(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3の工程では、前記被処理体の前記表面に対して前記ノズルから前記液滴を吹き付けると共に、前記ノズルとは別のガスノズルを前記ノズルに追従させつつ、前記被処理体の前記表面のうち前記液滴の吹き付け箇所に対して加熱された窒素ガスを前記ガスノズルから吹き付ける、請求項1に記載の塗布膜形成方法。
前記第1の加熱部は、加熱されたガスを前記ノズルに供給して前記ノズル内において前記ガスと前記塗布液とを混合させることにより前記塗布液を加熱するように構成されている、請求項8〜12のいずれか一項に記載の塗布膜形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1が開示する方法は、凸部同士の間の空間を塗布液材料で埋めることなく、被処理体の表面(凸部の表面を含む。)に沿って塗布膜を略均一に形成することを目的としている。しかしながら、当該方法によれば、被処理体の表面のうちノズルの移動に伴い噴霧領域が重なる箇所に対し、塗布液の溶剤が完全に揮発しきらないうちに次の塗布液が噴霧されうる。そのため、加熱手段により被処理体を加熱していたとしても、塗布液液滴の溶質(塗布液材料粒子)が凸部の側壁面に定着する前に塗布液液滴(溶剤)が流動し、凸部の基端側において特に塗布膜の膜厚が大きくなってしまうことがある。
【0005】
そこで、本開示は、凸部を含む被処理体の表面に沿って塗布膜をより均一に形成することが可能な塗布膜形成方法、塗布膜形成装置、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本開示の一つの観点に係る塗布膜形成方法は、基板と、基板の表面に設けられた凸部とを含む被処理体を加熱する第1の工程と、塗布液を加熱して第1の加熱液体を得る第2の工程と、第1の工程において加熱された後の被処理体の表面に対して、第1の加熱液体を液滴の状態にてノズルから吹き付ける第3の工程とを含む。
【0007】
本開示の一つの観点に係る塗布膜形成方法では、塗布液を被処理体の表面に吹き付けるに際して、第2の工程において、塗布液を加熱して第1の加熱液体としている。そのため、第1の加熱液体がノズルから吹き出されると、その直後から溶媒(溶剤)が揮発して塗布液中の材料粒子(溶質)の濃度が高まるので、塗布液(第1の加熱液体)の流動性が低下した状態となる。従って、被処理体の表面(凹凸面)において、液滴同士が凝集して流動することが抑制される。その結果、被処理体の表面に塗布液の材料粒子が均一に付着しやすくなる。以上より、凸部を含む被処理体の表面に沿って塗布膜をより均一に形成することが可能となる。
【0008】
加えて、本開示の一つの観点に係る塗布膜形成方法では、第3の工程で、第1の工程において加熱された後の被処理体の表面に対して、第1の加熱液体を液滴の状態にてノズルから吹き付けている。そのため、第3の工程の前に被処理体が加熱されているので、被処理体の表面全体において、第3の工程で吹き付けられる塗布液の溶媒(溶剤)が被処理体からの熱を受けて揮発する。そのため、被処理体の表面(凹凸面)において、液滴同士が凝集して流動することがより抑制される。従って、凸部を含む被処理体の表面に沿って塗布膜をさらに均一に形成することが可能となる。
【0009】
[2]上記第1項に記載の方法において、第2の工程では、ノズルの出口における第1の加熱液体の温度が塗布液に含まれる溶剤の沸点の1/2以下となるように塗布液を加熱してもよい。塗布液の溶媒(溶剤)は温度が高くなるほど揮発が促進されるが、あまりに揮発量が多くなると、ノズルから吹き出された液滴が被処理体の表面に到達する前に固化してしまいうる。一方、ノズルの出口における第1の加熱液体の温度が塗布液に含まれる溶剤の沸点の1/2以下となるように塗布液を加熱すると、ノズルから吹き出された液滴が被処理体の表面に到達する前に固化し難くなる。
【0010】
[3]上記第1項又は第2項に記載の方法において、第2の工程では、ノズルの出口における第1の加熱液体の温度が35℃〜60℃となるように塗布液を加熱してもよい。この場合、ノズルから吹き出された液滴が被処理体の表面に到達する前により固化し難くなる。
【0011】
[4]上記第1項〜第3項のいずれか一項に記載の方法において、第2の工程では、ノズル内において塗布液と加熱されたガスとを混合することにより塗布液を加熱して第1の加熱液体を得てもよい。この場合、塗布液がノズルから吐出される直前まで、塗布液の流動性が高いままの状態となる。そのため、ノズルから塗布液を液滴の状態で吹き出しやすくなる。従って、ノズルからの吐出前においては塗布液の流動性を高めて液滴を生成したい一方で、ノズルからの吐出後においては塗布液の流動性を低下させて被処理体の表面に塗布液の材料粒子を均一に付着させたいという相反する要求に、簡易な手法で応えることができる。
【0012】
[5]上記第1項〜第3項のいずれか一項に記載の方法において、第2の工程では、ノズルよりも上流側において塗布液をヒータにより加熱して第1の加熱液体を得てもよい。この場合、塗布液がノズルから吐出される直前まで、塗布液の流動性を維持しうる。そのため、ノズルから塗布液を液滴の状態で吹き出しやすくなる。従って、ノズルからの吐出前においては塗布液の流動性を高めて液滴を生成したい一方で、ノズルからの吐出後においては塗布液の流動性を低下させて被処理体の表面に塗布液の材料粒子が均一に付着させたいという相反する要求に、簡易な手法で応えることができる。
【0013】
[6]上記第1項〜第5項のいずれか一項に記載の方法は、第3の工程の後に、塗布液を加熱して第2の加熱液体を得る第4の工程と、第4の工程の後に、塗布膜が形成された被処理体の表面に対して、第2の加熱液体を液滴の状態にてノズルから吹き付ける第5の工程をさらに含み、第4の工程における第2の加熱液体の温度は、第2の工程における第1の加熱液体の温度よりも高く設定されていてもよい。この場合、第1の加熱液体の温度が相対的に低く且つノズルから吹き出された液滴の流動性が高い傾向にあるので、第3の工程において被処理体の表面に吹き付けられる液滴は、被処理体のうち狭隘な凹部に入り込みやすくなる。一方、第2の加熱液体の温度が相対的に高く且つノズルから吹き出された液滴の流動性が低い傾向にあるので、第5の工程において被処理体の表面に吹き付けられる液滴は、被処理体の凸部の側面に付着しやすくなる。従って、凸部を含む被処理体の表面に沿って塗布膜をさらに均一に形成することが可能となる。
【0014】
[7]上記第1項〜第6項のいずれか一項に記載の方法において、第3の工程では、被処理体の表面に対してノズルから液滴を吹き付けると共に、ノズルとは別のガスノズルをノズルに追従させつつ、被処理体の表面のうち液滴の吹き付け箇所に対して加熱された窒素ガスをガスノズルから吹き付けてもよい。この場合、液滴の吹き付け中に溶剤の乾燥が行われるので、被処理体の表面に塗布膜を形成するのに要する時間を短縮することができる。
【0015】
[8]本開示の他の観点に係る塗布膜形成装置は、塗布液を加熱するように構成された第1の加熱部と、基板と、基板の表面に設けられた凸部とを含む被処理体を加熱するように構成された第2の加熱部と、ノズルを有する供給部と、制御部とを備え、制御部は、第2の加熱部を制御して被処理体を加熱する第1の処理と、第1の加熱部及び供給部を制御して、第1の処理によって加熱された後の被処理体の表面に対して、第1の加熱部によって加熱された塗布液である第1の加熱液体を液滴の状態にてノズルから吹き出させる第2の処理を実行する。本開示の他の観点に係る塗布膜形成装置は、上記第1項に係る方法と同様の作用効果を奏する。
【0016】
[9]上記第8項に記載の装置において、第1の加熱部は、ノズルの出口における第1の加熱液体の温度が塗布液に含まれる溶剤の沸点の1/2以下となるように塗布液を加熱してもよい。この場合、上記第2項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
【0017】
[10]上記第8項又は第9項に記載の装置において、第1の加熱部は、ノズルの出口における第1の加熱液体の温度が35℃〜60℃となるように塗布液を加熱してもよい。この場合、上記第3項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
【0018】
[11]上記第8項〜第10項のいずれか一項に記載の装置において、第1の加熱部は、加熱されたガスをノズルに供給してノズル内においてガスと塗布液とを混合させることにより塗布液を加熱するように構成されていてもよい。この場合、上記第4項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
【0019】
[12]上記第8項〜第10項のいずれか一項に記載の装置において、第1の加熱部は、ノズルよりも上流側において塗布液を加熱するヒータであってもよい。この場合、上記第5項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
【0020】
[13]上記第8項〜第12項のいずれか一項に記載の装置において、制御部は、第2の処理の後に、第1の加熱部及び供給部を制御して、被処理体の表面に対して、第1の加熱部によって加熱された塗布液である第2の加熱液体を液滴の状態にてノズルから吹き出させる第3の処理をさらに実行し、第3の処理における第2の加熱液体の温度は、第2の処理における第1の加熱液体の温度よりも高く設定されていてもよい。この場合、上記第6項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
【0021】
[14]上記第8項〜第13項のいずれか一項に記載の装置は、加熱された窒素ガスをガスノズルから吐出させるように構成されたガス供給部を更に備え、制御部は、第2の処理において、第1の加熱部及び供給部を制御して、液滴をノズルから吹き付けると共に、ガス供給部を制御して、ガスノズルをノズルに追従させつつ、被処理体の表面のうち液滴の吹き付け箇所に対して加熱された窒素ガスをガスノズルから吹き付けてもよい。この場合、上記第7項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
【0022】
[15]本開示の他の観点に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記第1項〜第7項のいずれか一項に記載の方法を塗布膜形成装置に実行させるためのプログラムを記録している。本開示の他の観点に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体では、上記の塗布膜形成方法と同様に、凸部を含む被処理体の表面に沿って塗布膜をより均一に形成することが可能となる。本明細書において、コンピュータ読み取り可能な記録媒体には、一時的でない有形の媒体(non-transitory computer recording medium)(例えば、各種の主記憶装置又は補助記憶装置)や、伝播信号(transitory computer recording medium)(例えば、ネットワークを介して提供可能なデータ信号)が含まれる。
【発明の効果】
【0023】
本開示に係る塗布膜形成方法、塗布膜形成装置、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体によれば、凸部を含む被処理体の表面に沿って塗布膜をより均一に形成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0026】
[塗布膜形成装置]
まず、塗布膜形成装置1の概要について説明する。塗布膜形成装置1は、被処理体W(
図6等参照)の表面上に塗布膜R(同図等参照)を形成する装置である。
【0027】
ここで、被処理体Wは、
図6等に示されるように、基板(ウエハ)W1と少なくとも一つの凸部W2とを有する。基板W1は、円板状を呈してもよいし、円形の一部が切り欠かれていてもよいし、多角形など円形以外の形状を呈していてもよい。基板W1は、例えば、半導体基板、ガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)基板その他の各種基板であってもよい。凸部W2は、基板W1の表面W1a上に設けられている。凸部W2は基板W1の表面W1aから外方に向けて突出していればよい。凸部W2の形状は、直方体形状その他の種々の形状であってもよく、何ら限定されない。凸部W2の材質は、凸部W2の表面W2a(外部に露出している上面及び外周面)に塗布膜Rを形成することができれば有機材料であっても無機材料であってもよく、何ら限定されない。なお、本明細書において、「被処理体Wの表面」とは、基板W1の表面W1a及び凸部W2の表面W2aを合わせた面をいう。
【0028】
塗布膜Rは、塗布膜形成装置1によって被処理体Wの表面に形成される。塗布膜Rを構成する材料としては、レジスト材料、カラーレジスト材料、ポリイミド材料、SOC(Spin On Carbon)材料、メタルハードマスク材料その他の材料であってもよく、何ら限定されない。レジスト材料としては、樹脂材料その他の材料であってもよく、何ら限定されない。レジスト材料は、例えば、所定波長の光線に感光性を示す感光性材料であってもよい。当該感光性材料は、ネガ型であってもよいし、ポジ型であってもよい。
【0029】
塗布膜形成装置1は、
図1〜
図3に示されるように、キャリアブロック2と、処理ブロック3と、コントローラ(制御部)CUを備える。
【0030】
キャリアブロック2は、キャリアステーション21と搬入搬出部22とを有する。キャリアステーション21は複数のキャリア10を支持する。キャリア10は、少なくとも一つの被処理体Wを密封状態で収容する。キャリア10の側面10aには、被処理体Wを出し入れするための開閉扉(図示せず)が設けられている。
【0031】
搬入搬出部22は、キャリアステーション21及び処理ブロック3の間に位置している。搬入搬出部22は、
図2に示されるように、複数の開閉扉22aを有する。キャリアステーション21上にキャリア10が載置される際には、キャリア10の開閉扉が開閉扉22aに面した状態とされる。開閉扉22a及び側面10aの開閉扉を同時に開放することで、キャリア10内と搬入搬出部22内とが連通する。搬入搬出部22は、受け渡しアームA1を内蔵している。受け渡しアームA1は、キャリア10から被処理体Wを取り出して処理ブロック3に渡し、処理ブロック3から被処理体Wを受け取ってキャリア10内に戻す。
【0032】
処理ブロック3は、
図2及び
図3に示されるように、複数の処理モジュール31,32、棚部33及び搬送アームA2を内蔵する。処理モジュール31,32は、例えば
図2に示されるように、搬送アームA2の移動方向に沿って並ぶように配置されている。
【0033】
処理モジュール31は、
図3に示されるように、上下方向に並ぶ複数の液処理ユニットU1と、塗布液源B1と、窒素ガス源B2とを有する。液処理ユニットU1は、塗布膜Rの形成用の液体を被処理体Wの表面に塗布するように構成されている。塗布液源B1及び窒素ガス源B2は、液処理ユニットU1の下部に配置されている。塗布液源B1及び窒素ガス源B2はそれぞれ、液処理ユニットU1に供給するための塗布液及び窒素ガス(N
2ガス)を収容する。なお、塗布液源B1が収容する塗布液は、塗布液の材料粒子(溶質)を溶剤(溶媒)で希釈したものである。当該溶剤としては、塗布液材料粒子の希釈に適した公知のものであれば制限はないが、例えば、イソプロピルアルコール(以下、IPAと称することもある。)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと称することもある。)、γ−ブチロラクトン(以下、GBLと称することもある。)等を用いてもよい。IPAの沸点は82.4℃である。PGMEAの沸点は146℃である。GBLの沸点は204℃である。
【0034】
処理モジュール32は、
図3に示されるように、上下方向に並ぶ複数の熱処理ユニットU2(第2の加熱部)を有する。熱処理ユニットU2は、塗布膜Rの形成にあたり被処理体Wに対して熱処理を行うように構成されている。熱処理の具体例としては、塗布液の溶剤を揮発させたり、塗布液材料を硬化させるための加熱処理等が挙げられる。
【0035】
棚部33は、
図2に示されるように、処理ブロック3内のキャリアブロック2側に配置されている。棚部33は、被処理体Wを一時的に収容するものであり、受け渡しアームA1と処理ブロック3との間における被処理体Wの受け渡しに用いられる。搬送アームA2は、棚部33と処理モジュール31,32との間、及び処理モジュール31,32同士の間で被処理体Wを搬送する。
【0036】
コントローラCUは、塗布膜形成装置1を部分的又は全体的に制御する。コントローラCUは、
図4に示されるように、機能モジュールとして、読取部M1と、記憶部M2と、処理部M3と、指示部M4とを有する。これらの機能モジュールは、コントローラCUの機能を便宜上複数のモジュールに区切ったものに過ぎず、コントローラCUを構成するハードウェアがこのようなモジュールに分かれていることを必ずしも意味するものではない。各機能モジュールは、プログラムの実行により実現されるものに限られず、専用の電気回路(例えば論理回路)、又は、これを集積した集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)により実現されるものであってもよい。
【0037】
読取部M1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体200からプログラムを読み取る。記録媒体200は、塗布膜形成装置1に各種動作を実行させるためのプログラムを記録している。記録媒体200としては、例えば、半導体メモリ、光記録ディスク、磁気記録ディスク、光磁気記録ディスクであってもよい。
【0038】
記憶部M2は、種々のデータを記憶する。記憶部M2は、例えば、読取部M1において読み取られたプログラムの他、例えば、外部入力装置(図示せず)を介してオペレータから入力された設定データ等を記憶する。
【0039】
処理部M3は、各種データを処理する。処理部M3は、例えば、記憶部M2に記憶されている各種データに基づいて、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を動作させるための信号を生成する。
【0040】
指示部M4は、処理部M3において生成された信号を液処理ユニットU1又は熱処理ユニットU2に送信する。
【0041】
コントローラCUのハードウェアは、例えば一つ又は複数の制御用のコンピュータにより構成される。コントローラCUは、ハードウェア上の構成として、例えば
図5に示す回路CU1を有する。回路CU1は、電気回路要素(circuitry)で構成されていてもよい。回路CU1は、具体的には、プロセッサCU2と、メモリCU3と、ストレージCU4と、ドライバCU5と、入出力ポートCU6とを有する。プロセッサCU2は、メモリCU3及びストレージCU4の少なくとも一方と協働してプログラムを実行し、入出力ポートCU6を介した信号の入出力を実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。ドライバCU5は、塗布膜形成装置1の各種装置をそれぞれ駆動する回路である。入出力ポートCU6は、ドライバCU5と塗布膜形成装置1の各種装置との間で、信号の入出力を行う。
【0042】
本実施形態では、塗布膜形成装置1は、一つのコントローラCUを備えているが、複数のコントローラCUで構成されるコントローラ群(制御部)を備えていてもよい。塗布膜形成装置1がコントローラ群を備えている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコントローラCUによって実現されていてもよいし、2個以上のコントローラCUの組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCUが複数のコンピュータ(回路CU1)で構成されている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコンピュータ(回路CU1)によって実現されていてもよいし、2つ以上のコンピュータ(回路CU1)の組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCUは、複数のプロセッサCU2を有していてもよい。この場合、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのプロセッサCU2によって実現されていてもよいし、2つ以上のプロセッサCU2の組み合わせによって実現されていてもよい。
【0043】
[液処理ユニットの構成]
続いて、
図6及び
図7を参照して、液処理ユニットU1についてさらに詳しく説明する。液処理ユニットU1は、
図6に示されるように、回転保持部40と、駆動部50と、ポンプPと、バルブVと、ヒータ71と、断熱材72とを備える。
【0044】
回転保持部40は、回転部41と、保持部42とを有する。回転部41は、上方に突出したシャフト43を有する。回転部41は、例えば電動モータ等を動力源としてシャフト43を回転させる。保持部42は、シャフト43の先端部に設けられている。保持部42上には被処理体Wが配置される。保持部42は、例えば吸着等により被処理体Wを略水平に保持する。すなわち、回転保持部40は、被処理体Wの姿勢が略水平の状態で、被処理体Wの表面(基板W1の表面W1a)に対して垂直な軸(回転軸)周りで被処理体Wを回転させる。本実施形態では、回転軸は、円形状を呈する被処理体W(基板W1)の中心を通っているので、中心軸でもある。本実施形態では、
図6に示されるように、回転保持部20は、上方から見て時計回りに被処理体Wを回転させる。
【0045】
駆動部50は、ノズルNを駆動するように構成されている。駆動部50は、ガイドレール51と、スライドブロック52と、アーム53とを有する。ガイドレール51は、回転保持部40(被処理体W)の上方において水平方向に沿って延びている。スライドブロック52は、ガイドレール51に沿って水平方向に移動可能となるように、ガイドレール51に接続されている。アーム53は、上下方向に移動可能となるように、スライドブロック52に接続されている。アーム53の下端にはノズルNが接続されている。アーム53内には、塗布液が流通可能な流路が形成されている。当該流路は、ポンプPを介して塗布液源B1と接続されている。
【0046】
駆動部50は、例えば電動モータ等の動力源(図示せず)により、スライドブロック52及びアーム53を移動させ、これに伴ってノズルNを移動させる。平面視において、ノズルNは、塗布液の吐出時において、被処理体Wの回転軸に直交する直線上を被処理体Wの径方向に沿って移動する。
【0047】
ノズルNは、被処理体Wの表面に向けて下方に開口している。ノズルNは、例えば、内部混合式の2流体ノズルであってもよいし、外部混合式の2流体ノズルであってもよいし、1流体ノズルであってもよい。本明細書では、内部混合式の2流体ノズルを例にとって、
図7を参照しつつノズルNの構造を説明する。ノズルNは、略円柱状を呈する本体N1と、本体N1の側面に接続された配管N2とを有する。配管N2は、バルブV及びヒータ71を介して窒素ガス源B2と接続されている。
【0048】
本体N1の内部には、流路N3,N4が形成されている。流路N3は、アーム53の内部に形成されている塗布液の流路に連通している。流路N3は、本体N1内において上下方向に延びており、下端がノズルNの吐出口N5と連通している。流路N4は、配管N2と連通している。流路N4は、本体N1内において本体N1の外周面から流路N3の下端近傍まで延びている。流路N4が流路N3と合流する合流部N6では、流路N3を流通する塗布液と流路N4を流通する窒素ガスとが衝突して混合され、塗布液の微小な液滴(塗布液液滴)が生成される。吐出口N5からは、当該液滴が被処理体Wの表面に向けて吹き出される(噴霧される)。吐出口N5の被処理体Wの表面からの高さ位置(鉛直方向における吐出口N5と被処理体Wの表面との直線距離)は、被処理体Wの大きさ、塗布液の流量、塗布液の流速、塗布液の加熱温度(詳しくは後述する)等によって適宜設定しうるが、例えば、50mm〜100mm程度であってもよいし、65mm〜80mm程度であってもよいし、70mm〜75mm程度であってもよい。
【0049】
ポンプPは、
図6に示されるように、コントローラCUからの制御信号を受けて、塗布液を塗布液源B1からノズルNに送り出す。ポンプP、アーム53、ノズルN(流路N3)及び塗布液源B1は、
図7に示されるように、塗布液を被処理体Wに供給するための供給部60を構成している。
【0050】
バルブVは、
図6に示されるように、コントローラCUからの制御信号を受けて、窒素ガスを窒素ガス源B2からノズルNに送り出す。
【0051】
ヒータ71は、コントローラCUからの制御信号を受けて、窒素ガス源B2から送り出された窒素ガスを所定温度(室温よりも高い温度)に加熱する。そのため、ヒータ71によって加熱された窒素ガスが合流部N6で塗布液と合流すると、塗布液が加熱されて加熱液体となる。すなわち、ノズルNの吐出口N5からは、加熱液体が液滴の状態で吹き出される。
【0052】
ここで、ノズルNの吐出口N5における加熱液体(塗布液の液滴)の温度が塗布液の溶媒(溶剤)の沸点の1/2以下となるように、ヒータ71による窒素ガスの加熱量を設定してもよい(第1の温度範囲)。具体的には、吐出口N5における加熱液体の温度は、溶剤がIPAのときは41.2℃以下であってもよいし、溶剤がPGMEAのときは73℃以下であってもよいし、溶剤がGBLのときは102℃以下であってもよい。この場合、加熱された窒素ガスと混合した後の塗布液が高温となり難いので、溶媒(溶剤)の揮発量が多くなりすぎることが抑制され、ノズルNから吹き出された液滴が被処理体Wの表面に到達する前に固化し難くなる。
【0053】
あるいは、ノズルNの吐出口N5における加熱液体(塗布液の液滴)の温度が35℃〜60℃となるように、ヒータ71による窒素ガスの加熱量を設定してもよい(第2の温度範囲)。この場合も、ノズルから吹き出された液滴が被処理体の表面に到達する前に固化し難くなる。あるいは、ノズルNの吐出口N5における加熱液体(塗布液の液滴)の温度が上記の第1及び第2の温度範囲の双方を満たすように、ヒータ71による窒素ガスの加熱量を設定してもよい(第3の温度範囲)。
【0054】
断熱材72は、配管N2の周りに配置されており、配管N2の内外において熱の移動を抑制する。そのため、断熱材72は、ヒータ71によって加熱された塗布液(加熱液体)が吐出口N5から吐出するまでの間において、加熱液体の温度の低下を抑制する。
【0055】
バルブV、配管N2、ノズルN(流路N4)、窒素ガス源B2及びヒータ71は、加熱された窒素ガスをノズルNに供給すると共に加熱された窒素ガスによって塗布液を加熱するための加熱供給部70(第1の加熱部)を構成している。
【0056】
[熱処理ユニットの構成]
続いて、
図8及び
図9を参照して、熱処理ユニットU2の構成について説明する。熱処理ユニットU2は、筐体100内に、被処理体Wを加熱する加熱室110と、被処理体Wを搬送する搬送機構120とを有する。筐体100のうち搬送機構120に対応する部分の両側壁には、被処理体Wを筐体100の内部に搬入すると共に被処理体Wを筐体100外へと搬出するための搬入出口101が形成されている。
【0057】
加熱室110は、蓋部111と、熱板収容部112とを有する。蓋部111は、熱板収容部112の上方に位置しており、熱板収容部112から離間した上方位置と熱板収容部112上に載置される下方位置との間で上下動が可能である。蓋部111は、下方位置にあるときに熱板収容部112とともに処理室PRを構成する。蓋部111の中央には、排気部111aが設けられている。排気部111aは、処理室PRから気体を排気するために用いられる。
【0058】
熱板収容部112は、円筒状を呈しており、その内部に熱板113を収容する。熱板113の外周部は、支持部材114によって支持されている。支持部材114の外周は、筒状を呈するサポートリング115によって支持されている。サポートリング115の上面には、上方に向けて開口したガス供給口115aが形成されている。ガス供給口115aは、処理室PR内に不活性ガスを噴き出す。
【0059】
熱板113は、
図9に示されるように、円形状を呈する平板である。熱板113の外形は、被処理体Wの外形よりも大きい。熱板113には、その厚さ方向に貫通して延びる貫通孔HLが3つ形成されている(
図9参照)。熱板113の上面には、被処理体Wを支持する6つの支持ピン113aが立設されている(
図8参照)。支持ピン113aの高さは、例えば100μm程度であってもよい。
【0060】
図8に戻って、熱板113の下面には、ヒータ116が配置されている。ヒータ116は、コントローラCUに接続されており、コントローラCUからの指示信号に基づき制御される。
【0061】
熱板113の下方には、昇降機構119が配置されている。昇降機構119は、筐体100外に配置されたモータ119aと、モータ119aによって上下動する3つの昇降ピン119bとを有する。昇降ピン119bはそれぞれ、対応する貫通孔HLを通過可能に構成されている。コントローラCUがモータ119aに上昇信号又は下降信号を送信すると、昇降ピン119bは対応する貫通孔HL内を移動しつつ上下する。昇降ピン119bの先端が熱板113の上方に突出している場合、昇降ピン119bの先端上に被処理体Wを載置可能である。昇降ピン119bの先端上に載置された被処理体Wは、昇降ピン119bの上下動に伴い昇降する。
【0062】
搬送機構120は、加熱室110に隣接して位置している。搬送機構120は、被処理体Wが載置される搬送板121を有する。搬送板121は、
図9に示されるように矩形状を呈する平板である。搬送板121のうち加熱室110側の端部は、加熱室110に向けて突出した円弧状を呈している。
【0063】
搬送板121は、加熱室110側に向かって延伸するレール122に取付けられている。搬送板121は、駆動部123により駆動され、レール122上を水平移動可能である。加熱室110側まで移動した搬送板121は、熱板113の上方に位置する。
【0064】
搬送板121には、レール122の延在方向に沿って延びる2本のスリット124が形成されている。スリット124は、搬送板121における加熱室110側の端部から搬送板121の中央部付近まで延びるように形成されている。スリット124により、加熱室110側に移動した搬送板121と熱板113上に突出した昇降ピン119bとの干渉が防止される。
【0065】
図8に示されるように、搬送板121の下方には昇降機構125が配置されている。昇降機構125は、筐体100外に配置されたモータ125aと、モータ125aによって上下動する3つの昇降ピン125bとを有する。昇降ピン125bはそれぞれ、スリット124を通過可能に構成されている。コントローラCUがモータ125aに上昇信号又は下降信号を送信すると、昇降ピン125bはスリット124内を移動しつつ上下する。昇降ピン125bの先端が搬送板121の上方に突出している場合、昇降ピン125bの先端上に被処理体Wを載置可能である。昇降ピン125bの先端上に載置された被処理体Wは、昇降ピン125bの上下動に伴い昇降する。
【0066】
[塗布膜の形成方法]
続いて、塗布膜Rを被処理体Wの表面に形成する方法(塗布膜形成方法)について、
図10及び
図11を参照して説明する。まず、コントローラCUが受け渡しアームA1を制御して、受け渡しアームA1によってキャリア10内の被処理体Wを棚部33に搬送する。次に、コントローラCUが搬送アームA2を制御して、搬送アームA2によって被処理体Wを棚部33から取り出し、熱処理ユニットU2に搬送する。熱処理ユニットU2では、コントローラCUが搬送機構120(搬送板121)を制御して、被処理体Wが加熱室110内に搬送される(ステップS1)。被処理体Wが熱板113上に載置されると、コントローラCUが昇降機構119を制御して、昇降機構119によって蓋部111を下方位置に降下させる。これにより、蓋部111と熱板収容部112とで構成される処理室PR内に被処理体Wが収容される。
【0067】
次に、コントローラCUが加熱室110を制御して、加熱室110により被処理体Wを所定温度まで加熱する(ステップS2;第1の工程;第1の処理)。加熱室110における被処理体Wの加熱温度は、液滴に含まれる溶剤の沸点よりも0℃〜30℃低い温度に設定されていてもよい。加熱室110による被処理体Wの加熱温度が、液滴に含まれる溶剤の沸点よりも30℃低い温度以上であると、後述のステップS5で吹き付けられる液滴の溶剤の揮発が促進されやすくなる。そのため、液滴が被処理体Wの凹部(凸部W2の間)に溜まって、凸部W2の基端側において特に塗布膜Rの膜厚が大きくなってしまうことが抑制される。加熱室110による被処理体Wの加熱温度が、液滴に含まれる溶剤の沸点よりも0℃低い温度(すなわち、沸点と等しい温度)以下であると、後述のステップS5で吹き付けられる液滴が被処理体Wの表面に到達する前に液滴の溶剤のほとんどが揮発してしまうような事態が生じ難い。そのため、塗布液液滴に含まれる塗布液材料粒子がその形状を保持したまま被処理体Wの表面に次々と堆積してしまうことが抑制される。
【0068】
塗布液の溶剤がIPAである場合には、IPAの沸点が82.4℃であるから、加熱室110における被処理体Wの加熱温度が55℃〜85℃程度に設定されてもよい。塗布液の溶剤がPGMEAである場合には、PGMEAの沸点が146℃であるから、加熱室110における被処理体Wの加熱温度が110℃〜150℃程度に設定されてもよい。塗布液の溶剤がGBLである場合には、GBLの沸点が204℃であるから、加熱室110における被処理体Wの加熱温度が150℃〜205℃程度に設定されてもよい。
【0069】
次に、コントローラCUが昇降機構119及び搬送機構120を制御して、加熱された被処理体Wを加熱室110から搬出する。次に、コントローラCUが搬送アームA2を制御して、搬送アームA2によって被処理体Wを熱処理ユニットU2から取り出し、液処理ユニットU1に搬送する(ステップS3)。被処理体Wが加熱室110によって加熱されてから液処理ユニットU1に搬送されるまでに要する時間は、例えば、数秒〜10秒程度である。この搬送の際、加熱された被処理体Wの温度は、例えば20℃〜30℃程度低下しうる。
【0070】
被処理体Wが液処理ユニットU1に搬送され、回転保持部40の保持部42に保持されると、コントローラCUが回転部41を制御して、被処理体Wを回転駆動させる(ステップS4)。この状態で、コントローラCUが駆動部50、ポンプP、バルブV及びヒータ71を制御して、ノズルNが被処理体Wの回転軸に直交する直線上を被処理体Wの径方向に沿って移動しながら、回転している被処理体Wの表面に対してノズルNの吐出口N5から加熱された塗布液の液滴(加熱液体の液滴)を吹き付ける(ステップS5;
図11(a)参照;第3の工程:第2の処理)。
【0071】
このとき、ヒータ71によって加熱された窒素ガスがノズルNに供給され、塗布液と混合されて加熱液体(第1の加熱液体)が形成されている(第2の工程;第2の処理)。そのため、
図11(a)に示されるように、液滴がノズルNから吹き出された直後から液滴の溶剤が揮発して、液滴(塗布液)の流動性が低下する。また、このとき、ステップS2において被処理体Wが加熱され、被処理体Wの表面が所定の温度となっている。そのため、被処理体Wに付着する直前の液滴又は被処理体Wに付着した液滴の溶剤が被処理体Wから熱を受けて揮発する。これにより、液滴の材料粒子(塗布液材料)が被処理体Wの表面に付着する(
図11(b)参照)。ノズルNが被処理体Wの表面を1回又は複数回往復移動することにより、被処理体Wの表面上に所定の厚さの塗布膜が形成される(
図11(c)参照)。
【0072】
次に、コントローラCUが搬送アームA2を制御して、搬送アームA2によって被処理体Wを液処理ユニットU1から取り出し、被処理体Wが所定温度まで冷めた後に、棚部33に搬送する。このとき、冷却板等の冷却機構を用いて被処理体Wを強制的に冷却してもよいし、自然冷却であってもよい。その後、コントローラCUが受け渡しアームA1を制御して、受け渡しアームA1によって被処理体Wを棚部33からキャリア10内に戻す(ステップS6)。これにより、塗布膜Rの形成処理が完了する。
【0073】
[作用]
以上のような本実施形態では、塗布液を被処理体Wの表面に吹き付けるに際して、塗布液を加熱して加熱液体としている。そのため、加熱液体がノズルNから吹き出されると、その直後から溶媒(溶剤)が揮発して塗布液中の材料粒子(溶質)の濃度が高まるので、塗布液(加熱液体)の流動性が低下した状態となる。従って、被処理体Wの表面(凹凸面)において、液滴同士が凝集して流動することが抑制される。その結果、被処理体Wの表面に塗布液の材料粒子が均一に付着しやすくなる。以上より、凸部W2を含む被処理体Wの表面に沿って塗布膜Rをより均一に形成することが可能となる。
【0074】
加えて、加熱液体がノズルNから吹き出された直後から溶媒(溶剤)の揮発が促進されるので、被処理体Wの表面に到達した液滴の溶媒(溶剤)を完全に揮発させるために被処理体Wを熱処理ユニットU2に搬送させる必要がない。そのため、被処理体Wの表面に所望の厚さの塗布膜Rを形成するために、被処理体Wを液処理ユニットU1と熱処理ユニットU2との間で往復させる必要がない。従って、被処理体Wに塗布膜Rを形成する時間を極めて短縮することが可能となる。
【0075】
本実施形態では、被処理体Wの表面に液滴を吹き付ける前に、ステップS2において被処理体Wを熱処理ユニットU2において加熱している。そのため、被処理体Wの表面全体において、ステップS5で吹き付けられる塗布液の溶媒(溶剤)が被処理体Wからの熱を受けて揮発する。そのため、被処理体Wの表面(凹凸面)において、液滴同士が凝集して流動することがより抑制される。従って、凸部W2を含む被処理体Wの表面に沿って塗布膜Rをさらに均一に形成することが可能となる。
【0076】
本実施形態では、ノズルN内において塗布液と加熱された窒素ガスとを混合することにより塗布液を加熱して加熱液体を得ている。そのため、塗布液がノズルNから吐出される直前まで、塗布液の流動性が高いままの状態となる。従って、ノズルNから塗布液を液滴の状態で吹き出しやすくなる。その結果、ノズルNからの吐出前においては塗布液の流動性を高めて液滴を生成したい一方で、ノズルNからの吐出後においては塗布液の流動性を低下させて被処理体Wの表面に塗布液の材料粒子を均一に付着させたいという相反する要求に、簡易な手法で応えることができる。
【0077】
本実施形態では、ステップS5において、被処理体Wを回転させた状態で被処理体Wの表面に対して液滴をノズルNから吹き付けている。そのため、静止した被処理体Wの表面上においてノズルNを蛇行させながらノズルNから液滴を被処理体Wの表面に吹き付けるときと比較して、ノズルNからの液滴が被処理体Wの表面に重複して吹き付けられ難い。従って、凸部W2を含む被処理体Wの表面に沿って塗布膜Rをいっそう均一に形成することが可能となる。
【0078】
[他の実施形態]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。例えば、本実施形態では、被処理体Wを加熱室110により加熱する処理(ステップS2)を熱処理ユニットU2で行い、被処理体Wの表面に塗布液液滴をノズルNから吹き付ける処理(ステップS5)を液処理ユニットU1で行っていたが、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2の双方の構成を有する処理室を用いて、双方の処理を当該処理室で行ってもよい。この場合、被処理体Wを加熱する際には、被処理体Wの回転を停止させておくとよい。
【0079】
基板W1の径方向に複数の凸部W2が存在する場合、基板W1の回転軸に近いほど遠心力が小さくなるので、液滴が被処理体Wの表面で凝集すると、当該回転軸寄りの凸部W2ほど凝集した塗布液が滞留しやすい。そのため、ノズルNが当該回転軸の近傍に位置するときに、ノズルNの移動速度を速くしてもよい。この場合、被処理体Wの表面のうち当該回転軸寄りにおいて、液滴の吹き付け量が少なくなるので、塗布液液滴が凝集し難くなる。
【0080】
コントローラCUは、ノズルNの位置が基板W1の回転軸に近いほど被処理体Wの回転数を大きくするように、回転部41を制御してもよい。このとき、コントローラCUは、ノズルNの直下での被処理体Wの移動速度(線速度)がノズルNの位置にかかわらず一定になるように、回転部41を制御してもよい。コントローラCUは、ノズルNの位置が基板W1の回転軸に近いほど被処理体Wの回転数を大きくする制御と、ノズルNが当該回転軸の近傍に位置するほどノズルNの移動速度を早くする制御とを組み合わせて実行してもよい。コントローラCUは、ノズルNの基板W1に対する位置にかかわらず、被処理体Wの回転数が一定となるように、回転部41を制御してもよい。
【0081】
ノズルNからの液滴の吹き付け領域が被処理体Wの表面の大きさ以上である等の場合には、ノズルNを移動させなくてもよいし、被処理体Wを回転させなくてもよい。
【0082】
ステップS2に加えて、被処理体Wの表面に液滴をノズルNから吹き付ける処理(ステップS5)の際にも、被処理体Wを加熱してもよい。あるいは、被処理体Wを予め加熱するステップS2の処理を行わなくてもよい。
【0083】
例えば、
図12に示されるように、液処理ユニットU1は、加熱された窒素ガス(高温窒素ガス)を被処理体Wの表面に吹き付けるように構成されたガスノズルGNを更に有し、コントローラCUからの指示に基づいてガスノズルGNの動作をガス供給部によって制御してもよい。具体的には、ステップS5において、コントローラCUがガス供給部を制御して、ガスノズルGNをノズルNに追従させつつ、被処理体Wの表面のうち液滴の吹き付け箇所に対して高温窒素ガスをガスノズルGNから吹き付けてもよい。この場合、液滴の吹き付け中に、ガスノズルGNからの高温窒素ガスによって溶剤の乾燥が行われるので、被処理体Wの表面に塗布膜Rを形成するのに要する時間を短縮することができる。なお、当該高温窒素ガスの温度は、50℃〜150℃程度であってもよい。
【0084】
上記の実施形態では、ヒータ71によって窒素ガスを加熱し、加熱した窒素ガスによってさらに塗布液を加熱していたが、
図13に示されるように、ヒータ71に代えてポンプPの下流側で且つアーム53の上流側にヒータ81を設け、塗布液を直接加熱してもよい。この場合も、塗布液がノズルNから吐出される直前まで、塗布液の流動性を維持しうる。そのため、ノズルNから塗布液を液滴の状態で吹き出しやすくなる。従って、ノズルNからの吐出前においては塗布液の流動性を高めて液滴を生成したい一方で、ノズルNからの吐出後においては塗布液の流動性を低下させて被処理体Wの表面に塗布液の材料粒子が均一に付着させたいという相反する要求に、簡易な手法で応えることができる。
【0085】
図14に示されるように、バルブVの上流側とヒータ71の下流側とを接続するバイパス流路をさらに設けると共に、当該バイパス流路にバルブ73を設けてもよい。この場合、コントローラCUがバルブV,73を制御することにより、ヒータ71によって加熱された窒素ガスと、ヒータ71によって加熱されていない窒素ガス(常温の窒素ガス)とを、選択的にノズルNに供給することができる。具体的には、被処理体Wの表面に液滴を吹き出す処理が1回目の場合には、コントローラCUがバルブVを閉鎖し且つバルブ73を開放することで、加熱液体(第1の加熱液体)の温度を相対的に低くしてもよい。一方、被処理体Wの表面に液滴を吹き出す処理が2回目以降の場合には、コントローラCUがバルブVを開放し且つバルブ73を閉鎖することで、加熱液体(第2の加熱液体)の温度を相対的に高くしてもよい(第4の工程;第3の処理)。このようにすると、被処理体Wの表面に1回目に吹き付けられる液滴(第3の工程;第2の処理)は、流動性が高い傾向にあるので、被処理体のWうち狭隘な凹部(凸部W2の間)に入り込みやすくなる。一方、被処理体Wの表面に2回目以降に吹き付けられる液滴(第5の工程;第3の処理)は、流動性が低い傾向にあるので、被処理体Wの凸部W2の側面に付着しやすくなる。従って、凸部W2を含む被処理体Wの表面に沿って塗布膜Rをさらに均一に形成することが可能となる。また、ノズルN内において塗布液の材料粒子が固化し、ノズルNが詰まることを抑制するために、ノズルNからの液滴の吹き付け処理が行われた後にコントローラCUがバルブVを閉鎖し且つバルブ73を開放することで、常温の窒素ガスをノズルNに供給して、ノズルNを冷却してもよい。
【0086】
図15に示されるように、ノズルN内において塗布液の材料粒子が固化し、ノズルNが詰まることを抑制するために、液処理ユニットU1がノズルNの洗浄部82をさらに有していてもよい。洗浄部82は、例えば、溶剤を貯留する容器である。液滴の吹き付け処理が行われたノズルNを洗浄部82内の溶剤に浸漬することにより、ノズルNの冷却及び洗浄が行われる。
【0087】
塗布液に混合されるガスとしては、窒素ガス以外の種々のガス(例えば、不活性ガス、空気等)を用いてもよい。
【実施例】
【0088】
本実施形態に係る塗布膜形成装置1を用いて塗布膜Rを被処理体Wの表面に形成した場合に、凸部W2を含む被処理体Wの表面に沿って塗布膜Rを均一に形成できることを確認するため、下記の試験を行った。
【0089】
直径150mmの円板状の基板W1上に複数の凸部W2が設けられた被処理体Wを用意した。また、ポジ型フォトレジストをPGMEAで希釈したレジスト液を用意した。
【0090】
次に、熱処理ユニットU2により被処理体Wを120℃で60秒間加熱した。次に、加熱後の被処理体Wを液処理ユニットU1に搬送し、用意したレジスト液を2流体ノズルのノズルNから被処理体Wの表面に吹き付けた。このとき、ノズルNの直下における被処理体Wの移動速度(線速度)が一定になるように、回転保持部40による被処理体Wの回転数を60rpm〜600rpmの範囲内で変動させた。また、ノズルNの移動速度は10mm/秒〜150mm/秒であった。さらに、被処理体Wの表面においてノズルNを14回往復させた。以上により、被処理体Wの表面にレジスト膜(塗布膜R)を形成した。
【0091】
次に、任意の2つの凸部W2について、断面の様子を電子顕微鏡にて観察した。
図16(a),(b)において、当該2つの凸部W2の電子顕微鏡写真を模式的に図示した。試どちらの凸部W2においても、凸部W2を含む被処理体Wの表面に沿ってレジスト膜(塗布膜R)が極めて均一に形成されていたことが確認された。