特許第6769439号(P6769439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友大阪セメント株式会社の特許一覧

特許6769439フォーカスリング、フォーカスリングの製造方法
<>
  • 特許6769439-フォーカスリング、フォーカスリングの製造方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769439
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】フォーカスリング、フォーカスリングの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20201005BHJP
   C04B 35/575 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   C04B35/575
   H01L21/302 101B
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-537766(P2017-537766)
(86)(22)【出願日】2016年8月23日
(86)【国際出願番号】JP2016074491
(87)【国際公開番号】WO2017038555
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年2月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-174166(P2015-174166)
(32)【優先日】2015年9月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-13849(P2016-13849)
(32)【優先日】2016年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】長友 大朗
【審査官】 宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−029223(JP,A)
【文献】 特開2001−019549(JP,A)
【文献】 特開2006−240896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
C04B 35/575
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素の焼結体からなるフォーカスリングであって、
前記焼結体は、
α−SiC型の結晶構造を有する複数の第1結晶粒及びβ−SiC型の結晶構造を有する複数の第2結晶粒を含み、
前記第1結晶粒及び前記第2結晶粒の合計に対して、前記第1結晶粒を70体積%以上含み、
前記第1結晶粒の体積平均結晶子径は10μm以下である、フォーカスリング。
【請求項2】
前記第2結晶粒の体積平均結晶子径は、前記第1結晶粒の体積平均結晶子径よりも小さい、請求項1に記載のフォーカスリング。
【請求項3】
前記焼結体の平均体積固有抵抗値は、0.1Ω・cm以上、100Ω・cm以下である、請求項1または2に記載のフォーカスリング。
【請求項4】
熱伝導率が100W/mK以上であり、
周方向および径方向の熱伝導率が、厚さ方向の熱伝導率よりも大きい、請求項1から3のいずれか1項に記載のフォーカスリング。
【請求項5】
前記焼結体の相対密度が95%以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載のフォーカスリング。
【請求項6】
前記フォーカスリング全体の質量に対する不純物の質量の比率が、500ppm以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載のフォーカスリング。
【請求項7】
α−SiC型の結晶構造を有し平均粒子径が0.8μm以下である第1粒子、及びβ−SiC型の結晶構造を有し平均粒子径が0.1μm以下である第2粒子を、前記第1粒子及び前記第2粒子の合計に対して前記第1粒子が70体積%以上となるように混合する工程、並びに
前記第1粒子及び前記第2粒子の混合粒子を含む混合物をホットプレスにより焼結する工程、を含み、
前記焼結する工程において、2200℃以上、2500℃以下、及び20MPa以上、50MPa以下に加熱加圧し、並びに1400℃から2000℃までにおける加熱昇温速度が、10℃/分以上、30℃/分以下である、フォーカスリングの製造方法。
【請求項8】
前記混合する工程に先立って、熱プラズマCVD法により前記第2粒子を合成する工程を含む、請求項7に記載のフォーカスリングの製造方法。
【請求項9】
前記混合する工程において、前記第1粒子及び前記第2粒子をそれぞれ高速で噴射して互いに衝突させる、請求項7または8に記載のフォーカスリングの製造方法。
【請求項10】
前記混合する工程において、ケイ素および炭素以外の元素である不純物元素を含む化合物をさらに混合し、
前記混合粒子の全体の質量に対する、前記不純物元素の質量の比率が、500ppm以下である、請求項7から9のいずれか1項に記載のフォーカスリングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカスリング、フォーカスリングの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマ工程を実施する半導体製造装置では、試料台に簡単にウエハを取付けて、固定することができるとともに、そのウエハを所望の温度に維持することができる静電チャック装置が用いられている。この静電チャック装置は、上部に、ウエハ積載面を囲んでウエハ吸着部の外周縁部に配置されたリング部材(フォーカスリング)を備えている。
【0003】
静電チャック装置にウエハを載置した状態では、フォーカスリングは、平面視でウエハの外周を囲むように配置されている。そのため、フォーカスリングの形成材料を選択することにより、ウエハの周縁部においては、プラズマに対する電気的な環境をウエハと略一致させることができ、ウエハの中央部と周縁部とでプラズマ処理の差や偏りを生じにくくすることができる。従来のフォーカスリングは、加工対象物であるウエハと電気伝導性を揃えやすい形成材料として、ウエハと同じ物質を用いることが多い。例えば、シリコンウエハを加工するための静電チャック装置においては、シリコン製のフォーカスリングが用いられる。
【0004】
しかし、このようなシリコン製のフォーカスリングは、塩素系プラズマを用いたプラズマ工程においてシリコンウエハを加工する際、同時に消耗してしまう。その結果、フォーカスリング近傍の高周波透過性が変化したり、熱伝導性が変化する。更にフォーカスリングの熱および消耗に伴う形状の変化により、フォーカスリングとフォーカスリング搭載面との熱伝達率の変化に伴うフォーカスリングの温度変化が生じ、プラズマ工程の処理条件が不安定になってしまうという課題を有していた。
【0005】
そのため、近年では、プラズマで消耗しにくい形成材料である炭化ケイ素製のフォーカスリングが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−37669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載された発明においては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で作製した炭化ケイ素のバルク材を加工成型し、フォーカスリングを得ている。しかし、フォーカスリングのような肉厚の部材をCVD法により形成するには、大きなバルク材が必要となり高額になり易い。
【0008】
また、上記特許文献1では、3C型(閃亜鉛鉱型)結晶の炭化ケイ素(以下、β−SiC)を主体とする炭化ケイ素が用いられている。静電チャック装置が用いられるプラズマ工程では、種々のプラズマが用いられるが、β−SiC製のフォーカスリングは、シリコンウエハの酸化膜を除去する際に用いるフッ素系ガス及び酸素ガスを原料ガスとして用いるプラズマに弱い。そのため、β−SiC製のフォーカスリングは、プラズマ工程で消耗してしまうという課題を依然として有しており、改善が求められていた。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、耐プラズマ性が高いフォーカスリングを提供することを目的とする。また、耐プラズマ性が高いフォーカスリングを容易に製造可能なフォーカスリングの製造方法を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、炭化ケイ素の焼結体からなるフォーカスリングであって、前記焼結体は、α−SiC型の結晶構造を有する複数の第1結晶粒及びβ−SiC型の結晶構造を有する複数の第2結晶粒を含み、前記第1結晶粒及び前記第2結晶粒の合計に対して、前記第1結晶粒を70体積%以上含み、前記第1結晶粒の体積平均結晶子径は、10μm以下であるフォーカスリングを提供する。
【0011】
本発明の一態様においては、前記第2結晶粒の体積平均結晶子径は、前記第1結晶粒の体積平均結晶子径よりも小さい構成としてもよい。
【0012】
本発明の一態様においては、前記焼結体の平均体積固有抵抗値は、0.1Ω・cm以上、100Ω・cm以下である構成としてもよい。
【0013】
本発明の一態様においては、熱伝導率が100W/mK以上であり、周方向および径方向の熱伝導率が、厚さ方向の熱伝導率よりも大きい構成としてもよい。
【0014】
本発明の一態様においては、前記焼結体の相対密度が95%以上である構成としてもよい。
【0015】
本発明の一態様においては、前記フォーカスリング全体の質量に対する不純物の質量の比率が、500ppm以下である構成としてもよい。
【0016】
本発明の一態様は、α−SiC型の結晶構造を有し平均粒子径が5μm以下である第1粒子及びβ−SiC型の結晶構造を有し平均粒子径が0.1μm以下である第2粒子を、前記第1粒子と前記第2粒子との合計に対して前記第1粒子が70体積%以上となるように混合する工程、前記第1粒子と前記第2粒子との混合粒子を含む混合物をホットプレスにより焼結する工程、を含み、前記焼結する工程において、2200℃以上、2500℃以下、20MPa以上、50MPa以下に加熱加圧し、並びに1400℃から2000℃までにおける加熱昇温速度が、10℃/分以上、30℃/分以下である、フォーカスリングの製造方法を提供する。
【0017】
本発明の一態様においては、前記混合する工程に先立って、熱プラズマCVD法により前記第2粒子を合成する工程を含む製造方法としてもよい。
【0018】
本発明の一態様においては、前記混合する工程において、前記第1粒子及び前記第2粒子をそれぞれ高速で噴射して互いに衝突させる製造方法としてもよい。
【0019】
本発明の一態様においては、前記混合する工程において、ケイ素および炭素以外の元素である不純物元素を含む化合物をさらに混合し、前記混合粒子の全体の質量に対する、前記不純物元素の質量の比率が、500ppm以下である製造方法としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐プラズマ性が高いフォーカスリングを提供することができる。また、耐プラズマ性が高いフォーカスリングを容易に製造可能なフォーカスリングの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態のフォーカスリングを備えた静電チャック装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1を参照しながら、本実施形態に係るフォーカスリングについて説明する。なお、以下の図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0023】
[静電チャック装置]
図1は、本実施形態のフォーカスリングを備えた静電チャック装置を示す断面図である。本実施形態の静電チャック装置1は、一主面(上面)側を載置面とした平面視円板状の静電チャック部2、この静電チャック部2の下方に設けられて静電チャック部2を所望の温度に調整する厚みのある平面視円板状の温度調節用ベース部3、及び円板状の静電チャック部2と同心の円環状に設けられたフォーカスリング10、を備えている。また、静電チャック部2及び温度調節用ベース部3は、静電チャック部2及び温度調節用ベース部3の間に設けられた接着剤層8を介して互いに接着されている。
以下、本実施形態のフォーカスリングを備えている静電チャック装置の各構成について、順に説明する。
【0024】
(静電チャック部)
静電チャック部2は、上面を半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面11aとした載置板11、この載置板11と一体化され該載置板11の底部側を支持する支持板12、これら載置板11及び支持板12の間に設けられた静電吸着用電極(静電吸着用内部電極)13、並びに静電吸着用電極13の周囲を絶縁する絶縁材層14、を有している。
【0025】
載置板11及び支持板12は、重ね合わせた面の形状を同じくする円板状の部材である。載置板11及び支持板12は、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al−SiC)複合焼結体、酸化アルミニウム(Al)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、及び酸化イットリウム(Y)焼結体等の焼結体から構成され、機械的な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体である。
【0026】
載置板11の載置面11aには、直径が板状試料の厚みより小さい突起部11bが複数所定の間隔で形成され、これらの突起部11bが板状試料Wを支える。
【0027】
載置板11、支持板12、静電吸着用電極13、及び絶縁材層14を含む静電チャック部2の厚みは、一例として0.7mm以上かつ5.0mm以下である。
【0028】
例えば、静電チャック部2全体の厚みが0.7mmを下回ると、静電チャック部2の機械的強度を確保することが難しくなる。静電チャック部2全体の厚みが5.0mmを上回ると、静電チャック部2の熱容量が大きくなり、載置される板状試料Wの熱応答性が劣化し、静電チャック部の横方向の熱伝達が増加する。そのため板状試料Wの面内温度を所望の温度パターンに維持することが難しくなる。なお、ここで説明した各部の厚さは一例であって、本願発明の静電チャック部全体の厚みを前記範囲に限定するものではない。
【0029】
静電吸着用電極13は、電荷を発生させて、その静電吸着力で板状試料Wを載置板11の載置面11aに固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。
【0030】
静電吸着用電極13は、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al−Ta)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム−モリブデン(Y−Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属により形成されることが好ましい。
【0031】
静電吸着用電極13の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、0.1μm以上、100μm以下の厚みとすることができ、5μm以上、20μm以下の厚みとすることが好ましい。
【0032】
静電吸着用電極13の厚みが0.1μmを下回ると、充分な導電性を確保することが難しくなる。静電吸着用電極13の厚みが100μmを越えると、静電吸着用電極13と載置板11および支持板12との間の熱膨張率差に起因し、静電吸着用電極13と載置板11および支持板12との接合界面にクラックが入り易くなる。
【0033】
このような厚みの静電吸着用電極13は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
【0034】
絶縁材層14は、静電吸着用電極13の外周を取り囲むことで腐食性ガスおよびそのプラズマから静電吸着用電極13を保護するとともに、載置板11と支持板12との境界部、すなわち静電吸着用電極13以外の外周部領域を接合一体化するものであり、載置板11及び支持板12を構成する材料と同一組成または主成分が同一の絶縁材料により構成されている。
【0035】
(温度調整用ベース部)
温度調節用ベース部3は、静電チャック部2を所望の温度に調整するためのもので、厚みのある円板状のものである。この温度調節用ベース部3としては、例えば、その内部に冷媒を循環させる流路3Aが形成された液冷ベース等が好適である。
【0036】
この温度調節用ベース部3を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限はない。例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS)等が好適に用いられる。この温度調節用ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0037】
温度調節用ベース部3の上面側には、接着層6を介して絶縁板7が接着されている。接着層6はポリイミド樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性及び絶縁性を有する、シート状またはフィルム状の接着性樹脂からなるものとすることができる。接着層は例えば厚み5〜100μm程度に形成される。絶縁板7はポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の、耐熱性を有する樹脂の薄板、シート、又はフィルムからなるものとすることができる。
【0038】
なお、絶縁板7は、樹脂シートに代え、絶縁性のセラミック板でもよく、またアルミナ等の絶縁性を有する溶射膜でもよい。
【0039】
(フォーカスリング)
フォーカスリング10は、温度調節用ベース部3の上面の周縁部に載置される平面視円環状の部材であり、本発明に係るフォーカスリングである。フォーカスリング10は、炭化ケイ素の焼結体を含むものである。フォーカスリング10について、詳しくは後述する。
【0040】
(その他の部材)
静電吸着用電極13には、静電吸着用電極13に直流電圧を印加するための給電用端子15が接続されている。給電用端子15は、温度調節用ベース部3、接着剤層8、及び支持板12を厚み方向に貫通する貫通孔16の内部に挿入されている。給電用端子15の外周側には、絶縁性を有する碍子15aが設けられ、この碍子15aにより金属製の温度調節用ベース部3に対し給電用端子15が絶縁されている。
【0041】
図1では、給電用端子15を一体の部材として示しているが、複数の部材が電気的に接続して給電用端子15を構成していてもよい。給電用端子15は、熱膨張係数が互いに異なる温度調節用ベース部3及び支持板12に挿入されているため、例えば、温度調節用ベース部3及び支持板12に挿入されている部分について、それぞれ異なる材料で構成することができる。
【0042】
給電用端子15のうち、静電吸着用電極13に接続され、支持板12に挿入されている部分(取出電極)の材料としては、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではないが、熱膨張係数が静電吸着用電極13および支持板12の熱膨張係数に近似したものが好ましい。例えば、Al−TaCなどの導電性セラミック材料を挙げることができる。
【0043】
給電用端子15のうち、温度調節用ベース部3に挿入されている部分は、例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、コバール合金等の金属材料から構成することができる。
【0044】
これら2つの部材は、柔軟性と耐電性を有するシリコン系の導電性接着剤で接続することができる。
【0045】
静電チャック部2の下面側には、ヒータエレメント5が設けられている。ヒータエレメント5は、一例として、厚みが0.2mm以下、好ましくは0.1mm程度の一定の厚みを有する非磁性金属薄板である。この非磁性金属薄板は、例えばチタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、モリブデン(Mo)薄板等をフォトリソグラフィー法やレーザー加工により所望のヒータ形状に加工することで得られる。形状としては、例えば帯状の導電薄板を蛇行させた形状の全体輪郭を円環状にすることが挙げられる。
【0046】
このようなヒータエレメント5は、静電チャック部2に非磁性金属薄板を接着した後に、静電チャック部2の表面で加工成型することで設けてもよい。あるいは、静電チャック部2とは異なる位置でヒータエレメント5を加工成形したものを、静電チャック部2の表面に転写印刷することで設けてもよい。
【0047】
ヒータエレメント5は、厚みの均一な耐熱性および絶縁性を有するシート状又はフィルム状の、シリコン樹脂又はアクリル樹脂からなる接着層4により支持板12の底面に接着・固定されている。
【0048】
ヒータエレメント5には、ヒータエレメント5に給電するための給電用端子17が接続されている。給電用端子17を構成する材料は先の給電用端子15を構成する材料と同等の材料を用いることができる。給電用端子17は、それぞれ温度調節用ベース部3に形成された貫通孔3bを貫通するように設けられている。
【0049】
また、ヒータエレメント5の下面側には温度センサー20が設けられている。本実施形態の静電チャック装置1では、温度調節用ベース部3と絶縁板7を厚さ方向に貫通するように設置孔21が形成され、これらの設置孔21の最上部に温度センサー20が設置されている。なお、温度センサー20はできるだけヒータエレメント5に近い位置に設置することが望ましいため、図1に示す構造から更に接着剤層8側に突き出るように設置孔21を延在して形成し、温度センサー20をヒータエレメント5に近づけてもよい。
【0050】
温度センサー20は一例として石英ガラス等からなる直方体形状の透光体の上面側に蛍光体層が形成された蛍光発光型の温度センサーである。この温度センサー20が、透光性及び耐熱性を有するシリコン樹脂系接着剤等によりヒータエレメント5の下面に接着されている。
【0051】
蛍光体層は、ヒータエレメント5からの入熱に応じて蛍光を発生する材料からなる。蛍光体層の形成材料としては、発熱に応じて蛍光を発生する材料であればよく、多種多様の蛍光材料から選択することができる。蛍光体層の形成材料は、一例として、発光に適したエネルギー準位を有する希土類元素が添加された蛍光材料、AlGaAs等の半導体材料、酸化マグネシウム等の金属酸化物、ルビーやサファイア等の鉱物を挙げることができ、これらの材料の中から適宜選択して用いることができる。
【0052】
各ヒータエレメント5に対応して設けられている各温度センサー20は、それぞれ給電用端子などと干渉しない位置であってヒータエレメント5の下面周方向の任意の位置に設けられている。
【0053】
温度センサー20からの蛍光に基づきヒータエレメント5の温度を測定する温度計測部22は、一例として、温度調節用ベース部3の設置孔21の外側(下側)に前記蛍光体層に対し励起光を照射する励起部23、蛍光体層から発せられた蛍光を検出する蛍光検出器24、並びに励起部23及び蛍光検出器24を制御するとともに前記蛍光に基づき主ヒータの温度を算出する制御部25から構成されている。
【0054】
さらに、静電チャック装置1は、温度調節用ベース部3から載置板11までをそれらの厚さ方向に貫通するように設けられたピン挿通孔28を有している。このピン挿通孔28には、板状試料離脱用のリフトピンが挿通される。ピン挿通孔28の内周部には筒状の碍子29が設けられている。
【0055】
さらに、静電チャック装置1は、温度調節用ベース部3から載置板11までをそれらの厚さ方向に貫通するように設けられたガス穴(図示せず)を有している。ガス穴は、例えばピン挿通孔28と同様の構成を採用することができる。ガス穴には、板状試料Wを冷却するための冷却ガスが供給される。冷却ガスはガス穴を介して、載置板11の上面において複数の突起部11bの間に形成された溝19に供給され、板状試料Wを冷却する。
静電チャック装置1は、以上のような構成となっている。
【0056】
[フォーカスリング]
次に、本実施形態のフォーカスリング10について、詳述する。
フォーカスリング10は、炭化ケイ素焼結体を含む材料より構成される。また、フォーカスリング10を構成する焼結体は、4H型、6H型等の六方晶系でウルツ鉱型の結晶構造を有する複数の第1結晶粒、及びβ−SiC型の結晶構造を有する複数の第2結晶粒を含む。炭化ケイ素についての六方晶系の結晶構造については、本願明細書においては「α−SiC」と記載する。
フォーカスリング10を構成する前記焼結体は、第1結晶粒及び第2結晶粒の合計に対して、第1結晶粒を70体積%以上含み、第1結晶粒の体積平均結晶子径は10μm以下となっている。
【0057】
また、フォーカスリング10においては、第2結晶粒の体積平均結晶子径は、前記第1結晶粒の体積平均結晶子径よりも小さいことが好ましい。
また、フォーカスリング10を構成する焼結体の平均体積固有抵抗値は、0.1Ω・cm以上かつ100Ω・cm以下であり、フォーカスリング内の抵抗値の変動は、抵抗値の最大値を抵抗値の最小値で除した値(抵抗値の最大値/抵抗値の最小値)で表したとき、10未満であることが好ましい。
また、フォーカスリング10全体に対する不純物の質量の比率が、500ppm以下であることが好ましい。
【0058】
フォーカスリング10を炭化ケイ素焼結体から構成するのは以下の理由による。
SiCの耐食性は、SiCの結晶構造(結晶系)に依存する。上述した2種の結晶系(α−SiC、β−SiC)のうちフッ素系ガス及び酸素ガスプラズマに対する耐食性(耐プラズマ性)が高いのは、α−SiCである。そのため、フッ素系ガス及び酸素ガスプラズマによるドライエッチング工程に静電チャック装置を用いる場合、フォーカスリング10の形成材料にα−SiCを用いる方が、製品寿命が長寿命となり好ましい。一方で、α−SiCは、β−SiCよりも導電性が低い(抵抗値が高い)。
【0059】
一方、CVD法で作成されたSiCはβ−SiCである。そのため、CVD法で作成されたSiCは、上述のようにα−SiCと比べると耐プラズマ性に劣り、導電性が高くなる。
【0060】
これらに対し、炭化ケイ素焼結体は、焼結前の原料粉末としてα−SiC粉末を用いることにより、容易にα−SiCを含む炭化ケイ素焼結体が得られる。また、炭化ケイ素焼結体は、CVDに比較して低廉なコストで作製可能である。さらに、原料粉末としてα−SiC粉末及びβ−SiC粉末を用いると共に、両粉末の混合比を調整する事により、炭化ケイ素焼結体に含まれるα−SiCとβ−SiCの比率を調整することができる。これにより、炭化ケイ素焼結体の抵抗値を調整することができる。
【0061】
フォーカスリングは、エッチング処理物であるウエハ外周部のプラズマ状態を均一にするために用いられているものである。そのため、フォーカスリングの抵抗値は、ウエハの抵抗値と一致するものが好ましい。フォーカスリングとシリコンウエハに抵抗値の差異がある場合、シリコンウエハ外周部のプラズマの均一性に悪影響を及ぼすとともに、フォーカスリングとウエハとの間での放電の原因となるからである。
【0062】
そのため、本実施形態のフォーカスリング10を構成する焼結体においては、第1結晶粒(α−SiC)と第2結晶粒(β−SiC)との合計に対して、α−SiCを70体積%以上であることとする。フォーカスリング10を構成する焼結体において、α−SiC及びβ−SiCの合計に対するα−SiCの割合は、好ましくは80体積%以上であり、より好ましくは90体積%以上であり、上限は99体積%である。
【0063】
なお、第1結晶粒の含有率が70体積%未満となると、焼結体の耐プラズマ性が低下し、焼結体のエッチング速度が速くなるため、好ましくはない。
【0064】
また、焼結体の抵抗値と耐プラズマ性を考慮すると、フォーカスリング10を構成する焼結体の平均体積固有抵抗値は、0.1Ω・cm以上、100Ω・cm以下であることが好ましく、シリコンと同程度の抵抗値である0.5Ω・cm以上、100Ω・cm以下であることがより好ましく、1Ω・cm以上、50Ω・cm以下であることがさらに好ましい。焼結体の平均体積固有抵抗値が100Ω・cmを超えると、焼結体のエッチング速度のばらつきが大きくなる。このような焼結体を原料とするフォーカスリングを、成膜工程で用いる静電チャック装置が備えていると、当該成膜工程で得られる膜の膜厚のばらつきが大きくなるため、好ましくない。また、焼結体の平均体積固有抵抗値が0.1Ω・cm未満であると、抵抗値が低すぎるため、電荷がたまりにくい。このような焼結体を原料とするフォーカスリングを静電チャック装置に使用すると、エッチングレートが低下するため、好ましくない。
【0065】
また、フォーカスリング10において、第1結晶粒の体積平均結晶子径を10μm以下とするのは以下の理由による。
【0066】
α−SiCは、β−SiCと比べ耐プラズマ性に優れるが、結晶方位によりエッチングレートが異なる。そのため、第1結晶粒を含むフォーカスリングでは、使用により表面がプラズマに曝露されると、表面粗さが大きくなる傾向がある。このような表面粗さは、プラズマの電界集中に伴う異常放電や、結晶粒の脱粒によるパーティクルの発生の原因となる。
【0067】
また、フォーカスリングの使用に伴って変化する表面粗さは、焼結体を構成する結晶粒の結晶子径に影響される。そこで、第1結晶粒の体積平均結晶子径を10μm以下、好ましくは1μm以上、5μm以下とすることで、異常放電、粒子の脱粒によるパーティクルの発生軽減することができる。
【0068】
また、第2結晶粒の体積平均結晶子径が、第1結晶粒の体積平均結晶子径よりも小さく、好ましくは第2結晶粒の体積平均結晶子径が第1結晶粒の体積平均結晶子径の1/2以下である、とするのは以下の理由による。
【0069】
β−SiCは、α−SiCと比べて耐プラズマ性に劣る。そのため、フォーカスリング10において、耐プラズマ性の低下を抑制するためには、第2結晶粒の含有量をできるだけ少量としながら、目的のフォーカスリングの抵抗値とすることが好ましい。
【0070】
フォーカスリングの抵抗値を下げるために第2結晶粒の存在比を高めると、耐プラズマ性が低下することになる。しかし、第2結晶粒の粒子径が小さいと、第2結晶粒の含有量が少なくても、フォーカスリング全体に第2結晶粒が分散される。そのため、粒子径が小さい第2結晶粒を少量含むフォーカスリングでは、導電性を確保しやすくなり、第1結晶粒の比率を70体積%以上としても所定の抵抗値のフォーカスリングが得られやすくなる。
【0071】
フォーカスリング10全体の質量に対する不純物の質量の比率(不純物の含有率)が、500ppm以下とするのは、以下の理由による。
【0072】
エッチング工程では、フォーカスリング自体がエッチングされる。フォーカスリングを構成する焼結体を製造する際、焼結助剤(ケイ素及び炭素以外の元素である不純物元素を含む化合物)としてB、Al、Y、Be等を含む化合物を用いることがある。その場合、これら焼結助剤に含まれるケイ素及び炭素以外の元素(不純物元素)も、焼結体(フォーカスリング)に残存する。そのため、エッチング工程においてフォーカスリング自体がエッチングされると、これら焼結助剤に由来する不純物元素がフォーカスリングから放出され、エッチング工程で製造される製品(例えば半導体)の特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0073】
また、これら不純物により生じたSiCの欠陥は、プラズマ照射時の高温環境下での抵抗値および熱伝導性の低下原因となり、フォーカスリングに温度分布(フォーカスリングの部位ごとの温度差)を生じさせる原因となる。
【0074】
これに対し、フォーカスリング10全体の質量に対する不純物の含有率を、500ppm以下とすることで、これら予想される不具合を抑制することができる。
【0075】
フォーカスリング10は、プラズマへの暴露および高周波による自己発熱により加熱される。加熱されたフォーカスリングに温度分布が生じた場合、フォーカスリングの部位ごとに熱膨張量の差を生じ、フォーカスリングにひずみが生じるおそれがある。この場合、加熱前と加熱後とを比べると、冷却ベースとフォーカスリングと間の接触状態が変化する。すると、フォーカスリングと冷却ベースとの間の熱伝達量に変化が生じ、フォーカスリング内の温度差がさらに拡大することとなる。
【0076】
そのため、フォーカスリング10は、熱伝導率が100W/mK以上であることが好ましく、150W/mK以上であるとより好ましい。これにより、フォーカスリング10内の温度差の発生を抑え、フォーカスリング10の変形を抑えることができる。
【0077】
なお、フォーカスリング10は、周方向および径方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも大きいと、フォーカスリング10の温度分布を抑制しやすく、より好ましい。
【0078】
フォーカスリング10を構成する焼結体の相対密度(SiCの理論密度に対する実測密度の比)が95%以上であるとするのは、以下の理由による。
焼結体の密度が95%以下の場合、耐プラズマ性が劣り、パーティクルの発生原因となり好ましくない。また、熱伝導率も低下し、温度ムラの原因ともなる。
【0079】
なお、本実施形態において、フォーカスリング10の形成材料である焼結体の平均体積固有抵抗値は、測定対象物(焼結体またはフォーカスリング)について4探針法(測定機器:ロレスタGP MCP−T610、(株)三菱化学アナリテック社製)で抵抗値を測定し、試験片の形状および厚みにより体積固有抵抗値を算出した値を採用する。
【0080】
また、本実施形態において、不純物の含有率は、ICP−MS法にて測定した値を採用する。
【0081】
また、本実施形態において、フォーカスリング10の形成材料である焼結体における、第1結晶粒及び第2結晶粒の合計に対する第1結晶粒の比率は、まず、焼結体についてXRD測定を行い、第1結晶粒(α−SiC型結晶)および第2結晶粒(β−SiC型結晶)のそれぞれのピーク強度(ピーク面積)を求める。次いで、第1結晶粒のピーク強度と、第2結晶粒のピーク強度の合計に対する第1結晶粒のピーク強度の比を、焼結体における第1結晶粒の体積比として採用する。
【0082】
また、本実施形態において、熱伝導率は、レーザーフラッシュ法にて測定した値を採用する。
【0083】
本実施形態のフォーカスリング10は、以上のような構成となっている。
【0084】
[フォーカスリングの製造方法]
本実施形態に係るフォーカスリングの製造方法は、平均粒子径が5μm以下のα−SiC型の結晶構造を有する第1粒子、及びβ−SiC型の結晶構造を有し平均粒子径が0.1μm以下である第2粒子を、第1粒子及び第2粒子の合計に対して第1粒子が70体積%以上となるように混合する工程、並びに得られた混合粒子をホットプレスにより焼結する工程、を有している。
【0085】
また、焼結する工程においては、2200℃以上、2500℃以下の温度、20MPa以上、50MPa以下の圧力で加熱加圧し、並びに1400℃から2000℃までにおける加熱昇温速度を10℃/分以上、30℃/分以下とする。
【0086】
混合工程は、第1粒子及び第2粒子を所定の配合で混合し、得られた混合粒子を分散媒に分散させて分散液とした後、2流衝突式混合装置を用い、分散液を向かいあう2方向より高圧で噴出させ、粒子同士を衝突させることにより混合分散させ、乾燥造粒して混合粉末とすることが好ましい。
【0087】
また、混合する工程において、焼結助剤をさらに混合し、混合粒子の全体の質量に対する、当該焼結助剤中の不純物元素の質量の比率が、500ppm以下であることが好ましい。不純物が500ppmを超えると、消耗したフォーカスリングから不純物が飛び出してウエハ表面を汚染するため好ましくない。
【0088】
本実施形態において、第1粒子および第2粒子の粒子径は、各粉末を溶媒に分散させたスラリーを調製し、当該スラリーをレーザー回折/散乱式粒度分布想定装置(マスターサイザー2000S、Malvern社製)で測定して求められるd(50)の値を採用する。
【0089】
本実施形態のフォーカスリングの製造方法において、α−SiC型の結晶構造を有する第1粒子、及びβ−SiC型の結晶構造を有し平均粒子径が0.1μm以下である第2粒子を、第1粒子及び第2粒子の合計に対して第1粒子が70体積%以上となるように混合するのは以下の理由による。
【0090】
このような製造方法においては、第1粒子及び第2粒子の混合比や、第1粒子及び第2粒子のそれぞれの粒子径を制御することにより、焼結体及び焼結体を加工して得られるフォーカスリングの耐プラズマ性や平均体積固有抵抗値を制御することができる。
【0091】
すなわち、第1粒子の量を増やすと、得られるフォーカスリングは、フッ素系ガス及び酸素ガスを原料ガスとして用いるプラズマに対する耐性が高まり、平均体積固有抵抗値が高くなる。
【0092】
また、フォーカスリングに含まれるβ−SiCの量が同じ場合、第2粒子の粒子径が小さくなると、得られるフォーカスリングの平均体積固有抵抗値が低くなる。そのため、第2粒子の平均粒子径は、第1粒子の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。
【0093】
さらに、α-SiCに比較して、フッ素系ガス及び酸素ガスを原料ガスとして用いるプラズマに対する耐性が低いβの粒子径を小さくすることで、エッチングに伴うフォーカスリングの表面粗さの増加を抑制し、パーティクルの発生を抑制する事ができる。
【0094】
また、第2粒子として、熱プラズマCVD法で合成されたものを用いることで、焼結助剤を用いなくても緻密な焼結体を得ることができる。そのため、緻密で微細な結晶構造を有し、高純度なフォーカスリングを製造することができる。
【0095】
また、混合する工程においては、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用い、第1粒子及び第2粒子をそれぞれ加圧することで高速で噴射して互いに衝突させながら混合することが好ましい。
【0096】
第1粒子及び第2粒子を衝突させる際、大きい粒子は、衝突時の運動エネルギーが大きく、粉砕されやすい。一方、小さい粒子は、衝突時の運動エネルギーが小さく、粉砕されにくい。そのため、粗大粒子や過粉砕の粒子の少ない、粒度分布幅を狭い粉体を得ることができる。したがって、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用いて粉砕混合した混合物を用いると、焼結工程において、粗大粒子を核とする異常粒成長を抑制することができる。
【0097】
また、本粉砕混合方法では、粒子径の大きいα-SiC粒子が選択的に粉砕され、粒子径衝突速度(噴出圧力)により粉砕の程度を容易に調整できるため、α-SiCのロット間での初期の粒度分布のバラツキの影響を軽減でき、ロット間の粒度分布の差異による、焼結体の組織および抵抗値の変動を抑制することができる。
【0098】
さらに、本方法は原料粉自体を衝突させるため、ボールミル等の容器およびボールからの不純物の混入を抑制することができる。
【0099】
また、焼結する工程において、2200℃以上、2500℃以下の温度、20MPa以上、50MPa以下の圧力で加熱加圧し、1400℃から2000℃までの加熱昇温速度を、10℃/分以上、30℃/分以下とするのは以下の理由による。
2200℃未満の温度では十分な焼結密度が得られず、2500℃を超える温度ではSiCの粒成長が生じ好ましくない。
また、焼結圧力を20MPa以上、50MPa以下とするのは、20MPa未満の圧力では十分な密度が得られず、50MPaを超える圧力ではホットプレスを行う治具の破損変形のおそれがあるためである。
また、1400℃から2000℃までにおける昇温速度を10℃/分以上、30℃/分以下にて実施するのは、10℃/分未満の昇温速度においてはSiCの粒成長のみが進行し緻密な焼結体が得られないためであり、30℃/分より速い昇温速度の場合は、相当な電力が必要であり、フォーカスリング製造装置の内部消耗が著しく早くなり、更には装置内の温度分布ができるため、フォーカスリングの面内抵抗値のばらつきができてしまうためである。
本実施形態のフォーカスリングの製造方法は、以上のようなものである。
【0100】
以上のような構成のフォーカスリング10によれば、耐プラズマ性が高いフォーカスリングを提供することができる。
また、以上のような構成のフォーカスリングの製造方法によれば、耐プラズマ性が高いフォーカスリングを容易に製造可能なフォーカスリングの製造方法を提供することができる。
【0101】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例】
【0102】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例においては、フォーカスリングの形成材料である焼結体を用いて試験片を作製し、当該試験片の耐プラズマ性を評価するモデル実験を行い、本発明の効果を確認した。
【0103】
(実施例1)
平均粒子径が0.8μmのα−SiC粉末、及び平均粒子径が0.05μmのβ−SiC粉末(熱プラズマCVD粉末)を、質量比率でα−SiC粉末:β−SiC粉=10:1で予備混合の後、水に分散させて分散液とした。
【0104】
次いで、得られた分散液を、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用いて粉砕混合した後、スプレードライにより造粒・乾燥し、α−SiC粉末及びβ−SiC粉末の混合粉末を得た。
【0105】
次いで、得られた混合粉末を成形した後、温度2400℃、圧力40MPaの条件にて、アルゴン雰囲気中で4時間焼結し、φ370mmの焼結体を得た。なお、焼結時1400℃〜2000℃の昇温速度は15℃/分とした。
【0106】
得られた焼結体の外周および両面を研削加工し、密度、抵抗分布測定を行った。また、焼結体から試験片を切り出し、試験片を用いて、焼結体に含まれるα−SiC型の結晶粒の体積比(α率)、α−SiC型の結晶粒の平均粒子径、焼結体の熱伝導率の計測を行った。
【0107】
また、酸素+フッ素塩素系プラズマ中でのエッチング速度の比較を実施した。結果を表1に示す。
【0108】
また、φ370mmの焼結体の中央部および外周部を研削加工し、内径φ298mm、外径φ345mm、肉厚4mmのフォーカスリングを作製した。得られたフォーカスリングを静電チャック装置に設置し、シリコンウエハのエッチング処理を行った。
【0109】
なお、熱伝導率は、φ10mm×1mm厚のサンプルによるレーザーフラッシュ法にて測定した。
【0110】
焼結体のα率は、焼結体の一面についてXRD測定のピーク比より算出した。
【0111】
平均粒子径は、焼結体を研磨・エッチングした後、焼結体の一面について、SEM写真を撮影し、画像処理により得られたSEM写真から結晶粒ごとに分離した。その後、各結晶粒の長方向及び短方向の算術平均値を粒子径とし、最小で50個の結晶粒の結晶子径を求め、算術平均により平均結晶子径を求めた。
【0112】
測定対象物(焼結体またはフォーカスリング)の平均体積固有抵抗値は、4探針法(測定機器:ロレスタGP MCP−T610、(株)三菱化学アナリテック社製)にて測定し、試験片の形状および厚みより体積固有抵抗値を算出した。
【0113】
(実施例2)
α−SiC粉末と及びβ−SiC粉末の混合比を、質量比率でα−SiC粉末:β−SiC粉=10:3としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の焼結体を得た。
得られた焼結体について実施例1に準拠して測定を実施した。試験結果について表1に示す。
【0114】
(実施例3)
β−SiC粉末を用いずα−SiC粉末のみ用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の焼結体を得た。
得られた焼結体について実施例1に準拠して測定を実施した。試験結果について表1に示す。
【0115】
(実施例4)
α−SiC粉末及びβ−SiC粉末の混合比を、質量比率でα−SiC粉末:β−SiC粉=10:2としたこと、および焼結温度を2500℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の焼結体を得た。
得られた焼結体について実施例1に準拠して測定を実施した。試験結果について表1に示す。
【0116】
(実施例5)
β−SiC粉末として、平均粒子径0.8μmのシリカ還元法によるβ−SiC粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の焼結体を得た。
得られた焼結体について実施例1に準拠して測定を実施した。試験結果について表1に示す。
【0117】
(実施例6)
α−SiC粉末及びβ−SiC粉末の混合比を、質量比率でα−SiC粉末:β−SiC粉=10:0.5としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6の焼結体を得た。
得られた焼結体について実施例1に準拠して測定を実施した。試験結果について表1に示す。
【0118】
(実施例7)
α−SiC粉末及びβ−SiC粉末の混合比を、質量比率でα−SiC粉末:β−SiC粉=10:3としたこと、および焼結温度を2500℃としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の焼結体を得た。
得られた焼結体について実施例1に準拠して測定を実施した。試験結果について表1に示す。
【0119】
(比較例1)
α−SiC粉末の代わりに0.8μmのβ−SiC粉末を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の焼結体を得た。
得られた焼結体について実施例1に準拠して測定を実施した。試験結果について表1に示す。
【0120】
(比較例2)
α−SiC粉末及びβ−SiC粉末の混合比を、質量比率でα−SiC粉末:β−SiC粉=10:10としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の焼結体を得た。
得られた焼結体について実施例1に準拠して測定を実施した。試験結果について表1に示す。
【0121】
(比較例3)
α−SiC粉末として平均粒子径が5μmのα−SiC粉末を用いたこと、並びにα−SiC粉末及びβ−SiC粉末の混合比を、質量比率でα−SiC粉末:β−SiC粉=10:1としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の焼結体を得た。
得られた焼結体について実施例1に準拠して測定を実施した。試験結果について表1に示す。
【0122】
(比較例4)
α−SiC粉末を用いずβ−SiC粉末のみ用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4の焼結体を得た。
得られた焼結体について実施例1に準拠して測定を実施した。試験結果について表1に示す。
【0123】
(参考例1,2)
耐プラズマ性の参照サンプルとして、シリコンインゴッドから試験片を作製し、耐プラズマ性の比較を行った(参考例1)。
また、SiC−CVDインゴッド(CVD法でSiCを堆積させて得たインゴッド)から試験片を作製し、耐プラズマ性の比較を行った(参考例2)。
【0124】
本実施例においては、下記条件により2種のプラズマに試験片を暴露してエッチングし、エッチングレートを測定することで耐プラズマ性を確認した。
【0125】
(塩素系プラズマ)
高周波電源(出力):70W
高周波電源(周波数):13.56MHz
セルフバイアス(Vdc):−300V
圧力:20mTorr(2.666Pa)
エッチングガス流量(塩素):10sccm
キャリアガス流量(Ar):90sccm
【0126】
(フッ素+酸素系プラズマ)
高周波電源(出力):70W
高周波電源(周波数):13.56MHz
セルフバイアス(Vdc):−300V
圧力:20mTorr(2.666Pa)
エッチングガス流量(CF):10sccm
エッチングガス流量(O):10sccm
キャリアガス流量(Ar):90sccm
【0127】
実施例、比較例の焼結体の組成および焼結温度について、表1に示す。フッ素+酸素系プラズマおよび塩素系プラズマによるエッチングの結果を、下記表2に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
評価の結果、実施例1〜7の焼結体は、フッ素+酸素系プラズマによるエッチングレートが3μm/時未満であったのに対し、比較例1〜4および参考例2(SiC CVD)の焼結体のエッチングレートは、3μm/時以上であった。そのため、実施例1〜7の焼結体は、比較例1〜4および参考例2の焼結体と比較しフッ素+酸素系プラズマに対する耐プラズマ性が高いことが分かった。
【0131】
また、実施例1〜7の試験片は、参考例1(Si)の試験片よりも塩素系プラズマによるエッチングレートが小さいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上より、本発明はフォーカスリングとして耐プラズマ性が高くて有用であることが確かめられた。
【符号の説明】
【0133】
1…静電チャック装置、2…静電チャック部、3…温度調節用ベース部、3A…流路、3b…貫通孔、4…接着層、5…ヒータエレメント、6…接着層、7…絶縁板、8…接着剤層、W…板状試料、10…フォーカスリング、11…載置板、11a…載置面、11b…突起部、12…支持板、13…静電吸着用電極、14…絶縁材層、15…給電用端子、15a…碍子、16…貫通孔、17…給電用端子、20…温度センサー、21…設置孔、22…温度計測部、23…励起部、24…蛍光検出器、25…制御部、28…ピン挿通孔、29…碍子
図1