【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明のステンレス鋼板カーボン複合材、その製造方法、及び各性能評価について、具体的に説明する。
【0041】
<実施例1〜8>
1.ステンレス鋼製の板状基材の調製
〔ステンレス鋼製の板状基材〕
以下の各実施例及び比較例においては、SUS430ステンレス鋼板(Si含有量0.47質量%、以下、「M1」という。)、SUS444ステンレス鋼板(Si含有量0.75質量%、以下、「M2」という。)、SUS316Lステンレス鋼板(Si含有量0.75質量%、以下、「M3」という。)、及びSUS447J1ステンレス鋼板(Si含有量0.1質量%、以下、「M4」という。)から切り出された50μm厚み×幅100mm×長さ100mmの大きさの板状基材(M1〜M4)を用いた。
【0042】
〔板状基材の表面処理工程:表面層の形成〕
上で得られた板状基材(M1〜M4)について、それぞれ、表面処理液として表1に示すように4質量%のフッ化水素酸水溶液を用い、この表面処理液中に50℃及び10分間の処理条件で浸漬し、次いで超純水を用いて表面を洗浄し、板状基材の表面に酸化皮膜からなる表面層が形成された表面処理後の板状基材(M1〜M4)を調製した。
【0043】
〔表面層の厚さ測定〕
表面処理後の板状基材(M1〜M4)について、集束イオンビーム加工装置(日立ハイテクサイエンス社製SMI3050SE)を用い、Mo製メッシュ、また、表面保護膜としてカーボンデポ膜を使用し、FIB-マイクロサンプリング法にてTEM観察用の薄膜断面試料を作製した。
また、TEM観察には電解放出型透過電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJEM-2100F)を用い、1視野につき任意の3箇所の酸化皮膜の厚みを測定しその平均をすることで酸化皮膜からなる表面層の厚さを測定した(
図1)。
【0044】
〔Si濃度の測定〕
表面処理後の板状基材(M1〜M4)について、X線光電子分光装置(PHI社製Quantum 2000型XPS)を用い、X線出力15kV、25W、及び測定領域300×300μmの条件で、また、イオン種としてアルゴンを用い、加速電圧2kV、及び照射範囲2mm×2mmの条件でスパッタを行い、当該板状基材(M1〜M4)の表面からの深さ方向のSi濃度を測定した(
図2)。スパッターレートはSiO
2を基準として用いており、表面処理材の表面をスパッタした時の時間から換算し、厚みを算出した。また、データ解析にはMultiPak V.80(Ulvac-phi社製解析ソフト)を用いた。
XPSではその化学状態に応じて化学シフト(ピークシフト)が起き、例えばSiの単体の2p軌道スペクトルが98.8eVから99.5eV付近にピークを有するのに対して、Siの酸化物であれば102eV〜104eV付近にピークが現れることから、Siがどのような状態にあるのかを同定することが可能である。
図3より、HF処理(濃度4質量%)の場合はSiおよびSi酸化物のピークが観察できないのに対し、フッ硝酸処理(HF濃度1質量%、HNO
3濃度4質量%)の場合はSi酸化物のピークが確認できることから、接触抵抗が暫時増大したのは、表面近傍に残ったSiが酸化し、接触抵抗値を増大させたものと推測できる。
得られた結果を下記の表2に示す。
【0045】
2.カーボン層の積層工程
〔接着剤層形成工程〕
接着剤層を形成するための接着剤組成物としては、後述の実施例及び比較例の場合も含めて、樹脂粉末として熱可塑性樹脂〔ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、液晶ポリマー樹脂(LCP)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリスルホン樹脂(PSU)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)〕を使用する場合には、変性ポリオレフィン樹脂接着剤(三井化学株式会社製、ユニストール)を用い、また、樹脂粉末として熱硬化性樹脂を使用する場合において、当該熱硬化性樹脂がフェノール樹脂(PF)の場合には、イソプロピルアルコールに5wt%になる様にフェノール樹脂を溶解させたフェノール樹脂接着剤(リグナイト株式会社製フェノール樹脂、商品名:AH-1148)を用い、一方で、当該熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂(EP)の場合には、エポキシ樹脂接着剤(新日鉄住金化学株式会社製商品名:YSLV-80XY)を用いた。
そして、上で得られた表面処理後30日経過後の板状基材(M1〜M4)の表面に、卓上コーターを用いて塗布厚10μmとなるように前記接着剤組成物を塗布し室温中で10分乾燥させて接着剤層を形成し、接着剤層付きの板状基材(M1〜M4)を得た。
【0046】
〔カーボン層の形成〕
炭素粉末としては、球状黒鉛(伊藤黒鉛株式会社製商品名:SG-BH、平均粒子径:20μm)及び膨張黒鉛(伊藤黒鉛株式会社製商品名:EC100、平均粒子径:160μm)を使用した。
また、樹脂粉末としては、後述の実施例及び比較例の場合も含めて、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂(PP)(住友精化株式会社製商品名:フローブレンHP-8522)、ポリエチレン樹脂(PE)(住友精化株式会社製商品名:フローセンUF-20S)、ポリアミド樹脂(PA)(東レ株式会社製商品名:TR-2)、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)(東レ株式会社製商品名:A900)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)(三井化学株式会社製商品名:MX002)、変性ポリメチルペンテン樹脂(m-PMP)〔開発品、無水マレイン酸変性(変性量:1.0質量%)〕、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)(クオドラントポリペンコジャパン株式会社製商品名:ケトロン1000)、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)(旭化成ケミカルズ株式会社製商品名:ザイロン300H)、液晶ポリマー樹脂(LCP)(JX日鉱日石エネルギー株式会社製商品名:ザイダーNX−101)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)(東レ株式会社製商品名:TI−5013)、ポリスルホン樹脂(PSU)(BASF社製商品名:ウルトラゾーンS2010)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)(株式会社帝人製:TRN−MTJ)、及びポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製商品名:ノバデュラン5010R5)を使用し、また、熱硬化性樹脂としてフェノール(PF)樹脂(リグナイト株式会社製商品名:AH-1148)、及びエポキシ(EP)樹脂(新日鉄住金化学株式会社製 商品名:YSLV-80XY)を使用した。
【0047】
そして、上記の炭素粉末と樹脂粉末とを表1に示す比率で混合して粉末混合物とし、この粉末混合物1.6gを、
図4に示すように(この場合は、接着剤層付きステンレス鋼製板状基材4は用いない。)プレス装置(東洋精機製作所社製卓上ホットプレスMP-SCL)の50×50×20mmの容積を持つ雌型金型に均等になるように投入し、前プレスとしてのホットプレス〔圧力:2MPa、温度:180℃(PP)、80℃(PF)〕によりカーボン層3(厚さ:0.4mm)とした。次いで、
図4及び
図5のように、この得られたカーボン層3と、前記で準備した接着剤層付きの板状基材4とを重ね、加熱温度180℃(PP)又は150℃(PF)(T)及び圧力5MPa(P)で押圧し(本プレス、成型時間10分)、ステンレス鋼板カーボン複合材15として得た。
【0048】
上で得られた実施例1〜8に係る表面処理後(直後及び30日経過後)の板状基材、及び表面処理後30日経過後の板状基材を用いて作製されたステンレス鋼板カーボン複合材について、以下の評価を行なった。
【0049】
〔接触抵抗測定方法〕
図6に接触抵抗の測定方法を示す。先ず、表面処理直後の各板状基材を、長さ17〜20mm、幅3〜5mmに加工して試験片Sとし、これと、標準とするカーボンペーパ(東レ株式会社製商品名:TGP-H-120)301とを重ねた。そして、これを2つの金メッキした銅製金具302で挟み込み、圧縮応力0.9MPa(P’)を付加した状態で2つの金メッキ銅製金具の間に試験片S/カーボンペーパ接触面積値(単位cm
2)と同じ値の直流電流(単位A)を流して、金メッキ銅金具302/カーボンペーパ301/試験片Sの接続部に生ずる電圧降下を測定することで得られる接触抵抗値(単位:mΩ・cm
2)で確認した。測定は10点測定を行い、最大値と最小値を省いた8点の平均値を測定値とした。さらに、表面処理後30日経過した各板状基材(S’)及びその板状基材を使用して作製されたステンレス鋼板カーボン複合材(S’’)についても、同様の方法で接触抵抗を測定した。
得られた結果を下記の表2に示す。
【0050】
〔耐久性試験方法〕
耐久性試験は、前記の試験片S’’(ステンレス鋼板カーボン複合材)を、予め20ppmのフッ素(F)イオンを含んだ80℃のpH3の硫酸溶液中に4日間浸漬した上で、処理後の試験片S’’を超純水で洗浄し、乾燥した後、上記と同様の方法で接触抵抗値(単位:mΩ・cm
2)を測定した。浸漬前後の接触抵抗値の変化を評価することで耐久性(耐食性)を評価した。
得られた結果を下記の表2に示す。
【0051】
〔可撓性評価(曲げ強度評価)〕
実施例1〜8で得られた各ステンレス鋼板カーボン複合材S’’から、それぞれ50mm×5mm×0.6mmの大きさの試験片として切り出し、この各試験片を、JIS K7171に準拠して、万能試験機(島津製作所社製AUTOGRAPH AG-IS型)によりStress-Strain曲線を測定し、歪み1.5%又は0.8%の時における各試験片の破壊(亀裂)の発生の有無を目視で観察し、下記の基準で評価した。
得られた結果を下記の表2に示す。
◎:1.5%歪みで破壊しない場合
○:0.8%歪みで破壊しない場合
×:0.8%歪みで破壊する場合
【0052】
<実施例9〜13、比較例1>
前記板状基材(M1)を用いて、先ず、前処理液として塩酸(関東化学社製特級)及び塩化鉄(FeCl
3)(関東化学社製特級)をそれぞれ30質量%の濃度で溶解された塩化鉄含有酸溶液を用い、この前処理液中に50℃及び1分間の処理条件で浸漬し、次いで超純水を用いて表面を洗浄し、前処理後の板状基材(M1)を調製した。
【0053】
〔板状基材の表面処理工程:表面層の形成〕
上で得られた前処理後の板状基材(M1)について、それぞれ、表面処理液として表1に示す濃度のフッ化水素酸水溶液を用い、この表面処理液中に50℃及び10分間の処理条件で浸漬し、次いで超純水を用いて表面を洗浄し、板状基材の表面に酸化皮膜からなる表面層が形成された表面処理後の板状基材(M1)を調製した。
【0054】
その後、得られた表面処理後の各板状基材(M1)について、前述の実施例1〜8と同様に、基材の表面層の厚み、Si濃度及び接触抵抗値を測定し、また、同じように、表面処理後30日経過後の板状基材に接着剤層及びカーボン層(樹脂粉末としてPPを使用)を積層させてステンレス鋼板カーボン複合材を得ると共に、接触抵抗値の測定、耐久性試験及び可撓性評価を行なった。
得られた結果を下記の表2に示す。
【0055】
<実施例14〜18、比較例2〜4>
前記実施例9〜13において、表面処理液として使用したフッ化水素酸水溶液に代えて、表面処理液として硝酸(関東化学社製特級)及びフッ化水素酸(関東化学社製特級)を表1に示す割合で含有するフッ化水素酸・硝酸混合水溶液を用いた以外は、実施例9〜13と同様の方法で前処理及び表面処理後の板状基材(M1)を調製し、同じように、基材の表面層の厚み、Si濃度及び接触抵抗値を測定し、更に、同じように、表面処理後30日経過後の板状基材に接着剤層及びカーボン層を積層させてステンレス鋼板カーボン複合材を得ると共に、接触抵抗値の測定、耐久性試験及び可撓性評価を行なった。
得られた結果を下記の表2に示す。
【0056】
<実施例19〜40>
前記実施例9〜13において、表面処理液として使用したフッ化水素酸水溶液の濃度4質量%とした以外は、実施例9〜13と同様の方法で前処理及び表面処理を行なった板状基材(M1)を調製し、同じように、基材の表面層の厚み、Si濃度及び接触抵抗値を測定した。そして、実施例9〜13において使用した樹脂粉末に代えて、表1に記載の通り、樹脂粉末をそれぞれPE、PA、PPS、PMP、m-PMP、PEEK、PSU、LCP、PET、PAI、PPE、PBT、PF又はEPとすると共に、カーボン層を形成する際の前プレスの温度をそれぞれ130℃(PE)、250℃(PA、PBT、PPE、m-PMP)、300℃(PPS、PET、PAI)、350℃(LCP)、400℃(PEEK、PSU)、250℃(PMP)及び80℃(PF及びEP)とした以外は、実施例9〜13と同様にカーボン層を形成し、また、同じように、表面処理後30日経過後の板状基材に接着剤層及びカーボン層を積層させてステンレス鋼板カーボン複合材を得ると共に、接触抵抗値の測定、耐久性試験及び可撓性評価を行なった。なお、表面処理後30日経過後の板状基材に接着剤層付きのカーボン層を積層させてステンレス鋼板カーボン複合材を得る際の本プレスの温度は、それぞれ130℃(PE)、250℃(PA、PBT、PPE、m-PMP)、300℃(PPS、PET、PAI)、350℃(LCP)、400℃(PEEK、PSU)、150℃(PF及びEP)とした。
得られた結果を下記の表2に示す。
【0057】
<実施例41〜43、比較例5〜6>
前記実施例9〜13において、表面処理液として使用したフッ化水素酸水溶液の濃度4質量%とした以外は、実施例9〜13と同様の方法で前処理及び表面処理を行なった板状基材(M1)を調製し、同じように基材の表面層の厚み、Si濃度及び接触抵抗値を測定した。そして、実施例9〜13において使用した炭素粉末及び樹脂粉末の配合比率を表1に示す比率とした以外は、実施例9〜13と同様にカーボン層を形成し、同じように、表面処理後30日経過後の板状基材に接着剤層及びカーボン層を積層させてステンレス鋼板カーボン複合材を得ると共に、接触抵抗値の測定、耐久性試験及び可撓性評価を行なった。
得られた結果を下記の表2に示す。
【0058】
<実施例44〜47>
前記実施例9〜13において、表面処理液として使用したフッ化水素酸水溶液の濃度4質量%とした以外は、実施例9〜13と同様の方法で前処理及び表面処理を行なった板状基材(M1)を調製し、同じように基材の表面層の厚み、Si濃度及び接触抵抗値を測定した。そして、実施例9〜13において使用した炭素粉末の配合比率を表1に示す比率とした以外は、実施例9〜13と同様にカーボン層を形成し、同じように、表面処理後30日経過後の板状基材に接着剤層及びカーボン層を積層させてステンレス鋼板カーボン複合材を得ると共に、接触抵抗値の測定、耐久性試験及び可撓性評価を行なった。
得られた結果を下記の表2に示す。
【0059】
<実施例48〜54>
前記実施例9〜13において、前処理液として、塩酸及び塩化鉄(FeCl
3)が表1に記載の通りの濃度で溶解された塩化鉄含有酸溶液を用い、且つ、表面処理液として使用したフッ化水素酸水溶液の濃度4質量%とした以外は、実施例9〜13と同様の方法で前処理及び表面処理を行なった板状基材(M1)を調製し、同じように基材の表面層の厚み、Si濃度及び接触抵抗値を測定した。そして、実施例9〜13と同じように、表面処理後30日経過後の板状基材に接着剤層及びカーボン層を積層させてステンレス鋼板カーボン複合材を得ると共に、接触抵抗値の測定、耐久性試験及び可撓性評価を行なった。
得られた結果を下記の表2に示す。
【0060】
<比較例7>
前記板状基材(M3)を用いて、これを2質量%硫酸(関東化学社製)中に浸漬させて、温度30℃において、+2A/dm
2×1秒、-2A/dm
2×1秒、+2A/dm
2×1秒、-2A/dm
2×1秒、及び+2A/dm
2×1秒(+がアノード電極、-がカソード電極)の順に電解処理(前処理)を行った。次いで、表面処理液として5質量%のフッ化水素酸水溶液を用い、前記電解処理後の板状基材を55℃及び90秒間の処理条件で浸漬し、次いで超純水を用いて表面を洗浄し、板状基材の表面に酸化皮膜からなる表面層が形成された表面処理後の板状基材(M3)を調製した。
その後、得られた表面処理後の板状基材(M3)について、前述の実施例1〜8と同様に、基材の表面層の厚み、Si濃度及び接触抵抗値を測定した。接着剤層及びカーボン層の積層は行なわず、当該表面処理後の各板状基材(M3)としたまま、実施例1〜8と同様の方法を用いて、耐久性試験及び可撓性評価を行なった。
得られた結果を下記の表2に示す。
【0061】
<比較例8>
前記板状基材(M3)を用いて、これを、前処理として濃度5質量%、液温60℃のオルソケイ酸ナトリウム溶液に浸漬し、電流密度5A/dm
2でアノード電解脱脂を10秒間実施した後、中和処理のため、濃度5質量%、常温の塩酸酸洗を10秒間実施した。 そして、温度50℃の15質量%FeCl
3(関東化学社製)中に浸漬させ、アノード電流密度は3.0kA/m
2、カソード電流密度は0.5kA/m
2、交番サイクル2.5Hzの電解処理を60秒実施し、次いで超純水を用いて表面を洗浄した。
その後、得られた電解処理後の板状基材(M3)について、前述の実施例1〜8と同様に、基材の表面層の厚み、Si濃度及び接触抵抗値を測定した。一方で、フェノール樹脂(リグナイト株式会社製商品名:AH-1148)と天然黒鉛粉(伊藤黒鉛株式会社製商品名:SG-BH8)とカーボンブラック(ライオン株式会社製商品名:ECP-600JD)とをそれぞれ3g、6g又は1g(質量比で3:6:1)で混合し、これに、イソシアネート架橋剤(旭化成ケミカルズ株式会社製商品名:MF-B60X)を前記フェノール樹脂質量に対して3倍量添加し、これを混練した。これに酢酸エチレングリコールモノブチルエーテルを添加しスラリー状にした後、前記電解処理後の板状基材(M3)にバーコーターで塗布し、275℃で60秒焼き付け処理を経てステンレス鋼板カーボン複合材とした。乾燥後の被覆層厚さは6μmとした。その後、得られたステンレス鋼板カーボン複合材について、実施例1〜8と同様の方法で、接触抵抗値の測定、耐久性試験及び可撓性評価を行なった。
得られた結果を下記の表2に示す(なお、この比較例8については、表2における「表面処理直後」は『電解処理直後』と読み替え、また、「表面処理30日後」は『電解処理30日後』と読み替えるものとする)。
【0062】
<比較例9>
前記板状基材(M1)を用いて、表面処理を行わなかった以外は、前述の実施例1と同様にして、基材の表面層の厚み、Si濃度及び接触抵抗値を測定し、また、同じように、30日経過後の板状基材に接着剤層及びカーボン層(樹脂粉末としてPPを使用)を積層させてステンレス鋼板カーボン複合材を得ると共に、接触抵抗値の測定、耐久性試験及び可撓性評価を行なった(なお、この比較例9については、表面処理を行っていないが、表2における「表面処理直後」は『30日経過前』と読み替え、また、「表面処理30日後」は『30日経過後』と読み替えるものとする)。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】