【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)少なくとも一実施形態に係るボイルオフガスの液化システムは、
低温液化ガスの貯留タンク内に発生したボイルオフガスの再液化システムであって、
励磁及び消磁が可能な磁界形成部、磁気作業物質の昇温によって蓄熱される温端部、及び前記磁気作業物質の降温によって蓄冷される冷却部を含み、前記ボイルオフガスを前記冷却部で液化する磁気冷凍機と、
前記温端部に冷媒を循環させて前記温端部の蓄熱を吸収する冷凍機と、
を備える。
【0009】
磁気冷凍機は、磁気モーメントのエントロピが外部磁場によって変化する磁気熱量効果を利用した冷凍機であり、磁性体である磁気作業物質に対する磁場印加で得られる発熱効果(冷媒ガス圧縮方式の冷凍機の気体圧縮過程に相当)と、消磁で得られる磁気作業物質の吸熱効果(冷媒ガス圧縮方式の冷凍機の気体膨脹過程に相当)と、これらの過程の間に存在する2つの等温過程との4過程で構成される。理想的にはカルノーサイクルに近く、高い熱効率が得られる。さらに、圧縮機を使用しないため信頼性も高く、かつコンパクト化が可能になる。
他方、磁気冷凍機は磁気作業物質がキュリー点近傍に限定され作動温度範囲が狭い。そこで、他の冷凍機を組み合わせて使用することで、高効率で広い稼働温度範囲を有る再液化システムを実現できる。
【0010】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記冷凍機は、冷媒を圧縮する圧縮機、前記圧縮機で圧縮された前記冷媒を膨張させる膨張機、及び前記圧縮機で圧縮された前記冷媒と前記膨張機で膨張された前記冷媒とを熱交換する再生熱交換器と、を含んで逆ブレイトンサイクルを構成し、前記膨張機出口の前記冷媒で前記温端部の蓄熱を吸収する冷凍機である。
作動温度範囲が狭い磁気冷凍機に対して、逆ブレイトンサイクルを構成し、稼働温度範囲が比較的広く、室温から磁気冷凍機の稼働温度までの広い稼働温度範囲を有する冷凍機(以下「ブレイトン冷凍機」とも言う。)を組み合わせて使用することで、高効率で広い稼働温度範囲を有る再液化システムを実現できる。
【0011】
(3)一実施形態では、前記(1)又は(2)の構成において、
前記貯留タンクに設けられ前記低温液化ガスを導出するための導出路と、
前記導出路に設けられ前記低温液化ガスを加温するための加温器と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒と前記加温器で加温された前記低温液化ガスとを熱交換する熱交換器と、
を備える。
上記(3)の構成において、貯留タンクに貯留された低温液化ガスの一部を取り出し、気化させて需要先に供給する場合、上記導出路から取り出し、上記加温器及び上記熱交換器で加熱して気化させた後需要先に供給する。
このように、圧縮機から吐出した冷媒の保有熱を利用して低温液化ガスを気化させるので、低温液化ガスの気化に要する熱量を節減できる。
【0012】
(4)一実施形態では、前記(3)の構成において、
前記冷凍機の排熱を前記加温器の熱源とする。
上記(4)の構成によれば、需要先に供給する低温液化ガスの気化熱としてブレイトン冷凍機の排熱を利用することで、再液化システム全体の熱効率を向上できる。
【0013】
(5)一実施形態では、前記(3)又は(4)の構成において、
前記加温器出口の前記低温液化ガスの温度を検出する第1温度計と、
前記第1温度計の検出値に基づいて前記加温器の加熱量を制御する第1制御部と、
を備える。
上記(5)の構成によれば、加温器出口の低温液化ガスの温度を見ながら加温器の加熱量を制御するので、余分な加熱量を節減でき、システム全体の熱効率を向上できる。また、加温器出口の低温液化ガスの温度を制御することで、上記熱交換器に入る液化ガスの温度変動を抑制できるため、低温液化ガスの気化を確実に行うことができる。
【0014】
(6)一実施形態では、前記(1)〜(5)の何れかの構成において、
前記磁気冷凍機の前記温端部と熱交換した後の前記冷媒の温度を検出する第2温度計と、
前記第2温度計の検出値に基づいて前記冷凍機の作動を制御する第2制御部と、
を備える。
上記(6)の構成によれば、磁気冷凍機の排熱を吸収した冷媒の温度に基づいてブレイトン冷凍機の作動を制御し、ブレイトン冷凍機の冷却能力を制御するので、再液化システムを安定稼動できると共に、ブレイトン冷凍機の過剰な稼働を抑えることができ、ブレイトン冷凍機のCOPを向上できる。
【0015】
(7)一実施形態では、前記(1)〜(6)の何れかの構成において、
前記貯留タンクから前記ボイルオフガスを取り出し前記貯留タンクに戻すガス循環路を備え、
前記磁気冷凍機の前記冷却部が前記ガス循環路に設けられる。
上記(7)の構成によれば、上記ガス循環路を設けることで、磁気冷凍機の冷却部はガス循環路の任意の場所に設けることができ、磁気冷凍機の配置の自由度を広げることができる。
【0016】
(8)一実施形態では、前記(7)の構成において、
前記冷凍機は、前記ガス循環路に設けられ、前記再生熱交換器に流入する前の前記冷媒を前記ボイルオフガスで予冷する予冷器を含む。
上記(8)の構成によれば、上記予冷器において、前記再生熱交換器に流入する前の前記冷媒ブレイトン冷凍機の圧縮機から吐出した冷媒をボイルオフガスで予冷することで、ブレイトン冷凍機の冷却能力を向上できる。
【0017】
(9)一実施形態では、前記(7)又は(8)の構成において、
前記磁気冷凍機の前記磁界形成部は磁気発生コイルを含み、
前記ガス循環路に設けられたガス流量計と、
前記ガス流量計の検出値に基づいて前記磁気発生コイルに流す電流量を制御する第3制御部と、
を備える。
上記(9)の構成において、ガス循環路を流れるボイルオフガスの流量を検出し、その検出値に基づいて上記磁気発生コイルに流れる電流量を制御することで、形成される磁界の強さを制御できる。これによって、磁気冷凍機の冷凍能力を制御できるので、ボイルオフガスの液化を確実に行うことができる。
【0018】
(10)一実施形態では、前記(9)の構成において、
前記磁気発生コイルが超低温に保持された超電導コイルである。
上記(10)の構成によれば、磁気発生コイルとして超電導コイルを用いることで、小型で高磁場を形成できる。これによって、磁気作業物質の発熱作用及び吸熱作用を増大できるので、磁気冷凍機の冷却能力を高めることができる。
【0019】
(11)一実施形態では、前記(1)〜(6)の構成において、
前記磁気冷凍機が前記貯留タンクの気相部を形成する隔壁に設けられ、
前記冷却部を前記貯留タンクの前記気相部に配置し、前記気相部のボイルオフガスを液化させる凝縮器として作動させる。
上記(11)の構成によれば、ボイルオフガスを貯留タンクの気相部に設けられた冷却部で液化するので、上記ガス循環路が不要になると共に、貯留タンクの周囲に磁気冷凍機用の設置スペースが不要となり、再液化設備のコンパクト化及び低コスト化が可能になる。
【0020】
(12)一実施形態では、前記(11)の構成において、
複数の前記貯留タンクの各々に前記磁気冷凍機が設けられ、
1個の前記冷凍機で冷却された前記冷媒で前記磁気冷凍機の各々の前記温端部の蓄熱を吸収するものである。
ブレイトン冷凍機は大容量化が容易であり、ブレイトン冷凍機を大容量とすることで、1台のブレイトン冷凍機と複数の磁気冷凍機との組み合わせが可能になる。これによって、1台のブレイトン冷凍機で複数の貯留タンクで発生するボイルオフガスの再液化が可能になる。
なお、冷凍機を構成する膨張機出口の冷媒で温端部の蓄熱を吸収するのが望ましい。