(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のウレタン樹脂組成物は、ウレタン樹脂(A)、水(B)、及び、特定の成膜助剤(C)を含有するものである。
【0011】
本発明においては、前記特定の成膜助剤(C)を含有することが必須である。特定の成膜助剤(C)を用いることにより、ウレタン樹脂組成物を機械発泡させて後でも、系中での泡保持性が良好となることから、皮膜のクラックを抑制することができ、風合いの優れる皮膜が得られると推察される。
【0012】
前記成膜助剤(C)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(c−1)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(c−2)、及び、ポリグリセリン脂肪酸エステル(c−3)からなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることが必須である。
【0013】
前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル(c−1)としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、親水性が高く、一層優れた泡保持性、耐クラック性および風合いが得られる点から、下記式(1)で示される構造の付加モル数が、30以上であることが好ましく、50以上がより好ましく、80以上が更に好ましい。また、その上限は200以下であることが好ましく、150以下がより好ましく、130以下が更に好ましい。前記(c−1)における下記式(1)で示される構造の付加モル数としては、30〜200の範囲が好ましく、50〜150の範囲がより好ましく、80〜130の範囲が更に好ましい。
【0015】
前記ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(c−2)としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノヤシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステルトリステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステルモノオレイン酸エステル等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、親水性が高く、一層優れた泡保持性、耐クラック性および風合いが得られる点から、式(1)で示される構造の付加モル数が、30以上であることが好ましく、50以上がより好ましく、70以上が更に好ましい。また、その上限は200以下であることが好ましく、150以下がより好ましく、100以下が更に好ましい。前記(c−2)における下記式(1)で示される構造の付加モル数としては、30〜200の範囲が好ましく、50〜150の範囲がより好ましく、70〜100の範囲が更に好ましい。
【0016】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(c−3)としては、例えば、モノカプリン酸ポリグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノミリスチン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、ジオレイン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、ペンタオレイン酸ポリグリセリル等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、親水性が高く、一層優れた泡保持性、耐クラック性および風合いが得られる点から、そのHLB値(Hydrophilic−Lipophilic Balance)が、5以上であることが好ましく、10以上がより好ましく、14以上が更に好ましい。また、上限は25以下であることが好ましく、20以下がより好ましく、18以下が更に好ましい。前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(c−3)のHLB値としては、5〜25の範囲が好ましく、10〜20の範囲がより好ましく、14〜18の範囲が更に好ましい。
【0017】
前記(c−1)〜(c−3)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記成膜助剤(C)の使用量は、後述するウレタン樹脂(A)(=固形分)100質量部に対して、0.05〜50質量部の範囲が好ましく、0.1〜20質量部の範囲が好ましい。
【0018】
前記ウレタン樹脂(A)は、後述する水(B)中に分散し得るものであり、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基等の親水性基を有するウレタン樹脂;乳化剤で強制的に水(B)中に分散したウレタン樹脂などを用いることができる。これらのウレタン樹脂は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性および水分散安定性の点から、親水性基を有するウレタン樹脂を用いることが好ましく、アニオン性基を有するウレタン樹脂がより好ましい。
【0019】
前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、カルボキシル基を有するグリコール化合物、及び、スルホニル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を原料として用いる方法が挙げられる。
【0020】
前記カルボキシル基を有するグリコール化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−吉草酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記スルホニル基を有する化合物としては、例えば、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,6−ジアミノベンゼンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸、N−2−アミノエタン−2−アミノスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン;これらの塩等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料を用いる場合の使用量としては、より一層優れた水分散安定性が得られる点から、ウレタン樹脂の原料の合計質量中0.1〜5質量%の範囲が好ましく、0.5〜4質量%の範囲がより好ましく、1〜3質量%の範囲が更に好ましい。
【0023】
前記カルボキシル基及びスルホニル基は、ウレタン樹脂組成物中で、一部又は全部が塩基性化合物に中和されていてもよい。前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等を含む金属塩基化合物などを用いることができる。
【0024】
前記カチオン性基を有するウレタン樹脂を得る方法としては、例えば、アミノ基を有する化合物の1種又は2種以上を原料として用いる方法が挙げられる。
【0025】
前記アミノ基を有する化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン等の1級及び2級アミノ基を有する化合物;N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等のN−アルキルジアルカノールアミン、N−メチルジアミノエチルアミン、N−エチルジアミノエチルアミン等のN−アルキルジアミノアルキルアミンなどの3級アミノ基を有する化合物などを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記強制的に水(B)中に分散するウレタン樹脂を得る際に用いることができる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン性乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン性乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン性乳化剤などを用いることができる。これらの乳化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記ウレタン樹脂(A)としては、具体的には、例えば、ポリイソシアネート(a1)、ポリオール(a2)、及び、前記した親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料の反応物を用いることができる。
【0028】
前記ポリイソシアネート(a1)としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記ポリイソシアネート(a1)の使用量としては、製造安定性、及び得られる皮膜の機械物性の点から、前記ウレタン樹脂(A)の原料の合計質量中5〜40質量%の範囲が好ましく、10〜30質量%の範囲がより好ましい。
【0030】
前記ポリオール(a2)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記ポリオール(a2)の数平均分子量としては、得られる皮膜の機械的強度の点から、500〜50,000の範囲が好ましく、800〜10,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオール(a2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0032】
前記ポリオール(a2)には、必要に応じて、数平均分子量が500未満(好ましくは50〜450の範囲)の鎖伸長剤(a2−1)を併用してもよい。前記鎖伸長剤(a2−1)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリメチロールプロパン等の水酸基を有する鎖伸長剤;エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、ヒドラジン等のアミノ基を有する鎖伸長剤などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記鎖伸長剤(a2−1)を用いる場合の使用量としては、得られる皮膜の機械的強度の点から、ウレタン樹脂(A)の原料の合計質量中0.5〜5質量%の範囲が好ましく、1〜3質量%の範囲がより好ましい。
【0034】
前記ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(a2)、前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、前記鎖伸長剤(a2−1)、及び、前記ポリイソシアネート(a1)を一括に仕込み反応させる方法が挙げられる。これらの反応は、例えば50〜100℃で3〜10時間行うことが挙げられる。
【0035】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際の、前記ポリオール(a2)が有する水酸基、前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料が有する水酸基及びアミノ基、並びに前記鎖伸長剤(a2−1)が有する水酸基及びアミノ基の合計と、前記ポリイソシアネート(a1)が有するイソシアネート基とのモル比[イソシアネート基/(水酸基及びアミノ基)]としては、0.8〜1.2の範囲が好ましく、0.9〜1.1の範囲がより好ましい。
【0036】
前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、前記ウレタン樹脂(A)に残存するイソシアネート基を失活させることが好ましい。前記イソシアネート基を失活させる場合には、メタノール等の水酸基を1個有するアルコールを用いることが好ましい。前記アルコールの使用量としては、ウレタン樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲が好ましい。
【0037】
また、前記ウレタン樹脂(A)を製造する際には、有機溶剤を用いてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物などを用いることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記有機溶剤は、最終的には蒸留法等によって除去されることが好ましい。
【0038】
前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度としては、後述する機械発泡により発生した泡を安定的に保持し、発泡層(ii)の密度を好ましい範囲にし、優れた風合いを安定的に得ることができる点で、80℃以上であることが好ましく、80〜220℃の範囲がより好ましい。
【0039】
前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度を調整する方法としては、主に後述するウレタン樹脂(A)の原料であるポリオール(a2)の種類、鎖伸長剤(a2−1)の使用量、及びポリイソシアネート(a1)の種類により調整する方法が挙げられる。前記流動開始温度を高く調整する方法としては、例えば、ポリオール(a2)としてポリカーボネートポリオールのように結晶性の高いポリオールを用いること、鎖伸長剤(a2−1)の使用量を多くすること、ポリイソシアネート(a1)として、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートやジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのように結晶性の高いポリイソシアネートを用いることなどが挙げられる。また、前記流動開始温度を低く調整する方法としては、例えば、ポリオール(a2)としてポリオキシプロピレングリコールのように結晶性の低いポリオールを用いること、鎖伸長剤(a2−1)の使用量を少なくすること、ポリイソシアネート(a1)として、トルエンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートのように結晶性の低いポリイソシアネートを用いることなどが挙げられる。よって、これらの方法を適宜選択することによって、前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度を調整することができる。
【0040】
なお、前記ウレタン樹脂(A)の流動開始温度の測定方法としては、例えば、ウレタン樹脂組成物を離型紙に塗布し(塗布厚さ150μm)、熱風乾燥機にて70℃、4分間、次いで120℃で2分間乾燥することで乾燥物を得、この乾燥物を、株式会社島津製作所製フローテスター「CFT−500A」(口径1mm、長さ1mmのダイスを使用、荷重98N、昇温速度3℃/分)を使用して測定する方法が挙げられる。
【0041】
前記水(B)としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、水道水等を用いることができる。これらの中でも、不純物の少ないイオン交換水を用いることが好ましい。前記水(B)の含有量としては、作業性、塗工性、及び保存安定性の点から、ウレタン樹脂組成物中20〜90質量%の範囲が好ましく、40〜80質量%の範囲がより好ましい。
【0042】
前記ウレタン樹脂(A)と前記水(B)との質量比[(A)/(B)]としては、水分散安定性、及び作業性の点から、5/95〜70/30の範囲が好ましく、10/90〜60/40の範囲がより好ましい。
【0043】
本発明のウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(A)、水(B)、及び、成膜助剤(C)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0044】
前記その他の添加剤としては、例えば、界面活性剤、架橋剤、中和剤、増粘剤、ウレタン化触媒、充填剤、顔料、染料、難燃剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記界面活性剤としては、機械発泡により生じた泡を消失から防止し、一層優れた耐クラック性および風合いが得られる点から、炭素原子数が10以上の疎水部を有する界面活性剤(D)を用いることが好ましい。
【0046】
前記界面活性剤(D)としては、例えば、下記式(2)で示される界面活性剤;脂肪酸塩、コハク酸塩、スルホコハク酸塩、オクタデシルスルホコハク酸塩、スルホコハク酸エステル等を用いることができる。これらの界面活性剤は単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0047】
【化2】
(式(2)中、Rは炭素原子数10〜20の直鎖又は分岐状のアルキル基を示し、XはNa、K、NH
4、モルホリン、エタノールアミン、トリエタノールアミンを示す。)
【0048】
前記界面活性剤(D)としては、前記したものの中でも、より一層優れた泡保持性が得られる点から、前記式(2)で示される界面活性剤を用いることが好ましく、炭素原子数が13〜19の直鎖のアルキル基を示すものがより好ましく、ステアリン酸塩を用いることが特に好ましい。
【0049】
前記界面活性剤(D)を用いる場合の使用量としては、より一層優れた泡保持性が得られる点から、前記ウレタン樹脂(A)(=固形分)100質量に対して、0.01〜30質量部の範囲が好ましく、0.1〜20質量部の範囲がより好ましい。
【0050】
前記架橋剤としては、発泡層(ii)の機械的強度の向上等の目的で用いられるものであり、例えば、ポリイソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、メラミン架橋剤、オキサゾリン架橋剤等を用いることができる。これらの架橋剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記架橋剤を用いる場合の使用量としては、例えば、前記ウレタン樹脂(A)(=固形分)100質量部に対して、0.01〜100質量部の範囲が好ましく、0.1〜50質量部の範囲がより好ましく、0.5〜30質量部の範囲が更に好ましい。
【0051】
次に、本発明の積層体について説明する。
【0052】
前記積層体は、少なくとも、基材(i)、及び、前記ウレタン樹脂組成物により形成された発泡層(ii)を有するものである。
【0053】
前記基材(i)としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、グラスファイバー、炭素繊維、それらの混紡繊維等による不織布、織布、編み物等の繊維基材;前記不織布にポリウレタン樹脂等の樹脂を含浸させたもの;前記不織布に更に多孔質層を設けたもの;熱可塑性ウレタン(TPU)等の樹脂基材などを用いることができる。
【0054】
次に、本発明の積層体の製造方法について説明する。
【0055】
前記積層体の製造方法としては、例えば、
(X)前記ウレタン樹脂組成物を気泡させて起泡液を得、この起泡液を離型紙上に塗布し、乾燥させ、前記基材(i)と貼り合わせる方法、
(Y)前記ウレタン樹脂組成物を起泡させ起泡液を得、この起泡液を、離型紙上に作製した表皮層上に塗布し、乾燥させ、前記基材(i)と貼り合わせる方法、
(Z)前記ウレタン樹脂組成物を起泡させ起泡液を得、この起泡液を前記基材(i)上に塗布し、乾燥させ、必要に応じて、その上に、離型紙上に作製した表皮層(iii)を貼り合わせる方法などが挙げられる。
【0056】
前記ウレタン樹脂組成物を起泡させ起泡液を得る方法としては、例えば、手による撹拌、メカニカルミキサー等のミキサーを使用する機械発泡などが挙げられる。これらの中でも、簡便に起泡液が得られる点から、ミキサーを使用する方法が好ましい。ミキサーを使用する場合には、例えば、500〜3,000rpmにて10秒〜10分間撹拌させる方法が挙げられる。この際、風合いの良好な発泡層(ii)が得られる点から、起泡させる前後にて、1.3〜7倍の体積にすることが好ましく、1.2〜2倍の体積にすることがより好ましい。
【0057】
得られた起泡液を基材(i)等に塗布する方法としては、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、アプリケーター等を使用する方法が挙げられる。
【0058】
前記塗布物の乾燥方法としては、例えば、60〜130℃の温度で30秒〜10分間乾燥させる方法が挙げられる。
【0059】
以上の方法により得られる発泡層(ii)の厚さとしては、例えば、5〜300μmである。
【0060】
前記発泡層(ii)の密度としては、より一層優れた風合いが得られる点から、200〜1,000kg/m
3であることが好ましく、400〜800kg/m
3の範囲がより好ましい。なお、前記発泡層(ii)の密度は、10cm四方あたりの積層体の重量から10cm四方あたりの基材(i)の重量を減じた値を、発泡層(ii)の厚さで除した値を示す。
【0061】
前記表皮層(iii)としては、公知の材料により公知の方法で形成することができ、例えば、溶剤系ウレタン樹脂、水系ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。柔軟な風合い、及び耐熱性、耐加水分解性を重視する場合は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いることが好ましい。また、環境対応でのDMF低減化のためには、水系ポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いることがより好ましい。
【0062】
前記表皮層(iii)上には、必要に応じて、耐擦傷性向上やグロス性付与等を目的に表面処理層(iv)を更に設けてもよい。前記表面処理層(iv)としては、公知の材料により公知の方法で形成することができる。
【0063】
以上、本発明のウレタン樹脂組成物は、水を含有するものであり、環境対応型のものである。また、本発明のウレタン樹脂組成物は、機械発泡させても優れた耐クラック性、及び、風合いを有する皮膜を形成することができる。よって、本発明のウレタン樹脂組成物は、合成皮革の材料として好適に使用することができ、特に合成皮革の発泡層として好適に使用することができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0065】
[実施例1]
ポリエーテル系ポリウレタンディスパージョン(DIC株式会社製「ハイドランWLS−120AR」、固形分50質量%、以下「PUD(A−1)」と略記する。)100質量部、増粘剤(Borchers社製「Borch Gel ALA」)2質量部、ステアリン酸アンモニウム3質量部、架橋剤(日清紡ケミカル株式会社製「カルボジライトSV−02」)4質量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(式(1)で示される構造の付加モル数;100)3質量部を加え、メカニカルミキサーを使用して3,000rpmで撹拌し、空気を含ませることで、初期の体積に対し、1.5倍の体積にした起泡液を得た。
これを離型紙に塗布し、80℃で3分間乾燥させることで、厚さ300μmのウレタン発泡層を形成し、これをポリエステル繊維不織布と貼り合わせることで、合成皮革を得た。
【0066】
[実施例2〜7、比較例1]
用いるウレタン樹脂(A)の種類、並びに、成膜助剤(C)の種類及び/又は使用量を表1〜2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして合成皮革を得た。
【0067】
[泡保持性の評価方法]
実施例及び比較例において、起泡液を得てから2時間放置前後の起泡液を、走査電子顕微鏡(SEM)により観察し、泡の形状を確認して以下のように評価した。
「T」:泡のサイズの変化が小さく、泡の体積・密度の変化が少ない。
「F」:泡のサイズが非常に大きくなっている、又は、泡が消失して密度が高くなっている。
【0068】
[耐クラック性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた合成皮革の外観を観察し、クラックの有無を確認した。クラックがないものを「T」、クラックが確認されたものを「F」と評価した。
【0069】
[風合いの評価方法]
実施例及び比較例で得られた合成皮革を手で触り、以下のように評価した。
「T」:柔軟性と弾力がある
「F」:柔軟性が劣り、硬い。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1〜2中の略語は以下のものである。
「PUD(A−2)」:ポリカーボネート系ポリウレタンディスパージョン(DIC株式会社製「ハイドランWLS−110AR」、固形分50質量%)
「PUD(A−3)」:エステル系ポリウレタンディスパージョン(DIC株式会社製「ハイドランADS−110」、固形分50質量%)
【0073】
本発明のウレタン樹脂組成物である実施例1〜7は、優れた泡保持性、耐クラック性、及び、風合いを有する合成皮革が得られることが分かった。
【0074】
一方、比較例1は、成膜助剤(C)を使用しない態様であるが、泡保持性、耐クラック性、風合いいずれも不良であった。