特許第6769873号(P6769873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6769873有機光電子素子用有機アロイ、有機光電子素子および表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6769873
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】有機光電子素子用有機アロイ、有機光電子素子および表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20201005BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20201005BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20201005BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20201005BHJP
   C07D 251/24 20060101ALN20201005BHJP
   C07D 401/14 20060101ALN20201005BHJP
   C07D 209/86 20060101ALN20201005BHJP
【FI】
   H05B33/14 B
   H01L27/32
   G09F9/30 365
   C09K11/06 650
   C09K11/06 645
   !C07D251/24
   !C07D401/14
   !C07D209/86
【請求項の数】17
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2016-547818(P2016-547818)
(86)(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公表番号】特表2016-535942(P2016-535942A)
(43)【公表日】2016年11月17日
(86)【国際出願番号】KR2014005306
(87)【国際公開番号】WO2015053459
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年5月22日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0121569
(32)【優先日】2013年10月11日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソン−ハ
(72)【発明者】
【氏名】カン,キ−ウク
(72)【発明者】
【氏名】カン,ウ−ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハン
(72)【発明者】
【氏名】オ,チェ−チン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,トン−キュ
(72)【発明者】
【氏名】イ,サン−シン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ハン−イル
(72)【発明者】
【氏名】ミン,ソ−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミン−チ
(72)【発明者】
【氏名】ヨ,ウン−ソン
【審査官】 中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−203172(JP,A)
【文献】 特開2011−199174(JP,A)
【文献】 特開2012−195140(JP,A)
【文献】 特開2003−347059(JP,A)
【文献】 特開2002−025770(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/035446(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/116759(WO,A1)
【文献】 特開2003−045650(JP,A)
【文献】 特開2000−223268(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/098927(WO,A1)
【文献】 特表2013−530515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の有機化合物の有機アロイ(organic alloy)であって、
前記有機アロイは、前記少なくとも2種類の有機化合物を前処理により得られた物質であり、
前記少なくとも2種類の有機化合物は、第1有機化合物と第2有機化合物を含み、
10−3torr以下で第1有機化合物と第2有機化合物のエバポレーション温度の差は、20℃以下であり、
前記前処理は、前記第1有機化合物と前記第2有機化合物のエバポレーション温度以上の温度で熱処理して液化または気化した後、冷却して固体化する段階から得られ、
前記有機アロイの発光波長は、前記第1有機化合物、前記第2有機化合物、および前記第1有機化合物と前記第2有機化合物の単純混合物の発光波長と異なる、有機光電子素子用有機アロイであって、
前記第1有機化合物は、下記の化学式1で表される少なくとも1種を含み、
前記第2有機化合物は、下記の化学式2で表される少なくとも1種を含む、有機光電子素子用有機アロイ。
【化1】

(前記化学式1中、
Zは、それぞれ独立して、NまたはCRであり、
Zのうちの少なくとも一つは、Nであり、
〜R10およびRは、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1〜C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C12アリール基またはこれらの組み合わせであり、
前記化学式1でトリフェニレン基に置換された6員環の総個数は、6個以下であり、
Lは、置換もしくは非置換のフェニレン基、置換もしくは非置換のビフェニレン基または置換もしくは非置換のターフェニレン基であり、
n1〜n3は、それぞれ独立して、0または1であり、
n1+n2+n3≧1である。)
【化2】

(前記化学式2中、
およびYは、それぞれ独立して、単一結合、置換もしくは非置換のC6〜C30アリーレン基、置換もしくは非置換のC2〜C30ヘテロアリーレン基またはこれらの組み合わせであり、
ArおよびArは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6〜C30アリール基、置換もしくは非置換のC2〜C30ヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであり、
11〜R13およびR43〜R44は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1〜C20アルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C50アリール基、置換もしくは非置換のC2〜C50ヘテロアリール基またはこれらの組み合わせである。)
【請求項2】
10−3torr以下で前記第1有機化合物と前記第2化合物のエバポレーション温度の差は、0℃〜10℃である、請求項1に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【請求項3】
前記有機アロイの最大発光波長は、前記第1有機化合物と第2有機化合物の単純混合物の最大発光波長より20nm以上移動する、請求項1に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【請求項4】
前記有機アロイの色は、前記第1有機化合物、前記第2有機化合物、および前記第1有機化合物と第2有機化合物の単純混合物の色より長波長領域の色を帯びる、請求項1に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【請求項5】
前記有機アロイの融解温度(Tm)は、第1有機化合物の融解温度、第2有機化合物の融解温度、および第1有機化合物と第2有機化合物の単純混合物の融解温度と異なる、請求項1に記載の有機アロイ。
【請求項6】
前記第1有機化合物と第2有機化合物は、エバポレーション温度で液相または気相をなす、請求項1に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【請求項7】
前記有機アロイは、常温で固体(solid)または粉末(powder)形態である、請求項1に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【請求項8】
前記第1有機化合物と前記第2有機化合物は、1:10〜10:1のモル比で含まれる、請求項1に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【請求項9】
前記第1有機化合物と前記第2有機化合物は、1:1のモル比で含まれる、請求項1に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【請求項10】
前記第1有機化合物は、電子特性が強い化合物であり、前記第2有機化合物は、正孔特性が強い化合物である、請求項1に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【請求項11】
第1有機化合物は、下記の化学式1−Iまたは化学式1−IIで表される、請求項に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【化3】

(前記化学式1−Iまたは1−II中、
Zは、それぞれ独立して、NまたはCRであり、
Zのうちの少なくとも一つは、Nであり、
〜R10およびRは、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1〜C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C12アリール基またはこれらの組み合わせであり、
前記化学式1−Iおよび化学式1−IIでトリフェニレン基に置換された6員環の総個数は、6個以下であり、
Lは、置換もしくは非置換のフェニレン基、置換もしくは非置換のビフェニレン基、または置換もしくは非置換のターフェニレン基であり、
n1〜n3は、それぞれ独立して、0または1であり、
n1+n2+n3≧1である。)
【請求項12】
前記化学式1のLは、単一結合、ねじれ(kink)構造の置換もしくは非置換のフェニレン基、ねじれ構造の置換もしくは非置換のビフェニレン基、またはねじれ構造の置換もしくは非置換のターフェニレン基である、請求項に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【請求項13】
前記化学式1のLは、単一結合であるか、または下記グループ1に羅列された置換もしくは非置換の基から選択された一つである、請求項に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【化4】

(前記グループ1中、
15〜R42は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1〜C10アルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C30アリール基、置換もしくは非置換のC2〜C30ヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換のC6〜C30アリールアミン基、置換もしくは非置換のC6〜C30ヘテロアリールアミン基、置換もしくは非置換のC1〜C30アルコキシ基、ハロゲン基、ハロゲン含有基、シアノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、フェロセニル基またはこれらの組み合わせである。)
【請求項14】
前記化学式2のArおよびArは、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のターフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のフルオレニル基、置換もしくは非置換のピリジル基、置換もしくは非置換のピリミジニル基、置換もしくは非置換のピラジニル基、置換もしくは非置換のトリアジニル基、置換もしくは非置換のトリフェニレン基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基またはこれらの組み合わせである、請求項に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【請求項15】
第1有機化合物は、下記グループAに羅列された化合物のうちの少なくとも一つであり、
第2有機化合物は、下記グループBに羅列された化合物のうちの少なくとも一つである、請求項に記載の有機光電子素子用有機アロイ。
【化5】
【請求項16】
互いに向き合う陽極および陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に位置する少なくとも1層の有機層と、
を含み、
前記有機層は、請求項1〜1のいずれか一項に記載の有機アロイを含む有機光電子素子。
【請求項17】
請求項1に記載の有機光電子素子を含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電子素子用有機アロイ、有機光電子素子および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機光電子素子(organic optoelectric diode)とは、電気エネルギーと光エネルギーとを相互変換することができる素子である。
【0003】
有機光電子素子は、動作原理に応じて大きく2種類に分けることができる。一つは、光エネルギーにより形成されたエキシトン(exciton)が電子と正孔に分離され、前記電子と正孔がそれぞれ異なる電極に伝達されて電気エネルギーを発生する光電素子であり、他の一つは、電極に電圧または電流を供給して電気エネルギーから光エネルギーを発生する発光素子である。
【0004】
有機光電子素子の例としては、有機光電素子、有機発光素子、有機太陽電池および有機感光体ドラム(organic photo conductor drum)などが挙げられる。
【0005】
このうち、有機発光素子(organic light emitting diode、OLED)は、近年、平板表示装置(flat panel display device)の需要増加に伴って大きく注目されている。前記有機発光素子は、有機発光材料に電流を加えて電気エネルギーを光に変換させる素子であって、通常、陽極(anode)と陰極(cathode)との間に有機層が挿入された構造からなる。ここで有機層は、発光層と選択的に補助層を含むことができ、前記補助層は、例えば有機発光素子の効率と安全性を高めるための正孔注入層、正孔輸送層、電子遮断層、電子輸送層、電子注入層および正孔遮断層から選択された少なくとも1層を含むことができる。
【0006】
有機発光素子の性能は、前記有機層の特性により影響を多く受け、その中でも前記有機層に含まれている有機材料により影響を多く受けている。
【0007】
特に、前記有機発光素子が大型の平板表示装置に適用されるためには、正孔および電子の移動性を高めると同時に、電気化学的安全性を高めることができる有機材料の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施形態の目的は、有機光電子素子に適用可能な有機アロイを提供することにある。
【0009】
本発明の他の実施形態の目的は、前記有機アロイを含む有機光電子素子を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の実施形態の目的は、前記有機光電子素子を含む表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも2種類の有機化合物の有機アロイ(organic alloy)であって、前記少なくとも2種類の有機化合物は、第1有機化合物と第2有機化合物を含み、10−3torr以下で第1有機化合物と第2有機化合物のエバポレーション温度の差は、20℃以下であり、前記有機アロイの発光波長は、前記第1有機化合物、前記第2有機化合物、および前記第1有機化合物と前記第2有機化合物の単純混合物の発光波長と異なる有機光電子素子用有機アロイを提供する。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、互いに向き合う陽極および陰極と、前記陽極と前記陰極との間に位置する少なくとも1層の有機層と、を含み、前記有機層は、前記有機アロイを含む有機光電子素子を提供する。
【0013】
本発明のまた他の実施形態によれば、前記有機光電子素子を含む表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、既存の単一有機化合物およびこれらの単純混合物と異なる特性を有する有機アロイを提供し、これを有機光電子素子に適用して高効率および長寿命の有機光電子素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る有機発光素子を示した断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る有機発光素子を示した断面図である。
図3】実施例1による有機アロイと比較例1〜3による有機材料の波長による発光特性を示すグラフである。
図4】実施例2による有機アロイと比較例1、4および5による有機材料の波長に応じた発光特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものに過ぎず、本発明は、これによって制限されず、特許請求の範囲の範疇のみによって定義される。
【0017】
本明細書で「置換」とは、別途の定義がない限り、置換基または化合物のうちの少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、置換もしくは非置換のC1〜C30アミン基、ニトロ基、置換もしくは非置換のC1〜C40シリル基、C1〜C30アルキル基、C1〜C10アルキルシリル基、C3〜C30シクロアルキル基、C2〜C30ヘテロシクロアルキル基、C6〜C30アリール基、C2〜C30ヘテロアリール基、C1〜C20アルコキシ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基などのC1〜C10トリフルオロアルキル基またはシアノ基で置換されたことを意味する。
【0018】
また、前記置換されたハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、置換もしくは非置換のC1〜C20アミン基、ニトロ基、置換もしくは非置換のC3〜C40シリル基、C1〜C30アルキル基、C1〜C10アルキルシリル基、C3〜C30シクロアルキル基、C2〜C30ヘテロシクロアルキル基、C6〜C30アリール基、C2〜C30ヘテロアリール基、C1〜C20アルコキシ基、フルオロ基、トリフルオロメチル基などのC1〜C10トリフルオロアルキル基またはシアノ基のうちの隣接した2個の置換基が融合して環を形成することもできる。例えば、前記置換されたC6〜C30アリール基は、隣接した他の置換されたC6〜C30アリール基と融合して置換もしくは非置換のフルオレン環を形成することができる。
【0019】
本明細書で「ヘテロ」とは、別途の定義がない限り、一つの作用基内にN、O、S、PおよびSiからなる群より選択されるヘテロ原子を1〜3個含有し、残りは炭素であるものを意味する。
【0020】
本明細書で「アルキル(alkyl)基」とは、別途の定義がない限り、脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル基は、いかなる二重結合や三重結合を含んでいない「飽和アルキル(saturated alkyl)基」であってもよい。
【0021】
前記アルキル基は、C1〜C30のアルキル基であってもよい。より具体的に、アルキル基は、C1〜C20アルキル基またはC1〜C10アルキル基であってもよい。例えば、C1〜C4アルキル基は、アルキル鎖に1〜4個の炭素原子が含まれるものを意味し、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルからなる群より選択されるものを示す。
【0022】
前記アルキル基は、具体的な例を挙げると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを意味する。
【0023】
本明細書で「アリール(aryl)基」とは、環状の置換基のすべての元素がp−オービタルを有しており、これらのp−オービタルが共役(conjugation)を形成している置換基を意味し、モノサイクリック、ポリサイクリックまたは融合環ポリサイクリック(つまり、炭素原子の隣接した対を共有する環)作用基を含む。
【0024】
本明細書で「ヘテロアリール(heteroaryl)基」とは、アリール基内にN、O、S、PおよびSiからなる群より選択されるヘテロ原子を1〜3個含有し、残りは炭素であるものを意味する。前記ヘテロアリール基が融合環である場合、それぞれの環ごとに前記ヘテロ原子を1〜3個含むことができる。
【0025】
より具体的に、置換もしくは非置換のC6〜C30アリール基および/または置換もしくは非置換のC2〜C30ヘテロアリール基は、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のフェナントリル基、置換もしくは非置換のナフタセニル基、置換もしくは非置換のピレニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のp−ターフェニル基、置換もしくは非置換のm−ターフェニル基、置換もしくは非置換のクリセニル基、置換もしくは非置換のトリフェニレニル基、置換もしくは非置換のペリレニル基、置換もしくは非置換のインデニル基、置換もしくは非置換のフラニル基、置換もしくは非置換のチオフェニル基、置換もしくは非置換のピロリル基、置換もしくは非置換のピラゾリル基、置換もしくは非置換のイミダゾリル基、置換もしくは非置換のトリアゾリル基、置換もしくは非置換のオキサゾリル基、置換もしくは非置換のチアゾリル基、置換もしくは非置換のオキサジアゾリル基、置換もしくは非置換のチアジアゾリル基、置換もしくは非置換のピリジル基、置換もしくは非置換のピリミジニル基、置換もしくは非置換のピラジニル基、置換もしくは非置換のトリアジニル基、置換もしくは非置換のベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のベンズイミダゾリル基、置換もしくは非置換のインドリル基、置換もしくは非置換のキノリニル基、置換もしくは非置換のイソキノリニル基、置換もしくは非置換のキナゾリニル基、置換もしくは非置換のキノキサリニル基、置換もしくは非置換のナフチリジニル基、置換もしくは非置換のベンズオキサジニル基、置換もしくは非置換のベンズチアジニル基、置換もしくは非置換のアクリジニル基、置換もしくは非置換のフェナジニル基、置換もしくは非置換のフェノチアジニル基、置換もしくは非置換のフェノキサジニル基、置換もしくは非置換のフルオレニル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、置換または非置換のジベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のカルバゾール基またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに制限されない。
【0026】
本明細書で、正孔特性とは、電場(electric field)を加えた時、電子を供与して正孔を形成することができる特性をいい、HOMO準位に応じて伝導特性を有して陽極で形成された正孔の発光層への注入、発光層で形成された正孔の陽極への移動および発光層での移動を容易にする特性を意味する。
【0027】
また電子特性とは、電場を加えた時、電子を受けることができる特性をいい、LUMO準位に応じて伝導特性を有して陰極で形成された電子の発光層への注入、発光層で形成された電子の陰極への移動および発光層での移動を容易にする特性を意味する。
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係る有機光電子素子用有機アロイ(organic alloy)を説明する。
【0029】
前記有機アロイ(organic alloy)は、2以上の単一有機化合物の前処理(pre−treatment)により得られた結果物であり、前記前処理により単一有機化合物の間に化学的相互作用(chemical interaction)を有することができる。前記前処理は、例えば加熱および昇華(sublimation)のような熱処理過程後に冷却させたものであってもよいが、これに限定されない。
【0030】
前記2以上の単一有機化合物が第1有機化合物と第2有機化合物を含む時、前記第1有機化合物と前記第2有機化合物は、前処理のために同一かまたは所定範囲内のエバポレーション温度(evaporation temperature)を有することができる。ここでエバポレーション温度とは、第1有機化合物と第2有機化合物が約10−3Torr以下の高真空で基板上に所定の速度で蒸着可能な温度をいい、例えば、約10−3Torr以下の高真空で約0.5〜2Å/秒の速度で約300nm〜800nmの厚さに熱蒸着(thermal evaporation)する時に測定された供給源の平均温度であってもよい。
【0031】
例えば、約10−3torr以下で第1有機化合物と第2有機化合物のエバポレーション温度の差は、約20℃以下であってもよい。前記範囲内で第1有機化合物と第2有機化合物の気化温度の差は、約0℃〜10℃であってもよく、そのうちでも約0℃〜5℃であってもよい。
【0032】
前記有機アロイ(organic alloy)は、前述のように2以上の単一有機化合物の間に化学的相互作用が存在するため、各単一有機化合物および単一有機化合物の間に化学的相互作用が存在しない単純混合物(mixture)とは異なる固有の特性を有する。ここで単純混合物とは、各単一有機化合物を何ら前処理なしに単に物理的に混合したものをいう。つまり、前記2以上の単一有機化合物が第1有機化合物と第2有機化合物を含む時、第1有機化合物と第2有機化合物の単純混合物は、第1有機化合物、第2有機化合物またはこれらの組み合わせの特性を示す反面、第1有機化合物と第2有機化合物の有機アロイは、第1有機化合物、第2有機化合物およびこれらの単純混合物とは異なる固有の特性を有することができる。
【0033】
一例として、前記有機アロイの発光波長は、前記第1有機化合物、前記第2有機化合物およびこれらの単純混合物の発光波長と異なっていてもよい。
【0034】
前記有機アロイは、第1有機化合物と第2有機化合物の分子間電子移動システム(intermolecular donor−acceptor system)によって、2物質間の高いHOMOエネルギーレベルと低いLUMOエネルギーレベルの間に該当する新たなエネルギーバンドギャップ(energy bandgap)により新たなエネルギー放出および発光が起こることができる。例えば、前記有機アロイのエネルギーバンドギャップは、第1有機化合物のLUMOエネルギーレベルと第2有機化合物のHOMOエネルギーレベルの間、または第2有機化合物のLUMOエネルギーレベルと第1有機化合物のHOMOエネルギーレベルの間であってもよい。反面、第1有機化合物と第2有機化合物の単純混合物は、第1有機化合物のLUMOエネルギーとHOMOエネルギーの間のバンドギャップ、または第2有機化合物のLUMOエネルギーとHOMOエネルギーの間のバンドギャップのうちのいずれか一つのバンドギャップを有することができる。この場合、前記有機アロイは、第1有機化合物、前記第2有機化合物およびこれらの単純混合物より小さいかまたは大きいバンドギャップを有することができる。したがって、前記有機アロイの発光波長は、第1有機化合物、第2有機化合物およびこれらの単純混合物の発光波長と異なっていてもよい。
【0035】
前記有機アロイの最大発光波長(λmax)は、第1有機化合物および第2有機化合物の単純混合物の最大発光波長より約20nm以上移動することができ、例えば約20nm以上長波長側に移動することができる。
【0036】
また、前記有機アロイの色(color)は、第1有機化合物、第2有機化合物およびこれらの単純混合物の色と異なっていてもよい。
【0037】
また、前記有機アロイのガラス転移温度(Tg)は、第1有機化合物、第2有機化合物およびこれらの単純混合物のガラス転移温度(Tg)と異なっていてもよい。また前記有機アロイの結晶化温度(Tc)は、第1有機化合物、第2有機化合物およびこれらの単純混合物の結晶化温度と異なっていてもよい。また、前記有機アロイの融解温度(Tm)は、第1有機化合物、第2有機化合物およびこれらの単純混合物の融解温度と異なっていてもよい。前記ガラス転移温度(Tg)、前記結晶化温度(Tc)および前記融解温度(Tm)は、分子固有の熱力学特性を示すものであり、前記ガラス転移温度(Tg)、前記結晶化温度(Tc)および前記融解温度(Tm)が異なる物質は異なる物質とみることができる。
【0038】
前記有機アロイのガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)および融解温度(Tm)のような熱力学的値は、固有値であってもよく、誤差範囲内で実質的に一定であってもよい。前記誤差範囲は測定条件により異なっていてもよいが、例えば約±5℃、そのうちでも約±2℃であってもよい。これは固有の熱力学的値を有さない第1有機化合物と第2有機化合物の単純混合物と異なる。
【0039】
前記有機アロイは、多様な方法で前処理され得るが、例えば、第1有機化合物と第2有機化合物をエバポレーション温度以上の温度で熱処理して液化または気化する段階および前記熱処理された化合物を冷却して固体化する段階から得られる。第1有機化合物と前記第2有機化合物は、エバポレーション温度で溶融した液相または気化した気相であってもよく、前処理されて得られた有機アロイは、塊(mass)のような固体(solid)または粉末(powder)形態であってもよい。また、一例において、塊のような固体で得られた有機アロイは、ミキサーなどを用いて物理的に粉砕する追加段階をさらに経ることができる。
【0040】
前記有機アロイは、前述のように、前処理により得られた結果物であり、薄膜形成時に一つのソースを用いて供給することができる。これによって、2種以上の物質を別個の供給源(source)でそれぞれ供給する時に要求される工程制御段階が不要であるため、工程を単純化することができる。
【0041】
また、前記有機アロイは、前述のように、前処理により得られた結果物であるため、2種以上の単一有機化合物を別個の供給源でそれぞれ供給したり2種以上の単一有機化合物の単純混合物を単一供給源で供給する場合と比較して蒸着される物質の均一性および一貫性を確保することができる。したがって、連続工程で複数の薄膜を形成する時に実質的に同一の比率の成分を有する薄膜を連続的に生産することができ、これによって、薄膜の再現性および信頼性を高めることができる。
【0042】
前記第1有機化合物と前記第2有機化合物は、前述のように、所定温度で前処理することができるエバポレーション温度を有する物質であれば特に限定されず、例えば電子特性が強い化合物と正孔特性が強い化合物を用いて電子と正孔の移動性を改善することができる。例えば前記第1有機化合物は、電子特性が相対的に強い化合物であってもよく、前記第2有機化合物は、正孔特性が相対的に強い化合物であってもよく、前記電子特性が相対的に強い第1有機化合物と前記正孔特性が相対的に強い第2有機化合物の有機アロイは、バイポーラ(bipolar)特性を有することができる。
【0043】
前記第1有機化合物は、電子特性が相対的に強い化合物であり、例えば下記の化学式1で表される化合物であってもよい。
【0044】
【化1】
【0045】
前記化学式1中、
Zは、それぞれ独立して、NまたはCRであり、
Zのうちの少なくとも一つは、Nであり、
〜R10およびRは、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1〜C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C12アリール基またはこれらの組み合わせであり、
前記化学式1でトリフェニレン基に置換された6員環の総個数は、6個以下であり、
Lは、置換もしくは非置換のフェニレン基、置換もしくは非置換のビフェニレン基または置換もしくは非置換のターフェニレン基であり、
n1〜n3は、それぞれ独立して、0または1であり、n1+n2+n3≧1である。
【0046】
ここで、前記トリフェニレン基に置換された6員環は、前記トリフェニレン基に直接または間接的に連結されたすべての6員環をいい、炭素原子、窒素原子またはこれらの組み合わせからなる6員環を含む。
【0047】
前記第1有機化合物は、トリフェニレン基の結合位置により、例えば下記の化学式1−Iまたは化学式1−IIで表されてもよい。
【0048】
【化2】
【0049】
前記化学式1−Iまたは1−II中、Z、R〜R10、Lおよびn1〜n3の定義は、前述したとおりである。
【0050】
前記第1有機化合物は、トリフェニレン基と少なくとも一つの窒素含有ヘテロアリール基とを含む。
【0051】
前記第1有機化合物は、少なくとも一つの窒素を含有する環を含むことによって電場の印加時に電子を受けやすい構造になり得、これによって、前記第1有機化合物を適用した有機光電子素子の駆動電圧を下げることができる。
【0052】
また、前記第1有機化合物は、正孔を受けやすいトリフェニレン構造と電子を受けやすい窒素含有環の部分を共に含むことによってバイポーラ(bipolar)構造を形成して正孔および電子の流れを適切にバランスを合わせることができ、これによって、前記第1有機化合物を適用した有機光電子素子の効率を改善することができる。
【0053】
前記化学式1で表される第1有機化合物は、アリーレン基および/またはヘテロアリーレン基を中心に少なくとも一つのねじれ(kink)構造を有する。
【0054】
前記ねじれ構造は、アリーレン基および/またはヘテロアリーレン基の2個の連結部分が直線構造をなさない構造をいう。例えばフェニレンの場合、連結部分が直線構造をなさないオルトフェニレン(o−phenylene)とメタフェニレン(m−phenylene)が前記ねじれ構造を有し、連結部分が直線構造をなすパラフェニレン(p−phenylene)は前記ねじれ構造を有さない。
【0055】
前記化学式1において、前記ねじれ構造は、連結基(L)および/またはアリーレン基/ヘテロアリーレン基を中心に形成され得る。
【0056】
例えば、前記化学式1のn1が0である場合、つまり、連結基(L)がない構造ではアリーレン基/ヘテロアリーレン基を中心にねじれ構造を形成することができ、例えば下記の化学式1aまたは1bで表される化合物であってもよい。
【0057】
【化3】
【0058】
前記化学式1aまたは1b中、Z、R〜R10およびLの定義は、前述したとおりである。
【0059】
例えば、前記化学式1のn1が1である場合には、連結基(L)を中心にねじれ構造を形成することができ、例えば、Lは、ねじれ構造の置換もしくは非置換のフェニレン基、ねじれ構造の置換もしくは非置換のビフェニレン基またはねじれ構造の置換もしくは非置換のターフェニレン基であってもよい。前記Lは、例えば、下記グループ1に羅列された置換もしくは非置換の基から選択された一つであってもよい。
【0060】
【化4】
【0061】
前記グループ1中、
15〜R42は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1〜C10アルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C30アリール基、置換もしくは非置換のC2〜C30ヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換のC6〜C30アリールアミン基、置換もしくは非置換のC6〜C30ヘテロアリールアミン基、置換もしくは非置換のC1〜C30アルコキシ基、ハロゲン基、ハロゲン含有基、シアノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、フェロセニル基またはこれらの組み合わせである。
【0062】
前記第1有機化合物は、好ましくは少なくとも2個のねじれ構造を有することができ、例えば2個〜4個のねじれ構造を有することができる。
【0063】
前記第1有機化合物は、前述したねじれ構造を有することによって電荷を適切に区域化(localization)し、共役系の流れを効果的に制御することによって、前記組成物を適用した有機光電子素子の寿命を改善することができる。
【0064】
また、化学式1でR〜R、つまり、トリフェニレン基に置換された置換基に含まれている6員環の総個数を6個以下に制限することによって、蒸着工程時に高い温度により化合物が熱分解される現象を減少させることができる。
【0065】
また、前記第1有機化合物は、前記構造により化合物のスタッキング(stacking)を効果的に防止して工程安定性を低めると同時に蒸着温度を低めることができる。このようなスタッキング防止効果は、前記化学式1の連結基(L)を含む場合、一層高めることができる。
【0066】
前記第1有機化合物は、例えば、下記の化学式1c〜1tのうちのいずれか一つで表されてもよい。
【0067】
【化5】
【0068】
【化6】
【0069】
【化7】
【0070】
前記化学式1c〜1t中、
ZおよびR〜R10は、それぞれ前述したとおりであり、
60〜R77は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1〜C10アルキル基、置換もしくは非置換のC3〜C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2〜C30ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C30アリール基、置換もしくは非置換のC2〜C30ヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換のC6〜C30アリールアミン基、置換もしくは非置換のC6〜C30ヘテロアリールアミン基、置換もしくは非置換のC1〜C30アルコキシ基、ハロゲン基、ハロゲン含有基、シアノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、カルボキシル基、フェロセニル基またはこれらの組み合わせである。
【0071】
前記第1有機化合物は、例えば、下記グループ2に羅列された化合物であってもよいが、これに限定されない。
【0072】
【化8】
【0073】
【化9】
【0074】
【化10】
【0075】
【化11】
【0076】
【化12】
【0077】
【化13】
【0078】
前記第1有機化合物は、1種または2種以上が用いられてもよい。
【0079】
前記第2有機化合物は、正孔特性が相対的に強い化合物であり、例えば下記の化学式2で表される化合物であってもよい。
【0080】
【化14】
【0081】
前記化学式2中、
およびYは、それぞれ独立して、単一結合、置換もしくは非置換のC1〜C20アルキレン基、置換もしくは非置換のC2〜C20アルケニレン基、置換もしくは非置換のC6〜C30アリーレン基、置換もしくは非置換のC2〜C30ヘテロアリーレン基またはこれらの組み合わせであり、
ArおよびArは、置換もしくは非置換のC6〜C30アリール基、置換もしくは非置換のC2〜C30ヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであり、
11〜R13およびR43〜R44は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1〜C20アルキル基、置換もしくは非置換のC6〜C50アリール基、置換もしくは非置換のC2〜C50ヘテロアリール基またはこれらの組み合わせである。
【0082】
前記第2有機化合物は、正孔特性が相対的に強いバイポーラ(bipolar)特性を有する化合物であり、前記第1有機化合物と有機アロイを形成して電荷の移動性および安全性を高めることによって、発光効率および寿命特性を顕著に改善させることができる。
【0083】
前記化学式2のArおよびArは、正孔または電子特性を有する置換基であり、それぞれ独立して、例えば、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のターフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のフルオレニル基、置換もしくは非置換のピリジル基、置換もしくは非置換のピリミジニル基、置換もしくは非置換のピラジニル基、置換もしくは非置換のトリアジニル基、置換または非置換のトリフェニレン基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0084】
前記化学式2のArおよびArのうちの少なくとも一つは、例えば、電子特性を有する置換基であってもよく、例えば、下記の化学式Aで表される置換基であってもよい。
【0085】
【化15】
【0086】
前記化学式A中、
Zは、それぞれ独立して、NまたはCRであり、
A1およびA2は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6〜C30アリール基、置換もしくは非置換のC2〜C30ヘテロアリール基またはこれらの組み合わせであり、
前記Z、A1およびA2のうちの少なくとも一つは、Nを含み、
aおよびbは、それぞれ独立して、0または1である。
【0087】
前記化学式Aで表される置換基は、例えば、下記グループ3に羅列された作用基のうちの一つであってもよい。
【0088】
【化16】
【0089】
また、前記化学式2のArおよびArのうちの少なくとも一つは、例えば、正孔特性を有する置換基であってもよく、例えば、下記グループ4に羅列された置換基であってもよい。
【0090】
【化17】
【0091】
前記化学式2で表される化合物は、例えば、下記グループ5に羅列された化合物から選択されてもよいが、これに限定されない。
【0092】
【化18】
【0093】
【化19】
【0094】
【化20】
【0095】
【化21】
【0096】
【化22】
【0097】
【化23】
【0098】
【化24】
【0099】
前記第2有機化合物は、1種または2種以上が用いられてもよい。
【0100】
前述した第1有機化合物と第2有機化合物は、多様な組み合わせにより多様な有機アロイを準備することができる。例えば、前記第1有機化合物は、下記グループAに羅列された化合物のうちの少なくとも一つであってもよく、前記第2有機化合物は、下記グループBに羅列された化合物のうちの少なくとも一つであってもよいが、これに限定されない。
【0101】
【化25】
【0102】
前述のように、前記第1有機化合物は、電子特性が相対的に強い化合物であり、前記第2有機化合物は、正孔特性が相対的に強い化合物であり、これらが前処理されて有機アロイを形成することによって第1化合物または第2化合物が単独で使用された場合と比較して電子および正孔の移動性を高めて発光効率を顕著に改善させることができる。
【0103】
電子あるいは正孔特性が一方に偏った材料を発光層に導入した素子は、発光層と電子または正孔輸送層の界面でキャリアの再結合が起こりながらエキシトンの形成が相対的に多く起こるようになる。その結果、発光層内の分子励起子と輸送層界面の電荷との相互作用により効率が急激に落ちるロールオフ(roll−off)現象が発生し、発光寿命特性も急激に落ちるようになる。このような問題を解決するために、第1有機化合物と第2有機化合物の有機アロイを導入して電子または正孔輸送層のいずれか一方に発光領域が偏らないように発光層内のキャリアバランスを合わせることができる素子を作製することによって、ロールオフの改善と同時に寿命特性も顕著に改善させることができる。
【0104】
前記有機アロイは、前記第1有機化合物と前記第2有機化合物を例えば約1:10〜10:1のモル比で用いて得ることができる。また一例において、前記有機アロイは、第1有機化合物と第2有機化合物を約1:4〜4:1のモル比で用いて得ることができ、また約1:1のモル比で用いて得ることができる。
【0105】
前記範囲で含まれることによってバイポーラ特性がより効果的に具現されて効率と寿命を同時に改善することができる。
【0106】
前記有機アロイは、前述した第1有機化合物および第2有機化合物を前処理して得ることができ、前述した第1有機化合物および第2有機化合物以外に1種以上の有機化合物をさらに含んで前処理することができる。
【0107】
前記有機アロイは、有機光電子素子用有機材料として用いることができ、例えば、発光材料、吸光材料、電荷輸送材料、電荷注入材料、電荷遮断材料またはこれらの組み合わせで用いることができる。
【0108】
一例として、前記有機アロイは、有機光電子素子用発光材料として用いることができる。この時、発光材料は、前記有機アロイをホスト(host)として用いることができ、少なくとも1種のドーパント(dopant)をさらに含むことができる。前記ドーパントは、赤色、緑色または青色のドーパントであってもよく、例えば燐光ドーパントであってもよい。
【0109】
前記ドーパントは、前記有機アロイに微量混合されて発光を起こす物質であり、一般に三重項状態以上に励起させる多重項励起(multiple excitation)により発光する金属錯体(metal complex)のような物質が用いられてもよい。前記ドーパントは、例えば無機、有機、有無機化合物であってもよく、1種または2種以上含まれてもよい。
【0110】
前記燐光ドーパントの例としては、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pdまたはこれらの組み合わせを含む有機金属化合物が挙げられる。前記燐光ドーパントは、例えば下記の化学式Zで表される化合物を用いることができるが、これに限定されない。
【0111】
【化26】
【0112】
前記化学式Z中、Mは、金属であり、LおよびXは、互いに同一または異なり、Mと錯化合物を形成するリガンドである。
【0113】
前記Mは、例えば、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pdまたはこれらの組み合わせであってもよく、前記LおよびXは、例えば、バイデンテートリガンドであってもよい。
【0114】
前記有機材料は、化学気相蒸着のような乾式成膜法または溶液工程で形成され得る。
【0115】
以下、前述した有機材料を適用した有機光電子素子を説明する。
【0116】
前記有機光電子素子は、電気エネルギーと光エネルギーを相互変換することができる素子であれば特に限定されず、例えば、有機光電素子、有機発光素子、有機太陽電池および有機感光体ドラムなどが挙げられる。
【0117】
前記有機光電子素子は、互いに向き合う陽極および陰極と、前記陽極と前記陰極との間に位置する少なくとも1層の有機層とを含むことができ、前記有機層は、前述した有機材料を含むことができる。
【0118】
ここでは、有機光電子素子の一例である有機発光素子を図面を参照して説明する。
【0119】
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る有機発光素子を示す断面図である。
【0120】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態に係る有機光電子素子100は、互いに向き合う陽極120および陰極110と、陽極120と陰極110との間に位置する有機層105とを含む。
【0121】
陽極120は、例えば、正孔注入が円滑に行われるように仕事関数が高い導電体で作られてもよく、例えば、金属、金属酸化物および/または導電性高分子で作られてもよい。陽極120は、例えば、ニッケル、白金、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金が挙げられ、亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物が挙げられ、ZnOとAlまたはSnOとSbのような金属と酸化物の組み合わせが挙げられ、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3,4−(エチレン−1,2−ジオキシ)チオフェン)(polyehtylenedioxythiophene:PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などが挙げられるが、これに限定されない。
【0122】
陰極110は、例えば、電子注入が円滑に行われるように仕事関数が低い導電体で作られてもよく、例えば、金属、金属酸化物および/または導電性高分子で作られてもよい。陰極110は、例えば、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、錫、鉛、セシウム、バリウムなどのような金属またはこれらの合金が挙げられ、LiF/Al、LiO/Al、LiF/Ca、LiF/AlおよびBaF/Caのような多層構造物質が挙げられるが、これに限定されない。
【0123】
有機層105は、前述した有機材料を含む発光層130を含む。
【0124】
発光層130は、例えば、前述した有機材料を含むことができる。
【0125】
図2を参照すれば、有機発光素子200は、発光層130以外に正孔補助層140をさらに含む。正孔補助層140は、陽極120と発光層130との間の正孔注入および/または正孔移動性を一層高め、電子を遮断することができる。正孔補助層140は、例えば、正孔輸送層、正孔注入層および/または電子遮断層であってもよく、少なくとも1層を含むことができる。
【0126】
また、本発明の一実施形態では、図1または図2で有機薄膜層105として追加的に電子輸送層、電子注入層、正孔注入層などをさらに含む有機発光素子であってもよい。
【0127】
有機発光素子100、200は、基板上に陽極または陰極を形成した後、真空蒸着法(evaporation)、スパッタリング(sputtering)、プラズマメッキおよびイオンメッキのような乾式成膜法などで有機層を形成した後、その上に陰極または陽極を形成して製造することができる。
【0128】
前述した有機発光素子は、有機発光表示装置に適用可能である。
【実施例】
【0129】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載された実施例は、本発明を具体的に例示したり説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【0130】
(単一有機化合物の準備)
第1有機化合物の合成:化合物A−33
合成例1:中間体I−2の合成
【0131】
【化27】
【0132】
窒素環境で2−ブロモトリフェニレン(2−bromotriphenylene)32.7g(107mmol)をテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)0.3Lに溶かした後、ここに3−クロロフェニルボロン酸(3−chlorophenyl boronic acid)(20g、128mmol)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(tetrakis(triphenylphosphine)palladium)1.23g(1.07mmol)を入れて攪拌した。水に飽和された炭酸カリウム36.8g(267mmol)を入れて80℃で24時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れてジクロロメタン(dichloromethane、DCM)で抽出した後、無水MgSOで水分を除去した後、フィルターし減圧濃縮した。このように得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離精製して前記化合物I−2を22.6g(63%)を得た。
【0133】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C2415Cl:338.0862,found:338.
Elemental Analysis:C,85%;H,5%
合成例2:中間体I−3の合成
【0134】
【化28】
【0135】
窒素環境で前記化合物I−2 22.6g(66.7mmol)をジメチルホルムアミド(dimethylforamide、DMF)0.3Lに溶かした後、ここにビス(ピナコラト)ジボロン(bis(pinacolato)diboron)25.4g(100mmol)と(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン)ジクロロパラジウム(II)((1,1’−bis(diphenylphosphine)ferrocene)dichloropalladium(II))0.54g(0.67mmol)、そして酢酸カリウム(potassium acetate)16.4g(167mmol)を入れて150℃で48時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて混合物をフィルターした後、真空オーブンで乾燥した。このように得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離精製して化合物I−3を18.6g(65%)を得た。
【0136】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C3027BO:430.2104,found:430.
Elemental Analysis:C,84%;H,6%
合成例3:中間体I−6の合成
【0137】
【化29】
【0138】
窒素環境で前記化合物I−3 50g(116mmol)をテトラヒドロフラン(THF)0.5Lに溶かした後、ここに1−ブロモ−3−ヨードベンゼン(1−bromo−3−iodobenzene)39.4g(139mmol)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.34g(1.16mmol)を入れて攪拌した。水に飽和された炭酸カリウム40.1g(290mmol)を入れて80℃で12時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れてジクロロメタン(DCM)で抽出した後、無水MgSOで水分を除去した後、フィルターし減圧濃縮した。このように得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離精製して前記化合物I−6を42.6g(80%)を得た。
【0139】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C3019Br:458.0670,found:458.
Elemental Analysis:C,78%;H,4%
合成例4:中間体I−7の合成
【0140】
【化30】
【0141】
窒素環境で前記化合物I−6 40g(87.1mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)0.3Lに溶かした後、ここにビス(ピナコラト)ジボロン26.5g(104mmol)と(1,1’−ビス(ジフェニルホスフィン)フェロセン)ジクロロパラジウム(II)0.71g(0.87mmol)、そして酢酸カリウム21.4g(218mmol)を入れて150℃で26時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れて混合物をフィルターした後、真空オーブンで乾燥した。このように得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離精製して前記化合物I−7を34g(77%)を得た。
【0142】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C3631BO:506.2417,found:506.
Elemental Analysis:C,85%;H,6%
合成例5:化合物A−33の合成
【0143】
【化31】
【0144】
窒素環境で前記化合物1−7 20g(39.5mmol)をテトラヒドロフラン(THF)0.2Lに溶かした後、ここに2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(2−chloro−4,6−diphenyl−1,3,5−triazine)10.6g(39.5mmol)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.46g(0.4mmol)を入れて攪拌した。水に飽和された炭酸カリウム13.6g(98.8mmol)を入れて80℃で23時間加熱して還流させた。反応完了後、反応液に水を入れてジクロロメタン(DCM)で抽出した後、無水MgSOで水分を除去した後、フィルターし減圧濃縮した。このように得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで分離精製して前記化合物A−33(17.9g、74%)を得た。
【0145】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C4529:611.2361,found:611.
Elemental Analysis:C,88%;H,5%
前記化合物A−33のエバポレーション温度は、10−3Torr以下で約226±10℃である。
【0146】
第2有機化合物の合成例1:化合物B−10
【0147】
【化32】
【0148】
第1段階:化合物Jの合成
N−フェニルカルバゾール−3−ボロン酸ピナコラト26.96g(81.4mmol)、3−ブロモカルバゾール23.96g(97.36mmol)およびテトラヒドロフラン230mLと2M−炭酸カリウム水溶液100mlを混合した後、窒素気流下で12時間加熱還流した。反応終結後、反応物にメタノールを注いでできる固形物をフィルターした後、固形物を再びクロロベンゼンに溶かして活性炭と無水硫酸マグネシウムを入れて攪拌する。溶液をフィルターした後、クロロベンゼンとメタノールを用いて再結晶して化合物Jを22.6g(収率:68%)を得た。
【0149】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C3020:408.16,found:408
Elemental Analysis:C,88%;H,5%
第2段階:化合物B−10の合成
化合物Jで表される化合物22.42g(54.88mmol)、2−ブロモ−4,6−ジフェニルピリジン20.43g(65.85mmol)およびtert−ブトキシナトリウム7.92g(82.32mmol)をトルエン400mlに溶かした後、パラジウムジベンジリデンアミン1.65g(1.65mmol)とtert−ブチルホスフィン(P(t−Bu))1.78g(4.39mmol)を滴下する。反応溶液を窒素気流下で12時間110℃に加熱して攪拌した。反応終結後、反応物にメタノールを注いでできる固形物をフィルターした後、固形物を再びクロロベンゼンに溶かして活性炭と無水硫酸マグネシウムを入れて攪拌する。溶液をフィルターした後、クロロベンゼンとメタノールを用いて再結晶して化合物B−10を28.10g(収率:80%)を得た。
【0150】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C4731:637.25,found:637
Elemental Analysis:C,89%;H,5%
前記化合物B−10のエバポレーション温度は、10−3Torr以下で約225±10℃である。
【0151】
第2有機化合物の合成例2:化合物B−43
【0152】
【化33】
【0153】
ビフェニルカルバゾリルブロミド(biphenylcarbazolyl bromide)12.33g(30.95mmol)、ビフェニルカルバゾリルボロン酸(biphenylcarbazolyl boronic acid)12.37g(34.05mmol)および炭酸カリウム12.83g(92.86mmol)、テトラキス−(トライフェニルホスフィン)パラジウム(0)1.07g(0.93mmmol)をトルエン120ml、蒸溜水50mlに懸濁させた後、12時間還流攪拌した。次に、ジクロロメタンと蒸溜水で抽出し、有機層をシリカゲルフィルターする。次に、有機溶液を除去し、生成物固体をジクロロメタンとn−ヘキサンで再結晶して化合物B−43を18.7g(収率:92%)を得た。
【0154】
HRMS(70eV,EI+):m/z calcd for C8H32:636.26,found:636
Elemental Analysis:C,91%;H,5%
前記化合物B−43のエバポレーション温度は、10−3Torr以下で約232±10℃である。
【0155】
(実施例:有機アロイの準備)
実施例1:化合物A−33と化合物B−10の有機アロイ
10−3Torr以下の真空チャンバーに化合物A−33と化合物B−10を1:1のモル比で入れて真空チャンバーの温度を上げて化合物A−33と化合物B−10を溶かした後、常温(25℃)で冷却させて固体化させた後、生成物をミキサーで粉砕して粉末形態の有機アロイを得た。
【0156】
実施例2:化合物A−33と化合物B−43の有機アロイ
10−3Torr以下の真空チャンバーに化合物A−33と化合物B−43を1:1のモル比で入れて真空チャンバーの温度を上げて化合物A−33と化合物B−43を溶かした後、常温(25℃)で冷却させて固体化させた後、生成物をミキサーで粉砕して粉末形態の有機アロイを得た。
【0157】
(比較例:単一化合物および単純混合物の準備)
比較例1:単一化合物A−33
合成例5で製造した化合物A−33を常温(25℃)でミキサーで粉砕して粉末形態の化合物A−33を準備した。
【0158】
比較例2:単一化合物B−10
第2有機化合物の合成例1で製造した化合物B−10を常温(25℃)でミキサーで粉砕して粉末形態の化合物B−10を準備した。
【0159】
比較例3:化合物A−33および化合物B−10の単純混合物
合成例5で製造した化合物A−33と第2有機化合物の合成例1で製造した化合物B−10を1:1モル比で入れてミキサーで物理的に粉砕して単純混合物を準備した。
【0160】
比較例4:単一化合物B−43
第2有機化合物の合成例2で製造した化合物B−43を常温(25℃)でミキサーで粉砕して粉末形態の化合物B−43を準備した。
【0161】
比較例5:化合物A−33および化合物B−43の単純混合物
常温(25℃)で合成例5で製造した化合物A−33と第2有機化合物の合成例1で製造した化合物B−43を1:1のモル比で入れてミキサーで物理的に粉砕して単純混合物を準備した。
【0162】
(評価)
評価1
実施例1、2による有機アロイと比較例1〜5による有機材料の光学的特性を評価した。光学的特性は、実施例1、2による有機アロイと比較例1〜5による有機材料の粉末をフォトルミネセンス(photoluminescence、PL)スペクトルを測定し、蛍光分光光度計(Fluorescence spectrophotometer、F−4500、Hitachi社製)を用いた。パウダーPLホルダーは、固体試料ホルダー(solid sample holder)を650−0161(Hitachi社製)を用い、サンプルは粉末状態であった。
【0163】
その結果は、図3図4と下記表1、表2を参照して説明する。
【0164】
図3は、実施例1による有機アロイと比較例1〜3による有機材料の波長に応じた発光特性を示すグラフであり、図4は、実施例2による有機アロイと比較例1、4および5による有機材料の波長に応じた発光特性を示すグラフである。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
図3図4と下記表1、表2を参照すれば、実施例1による有機アロイは比較例1〜3による有機材料と異なる光学特性を示し、実施例2による有機アロイは比較例1、4、5による有機材料と異なる光学特性を示すことを確認できる。
【0168】
特に比較例3による有機材料、つまり、第1有機化合物(A−33)と第2有機化合物(B−10)の単純混合物は、第1有機化合物(A−33)、第2有機化合物(B−10)またはこれらの組み合わせの光学特性を示すが、実施例1による有機アロイは第1有機化合物(A−33)および第2有機化合物(B−10)と異なる固有の光学特性を示し、例えば、最大発光波長が約20nm以上の長波長側に移動することを確認できる。
【0169】
同様に、比較例5による有機材料、つまり、第1有機化合物(A−33)と第2有機化合物(B−43)の単純混合物は、第1有機化合物(A−33)、第2有機化合物(B−43)またはこれらの組み合わせの光学特性を示すが、実施例2による有機アロイは第1有機化合物(A−33)と第2有機化合物(B−43)と異なる固有の光学特性を示し、例えば、最大発光波長が約20nm以上の長波長側に移動することを確認できる。
【0170】
また、比較例3による有機材料、つまり、第1有機化合物(A−33)と第2有機化合物(B−10)の単純混合物は、第1有機化合物(A−33)または第2有機化合物(B−10)と実質的に類似するエネルギーレベルを有するが、実施例1による有機アロイは第1有機化合物(A−33)と第2有機化合物(B−10)と異なる固有のエネルギーレベルを有することを確認できる。
【0171】
同様に、比較例5による有機材料、つまり、第1有機化合物(A−33)と第2有機化合物(B−43)の単純混合物は、第1有機化合物(A−33)または第2有機化合物(B−43)と実質的に類似するエネルギーレベルを有するが、実施例2による有機アロイは第1有機化合物(A−33)と第2有機化合物(B−43)と異なる固有のエネルギーレベルを有することを確認できる。
【0172】
評価2
実施例1、2による有機アロイと比較例1〜5による有機材料の熱力学的特性を評価した。熱力学的特性は、実施例1、2による有機アロイと比較例1〜5による有機材料を示差走査熱量測定法(differential scanning calorimetry)を通じて確認し、DSC1(Mettler−Toledo社製)を用いた。
【0173】
その結果は、表3および表4に示した。
【0174】
【表3】
【0175】
【表4】
【0176】
表3、表4を参照すれば、実施例1による有機アロイは比較例1〜3による有機材料と異なる熱力学特性を示し、実施例2による有機アロイは比較例1、4、5による有機材料と異なる熱力学特性を示すことを確認できる。
【0177】
特に比較例3による有機材料、つまり、第1有機化合物(A−33)と第2有機化合物(B−10)の単純混合物は、比較例2による有機材料、つまり、第2有機化合物(B−10)とほとんど類似する熱力学特性を示すが、実施例1による有機アロイは第1有機化合物(A−33)、第2有機化合物(B−10)および第1有機化合物(A−33)と第2有機化合物(B−10)の単純混合物と異なる熱力学特性を示すことを確認できる。
【0178】
同様に、比較例5による有機材料、つまり、第1有機化合物(A−33)と第2有機化合物(B−43)の単純混合物は、比較例4による有機材料、つまり、第2有機化合物(B−43)と実質的に類似する熱力学特性を示すが、実施例2による有機アロイは第1有機化合物(A−33)、第2有機化合物(B−43)および第1有機化合物(A−33)と第2有機化合物(B−43)の単純混合物と異なる熱力学特性を示すことを確認できる。
【0179】
評価3
実施例1、2による有機アロイと比較例3、5による有機材料の熱力学的特性の一貫性を評価した。熱力学的特性の一貫性は、評価2による熱力学的特性を複数回測定して結果値の一定性として評価した。
【0180】
その結果は、表5、表6を参照して説明する。
【0181】
【表5】
【0182】
【表6】
【0183】
表5および表6を参照すれば、実施例1、2による有機アロイは複数回測定する間、融解温度が誤差範囲である±5℃以内、そのうちでも±2℃以内でほとんど一定に示される反面、比較例3、5による有機材料は、測定する度に融解温度が顕著に異なって示され、例えば約20℃内外まで差が示されることを確認できる。これによって、実施例1、2による有機アロイが単一有機化合物または単純混合物より熱力学的特性の一貫性が高いことを確認できる。
【0184】
評価4
実施例1、2の有機アロイの連続工程における経時変化を評価した。
【0185】
連続工程における経時変化は、実施例1、2による有機アロイと比較例3、5による有機材料をガラス基板上に連続的に蒸着して複数の薄膜を形成した後、各薄膜で単一有機化合物の比率が一定に維持されるか否かにより確認し、高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography、HPLC)分析方法を用いた。連続工程における経時変化は、連続的な工程で薄膜を構成する成分の比率がどれくらい一定に維持されるか否かを評価することができる。
【0186】
その結果は、表7および表8に示した。
【0187】
下記表7で実施例1による有機アロイを3個のサンプルで準備した後、各サンプルごとに3回ずつ連続工程で薄膜を形成したことをそれぞれ実施例1−1,1−2、1−3で表記し、下記表8で実施例2による有機アロイを2個のサンプルで準備した後、各サンプルごとに3回および5回ずつ連続工程で薄膜を形成したことをそれぞれ実施例2−1および2−2で表記した。
【0188】
【表7】
【0189】
【表8】
【0190】
表7および表8を参照すれば、実施例1、2による有機アロイからなる薄膜は、比較例3、5による有機材料からなる薄膜とそれぞれ比較して単一有機化合物の比率、つまり、A−33/B−10またはA−33/B−43がほとんど一定に維持されることを確認できる。これによって、有機アロイを用いて薄膜を形成する場合が単純混合物を用いて薄膜を形成した場合と比較して連続工程中に再現性あるように薄膜が形成され得ることが分かる。
【0191】
(有機発光素子の作製)
実施例3
ITO(Indium tin oxide)が1500Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を蒸溜水超音波で洗浄した。蒸溜水洗浄が終わると、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄し、乾燥させた後、プラズマ洗浄機に移送させた後、酸素プラズマを用いて前記基板を10分間洗浄した後、真空蒸着機で基板を移送した。このように準備されたITO透明電極を陽極として用いてITO基板上部にN4,N4−ジフェニル−N4,N4’−ビス(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)ビフェニル−4,4’−ジアミン(N4,N4’−diphenyl−N4,N4’−bis(9−phenyl−9H−carbazol−3−yl)biphenyl−4,4’−diamine)(化合物A)を真空蒸着して700Å厚さの正孔注入層を形成し、前記注入層上部に1,4,5,8,9,11−ヘキサアザトリフェニレン−ヘキサカルボニトリル(1,4,5,8,9,11−hexaazatriphenylene−hexacarbonitrile、HAT−CN)(化合物B)を50Åの厚さに蒸着した後、N−(ビフェニル−4−イル)−9,9−ジメチル−N−(4−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)フェニル)−9H−フルオレン−2−アミン(N−(biphenyl−4−yl)−9,9−dimethyl−N−(4−(9−phenyl−9H−carbazol−3−yl)phenyl)−9H−fluoren−2−amine)(化合物C)を1020Åの厚さに蒸着して正孔輸送層を形成した。正孔輸送層上部に前記実施例1による有機アロイをホストとして用い、ドーパントとしてトリス(4−メチル−2,5−ジフェニルピリジン)イリジウム(III)(化合物D)を10wt%にドーピングして真空蒸着で400Å厚さの発光層を形成した。
【0192】
次に、前記発光層上部に8−(4−(4−(ナフタレン−2−イル)−6−(ナフタレン−3−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル)キノリン(8−(4−(4−(naphthalen−2−yl)−6−(naphthalen−3−yl)−1,3,5−triazin−2−yl)phenyl)quinoline)(化合物E)と8−ヒドロキシキノリノレートリチウム(8−hydroxyquinolinolate)lithium、Liq)を同時に1:1比率で真空蒸着して300Åの厚さの電子輸送層を形成し、前記電子輸送層上部に15ÅのLiqと1200ÅのAlを順次に真空蒸着して陰極を形成することによって有機発光素子を作製した。
【0193】
前記有機発光素子は、5層の有機薄膜層を有する構造からなっており、具体的に以下の構造で作製した。
【0194】
ITO/A(700Å)/B(50Å)/C(1020Å)/EML[有機アロイ:D=X:10%](400Å)/E:Liq(300Å)/Liq(15Å)/Al(1200Å)
(X=重量比)
実施例4
実施例1による有機アロイの代わりに実施例2による有機アロイを用いたことを除き、実施例3と同様な方法で有機発光素子を作製した。
【0195】
比較例6
実施例1による有機アロイの代わりに比較例1による有機材料、つまり、化合物A−33単独ホストを用いたことを除き、実施例3と同様な方法で有機発光素子を作製した。
【0196】
比較例7
実施例1による有機アロイの代わりに比較例2による有機材料、つまり、化合物B−10単独ホストを用いたことを除き、実施例3と同様な方法で有機発光素子を作製した。
【0197】
比較例8
実施例1による有機アロイの代わりに比較例3による有機材料、つまり、化合物A−33および化合物B−10の単純混合物を用いたことを除き、実施例3と同様な方法で有機発光素子を作製した。
【0198】
比較例9
実施例1による有機アロイの代わりに比較例4による有機材料、つまり、化合物B−43単独ホストを用いたことを除き、実施例3と同様な方法で有機発光素子を作製した。
【0199】
比較例10
実施例1による有機アロイの代わりに比較例5による有機材料、つまり、化合物A−33と化合物B−43の単純混合物を用いたことを除き、実施例3と同様な方法で有機発光素子を作製した。
【0200】
評価4
実施例3、4と比較例6〜10による有機発光素子の発光効率および寿命特性を評価した。
【0201】
具体的な測定方法は下記のとおりであり、その結果は表9および表10に示した。
【0202】
(1)電圧変化に応じた電流密度の変化測定
製造された有機発光素子に対して、電圧を0Vから10Vまで上昇させながら電流−電圧計(Keithley 2400)を用いて単位素子に流れる電流値を測定し、測定された電流値を面積で割って結果を得た。
【0203】
(2)電圧変化に応じた輝度の変化測定
製造された有機発光素子に対して、電圧を0Vから10Vまで上昇させながら輝度計(Minolta Cs−1000A)を用いてその時の輝度を測定して結果を得た。
【0204】
(3)発光効率の測定
前記(1)および(2)から測定された輝度と電流密度および電圧を用いて同一の電流密度(10mA/cm)の電流効率(cd/A)を計算した。
【0205】
(4)寿命の測定
輝度(cd/m)を6000cd/mに維持し、電流効率(cd/A)が97%に減少する時間を測定して結果を得た
【0206】
【表9】
【0207】
【表10】
【0208】
表9および表10を参照すれば、実施例3による有機発光素子は、比較例6〜8による有機発光素子と比較して発光効率および寿命特性が同等か、または改善されたことを確認でき、実施例4による有機発光素子は、比較例6、9および10による有機発光素子と比較して発光効率および寿命特性が同等か、または改善されたことを確認できる。これによって、有機アロイを用いた有機発光素子は、単一有機化合物またはこれらの単純混合物を用いた有機発光素子と比較して同等か、またはそれより改善された性能を有することを確認できる。
【0209】
本発明は、前記実施例に限定されず、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に実施可能であることを理解するはずである。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないことを理解しなければならない。
【符号の説明】
【0210】
100、200:有機発光素子
105:有機層
110:陰極
120:陽極
130:発光層
140:正孔補助層
図1
図2
図3
図4