(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6770403
(24)【登録日】2020年9月29日
(45)【発行日】2020年10月14日
(54)【発明の名称】ウエーハ厚み測定器の洗浄治具
(51)【国際特許分類】
B24B 49/04 20060101AFI20201005BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20201005BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20201005BHJP
【FI】
B24B49/04 Z
B24B49/12
H01L21/304 622S
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-217864(P2016-217864)
(22)【出願日】2016年11月8日
(65)【公開番号】特開2018-75650(P2018-75650A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聡
(72)【発明者】
【氏名】高木 敦史
【審査官】
小川 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−311019(JP,A)
【文献】
特開2012−115960(JP,A)
【文献】
特開2010−158726(JP,A)
【文献】
特開2009−231503(JP,A)
【文献】
米国特許第05958148(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/04、49/12
B24B 7/04、 7/22
H01L 21/304
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持テーブルに保持されるウエーハの厚みを測定するウエーハ厚み測定器のカバーガラスを洗浄する洗浄治具であって、
該保持テーブルの上面に載置される被載置面を有する本体と、
該本体に形成され少なくとも該カバーガラスが収容される収容部と、
該収容部に収容された該カバーガラスに向けて流体を噴出させる噴出口と、
該本体内に形成され該噴出口とエア供給源とを連通させる第1の流路と、
該第1の流路に配設され該噴出口から噴出されるエアのエア量を調節するエア量調節部と、
該本体内に形成され該第1の流路に合流して該噴出口と水供給源とを連通させる第2の流路と、
該第2の流路に配設され該噴出口から該エアとともに噴出される水の水量を調節する水量調節部と、を備え、
該噴出口から噴出される該エアと該水とが混合した2流体により該カバーガラスを洗浄するウエーハ厚み測定器の洗浄治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハ厚み測定器を洗浄する洗浄治具に関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置においてウエーハを研削・研磨する際には、保持テーブルに保持されたウエーハの厚みを測定しながら加工することによってウエーハの厚みにばらつきが発生しないようにしている。ウエーハの厚みを測定する手段としては、例えば分光干渉を利用したウエーハ厚み測定器がある。ウエーハ厚み測定器は、加工装置内に配設され、例えば、レーザヘッド部と、レーザヘッド部の内部に配設されレーザ光を下方に向けて照射する照射部と、照射部から照射されたレーザ光がウエーハで反射した反射光を受光する受光部と、照射部の先端開口を塞ぐカバーガラスとを備え、保持テーブルに保持されたウエーハの上面に向けてレーザ光を照射してウエーハの上面で反射した反射光とウエーハを通過して下面で反射した反射光との干渉波によってウエーハの厚みを測定することができる。
【0003】
上記のようなウエーハ厚み測定器においては、照射部からレーザ光を一定の状態でウエーハに照射するとともにウエーハで反射した反射光を正確に受光部で受光する必要があるため、カバーガラスの下方側に形成された空間に水膜を形成することで、加工時に使用され加工屑が含まれる加工水が当該空間に入り込むのを防ぎ、レーザ光や反射光が加工屑によって遮られないようにしている(例えば、下記の特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−050944号公報
【特許文献2】特許第5335787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ウエーハの加工中は、カバーガラスの下方側に形成された空間に常に水膜を形成しているが、加工が終了したときに当該空間に向けた水の供給を停止している。そのため、当該空間に水膜がなくなってカバーガラスが乾くと加工屑がカバーガラスに付着して、カバーガラスが汚れてしまう。また、ウエーハを加工する加工室内には、通常、加工水が霧状になって飛散しており、その中にも加工屑が含まれていることから、カバーガラスを汚さないようにすることは困難となっている。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、ウエーハ厚み測定器のカバーガラスの汚れを除去できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、保持テーブルに保持されるウエーハの厚みを測定するウエーハ厚み測定器のカバーガラスを洗浄する洗浄治具であって、該保持テーブルの上面に載置される被載置面を有する本体と、該本体に形成され少なくとも該カバーガラスが収容される収容部と、該収容部に収容された該カバーガラスに向けて流体を噴出させる噴出口と、該本体内に形成され該噴出口とエア供給源とを連通させる第1の流路と、該第1の流路に配設され該噴出口から噴出されるエアのエア量を調節するエア量調節部と、該本体内に形成され該第1の流路に合流して該噴出口と水供給源とを連通させる第2の流路と、該第2の流路に配設され該噴出口から該エアとともに噴出される水の水量を調節する水量調節部と、を備え、該噴出口から噴出される該エアと該水とが混合した2流体により該カバーガラスを洗浄することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる洗浄治具は、保持テーブルの上面に載置される被載置面を有する本体と、本体に形成され少なくともカバーガラスが収容される収容部と、収容部に収容された該カバーガラスに向けて流体を噴出させる噴出口と、本体内に形成され噴出口とエア供給源とを連通させる第1の流路と、第1の流路に配設され噴出口から噴出されるエアのエア量を調節するエア量調節部と、本体内に形成され第1の流路に合流して噴出口と水供給源とを連通させる第2の流路と、第2の流路に配設され噴出口からエアとともに噴出される水の水量を調節する水量調節部とを備え、噴出口から噴出されるエアと水とが混合した2流体によりカバーガラスを洗浄するように構成したため、ウエーハ厚み測定器のカバーガラスを洗浄する際には、本体を保持テーブルの上面に載置して、例えばウエーハ厚み測定器の下方側に本体を水平に動かすだけでカバーガラスを収容部に簡単に収容することができる。そして、第1の流路に沿って流れてきたエアと第2の流路に沿って流れてきた水とを混合させ、噴出口からカバーガラスに向けて2流体を噴出することにより、カバーガラスに付着した研削屑などの異物を効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】保持テーブル、ウエーハ厚み測定器及び洗浄治具の構成を示す斜視図である。
【
図2】ウエーハ厚み測定器及び保持テーブルの構成を示す断面図である。
【
図4】洗浄治具を用いてカバーガラスを洗浄する状態を示す斜視図である。
【
図5】洗浄治具を用いてカバーガラスを洗浄する状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す保持テーブル1は、
図2に示すウエーハWを吸引保持する保持テーブルの一例である。ウエーハWは、被加工物の一例であって、複数のデバイスが形成された表面Waと、被加工面となる裏面Wbとを有している。保持テーブル1は、例えば、ポーラスセラミックスにより形成される保持部2を備えており、保持部2の上面がウエーハWを吸引保持する保持面2aとなっている。保持テーブル1には、図示しない吸引源が接続されている。保持テーブル1は、吸引源の吸引力を保持テーブル1の保持面2aに作用させて保持面2aでウエーハWを吸引保持することができる。
【0011】
保持テーブル1は、例えば、ウエーハWに研削水を供給しながら研削砥石によってウエーハWに研削を施す研削装置に搭載される。研削装置においてウエーハWを研削する場合は、保持テーブル1の保持面2aで例えばウエーハWの表面Wa側を吸引保持して、裏面Wb側を上向きに露出させ、ウエーハWに向けて図示しない研削水を供給しながら研削砥石によりウエーハWの裏面Wbを押圧しながら所定の厚みに至るまで研削する。
【0012】
保持テーブル1の上方側には、ウエーハWの厚みを非接触で測定する光学式のウエーハ厚み測定器3が配設されている。ウエーハ厚み測定器3は、光学系の投光部及び受光部を内部に有する円柱状のヘッド部4と、ヘッド部4の下端に装着されたカバーガラス5とを少なくとも備えている。カバーガラス5によって、ウエーハWの研削中に使用される研削水がヘッド部4の内部に浸入するのを防ぐことができる。
【0013】
ウエーハ厚み測定器3には、ヘッド部4を上下方向に昇降させる昇降手段6が接続されている。昇降手段6は、モータ7と、一方の面においてヘッド部4を支持する可動ブロック8と、可動ブロック8を上下方向にガイドするためのガイド板9とを備えている。ガイド板9は、可動ブロック8の他方の面に形成された案内溝80に摺接している。昇降手段6は、モータ7の駆動によって、ガイド板9に沿って可動ブロック8とともにヘッド部4を上下方向に昇降させることにより、
図2に示すように、ウエーハWの厚みを測定せずに待機する待機位置P1とウエーハWの厚みを測定する測定位置P2とにそれぞれヘッド部4を位置づけることができる。
【0014】
ここで、ウエーハ厚み測定器3によって研削中のウエーハWを測定する際には、昇降手段6によって、ウエーハ厚み測定器3を保持テーブル1に保持されたウエーハWに接近する方向に下降させ、ヘッド部4を待機位置P1から測定位置P2を位置づける。続いて、ウエーハ厚み測定器3は、ヘッド部4の投光部によってウエーハWに向けて測定光を投光する。測定光としては、例えば、ウエーハWの裏面Wbで一部が反射し、残りがウエーハWの内部を通過し表面Waで反射する測定光を用いるとよい。裏面Wbで反射した反射光と表面Waで反射した反射光とは、波長ごとに互いに干渉して、干渉光の大きさはウエーハWの厚みに対応している。そして、干渉光をヘッド部4内の受光部に備えた素子(例えばCCD)において受光し、受光波形から光強度スペクトル分布を得た後、FFT処理などの波形解析を行うことによりウエーハWの厚みを算出することができる。
【0015】
図1に示す洗浄治具10は、ウエーハ厚み測定器3のカバーガラス5を洗浄する洗浄治具である。洗浄治具10は、保持テーブル1の上面(保持面2a)に載置される被載置面11bを有する本体11と、本体11に形成され少なくともカバーガラス5が収容される収容部12と、収容部12に収容されたカバーガラス5に向けて流体を噴出させる噴出口13とを備えている。本体11は、保持テーブル1の保持面2aと平行に形成された板状部材である。図示の例では、収容部12は、凹状の溝からなり、本体11の被載置面11bと反対側の上面11aの端部に形成されている。
【0016】
収容部12の後方側の内壁12aは、ウエーハ厚み測定器3のヘッド部4の外周面に沿って湾曲して形成されている。一方、収容部12の前方側(内壁12aと対向する側)は開口した開口部12bとなっている。収容部12の底面12cには、噴出口13が形成されている。収容部12の底面12cの高さ位置は、
図2に示した待機位置P1にウエーハ厚み測定器3が位置づけられているときのカバーガラス5の位置よりも低い位置に設定されている。これにより、待機位置P1で待機するウエーハ厚み測定器3の下方側に本体11を移動させるだけで、ヘッド部4の直下に収容部12を位置づけ、少なくともカバーガラス5を収容部12に収容させることができる。本実施形態では、噴出口13が1つ形成されているが、噴出口13の数は特に限定されない。
【0017】
また、洗浄治具10は、
図3に示すように、本体11の内部に形成され噴出口13とエア供給源16とを連通させる第1の流路14と、第1の流路14に配設され噴出口13から噴出されるエアのエア量を調節するエア量調節部15と、本体11の内部に形成され第1の流路14に合流して噴出口13と水供給源19とを連通させる第2の流路17と、第2の流路17に配設され噴出口13からエアとともに噴出される水の水量を調節する水量調節部18とを備えている。エア量調節部15及び水量調節部18は例えば可変絞り弁であり、エア及び水の流量を所定の流量に調節することができる。洗浄治具10では、第1の流路14に第2の流路17が合流した流路140において、第1の流路14に沿って流れてきたエアと第2の流路17に沿って流れてきた水とを混合させ、2流体(エアと水とが混合された混合流体)となって噴出口13から上方に向けて噴出させることができる。
【0018】
次に、洗浄治具10を用いて、ウエーハ厚み測定器3のカバーガラス5を洗浄する洗浄動作について説明する。カバーガラス5を洗浄するタイミングは、ウエーハWの研削加工時以外であれば特に限定されない。例えば定期的にカバーガラス5を洗浄してもよいし、ウエーハ厚み測定器3の動作不良時(例えば受光部での反射光の受光量が少ないとき)にカバーガラス5を洗浄してもよい。
【0019】
まず、
図4に示すように、例えばウエーハ厚み測定器3が待機位置P1に位置づけられた状態において、作業者が本体11を把持し保持テーブル1の保持面2aに被載置面11b側から本体11を載置して、本体11を水平に動かして開口部12b側からヘッド部4を進入させ、
図3に示した内壁12aにヘッド部4の外周面を当接させることで収容部12にヘッド部4を嵌め込んで収容する。その結果、
図5に示すように、収容部12の底面12cとカバーガラス5との間に僅かな空隙Gが形成されるとともに、噴出口13の真上の位置にカバーガラス5が位置づけられる。
【0020】
次いで、エア供給源16から第1の流路14を通じて噴出口13へエアを供給するとともに、水供給源19から第2の流路17を通じて噴出口13へ水を供給する。このとき、エア量調節部15によって所定のエア量に調節するとともに、水量調節部18によって所定の水量に調節するとよい。なお、水供給源19から第2の流路17へ流入される水としては、例えば純水を用いることができる。
【0021】
エア供給源16から送出され第1の流路14に沿って流れてきたエアと水供給源19から送出され第2の流路17に沿って流れてきた水とが流路140において混合すると、2流体20となって噴出口13から上方に向けて噴出される。2流体20は、カバーガラス5と収容部12の底面12cとの間の僅かな空隙Gに溜まってカバーガラス5に常に接触した状態となり、カバーガラス5に付着した研削屑などを洗い流す。また、2流体20は、常に収容部12の開口部12bから排出される。これにより、洗い流された研削屑を含む2流体20が空隙Gに滞留することがないため、カバーガラス5の汚れを効果的に除去することができる。
【0022】
以上のとおり、本発明にかかる洗浄治具10は、保持テーブル1の保持面2aに載置される被載置面11bを有する本体11と、本体11に形成され少なくともカバーガラス5が収容される収容部12と、収容部12に収容されたカバーガラス5に向けて流体を噴出させる噴出口13と、本体11の内部に形成され噴出口13とエア供給源16とを連通させる第1の流路14と、第1の流路14に配設され噴出口13から噴出されるエアのエア量を調節するエア量調節部15と、本体11の内部に形成され第1の流路14に合流して噴出口13と水供給源19とを連通させる第2の流路17と、第2の流路17に配設され噴出口13からエアとともに噴出される水の水量を調節する水量調節部18とを備え、噴出口13から噴出されるエアと水とが混合した2流体20によりカバーガラス5を洗浄するように構成したため、ウエーハ厚み測定器3のカバーガラス5を洗浄する際には、本体11を保持テーブル1の保持面2aに載置して、例えば待機位置P1に位置づけられたヘッド部4に対して本体11を水平に動かすだけでカバーガラス5を収容部12に簡単に収容することができる。そして、第1の流路14に沿って流れてきたエアと第2の流路17に沿って流れてきた水とを流路140において混合させ、噴出口13からカバーガラス5に向けて2流体20を噴出することにより、カバーガラス5に付着した研削屑などの異物を効果的に除去することが可能となる。
【0023】
本実施形態に示した洗浄治具10は、研削装置に適用する場合を説明したが、光学式のウエーハ厚み測定器3を用いてウエーハWの厚みを測定しながら加工する装置であれば、研削装置に限定されない。したがって、本発明は、例えばウエーハWにスラリー等を供給しながら研磨パッドによりウエーハWに研磨を施す研磨装置等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1:保持テーブル 2:保持部 2a:保持面 3:ウエーハ測定器
4:ヘッド部 5:カバーガラス 6:昇降手段 7:モータ 8:可動ブロック
80:案内溝 9:ガイド板
10:洗浄治具 11:本体 11a:上面 11b:被載置面 12:収容部
13:噴出口 14:第1の流路 15:エア量調節部 16:エア供給源
17:第2の流路 18:水量調節部 19:水供給源 20:2流体