特許第6770134号(P6770134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6770134
(24)【登録日】2020年9月28日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20201005BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20201005BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20201005BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20201005BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
   B32B27/18 D
   B32B27/18 Z
   B32B27/30 A
   C09J133/06
   C09J7/38
   C09J11/06
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-92186(P2019-92186)
(22)【出願日】2019年5月15日
(62)【分割の表示】特願2017-230599(P2017-230599)の分割
【原出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2019-163478(P2019-163478A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2019年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】島口 龍介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−077072(JP,A)
【文献】 特開2004−352949(JP,A)
【文献】 特開2012−224811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00− 27/42
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系共重合体と、帯電防止剤と、架橋剤と、酸化防止剤とを含有する光学部材用粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が、基材の片面上に積層されてなる表面保護フィルムであり、
前記酸化防止剤が、d−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、d−α−トコトリエノール、dl−α−トコトリエノール、d−β−トコトリエノール、dl−β−トコトリエノール、d−γ−トコトリエノール、dl−γ−トコトリエノール、d−δ−トコトリエノール、dl−δ−トコトリエノールからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種のトコフェロール系化合物であり、
前記架橋剤が、2官能以上のイソシアネート系架橋剤、2官能以上のエポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤からなる化合物群のうちから選択される1種以上の架橋剤であり、
前記光学部材用粘着剤組成物が、前記アクリル系共重合体の100重量部に対して、前記トコフェロール系化合物の少なくとも1種以上の合計を0.01〜1.5重量部と、前記架橋剤の少なくとも1種以上の合計を0.1〜5重量部との割合で含有することを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体が、次のアクリル系共重合体(1)〜(4)、
アクリル系共重合体(1);(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、を共重合した共重合体、
アクリル系共重合体(2);(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、ビニル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、を共重合した共重合体、
アクリル系共重合体(3);(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも2種以上を共重合した共重合体、
アクリル系共重合体(4);(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、芳香族系モノマーの少なくとも1種と、を共重合した共重合体、
のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記帯電防止剤が、イオン化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物の酸化防止機能を発現させるために添加される酸化防止剤として、トコフェロール系酸化防止剤を含有する粘着剤組成物を用いた表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、酸化防止剤の成分として、トコフェロール系化合物を含有する粘着剤組成物に関し、従来のラクトン系酸化防止剤のような環境的不安要素も無く、さらに油溶性液体であるために、耐析出性にも優れた、粘着剤組成物を用いた表面保護フィルムを提供することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着フィルムとして用いられる粘着剤は、ラジカル重合で生産されることが多い。重合後の粘着剤中に、ラジカルや重合開始剤が残存していると、フィルム化する前の粘着剤の保存安定性のみならず、フィルム化した後の粘着剤層についても、経時で変色するなどの不具合が生じる。特に、光学部材用粘着剤においては、粘着剤が無色透明であることが求められる。このため、色々な酸化防止剤を添加することで、そのラジカル捕捉作用や酸化防止作用等の機能を生かしてこれら不具合を克服していた。
【0003】
近年、粘着剤の分野においても環境対応を求められることが多い。従来の酸化防止剤ではラクトン系酸化防止剤のように環境面から使用できないなどの問題があり、その対策が必要とされてきた。例えば、特許文献1に記載されているような一般的な酸化防止剤は、一般的に、人体へ悪影響を及ぼすことから、取り扱いが法規制されている危険物質である。また、従来の酸化防止剤が、常温で粉末状であり、溶剤に溶解しても析出し易い。酸化防止剤の機能を追求した結果、添加量が必然と多くなると、粘着層からの析出等の欠点も発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5061898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光学部材用粘着剤の酸化や変色を防止でき、添加量が多くてもコストを抑えることができ、耐析出性にも優れる光学部材用粘着剤組成物、光学部材用粘着フィルム及び表面保護フィルムを提供することを課題とする。
また、本発明は、上記の課題の解決と併せて、剥離帯電圧を低減して表面保護フィルムを被着体から剥離し易くするために、粘着剤層の表面抵抗率を低下させる光学部材用粘着剤組成物、光学部材用粘着フィルム及び表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系共重合体と、帯電防止剤と、架橋剤と、酸化防止剤とを含有する光学部材用粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が、基材の片面上に積層されてなる表面保護フィルムであり、前記酸化防止剤が、d−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、d−α−トコトリエノール、dl−α−トコトリエノール、d−β−トコトリエノール、dl−β−トコトリエノール、d−γ−トコトリエノール、dl−γ−トコトリエノール、d−δ−トコトリエノール、dl−δ−トコトリエノールからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種のトコフェロール系化合物であり、前記架橋剤が、2官能以上のイソシアネート系架橋剤、2官能以上のエポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤からなる化合物群のうちから選択される1種以上の架橋剤であり、前記光学部材用粘着剤組成物が、前記アクリル系共重合体の100重量部に対して、前記トコフェロール系化合物の少なくとも1種以上の合計を0.01〜1.5重量部と、前記架橋剤の少なくとも1種以上の合計を0.1〜5重量部との割合で含有することを特徴とする表面保護フィルムを提供する。
【0007】
前記トコフェロール系化合物が、d−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、d−α−トコトリエノール、dl−α−トコトリエノール、d−β−トコトリエノール、dl−β−トコトリエノール、d−γ−トコトリエノール、dl−γ−トコトリエノール、d−δ−トコトリエノール、dl−δ−トコトリエノールからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0008】
前記光学部材用粘着剤組成物が、さらに、イオン化合物を含有することが好ましい。
【0009】
前記架橋剤が、2官能以上のイソシアネート系架橋剤、2官能以上のエポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤からなる化合物群のうちから選択される1種以上の架橋剤であることが好ましい。
【0010】
前記アクリル系共重合体が、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、からなり、前記アクリル系共重合体の100重量部に対して、(C)前記トコフェロール系化合物を0.01〜1.5重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
【0011】
前記アクリル系共重合体が、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、ビニル基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、からなり、前記アクリル系共重合体の100重量部に対して、(C)前記トコフェロール系化合物を0.01〜1.5重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
【0012】
前記アクリル系共重合体が、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも2種以上からなり、前記アクリル系共重合体の100重量部に対して、(C)前記トコフェロール系化合物を0.01〜1.5重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
【0013】
前記アクリル系共重合体が、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、芳香族系モノマーの少なくとも1種と、からなり、前記アクリル系共重合体の100重量部に対して、(C)前記トコフェロール系化合物を0.01〜1.5重量部、を必須成分として含有することが好ましい。
【0014】
また、本発明は、基材の片面上に、前記光学部材用粘着剤組成物が架橋された粘着剤層が積層されたことを特徴とする光学部材用粘着フィルムを提供する。
【0015】
また、本発明は、前記光学部材用粘着剤組成物が架橋された粘着剤層が用いられたことを特徴とする光学部材用粘着フィルムを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記光学部材用粘着フィルムが用いられた、表面保護フィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記光学部材用粘着フィルムが用いられた、偏光板用の表面保護フィルムを提供する。
【0018】
また、本発明は、前記光学部材用粘着フィルムが用いられた、光学用の表面保護フィルムを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記光学部材用粘着フィルムが用いられた、偏光板とディスプレイパネルの貼り合わせ用粘着フィルムを提供する。
【0020】
また、本発明は、前記光学部材用粘着フィルムが用いられた、偏光板を構成する材料の貼り合わせ用粘着フィルムを提供する。
【0021】
また、本発明は、前記光学部材用粘着フィルムが用いられた、タッチパネル用粘着フィルムを提供する。
【0022】
また、本発明は、前記光学部材用粘着フィルムが用いられた、電子ペーパー用粘着フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トコフェロール系化合物を酸化防止剤として含有する粘着剤組成物を用いることで、コストを抑えることができ、耐析出性など上記の課題を改善することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系共重合体と、架橋剤と、酸化防止剤とを含有し、前記酸化防止剤として、トコフェロール系化合物を含有する。トコフェロール系化合物は、一般にビタミンEであり、天然由来の化学物質でもある。このことから、人体に対する悪影響も少なく、取り扱い上の安全性が高く、環境に対しても優しい。また、油溶性であり常温で液体であるため、粘着剤組成物との相溶性、及び、耐析出性にも優れている。
【0025】
本発明の光学部材用粘着剤組成物に用いるアクリル系共重合体としては、アクリル系ポリマーが好ましく、特に、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種を主成分とする共重合体が好ましい。
(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。
【0026】
本発明に用いるアクリル系共重合体として、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも1種と、他の共重合性モノマーの少なくとも1種とからなる共重合組成物を採用することもできる。この場合、他の共重合性モノマーとしては、ビニル基を有する共重合性ビニルモノマーや、(B)水酸基および/またはカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマー、芳香族系モノマーが挙げられる。
【0027】
水酸基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類や、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートからなどが挙げられ、これらの化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
芳香族系モノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステル類のほか、スチレン等が挙げられる。
上記以外の共重合性ビニルモノマーとしては、アクリルアミド、アクリロニトリル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの各種ビニルモノマーが挙げられる。
【0028】
また、本発明に用いるアクリル系共重合体として、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの少なくとも2種以上からなる共重合組成物を採用することもできる。この場合、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー以外の共重合性ビニルモノマーを用いなくても共重合組成物とすることができる。
【0029】
アクリル系共重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。アクリル系共重合体の重量平均分子量は、20万〜200万であることが好ましい。
【0030】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する際に前記アクリル系共重合体を架橋することが好ましい。架橋をするため、光学部材用粘着剤組成物が既知の架橋剤を含んでも良く、紫外線(UV)など光架橋で架橋しても良い。架橋剤としては、2官能以上のイソシアネート系架橋剤、2官能以上のエポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤からなる化合物群のうちから選択される1種以上の架橋剤が好ましい。架橋剤を用いる場合は、前記アクリル系共重合体の100重量部に対して、0.1〜5重量部含有することが好ましい。
【0031】
本発明の光学部材用粘着剤組成物に用いる酸化防止剤として、トコフェロール系化合物を含有する。トコフェロール系化合物は、一般にビタミンEであり、天然由来の化学物質でもある。このことから、人体に対する悪影響も少なく、取り扱い上の安全性が高く、環境に対しても優しい。また、油溶性であり常温で液体であるため、粘着剤組成物との相溶性、及び、耐析出性にも優れている。
本発明に用いるトコフェロール系化合物としては、光学部材用粘着剤組成物に配合して用いる(人体内のように代謝を受けない)ことから、トコフェロールのフェルール性水酸基がエステル等に変化しておらず、フェルール性水酸基を有する化合物が好ましい。例えば、トコフェロールやトコトリエノールが挙げられる。トコフェロールやトコトリエノールには、天然型の化合物(d−体)、非天然型の化合物(l−体)、これらの等量混合物であるラセミ体(dl−体)などの区別があることが知られている。天然型の化合物(d−体)やラセミ体(dl−体)は、食品添加物等として用いられるものもあることから、好ましい。
具体的なトコフェロール系化合物としては、d−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、d−α−トコトリエノール、dl−α−トコトリエノール、d−β−トコトリエノール、dl−β−トコトリエノール、d−γ−トコトリエノール、dl−γ−トコトリエノール、d−δ−トコトリエノール、dl−δ−トコトリエノールからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種が挙げられる。2種以上のトコフェロール系化合物を併用してもよい。食品添加物として、「ミックストコフェロール」と呼ばれるものは、d−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール及びd−δ−トコフェロールを主成分とする混合物であり、「トコトリエノール」と呼ばれるものは、d−α−トコトリエノール、d−β−トコトリエノール、d−γ−トコトリエノール及びd−δ−トコトリエノールを主成分とする混合物である。
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、アクリル系共重合体の100重量部に対して、トコフェロール系化合物を0.01〜1.5重量部、含有することが好ましい。
【0032】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、帯電防止性能を付与するため、帯電防止剤を含有することが好ましい。帯電防止剤は、常温(例えば30℃)で固体であることが好ましく、より具体的には、帯電防止剤が融点30〜50℃のイオン化合物である。帯電防止剤は、アクリロイル基含有の4級アンモニウム塩型イオン化合物であってもよい。
これらの帯電防止剤は、融点が低いため、また、長鎖のアルキル基を有するため、アクリル系ポリマーとの親和性は高いと推測される。
【0033】
融点が30〜50℃のイオン化合物である帯電防止剤としては、カチオンとアニオンを有するイオン化合物であって、カチオンが、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の含窒素オニウムカチオンや、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等であり、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF)、チオシアン酸塩(SCN)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(RCSO)、過塩素酸塩(ClO)、四フッ化ホウ酸塩(BF)等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。アルキル基の鎖長や置換基の位置、個数等の選択により、融点が30〜50℃のものを得ることができる。カチオンは、好ましくは4級含窒素オニウムカチオンであり、1−アルキルピリジニウム(2〜6位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級ピリジニウムカチオンや、1,3−ジアルキルイミダゾリウム(2,4,5位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。
【0034】
前記アクリロイル基含有の4級アンモニウム塩型イオン化合物としては、カチオンとアニオンを有するイオン化合物であって、カチオンが、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム〔R−C2n−OCOCQ=CH、ただし、Q=HまたはCH、R=アルキル〕等の(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウムであり、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF)、チオシアン酸塩(SCN)、有機スルホン酸塩(RSO)、過塩素酸塩(ClO)、四フッ化ホウ酸塩(BF)、F含有イミド塩(R)等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。F含有イミド塩(R)のRとしては、トリフルオロメタンスルホニル基、ペンタフルオロエタンスルホニル基等のパーフルオロアルカンスルホニル基やフルオロスルホニル基が挙げられる。F含有イミド塩としては、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩〔(FSO〕、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩〔(CFSO〕、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド塩〔(CSO〕等のビススルホニルイミド塩が挙げられる。
【0035】
融点が30〜50℃のイオン化合物である帯電防止剤は、特に限定されるものでない。ピリジニウムカチオンを有する、融点が30〜50℃のイオン化合物の具体例としては、1−オクチルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩、1−ドデシルピリジニウム チオシアン酸塩、3−メチル−1−ドデシルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、1−ドデシルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩、4−メチル−1−オクチルピリジニウム 六フッ化リン酸塩等が挙げられる。
また、前記アクリロイル基含有の4級アンモニウム塩型イオン化合物の具体例としては、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート 六フッ化リン酸メチル塩〔(CHCHOCOCQ=CH・PF、ただし、Q=HまたはCH〕、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドメチル塩〔(CH(CHOCOCQ=CH・(CFSO、ただし、Q=HまたはCH〕、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート ビス(フルオロスルホニル)イミドメチル塩〔(CHCHOCOCQ=CH・(FSO、ただし、Q=HまたはCH〕等が挙げられる。
また、融点が30〜50℃のイオン化合物は、前記(A)と前記(B)とを合わせた主成分の(メタ)アクリレートモノマーの100重量部に対して、0.1〜5.0重量部の割合で含有されることが好ましい。
【0036】
光学部材用粘着剤組成物に帯電防止剤を添加して帯電防止性能を持たせる場合、前記光学部材用粘着剤組成物からなる粘着剤層を積層した、光学部材用粘着フィルムの帯電防止性能として、前記粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましく、5.0×10+11Ω/□以下であることがより好ましい。表面抵抗率が大きいと、剥離時に帯電で発生した静電気を逃がす性能に劣る。そのため、表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する、静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体の制御用電子回路等に影響することを抑制することができる。
【0037】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、粘着剤層を形成する際にアクリル系共重合体を架橋させることが好ましい。粘着剤層のアクリル系共重合体を架橋させるために、粘着剤組成物が既知の架橋剤を含んでいることが好ましい。本発明で使用される架橋剤は、2官能以上のイソシアネート系架橋剤、2官能以上のエポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤からなる化合物群のうちから選択される1種以上の架橋剤であることが好ましい。架橋剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて併用してもよい。
【0038】
2官能以上のイソシアネート系化合物としては、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であればよく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類(1分子中に2個のNCO基を有する化合物)のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンやグリセリン等の3価以上のポリオール(1分子中に少なくとも3個以上のOH基を有する化合物)とのアダクト体(ポリオール変性体)などが挙げられる。
また、3官能以上のイソシアネート化合物が、1分子中に少なくとも3個以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物であり、特にヘキサメチレンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のアダクト体、イソホロンジイソシアネート化合物のアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネート化合物のビュレット体、イソホロンジイソシアネート化合物のビュレット体からなる化合物群の中から選択された、少なくとも一種以上であることが好ましい。
2官能以上のイソシアネート系架橋剤は、アクリル系共重合体の100重量部に対して、0.01〜5.0重量部含まれることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜3.0重量部含まれるのがよい。
【0039】
2官能以上のエポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等のなどのエポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、2官能のビスフェノールA型およびビスフェノールF型等のビスフェノール型エポキシ樹脂が、低粘度の液状であり取り扱い易いことからより好ましい。
また、2官能以上のエポキシ系化合物は、具体的には、グリセリンポリ(例えばジ、トリ)グリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリ(例えばジ、トリ、テトラ)グリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
2官能以上のエポキシ系化合物は、アクリル系共重合体の100重量部に対して、0.01〜5.0重量部含まれることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜3.0重量部含まれるのが良い。
【0040】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系共重合体と、架橋剤と、酸化防止剤とを含有している。アクリル系共重合体がカルボキシル基または水酸基を有している場合には、これらの官能基とアルミニウムキレート系化合物との架橋を生じる。
本発明で使用できるアルミニウムキレート系化合物としては、アセチルアセトンアルミニウム塩、アセト酢酸エチルアルミニウム塩などのケトエノール互変異性体アルミニウム塩が好ましく、ケトエノール互変異性体アルミニウム塩の中でもアセチルアセトンアルミニウム塩は、架橋剤としての機能に優れるものとして好適に用いられる。
ケトエノール互変異性体アルミニウム塩に用いられる、ケトエノール互変異性体としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトンや、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸オレイル、アセト酢酸アルキル等のβ−ケトカルボン酸エステル等が挙げられる。
ケトエノール互変異性体アルミニウム塩としては、具体的には、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0041】
さらにその他成分としてシランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0042】
本発明の光学部材用粘着フィルムは、本発明の光学部材用粘着剤組成物からなる粘着剤層を、基材又は離型フィルムの片面上に形成することで製造することができる。
粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
剥離フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
偏光板や位相差フィルムなどの各種光学フィルムを、液晶セルなどの光学部品及び他の光学フィルムに貼り合せる、粘着フィルムの粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。また、偏光板用の表面保護フィルムなどの光学用の表面保護フィルムの場合は、基材フィルム及び粘着剤層は、十分な透明性を有することが好ましい。
【0043】
粘着フィルムが基材フィルムを有する場合、本発明の粘着フィルムは、例えば、表面保護フィルム、偏光板用の表面保護フィルム、光学用の表面保護フィルム、粘着剤付き光学フィルム、粘着剤付き偏光板などに好適に用いることができる。
【0044】
粘着フィルムが基材フィルムを有しない場合、1つの粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を露出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
この場合、本発明の粘着フィルムは、偏光板とディスプレイパネルの貼り合わせに用いることができる。ディスプレイパネルとしては液晶表示装置や有機EL等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の光学部材用粘着フィルムは、偏光板を構成する材料の貼り合わせ用粘着フィルム、偏光板を主とする液晶表示装置の周辺部材用の各種光学フィルム、タッチパネル用粘着フィルム、電子ペーパー用粘着フィルム、有機EL用粘着フィルム等に用いることができる。
【0045】
また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されてなる粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。具体的には、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「離型フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」等の構成が挙げられる。
例えば、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」のように、離型フィルムで保護された粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥がして、「光学フィルム/粘着剤層」のように粘着剤層を露出させ、他の光学フィルムと貼合することにより、粘着剤層が層間の貼合に用いられた「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」のような構成が得られる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0047】
<アクリル系共重合体の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に2−エチルヘキシルアクリレート100重量部、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート2.0重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を100部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で8時間反応させ、重量平均分子量50万の、実施例1のアクリル系共重合体溶液1を得た。
[実施例2〜7及び比較例1〜2]
単量体の組成を各々、表1の(A)、(A′)、及び(B)の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル系共重合体溶液1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜2に用いるアクリル系共重合体溶液を得た。
【0048】
<光学部材用粘着剤組成物及び粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造したアクリル系共重合体溶液1(そのうちアクリル系共重合体が100重量部)に対して、コロネートHL(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)化合物のアダクト体)2.0重量部を加えて撹拌混合して実施例1の光学部材用粘着剤組成物を得た。この光学部材用粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる剥離フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、粘着剤層の厚さが25μmである粘着フィルムを得た。
その後、一方の面に帯電防止及び防汚処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの帯電防止及び防汚処理された面とは反対の面に粘着フィルムを転写させ、「帯電防止及び防汚処理されたPETフィルム/粘着剤層/剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)」の積層構成を有する実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2〜7及び比較例1〜2]
添加剤の組成を各々、表1の「架橋剤」、(C)及び(D)の記載のようにする以外は、上記の実施例1の粘着フィルムと同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜2の粘着フィルムを得た。
【0049】
表1において、各成分の配合比は、(A)と(A′)との合計量を100重量部として求めた重量部の数値を括弧で囲んで示す。また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。
なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同L−45は日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、TETRAD(登録商標)−Xは三菱ガス化学株式会社の商品名であり、デュラネート(登録商標)24A−100は旭化成ケミカルズ株式会社の商品名である。デナコール(登録商標)EX−121は、ナガセケムテックス株式会社の単官能エポキシ化合物(2−エチルヘキシルグリシジルエーテル)の商品名である。IRGANOX(登録商標)1010は、BASF社のヒンダードフェノール系酸化防止剤の商品名である。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
<試験方法及び評価>
実施例1〜7及び比較例1〜2における粘着フィルムを23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングした後、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を露出させた粘着フィルムを、表面抵抗率の測定試料とした。
さらに、この粘着剤層を露出させた粘着フィルムを、粘着剤層を介して液晶セルに貼られた偏光板の表面に貼り合わせ、1日放置した後、50℃、5気圧、20分間オートクレーブ処理し、室温でさらに12時間放置したものを、粘着力の測定試料とした。
【0053】
<粘着剤層の表面抵抗率>
エージングした後、偏光板に貼り合わせる前に、剥離フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして粘着剤層を露出させ、抵抗率計ハイレスタUP−HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
【0054】
<粘着力>
上記で得られた粘着剤層を露出させた粘着フィルムを、25mm幅の粘着フィルムに裁断し、偏光板の表面に貼り合わせた後、180°方向に引張試験機を用いて30m/minの剥離速度において剥がして測定した剥離強度を粘着力とした。
【0055】
<光学部材用粘着剤組成物の貯蔵安定性>
上記で得られた光学部材用粘着剤組成物を、50℃雰囲気中に1ヶ月放置した後に、該光学部材用粘着剤組成物の粘度を測定し、粘度の上昇変化の有無により貯蔵安定性を確認する。評価基準は、粘度変化が20%未満の場合を「○」、20%以上50%未満の場合を「△」、50%以上の場合を「×」と評価した。
【0056】
<粘着フィルムの変色性>
透明PETに厚さ25μmの粘着剤層を積層した粘着フィルムを50℃の雰囲気中に1ヶ月放置した後、粘着剤層の変色性を確認する。評価基準は、無色透明な場合を「○」、わずかに黄変している場合を「△」、黄変している場合を「×」と評価した。
【0057】
<粘着フィルムの耐析出性>
透明PETに厚さ25μmの粘着剤層を積層した粘着フィルムを50℃の雰囲気中に2週間放置し、次いで、0℃雰囲気中に2週間放置した後、粘着フィルム上からの酸化防止剤の析出状態を確認する。評価基準は、酸化防止剤が全く析出していない場合を「○」、わずかに析出している場合を「△」、析出している場合を「×」とした。
【0058】
表3に、評価結果を示す。なお、粘着剤層の表面抵抗率は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例1〜7の光学部材用粘着剤組成物及び粘着フィルムは、光学部材用粘着剤組成物の中に酸化防止剤としてトコフェロール系化合物を含有するため、光学部材用粘着剤組成物の貯蔵安定性、粘着フィルムの変色性、粘着フィルムの耐析出性がいずれも良好であった。
また、実施例2,5〜7の粘着フィルムについては、光学部材用粘着剤組成物の中に帯電防止剤としてイオン化合物を含有しているが、表3に示すとおり、表面抵抗率がいずれも、5.0×10+11Ω/□以下となっており、剥離帯電圧の低減効果を有している。
このことから、本発明におけるイオン化合物による帯電防止性能が、酸化防止剤であるトコフェロール系化合物によって、阻害されないで有効であることが判明した。
また、比較例1の光学部材用粘着剤組成物及び粘着フィルムは、光学部材用粘着剤組成物の中に酸化防止剤を含まないため、光学部材用粘着剤組成物の貯蔵安定性と粘着フィルムの変色性に問題があった。
比較例2の光学部材用粘着剤組成物及び粘着フィルムは、光学部材用粘着剤組成物の中の酸化防止剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有するため、粘着フィルムの耐析出性に問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の光学部材用粘着剤組成物は、人体へ悪影響を及ぼすことが少ないトコフェロール系化合物を酸化防止剤として使用していると共に、帯電防止性能、耐析出性にも優れることから、安全性と実用性に優れた光学部材用粘着フィルム及び表面保護フィルムを提供でき、産業上の利用価値が大である。