(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(A1)及び分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)からなる群より選択される少なくとも1種であるポリシロキサン(A)と、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン(B1)及び分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)からなる群より選択される少なくとも1種であるポリシロキサン(B)と、を含む硬化性樹脂組成物であり、
前記ポリシロキサン(A)として下記平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び下記平均単位式(a−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記ポリシロキサン(B)として下記平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び下記平均単位式(b−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
(i)前記ポリシロキサン(A)が分岐鎖状の前記ポリオルガノシロキサン(A1)を含み且つ前記ポリシロキサン(B)が前記ポリオルガノシロキサン(B1)を含む組み合わせ、及び/又は、(ii)前記ポリシロキサン(A)がケイ素原子に結合したフェニル基を有する前記ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)を含み且つ前記ポリシロキサン(B)が前記ポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)を含む組み合わせを満たし、
前記硬化性樹脂組成物中に含まれる全てのケイ素原子のうち、(R3SiO1/2)で表されるシロキサン単位におけるケイ素原子の数の割合をM、(R2SiO2/2)で表されるシロキサン単位におけるケイ素原子の数の割合をD、(RSiO3/2)で表されるシロキサン単位におけるケイ素原子の数の割合をT、(SiO4/2)で表されるシロキサン単位におけるケイ素原子の数の割合をQとしたとき、(T+Q)/D>0.3及びM+D+T+Q=1を満たし(但し、Rは一価の基を示す)、
前記硬化性樹脂組成物中に存在する脂肪族炭素−炭素二重結合1モルに対して、ヒドロシリル基が0.9〜5.0モルであり、
前記硬化性樹脂組成物を25〜180℃且つ1〜720分間の条件の中から選択される少なくとも1点の硬化条件で加熱して硬化させたときの硬化物の、下記剥離荷重評価により得られる1mm2あたりの剥離強度が0.40N以下、及び/又は、下記剥離荷重評価により得られる1mm2あたりの総剥離荷重が0.018N・mm以下であることを特徴とする、硬化性樹脂組成物。
剥離荷重評価:SUS製の被着体と前記硬化物を、垂直方向に離れた状態から、前記被着体及び前記硬化物の少なくとも一方を移動させて前記被着体と前記硬化物とを接触面積50〜800mm2となるように接触させ、100Nの荷重で2分間押し付けた後、垂直方向に別離させたときの接触面の応力変化を記録し、前記被着体と前記硬化物とが別離し始めてから完全に別離するまでの最大応力値を前記接触面積で除した値を剥離強度とし、前記被着体と前記硬化物とが別離し始めてから完全に別離するまでの応力曲線とベースラインとで囲まれた面積を前記接触面積で除した値を総剥離荷重とする。但し、前記剥離強度及び前記総剥離荷重は、それぞれ、別離させる際の速度を、5〜500mm/minの範囲内の任意の10点(但し、隣接する2点は、速度差が5mm/min以上である)で測定して得られた値の最大値とする。
平均単位式(a−1):
(R1SiO3/2)a1(R12SiO2/2)a2(R13SiO1/2)a3(SiO4/2)a4(X1O1/2)a5
[平均単位式(a−1)中、R1は、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は炭素数2〜8のアルケニル基を示す。但し、R1の一部はアルケニル基であり、分子内に2個以上となる範囲である。X1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。a1、a2、a3、a4、及びa5は、それぞれ、1>a1≧0、1>a2≧0、1>a3>0、1>a4≧0、0.05≧a5≧0、a1+a2+a4>0、及びa1+a2+a3+a4+a5=1を満たす数値を示す。]
平均単位式(a−2):
(R22SiO2/2)b1(R23SiO1/2)b2(R2SiO3/2)b3(SiO4/2)b4(RA)b5(X2O1/2)b6
[平均単位式(a−2)中、R2は、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は炭素数2〜8のアルケニル基を示す。但し、R2の一部はアルケニル基であり、分子内に2個以上となる範囲である。RAは、同一又は異なって、炭素数1〜14のアルキレン基を示す。X2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。b1、b2、b3、b4、b5、及びb6は、それぞれ、1>b1≧0、1>b2>0、1>b3≧0、1>b4≧0、0.7>b5>0、0.05≧b6≧0、b1+b3+b4>0、及びb1+b2+b3+b4+b5+b6=1を満たす数値を示す。]
平均単位式(b−1):
(R3SiO3/2)c1(R32SiO2/2)c2(R33SiO1/2)c3(SiO4/2)c4(X3O1/2)c5
[平均単位式(b−1)中、R3は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基を示す。但し、R3の一部は水素原子であり、分子内に2個以上となる範囲である。X3は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。c1、c2、c3、c4、及びc5は、それぞれ、1>c1≧0、1>c2≧0、1>c3>0、1>c4≧0、0.05≧c5≧0、c1+c2+c4>0、及びc1+c2+c3+c4+c5=1を満たす数値を示す。]
平均単位式(b−2):
(R42SiO2/2)d1(R43SiO1/2)d2(R4SiO3/2)d3(SiO4/2)d4(RA)d5(X4O)d6
[平均単位式(b−2)中、R4は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基を示す。但し、R4の一部は水素原子であり、分子内に2個以上となる範囲である。RAは、同一又は異なって、炭素数1〜14のアルキレン基を示す。X4は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。d1、d2、d3、d4、d5、及びd6は、それぞれ、1>d1≧0、1>d2>0、1>d3≧0、1>d4≧0、0.5>d5>0、0.05≧d6≧0、d1+d3+d4>0、及びd1+d2+d3+d4+d5+d6=1を満たす数値を示す。]
前記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)が、側鎖の一部又は全部が置換若しくは無置換のアリール基のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンである請求項3〜5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
前記硬化性樹脂組成物中に含まれる全てのポリシロキサン中のケイ素原子に結合した一価の置換又は無置換炭化水素基の全量に対するアリール基の割合が、10モル%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(A1)及び分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)からなる群より選択される少なくとも1種であるポリシロキサン(A)と、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン(B1)及び分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)からなる群より選択される少なくとも1種であるポリシロキサン(B)と、を含む組成物(I)であり、
前記ポリシロキサン(A)として下記平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び下記平均単位式(a−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記ポリシロキサン(B)として下記平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び下記平均単位式(b−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記組成物(I)中に含まれる全てのケイ素原子のうち、(R3SiO1/2)で表されるシロキサン単位におけるケイ素原子の数の割合をM、(R2SiO2/2)で表されるシロキサン単位におけるケイ素原子の数の割合をD、(RSiO3/2)で表されるシロキサン単位におけるケイ素原子の数の割合をT、(SiO4/2)で表されるシロキサン単位におけるケイ素原子の数の割合をQとしたとき、(T+Q)/D>0.3及びM+D+T+Q=1を満たし(但し、Rは一価の基を示す)、
前記組成物(I)中に存在する脂肪族炭素−炭素二重結合1モルに対して、ヒドロシリル基が0.9〜5.0モルである組成物(I)の硬化物を形成し、下記剥離荷重評価により前記硬化物の剥離強度及び/又は総剥離荷重を求めて目的とする硬化性樹脂組成物の組成を決定する段階を含むことを特徴とする、硬化性樹脂組成物の製造方法。
剥離荷重評価:被着体と前記硬化物を、垂直方向に離れた状態から、前記被着体及び前記硬化物の少なくとも一方を移動させて、接触面積が50mm2以上となるように前記被着体と前記硬化物とを接触させ、荷重をかけて押し付けた後、垂直方向に別離させたときの接触面の応力変化を記録し、前記被着体と前記硬化物とが別離し始めてから完全に別離するまでの最大応力値を前記被着体と前記硬化物の接触面積で除した値を剥離強度とし、前記被着体と前記硬化物とが別離し始めてから完全に別離するまでの応力曲線とベースラインとで囲まれた面積を前記接触面積で除した値を総剥離荷重とする。
平均単位式(a−1):
(R1SiO3/2)a1(R12SiO2/2)a2(R13SiO1/2)a3(SiO4/2)a4(X1O1/2)a5
[平均単位式(a−1)中、R1は、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は炭素数2〜8のアルケニル基を示す。但し、R1の一部はアルケニル基であり、分子内に2個以上となる範囲である。X1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。a1、a2、a3、a4、及びa5は、それぞれ、1>a1≧0、1>a2≧0、1>a3>0、1>a4≧0、0.05≧a5≧0、a1+a2+a4>0、及びa1+a2+a3+a4+a5=1を満たす数値を示す。]
平均単位式(a−2):
(R22SiO2/2)b1(R23SiO1/2)b2(R2SiO3/2)b3(SiO4/2)b4(RA)b5(X2O1/2)b6
[平均単位式(a−2)中、R2は、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は炭素数2〜8のアルケニル基を示す。但し、R2の一部はアルケニル基であり、分子内に2個以上となる範囲である。RAは、同一又は異なって、炭素数1〜14のアルキレン基を示す。X2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。b1、b2、b3、b4、b5、及びb6は、それぞれ、1>b1≧0、1>b2>0、1>b3≧0、1>b4≧0、0.7>b5>0、0.05≧b6≧0、b1+b3+b4>0、及びb1+b2+b3+b4+b5+b6=1を満たす数値を示す。]
平均単位式(b−1):
(R3SiO3/2)c1(R32SiO2/2)c2(R33SiO1/2)c3(SiO4/2)c4(X3O1/2)c5
[平均単位式(b−1)中、R3は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基を示す。但し、R3の一部は水素原子であり、分子内に2個以上となる範囲である。X3は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。c1、c2、c3、c4、及びc5は、それぞれ、1>c1≧0、1>c2≧0、1>c3>0、1>c4≧0、0.05≧c5≧0、c1+c2+c4>0、及びc1+c2+c3+c4+c5=1を満たす数値を示す。]
平均単位式(b−2):
(R42SiO2/2)d1(R43SiO1/2)d2(R4SiO3/2)d3(SiO4/2)d4(RA)d5(X4O)d6
[平均単位式(b−2)中、R4は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基を示す。但し、R4の一部は水素原子であり、分子内に2個以上となる範囲である。RAは、同一又は異なって、炭素数1〜14のアルキレン基を示す。X4は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。d1、d2、d3、d4、d5、及びd6は、それぞれ、1>d1≧0、1>d2>0、1>d3≧0、1>d4≧0、0.5>d5>0、0.05≧d6≧0、d1+d3+d4>0、及びd1+d2+d3+d4+d5+d6=1を満たす数値を示す。]
【発明を実施するための形態】
【0040】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(A1)及び分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)からなる群より選択される少なくとも1種であるポリシロキサン(A)(単に「ポリシロキサン(A)」と称する場合がある)と、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン(B1)及び分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)からなる群より選択される少なくとも1種であるポリシロキサン(B)(単に「ポリシロキサン(B)」と称する場合がある)と、を必須成分として含む硬化性組成物である。本発明の硬化性樹脂組成物は、上述の必須成分以外にも、さらに例えば、後述のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)、イソシアヌル骨格を含む化合物(D)、ヒドロシリル化触媒等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0041】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリシロキサン(A)として下記平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び下記平均単位式(a−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリシロキサン(B)として下記平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び下記平均単位式(b−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。なお、下記平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサンはポリオルガノシロキサン(A1)に該当し、下記平均単位式(a−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンはポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)に該当する。また、下記平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサンはポリオルガノシロキサン(B1)に該当し、下記平均単位式(b−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンはポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)に該当する。
平均単位式(a−1):
(R
1SiO
3/2)
a1(R
12SiO
2/2)
a2(R
13SiO
1/2)
a3(SiO
4/2)
a4(X
1O
1/2)
a5
平均単位式(a−2):
(R
22SiO
2/2)
b1(R
23SiO
1/2)
b2(R
2SiO
3/2)
b3(SiO
4/2)
b4(R
A)
b5(X
2O
1/2)
b6
平均単位式(b−1):
(R
3SiO
3/2)
c1(R
32SiO
2/2)
c2(R
33SiO
1/2)
c3(SiO
4/2)
c4(X
3O
1/2)
c5
平均単位式(b−2):
(R
42SiO
2/2)
d1(R
43SiO
1/2)
d2(R
4SiO
3/2)
d3(SiO
4/2)
d4(R
A)
d5(X
4O)
d6
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物中に含まれる全てのケイ素原子のうち、(R
3SiO
1/2)で表されるシロキサン単位におけるケイ素原子の数の割合をM、(R
2SiO
2/2)で表されるシロキサン単位におけるケイ素原子の数の割合をD、(RSiO
3/2)で表されるシロキサン単位におけるケイ素原子の数の割合をT、(SiO
4/2)で表されるシロキサン単位におけるケイ素原子の数の割合をQとしたとき、M、D、T、及びQは、それぞれ、(T+Q)/D>0.3及びM+D+T+Q=1を満たす。これにより、硬化物のタック性が低く、且つゴミが付着しにくくなる傾向がある。特に、5>(T+Q)/D>0.3を満たすことが好ましい。なお、上記Rは、一価の基を示し、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基等が挙げられる。上記一価の有機基としてはアルケニル基や後述の一価の置換又は無置換炭化水素基等が挙げられる。
【0043】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物中に含まれる全てのケイ素原子のうち、上記T又はQについては、0.9>T≧0.4又は0.9>Q≧0.2を満たすことが好ましい。これにより、硬化物にゴミが付着しにくくなり、かつ硬化物の靭性が向上する傾向にある。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物中に含まれる全てのケイ素原子のうち、上記M、D、T、及びQは、それぞれ、1>M≧0、1>D>0、1>T>0、及び1>Q>0を満たすことが好ましい。なお、上記M、D、T、及びQは、例えば、
29Si−NMRスペクトル測定等により算出することができる。なお、本明細書において、上記M、D、T、及びQの割合は、それぞれ、本発明の硬化性樹脂組成物中に含まれる全てのケイ素原子に対する割合である。本発明の硬化性樹脂組成物中に含まれるケイ素原子を含む化合物としては、ポリシロキサン(A)、ポリシロキサン(B)、後述のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)等が挙げられる。
【0045】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂組成物中に存在する脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)1モルに対して、ヒドロシリル基が0.9〜5.0モルとなるような組成(配合組成)であり、好ましくは0.9〜4.0モル、より好ましくは0.9〜3.0モル、さらに好ましくは0.9〜2.5モルである。ヒドロシリル基と脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)との割合を上記範囲に制御することにより、硬化物中の未硬化成分(特に、未硬化のポリシロキサン(A)及び未硬化のポリシロキサン(B))の残存量が少なくなり、剥離強度が低減する傾向がある。また、硬化物の耐熱性、透明性、耐熱衝撃性及び耐リフロー性、並びに腐食性ガス(例えば、SOxガス等)に対するバリア性が向上する傾向がある。なお、脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)1モルに対するヒドロシリル基のモル数は、例えば、
1H−NMRスペクトル測定等により算出することができる。
【0046】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、25〜180℃且つ1〜720分間の条件の中から選択される少なくとも1点の硬化条件で加熱して硬化させたときの硬化物の、下記剥離荷重評価により得られる1mm
2あたりの剥離強度が0.40N以下、及び/又は下記剥離荷重評価により得られる1mm
2あたりの総剥離荷重が0.018N・mm以下である硬化性樹脂組成物である。従って、本発明の硬化性樹脂組成物は、下記剥離荷重評価により得られる1mm
2あたりの剥離強度が0.40N以下、及び、下記剥離荷重評価により得られる1mm
2あたりの総剥離荷重が0.018N・mm以下であることの一方のみを満たす硬化性樹脂組成物であってもよいし、両方を満たす硬化性樹脂組成物であってもよい。なお、本明細書において、下記剥離荷重評価を「剥離荷重評価(X)」と称する場合がある。
剥離荷重評価:SUS製の被着体と前記硬化物を、垂直方向に離れた状態から、前記被着体及び前記硬化物の少なくとも一方を移動させて前記被着体と前記硬化物とを接触面積50〜800mm
2となるように接触させ、100Nの荷重で2分間押し付けた後、垂直方向に別離させたときの接触面の応力変化を記録し、前記被着体と前記硬化物とが別離し始めてから完全に別離するまでの最大応力値を前記接触面積で除した値を剥離強度とし、前記被着体と前記硬化物とが別離し始めてから完全に別離するまでの応力曲線とベースラインとで囲まれた面積を前記接触面積で除した値を総剥離荷重とする。但し、前記剥離強度及び前記総剥離荷重は、それぞれ、別離させる際の速度を、5〜500mm/minの範囲内の任意の10点(但し、隣接する2点は、速度差が5mm/min以上である)で測定して得られた値の最大値とする。
【0047】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記特定の条件で硬化させて得られる硬化物の、上記剥離荷重評価により得られる1mm
2あたりの剥離強度が0.40N以下であること、及び/又は、上記剥離荷重評価により得られる1mm
2あたりの総剥離荷重が0.018N・mm以下であることを満たす。これにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化物のタック性及びゴミの付着性が共に低下する傾向がある。
【0048】
従来、シリコーン系封止材を形成する硬化性樹脂組成物は、これを硬化させた材料によりLED素子が封止されたLEDとしたときのタック性及びゴミの付着性について、実際にLEDを製造して初めて確認できるものであった。なお、従来でも、実際にLEDを製造する前に、硬化性樹脂組成物を所定の条件で硬化させた硬化物をタッキング試験機等によりタック性を評価することは可能であった。しかしながら、タッキング試験機を用いたタック性評価により得られる評価結果と、実際に製造されたLEDのタック性及びゴミの付着性との相関は高くなかった。また、タック性が低いとゴミが付着しにくいとは限らず、タック性が低くてもゴミが付着しやすい場合や、タック性が高くてもゴミが付着しにくい場合もあった。このように、硬化性樹脂組成物を硬化させた材料のタック性及びゴミの付着性は、該材料を封止材として用いたLEDを実際に製造してみないと確認することができなかった。さらに、これまでは、製造されたLEDについてのタック性及びゴミの付着性を評価する方法は定性的なものしかなかった。
【0049】
これに対し、特定の組成を有する硬化性樹脂組成物については、上記剥離荷重評価(X)を実施して剥離強度及び総剥離荷重を求めることにより、該硬化性樹脂組成物を封止剤として用いて実際に光半導体装置を製造する前の段階で、該該光半導体装置のタック性及びゴミの付着性を事前に評価することができる。また、上記剥離荷重評価(X)により、製造されたLEDについてのタック性及びゴミの付着性を定量的に評価できる。そして、本発明の硬化性樹脂組成物は、特定の組成を有し、且つ上記剥離荷重評価(X)により求められる剥離強度及び/又は総剥離荷重が特定の範囲内であることにより、硬化させることによりタック性が低く且つゴミが付着しにくい硬化物を形成できる。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記特定の条件で硬化させて得られる硬化物の、上記剥離荷重評価で得られる1mm
2あたりの剥離強度が0.40N以下であることが好ましく、より好ましくは0.10N以下である。上記剥離強度が0.40N以下であると、硬化物のタック性が低下する傾向がある。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記特定の条件で硬化させて得られる硬化物の、上記剥離荷重評価で得られる1mm
2あたりの総剥離荷重が0.018N・mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.016N・mm以下、さらに好ましくは0.010N・mm以下である。上記総剥離荷重が0.018N・mm以下であると、硬化物にゴミが付着しにくくなる傾向がある。
【0052】
上記剥離強度及び上記総剥離荷重をそれぞれ上記の特定の範囲内とするには、硬化性樹脂組成物中に含まれるポリシロキサン(A)及びポリシロキサン(B)が重要である。より具体的には、硬化性樹脂組成物中のポリシロキサン(A)及びポリシロキサン(B)中の、直鎖状ポリシロキサンと分岐鎖状ポリシロキサンの割合、ケイ素原子に結合したアルキル基の割合、ケイ素原子に結合したアリール基の割合、アルケニル基とヒドロシリル基の比率を調整することにより、上記剥離強度及び上記総剥離荷重をそれぞれ上記の特定の範囲内とすることが容易となる。例えば、直鎖状のポリシロキサンを用いると剥離強度が小さくなる傾向があり、分岐鎖状のポリシロキサンを用いると、総剥離荷重が小さくなる傾向がある。また、ポリシロキサン中のアルケニル基およびヒドロシリル基以外のケイ素原子に結合した基として、アルキル基(特にメチル基)が多いと、剥離強度が小さくなる傾向があり、アリール基(特にフェニル基)が多いと、総剥離荷重が小さくなる傾向がある。また、硬化物中の未硬化成分が多いと剥離強度が高くなる傾向にあるため、アルケニル基とヒドロシリル基の比率を、硬化物中の未硬化成分が少なくなるように調整(特に、ビニル基の割合が過剰とならないように調整)することが有効である。
【0053】
(剥離荷重評価(X))
剥離荷重評価(X)は、本発明の硬化性樹脂組成物を、25〜180℃且つ1〜720分間の条件の中から選択される少なくとも1点の硬化条件で加熱して硬化させたときの硬化物について実施する。即ち、本発明の硬化性樹脂組成物を、25〜180℃の範囲内の任意の温度にて、1〜720分間の範囲内の任意の時間加熱を行って硬化させて得られる硬化物について上記剥離荷重評価を行う。よって、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の上記剥離荷重評価により求められる剥離強度及び/又は総剥離荷重が上記範囲内であることは、上記硬化条件における少なくとも1点において硬化された硬化物が満たされればよい。上記硬化の際の温度(硬化温度)は、60〜170℃が好ましく、より好ましくは80〜150℃である。また、硬化する際の加熱時間(硬化時間)は、3〜600分間が好ましく、より好ましくは60〜480分間である。上記硬化は、一段階で行ってもよいし、多段階で行ってもよい。多段階で行う場合、各段階における硬化温度は上述の硬化温度の範囲内であり、且つトータルの硬化時間は上述の硬化時間の範囲内である。中でも、100℃で1時間加熱し、次いで150℃で5時間加熱することが好ましい。なお、剥離荷重評価(X)は、後述の本発明の測定方法に該当する。
【0054】
剥離荷重評価は、まず、SUS製の被着体と硬化性樹脂組成物の硬化物を、垂直方向(鉛直方向)に離れた状態から、被着体及び硬化物の少なくとも一方を移動させて被着体と硬化物とを接触面積50〜800mm
2となるように接触させる。荷重をかけて押し付けても接触面積が変化しにくい観点から、被着体と硬化物の接触面は平面であることが好ましい。
【0055】
接触させた被着体と硬化物を、その後、垂直方向に100Nの荷重で2分間押し付ける。荷重は、被着体側から加えてもよいし、硬化物側から加えてもよいが、硬化物側から加えることが好ましい。また、荷重を加える方向は、鉛直方向の上側からでもよいし、下側からでもよい。
【0056】
荷重を加えた後、被着体と硬化物を、垂直方向に別離させる。これらの被着体と硬化物の接触、押し付け、別離の一連の作業中、上記接触面の応力変化を記録する。そして、被着体と硬化物とが別離し始めてから完全に別離するまでの最大応力値を、被着体と硬化物の接触面積で除した値を剥離強度とし、被着体と硬化物とが別離し始めてから完全に別離するまでの応力曲線とベースライン(接触面の応力が0のライン)とで囲まれた面積を、被着体と硬化物の接触面積で除した値を総剥離荷重とする。
図2は、剥離荷重評価時における被着体と硬化物の接触面の応力量の変化の様子の一例を示すグラフである。
図2中、200は最大応力値、201は被着体と硬化物とが別離し始めてから完全に別離するまでの応力曲線とベースラインとで囲まれた面積を示す。なお、上記剥離強度及び上記総剥離荷重は、それぞれ、別離させる際の速度を、5〜500mm/minの範囲内の任意の10点で測定して得られた値の最大値とする。但し、隣接する2点は、速度差が5mm/min以上である。硬化性樹脂組成物の組成により、剥離強度及び総剥離荷重が最も大きくなる際の別離速度が異なる場合があるためである。上記任意の10点としては、中でも、5mm/min、10mm/min、20mm/min、30mm/min、50mm/min、70mm/min、100mm/min、150mm/min、300mm/min、及び500mm/minの10点が好ましい。
【0057】
剥離荷重評価(X)は、市販の万能試験機(例えば、「テンシロン万能材料試験機 RTC−1310A」、(株)エー・アンド・デイ製)を用いて行うことができる。
【0058】
[ポリシロキサン(A)]
本発明の硬化性樹脂組成物の必須成分であるポリシロキサン(A)は、上述のように、分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリシロキサンである。即ち、ポリシロキサン(A)は、アルケニル基を有するポリシロキサンであり、ヒドロシリル基を有する成分(例えば、後述のポリシロキサン(B)等)とヒドロシリル化反応を生じる成分である。但し、ポリシロキサン(A)には、後述のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)に当たるものは含まれない。
【0059】
ポリシロキサン(A)は、分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(A1)(単に「ポリオルガノシロキサン(A1)」と称する場合がある)及び分子内に2個以上のアルケニル基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)(単に「ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)」と称する場合がある)からなる群より選択される少なくとも1種であるポリシロキサンである。
【0060】
本明細書におけるポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)とは、主鎖として−Si−O−Si−(シロキサン結合)に加えて、−Si−R
A−Si−(シルアルキレン結合:R
Aはアルキレン基を示す)を含むポリシロキサンである。そして、本明細書におけるポリオルガノシロキサン(A1)は、主鎖として上記シルアルキレン結合を含まないポリシロキサンである。
【0061】
(ポリオルガノシロキサン(A1))
ポリオルガノシロキサン(A1)としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、網目状の分子構造を有するものが挙げられる。なお、ポリオルガノシロキサン(A1)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。具体的には、分子構造が異なるポリオルガノシロキサン(A1)の2種以上を併用することができ、例えば、直鎖状のポリオルガノシロキサン(A1)と分岐鎖状のポリオルガノシロキサン(A1)とを併用することもできる。
【0062】
ポリオルガノシロキサン(A1)が分子内に有するアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の置換又は無置換アルケニル基が挙げられる。置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。中でも、ビニル基が好ましい。また、ポリオルガノシロキサン(A1)は、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。ポリオルガノシロキサン(A1)が有するアルケニル基は、特に限定されないが、ケイ素原子に結合したものであることが好ましい。
【0063】
ポリオルガノシロキサン(A1)が有するアルケニル基以外の基は、特に限定されないが、例えば、有機基等が挙げられる。有機基としては、例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等]、シクロアルキル基[例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等]、アリール基[例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等]、シクロアルキル−アルキル基[例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等]、アラルキル基[例えば、ベンジル基、フェネチル基等]、炭化水素基における1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化炭化水素基[例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等]等の一価の置換又は無置換炭化水素基等が挙げられる。なお、本明細書において「ケイ素原子に結合した基」とは、通常、ケイ素原子を含まない基を指すものとする。
【0064】
また、ポリオルガノシロキサン(A1)は、ケイ素原子に結合した基として、ヒドロキシ基、アルコキシ基を有していてもよい。
【0065】
ポリオルガノシロキサン(A1)の性状は、特に限定されず、例えば25℃において、液状であってもよいし、固体状であってもよい。
【0066】
ポリオルガノシロキサン(A1)としては、下記平均単位式(a−1):
(R
1SiO
3/2)
a1(R
12SiO
2/2)
a2(R
13SiO
1/2)
a3(SiO
4/2)
a4(X
1O
1/2)
a5 (a−1)
で表されるポリオルガノシロキサンが好ましい。上記平均単位式(a−1)中、R
1は、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は炭素数2〜8のアルケニル基を示す。但し、R
1の一部はアルケニル基(特にビニル基)であり、その割合は、分子内に2個以上となる範囲に制御される。例えば、R
1の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、0.1〜40モル%が好ましい。アルケニル基の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性樹脂組成物の硬化性が向上する傾向がある。また、上記炭素数1〜10のアルキル基としては特にメチル基が好ましく、上記炭素数6〜14のアリール基としては特にフェニル基が好ましい。
【0067】
上記平均単位式(a−1)中、X
1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基であることが好ましい。
【0068】
上記平均単位式(a−1)中、a1、a2、a3、a4、及びa5は、それぞれ、1>a1≧0、1>a2≧0、1>a3>0、1>a4≧0、0.05≧a5≧0、a1+a2+a4>0、及びa1+a2+a3+a4+a5=1を満たす数値である。
【0069】
ポリオルガノシロキサン(A1)の一例としては、例えば、分子内に2個以上のアルケニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。この直鎖状ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基としては、上述のアルケニル基の具体例が挙げられるが、中でもビニル基が好ましい。なお、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。また、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおけるアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特に炭素数1〜10のアルキル基)、アリール基(特に炭素数6〜14のアリール基)が好ましく、メチル基、フェニル基が特に好ましい。
【0070】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、特に限定されないが、0.1〜40モル%が好ましい。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、1〜20モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、30〜90モル%が好ましい。特に、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が40モル%以上(例えば、45〜80モル%)であるものを使用することにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が90モル%以上(例えば、95〜99モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性が向上する傾向がある。
【0071】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、下記式(I−1)で表される。
【化9】
[上記式中、R
11は、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基である。但し、R
11の少なくとも2個はアルケニル基である。m1は、5〜1000の整数である。]
【0072】
ポリオルガノシロキサン(A1)の他の例としては、分子内に2個以上のアルケニル基を有し、RSiO
3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を有する分岐鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。但し、上述のように、当該分岐鎖状ポリオルガノシロキサンには、後述のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)に当たるものは含まれない。なお、Rは、一価の置換又は無置換炭化水素基である。この分岐鎖状ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基としては、上述のアルケニル基の具体例が挙げられるが、中でもビニル基が好ましい。なお、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。また、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおけるアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。さらに、上記T単位中のRとしては、中でも、アルキル基(特に炭素数1〜10のアルキル基)、アリール基(特に炭素数6〜14のアリール基)が好ましく、メチル基、フェニル基が特に好ましい。
【0073】
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の硬化性の観点で、0.1〜40モル%が好ましい。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、10〜40モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、5〜70モル%が好ましい。特に、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が40モル%以上(例えば、45〜60モル%)であるものを使用することにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が50モル%以上(例えば、60〜99モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性が向上する傾向がある。
【0074】
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンは、a1が正数である上記平均単位式(a−1)で表すことができる。この場合、特に限定されないが、a2/a1は0〜10の数、a3/a1は0〜0.5の数、a4/(a1+a2+a3+a4)は0〜0.3の数、a5/(a1+a2+a3+a4)は0〜0.4の数であることが好ましい。また、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンの分子量は特に限定されないが、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜1万であることが好ましく、より好ましくは700〜5000である。
【0075】
ポリオルガノシロキサン(A1)のさらに他の例としては、例えば、上記平均単位式中、a1及びa2が0であり、X
1が水素原子である下記平均単位式:
(R
1a2R
1bSiO
1/2)
a6(R
1a3SiO
1/2)
a7(SiO
4/2)
a8(HO
1/2)
a9
で表されるポリオルガノシロキサンが挙げられる。上記平均単位式中、R
1aは、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基(C
1-10アルキル基)を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。また、R
1bは、同一又は異なって、アルケニル基を示し、中でもビニル基が好ましい。さらに、a6、a7、a8及びa9はいずれも、a6+a7+a8=1、a6/(a6+a7)=0.15〜0.35、a8/(a6+a7+a8)=0.53〜0.62、a9/(a6+a7+a8)=0.005〜0.03を満たす正数である。但し、a7は0であってもよい。硬化性樹脂組成物の硬化性の観点で、a6/(a6+a7)は0.2〜0.3であることが好ましい。また、硬化物の硬度や機械強度の観点で、a8/(a6+a7+a8)は0.55〜0.60であることが好ましい。このようなポリオルガノシロキサンとしては、例えば、SiO
4/2単位と(CH
3)
2(CH
2=CH)SiO
1/2単位とで構成されるポリオルガノシロキサン、SiO
4/2単位と(CH
3)
2(CH
2=CH)SiO
1/2単位と(CH
3)
3SiO
1/2単位とで構成されるポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0076】
(ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2))
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)は、上述のように、分子内に2個以上のアルケニル基を有し、主鎖としてシロキサン結合に加えて、シルアルキレン結合−Si−R
A−Si−(シルアルキレン結合:R
Aはアルキレン基を示す)を含むポリシロキサンである。即ち、ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)には、上述のポリオルガノシロキサン(A1)のようなシルアルキレン結合を有しないポリシロキサンは含まれない。本発明の硬化性樹脂組成物はこのようなポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)を含むと、腐食性ガスに対するバリア性と耐熱衝撃性に優れた硬化物を形成できる。
【0077】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)が分子内に有するシルアルキレン結合におけるアルキレン基(R
A)としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の直鎖又は分岐鎖状のC
1-14アルキレン基等が挙げられ、中でも、C
2-4アルキレン基(特に、エチレン基)が好ましい。上記ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)を用いると、硬化物の耐硫化性が向上する傾向がある。
【0078】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、網目状の分子構造を有するものが挙げられる。なお、ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。具体的には、分子構造が異なるポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)の2種以上を併用することができ、例えば、直鎖状のポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)と分岐鎖状のポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)とを併用することもできる。
【0079】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)が分子内に有するアルケニル基としては、上述の置換又は無置換アルケニル基が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。また、ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)は、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)が有するアルケニル基は、特に限定されないが、ケイ素原子に結合したものであることが好ましい。
【0080】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)が有するアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基は、特に限定されないが、例えば、有機基等が挙げられる。有機基としては、例えば、上述の有機基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シクロアルキル−アルキル基、アラルキル基、ハロゲン化炭化水素基等の置換又は無置換炭化水素等)が挙げられる。
【0081】
また、ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)は、ケイ素原子に結合した基として、ヒドロキシ基、アルコキシ基を有していてもよい。
【0082】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)の性状は、特に限定されず、例えば25℃において、液状であってもよいし、固体状であってもよい。
【0083】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)としては、下記平均単位式(a−2):
(R
22SiO
2/2)
b1(R
23SiO
1/2)
b2(R
2SiO
3/2)
b3(SiO
4/2)
b4(R
A)
b5(X
2O
1/2)
b6 (a−2)
で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンが好ましい。上記平均単位式(a−2)中、R
2は、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、又は炭素数2〜8のアルケニル基を示す。但し、R
2の一部はアルケニル基(特にビニル基)であり、その割合は、分子内に2個以上となる範囲に制御される。例えば、R
2の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、0.1〜40モル%が好ましい。アルケニル基の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性樹脂組成物の硬化性が向上する傾向がある。
【0084】
上記平均単位式(a−2)中、R
Aは、炭素数1〜14のアルキレン基である。特にエチレン基が好ましい。
【0085】
上記平均単位式(a−2)中、X
2は、上記X
1と同じく、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基であることが好ましい。
【0086】
上記平均単位式(a−2)中、b1、b2、b3、b4、b5、及びb6は、それぞれ、1>b1≧0、1>b2>0、1>b3≧0、1>b4≧0、0.7>b5>0、0.05≧b6≧0、b1+b3+b4>0、及びb1+b2+b3+b4+b5+b6=1を満たす数値である。特に、b3+b4>0の場合には、ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)が分岐鎖(分岐状の主鎖)を有し、硬化物の機械強度が向上する傾向がある。
【0087】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)としては、より具体的には、例えば、下記式(I−2)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンが挙げられる。
【化10】
【0088】
上記式(I−2)中、R
12は、同一又は異なって、又は一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。R
12としては、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化炭化水素基等)、及び上述のアルケニル基が挙げられる。但し、R
12の少なくとも2個はアルケニル基(特にビニル基)である。また、アルケニル基以外のR
12としては、アルキル基(特に炭素数1〜10のアルキル基)、アリール基(特に炭素数6〜14のアリール基)が好ましく、メチル基、フェニル基が特に好ましい。
【0089】
上記式(I−2)中、R
Aは、上記と同じく、アルキレン基を示し、中でも、C
1-14アルキレン基が好ましく、C
2-4アルキレン基(特に、エチレン基)がより好ましい。なお、複数のR
Aが存在する場合、これらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0090】
上記式(I−2)中、r1は1以上の整数(例えば、1〜100)を示す。なお、r1が2以上の整数の場合、r1が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0091】
上記式(I−2)中、r2は1以上の整数(例えば、1〜400)を示す。なお、r2が2以上の整数の場合、r2が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0092】
上記式(I−2)中、r3は0又は1以上の整数(例えば、0〜50)を示す。なお、r3が2以上の整数の場合、r3が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0093】
上記式(I−2)中、r4は0又は1以上の整数(例えば、0〜50)を示す。なお、r4が2以上の整数の場合、r4が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0094】
上記式(I−2)中、r5は0又は1以上の整数(例えば、0〜50)を示す。なお、r5が2以上の整数の場合、r5が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0095】
また、上記式(I−2)における各構造単位の付加形態は特に限定されず、ランダム型であってもよいし、ブロック型であってもよい。また、各構造単位の配列の順番も特に限定されない。
【0096】
式(I−2)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンの末端構造は、特に限定されないが、例えば、シラノール基、アルコキシシリル基、トリアルキルシリル基(例えば、r5が付された括弧内の構造、トリメチルシリル基等)等が挙げられる。上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンの末端には、アルケニル基やヒドロシリル基等の各種の基が導入されていてもよい。
【0097】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)は公知乃至慣用の方法により製造することができ、その製造方法は特に限定されないが、例えば、特開2012−140617号公報に記載の方法により製造できる。また、ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)を含む製品として、例えば、商品名「ETERLED GD1130」、「ETERLED GD1125」、「ETERLED GS5145」、「ETERLED GS5135」、「ETERLED GS5120」(いずれも長興材料工業製)等が入手可能である。
【0098】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物においてポリシロキサン(A)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0099】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリシロキサン(A)の含有量(配合量)(総量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物の全量(100重量%)に対して、50〜99重量%が好ましく、より好ましくは60〜97重量%、さらに好ましくは70〜95重量%である。含有量を50重量%以上とすることにより、硬化物の強靭性、透明性が向上する傾向がある。
【0100】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリシロキサン(A)としては、ポリオルガノシロキサン(A1)のみを使用することもできるし、ポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)のみを使用することもできるし、また、ポリオルガノシロキサン(A1)とポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)とを併用することもできる。ポリオルガノシロキサン(A1)とポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)とを併用する場合、これらの割合は特に限定されず、適宜設定可能である。同様に、本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリシロキサン(A)としては、上記平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサンのみを使用することもできるし、上記平均単位式(a−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンのみを使用することもできるし、また、上記平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサンと上記平均単位式(a−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンとを併用することもできる。
【0101】
本発明の硬化性樹脂組成物中のポリシロキサン(A)における上記平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び上記平均単位式(a−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンの含有量(配合量)(総量)は、特に限定されないが、ポリシロキサン(A)の全量(100重量%)に対して、50重量%以上が好ましく、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。含有量を50重量%以上とすることにより、硬化物のタック性がより低く、且つゴミがより付着しにくくなる傾向がある。なお、本発明の硬化性樹脂組成物中に上記平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び上記平均単位式(a−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンの一方のみが含まれる場合、上記含有量は、当該一方の含有量である。
【0102】
[ポリシロキサン(B)]
本発明の硬化性樹脂組成物の必須成分であるポリシロキサン(B)は、上述のように、分子内に2個以上のヒドロシリル基(Si−H)を有するポリシロキサンである。即ち、ポリシロキサン(B)は、ヒドロシリル基を有するポリシロキサンであり、アルケニル基を有する成分(例えば、ポリシロキサン(A)等)とヒドロシリル化反応を生じる成分である。但し、ポリシロキサン(B)には、後述のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)に当たるものは含まれない。
【0103】
ポリシロキサン(B)は、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン(B1)(単に「ポリオルガノシロキサン(B1)」と称する場合がある)及び分子内に2個以上のヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)(単に「ポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)」と称する場合がある)からなる群より選択される少なくとも1種であるポリシロキサンである。
【0104】
本明細書におけるポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)とは、主鎖として−Si−O−Si−(シロキサン結合)に加えて、−Si−R
A−Si−(シルアルキレン結合:R
Aはアルキレン基を示す)を含むポリシロキサンである。そして、本明細書におけるポリオルガノシロキサン(B1)は、主鎖として上記シルアルキレン結合を含まないポリシロキサンである。なお、上記シルアルキレン結合におけるR
A(アルキレン基)としては、上記と同じく、例えば、直鎖又は分岐鎖状のC
1-14アルキレン基が挙げられ、好ましくは直鎖又は分岐鎖状のC
2-4アルキレン基(特に、エチレン基)である。
【0105】
(ポリオルガノシロキサン(B1))
ポリオルガノシロキサン(B1)としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、網目状の分子構造を有するものが挙げられる。なお、ポリオルガノシロキサン(B1)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。具体的には、分子構造が異なるポリオルガノシロキサン(B1)の2種以上を併用することができ、例えば、直鎖状のポリオルガノシロキサン(B1)と分岐鎖状のポリオルガノシロキサン(B1)とを併用することもできる。
【0106】
ポリオルガノシロキサン(B1)が有するケイ素原子に結合した基の中でも水素原子以外の基は、特に限定されないが、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基、より詳しくは、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0107】
ポリオルガノシロキサン(B1)の性状は、特に限定されず、例えば25℃において、液状であってもよいし、固体状であってもよい。中でも液状であることが好ましく、25℃における粘度が0.1〜10億mPa・sの液状であることがより好ましい。
【0108】
ポリオルガノシロキサン(B1)としては、下記平均単位式(b−1):
(R
3SiO
3/2)
c1(R
32SiO
2/2)
c2(R
33SiO
1/2)
c3(SiO
4/2)
c4(X
3O
1/2)
c5 (b−1)
で表されるポリオルガノシロキサンが好ましい。上記平均単位式(b−1)中、R
3は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基を示す。但し、R
3の一部は水素原子(ヒドロシリル基を構成する水素原子)であり、その割合は、ヒドロシリル基が分子内に2個以上となる範囲に制御される。例えば、R
3の全量(100モル%)に対する水素原子の割合は、0.1〜50モル%が好ましい。水素原子の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性樹脂組成物の硬化性が向上する傾向がある。
【0109】
上記平均単位式(b−1)中、X
3は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基であることが好ましい。
【0110】
上記平均単位式(b−1)中、c1、c2、c3、c4、及びc5は、それぞれ、1>c1≧0、1>c2≧0、1>c3>0、1>c4≧0、0.05≧c5≧0、c1+c2+c4>0、及びc1+c2+c3+c4+c5=1を満たす数値である。
【0111】
ポリオルガノシロキサン(B1)の一例としては、例えば、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおける水素原子以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特に炭素数1〜10のアルキル基)、アリール基(特に炭素数6〜14のアリール基)が好ましく、メチル基、フェニル基が特に好ましい。
【0112】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対する水素原子(ケイ素原子に結合した水素原子)の割合は、特に限定されないが、0.1〜50モル%が好ましい。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、20〜99モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、40〜80モル%が好ましい。特に、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が40モル%以上(例えば、45〜70モル%)であるものを使用することにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が90モル%以上(例えば、95〜99モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性が向上する傾向がある。
【0113】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、下記式(II−1)で表される。
【化11】
[上記式中、R
21は、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。但し、R
21の少なくとも2個は水素原子である。m2は、1〜1000の整数である。]
【0114】
ポリオルガノシロキサン(B1)の他の例としては、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有し、RSiO
3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を有する分岐鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。但し、上述のように、当該分岐鎖状ポリオルガノシロキサンには、後述のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)に当たるものは含まれない。なお、Rは、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおける水素原子以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。さらに、上記T単位中のRとしては、水素原子、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基が挙げられるが、中でも、アルキル基(特に炭素数1〜10のアルキル基)、アリール基(特に炭素数6〜14のアリール基)が好ましく、メチル基、フェニル基が特に好ましい。上記T単位中のRの全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の観点で、30モル%以上が好ましい。
【0115】
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、70〜95モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、10〜70モル%が好ましい。特に、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が10モル%以上(例えば、10〜70モル%)であるものを使用することにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が50モル%以上(例えば、50〜90モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性が向上する傾向がある。
【0116】
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、c1が正数である上記平均単位式(b−1)で表すことができる。この場合、特に限定されないが、c2/c1は0〜10の数、c3/c1は0〜0.5の数、c4/(c1+c2+c3+c4)は0〜0.3の数、c5/(c1+c2+c3+c4)は0〜0.4の数であることが好ましい。また、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンの分子量は特に限定されないが、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が300〜1万であることが好ましく、より好ましくは500〜5000である。
【0117】
(ポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2))
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)は、上述のように、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有し、主鎖としてシロキサン結合に加えて、シルアルキレン結合を含むポリシロキサンである。なお、上記シルアルキレン結合におけるアルキレン基としては、例えば、C
2-4アルキレン基(特に、エチレン基)が好ましい。
【0118】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、網目状の分子構造を有するものが挙げられる。なお、ポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。具体的には、分子構造が異なるポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)の2種以上を併用することができ、例えば、直鎖状のポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)と分岐鎖状のポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)とを併用することもできる。
【0119】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)が有する水素原子以外のケイ素原子に結合した基は、特に限定されないが、例えば、有機基等が挙げられる。有機基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基等が挙げられる。中でも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0120】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)の性状は、特に限定されず、例えば25℃において、液状であってもよいし、固体状であってもよい。
【0121】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)としては、下記平均単位式(b−2):
(R
42SiO
2/2)
d1(R
43SiO
1/2)
d2(R
4SiO
3/2)
d3(SiO
4/2)
d4(R
A)
d5(X
4O)
d6 (b−2)
で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンが好ましい。上記平均単位式中(b−2)、R
4は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜14のアリール基を示す。但し、R
4の一部は水素原子であり、その割合は、分子内に2個以上となる範囲に制御される。例えば、R
4の全量(100モル%)に対する水素原子の割合は、0.1〜50モル%が好ましく、より好ましくは5〜35モル%である。水素原子の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性樹脂組成物の硬化性が向上する傾向がある。
【0122】
上記平均単位式(b−2)中、R
Aは、炭素数1〜14のアルキレン基である。特にエチレン基が好ましい。
【0123】
上記平均単位式(b−2)中、X
4は、上記X
3と同じく、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基であることが好ましい。
【0124】
上記平均単位式(b−2)中、d1、d2、d3、d4、d5、及びd6は、それぞれ、1>d1≧0、1>d2>0、1>d3≧0、1>d4≧0、0.5>d5>0、0.05≧d6≧0、d1+d3+d4>0、及びd1+d2+d3+d4+d5+d6=1を満たす数値である。
【0125】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)としては、より具体的には、例えば、下記式(II−2)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンが挙げられる。
【化12】
【0126】
上記式(II−2)中、R
22は、同一又は異なって、水素原子、又は一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。R
22としては、水素原子、上述の一価の置換若しくは無置換炭化水素基の具体例(例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化炭化水素基等)が挙げられる。但し、R
22の少なくとも2個は水素原子である。また、水素原子以外のR
22としては、アルキル基(特に炭素数1〜10のアルキル基)、アリール基(特に炭素数6〜14のアリール基)が好ましく、メチル基、フェニル基が特に好ましい。
【0127】
上記式(II−2)中、R
Aは、式(I−2)におけるR
Aと同じく、アルキレン基を示し、中でも、C
2-4アルキレン基(特に、エチレン基)が好ましい。なお、複数のR
Aが存在する場合、これらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0128】
上記式(II−2)中、q1は1以上の整数(例えば、1〜100)を示す。なお、q1が2以上の整数の場合、q1が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0129】
上記式(II−2)中、q2は1以上の整数(例えば、1〜400)を示す。なお、q2が2以上の整数の場合、q2が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0130】
上記式(II−2)中、q3は0又は1以上の整数(例えば、0〜50)を示す。なお、q3が2以上の整数の場合、q3が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0131】
上記式(II−2)中、q4は0又は1以上の整数(例えば、0〜50)を示す。なお、q4が2以上の整数の場合、q4が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0132】
上記式(II−2)中、q5は0又は1以上の整数(例えば、0〜50)を示す。なお、q5が2以上の整数の場合、q5が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0133】
また、上記式(II−2)における各構造単位の付加形態は特に限定されず、ランダム型であってもよいし、ブロック型であってもよい。
【0134】
式(II−2)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンの末端構造は、特に限定されないが、例えば、シラノール基、アルコキシシリル基、トリアルキルシリル基(例えば、q5が付された括弧内の構造、トリメチルシリル基等)等が挙げられる。上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンの末端には、ヒドロシリル基等の各種の基が導入されていてもよい。
【0135】
ポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)は公知乃至慣用の方法により製造することができ、その製造方法は特に限定されないが、例えば、特開2012−140617号公報に記載の方法により製造できる。
【0136】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物においてポリシロキサン(B)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0137】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリシロキサン(B)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、ポリシロキサン(A)の全量100重量部に対して、1〜200重量部が好ましい。ポリシロキサン(B)の含有量を上記範囲に制御することにより、硬化性樹脂組成物の硬化性が向上し、効率的に硬化物を形成することができる傾向がある。ポリシロキサン(B)の含有量が上記範囲内であると、硬化反応が十分に進行すること等により、硬化物の耐熱性、耐熱衝撃性、耐リフロー性等の特性が向上する傾向がある。
【0138】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリシロキサン(B)としては、ポリオルガノシロキサン(B1)のみを使用することもできるし、ポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)のみを使用することもできるし、また、ポリオルガノシロキサン(B1)とポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)とを併用することもできる。ポリオルガノシロキサン(B1)とポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)とを併用する場合、これらの割合は特に限定されず、適宜設定可能である。同様に、本発明の硬化性樹脂組成物におけるポリシロキサン(B)としては、上記平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサンのみを使用することもできるし、上記平均単位式(b−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンのみを使用することもできるし、また、上記平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサンと上記平均単位式(b−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンとを併用することもできる。
【0139】
本発明の硬化性樹脂組成物中のポリシロキサン(B)における上記平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び上記平均単位式(b−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンの含有量(配合量)(総量)は、特に限定されないが、ポリシロキサン(B)の全量(100重量%)に対して、50重量%以上が好ましく、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。含有量を50重量%以上とすることにより、硬化物のタック性がより低く、且つゴミがより付着しにくくなる傾向がある。なお、本発明の硬化性樹脂組成物中に上記平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び上記平均単位式(b−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンの一方のみが含まれる場合、上記含有量は、当該一方の含有量である。
【0140】
本発明の硬化性樹脂組成物は、中でも、(i)ポリシロキサン(A)が分岐鎖状のポリオルガノシロキサン(A1)を含み且つポリシロキサン(B)がポリオルガノシロキサン(B1)を含む組み合わせ、及び/又は、(ii)ポリシロキサン(A)がケイ素原子に結合したフェニル基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)を含み且つポリシロキサン(B)がポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)を含む組み合わせが特に好ましい。
【0141】
本発明の硬化性樹脂組成物(100重量%)におけるポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)の含有量の合計(合計含有量)は、特に限定されないが、60〜99重量%が好ましく、より好ましくは70〜96重量%、さらに好ましくは80〜90重量%である。上記合計含有量を上記範囲に制御することにより、硬化物の強靭性、耐熱性、透明性が向上する傾向がある。
【0142】
[ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)を含んでいてもよい。本発明の硬化性樹脂組成物がラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)を含む場合、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が高くなる傾向がある。ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)は、実験式(基本構造式)RSiO
1.5で表されるポリシロキサンであって、分子内にラダー状のSi−O−Si構造(ラダー構造)を少なくとも含むポリオルガノシルセスキオキサンである。ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)は、(RSiO
3/2)で表されるシロキサン単位を有し、(R
2SiO
2/2)で表されるシロキサン単位及び(SiO
4/2)で表されるシロキサン単位を有しないポリシロキサンであることが好ましい。なお、この場合、(R
3SiO
1/2)で表されるシロキサン単位を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0143】
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)としては、上記構造を有する公知乃至慣用のポリオルガノシルセスキオキサンを使用することができ、特に限定されないが、分子内に1以上(特に2以上)の脂肪族炭素−炭素二重結合を有するもの、分子内に1以上(特に2以上)のヒドロシリル基を有するものが好ましい。また、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)としては、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の観点で、側鎖[主骨格(主鎖)であるラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン骨格(Si−O結合で形成された骨格)から枝分かれしている部分]の一部又は全部が、置換若しくは無置換のアリール基(芳香族炭化水素基)であるものが好ましい。置換若しくは無置換のアリール基としては、例えば、後述のR
5として例示する置換若しくは無置換のアリール基等が挙げられる。
【0144】
中でも、上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンとしては、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性、機械強度等の観点で、以下に説明するラダー型シルセスキオキサン(C1)、ラダー型シルセスキオキサン(C2)が特に好ましい。
【0145】
(ラダー型シルセスキオキサン(C1))
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)としてのラダー型シルセスキオキサン(C1)は、ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン(ポリオルガノシルセスキオキサン骨格)の分子鎖末端の一部又は全部に、後述の式(V)で表される単位構造及び式(VI)で表される単位構造を含むポリオルガノシルセスキオキサン残基(「ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)」と称する場合がある)を有するポリオルガノシルセスキオキサンである。
【0146】
ラダー型シルセスキオキサン(C1)におけるポリオルガノシルセスキオキサン(ポリオルガノシルセスキオキサン骨格)は、実験式(基本構造式)R
5SiO
1.5で表されるポリシロキサンである。なお、R
5は、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基を示し、R
5(上記ポリオルガノシルセスキオキサン中のR
5)の少なくとも一部は、一価の有機基である。上記ポリオルガノシルセスキオキサン中のR
5は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0147】
上記R
5におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。上記R
5における一価の有機基としては、例えば、置換又は無置換の炭化水素基(一価の炭化水素基)、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、エポキシ基、シアノ基、イソシアナート基、カルバモイル基、イソチオシアナート基等が挙げられる。
【0148】
上記R
5における炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基が挙げられる。
【0149】
上記R
5における脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基等のC
1-20アルキル基(好ましくはC
1-10アルキル基、さらに好ましくはC
1-4アルキル基)等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等のC
2-20アルケニル基(好ましくはC
2-10アルケニル基、さらに好ましくはC
2-4アルケニル基)等が挙げられる。アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基等のC
2-20アルキニル基(好ましくはC
2-10アルキニル基、さらに好ましくはC
2-4アルキニル基)等が挙げられる。
【0150】
上記R
5における脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等のC
3-12のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基等のC
3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプタニル基、ビシクロヘプテニル基等のC
4-15の架橋環式炭化水素基等が挙げられる。
【0151】
上記R
5における芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基(例えば、C
6-14アリール基、特にC
6-10アリール基)等が挙げられる。
【0152】
また、上記R
5における脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基としては、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のC
7-18アラルキル基(特に、C
7-10アラルキル基)、シンナミル基等のC
6-10アリール−C
2-6アルケニル基、トリル基等のC
1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC
2-4アルケニル置換アリール基等が挙げられる。
【0153】
上記R
5における炭化水素基は置換基を有する炭化水素基(置換炭化水素基)であってもよい。上記置換炭化水素基における置換基の炭素数は0〜20が好ましく、より好ましくは0〜10である。該置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等のアルコキシ基(好ましくはC
1-6アルコキシ基、より好ましくはC
1-4アルコキシ基);アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基(好ましくはC
2-6アルケニルオキシ基、より好ましくはC
2-4アルケニルオキシ基);フェノキシ基、トリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の、芳香環にC
1-4アルキル基、C
2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C
1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいアリールオキシ基(好ましくはC
6-14アリールオキシ基);ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基(好ましくはC
7-18アラルキルオキシ基);アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基(好ましくはC
1-12アシルオキシ基);メルカプト基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基(好ましくはC
1-6アルキルチオ基、より好ましくはC
1-4アルキルチオ基);アリルチオ基等のアルケニルチオ基(好ましくはC
2-6アルケニルチオ基、より好ましくはC
2-4アルケニルチオ基);フェニルチオ基、トリルチオ基、ナフチルチオ基等の、芳香環にC
1-4アルキル基、C
2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C
1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいアリールチオ基(好ましくはC
6-14アリールチオ基);ベンジルチオ基、フェネチルチオ基等のアラルキルチオ基(好ましくはC
7-18アラルキルチオ基);カルボキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(好ましくはC
1-6アルコキシ−カルボニル基);フェノキシカルボニル基、トリルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基(好ましくはC
6-14アリールオキシ−カルボニル基);ベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基(好ましくはC
7-18アラルキルオキシ−カルボニル基);アミノ基;メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基(好ましくはモノ又はジ−C
1-6アルキルアミノ基);アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基(好ましくはC
1-11アシルアミノ基);グリシジルオキシ基等のエポキシ基含有基;エチルオキセタニルオキシ基等のオキセタニル基含有基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;オキソ基;これらの2以上が必要に応じてC
1-6アルキレン基を介して結合した基等が挙げられる。置換炭化水素基が有する置換基の数は、特に限定されない。
【0154】
上記R
5における一価の酸素原子含有基としては、例えば、ヒドロキシ基、ヒドロパーオキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基、イソシアナート基、スルホ基、カルバモイル基等が挙げられる。上記一価の窒素原子含有基としては、例えば、アミノ基又は置換アミノ基(モノ又はジアルキルアミノ基、アシルアミノ基等)、シアノ基、イソシアナート基、イソチオシアナート基、カルバモイル基等が挙げられる。また、上記一価の硫黄原子含有基としては、例えば、メルカプト基(チオール基)、スルホ基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、イソチオシアナート基等が挙げられる。なお、上述の一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、一価の硫黄原子含有基は、相互に重複し得る。
【0155】
さらに、上記R
5としては、下記式(s)で表される基が挙げられる。
【化13】
【0156】
上記式(s)中のR
51(3つのR
51)は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基を示し、これらの基としては、上記R
5として例示したものと同様の基が挙げられる。
【0157】
上記式(s)で表される基において、各R
51としては、それぞれ、水素原子;C
1-10アルキル基(特に、C
1-4アルキル基);C
2-10アルケニル基(特に、C
2-4アルケニル基);C
3-12シクロアルキル基;C
3-12シクロアルケニル基;芳香環にC
1-4アルキル基、C
2-4アルケニル基、ハロゲン原子、C
1-4アルコキシ基等の置換基を有していてもよいC
6-14アリール基;C
7-18アラルキル基;C
6-10アリール−C
2-6アルケニル基;ヒドロキシ基;C
1-6アルコキシ基;ハロゲン原子が好ましい。
【0158】
上記の中でも、R
5としては、水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭化水素基が好ましく、より好ましくは置換又は無置換の炭化水素基、さらに好ましくは脂肪族炭化水素基(特に、アルキル基)、芳香族炭化水素基(特に、フェニル基)である。
【0159】
一般に、ポリオルガノシルセスキオキサンの構造としては、ラダー状のSi−O−Si構造(ラダー構造)、カゴ状のSi−O−Si構造(カゴ構造)、ランダム状のSi−O−Si構造(ランダム構造)等が挙げられるが、ラダー型シルセスキオキサン(C1)におけるポリオルガノシルセスキオキサンは、上記ラダー構造を少なくとも含むポリオルガノシルセスキオキサン(ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン)である。
【0160】
ラダー型シルセスキオキサン(C1)におけるポリオルガノシルセスキオキサンは、例えば、下記式(L)で表される。
【化14】
【0161】
上記式(L)において、vは1以上の整数(例えば、1〜5000)を表し、好ましくは1〜2000の整数、さらに好ましくは1〜1000の整数である。式(L)中のR
5は、上記R
5と同じものを示す。Tは末端基を示す。
【0162】
ラダー型シルセスキオキサン(C1)におけるポリオルガノシルセスキオキサン中のケイ素原子に直接結合した基(上記実験式におけるR
5、例えば、式(L)におけるR
5(側鎖))は、特に限定されないが、上記基の全量(100モル%)に対する置換又は無置換の炭化水素基の占める割合が50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。特に、上記基の全量(100モル%)に対する、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖状のC
1-10アルキル基(特に、メチル基、エチル基等の直鎖又は分岐鎖状のC
1-4アルキル基)、置換又は無置換のC
6-10アリール基(特に、フェニル基)、置換又は無置換のC
7-10アラルキル基(特に、ベンジル基)の合計量が、50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
【0163】
特に、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の観点で、ラダー型シルセスキオキサン(C1)は、側鎖[主骨格(主鎖)であるラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン骨格から枝分かれしている部分、例えば、上記式(L)におけるR
5]の一部又は全部が置換若しくは無置換のアリール基(芳香族炭化水素基)であることが好ましい。
【0164】
ラダー型シルセスキオキサン(C1)は、上記ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンの分子鎖末端の一部又は全部に、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)を少なくとも有する。ポリオルガノシルセスキオキサンが上記式(L)で表される場合、ラダー型シルセスキオキサン(C1)は、式(L)中のTの一部又は全部が以下のポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)で置換された構造を有する。
【0165】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)は、下記式(V)
【化15】
で表される単位構造(シロキサン単位構造)及び下記式(VI)
【化16】
で表される単位構造(シロキサン単位構造)を少なくとも含む残基である。
【0166】
上記式(V)中のR
6は、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を示す。上記脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等のC
2-20アルケニル基(好ましくはC
2-10アルケニル基、さらに好ましくはC
2-4アルケニル基);シクロヘキセニル基等のC
3-12のシクロアルケニル基;ビシクロヘプテニル基等のC
4-15架橋環式不飽和炭化水素基;スチリル基等のC
2-4アルケニル置換アリール基;シンナミル基等が挙げられる。なお、上記脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基には、上記式(s)で表される基において、3つのR
51のうち少なくとも1つが上記のC
2-20アルケニル基、C
3-12のシクロアルケニル基、C
4-15の架橋環式不飽和炭化水素基、C
2-4アルケニル置換アリール基、シンナミル基等である基も含まれる。中でも、R
6としては、アルケニル基が好ましく、より好ましくはC
2-20アルケニル基、さらに好ましくはビニル基である。
【0167】
上記式(VI)中のR
7は、同一又は異なって、炭化水素基(一価の炭化水素基)を示す。上記炭化水素基としては、上記R
5として例示したものと同様の炭化水素基が例示される。中でも、R
7としては、C
1-20アルキル基が好ましく、より好ましくはC
1-10アルキル基、さらに好ましくはC
1-4アルキル基、特に好ましくはメチル基である。特に、式(VI)中のR
7がいずれもメチル基であることが好ましい。
【0168】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)は、式(V)で表される単位構造と式(VI)で表される単位構造以外にも、例えば、下記式(V’)
【化17】
で表される単位構造(シロキサン単位構造)を有していてもよい。
【0169】
上記式(V’)中のR
6’は、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を除く一価の基を示す。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭素−炭素二重結合を有する基を除く一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基等が挙げられる。
【0170】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)における式(V)に表された3つの酸素原子が結合したケイ素原子の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)を構成するケイ素原子の全量(100モル%)に対して、20〜80モル%が好ましく、より好ましくは25〜60モル%である。含有量が20モル%未満であると、ラダー型シルセスキオキサン(C1)が有する脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)の量が不十分となって、硬化物の硬度が十分得られない場合がある。一方、含有量が80モル%を超えると、ラダー型シルセスキオキサン(C1)中にシラノール基や加水分解性シリル基が多く残存するため、ラダー型シルセスキオキサン(C1)が液状で得られない場合がある。さらに縮合反応が進行して分子量が変化しやすくなるため、保存安定性が悪化する場合がある。
【0171】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)における式(VI)に表された1つの酸素原子が結合したケイ素原子の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)を構成するケイ素原子の全量(100モル%)に対して、20〜85モル%が好ましく、より好ましくは30〜75モル%である。含有量が20モル%未満であると、ラダー型シルセスキオキサン(C1)中にシラノール基や加水分解性シリル基が残存しやすく、ラダー型シルセスキオキサン(C1)が液状で得られない場合がある。さらに縮合反応が進行して分子量が変化しやすくなるため、保存安定性が悪化する場合がある。一方、含有量が85モル%を超えると、ラダー型シルセスキオキサン(C1)が有する脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)の量が不十分となって、硬化物の硬度が十分得られない場合がある。
【0172】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)が有するSi−O−Si構造(骨格)としては、特に限定されず、例えば、ラダー構造、カゴ構造、ランダム構造等が挙げられる。
【0173】
ラダー型シルセスキオキサン(C1)は、例えば、下記式(L
a)で表すことができる。式(L
a)中のv、R
5としては、上記式(L)と同様のものが例示される。式(L
a)中のAは、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)、又は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、若しくはアシルオキシ基を示し、Aの一部又は全部はポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)である。なお、式(L
a)中の複数(2〜4個)のAがポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)である場合、それぞれのAは互いに又は他の式(L
a)で表される分子が有するAと1以上のSi−O−Si結合を介して結合していてもよい。
【化18】
【0174】
なお、ラダー型シルセスキオキサン(C1)におけるポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)は、さらに、後述のラダー型シルセスキオキサン(C2)における式(VII)で表される単位構造を有するものであってもよい。この場合、ラダー型シルセスキオキサン(C1)は、ラダー型シルセスキオキサン(C2)として使用することも可能な場合がある。
【0175】
ラダー型シルセスキオキサン(C1)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ラダー構造を有し、分子鎖末端にシラノール基及び/又は加水分解性シリル基(シラノール基及び加水分解性シリル基のいずれか一方又は両方)を有するポリオルガノシルセスキオキサンの分子鎖末端に対して、上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(a)を形成する方法が挙げられる。具体的には、国際公開第2013/176238号等の文献に開示された方法等により製造できる。
【0176】
ラダー型シルセスキオキサン(C1)における、分子内の脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)の数は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、より好ましくは2〜30個である。上述の範囲で脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)を有することにより、耐熱性等の各種物性、耐クラック性、腐食性ガスに対するバリア性に優れた硬化物が得られやすい傾向がある。
【0177】
ラダー型シルセスキオキサン(C1)中の脂肪族炭素−炭素二重結合の含有量は、特に限定されないが、0.7〜5.5mmol/gが好ましく、より好ましくは1.1〜4.4mmol/gである。また、ラダー型シルセスキオキサン(C1)に含まれる脂肪族炭素−炭素二重結合の割合(重量基準)は、特に限定されないが、ビニル基換算で、2.0〜15.0重量%が好ましく、より好ましくは3.0〜12.0重量%である。
【0178】
ラダー型シルセスキオキサン(C1)の分子量は、特に限定されないが、100〜80万が好ましく、より好ましくは200〜10万、さらに好ましくは300〜1万、特に好ましくは500〜8000である。ラダー型シルセスキオキサン(C1)の分子量がこの範囲にあると、室温で液体となりやすく、なおかつその粘度が比較的低くなりやすいため、取り扱いが容易となる傾向がある。なお、ラダー型シルセスキオキサン(C1)は、上記範囲の種々の分子量を有するものの混合物であってもよい。なお、上記分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量として測定される。
【0179】
ラダー型シルセスキオキサン(C1)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、100〜80万が好ましく、より好ましくは200〜10万、さらに好ましくは300〜1万、特に好ましくは500〜8000である。重量平均分子量が100以上であると、硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。一方、分子量が80万以下であると、他の成分との相溶性が向上する傾向がある。なお、上記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量より算出される。
【0180】
ラダー型シルセスキオキサン(C1)は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。より具体的には、ラダー型シルセスキオキサン(C1)の23℃における粘度は、100〜10万mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜1万mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。粘度が100mPa・s以上であると、硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。一方、粘度が10万mPa・s以下であると、硬化性樹脂組成物の調製や取り扱いが容易となる傾向がある。なお、23℃における粘度は、レオーメーター(商品名「PhysicaUDS−200」、AntonPaar社製)とコーンプレート(円錐直径:16mm、テーパ角度=0°)を用いて、温度:23℃、回転数:20rpmの条件で測定される。
【0181】
本発明の硬化性樹脂組成物においてラダー型シルセスキオキサン(C1)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0182】
本発明の硬化性樹脂組成物がラダー型シルセスキオキサン(C1)を含む場合、本発明の硬化性樹脂組成物におけるラダー型シルセスキオキサン(C1)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、1〜40重量%が好ましく、より好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。含有量を1重量%以上とすることにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。一方、含有量を40重量%以下とすることにより、硬化物が硬くなりすぎず、柔軟性に優れる硬化物が得られる傾向がある。
【0183】
(ラダー型シルセスキオキサン(C2))
本発明の硬化性樹脂組成物におけるラダー型シルセスキオキサン(C2)は、ラダー構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン(ポリオルガノシルセスキオキサン骨格)の分子鎖末端の一部又は全部に、後述の式(VII)で表される単位構造及び式(VIII)で表される単位構造を含むポリオルガノシルセスキオキサン残基(「ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)」と称する場合がある)を有するポリオルガノシルセスキオキサンである。
【0184】
ラダー型シルセスキオキサン(C2)におけるポリオルガノシルセスキオキサンは、実験式(基本構造式)R
5SiO
1.5で表されるポリシロキサンである。ラダー型シルセスキオキサン(C2)におけるポリオルガノシルセスキオキサンとしては、ラダー型シルセスキオキサン(C1)におけるポリオルガノシルセスキオキサン(例えば、上記式(L)で表されるポリオルガノシルセスキオキサン)と同様のものが例示される。
【0185】
ラダー型シルセスキオキサン(C2)は、ラダー型シルセスキオキサン(C1)と同様に、特に、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の観点で、側鎖の一部又は全部が置換若しくは無置換のアリール基であることが好ましい。
【0186】
上記ポリオルガノシルセスキオキサンが上記式(L)で表される場合、ラダー型シルセスキオキサン(C2)は、式(L)中のTの一部又は全部が以下のポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)で置換された構造を有する。
【0187】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)は、下記式(VII)
【化19】
で表される単位構造(シロキサン単位構造)及び下記式(VIII)
【化20】
で表される単位構造(シロキサン単位構造)を少なくとも含む残基である。なお、上記式(VII)で表される単位構造中の有機基(−X−CHR
8−CR
82−[SiR
92−O−]
n−SiHR
92)を、「SiH含有基」と称する場合がある。
【0188】
上記式(VII)中、Xは、単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル基(エーテル結合)、チオエーテル基(チオエーテル結合)、エステル基(エステル結合)、カーボネート基(カーボネート結合)、アミド基(アミド結合)、これらが複数個連結した基等が挙げられる。
【0189】
上記二価の炭化水素基としては、例えば、炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の二価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
【0190】
上記式(VII)におけるR
8は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基を示す。R
8としては、上記R
5として例示したものと同様の基が挙げられる。中でも、R
8としては、それぞれ、水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭化水素基が好ましく、より好ましくは水素原子である。
【0191】
上記式(VII)におけるR
9は、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、一価の酸素原子含有基、一価の窒素原子含有基、又は一価の硫黄原子含有基を示す。R
9としては、上記R
5として例示したものと同様の基が挙げられる。なお、式(VII)中のnが2以上の整数の場合、nが付された各括弧内におけるR
9は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0192】
上記の中でも、R
9としては、それぞれ、水素原子、又は、置換若しくは無置換の炭化水素基が好ましく、より好ましくは置換又は無置換の炭化水素基、さらに好ましくは脂肪族炭化水素基(特に、メチル基)、芳香族炭化水素基(特に、フェニル基)である。
【0193】
上記式(VII)におけるnは、1〜100の整数を示し、好ましくは1〜30の整数、より好ましくは1〜10の整数、さらに好ましくは1〜5の整数である。nが大きすぎる場合、硬化物のガス(特に、腐食性ガス)に対するバリア性が低下する傾向があるため、例えば、光半導体素子の封止剤としては適さない場合がある。
【0194】
上記式(VIII)におけるR
10は、同一又は異なって、炭化水素基(一価の炭化水素基)を示す。上記炭化水素基としては、上記R
5において例示したものと同様の炭化水素基が例示される。中でも、R
10としては、C
1-20アルキル基が好ましく、より好ましくはC
1-10アルキル基、さらに好ましくはC
1-4アルキル基、特に好ましくはメチル基である。特に、式(VIII)中のR
10がいずれもメチル基であることが好ましい。
【0195】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)は、式(VII)で表される単位構造と式(VIII)で表される単位構造以外にも、例えば、上記式(V’)で表される単位構造等を有していてもよい。
【0196】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)における式(VII)中の3つの酸素原子が結合したケイ素原子(SiH含有基中のケイ素原子は含まない)の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)を構成するケイ素原子の全量(100モル%)に対して、20〜80モル%が好ましく、より好ましくは25〜60モル%である。含有量が20モル%未満であると、ラダー型シルセスキオキサン(C2)が有するヒドロシリル基の量が不十分となって、硬化物の十分な硬度が得られない場合がある。一方、含有量が80モル%を超えると、ラダー型シルセスキオキサン(C2)中にシラノール基や加水分解性シリル基が多く残存するため、ラダー型シルセスキオキサン(C2)が液状で得られない場合がある。さらに縮合反応が進行して分子量が変化しやすくなるため、保存安定性が悪化する場合がある。
【0197】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)における式(VIII)中の1つの酸素原子が結合したケイ素原子の量は、特に限定されないが、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)を構成するケイ素原子の全量(100モル%)に対して、20〜85モル%が好ましく、より好ましくは30〜75モル%である。含有量が20モル%未満であると、ラダー型シルセスキオキサン(C2)中にシラノール基や加水分解性シリル基が残存しやすく、ラダー型シルセスキオキサン(C2)が液状で得られない場合がある。さらに縮合反応が進行して分子量が変化しやすくなるため、保存安定性が悪化する場合がある。一方、含有量が85モル%を超えると、ラダー型シルセスキオキサン(C2)が有するヒドロシリル基の量が不十分となって、硬化物の硬度が十分得られない場合がある。
【0198】
上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)が有するSi−O−Si構造(骨格)としては、特に限定されず、例えば、ラダー構造、カゴ構造、ランダム構造等が挙げられる。
【0199】
ポリオルガノシルセスキオキサン(C2)は、例えば、下記式(L
b)で表すことができる。式(L
b)中のv、R
5としては、上記式(L)と同様のものが例示される。式(L
b)中のBは、ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)、又は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、若しくはアシルオキシ基を示し、式(L
b)中のBの一部又は全部はポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)である。なお、式(L
b)中の複数(2〜4個)のBがポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)である場合、それぞれのBは互いに又は他の式(L
b)で表される分子が有するBと1以上のSi−O−Si結合を介して結合していてもよい。
【化21】
【0200】
なお、ラダー型シルセスキオキサン(C2)におけるポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)は、さらに、上述のラダー型シルセスキオキサン(C1)における式(V)で表される単位構造を有するものであってもよい。この場合、ラダー型シルセスキオキサン(C2)は、ラダー型シルセスキオキサン(C1)として使用することも可能な場合がある。
【0201】
ラダー型シルセスキオキサン(C2)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ラダー構造を有し、分子鎖末端にシラノール基及び/又は加水分解性シリル基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(原料ラダーポリマー)の分子鎖末端に対して、上記ポリオルガノシルセスキオキサン残基(b)を形成する方法が挙げられる。具体的には、国際公開第2013/176238号等の文献に開示された方法等により製造できる。
【0202】
ラダー型シルセスキオキサン(C2)における、分子内(一分子中)の上記SiH含有基の数は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、より好ましくは2〜30個である。上述の範囲で上記SiH含有基を有することにより、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。
【0203】
ラダー型シルセスキオキサン(C2)が有するヒドロシリル基の含有量は、特に限定されないが、0.01〜0.5mmol/gが好ましく、より好ましくは0.08〜0.28mmol/gである。また、ラダー型シルセスキオキサン(C2)が有するヒドロシリル基の重量基準の含有量は、特に限定されないが、ヒドロシリル基におけるH(ヒドリド)の重量換算(H換算)で、0.01〜0.50重量%が好ましく、より好ましくは0.08〜0.28重量%である。ヒドロシリル基の含有量が少なすぎると(例えば、0.01mmol/g未満、H換算で0.01重量%未満の場合)、硬化性樹脂組成物の硬化が進行しない場合がある。一方、ヒドロシリル基の含有量が多すぎると(例えば、0.50mmol/gを超える、H換算で0.50重量%を超える場合)、硬化物の硬度が高くなり、割れやすくなる場合がある。なお、ラダー型シルセスキオキサン(C2)におけるヒドロシリル基の含有量は、例えば、
1H−NMRスペクトル測定等により算出することができる。
【0204】
ラダー型シルセスキオキサン(C2)の分子量は、特に限定されないが、100〜80万が好ましく、より好ましくは200〜10万、さらに好ましくは300〜1万、特に好ましくは500〜9000である。ラダー型シルセスキオキサン(C2)の分子量がこの範囲にあると、室温で液体となりやすく、なおかつその粘度が比較的低くなりやすいため、取り扱いが容易となる傾向がある。なお、ラダー型シルセスキオキサン(C2)は、上記範囲の種々の分子量を有するものの混合物であってもよい。なお、上記分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量として測定される。
【0205】
ラダー型シルセスキオキサン(C2)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、100〜80万が好ましく、より好ましくは200〜10万、さらに好ましくは300〜1万、特に好ましくは500〜9000である。重量平均分子量が100以上であると、硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。一方、分子量が80万以下であると、他の成分との相溶性が向上する傾向がある。なお、上記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量より算出される。
【0206】
ラダー型シルセスキオキサン(C2)は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。より具体的には、ラダー型シルセスキオキサン(C2)の23℃における粘度は、100〜10万mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜1万mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。粘度が100mPa・s以上であると、硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。一方、粘度が10万mPa・s以下であると、硬化性樹脂組成物の調製や取り扱いが容易となる傾向がある。なお、23℃における粘度は、ラダー型シルセスキオキサン(C1)の粘度と同様の方法により測定される。
【0207】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物においてラダー型シルセスキオキサン(C2)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0208】
本発明の硬化性樹脂組成物がラダー型シルセスキオキサン(C2)を含む場合、本発明の硬化性樹脂組成物におけるラダー型シルセスキオキサン(C2)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、1〜30重量%が好ましく、より好ましくは3〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%である。含有量を1重量%以上とすることにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。また、硬化性樹脂組成物におけるヒドロシリル基の量が多くなり、硬化反応が十分に進行することで硬度の高い硬化物が得られる傾向がある。一方、含有量を30重量%以下とすることにより、硬化物が硬くなりすぎず、柔軟性に優れる硬化物が得られる傾向がある。
【0209】
(その他のラダー型シルセスキオキサン)
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)としては、上述のラダー型シルセスキオキサン(C1)、ラダー型シルセスキオキサン(C2)以外のラダー型シルセスキオキサン(「その他のラダー型シルセスキオキサン」と称する場合がある)を使用することもできる。特に、上記その他のラダー型シルセスキオキサンは、ラダー型シルセスキオキサン(C1)やラダー型シルセスキオキサン(C2)と併用することが好ましい。
【0210】
上記その他のラダー型シルセスキオキサンとしては、例えば、25℃において固体であり、なおかつ脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)を有するラダー型シルセスキオキサン(「ラダー型シルセスキオキサン(S1)」と称する場合がある);25℃において固体であり、なおかつヒドロシリル基を有するラダー型シルセスキオキサン(「ラダー型シルセスキオキサン(S2)」と称する場合がある)が挙げられる。本発明の硬化性樹脂組成物がラダー型シルセスキオキサン(S1)及び/又は(S2)を含む場合には、特に、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が向上し、さらに、強靭性(特に、耐クラック性)が向上する傾向がある。
【0211】
ラダー型シルセスキオキサン(S1)における、分子内の脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)の数は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、より好ましくは2〜30個である。また、ラダー型シルセスキオキサン(S1)における脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)の位置は、特に限定されず、側鎖であってもよいし、末端であってもよい。
【0212】
ラダー型シルセスキオキサン(S2)における、分子内のヒドロシリル基の数は、特に限定されないが、2個以上(例えば、2〜50個)が好ましく、より好ましくは2〜30個である。また、ラダー型シルセスキオキサン(S2)におけるヒドロシリル基の位置は、特に限定されず、側鎖であってもよいし、末端であってもよい。
【0213】
ラダー型シルセスキオキサン(S1)、(S2)のそれぞれの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、2000〜80万が好ましく、より好ましくは6000〜10万である。重量平均分子量が2000以上であると、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。一方、分子量が80万以下であると、他の成分との相溶性が向上する傾向がある。なお、上記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の分子量より算出される。
【0214】
ラダー型シルセスキオキサン(S1)、(S2)は、公知乃至慣用のラダー型シルセスキオキサンの製造方法(例えば、3官能シラン化合物を原料としたゾルゲル法)により製造することができる。
【0215】
本発明の硬化性樹脂組成物がラダー型シルセスキオキサン(S1)を含む場合、ラダー型シルセスキオキサン(S1)の含有量は、特に限定されず、例えば、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、0.1〜30重量%の範囲で適宜調整可能である。また、本発明の硬化性樹脂組成物がラダー型シルセスキオキサン(S2)を含む場合のラダー型シルセスキオキサン(S2)の含有量も、特に限定されず、例えば、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、0.1〜30重量%の範囲で適宜調整可能である。
【0216】
上記その他のラダー型シルセスキオキサンとしては、例えば、国際公開第2013/176238号に開示された、分子内に2個以上の脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)又は分子内に2個以上のヒドロシリル基を有し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が500〜1500、分子量分散度(Mw/Mn)が1.00〜1.40であるラダー型シルセスキオキサン等も使用できる。このようなラダー型シルセスキオキサンを使用することによって、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が著しく向上する傾向がある。上記ラダー型シルセスキオキサンの含有量は、特に限定されず、例えば、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、0.1〜15重量%の範囲で適宜調整可能である。
【0217】
本発明の硬化性樹脂組成物においてラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。特に、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性の観点で、ラダー型シルセスキオキサン(C1)及びラダー型シルセスキオキサン(C2)を併用することが好ましい。
【0218】
本発明の硬化性樹脂組成物がラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)を含む場合、本発明の硬化性樹脂組成物におけるラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、0.1〜50重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは0.5〜30重量%である。ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)の含有量を0.1重量%以上とすることにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性がより向上する傾向がある。一方、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)の含有量を50重量%以下とすることにより、硬化物の靱性等の機械強度が向上する傾向がある。
【0219】
[イソシアヌル骨格を含む化合物(D)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、イソシアヌル骨格を含む化合物(D)を含んでいてもよい。本発明の硬化性樹脂組成物がイソシアヌル骨格を含む化合物(D)を含む場合、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性が向上し、さらに、被着体に対する密着性が向上する傾向がある。また、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)と組み合わせて用いる場合、腐食性ガスに対するバリア性がよりいっそう高くなる。特に、イソシアヌル骨格を含む化合物(D)は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化22】
【0220】
式(1)中、R
x、R
y、及びR
zは、同一又は異なって、式(1a)で表される基、又は式(1b)で表される基を示す。中でも、R
x、R
y、及びR
zのうち少なくとも1個は、式(1b)で表される基であることが好ましい。
【化23】
【化24】
【0221】
式(1a)中、R
13は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基(直鎖若しくは分岐鎖状のC
1-8アルキル基)を示す。直鎖若しくは分岐鎖状のC
1-8アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。上記アルキル基の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の直鎖若しくは分岐鎖状のC
1-3アルキル基が好ましい。中でもR
13としては、水素原子が特に好ましい。
【0222】
なお、式(1)におけるR
x、R
y、及びR
zのうち2個又は3個が式(1a)で表される基である場合、これらの式(1a)で表される基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、式(1)で表される化合物は、式(1a)で表される基を有していなくてもよい。
【0223】
式(1b)中、R
14は、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基(直鎖若しくは分岐鎖状のC
1-8アルキル基)を示す。直鎖若しくは分岐鎖状のC
1-8アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。上記アルキル基の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の直鎖若しくは分岐鎖状のC
1-3アルキル基が好ましい。中でもR
14としては、水素原子が特に好ましい。
【0224】
なお、式(1)におけるR
x、R
y、及びR
zのうち2個又は3個が式(1b)で表される基である場合、これらの式(1b)で表される基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、式(1)で表される化合物は、式(1b)で表される基を有していなくてもよい。
【0225】
式(1)で表される化合物としては、例えば、式(1)におけるR
x、R
y、及びR
zのうち1個が式(1b)で表される基である化合物(「モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物」と称する場合がある)、式(1)におけるR
x、R
y、及びR
zのうち2個が式(1b)で表される化合物(「ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート化合物」と称する場合がある)、式(1)におけるR
x、R
y、及びR
zの全てが式(1b)で表される化合物(「トリアリルイソシアヌレート化合物」と称する場合がある)等が挙げられる。
【0226】
上記モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物としては、具体的には、例えば、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0227】
上記ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート化合物としては、具体的には、例えば、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、1,3−ジアリル−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−グリシジルイソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0228】
上記トリアリルイソシアヌレート化合物としては、具体的には、例えば、トリアリルイソシアヌレート、トリス(2−メチルプロペニル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0229】
本発明の硬化性樹脂組成物においてイソシアヌル骨格を含む化合物(D)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、イソシアヌル骨格を含む化合物(D)は、例えば、市販品として入手することが可能である。
【0230】
式(1)で表される化合物が式(1a)で表される基を有するものである場合は、例えば、アルコールや酸無水物等のエポキシ基と反応する化合物と反応させて、変性した上で使用することもできる。
【0231】
式(1)で表される化合物が式(1b)で表される基を有する場合、例えば、ヒドロシリル基を有する化合物とあらかじめ反応(ヒドロシリル化反応)させた上で使用することもできる。例えば、上記モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物とラダー型シルセスキオキサン(C2)とをヒドロシリル化触媒の存在下で反応させたものを、本発明の硬化性樹脂組成物の構成成分として使用することもできる。
【0232】
イソシアヌル骨格を含む化合物(D)は、他の成分との相溶性を向上させる観点から、後述のように、シランカップリング剤(E)とあらかじめ混合してから、他の成分に配合することもできる。
【0233】
本発明の硬化性樹脂組成物がイソシアヌル骨格を含む化合物(D)を含む場合、本発明の硬化性樹脂組成物におけるイソシアヌル骨格を含む化合物(D)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜6重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜4重量%、さらに好ましくは0.08〜3重量%である。イソシアヌル骨格を含む化合物(D)の含有量を0.01重量%以上とすることにより、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性、被着体に対する密着性がより向上する傾向がある。一方、イソシアヌル骨格を含む化合物(D)の含有量を6重量%以下とすることにより、硬化性樹脂組成物においてイソシアヌル骨格を含む化合物(D)に起因する固体の析出が抑制されやすくなる傾向がある。
【0234】
[シランカップリング剤(E)]
本発明の硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤(E)を含んでいてもよい。シランカップリング剤(E)を含む場合には、特に、硬化物の被着体に対する密着性が向上する傾向がある。さらに、シランカップリング剤(E)は、イソシアヌル骨格を含む化合物(D)(特に、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物)やラダー型シルセスキオキサン(C2)等との相溶性が良好であるため、特に、イソシアヌル骨格を含む化合物(D)等のその他の成分に対する相溶性を向上させることを可能とする。具体的には、例えば、イソシアヌル骨格を含む化合物(D)を使用する場合には、あらかじめイソシアヌル骨格を含む化合物(D)とシランカップリング剤(E)との組成物を形成した上で、その他の成分と配合させると、均一な硬化性樹脂組成物が得られやすい。
【0235】
シランカップリング剤(E)としては、公知乃至慣用のシランカップリング剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシシラン)、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピレントリメトキシシラン、メルカプトプロピレントリエトキシシラン、アルコキシオリゴマー(例えば、商品名「KR−513」、「X−41−1059A」、「KR−516」、「X−41−1085」、「X−41−1818」、「X−41−1810」、「X−40−2651」、「X−40−2665A」、「KR−513」、「KC−89S」、「KR−500」、「X−40−9225」、「X−40−9246」、「X−40−9250」;以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。中でも、エポキシ基含有シランカップリング剤(特に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を好ましく使用できる。
【0236】
本発明の硬化性樹脂組成物においてシランカップリング剤(E)は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、シランカップリング剤(E)としては、市販品を使用することもできる。
【0237】
本発明の硬化性樹脂組成物がシランカップリング剤(E)を含む場合、本発明の硬化性樹脂組成物におけるシランカップリング剤(E)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.2〜5重量%、特に好ましくは0.3〜0.5重量%である。シランカップリング剤(E)の含有量を0.01重量%以上とすることにより、硬化物の被着体に対する密着性が向上する傾向がある。また、イソシアヌル骨格を含む化合物(D)の硬化性樹脂組成物中での溶解性を向上させることができるため、硬化物の腐食性ガスに対するバリア性のさらなる向上が可能となる場合がある。一方、シランカップリング剤(E)の含有量を15重量%以下とすることにより、十分に硬化反応が進行し、硬化物の靱性、耐熱性、腐食性ガスに対するバリア性が向上する傾向がある。
【0238】
[ヒドロシリル化触媒]
本発明の硬化性樹脂組成物は、ヒドロシリル化触媒を含んでいてもよい。本発明の硬化性樹脂組成物がヒドロシリル化触媒を含むことにより、加熱することで、硬化性樹脂組成物中の脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)とヒドロシリル基の間のヒドロシリル化反応をより効率的に進行させることができる傾向がある。
【0239】
上記ヒドロシリル化触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等の周知のヒドロシリル化反応用触媒が例示され、具体的には、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金のオレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体等の白金のカルボニル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体や白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体等の白金ビニルメチルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体等の白金系触媒、並びに上記白金系触媒において白金原子の代わりにパラジウム原子又はロジウム原子を含有するパラジウム系触媒又はロジウム系触媒が挙げられる。中でも、ヒドロシリル化触媒としては、白金−ビニルメチルシロキサン錯体や白金−カルボニルビニルメチル錯体や塩化白金酸とアルコール、アルデヒドとの錯体が、反応速度が良好であるため好ましい。
【0240】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物においてヒドロシリル化触媒は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0241】
本発明の硬化性樹脂組成物がヒドロシリル化触媒を含む場合、本発明の硬化性樹脂組成物におけるヒドロシリル化触媒の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物に含まれる脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)の全量1モルに対して、1×10
-8〜1×10
-2モルが好ましく、より好ましくは1.0×10
-6〜1.0×10
-3モルである。含有量を1×10
-8モル以上とすることにより、より効率的に硬化物を形成させることができる傾向がある。一方、含有量を1×10
-2モル以下とすることにより、より色相に優れた(着色の少ない)硬化物を得ることができる傾向がある。
【0242】
また、本発明の硬化性樹脂組成物におけるヒドロシリル化触媒の含有量(配合量)は、特に限定されないが、例えば、ヒドロシリル化触媒中の白金、パラジウム、又はロジウムが重量単位で、0.01〜1000ppmの範囲内となる量が好ましく、0.1〜500ppmの範囲内となる量がさらに好ましい。ヒドロシリル化触媒の含有量がこのような範囲にあると、より効率的に硬化物を形成させることができ、また、より色相に優れた硬化物を得ることができる傾向がある。
【0243】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、上述の成分以外の成分(「その他の成分」と称する場合がある)を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリシロキサン(A)及び(B)以外のシロキサン化合物(例えば、環状シロキサン化合物、低分子量直鎖又は分岐鎖状シロキサン化合物等)、ヒドロシリル化反応抑制剤、溶媒、各種添加剤等が挙げられる。添加剤としては、例えば、沈降シリカ、湿式シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質充填剤、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により処理した無機質充填剤;上述以外のシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導電性金属粉末等の充填剤、溶剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤等)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤等)、難燃助剤、補強材(他の充填剤等)、核剤、カップリング剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料、顔料等)、分散剤、消泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、蛍光体等が挙げられる。これらのその他の成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、その他の成分の含有量(配合量)は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することが可能である。
【0244】
本発明の硬化性樹脂組成物は、中でも、(i)ポリシロキサン(A)が分岐鎖状のポリオルガノシロキサン(A1)を含み且つポリシロキサン(B)がポリオルガノシロキサン(B1)を含む組み合わせ、及び/又は、(ii)ポリシロキサン(A)がケイ素原子に結合したフェニル基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレン(A2)を含み且つポリシロキサン(B)がポリオルガノシロキシシルアルキレン(B2)を含む組み合わせであり、本発明の硬化性樹脂組成物(100重量%)におけるポリシロキサン(A)とポリシロキサン(B)の含有量の合計が60〜99重量%(より好ましくは70〜96重量%、さらに好ましくは80〜90重量%)であり、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)の含有量が0.1〜50重量%(より好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは0.5〜30重量%)であり、イソシアヌル骨格を含む化合物(D)の含有量が0.01〜6重量%(より好ましくは0.05〜4重量%、さらに好ましくは0.08〜3重量%)であり、シランカップリング剤(E)の含有量が0.01〜15重量%(より好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.2〜5重量%、特に好ましくは0.3〜0.5重量%)であることが特に好ましい。
【0245】
なお、本明細書において、本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる各成分(例えば、ポリシロキサン(A)、ポリシロキサン(B)、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)、イソシアヌル骨格を含む化合物(D)、シランカップリング剤(E)等)の含有量は、それぞれ、合計が100重量%以下となるように、記載の範囲内から適宜選択することができる。
【0246】
本発明の硬化性樹脂組成物中に含まれる全てのポリシロキサン(ポリシロキサン(A)、ポリシロキサン(B)、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(C)等)中のケイ素原子に結合した一価の置換又は無置換炭化水素基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、1モル%以上(例えば、1〜90モル%)が好ましく、より好ましくは5モル%以上(例えば、5〜80モル%)、さらに好ましくは10モル%以上(例えば、10〜70モル%、特に好ましくは30モル%以上(例えば、30〜50モル%)である。上記アリール基の割合が1モル%以上(特に、10モル%以上)であると、硬化物の耐硫化性がより優れる傾向にある。なお、上記アリール基(特に、フェニル基)の割合は、硬化性樹脂組成物に含まれる各ポリシロキサンの
1H−NMRスペクトル測定結果及び各ポリシロキサンの配合量に基づき算出することができる。
【0247】
本発明の硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、上記の各成分を室温で撹拌・混合することにより調製することができる。なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、別々に保管しておいた2以上の成分を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として使用することもできる。
【0248】
本発明の硬化性樹脂組成物は、固体、液体のいずれの状態を有するものであってもよく、特に限定されないが、通常、常温(約25℃)で液体である。
【0249】
本発明の硬化性樹脂組成物の23℃における粘度は、特に限定されないが、300〜2万mPa・sが好ましく、より好ましくは500〜1万mPa・s、さらに好ましくは1000〜8000mPa・sである。上記粘度を300mPa・s以上とすることにより、硬化物の耐熱性が向上する傾向がある。一方、上記粘度を2万mPa・s以下とすることにより、硬化性樹脂組成物の調製がしやすく、その生産性や取り扱い性が向上し、また、硬化物に気泡が残存しにくくなるため、硬化物(特に、封止材)の生産性や品質がより向上する傾向がある。なお、硬化性樹脂組成物の粘度は、上述のラダー型シルセスキオキサン(C)の粘度と同じ方法によって測定される。
【0250】
<硬化物>
本発明の硬化性樹脂組成物を硬化(特に、ヒドロシリル化反応により硬化)させることによって、硬化物(「本発明の硬化物」と称する場合がある)が得られる。硬化(特に、ヒドロシリル化反応による硬化)の際の条件は、特に限定されず、従来公知の条件より適宜選択することができるが、例えば、反応速度の点から、温度(硬化温度)は25〜180℃(より好ましくは60〜150℃)が好ましく、時間(硬化時間)は1〜720分が好ましい。なお、硬化は一段階で実施することもできるし、多段階で実施することもできる。本発明の硬化物は、ポリシロキサン系材料特有の高い耐熱性及び透明性を有するのみならず、特に、タック性が低く、且つゴミが付着しにくい。
【0251】
<封止剤>
本発明の硬化性樹脂組成物は、半導体装置における半導体素子の封止用の組成物(封止剤)(「本発明の封止剤」と称する場合がある)として好ましく使用することができる。具体的には、本発明の封止剤は、光半導体装置における光半導体素子(LED素子)の封止用途に(即ち、光半導体用封止剤として)特に好ましく使用できる。本発明の封止剤を硬化させることにより得られる封止材(硬化物)は、ポリシロキサン系材料特有の高い耐熱性及び透明性を有するのみならず、特に、タック性が低く、且つゴミが付着しにくい。このため、本発明の封止剤は、特に、高輝度、短波長の光半導体素子の封止剤等として好ましく使用できる。
【0252】
<半導体装置>
本発明の封止剤を使用して半導体素子を封止することにより、半導体装置(「本発明の半導体装置」と称する場合がある)が得られる。即ち、本発明の半導体装置は、半導体素子とこれを封止する封止材とを少なくとも有する半導体装置であって、上記封止材が本発明の封止剤の硬化物である半導体装置である。本発明の半導体装置の製造は、公知乃至慣用の方法により実施でき、特に限定されないが、例えば、本発明の封止剤を所定の成形型内に注入し、所定の条件で加熱硬化して実施できる。硬化温度と硬化時間は、特に限定されないが、硬化物の調製時と同様の範囲で設定することができる。本発明の封止剤は、上記半導体装置が光半導体装置である場合、即ち、光半導体装置における光半導体素子の封止剤(光半導体用封止剤)として使用する場合には、特に上述の有利な効果を効果的に発揮できる。本発明の封止剤を光半導体用封止剤として使用することにより、光半導体装置(「本発明の光半導体装置」と称する場合がある)が得られる。本発明の光半導体装置の一例を
図1に示す。
図1において、100はリフレクター(光反射用樹脂組成物)、101は金属配線(電極)、102は光半導体素子、103はボンディングワイヤ、104は硬化物(封止材)を示す。
【0253】
特に、本発明の硬化性樹脂組成物は、従来の樹脂材料では対応することが困難であった、高輝度・短波長の光半導体装置において光半導体素子を被覆する封止材を形成するための封止剤、高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)において半導体素子を被覆する封止材を形成するための封止剤等の用途に好ましく使用できる。
【0254】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上述の封止剤用途(特に、光半導体素子の封止剤用途)に限定されず、例えば、機能性コーティング剤、耐熱プラスチックレンズ、透明機器、接着剤(耐熱透明接着剤等)、電気絶縁材(絶縁膜等)、積層板、コーティング、インク、塗料、シーラント、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光学部材、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリ等の光学関連や半導体関連の用途にも好ましく使用できる。
【0255】
[本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法]
本発明の硬化性樹脂組成物の製造方法(単に「本発明の製造方法」と称する場合がある)は、ポリシロキサン(A)と、ポリシロキサン(B)とを含み、ポリシロキサン(A)として上記平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び上記平均単位式(a−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、ポリシロキサン(B)として上記平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び上記平均単位式(b−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、(T+Q)/D>0.3及びM+D+T+Q=1を満たし、組成物中に存在する脂肪族炭素−炭素二重結合1モルに対して、ヒドロシリル基が0.9〜5.0モルである硬化性樹脂組成物を製造する方法である。
【0256】
本発明の製造方法は、ポリシロキサン(A)と、ポリシロキサン(B)とを含み、ポリシロキサン(A)として上記平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び上記平均単位式(a−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、ポリシロキサン(B)として上記平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び上記平均単位式(b−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、(T+Q)/D>0.3及びM+D+T+Q=1を満たし、組成物中に存在する脂肪族炭素−炭素二重結合1モルに対して、ヒドロシリル基が0.9〜5.0モルである組成物(I)の硬化物を形成し、下記剥離荷重評価により上記硬化物の剥離強度及び/又は総剥離荷重を求めて目的とする硬化性樹脂組成物の組成を決定する段階を含む。なお、下記剥離荷重評価を「剥離荷重評価(Y)」と称する場合がある。
剥離荷重評価:被着体と上記硬化物を、垂直方向に離れた状態から、上記被着体及び上記硬化物の少なくとも一方を移動させて、接触面積が50mm
2以上となるように上記被着体と上記硬化物とを接触させ、荷重をかけて押し付けた後、垂直方向に別離させたときの接触面の応力変化を記録し、上記被着体と上記硬化物とが別離し始めてから完全に別離するまでの最大応力値を、上記被着体と上記硬化物の接触面積で除した値を剥離強度とし、上記被着体と上記硬化物とが別離し始めてから完全に別離するまでの応力曲線とベースラインとで囲まれた面積を、上記接触面積で除した値を総剥離荷重とする。
【0257】
即ち、本発明の製造方法では、硬化性樹脂組成物を製造する前に、ポリシロキサン(A)と、ポリシロキサン(B)とを含み、ポリシロキサン(A)として上記平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び上記平均単位式(a−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、ポリシロキサン(B)として上記平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサン及び上記平均単位式(b−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、(T+Q)/D>0.3及びM+D+T+Q=1を満たし、組成物中に存在する脂肪族炭素−炭素二重結合1モルに対して、ヒドロシリル基が0.9〜5.0モルである組成物(「組成物(I)」と称する場合がある)について、該組成物(I)を硬化させて硬化物を形成し、該硬化物について上記剥離荷重評価(Y)を行い、剥離強度及び/又は総剥離荷重を求める。そして、得られた剥離強度及び/又は総剥離荷重から、所望のタック性及びゴミの付着性を有する硬化物を形成可能な硬化性樹脂組成物の組成を決定し、決定された組成の硬化性樹脂組成物を製造する。
【0258】
本発明の製造方法は、上記段階を含むことにより、本発明の製造方法により得られる硬化性樹脂組成物の硬化物のタック性及びゴミの付着性の見当をつけた上で硬化性樹脂組成物を製造することができる。このため、該硬化性樹脂組成物の硬化物を用いた製品を実際に製造してみなくても、該製品のタック性が低く、且つゴミが付着しにくい硬化性樹脂組成物を製造することができる。
【0259】
剥離荷重評価(Y)は、後述の本発明の測定方法に該当する。上記剥離荷重評価(Y)を行う硬化物を形成する際の硬化性樹脂組成物の硬化は、特に限定されないが、25〜180℃且つ1〜720分間の条件の中から選択される少なくとも1点の硬化条件で行うことが好ましい。なお、硬化は一段階で実施することもできるし、多段階で実施することもできる。好ましい硬化条件は、上記剥離荷重評価(X)における硬化条件と同様である。
【0260】
剥離荷重評価(Y)における被着体は、特に限定されないが、SUS製であることが好ましい。被着体と硬化物とを接触させたときの接触面積は、上述のように50mm
2以上であり、好ましくは50〜800mm
2である。押し付ける際の荷重は、特に限定されないが、100Nが好ましい。また、押し付ける時間は2分間が好ましい。
【0261】
剥離荷重評価(Y)において、被着体と硬化物の別離させる際の速度は、特に限定されないが、少なくとも5〜500mm/minのうちの任意の1点であることが好ましい。中でも、少なくとも5〜500mm/minのうちの任意の10点で剥離荷重評価を行い、剥離強度及び総剥離荷重として、それぞれ、上記10点で測定して得られた値の最大値を採用することが好ましい。但し、隣接する2点は、速度差が5mm/min以上である。上記10点は、5mm/min、10mm/min、20mm/min、30mm/min、50mm/min、70mm/min、100mm/min、150mm/min、300mm/min、及び500mm/minの10点であることが好ましい。
【0262】
剥離荷重評価(Y)におけるさらに好ましい評価条件は、上記剥離荷重評価(X)における評価条件と同様である。
【0263】
剥離荷重評価(Y)を行う前の硬化性樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物と同様の方法で製造される。
【0264】
[本発明の粘弾性材料表面のタックの測定方法]
本発明の粘弾性材料表面のタックの測定方法は、接触面積が50mm
2以上となるように被着体と粘弾性材料とを接触させて荷重を加え、次いで応力緩和させる工程A(以下、単に「工程A」と称する場合がある)と、別離方向に変位を加えて前記被着体と前記粘弾性材料とを別離させる工程B(以下、単に「工程B」と称する場合がある)と、前記接触から前記別離までの接触面の応力変化を記録して、x軸を変位、y軸を応力とした曲線を得、得られた曲線からタックを定量する工程C(以下、単に「工程C」と称する場合がある)と、を有する。なお、本明細書において、「本発明の粘弾性材料表面のタックの測定方法」を、「本発明の測定方法」と称する場合がある。本発明の測定方法によれば、シリコーン系封止材等の低タック性の粘弾性材料についても、得られるタック性の測定精度が高く、また、定量的な測定が可能となる。このため、低タック性の粘弾性材料についてもタック性の相対比較が行いやすくなり、低タック領域から高タック領域まで一貫してタック性の相対比較が行いやすくなる。
【0265】
(工程A)
本発明の測定方法は、粘弾性材料のタック性を評価する方法である。工程Aは、接触面積が50mm
2以上となるように被着体と粘弾性材料とを接触させて荷重を加える手段と、応力緩和させる手段とを含む。工程Aにおいて、被着体と粘弾性材料とを接触させる方向及び荷重を加える方向は、垂直方向(鉛直方向)が好ましい。また、荷重は、被着体側から加えてもよいし、粘弾性材料側から加えてもよい。即ち、被着体及び粘弾性材料の少なくとも一方を接触させる方向に移動させるが、どちらを移動させてもよい。上記接触させる方向及び荷重を加える方向が鉛直方向である場合、接触させる方向は、鉛直上向きでもよいし、鉛直下向きでもよい。なお、工程Aにおいて接触させる際に移動させる方向と、工程Bにおいて別離させる際に移動させる方向とは逆である。
【0266】
上記応力緩和させる手段において、被着体と粘弾性材料の接触後、粘弾性材料に荷重が加わって発生した応力は、荷重が加わった状態で一定時間保持することにより緩和される。
【0267】
工程Aにおいて、被着体と粘弾性材料とを接触させて荷重を加える手段は、台座と被着体とを有する応力検出機構を用いることが好ましい。また、この場合、平板状の粘弾性材料を上記台座に配置し、粘弾性材料と被着体との接触面が平面となるように、被着体を粘弾性材料に押し当てて荷重を継続的に加える手段であることが好ましい。
【0268】
工程Aにおいて、被着体と粘弾性材料とを接触させて加える荷重を接触面積で除した値(圧力)は、特に限定されないが、0.1〜4MPaが好ましく、より好ましくは0.1〜2MPa、さらに好ましくは0.2〜2MPaである。上記圧力が上記範囲内であると、タック性の測定に適切な加圧力となる傾向がある。
【0269】
また、荷重を加えた状態(加圧状態)で保持する時間(加圧時間)は、特に限定されないが、0.5〜10分間が好ましく、より好ましくは1〜3分間である。加圧時間が上記範囲内であると、粘弾性材料表面と被着体表面を密着させた後応力緩和を促すための時間を十分に確保することができ、タック性の測定時の弾性力の影響が小さくなる傾向がある。
【0270】
粘弾性材料の形状は、特に限定されないが、平板状が好ましい。また、粘弾性材料の厚みは、特に限定されないが、0.5〜5mmが好ましく、より好ましくは1〜3mmである。
【0271】
被着体の形状は、特に限定されないが、粘弾性材料と接触する面が平面であることが好ましい。さらに、この場合、該被着体の平面の面積は、粘弾性材料と被着体との接触部分の面積よりも大きいことが好ましい。即ち、被着体の、粘弾性材料と接触する面の面積が接触面積よりも大きいことが好ましい。このような例としては、例えば、
図3に示す300が粘弾性材料であり、303が被着体であるような場合である。プローブタック試験では、被着体(プローブ)の、粘弾性材料と接触する面の面積が粘弾性材料と被着体との接触面積よりも小さいため、プローブの先端面外周エッジ部における接触面では応力が集中して粘弾性材料が変形し、またこれによって測定結果にムラが発生して測定結果の定量性及び品質が低下する。これに対し、本発明の測定方法において、被着体の平面の面積が粘弾性材料と被着体との接触部分の面積よりも大きくすることにより、上記プローブタック試験におけるエッジ部の影響を極めて小さくすることができる。
【0272】
粘弾性材料と被着体との接触面積は、上述のように50mm
2以上であり、好ましくは50〜800mm
2、より好ましくは100〜400mm
2である。接触面積が50mm
2以上であると、従来のプローブタック試験では測定面積が狭く局所的であるのに対して、本発明の測定方法では粘弾性材料の測定面積が広範囲となるため、低タック領域での検出値が増大し、広範囲の平均的測定値が得られる。また、例えば、
図3に示す300が粘弾性材料であり、303が被着体であるような場合のように、平板状の粘弾性材料の被着体と接触する面の面積と上記接触面積が同じであることが好ましい。
【0273】
被着体の素材は、特に限定されず、公知乃至慣用のタック性評価の被着体に用いられる素材が使用できる。中でも、SUSが好ましい。
【0274】
(工程B)
工程Bでは、別離方向に変位を加えて被着体と粘弾性材料とを別離させる。なお、変位を加える対象は、粘弾性材料及び被着体のいずれでもよいが、工程Aにおいて接触及び荷重を加える際に変位を加えた対象と同じとする。また、別離させる方向は、垂直方向(鉛直方向)が好ましい。
【0275】
工程Bにおいて、被着体と粘弾性材料とを別離させる速度は、特に限定されないが、1〜1000mm/分が好ましく、より好ましくは5〜30mm/分である。特に、別離させる際の速度を、5mm/min、10mm/min、20mm/min、30mm/min、50mm/min、70mm/min、100mm/min、150mm/min、300mm/min、及び500mm/minの10点のいずれかとすることが好ましく、上記10点全てとすること(即ち、上記10点全ての速度で測定すること)がより好ましい。
【0276】
(工程C)
工程Cでは、工程Aにおける接触から工程Bにおける別離までの接触面の応力変化を記録して、x軸を変位(被着体と粘弾性材料の距離)、y軸を応力とした曲線を得る。そして、得られた曲線からタックを定量する。
図2は、x軸を変位、y軸を応力とした曲線を示す一例でもある。
【0277】
工程Cにおいて、上記曲線における最大応力値を粘弾性材料のタック値として得ることができる。上記最大応力値は、上記曲線の圧縮から引っ張りへ転じる応力0と応力の最大値との差(例えば、
図2中の200で示される値)である。
【0278】
また、上記曲線とベースライン(応力が0の軸)とで囲まれ、且つ上記曲線における最大応力値を含む側の面積(例えば、
図2中の201として示された領域の面積)を粘弾性材料のタック値として得ることもできる。なお、上記面積は、上記曲線を関数としたときの、当該関数の積分値として算出できる。
【0279】
別離させる際の速度を、5mm/min、10mm/min、20mm/min、30mm/min、50mm/min、70mm/min、100mm/min、150mm/min、300mm/min、及び500mm/minの10点全てとする場合、特に、上記10点のうちの最大値の値をタック値として得ることが好ましい。即ち、上記10点の別離速度それぞれについて上記曲線を得、得られた10個の曲線における最大応力値のうちの最大値をタック値として得ること、又は、得られた10個の曲線における、最大応力値を含む側の面積のうちの最大値をタック値として得ることが好ましい。
【0280】
上記最大応力値と上記面積とは、異なるタック性を得るための指標であるため、評価目的に応じて両方のタック性を考慮することが好ましい。
【0281】
本発明の測定方法は、特に限定されないが、温度10〜30℃、湿度30〜70%RH(好ましくは、温度15〜25℃、湿度40〜60%RH)の環境で実施されることが好ましい。
【0282】
本発明の測定方法は、市販の万能試験機を用いて行うことができる。上記剥離荷重評価(X)及び上記剥離荷重評価(Y)は、本発明の測定方法を採用した評価方法の一例である。従って、
図3は、本発明の測定方法の具体的な一例を示す概略図でもある。本発明の測定方法におけるさらに好ましい評価条件としては、上記剥離荷重評価(X)や上記剥離荷重評価(Y)における各評価条件を参酌して適宜採用することができる。
【実施例】
【0283】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、実施例7は参考例として記載するものである。
【0284】
生成物及び製品の
1H−NMR分析は、JEOL ECA500(500MHz)により行った。また、生成物及び製品の
29Si−NMR分析は、JEOL ECA500(500MHz)により行った。また、生成物並びに製品の数平均分子量及び重量平均分子量の測定は、Alliance HPLCシステム 2695(Waters製)、Refractive Index Detector 2414(Waters製)、カラム:Tskgel GMH
HR−M×2(東ソー(株)製)、ガードカラム:Tskgel guard column H
HRL(東ソー(株)製)、カラムオーブン:COLUMN HEATER U−620(Sugai製)、溶媒:THF、測定条件:40℃、により行った。
【0285】
製造例1
[末端にビニル基とトリメチルシリル基(TMS基)とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの合成]
200ml四つ口フラスコに、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)42.61g、フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)6.76g、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)17.69gを仕込み、これらの混合物を10℃まで冷却した。上記混合物に水240ミリモル(4.33g)及び5Nの塩酸0.48g(塩化水素として2.4ミリモル)を1時間かけて同時に滴下した。滴下後、これらの混合物を10℃で1時間保持した。その後、MIBKを80.0g添加して、反応溶液を希釈した。
次に、反応容器の温度を70℃まで昇温し、70℃になった時点で水606ミリモル(10.91g)を添加し、同温度で重縮合反応を窒素下で9時間行った。さらに、ビニルトリエトキシシラン2.08gを添加し、同温度で3時間反応(熟成)を行った。
続いて、得られた反応溶液にヘキサメチルジシロキサン15.0gを添加して、シリル化反応を70℃で3時間行った。その後、反応溶液を冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、その後、上層液を分取した。次に、当該上層液から、1mmHg、60℃の条件で溶媒を留去し、末端にビニル基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンを無色透明の液状の生成物として19.0g得た。なお、製造例1で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンは、上述のラダー型シルセスキオキサン(C1)にあたる。
上記末端にビニル基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は2700、1分子当たりのフェニル基の含有量(平均含有量)は4モル%、ビニル基の含有量(平均含有量)は2モル%であった。
(末端にビニル基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの
1H−NMRスペクトル)
1H−NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl
3)):δ −0.3−0.3ppm(br)、5.7−6.2ppm(br)、7.1−7.7ppm(br)
【0286】
製造例2
[末端にビニル基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの合成]
200ml四つ口フラスコに、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)34.07g、フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)11.49g、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)17.69gを仕込み、これらの混合物を10℃まで冷却した。上記混合物に水240ミリモル(4.33g)及び5Nの塩酸0.48g(塩化水素として2.4ミリモル)を1時間かけて同時に滴下した。滴下後、これらの混合物を10℃で1時間保持した。その後、MIBKを80.0g添加して、反応溶液を希釈した。
次に、反応容器の温度を70℃まで昇温し、70℃になった時点で水606ミリモル(10.91g)を添加し、同温度で重縮合反応を窒素下で9時間行った。さらに、ビニルトリエトキシシラン6.25gを添加し、同温度で3時間反応(熟成)を行った。
続いて、得られた反応溶液にヘキサメチルジシロキサン15.0gを添加して、シリル化反応を70℃で3時間行った。その後、反応溶液を冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、その後、上層液を分取した。次に、当該上層液から、1mmHg、60℃の条件で溶媒を留去し、末端にビニル基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンを無色透明の液状の生成物として36.8g得た。なお、製造例2で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンは、上述のラダー型シルセスキオキサン(C1)にあたる。
上記末端にビニル基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は3400、1分子当たりのフェニル基の含有量(平均含有量)は8モル%、ビニル基の含有量(平均含有量)は6モル%であった。
(末端にビニル基とTMS基とを有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの
1H−NMRスペクトル)
1H−NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl
3)):δ −0.3−0.3ppm(br)、5.7−6.2ppm(br)、7.1−7.7ppm(br)
【0287】
製造例3
[末端にTMS基を有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの合成]
200ml四つ口フラスコに、メチルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)30.06g、ビニルトリエトキシシラン(東京化成工業(株)製)21.39g、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)17.69gを仕込み、これらの混合物を10℃まで冷却した。上記混合物に水281ミリモル(5.06g)及び5Nの塩酸0.48g(塩化水素として2.4ミリモル)を1時間かけて同時に滴下した。滴下後、これらの混合物を10℃で1時間保持した。その後、MIBKを80.0g添加して、反応溶液を希釈した。
次に、反応容器の温度を70℃まで昇温し、70℃になった時点で水703ミリモル(12.64g)を添加し、同温度で重縮合反応を窒素下で12時間行った。
続いて、得られた反応溶液にヘキサメチルジシロキサン15.0gを添加して、シリル化反応を70℃で3時間行った。その後、反応溶液を冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、その後、上層液を分取した。次に、当該上層液から、1mmHg、60℃の条件で溶媒を留去し、末端にTMS基を有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンを無色透明の固体状の生成物として22.0g得た。なお、製造例3で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンは、上述のラダー型シルセスキオキサン(C1)にあたる。
上記末端にTMS基を有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量(Mw)は5000、1分子当たりのビニル基の含有量(平均含有量)は16モル%、フェニル基の含有量(平均含有量)は0モル%であった(観測されなかった)。
(末端にTMS基を有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの
1H−NMRスペクトル)
1H−NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl
3)):δ 0−0.3ppm(br)、5.8−6.1ppm(br)
【0288】
製造例4
[末端にビニル基を有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの合成]
200ml四つ口フラスコに、フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)15.86g及びメチルイソブチルケトン(MIBK)6.16gを仕込み、これらの混合物を10℃まで冷却した。上記混合物に水4.32g及び5Nの塩酸0.16g(塩化水素として2.4ミリモル)を1時間かけて滴下した。滴下後、これらの混合物を10℃で1時間保持した。その後、MIBKを26.67g添加して、反応溶媒を希釈した。
次に、反応容器の温度を70℃まで昇温し、70℃になった時点で5Nの塩酸0.16g(塩化水素として25ミリモル)を添加し、重縮合反応を窒素下で4時間行った。
続いて、得られた反応溶液にジビニルテトラメチルジシロキサン11.18g及びヘキサメチルジシロキサン3.25gを添加して、シリル化反応を70℃で4時間行った。その後、反応溶液を冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、その後、上層液を分取した。次に、当該上層液から、1mmHg、40℃の条件で溶媒を留去し、無色透明の液状の反応生成物(末端にビニル基を有するラダー型シルセスキオキサン、13.0g)を得た。なお、製造例4で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンは、上述のラダー型シルセスキオキサン(C1)にあたる。
上記末端にビニル基を有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの数平均分子量(Mn)は840であり、分子量分散度は1.06であった。
【0289】
表1に記載の各成分の説明を以下に示す。
(A剤)
AS−9070A:長興材料工業製、商品名「AS−9070A」(平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサンを含む)、製品の総量(100重量%)に対するビニル基の含有量1.20重量%、フェニル基の含有量0重量%、ヒドロシリル基の含有量(ヒドリド換算)0重量%、数平均分子量2517、重量平均分子量14505、ヒドロシリル化触媒を含む。
GS5145A:長興材料工業製、商品名「ETERLED GS5145A」(平均単位式(a−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンを含む)、アリール基(フェニル基)の割合約24モル%、ヒドロシリル化触媒を含む。
KER−2500A:信越化学工業(株)製、商品名「KER−2500A」(平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサンを含む)、製品の総量(100重量%)に対するビニル基の含有量1.53重量%、メチル基の含有量94.29重量%、フェニル基の含有量0重量%、ヒドロシリル基の含有量(ヒドリド換算)0.03重量%、数平均分子量4453、重量平均分子量19355、ヒドロシリル化触媒を含む。
OE−6351A:東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「OE−6351A」(平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサンを含む)、ビニル基含有量0.67重量%、フェニル基含有量0重量%、ヒドロシリル基含有量(ヒドリド換算)0重量%、数平均分子量4900、重量平均分子量20900、ヒドロシリル化触媒を含む。
OE−6630A:東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「OE−6630A」(平均単位式(a−1)で表されるポリオルガノシロキサンを含む)、ビニル基含有量2.17重量%、フェニル基含有量51.94重量%、ヒドロシリル基含有量(ヒドリド換算)0重量%、数平均分子量2532、重量平均分子量4490、ヒドロシリル化触媒を含む。
DMS−V35:Gelest社製、商品名「DMS−V35」、両末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサン
MA−DGIC:四国化成工業(株)製、商品名「MA−DGIC」、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート
OFS−6040:ダウコーニング社製、商品名「XIAMETER OFS−6040」、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0290】
(B剤)
AS−9070B:長興材料工業製、商品名「AS−9070B」(平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサンを含む)、製品の総量(100重量%)に対するビニル基の含有量1.15重量%、フェニル基の含有量0重量%、ヒドロシリル基の含有量(ヒドリド換算)0.150重量%、数平均分子量2371、重量平均分子量14526
GS5145B:商品名「ETERLED GS5145B」(平均単位式(b−2)で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンを含む)、長興材料工業製
KER−2500B:信越化学工業(株)製、、商品名「KER−2500B」(平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサンを含む)、製品の総量(100重量%)に対するビニル基の含有量1.08重量%、メチル基の含有量95.63重量%、フェニル基の含有量0重量%、ヒドロシリル基の含有量(ヒドリド換算)0.13重量%、数平均分子量4636、重量平均分子量18814
OE−6351B:東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「OE−6351B」(平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサンを含む)、ビニル基含有量0.71重量%、フェニル基含有量0重量%、ヒドロシリル基含有量(ヒドリド換算)0.08重量%、数平均分子量6100、重量平均分子量20900
OE−6630B:東レ・ダウコーニング(株)製、商品名「OE−6630B」(平均単位式(b−1)で表されるポリオルガノシロキサンを含む)、ビニル基含有量3.87重量%、フェニル基含有量50.11重量%、ヒドロシリル基含有量(ヒドリド換算)0.17重量%、数平均分子量783、重量平均分子量133
HMS−991:Gelest社製、商品名「HMS−991」、両末端にTMS基を有するポリメチルヒドロシロキサン
【0291】
実施例1
[硬化性樹脂組成物の製造]
まず、表1に示すように、AS−9070A(50重量部)、製造例3で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(15重量部)、MA−DGIC(0.2重量部)、及びOFS−6040(0.4重量部)を混合し、80℃で1時間撹拌して、A剤を調製した。
次に、上記で得たA剤(65.6重量部)に対して、B剤としてのAS−9070B(45重量部)及びHMS−991(5重量部)を混合し、室温で10分間撹拌したところ、均一な液体である硬化性樹脂組成物が得られた。
【0292】
[光半導体装置の製造]
図1に示す態様のLEDパッケージ(InGaN素子、5.0mm×5.0mm)に、上記で得られた硬化性樹脂組成物を注入し、100℃で1時間、続いて150℃で5時間加熱することで、上記硬化性樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置を製造した。
【0293】
実施例2〜7、比較例1〜5
硬化性樹脂組成物の配合組成を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性樹脂組成物及び光半導体装置を製造した。
【0294】
(評価)
上記で得られた硬化性樹脂組成物及び光半導体装置について、下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0295】
[
29Si−NMRスペクトル測定、
1H−NMRスペクトル測定]
実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物について、
29Si−NMRスペクトル測定によりM、D、T、及びQを算出し、さらに得られた値を用いて(T+Q)/Dを算出した。また、
1H−NMRスペクトル測定により、脂肪族炭素−炭素二重結合1モルに対するヒドロシリル基のモル数を算出した。また、
1H−NMRスペクトル測定及び用いた各ポリシロキサンの配合量から、硬化性樹脂組成物中の全てのポリシロキサン中のケイ素原子に結合した一価の置換又は無置換炭化水素基の全量に対するアリール基の割合を算出した。なお、上記
1H−NMRスペクトル測定では、フェニル基以外のアリール基の存在は確認できなかった。結果を表1に示す。
【0296】
[剥離強度、総剥離荷重]
厚み3mm、幅80mm、長さ80mmの正方形の型に、実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物を注入し、100℃で1時間、続いて150℃で5時間加熱することで、上記硬化性樹脂組成物の硬化物(厚み3mm)を製造した。これを直径16mmの円形カッターにて打ち抜き、剥離強度と総剥離荷重の測定用試験片とした。
万能試験機(商品名「テンシロン万能材料試験機 RTC−1310A」、(株)エー・アンド・デイ製)を用いて剥離強度評価を行った。
図3を参照して評価方法を説明する。測定用試験片300をクロスヘッド306上に両面接着テープ304で固定し、さらに、被着体303(表面が平滑なSUS製の板)をロードセル302に取り付けた。
次に、クロスヘッド300をゆっくりと垂直方向上方(D方向)に移動させ、測定用試験片300を被着体303に、押し付け荷重100N、押し付け時間2分の条件で押し付けた後、クロスヘッド306を垂直方向下方(D方向と反対方向)に別離速度5mm/minで移動させて引き離し、測定用試験片300を被着体303から引き離した。このときにかかる応力をロードセル302にて検出し、レコーダーでチャート上に記録し、縦軸を剥離強度(応力)(N)、横軸を変位(mm)とする応力曲線を得た。そして、得られた測定値のうち、最大の応力値を測定用試験片300と被着体303との接触面積(即ち、201mm
2)で除した値を当該別離させる速度での剥離強度とし、試験片と被着体が別離し始めてから完全に別離するまでの応力曲線とベースラインとで囲む面積を測定用試験片300と被着体303との接触面積(即ち、201mm
2)で除した値を当該別離速度での総剥離荷重とした。
さらに、別離速度を10mm/min、20mm/min、30mm/min、50mm/min、70mm/min、100mm/min、150mm/min、300mm/min、及び500mm/minとした場合についても同様にして剥離強度及び総剥離荷重を得た。そして、得られた剥離強度及び総剥離荷重のうちそれぞれの最も大きな値を、それぞれ、硬化性樹脂組成物の硬化物の剥離強度、総剥離荷重の値とした。結果を表1に示す。表1中、剥離強度の単位は[N]であり、総剥離荷重の単位は[N・mm]である。
【0297】
[付着試験]
実施例及び比較例で製造した各光半導体装置を試料として用いた。
上記光半導体装置における硬化物表面と、予めアセトンで洗浄したSUS製の板(SUS304製;厚さ1mm、表面鏡面仕上げ)を密着させてすり合わせた後、SUS製の板が下側となる状態でSUS製の板を持って垂直に持ち上げ、天地を反転させたとき、光半導体装置が10秒以内に重力によって自然に剥離するかどうかを確認した。そして、10秒以内で剥離したものをタック性なしとし、10秒を超えて接着していたものをタック性ありと評価した。結果を表1に示す。
【0298】
[ゴミ付着試験]
厚み3mm、幅10mm、長さ50mmの長方形の型に、実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物を注入し、100℃で1時間、続いて150℃で5時間加熱することで、上記硬化性樹脂組成物の硬化物(厚み3mm)を製造し、これをゴミ付着試験用の試験片とした。
上記試験片を広島県大竹市の(株)ダイセル敷地内に設置した架台(高さ1m、傾斜45°)に取り付け、2週間暴露試験を行いゴミの付着しやすさを下記基準にて評価した。結果を表1に示す。
◎:ゴミの付着がほとんど認められない。
○:ゴミの付着が僅かに認められるが、流水洗浄すれば容易に取り除くことが出来る。
×:かなりの量のゴミが付着し、流水洗浄しても取り除くことが出来ない。
【0299】
[硫黄腐食性試験(耐硫化性)]
実施例及び比較例で製造した光半導体装置を試料として用いた。
まず、上記試料について、全光束測定機(オプトロニックラボラトリーズ社製、マルチ分光放射測定システム「OL771」)を用いて、20mAの電流を流した際の全光束(単位:lm)を測定し、これを「腐食性試験前の全光束」とした。
次に、上記試料と硫黄粉末(キシダ化学(株)製)0.3gとを450mlのガラス瓶に入れ、さらに上記ガラス瓶をアルミ製の箱の中に入れた。続いて、上記アルミ製の箱を80℃のオーブン(ヤマト科学(株)製、型番:DN−64)に入れ、8時間後に取り出した。加熱後の試料について上記と同様に全光束を測定し、これを「腐食性試験後の全光束」とした。そして、腐食性試験前後における全光束の維持率(%)[=100×(腐食性試験後の全光束(lm))/(腐食性試験前の全光束(lm))]を算出した。
光度維持率が高いほど、硬化物(封止材)が腐食性ガスに対するバリア性に優れることを示す。なお、硬化性シリコーン樹脂組成物ごとに(各実施例・比較例ごとに)10個の光半導体装置について光度維持率を測定・算出し、表1にはこれらの光度維持率の平均値(N=10)を示した。
【0300】
【表1】
【0301】
実施例8
[タック性評価]
シリコーン樹脂(商品名「OE6630」、東レ・ダウコーニング(株)製)及びシリコーン樹脂(商品名「OE7660」、東レ・ダウコーニング(株)製)の厚さ3mmのシートをそれぞれ直径15mmの円形状に切り抜き、測定用試験片を得た。得られたそれぞれの測定用試験片について、測定用試験片を、測定装置の試験片取り付け冶具の直径50mmの平滑面の中央に両面テープで貼り付けた。そして、被着体を微速で垂直方向下向きに移動させて測定サンプル表面に接触させた。その後、荷重100N(0.57MPa)で圧縮し、荷重100±10Nで120秒間保持した後、速度20mm/minで被着体を移動させて引き離した。このときにかかる応力を検出し、レコーダーでチャート上に記録し、縦軸を剥離強度(応力)(N)、横軸を変位(mm)とする応力曲線を得た。得られた応力曲線から、応力の最大値を得た。これを10回(N=10)行い、得られた応力の最大値を表2に示す。
【0302】
比較例6
実施例8で用いた測定用試験片について、タック性をプローブタック試験で評価した(N=10)。結果を表2に示す。プローブタック試験で用いた測定機は(株)レスカ製プローブタック試験機「TAC−II」(プローブ:SUS製、直径5mm)である。また、プリロードは200gfであり、圧縮状態の保持時間は20秒間、引き離す際の速度は120mm/minである。
【0303】
【表2】