【実施例】
【0065】
[実施例1]
Ra(算術平均粗さ)で230nm程度の粗さ(P-Vでは1.7μm程度)を有する直径6インチのLT基板を圧電単結晶基板として用意した。このLT基板上に、シランと酸素ガスを原料ガスとして、プラズマCVD法によりSiO
2膜を10μm程度堆積することにより形成した。このSiO
2膜を400℃程度の熱処理を施し、研磨を行い鏡面化し前記SiO
2膜を膜厚約2μmに仕上げた。
【0066】
また、500nmの熱酸化膜を成長した直径6インチのSi基板を支持基板として用意した。その後、前述のSiO
2膜を付けたLT基板と、熱酸化膜を成長させたSi基板との両方に、プラズマ表面活性化を施した。そして、両基板を貼り合わせ、120℃の熱処理を加え、然る後にLTを研削・研磨で20μm程度に薄化した。このようにして仕上がった複合基板の断面顕微鏡写真を
図8に示す。
【0067】
この複合基板のウェーハを2mm角にダイシングし、200℃のホットプレートと金属製の冷却ステージ台を往復させる事で(ホットプレートと冷却ステージ台それぞれにおいて30秒保持)熱耐性試験を調査した。100回往復まで試みたが、剥離などは観察されなかった。
【0068】
なお、同様の実験を鏡面のLT基板の表面に酸化膜を同条件で形成して行ったが、耐熱性に関しては全く同様の結果となった。スプリアスが問題にならないアプリケーションの場合は鏡面状に仕上げたLT基板に酸化膜を形成して同様の手法と取る事で本発明はそのまま適応可能であることが示された。
【0069】
[比較例1]
実施例1と同様の実験を、実施例1と同様にSiO
2膜を設けたLT基板と熱酸化を行わないSi基板とを用いて行った。実施例1と同様の熱耐性試験の結果、5往復目で周辺に剥離が観察された。実施例1と比較例1との対比により、プラズマCVD法によりSiO
2膜を設けたLT基板と熱酸化膜を成長させたSi基板とを貼り合わせることにより、熱酸化膜を成長させずにSi基板を貼り合わせる場合と比べ剥離を抑制できることが明らかとなった。
【0070】
[実施例2]
Raで230nm程度の粗さ(P-Vでは1.7μm程度)を有する直径6インチのLT基板を用意した。このLT基板上に有機ケイ素化合物溶液をスピンコートし、350℃で加熱し、この工程を複数回繰り返す事で5μm程度のSiO
2層を得た。ここで用いた有機ケイ素化合物溶液は、パーヒドロポリシラザン(溶媒はジブチルエーテル)とメチルトリメトキシシラン(溶媒はプロピレングリコールモノエチルエーテル)の2種類である。
【0071】
このSiO
2膜を400℃程度の熱処理の後に研磨を行い鏡面化した。また、500nmの熱酸化膜を成長した直径6インチのSi基板を用意した。両基板にプラズマ表面活性化を施した。そして、両基板を貼り合わせ、120℃の熱処理を加え、然る後にLTを研削・研磨で20μmに薄化して複合基板を得た。
【0072】
この複合基板のウェーハを2mm角にダイシングし、200℃のホットプレートと金属製の冷却ステージ台を往復させる事で(ホットプレートと冷却ステージ台それぞれにおいて30秒保持)熱耐性試験を調査した。100回往復まで試みたが、剥離などは観察されなかった。
【0073】
[比較例2]
実施例2と同様の実験を、実施例2と同様にSiO
2膜を設けたLT基板と熱酸化を行わないSi基板とを用いて行った。実施例2と同様の熱耐性試験の結果、7往復目で周辺に剥離が観察された。実施例2と比較例2との対比により、有機ケイ素化合物溶液をスピンコートして加熱することでSiO
2膜を設けたLT基板と熱酸化膜を成長させたSi基板とを貼り合わせることにより、熱酸化膜を成長させずにSi基板を貼り合わせる場合と比べ剥離を抑制できることが明らかとなった。
【0074】
[実施例3]
Raで230nm程度の粗さ(P-Vでは1.7μm程度)を有する直径6インチのLT基板を用意した。このLT基板上にSiO
2膜をPVD法(ここではマグネトロンスパッタ法)で10μm程度成膜した。このSiO
2膜を400℃程度の熱処理の後に研磨を行い鏡面化した。また、500nmの熱酸化膜を成長した直径6インチのSi基板を用意した。両基板にプラズマ表面活性化を施した。そして両基板を貼り合わせ、120℃の熱処理を加え、然る後にLTを研削・研磨で20μmに薄化して複合基板を得た。
【0075】
この複合基板のウェーハを2mm角にダイシングし、200℃のホットプレートと金属製の冷却ステージ台を往復させる事で(ホットプレートと冷却ステージ台それぞれにおいて30秒保持)熱耐性試験を調査した。100回往復まで試みたが、剥離などは観察されなかった。
【0076】
[比較例3]
実施例3と同様の実験を、実施例3と同様にSiO
2膜を設けたLT基板と熱酸化を行わないSi基板とを用いて行った。実施例3と同様の熱耐性試験の結果、2往復目で周辺に剥離が観察された。実施例3と比較例3との対比により、PVD法によりSiO
2膜を設けたLT基板と熱酸化膜を成長させたSi基板とを貼り合わせることにより、熱酸化膜を成長させずにSi基板を貼り合わせる場合と比べ剥離を抑制できることが明らかとなった。
【0077】
[実施例4]
Raで230nm程度の粗さ(P-Vでは1.7μm程度)を有する直径6インチのLT基板を複数用意した。用意したLT基板上にSiO
2膜をプラズマCVD法で10μm程度成膜した。SiO
2膜に400℃程度の熱処理を施し、研磨を行い鏡面化した後に、アモルファスシリコン(a-Si)を、表1に示したように様々な厚さで成膜した。アモルファスシリコンはPVD法(マグネトロンスパッタ法)とCVD法の双方で厚さを変えて成膜した。このLT基板と500nmの熱酸化膜を成長した直径6インチのSi基板との両方にプラズマ表面活性化を施した。そして、両基板を貼り合わせ、120℃の熱処理を加え、然る後にLTを研削・研磨で20μmに薄化して複合基板を得た。
【0078】
得られた複合基板のウェーハを2mm角にダイシングし、200℃のホットプレートと金属製の冷却ステージ台を往復させる事で(ホットプレートと冷却ステージ台それぞれにおいて30秒保持)熱耐性試験を調査した。その結果を表1に示す。PVD法、CVD法ともアモルファスシリコンの厚さが50nmを超えると急激に耐性が劣化する事が分かる。これはアモルファスシリコンの厚さが厚くなることでLT側のSiO
2から発生したガスが、アモルファスシリコンの膜を透過できなくなり、Siの熱酸化膜に吸収されるのを阻害されるためと考えられる。
【0079】
【表1】
【0080】
[実施例5]
アモルファスシリコンの成膜を、LT基板側ではなく熱酸化膜を成長させたSi基板側に行い、実施例4と同様の実験を行った。結果は実施例4とほぼ同じとなった。このことから、アモルファスシリコンはLT基板側及びSi基板側のどちらに設けてもよいことが分かった。
【0081】
[実施例6]
アモルファスシリコンの成膜をLT基板、酸化Si基板側双方に行い、実施例4と同様の実験を行った。アモルファスシリコンの厚さは双方に堆積したアモルファスシリコン膜の合計とした。結果は実施例4とほぼ同じとなった。このことから、アモルファスシリコンはLT基板側及びSi基板側の両方に設けてもよいことが分かった。
【0082】
[実施例7]
表面活性化方法の方法を、オゾン水処理、UVオゾン処理、イオンビーム処理、に変更して上記実験を行ったが、貼り合せの結果に差異は見いだせなかった。本発明は活性化の方法には強く依存しないものと思われる。また表面活性化を片方の基板のみに施した際も大きな差は見受けられなかった。
【0083】
[実施例8]
実施例1の方法で作製した複合基板に4段ラダーフィルタを作り込み、反射係数(S11)のスペクトラムを測定し、スプリアスの特性を評価した。その結果、
図9に示すように、スプリアスの強度は1dB以下で有ることを確認した。この方法で作製した共振器は効果的にスプリアスを低減できることが判明した。
【0084】
[実施例9]
Si基板に成長させる熱酸化膜の厚さを変えて実施例1と同様の実験を行った。その結果、20nm以上の熱酸化膜に効果が確認された。反対に、20nm未満の熱酸化膜ではアウトガス吸収能力が十分でなく、加熱冷却サイクル試験で剥離が生じるケースがあった。
【0085】
[実施例10]
LT基板に堆積するSiO
2膜の厚さを変えて実施例1と同様の実験を行った。その結果を表2に示す。表2に示す堆積SiO
2厚さは表面平坦化後の厚さである。この結果からSiO
2膜の厚さ(堆積膜のみ、熱酸化膜は除く)が25μmを超えるとLT層にクラックが発生することが判明した。これは急速加熱・冷却により発生したLTとSiO
2の膨張係数の差に起因するストレスにより発生したものと思われる。SiO
2が25μm以下の場合はSiO
2が膨張係数の差にある程度追随して変形できるが、この厚さ以上では応力緩和によりクラックが発生するものと思われる。
【0086】
【表2】
【0087】
[実施例11]
片面が鏡面の直径6インチのLT基板を用意した。このLT基板の鏡面側上に、スパッタ法によりAl
2O
3膜を1μm堆積した。さらにこのAl
2O
3膜付LT基板のAl
2O
3膜上にシランと酸素ガスを原料ガスとして、プラズマCVD法によりSiO
2膜を10μm程度成膜した。このAl
2O
3とSiO
2積層膜を400℃程度の熱処理を施し、研磨を行い鏡面化し前記SiO
2膜を膜厚約2μmに仕上げた。
【0088】
また、500nmの熱酸化膜を成長した直径6インチのSi基板を用意した。そして両基板にプラズマ表面活性化を施した。そして、両基板を貼り合わせ、120℃の熱処理を加え、然る後にLTを研削・研磨で6μm程度に薄化して複合基板を得た。
【0089】
この複合基板のウェーハを2mm角にダイシングし、200℃のホットプレートと金属製の冷却ステージ台を往復させる事で(ホットプレートと冷却ステージ台それぞれにおいて30秒保持)熱耐性試験を調査した。200回往復まで試みたが、剥離などは観察されなかった。本実施例から、貼り合わせ前にLT基板側に設ける介在層(すなわち第2介在層)を多層化してもよいことがわかった。
【0090】
[実施例12]
Ra(算術平均粗さ)で230nm程度の粗さ(P-Vでは1.7μm程度)を有する直径6インチのLT基板を用意した。このLT基板上に、シランと酸素ガスを原料ガスとして、プラズマCVD法によりSiO
2膜を10μm程度堆積することにより形成した。このSiO
2膜を400℃程度の熱処理を施し、研磨を行い鏡面化し前記SiO
2膜を膜厚約2μmに仕上げた。
【0091】
直径6インチのサファイア基板を用意し、その上にプラズマCVD法によりSiO
2膜を約5μm成膜した。そして、このサファイア基板上のSiO
2膜を800℃の熱処理にて焼結し、研磨を行い鏡面化しSiO
2膜を膜厚1μmに仕上げた。
【0092】
LT基板上に成膜したSiO
2膜とサファイア基板上に成膜した焼結SiO
2膜の両方にプラズマ活性化処理を施し、両基板を貼り合わせて120℃の熱処理を加え、然る後にLTを研削・研磨して20μmに薄化して複合基板を得た。
【0093】
この複合基板のウェーハを2mm角にダイシングし、200℃のホットプレートと金属製の冷却ステージ台を往復させる事で(ホットプレートと冷却ステージ台それぞれにおいて30秒保持)熱耐性試験を調査した。100回往復まで試みたが、剥離などは観察されなかった。本実施例から、支持基盤としてサファイア基板を用いることができることがわかった。また、貼り合わせ前に支持基板側に設ける介在層(すなわち第1介在層)にCVDで成膜したSiO
2を加熱焼結して得た熱合成シリカを用いることができることが分かった。
【0094】
[実施例13]
Ra(算術平均粗さ)で230nm程度の粗さ(P-Vでは1.7μm程度)を有する直径6インチのLT基板を用意した。このLT基板上に、シランと酸素ガスを原料ガスとして、プラズマCVD法によりSiO
2膜を10μm程度堆積することにより形成した。このSiO
2膜を400℃程度の熱処理を施し、研磨を行い鏡面化し前記SiO
2膜を膜厚約2μmに仕上げた。
【0095】
直径6インチのサファイア基板を用意し、その上にPVD(マグネトロンスパッタ)でSiO
2膜を10μm程度成膜した。そして、このサファイア基板上のSiO
2膜を900℃の熱処理にて焼結し、研磨を行い鏡面化しSiO
2膜を膜厚1μmに仕上げた。
【0096】
LT基板上に成膜したSiO
2膜とサファイア基板上に成膜した焼結SiO
2膜の両方にプラズマ活性化処理を施し、両基板を貼り合わせて120℃の熱処理を加え、然る後にLTを研削・研磨して20μmに薄化して複合基板を得た。
【0097】
この複合基板のウェーハを2mm角にダイシングし、200℃のホットプレートと金属製の冷却ステージ台を往復させる事で(ホットプレートと冷却ステージ台それぞれにおいて30秒保持)熱耐性試験を調査した。100回往復まで試みたが、剥離などは観察されなかった。本実施例から、支持基盤としてサファイア基板を用いることができることがわかった。また、貼り合わせ前に支持基板側に設ける介在層(すなわち第1介在層)にPVDで成膜したSiO
2を加熱焼結して得た熱合成シリカを用いることができることが分かった。
【0098】
[実施例14]
Ra(算術平均粗さ)で230nm程度の粗さ(P-Vでは1.7μm程度)を有する直径6インチのLT基板を用意した。このLT基板上に、シランと酸素ガスを原料ガスとして、プラズマCVD法によりSiO
2膜を10μm程度堆積することにより形成した。このSiO
2膜を400℃程度の熱処理を施し、研磨を行い鏡面化し前記SiO
2膜を膜厚約2μmに仕上げた。
【0099】
直径6インチのサファイア基板を用意し、その上に有機ケイ素化合物溶液(パーヒドロポリシラザンのジブチルエーテル溶液)をスピンコートする工程と350℃で加熱硬化する工程を数回繰り返してSiO
2膜を約3μm成膜した。そして、このサファイア基板上のSiO
2膜を900℃の熱処理にて焼結し、研磨を行い鏡面化しSiO
2膜を膜厚0.5μmに仕上げた。
【0100】
LT基板上に成膜したSiO
2膜とサファイア基板上に成膜した焼結SiO
2膜の両方にプラズマ活性化処理を施し、両基板を貼り合わせて120℃の熱処理を加え、然る後にLTを研削・研磨して20μmに薄化して複合基板を得た。
【0101】
この複合基板のウェーハを2mm角にダイシングし、200℃のホットプレートと金属製の冷却ステージ台を往復させる事で(ホットプレートと冷却ステージ台それぞれにおいて30秒保持)熱耐性試験を調査した。100回往復まで試みたが、剥離などは観察されなかった。本実施例から、支持基盤としてサファイア基板を用いることができることがわかった。また、貼り合わせ前に支持基板側に設ける介在層(すなわち第1介在層)として有機ケイ素を塗布し加熱焼結して得た熱合成シリカを用いることができることが分かった。
【0102】
[実施例15]
Ra(算術平均粗さ)で230nm程度の粗さ(P-Vでは1.7μm程度)を有する直径6インチのLT基板を用意した。このLT基板上に、シランと酸素ガスを原料ガスとして、プラズマCVD法によりSiO
2膜を10μm程度堆積することにより形成した。このSiO
2膜を400℃程度の熱処理を施し、研磨を行い鏡面化し前記SiO
2膜を膜厚約2μmに仕上げた。
【0103】
直径6インチの石英ガラス基板を用意し、その上に有機ケイ素化合物溶液(メチルトリメトキシシランのプロピレングリコールモノエチルエーテル溶液)をスピンコートする工程と350℃で加熱硬化する工程を数回繰り返してSiO
2膜を約3μm成膜した。そして、この石英ガラス基板上のSiO
2膜を1000℃の熱処理にて焼結し、研磨を行い鏡面化しSiO
2膜を膜厚0.5μmに仕上げた。
【0104】
LT基板上に成膜したSiO
2膜と石英ガラス基板上に成膜した焼結SiO
2膜の両方にプラズマ活性化処理を施し、両基板を貼り合わせて120℃の熱処理を加え、然る後にLTを研削・研磨して20μmに薄化して複合基板を得た。
【0105】
この複合基板のウェーハを2mm角にダイシングし、200℃のホットプレートと金属製の冷却ステージ台を往復させる事で(ホットプレートと冷却ステージ台それぞれにおいて30秒保持)熱耐性試験を調査した。100回往復まで試みたが、剥離などは観察されなかった。本実施例から、支持基盤として石英ガラス基板を用いることができることがわかった。また、貼り合わせ前に支持基板側に設ける介在層(すなわち第1介在層)として有機ケイ素を塗布し加熱焼結して得た熱合成シリカを用いることができることが分かった。
【0106】
[実施例16]
Ra(算術平均粗さ)とRSm(輪郭(粗さ)曲線における要素の平均長さ)が同程度の凹凸構造を有する複数のLT基板を準備した(Ra=300nm±10%、RSm=3μm±10%、Rz=2.0μm±10%)。ここで、LT基板の凹凸構造は、遊離砥粒を用いて研磨することによって形成した。ここで、Ra、RSmの定義はJIS B 0601:2001及びISO 4287:1997に従って、AFM(Atomic Force Microscope;原子間力顕微鏡)を用いて計測した輪郭曲線から算出した。
次に、LT基板の凹凸構造を有する面に、プラズマCVD法を用いて35℃でSiO
2を10μm程度堆積させた後に、SiO
2を堆積させた面を研磨して鏡面化を行った。このとき、LT基板によって研磨量を変えて、SiO
2の厚みが1.5μm〜9.5μmとなるようにした。
【0107】
支持基板となるSi基板を、酸素雰囲気中、850℃で熱処理を施すことによって、Si基板表面に0.5μmの熱酸化シリカを形成した。
そして、SiO
2鏡面及びSi基板表面に形成した熱酸化シリカの双方に、プラズマ表面活性化を施して貼り合わせ、さらに、LT基板を研磨して複合基板を作製した。このとき、基板によって研磨量を変えて、LT基板の厚みが5μm〜25μmとなるようにした。
【0108】
各複合基板ウェーハを、オーブンにいれて徐々に加熱して、LT基板が剥離し始める温度を計測した。また、各複合基板の表面に電極を形成して、表面弾性波特性の評価を行った。これらの評価結果を表3及び表4に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
この結果によれば、LT基板の厚みが小さく、介在層の厚みが小さいほど、剥離開始温度が高くなり、耐熱性に優れることがわかる。
【0112】
後工程での200℃の加熱を考慮した場合には、LT基板の厚みを15μm以下にすれば、2〜10μmの介在層の厚みに関わらず使用可能であり好ましい。またこの場合、LT基板の厚みを17.5μmとするときには、介在層の合計厚みを9μm以下とするのが好ましい。また更に、LT基板の厚み20μmにまで厚くするときには、介在層の合計厚みを8μm以下とするのが好ましい。
【0113】
また、後工程で更に高温の250℃の加熱を考慮した場合には、LT基板の厚みを15μm以下とすれば介在層の厚みを7μm以下とするのが更に好ましい。LT基板の厚みを20μmにまで厚くするときには、介在層の厚みを6μm以下とするのが更に好ましい。
【0114】
一方、介在層の厚みが小さいほど、Q値が大きくなることがわかる。また、LT基板の厚みを1.5波長未満としたり、3.0波長を超えたりするとQ値が低下する傾向がある。
【0115】
また、LT基板の厚みや介在層の厚みによらず、スプリアス強度は1.0dB以下と低く抑えられている。
【0116】
[実施例17]
Ra(算術平均粗さ)で20nmの粗さを有する、直径100mm、厚さ0.35mmのLT基板を用意した。このLT基板上に、PVD法により200nmのSiO
2膜を10μm程度成膜し、50nmまで研磨を行い鏡面化を行い、表面粗さがRMSで1.0nm以下である事を確認した。続いて、SiO
2膜を製膜したLT基板に、水素イオン(H
+)をドーズ量7.0×10
16atoms/cm
2、加速電圧100KeVの条件で打ち込んだ。また支持基板としてSi基板を用意し、500nmの熱酸化膜を成長した。LT基板及びSi基板にプラズマ活性化処理を施し、表面活性化を行った。そして、両基板を貼り合わせ、100℃24時間の熱処理を施した。次に、このようにして貼り合わせた基板の側面におけるイオン注入界面付近に楔状の刃を当て、機械的に剥離を行った。このようにして、Si基板にSiO
2層を介して約600nmのLT薄膜が積層された複合基板を得ることができた。研磨を施し鏡面化の後に評価行ったが、熱耐久性試験で剥離は観察されなかった。
【0117】
なお、実施例17において、LT基板への水素イオンの打ち込みを、SiO
2膜を成膜する前に行うこともできる。このようにしても、SiO
2膜を成膜した後に水素イオンを打ち込んだ場合と同様の効果が得られる。また、水素イオンのドーズ量は6.0×10
16atoms/cm
2〜2.75×10
17atoms/cm
2の範囲とすれば同様の効果が得られる。また、水素イオンに代えて、水素分子イオン(H
2+)を3.0×10
16atoms/cm
2〜1.37×10
17atoms/cm
2の範囲で注入することによっても同様の効果が得られる。
【0118】
[実施例18]
Ra(算術平均粗さ)で20nmの粗さを有する、直径100mm、厚さ0.35mmのLT基板を用意した。このLT基板上に、PVD法により200nmのSiO
2膜を10μm程度成膜し、50nmまで研磨を行い鏡面化を行い、表面粗さがRMSで1.0nm以下である事を確認した。続いて、SiO
2膜を製膜したLT基板に、水素イオンをドーズ量7.0×10
16atoms/cm
2、加速電圧100KeVの条件で打ち込んだ。また支持基板としてSi基板を用意し、500nmの熱酸化膜を成長した。LT基板及びSi基板にプラズマ活性化処理を施し、表面活性化を行った。そして、両基板を貼り合わせ、100℃24時間の熱処理を施した。次に、このようにして貼り合わせた基板に、LT側よりフラッシュランプアニール(FLA)装置を用いてフラッシュ閃光を照射することにより、イオン注入界面で剥離を行った。このようにして、Si基板にSiO
2層を介して約600nmのLT薄膜が積層された複合基板を得ることができた。研磨を施し鏡面化の後に評価行ったが、熱耐久性試験で剥離は観察されなかった。
【0119】
なお、実施例18において、LT基板への水素イオンの打ち込みを、SiO
2膜を成膜する前に行うこともできる。このようにしても、SiO
2膜を成膜した後に水素イオンを打ち込んだ場合と同様の効果が得られる。また、水素イオンのドーズ量は6.0×10
16atoms/cm
2〜2.75×10
17atoms/cm
2の範囲とすれば同様の効果が得られる。また、水素イオンに代えて、水素分子イオン(H
2+)を3.0×10
16atoms/cm
2〜1.37×10
17atoms/cm
2の範囲で注入することによっても同様の効果が得られる。
【0120】
[実施例の変形]
上記の実施例・参考例はすべて圧電単結晶基板としてLT基板を用いているが、LT基板に代えてLN基板を用いても全く同じ傾向の結果となった。また第2介在層をSiO
2に代えてSiO
2以外のSiOx、Al
2O
3、AlN、SiN、SiON、Ta
2O
5等としても同様の結果となった。また介在層の膜材質については、上記検討ではすべてSiO
2を用いてきたが、SiO
2±0.5のように厳密にストイキオメトリックなものでないものでも効果は全く変わらなかった。これは介在層が主に凹凸を埋めることで上記の効果を奏しているから考えられる。また、支持基板をシリコン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、あるいは窒化アルミに変え、その表面にCVD、PVD、又は有機ケイ素を塗布して合成シリカ膜を形成し、800℃以上の温度で加熱焼結することによって熱合成シリカを形成した場合でも、良好に接合でき、2mm角にダイシングして温度サイクル試験を実施したが、剥離は見られなかった。