電極34及び中間分割電極33を取り除いた残りの領域の形状となる。従って、外周分割電極32などを周方向に向けて分割して得られる角部分割電極32b、辺部分割電極32aの形状についても、
図2の例に限定されず、外周分割電極32の形状などに応じて適宜、決定されることは勿論である。
【実施例】
【0058】
(実験1)
図6に示す3つの径方向分割電極(内側分割電極34、中間分割電極33、外周分割電極32)を備えたアノード電極部3dに対し、インピーダンス調整部53、54を用いたインピーダンス調整を行いながら電流値の測定などを行った。なお、
図6に示すアノード電極部3dにおいて、外周分割電極32の接地端104への接続の記載は省略してある。
A.実験条件
(参考例1−1)
図6に示すアノード電極部3dを備えるプラズマ処理装置1を用い、内側分割電極34と接地端104との間、及び中間分割電極33と接地端104との間にインピーダンス調整部53、54を設け、内側分割電極34側のインピーダンス調整部53に設けられている可変容量コンデンサ502のキャパシタンスを変化させ、各回路を流れる電流を電流計503、504により測定した。この操作期間中、中間分割電極33側の可変容量コンデンサ502のキャパシタンスは固定した。また、第1の高周波電源152側の整合器151に設けられている不図示の電圧計により、載置台13(カソード電極)側の電圧の変化を測定した。処理ガス供給部42からはCF
4とO
2との混合ガスを1000sccm(標準状態:25℃、1気圧基準)で供給し、処理空間100の圧力は1.33Pa(10mTorr)に調整した。また、第1の高周波電源152、第2の高周波電源162からは、各々22kWの高周波電力を供給した。
(参考例1−2) 参考例1−1と同様の条件下で、中間分割電極33側のインピーダンス調整部54に設けられている可変容量コンデンサ502の容量を変化させ、各回路を流れる電流及び載置台13側の電圧を測定した。この操作期間中、内側分割電極34側の可変容量コンデンサ502のキャパシタンスは固定した。
【0059】
B.実験結果
参考例1−1の結果を
図7に示し、参考例1−2の結果を
図8に示す。
図7、
図8の横軸は可変容量コンデンサ502のダイアル値を示す。当該ダイアル値の値が小さいほど、可変容量コンデンサ502のキャパシタンスが大きく、ダイアル値を大きくするに連れてキャパシタンスは小さくなる。
図7、
図8の左側の縦軸は各分割電極34、33の電流値を示し、右側の縦軸は載置台13側の電圧値を示している。各図中、内側分割電極34側の電流値の変化を一点鎖線で示し、中間分割電極33側の電流値の変化を実線で示す。また、載置台13側の電圧値の変化を破線で示してある。
【0060】
図7に示す参考例1−1の結果によると、インピーダンス調整部53内に設けられている可変容量コンデンサ502のダイアル値を次第に大きくしていく(可変容量コンデンサ502のキャパシタンスを次第に小さくしていく)と、内側分割電極34側の電流値は増大し、ダイアル値が3.5〜4.5の範囲にてピークを示した後、さらにダイアル値を大きくするに連れ、内側分割電極34側の電流値は次第に減少した。
一方で上述のダイアル操作の期間中、中間分割電極33側の電流値は低い状態のまま殆ど変化しなかった。
【0061】
さらに上述のダイアル操作の期間中、内側分割電極34側の電流値の増減に対応して、載置台13側の電圧値が降下する現象が見られた。従って、内側分割電極34を流れる電流値の変化は、載置台13側から供給された高周波電力がプラズマPを介して内側分割電極34側に引き込まれることにより発生していると評価することができる。
【0062】
他方、
図8に示す参考例1−2の結果では、
図7に示す参考例1−1の実験結果とは対照的な結果が得られた。
即ち、インピーダンス調整部54内に設けられている可変容量コンデンサ502のダイアル値を次第に大きくしていくと、中間分割電極33側の電流値が増大し、ダイアル値が2〜4程度の範囲にてピークを示した後、さらにダイアル値を大きくするに連れ、中間分割電極33側の電流値は次第に減少した。
一方で上述のダイアル操作の期間中、内側分割電極34側の電流値は低い状態のまま殆ど変化しなかった。
【0063】
さらに上述のダイアル操作の期間中、中間分割電極33を流れる電流値の増減に対応して、載置台13側の電圧値が降下する現象が見られた。従って、中間分割電極33側の電流値の変化は、載置台13側から供給された高周波電力がプラズマPを介して中間分割電極33側に引き込まれることにより発生していると評価することができる。
【0064】
以上の実験結果をまとめると、中間分割電極33、内側分割電極34に設けられたインピーダンス調整部53、54のインピーダンス値を調整することにより、中間分割電極33と内側分割電極34とにおいて、互いに独立して各分割電極33、34を含む回路(載置台13から接地端104に至る回路)を流れる電流を増減させる調整が行えることを確認できた。
この結果は、
図2に示す角部分割電極32b、辺部分割電極32aの間でインピーダンス調整部52、51のインピーダンス値を調整した場合にも同様に成り立つといえる。
【0065】
(実験2)
図6に示すアノード電極部3dを備えたプラズマ処理装置1を用い、基板Gのエッチング処理を行った。
A.実験条件
(参考例2−1) 載置台13側にて測定した電圧値の直流成分(Vdc)が最小となる位置に各インピーダンス調整部53、54内の可変容量コンデンサ502のダイアル値を設定し、参考例1−1と同様の条件にて基板Gのエッチング処理を行った。内側分割電極34側のインピーダンス調整部53における可変容量コンデンサ502のダイアル値は4.5であり、
図7における内側分割電極34側の電流値のピークに対応する位置である。また中間分割電極33側の可変容量コンデンサ502のダイアル値は3.0であり、
図8における中間分割電極33側の電流値のピークに対応する位置である。
(参考例2−2) 載置台13側にて測定した電圧値の直流成分(Vdc)が最大となる位置に各インピーダンス調整部53、54内の可変容量コンデンサ502のダイアル値を設定し、参考例1−1と同様の条件にて基板Gのエッチング処理を行った。内側分割電極34側のインピーダンス調整部53における可変容量コンデンサ502のダイアル値は8.0であり、
図7における内側分割電極34側の電流値が最も小さくなる位置である。また中間分割電極33側の可変容量コンデンサ502のダイアル値は8.0であり、
図8における中間分割電極33側の電流値が最も小さくなる位置である。
(比較例2) 内側分割電極34と接地端104との間、中間分割電極33と接地端104との間にインピーダンス調整部53、54を設けずに基板Gのエッチング処理を行った。
【0066】
B.実験結果
参考例2−1、2−2、比較例2の結果を
図9に示す。
図9の横軸は、載置台13側にて測定した電圧値の直流成分を示している。また、
図9の左側の縦軸は単位時間あたりのエッチング速度を示し、右側の縦軸は基板Gの面内におけるエッチング速度のユニフォーミティ({(標準偏差σ)/(平均値Ave)}×100[%])を示している。
図9中、白抜きの丸のプロットは内側分割電極34の下方側の領域、黒塗りの丸のプロットは中間分割電極33の下方側領域における基板Gのエッチング速度の平均値を示している。また白抜きの横棒のプロットは、外周分割電極32の下方側領域におけるエッチング速度の最大値、黒塗りの横棒のプロットは、外周分割電極32の下方側領域におけるエッチング速度の最小値を示している。さらに黒塗りのひし形のプロットは基板Gの面内におけるエッチング速度の平均値を示し、バツ印のプロットは、エッチング速度のユニフォーミティを示している。
【0067】
図9に示す参考例2−1、2−2の結果によると、載置台13側の電圧値の直流成分が最小の場合に各領域及び基板G面内平均のエッチング速度は小さくなり(参考例2−1)、前記直流成分が最大の場合に各領域及び基板G面内平均のエッチング速度は大きくなった。従って、インピーダンス調整部53、54を用いたインピーダンス値の調整によって、基板Gのエッチング速度を変化させることが可能であることを確認できた。
この結果についても、
図2に示す角部分割電極32b、辺部分割電極32aの間でインピーダンス調整部52、51のインピーダンス値を調整した場合にも同様に成り立つといえる。
【0068】
一方で、内側分割電極34、中間分割電極33の接地端104側にインピーダンス調整部53、54が設けられていない比較例2においては、内側分割電極34や中間分割電極33の下方側の領域でエッチング速度が大きくなり、外周分割電極32の下方側の領域にてエッチング速度が小さくなる、上に凸のエッチング速度分布が形成された。この結果、エッチング速度のユニフォーミティの値は、参考例2−1、2−2と比べて悪化した。また、比較例2においては、載置台13から接地点に至る回路のインピーダンス調整によってエッチング速度を変化させる手段がない。
【0069】
(実験3)
図6に示すアノード電極部3dを備えたプラズマ処理装置1を用い、アノード電極部3側の消耗量を測定した。
A.実験条件
(参考例3−1) 内側分割電極34の下面にアルミニウムチップからなる試験片を貼付し、参考例1−1と同様の操作を行い、内側分割電極34側の回路を流れる電流値を変化させながら所定時間だけプラズマPを発生させ、前記試験片の消耗量を測定した。
(参考例3−2) 中間分割電極33の前記試験片を貼付し、参考例1−2と同様の操作を行い、参考例3−1と同様の実験を行った。
【0070】
B.実験結果
参考例3−1、3−2の結果を各々
図10、
図11に示す。これらの図の横軸は、各分割電極34、33を流れる電流値を示し、縦軸は試験片のスパッタリング量を示している。各電流値におけるスパッタリング量を黒塗りのひし形のプロットで示してある。また各図には、インピーダンス調整部53、54を設けない場合における試験片のスパッタリング量を破線で示してある。
【0071】
図10、
図11に示す参考例3−1、3−2の結果によると、内側分割電極34、中間分割電極33のいずれにおいても、当該分割電極34、33を流れる電流が大きくなるに連れて、試験片のスパッタリング量が大きくなっている。従って、各分割電極34、33の下方側の領域に配置された基板Gにて、所望のエッチング速度が得られる範囲内において、これらの分割電極34、33を流れる電流が小さくなるようにインピーダンス調整部53、54のインピーダンス値を調整することにより、内側分割電極34、中間分割電極33の消耗量を低減することができる
この結果は、
図2に示す角部分割電極32b、辺部分割電極32aにおいても同様に成り立つといえる。