【実施例】
【0026】
図1は本発明に係るウエハ搬送保持装置10の要部構成を示し、その一部を断面した側面図であり、
図2は
図1に示したウエハ搬送保持装置の部分拡大図である。このウエハ搬送保持装置10は、半導体デバイスの製造工程で広く使用可能なものである。そのウエハ搬送保持装置10は、負の空気圧(負圧)を印加してウエハWを吸引保持し、各種の処理を行う真空吸着方式のチャックテーブル11と、前の処理工程からウエハWをチャックテーブル11上に搬送してセットする搬送機構12と、加圧シリンダ13等を備えている。なお、ウエハWは、半導体材料のインゴットを結晶軸の方向に応じて薄板状に切り出したものを研磨したものであって、概略円板状に形成されている。また、ウエハ搬送保持装置10は、例えばコンピュータである制御部50により制御されるもので、制御部50にはウエハ搬送装置10を予め決められた手順に従って制御するプログラムが組み込まれている。
【0027】
チャックテーブル11は、円板状のテーブルである。また、チャックテーブル11は、ウエハWの外径よりも大きな外径で形成された円板状の保持テーブル11aと、保持テーブル11aの上面(ウエハWが載置される吸着面)に露出して設けられた、ウエハWの外径と略同じ外径で形成されている、同じく円板状をした吸引保持部11bを備えている。
【0028】
チャックテーブル11の吸引保持部11bには、図示しないが吸引用の複数個の溝と複数個の溝に連通している吸着孔が設けられている。吸着孔には、保持テーブル11aに設けられているウエハ吸引用真空ライン14が連通されている。したがって、吸着孔は、ウエハ吸引用真空ライン14の吸引口として機能する。なお、図示しないが、ウエハ吸引用真空ライン14には、圧力計、バルブ、及び真空源が順に配備され、これら吸着孔、ウエハ吸引用真空ライン14、圧力計、バルブ、及び真空源等によりウエハ真空吸着手段15を構成している。すなわち、ウエハ真空吸着手段15では、吸引保持部11b上に負圧を印加し、チャックテーブル11の吸引保持部11b上に載置されているウエハWを、その負圧が印加されている間、吸引保持することができるようになっている。
【0029】
搬送機構12は、回動並びに上下移動可能な搬送アーム16と、搬送アーム16の一端側に搬送アーム16と一体移動可能に取り付けられた保持パッド17と、搬送アーム16と保持パッド17との間に設けられた自動調芯機構18と、昇降軸19を備えている。
【0030】
搬送アーム16は、一端側(基端側)が例えば図示しないロボットアーム等に固定されており、他端側に保持パッド17が管状の枢軸部20を介して取り付けられている。
【0031】
なお、搬送アーム16は、保持パッド17を所要の位置(前工程位置)から所要の位置(本工程位置)に、ウエハWを保持して移動可能になっている。すなわち、搬送アーム16の移動により、加工処理前のウエハWを前工程位置からチャックテーブル11上に移動させ、加工処理後のウエハWをチャックテーブル11上から所要の位置に設けられた後工程位置へ移動させることができる。
【0032】
枢軸部20の一端(上端)側は搬送アーム16の下面に固定されており、他端(下端)側には保持パッド17が取り付けられている。また、枢軸部20内には、ロッド状の昇降軸19が搬送アーム16の貫通孔16aを上下に貫通して挿入配置され、枢軸部20内で管状の軸受メタル21を介して上下移動自在に保持されている。
【0033】
昇降軸19は、下端側に枢軸部20よりも下側に突出して形成された小径ロッド部19aを有し、小径ロッド部19aの外周に自動調芯機構18を設けている。また、昇降軸19にはリング状をした規制板部22が、昇降軸19の略上下中間部分に固定して設けられている。その規制板部22は、昇降軸19が所定の位置まで上方に移動すると軸受メタル21の下面と当接して、昇降軸19が上方にそれ以上は移動しないように規制する。そして、規制板22が軸受メタル21の下面に当接して上方への移動が規制されている状態では、昇降軸19の上端は
図1及び
図2に示すように貫通孔16aを貫通して搬送アーム16の上面より僅かに突出して保持された状態になる。
【0034】
さらに、昇降軸19の外周には付勢バネとしてのコイルスプリング23が、枢軸部20の下面に取り付けられた規制板24と昇降軸19に取り付けられた規制板22との間に、圧縮状態にして配設されている。そして、平時、昇降軸19は、コイルスプリング23の反発力(付勢力)により、
図1及び
図2に示すように規制板22が軸受メタル21の下面に当接した状態、つまり上方への移動が軸受メタル21と規制板22とで規制された状態で保持されている。
【0035】
自動調芯機構18は、凸状球面25aを有するリング状の第1連結部25と凹状球面26aを有する第2連結部26とを備える。第1連結部25と第2連結部26の外径は昇降軸19の大径部分の外径と略等しく、各々が円盤状に形成されている。
【0036】
また、第1連結部25の中心部には中心孔25bが設けられ、第2連結部26の中心部には中心孔26bが設けられている。第1連結部25における中心孔25bの内径は昇降軸19における小径ロッド部19aの外径に略等しく、中心孔25bに小径ロッド部19aを嵌合させることにより、第1連結部25が昇降軸19に固定されている。つまり、第1連結部25が搬送アーム16側に、凸状球面25aを下側に向けて固定して取り付けられている。
【0037】
一方、第2連結部26における中心孔26bの内径は昇降軸19における小径ロッド部19aの外径よりも大きく、また小径ロッド部19との間に隙間(遊び)σを設けて、この隙間σにより、第2連結部26は小径ロッド部19a及び第1連結部25に対して、左右の方向(水平方向)へ移動可能になっている。この第2連結部26は、第1連結部25の凸状球面25aに凹状球面26aを当接させた状態、つまり球面同士を互いに当接させた状態で第1連結部25と後述する外周パッド部29とにより上下が抑えられ、かつ、外周パッド部29の下側で小径ロッド部19aに取り付けられたナット27の締め付けにより保持されている。
【0038】
保持パッド17は、内周パッド部28と外周パッド部29を備えている。内周パッド部28は、ウエハWが取り付けられる下方に向かって開口している略円形皿状の吸着面28cを有した吸着保持パッド28aと、吸着保持パッド28aを保持して枢軸部20の下面に固定して取り付けられている円形状のパッドホルダ28bとを有する。なお、パッドホルダ28bと枢軸部20との間は、連結部材30により連結固定されている。また、吸着保持パッド28aには、吸着面28cで囲暁された空間内に吸引口28dを設けている搬送機構側のウエハ吸引用真空ライン31が連結されている。
【0039】
外周パッド部29は、ウエハWの外径よりも径が小さく、円盤状をした押圧板29aと、押圧板29aを枢軸部20に取り付けている上面29cが閉じられた略円形カップ状の連結ホルダ29bを備えている。
【0040】
連結ホルダ29bの上面29cには、第2連結部26の中心孔26bと略同じ大きさ、つまり小径ロッド部19aの外径よりも大きな内径をしてなる中心孔29dが形成されている。また、連結ホルダ29bにおける上面29cには、その略中心に凹部29eが設けられている。凹部29eには、自動調芯機構18における第2連結部26を嵌入させて、その第2連結部26を連結ホルダ29bに一体化した状態にして取り付けている。さらに、連結ホルダ29bの上面29cには、連結部材30及びウエハ吸引用真空ライン31がそれぞれ貫通する貫通孔32、33が形成されている。なお、貫通孔32、33は、それぞれ連結部材30及びウエハ吸引用真空ライン31との間に隙間を設けて、連結ホルダ29bが連結部材30及びウエハ吸引用真空ライン31に対して全方向(
図2中に矢印A方向で示す上下方向及び矢印Bで示す上下揺動方向)へ自由に移動(スイング)できるようになっている。
【0041】
押圧板29aは、環状をした円盤で、その中心に連結ホルダ29bを配置するようにして連結ホルダ29bの開口側の外周から水平方向に延ばされた状態にして固定され、連結部29bと一体に移動可能に構成されている。また、押圧板29の下面(ウエハWを押圧する面)側で、その外周部分にはリング状をしたパッド材29fが取り付けられている。パッド材29fは、ゴム、軟質樹脂材等で形成されており、ウエハWの上面に当接される。
【0042】
加圧シリンダ13は、チャックテーブル11の上方に、中心軸線O2をチャックテーブル11の中心軸線O1の延長上に配置して、つまりチャックテーブル11の同軸上に配置されており、加圧シリンダ13からチャックテーブル11に向かって中心軸線O1に沿って進退出するロッド13aを有している。このロッド13aは、加圧シリンダ13とチャックテーブル11との間に搬送アーム16と共に移動された、枢軸部20内に保持されている昇降軸19の上端と対応するようになっている。そして、加圧シリンダ13から突出されると、ロッド13aの先端(下端)が昇降軸19の上端とぶつかり、コイルスプリング23の付勢力に抗して昇降軸19を下方(チャックテーブル11側)へ押下するようになっている。
【0043】
図3から
図6は、
図1及び
図2に示したウエハ搬送保持装置10の動作図である。
図3から
図6を用いてウエハ搬送装置の動作を次に説明する。
【0044】
まず、搬送機構12は、平時、コイルスプリング23の付勢力により、規制板22が軸受メタル21の下面に当接されていて、昇降軸19は上端が搬送アーム16の貫通孔16aを貫通して搬送アーム16の上面から僅かに突出した状態まで上昇している。これにより、保持パッド17の外周パッド部29は内周パッド部28の吸着保持パッド28aの上方に位置している。
【0045】
そして、搬送機構12は、
図3に示すようにウエハWを未だ保持していない保持パッド17を搬送アーム16と共に移動制御し、保持パッド17を所定の箇所に待機しているウエハ上まで移動させる。そして、ウエハW上に内周パッド部28の吸着保持パッド28aを押し付けるとともに、ウエハ吸引用真空ライン31をオンして吸着保持パッド28a内に負圧を作り、吸着保持パッド部28aでウエハWの中心部を吸引保持し、
図4に示すようにウエハWを吸引保持したまま上昇する。
【0046】
また、ウエハWを吸引保持した保持パッド17は、搬送アーム16と共にチャックテーブル11上に移動され、
図5に示すように保持パッド17及び昇降軸19の中心軸線O3をチャックテーブル11の中心軸線O1及び加圧シリンダ13のロッド13aの中心軸線O3と外周パッド部29の中心軸線O4に合わせて、ウエハWをチャックテーブル11の略中心に配置する。
【0047】
次いで、加圧シリンダ13が動作されて、ロッド13aがチャックテーブル11に向かって突き出し、ロッド13aが昇降軸19を押下する。すると、昇降軸19は、コイルスプリング23の付勢力に抗して下降される。ロッド13aが下降されると、ロッド13aと一体に外周パッド部29が下降し、
図6に示すように、外周パッド部29の押圧板29aがパッド材29fを介してウエハWの外周部に当接し、ウエハWの外周部をチャックテーブル11側に押し付ける。このとき、外周パッド部29は、外周パッド部29と昇降軸19との間に凸状球面25aを有する第1連結部25と凹状球面26aを有する第2連結部26とを有し、球面同士を互いに当接させている自動調芯機構18を備えている。そして、この自動調芯機構18により外周パッド部29は凸状球面25aと凹状球面26aとの当接中心Gを傾動支点として、自動的に中心軸線O4が自由に傾く運動、すなわち球心揺動(スイング)をすることができる。
【0048】
したがって、ウエハWの外周部分をチャックテーブル11上に押し付けるとき、外周パッド部29の下面(吸着保持パッド28aの下面)がチャックテーブル11の吸引保持部(吸着面)11bと平行となるように、外周パッド部29の中心軸線O4の傾きが自動調芯機構18により自動調整されてチャックテーブル11の吸引保持部(吸着面)11bに倣い、外周パッド部29からの押圧力(負荷)がウエハWに均一にかかる。これにより、反りの大きなウエハWであっても押圧時にウエハWの特定の箇所に応力が集中するのを無くして、ウエハWの損傷を防止できるとともに、チャックテーブル11でのチャック状態が安定し、加工精度の向上が図れる。
【0049】
また、チャックテーブル11に配置されたウエハWは、以後、チャックテーブル11側に発生している負圧で保持テーブル11a上に吸着保持される。そして、保持テーブル11a上にウエハWが吸着保持された後は、加圧シリンダ13のロッド13aが加圧シリンダ13内に退避するとともに、昇降軸19がコイルスプリング23の付勢力で外周パッド部29と共に初期位置まで上昇する。次いで、搬送機構12は、再び保持パッド17を所定の箇所に待機しているウエハW上まで戻り、再び同じ動作を繰り返す。
【0050】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。例えば、上記実施例の構成では、自動調芯機構18における第1連結部25を昇降軸19側に固定し、第2連結部26を外周パッド部29側に設けた構造を開示したが第1連結部25を外周パッド部29側に固定し、第2連結部26を昇降軸19側に設けた構造にしてもよいものである。