(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
0質量ppmから20質量ppmまでの、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、ジフェニルスルホンおよびその混合物からなる群から選択される非プロトン性極性溶媒を含み、かつ50質量ppm未満の塩(S)を含み、ここで、質量ppmは、それぞれ脱塩されたポリマー(eP)の全質量を基準とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法によって得られる脱塩されたポリマー(eP)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下において、本発明による方法を詳述する。
【0023】
塩含有ポリマー(sP)
本発明によれば、塩含有ポリマー(sP)は、ポリアリールエーテルおよび塩(S)を含むものである。
【0024】
「ポリアリールエーテル」とは、本発明によれば、正確に1つのポリアリールエーテルであるとも、2つまたは複数のポリアリールエーテルからの混合物であるとも理解される。
【0025】
「塩(S)」とは、本発明によれば、正確に1つの塩(S)であるとも、2つまたは複数の塩(S)からの混合物であるとも理解される。
【0026】
1つの実施形態では、塩含有ポリマー(sP)は、それぞれ塩含有ポリマー(sP)の全質量を基準として少なくとも50質量%、特に好ましくは少なくとも60質量%、より好ましくは少なくとも65質量%、とりわけ好ましくは少なくとも70質量%のポリアリールエーテルを含む。
【0027】
別の実施形態では、塩含有ポリマー(sP)は、それぞれ塩含有ポリマー(sP)の全質量を基準として最大で99.98質量%、好ましくは最大で99質量%、より好ましくは最大で90質量%、とりわけ好ましくは最大で80質量%のポリアリールエーテルを含む。
【0028】
好ましくは、塩含有ポリマー(sP)は、それぞれ塩含有ポリマー(sP)の全質量を基準として50質量%から99.98質量%までのポリアリールエーテル、特に好ましくは60質量%から99質量%までのポリアリールエーテル、とりわけ好ましくは65質量%から90質量%までのポリアリールエーテル、最も好ましくは70質量%から80質量%までのポリアリールエーテルを含む。
【0029】
1つの実施形態では、塩含有ポリマー(sP)は、それぞれ塩含有ポリマー(sP)の全質量を基準として少なくとも0.02質量%、好ましくは少なくとも1質量%、特に好ましくは少なくとも10質量%、とりわけ好ましくは少なくとも20質量%の塩を含む。
【0030】
別の実施形態では、塩含有ポリマー(sP)は、それぞれ塩含有ポリマー(sP)の全質量を基準として最大で50質量%、好ましくは最大で40質量%、より好ましくは最大で35質量%、とりわけ好ましくは最大で30質量%の塩を含む。
【0031】
さらに、塩含有ポリマー(sP)が、それぞれ塩含有ポリマー(sP)の全質量を基準として0.02質量%から50質量%までの塩(S)、特に好ましくは1質量%から40質量%までの塩(S)、とりわけ好ましくは10質量%から35質量%まで、最も好ましくは20質量%から30質量%までの塩(S)を含むことが好ましい。
【0032】
塩含有ポリマー(sP)が、さらに添加剤を含むことが可能である。好適な添加剤は、当業者にそれ自体公知である。塩含有ポリマー(sP)がさらに添加剤を含む場合、塩含有ポリマー(sP)は、一般的に、それぞれ塩含有ポリマー(sP)の全質量を基準として0.01質量%から10質量%までの添加剤、好ましくは0.01質量%から7質量%までの添加剤、とりわけ好ましくは0.01質量%から5質量%までの添加剤を含む。1つの実施形態では、塩含有ポリマー(sP)は、さらなる添加剤を含まない。
【0033】
さらに、塩含有ポリマー(sP)は、炭酸塩化合物(C)を含んでいてよい。炭酸塩化合物(C)には、さらに下に記載の説明および選好が適用される。塩含有ポリマー(sP)が炭酸塩化合物(C)を含む場合、塩含有ポリマー(sP)は、塩含有ポリマー(sP)の全質量を基準として0.01質量%から20質量%までの範囲、好ましくは0.01質量%から5質量%までの範囲、とりわけ好ましくは0.01質量%から2質量%までの範囲の炭酸塩化合物(C)を含む。炭酸塩化合物(C)は、塩(S)とは異なるものである。1つの実施形態では、塩含有ポリマー(sP)は、炭酸塩化合物(C)を含まない。
【0034】
「炭酸塩化合物(C)」とは、本発明の範囲では、正確に1つの炭酸塩化合物(C)であることも、2つまたは複数の炭酸塩化合物(C)からの混合物であることも意味する。
【0035】
別の実施形態では、塩含有ポリマー(sP)は、それぞれ塩含有ポリマー(sP)の全質量を基準として50質量%から99.98質量%までのポリアリールエーテル、および0.02質量%から50質量%までの塩(S)、好ましくは60質量%から99質量%までのポリアリールエーテル、および1質量%から40質量%までの塩(S)、とりわけ好ましくは65質量%から90質量%までのポリアリールエーテル、および10質量%から35質量%までの塩(S)、最も好ましくは70質量%から80質量%までのポリアリールエーテル、および20質量%から30質量%までの塩(S)を含む。一般的に、ポリアリールエーテル、塩(S)および場合によってさらなる添加剤ならびに炭酸塩化合物(C)の質量百分率の合計は、100%になる。
【0036】
塩含有ポリマー(sP)の粘度数は、DIN51562に準拠して、1:1のフェノール/1,2−ジクロロベンゼン混合物中の塩含有ポリマー(sP)の溶液0.01g/mlをウベローデ粘度計によって測定して、一般的に、30ml/gから120ml/gまで、好ましくは35ml/gから110ml/gまで、とりわけ好ましくは40ml/gから100ml/gまでの範囲にある。
【0037】
本発明の別の、好ましい実施形態では、塩含有ポリマー(sP)の粘度数は、DIN51562に準拠して、1:1のフェノール/1,2−ジクロロベンゼン混合物中の塩含有ポリマー(sP)の溶液0.01g/mlをウベローデ粘度計によって測定して、15ml/gから900ml/gまで、好ましくは22.5ml/gから75ml/gまで、とりわけ好ましくは26.25ml/gから71.25ml/gまでの範囲にある。
【0038】
一般的に、塩(S)は、カチオンおよびハロゲン化物を含み、好ましくはカチオンおよび塩化物を含む。ハロゲン化物は、「ハロゲン化物アニオン」とも呼ばれる。塩化物は、「塩化物アニオン」とも呼ばれる。
【0039】
「カチオン」とは、本発明によれば、正確に1つのカチオンであるとも、2つまたは複数のカチオンからの混合物であるとも理解される。
【0040】
「ハロゲン化物」とは、本発明によれば、正確に1つのハロゲン化物であるとも、2つまたは複数のハロゲン化物からの混合物であるとも理解される。
【0041】
したがって、塩含有ポリマー(sP)における塩(S)の質量%は、塩含有ポリマー(sP)におけるハロゲン化物、好ましくは塩化物の質量%の測定によって測定することができる。ハロゲン化物の質量%とは、アニオン性ハロゲンの質量%である、つまり、遊離ハロゲン化物の質量%であって、重合体に結合したハロゲンの質量%ではないと理解される。同様のことが、塩化物の質量%にも当てはまる。これは、イオン性塩化物の質量%、ひいては遊離塩化物の質量%を指しているのであって、重合体に結合した塩化物の質量%を指しているのではない。
【0042】
塩含有ポリマー(sP)におけるハロゲン化物、好ましくは塩化物の質量%を測定するために、700mgの塩含有ポリマー(sP)をN−メチルピロリドン(NMP)に溶解し、得られた溶液を酢酸/アセトン混合物(酢酸対アセトンの比 1:1)で希釈する。そのようにして得られた溶液に硫酸または硝酸を加えて、次に0.0002mol/lの硝酸銀溶液を用いて電位差滴定し、ここで、メチロールオレンジが指示薬として使用される。電極としては、Metrohm社のAg−Titrodeが用いられる。
【0043】
次に、ハロゲン化物の質量%によって、塩含有ポリマー(sP)中の、同じく塩(S)中に含まれているカチオンの質量%を計算することができる。そのための方法は、当業者に公知である。その後、塩含有ポリマーにおけるハロゲン化物の質量%ならびにカチオンの質量%の合計から、塩含有ポリマー(sP)における塩(S)の質量%が明らかになる。
【0044】
以下に記載のあらかじめ脱塩されたポリマー(veP)および脱塩されたポリマー(eP)における塩(S)の質量%は、本発明によれば同じ方法で測定される。
【0045】
ポリアリールエーテルは、当業者にはポリマークラスとして公知である。本発明による方法における使用の場合、根本的に、当業者に公知の、および/または公知の方法によって製造可能なあらゆるポリアリールエーテルが考慮される。相応の製造方法は、さらに下に詳述される。
【0046】
好ましいポリアリールエーテルは、一般式(I)
【化1】
[式中、記号t、q、Q、T、Y、ArおよびAr
1は、以下の意味を有する:
t、qは、互いに独立して0、1、2または3であり、
Q、T、Yは、互いに独立して、それぞれ、化学結合または−O−、−S−、−SO
2−、S=O、C=O、−N=N−および−CR
aR
b−から選択される基であり、ここで、R
aおよびR
bは、互いに独立してそれぞれ水素原子またはC
1〜C
12−アルキル基、C
1〜C
12−アルコキシ基またはC
6〜C
18−アリール基を表し、かつここで、Q、TおよびYの少なくとも1つは、−SO
2−を表し、
Ar、Ar
1は、互いに独立して、6個から18個までの炭素原子を有するアリーレン基である]
の構成要素で構成されるものである。
【0047】
Q、TまたはYが、上記前提条件下で化学結合である場合、左隣の基および右隣の基は、化学結合によって直接相互に結合して存在していると理解される。
【0048】
たしかに、式(I)のQ、TおよびYは、互いに独立して−O−および−SO
2−から選択されるのが好ましいが、ただし、Q、TおよびYからなる群の少なくとも1つは、−SO
2−を表す。これらのポリアリールエーテルは、ポリアリールエーテルスルホンである。
【0049】
したがって、本発明の対象は、ポリアリールエーテルがポリアリールエーテルスルホンである方法でもある。
【0050】
Q、TまたはYが−CR
aR
b−である場合、R
aおよびR
bは、互いに独立してそれぞれ水素原子またはC
1〜C
12−アルキル基、C
1〜C
12−アルコキシ基またはC
6〜C
18−アリール基を表す。
【0051】
好ましいC
1〜C
12−アルキル基は、1個から12個までの炭素原子を有する直鎖状および分岐鎖状の、飽和アルキル基を含む。とりわけ、以下の基、C
1〜C
6−アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、2−メチルペンチルまたは3−メチルペンチル、および長鎖の基、例えば非分岐鎖状のヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ラウリル、および1回または複数回分岐したその類似物が挙げられる。
【0052】
上述の使用可能なC
1〜C
12−アルコキシ基におけるアルキル基としては、さらに上に定義された、1個から12個までの炭素原子を有するアルキル基が考慮される。好ましくは、使用可能なシクロアルキル基は、とりわけC
3〜C
12−シクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルプロピル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチル、シクロペンチルプロピル、シクロペンチルブチル、シクロペンチルペンチル、シクロペンチルヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルジメチル、およびシクロヘキシルトリメチルを含む。
【0053】
ArおよびAr
1は、互いに独立してC
6〜C
18−アリーレン基を意味する。さらに下に記載の出発生成物から出発して、Arは、好ましくは電子が豊富な、求電子攻撃を受けやすい、好ましくはヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタリン、とりわけ2,7−ジヒドロキシナフタリン、および4,4’−ビスフェノールからなる群から選択される芳香族物質に由来するものである。好ましくは、Ar
1は、置換されていないC
6−アリーレン基またはC
12−アリーレン基である。
【0054】
C
6〜C
18−アリーレン基のArおよびAr
1としては、とりわけフェニレン基、例えば1,2−フェニレン、1,3−フェニレンおよび1,4−フェニレン、ナフチレン基、例えば1,6−ナフチレン、1,7−ナフチレン、2,6−ナフチレンおよび2,7−ナフチレン、ならびにアントラセン、フェナントレンおよびナフタセンに由来するアリーレン基が考慮される。
【0055】
好ましくは、式(I)による、好ましい実施形態におけるArおよびAr
1は、互いに独立して1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ナフチレン、とりわけ2,7−ジヒドロキシナフチレン、および4,4’−ビスフェニレンからなる群から選択される。
【0056】
好ましいポリアリールエーテルは、以下の構成要素IaからIoまでの少なくとも1つを、繰り返し構造単位として含むものである。
【化2-1】
【化2-2】
【0057】
好ましい構成要素IaからIoまでに加えて、ヒドロキノンに由来する1つまたは複数の1,4−フェニレン単位が、レゾルシノールに由来する1,3−フェニレン単位に置き換えられているか、またはジヒドロキシナフタリンに由来するナフチレン単位で置き換えられている構成要素も好ましい。
【0058】
一般式(I)の構成要素として特に好ましいのは、構成要素Ia、IgおよびIkである。さらに、ポリアリールエーテルが、実質的に一般式(I)の1種類の構成要素で構成されている、とりわけIa、IgおよびIkから選択される構成要素で構成されている場合が特に好ましい。
【0059】
特に好ましい実施形態では、Arは1,4−フェニレンであり、tは1であり、qは0であり、Tは化学結合であり、YはSO
2である。前述の繰り返し単位で構成される特に好ましいポリアリールエーテルスルホンは、ポリフェニレンスルホン(PPSU)と呼ばれる(式Ig)。
【0060】
別の特に好ましい実施形態では、Arは1,4−フェニレンであり、tは1であり、qは0であり、TはC(CH
3)
2であり、YはSO
2である。前述の繰り返し単位で構成される特に好ましいポリアリールエーテルスルホンは、ポリスルホン(PSU)と呼ばれる(式Ia)。
【0061】
別の特に好ましい実施形態では、Arは1,4−フェニレンであり、tは1であり、qは0であり、TおよびYはSO
2である。前述の繰り返し単位で構成される特に好ましいポリアリールエーテルスルホンは、ポリエーテルスルホン(PESU)と呼ばれる(式Ik)。
【0062】
PPSU、PSUおよびPESUなどの略称は、本発明の範囲では、DIN EN ISO 1043−1(Kunststoffe−Kennbuchstaben und Kurzzeichen −Teil 1:Basis−Polymere und ihre besonderen Eigenschaften(ISO 1043−1:2001);ドイツ語版EN ISO 1043−1:2002)に相応する。
【0063】
ポリアリールエーテルは、好ましくは、ジメチルアセトアミドの溶媒中で、標準である分布の狭いポリメチルメタクリレートに対してゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定して、10,000g/molから150,000g/molまで、とりわけ15,000g/molから120,000g/molまで、特に好ましくは18,000g/molから100,000g/molまでの質量平均分子量M
wを有している。
【0064】
ポリアリールエーテルは、好ましくは、ジメチルアセトアミドの溶媒中で、標準である分布の狭いポリメチルメタクリレートに対してゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定して、10000g/molから35000g/molまでの数平均分子量M
nを有している。
【0065】
多分散度は、好ましくは1.9から7.5までであり、特に好ましくは2.1から4までである。
【0066】
さらに、純物質におけるポリアリールエーテルは、好ましくは、100Pa・sから1000Pa・sまで、好ましくは150Pa・sから300Pa・sまで、とりわけ好ましくは150Pa・sから275Pa・sまでの、350℃/1150s
-1での見掛け溶融粘度を有している。
【0067】
溶融粘度は、毛管粘度計を用いて測定された。ここで、350℃での見掛け粘度は、せん断速度の関数として、長さ30mmの円形毛管、半径0.5mm、ノズルの流入角180°、溶融物の貯蔵容器の直径12mmを有する毛管粘度計(Goettfert Kapillarviskosimeter Rheograph 2003)において、予熱時間5分で測定された。1150s
-1で測定された値が記載されている。
【0068】
ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eは、通常、示差走査熱量測定法を用いて測定して、150℃から230℃までの範囲、好ましくは155℃から230℃までの範囲、とりわけ好ましくは160℃から180℃までの範囲にある。そのための方法は、当業者に公知である。
【0069】
ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eとは、本発明では、ポリアリールエーテルおよび抽出剤(E)の全質量を基準として2質量%から30質量%までの抽出剤(E)を含む純粋なポリアリールエーテルのガラス転移温度であると理解され、ここで、ポリアリールエーテルは、塩(S)を含まない。
【0070】
好ましくは、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eとは、本発明では、ポリアリールエーテルおよび抽出剤(E)の全質量を基準として15質量%の抽出剤(E)を含む純粋なポリアリールエーテルのガラス転移温度であると理解され、ここで、ポリアリールエーテルは、塩(S)を含まない。
【0071】
したがって、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eは、ポリアリールエーテルのガラス転移温度T
Gと同じように測定することができる。
【0072】
ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eは、ポリアリールエーテルのガラス転移温度T
Gを下回ることは明らかである。
【0073】
したがって、本発明の対象は、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eが150℃から230℃までの範囲にある方法でもある。
【0074】
ポリアリールエーテルのガラス転移温度T
Gは、通常、示差熱分析法(DTA;示差走査熱量測定法(DSC))によって測定して、160℃から270℃までの範囲、好ましくは170℃から250℃までの範囲、とりわけ好ましくは180℃から230℃までの範囲にある。
【0075】
示差熱分析法によるガラス転移温度T
Gの測定方法は、当業者にそれ自体公知である。
【0076】
ガラス転移温度T
Gとは、ポリアリールエーテルが、冷却時に凝固してガラス様の固形物になる温度であると理解される。
【0077】
したがって、本発明の対象は、ポリアリールエーテルのガラス転移温度T
Gが、160℃から270℃までの範囲にある方法でもある。
【0078】
ポリアリールエーテルの溶融温度T
Mは、通常、示差熱分析法(DTA;示差走査熱量測定法(DSC))によって測定して、200℃から300℃までの範囲、好ましくは230℃から280℃までの範囲にある。
【0079】
ポリアリールエーテルの溶融温度T
Mとは、部分結晶性のポリアリールエーテルが、固体の凝集状態から液状の凝集状態に完全に遷移し、したがって、ポリアリールエーテルが完全に溶融物として存在している温度であると理解される。
【0080】
当業者には、非晶性ポリエーテルの場合、ポリアリールエーテルの溶融温度T
Mは、ポリアリールエーテルのガラス転移温度T
Gに等しいことが明らかである。
【0081】
前述のポリアリールエーテルをもたらす製造方法は、当業者に自体公知であり、例えばHerman F.Mark、“Encyclopedia of Polymer Science and Technology”、third edition、Volume 4、2003、Kapitel “Polysulfones”、2〜8ページ、ならびにHans R.Kricheldorf、Handbook of Polymer Synthesis、second edition、2005の“Aromatic Polyethers”、427〜443ページに記載されている。
【0082】
ポリアリールエーテルは、好ましくは、少なくとも1つの芳香族ジヒドロキシ化合物を含む成分(a1)と、2つのハロゲン置換基を有する少なくとも1つの芳香族スルホン化合物を含む成分(a2)との反応によって製造される。成分(a1)の(a2)に対するモル比は、好ましくは0.99から1.4までの範囲、特に好ましくは1.0から1.2までの範囲、最も好ましくは1.0から1.1までの範囲にある。
【0083】
反応は、通常、炭酸塩化合物(C)の存在下に実施される。
【0084】
成分(a1)は、少なくとも1つの芳香族ジヒドロキシ化合物を含む。成分(a1)は、とりわけ以下の化合物を含む。
・4,4’−ジヒドロキシビフェニル、
・ジヒドロキシベンゼン、とりわけヒドロキノンおよびレゾルシノール、
・ジヒドロキシナフタリン、とりわけ1,5−ジヒドロキシナフタリン、1,6−ジヒドロキシナフタリン、1,7−ジヒドロキシナフタリンおよび2,7−ジヒドロキシナフタリン、
・4,4’−ビフェノール以外のその他のジヒドロキシビフェニル、とりわけ2,2’−ビフェノール、
・ビスフェニルエーテル、とりわけビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルおよびビス(2−ヒドロキシフェニル)エーテル、
・ビスフェニルプロパン、とりわけ2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、および2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
・ビスフェニルメタン、とりわけビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
・ビスフェニルシクロヘキサン、とりわけビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2,4−トリメチルシクロヘキサン、
・ビスフェニルスルホン、とりわけビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、
・ビスフェニルスルフィド、とりわけビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、
・ビスフェニルケトン、とりわけビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、
・ビスフェニルヘキサフルオロプロパン、とりわけ2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、および
・ビスフェニルフルオレン、とりわけ9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン。
【0085】
好ましくは、成分(a1)は、それぞれ成分(a1)の全質量を基準として少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%、とりわけ少なくとも95質量%の、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよびビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ成分を含む。殊に好ましくは、成分(a1)は、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよびビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ成分からなる。
【0086】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンは、ビスフェノールAという名称でも公知である。ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンは、ビスフェノールSという名称でも公知である。
【0087】
好ましくは、成分(a2)は、それぞれ成分(a2)の全質量を基準として少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%、とりわけ少なくとも95質量%の、2つのハロゲン置換基を有する少なくとも1つの芳香族スルホン化合物を含む。
【0088】
成分(a2)として好適な、2つのハロゲン置換基を有する芳香族スルホン化合物は、当業者に基本的に公知である。好ましい成分(a2)は、とりわけジハロゲンジフェニルスルホン、例えば4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジブロモジフェニルスルホン、2,2’−ジクロロジフェニルスルホンおよび2,2’−ジフルオロジフェニルスルホンである。4,4’−ジクロロジフェニルスルホンおよび4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンが特に好ましい。殊に好ましいのは、4,4’−ジクロロジフェニルスルホンである。
【0089】
成分(a1)として4,4’−ジヒドロキシビフェニルと、成分(a2)として4,4’−ジハロゲンジフェニルスルホンとの反応は、ポリアリールエーテルスルホン(式Ig)であるポリフェニレンスルホン(PPSU)をもたらす。
【0090】
成分(a1)としてビスフェノールAと、成分(a2)として4,4’−ジハロゲンジフェニルスルホンとの反応は、ポリアリールエーテルスルホン(式Ia)であるポリスルホン(PSU)をもたらす。
【0091】
成分(a1)としてビスフェノールSと、成分(a2)として4,4’−ジハロゲンジフェニルスルホンとの反応は、ポリアリールエーテルスルホン(式Ik)であるポリエーテルスルホン(PESU)をもたらす。
【0092】
ポリアリールエーテルスルホンとして好ましいのは、ポリフェニレンスルホン(PPSU)およびポリエーテルスルホン(PESU)である。
【0093】
ポリアリールエーテルは、複数の種々の末端基を有していてよい。例えば、ポリアリールエーテルは、水酸化物末端基、ハロゲン末端基および/またはアルコキシド末端基を有していてよい。ポリアリールエーテルが、製造プロセスに続いて、エーテル化剤と反応する場合、ポリアリールエーテルは、末端基を有していてもよい。好適なエーテル化剤は、当業者に公知であり、例えば有機モノハロゲン化合物である。
【0094】
好ましいエーテル化剤は、クロロメタン、ブロモメタン、ヨードメタンおよび炭酸ジメチルからなる群から選択されるものである。
【0095】
好適な炭酸塩化合物(C)は、当業者にそれ自体公知である。好ましい炭酸塩化合物(C)は、アルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ土類金属炭酸塩である。好ましくは、炭酸塩化合物(C)は無水である。好適な炭酸塩化合物(C)は、とりわけ無水アルカリ金属炭酸塩であり、好ましくは無水炭酸ナトリウム、無水炭酸カリウムまたはその混合物であり、ここで、無水炭酸カリウムが殊に好ましい。
【0096】
ポリアリールエーテルおよび塩(S)を含む塩含有ポリマー(sP)の製造は、溶媒または希釈剤の存在下に行われてよく、同じく、溶媒または希釈剤の非存在下での製造も可能である。好ましいのは、溶媒または希釈剤の非存在下での製造である。特に好ましいのは、溶融重合法である、溶媒または希釈剤の非存在下での製造である。
【0097】
溶媒または希釈剤の存在下でのポリアリールエーテルの製造方法は、当業者にそれ自体公知である。その製造方法は、本発明による実施形態において、塩含有ポリマー(sP)の製造に用いることもできる。そのためには、成分(a1)と成分(a2)を、非プロトン性極性溶媒中で炭酸塩化合物(C)の存在下に反応させる。場合によって、溶媒は、さらに、縮合反応時に生じる水と共沸混合物を形成する連行剤(共沸剤)を含んでいてよい。好適な非プロトン性極性溶媒は、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランおよびジフェニルスルホンからなる群から選択されるものである。好適な連行剤(共沸剤)は、例えばトルエンおよび/またはクロロベンゼンである。
【0098】
そのようにして製造された塩含有ポリマー(sP)は、その後、例えば当業者に公知の方法によって水に沈殿させることができる。
【0099】
好ましい実施形態では、塩含有ポリマー(sP)は、溶媒または希釈剤の非存在下で製造される。それらは、特に好ましくは溶融重合法で製造される。ポリアリールエーテルの場合の溶融重合法は、例えば、独国特許出願公開第2749645号公報(DE2749645)および国際公開第2014/033321号(WO2014/033321)に記載されており、本発明の好ましい実施形態において、塩含有ポリマー(sP)の製造に用いることができる。
【0100】
したがって、本発明の対象は、塩含有ポリマー(sP)が溶融重合法によって製造される方法でもある。
【0101】
溶融重合は、バッチ法として実施するか、または連続法として実施することができる。好ましいのは、連続法としての実施である。
【0102】
好適な反応器は、高粘性材料の混合に好適であり、さらに気体状の縮合生成物を除去すること、ならびにモノマーをその融点を越えて加熱することを可能にするあらゆる公知の反応器形態である。反応器として好ましいのは、押出機または混合混練機であり、特に好ましいのは混合混練機である。好ましいのは、さらに一軸混練機または二軸混練機であり、ここで、二軸混練機が特に好ましい。さらに、反応温度で場合によって蒸発する揮発性モノマーを混合混練機に返送するために、混合混練機にさらに還流凝縮器が設けられていることが好ましい。
【0103】
通常、溶融重合は、ポリアリールエーテルの分解温度を下回る温度で実施される。好ましくは、溶融重合時の温度は、ポリアリールエーテルの分解温度を少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃、とりわけ好ましくは少なくとも10℃下回っている。
【0104】
一般的に、溶融重合は、200℃から400℃までの範囲、好ましくは250℃から350℃までの範囲の温度で実施される。
【0105】
1つの実施形態では、成分(a1)および成分(a2)は、0.9から1.4まで、好ましくは1.0から1.2まで、とりわけ好ましくは1.0から1.1までのモル比で混合混練機に装入される。炭酸塩化合物(C)は、その場合、別個の成分として添加される。好ましくは、炭酸塩化合物(C)は、成分(a1)に対して0.9から1.22まで、好ましくは1.0から1.12まで、とりわけ好ましくは1.03から1.10までのモル比で供給される。
【0106】
成分(a1)および成分(a2)が混合混練機に装入される場合、成分(a1)および(a2)が最初に溶融されて、その後、炭酸塩化合物(C)が供給されることが好ましい。好ましくは、成分(a1)および(a2)は、相互に混合され、溶融され、その後はじめて混合混練機に供給される。
【0107】
さらに、炭酸塩化合物(C)を2つの成分(a1)または(a2)のうちの1つとともに装入し、次に2つの成分(a1)または(a2)のうちの第二の成分を供給することが可能である。炭酸塩化合物(C)を成分(a1)とともに装入することがとりわけ好ましい。一般的に、その場合、まず成分(a1)と炭酸塩化合物(C)とを反応させてジアルコキシドを形成させ、次に成分(a2)が供給される。
【0108】
2つの成分(a1)および(a2)ならびに炭酸塩化合物(C)のモル比に関しては、たとえ炭酸塩化合物(C)が2つの成分(a1)または(a2)のうちの1つとともに装入されるとしても、前述の説明および選好が適用される。
【0109】
成分(a1)および/または(a2)は、液状または固体で、混合混練機に導入されてよい。
【0110】
本発明の別の実施形態では、成分(a1)および(a2)および炭酸塩化合物(C)は、まず粉末として混合され、その後、混合混練機に供給される。それらは、その後、混合混練機内で溶融されて、反応する。
【0111】
反応器における反応時間は、一般的に0.5時間から3.5時間まで、好ましくは1時間から2時間までである。
【0112】
別の実施形態では、反応器における反応時間は、0.5時間から3.5時間まで、好ましくは1.5時間から3時間までである。
【0113】
炭酸塩化合物(C)の存在下での成分(a1)と成分(a2)との反応の際には、縮合生成物としてポリアリールエーテルの他に、水、二酸化炭素および塩(S)が形成される。形成された水および形成された二酸化炭素は、反応の間に気体状成分として反応器から除去することができる。塩(S)は、一般的にポリアリールエーテル中に残留し、塩含有ポリマー(sP)が得られる。一般的に、塩(S)は、炭酸塩化合物(C)として無機炭酸塩化合物(C)が使用される場合、無機塩である。好ましくは、塩(S)は、炭酸塩化合物(C)としてアルカリ金属炭酸塩が使用される場合、アルカリ金属ハロゲン化物である。最も好ましくは、塩(S)は、炭酸塩化合物(C)として炭酸カリウムおよび/または炭酸ナトリウムが使用される場合、塩化カリウムおよび/または塩化ナトリウムである。
【0114】
したがって、本発明の対象は、塩(S)が無機塩を含む方法でもある。
【0115】
本発明の対象は、さらに、塩(S)が塩化カリウムおよび/または塩化ナトリウムを含む方法である。
【0116】
塩(S)は、一般的に0.1μmから100μmまでの範囲、好ましくは0.5μmから50μmまでの範囲、特に好ましくは0.8μmから30μmまでの範囲、最も好ましくは1μmから10μmまでの範囲の粒径を有している。粒径は、SEM(Scanning Electron Microscopy、走査型電子顕微鏡)撮影によって8kVの加速電圧で測定される。
【0117】
塩(S)は、一般的に、塩含有ポリマー(sP)中に粒子状で分散分布して存在している。
【0118】
工程a)
工程a)では、塩含有ポリマー(sP)を、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eを上回る第一温度T
1で準備する。
【0119】
好ましくは、第一温度T
1は、ポリアリールエーテルのガラス転移温度T
Gを上回っている。
【0120】
第一温度T
1は、通常、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eを少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃、とりわけ好ましくは少なくとも10℃上回っている。
【0121】
別の好ましい実施形態では、第一温度T
1は、ポリアリールエーテルのガラス転移温度T
Gを少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃、とりわけ好ましくは少なくとも10℃上回っている。
【0122】
第一温度T
1は、ポリアリールエーテルの分解温度を下回っている。好ましくは、第一温度T
1は、ポリアリールエーテルの分解温度を少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃、とりわけ好ましくは少なくとも10℃下回っている。
【0123】
好ましい実施形態では、第一温度T
1は、160℃から300℃までの範囲、好ましくは200℃から280℃までの範囲、とりわけ好ましくは220℃から260℃までの範囲にある。
【0124】
したがって、本発明の対象は、工程a)の第一温度T
1が、160℃から300℃までの範囲にある方法でもある。
【0125】
本発明によれば、第一温度T
1が、ポリアリールエーテルのガラス転移温度T
Gを1℃から100℃までの範囲、好ましくは5℃から50℃までの範囲、とりわけ好ましくは20℃から50℃までの範囲で上回っているのがさらに好ましい。
【0126】
したがって、本発明の対象は、第一温度T
1が、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eを1℃から100℃までの範囲で上回っている方法でもある。
【0127】
さらに、第一温度T
1は、ポリアリールエーテルの溶融温度T
Mを上回っていてよい。第一温度T
1が、ポリアリールエーテルの溶融温度T
Mを上回っている場合、塩含有ポリマー(sP)は、工程a)において溶融物として準備される。
【0128】
工程a)では、塩含有ポリマー(sP)は、塩含有ポリマー(sP)を第一温度T
1に保つことを可能にするあらゆる任意の反応器で準備されてよい。そのような反応器は、当業者に公知である。好適な反応器は、例えば撹拌槽型反応器、オートクレーブ、混練機、押出機または薄膜蒸発器である。
【0129】
反応器は、さらに、動的または静的な混合要素を含んでいてよい。動的および静的な混合要素それ自体は、当業者に公知である。動的な混合要素は、例えば撹拌機、例えばプロペラ型撹拌機、羽根型撹拌機、アンカー型撹拌機および自浄性二軸混合要素である。
【0130】
塩含有ポリマー(sP)は、工程a)において、当業者に公知のあらゆる方法で準備することができる。例えば、塩含有ポリマー(sP)を、まず連続法またはバッチ法で前述の通りに製造し、次に固体の粉末、例えば顆粒または粉末の形態に加工することができる。塩含有ポリマー(sP)は、工程a)において、塩含有ポリマー(sP)の固体の粉末を、第一温度T
1に加熱することによって準備することができる。
【0131】
さらに、塩含有ポリマー(sP)を、工程a)において、その製造、好ましくは溶融重合法による製造、とりわけ好ましくは連続法での溶融重合による製造に引き続いてすぐに準備することが可能である。一般的に、塩含有ポリマー(sP)は、その場合、好ましくは、塩含有ポリマー(sP)をあらかじめ固体の粉末に加工することなく、製造で得られた塩含有ポリマー(sP)の溶融物が工程a)において準備されることによって、工程a)におけるその製造に引き続いてすぐに準備される。この実施形態が好ましい。
【0132】
工程b)
工程b)では、工程a)で準備された塩含有ポリマー(sP)を抽出剤(E)と接触させて、ポリアリールエーテルを含む脱塩されたポリマー(eP)と、抽出剤(E)および塩(S)を含む塩含有抽出剤(sE)とが得られる。
【0133】
工程b)は、抽出である。したがって、以下において、「工程b)」および「抽出」という用語は、同義に用いられる。
【0134】
好ましくは、工程b)は、工程a)に引き続いてすぐに実施される。
【0135】
抽出剤(E)として、正確に1つの抽出剤が使用されてよい。同じく、2つまたは複数の抽出剤からの混合物を使用することも可能である。
【0136】
抽出剤(E)としては、根本的に、塩(S)を溶解するあらゆる溶媒が好適である。好ましくは、抽出剤(E)は、プロトン性溶媒を含む。特に好ましくは、抽出剤(E)は、水を含む。
【0137】
したがって、本発明の対象は、抽出剤(E)としてプロトン性溶媒が使用される方法でもある。
【0138】
一般的に、抽出剤(E)は、それぞれ抽出剤(E)の全質量を基準として少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも70質量%、とりわけ好ましくは少なくとも80質量%、最も好ましくは少なくとも90質量%の水を含む。
【0139】
したがって、本発明の対象は、工程b)の抽出剤(E)が水を含む方法でもある。
【0140】
塩含有ポリマー(sP)は、一般的に、反応器内で抽出剤(E)と接触させる。そのためには、根本的に、工程b)で用いられる圧力および温度での使用に適した、当業者に公知のあらゆる反応器形態が好適である。例えば、塩含有ポリマー(sP)は、塩含有ポリマー(sP)が第一温度T
1で工程a)において準備されたのと同じ反応器内で抽出剤(E)と接触させる。
【0141】
工程b)における反応器には、その場合、工程a)における反応器に関する前述の説明および選好が適用される。好ましくは、塩含有ポリマー(sP)は、工程b)において連続的に動的混合機内で抽出剤(E)と接触させる。そのための方法は、当業者に公知である。
【0142】
塩含有ポリマー(sP)は、工程b)において、好ましくは、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eを上回る、好ましくはガラス転移温度T
Gを上回る第二温度T
2で抽出剤(E)と接触させる。
【0143】
通常、第二温度T
2は、ポリアリールエーテルの軟化温度T
E、好ましくはガラス転移温度T
Gを少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃、とりわけ好ましくは少なくとも10℃上回っている。
【0144】
したがって、本発明の対象は、塩含有ポリマー(sP)を、工程b)において、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eを上回る第二温度T
2で抽出剤(E)と接触させる方法でもある。
【0145】
第二温度T
2は、ポリアリールエーテルの分解温度を下回っている。好ましくは、第二温度T
2は、ポリアリールエーテルの分解温度を少なくとも1℃、好ましくは少なくとも5℃、とりわけ好ましくは少なくとも10℃下回っている。
【0146】
塩含有ポリマー(sP)を工程b)において抽出剤(E)と接触させる際の第二温度T
2は、例えば160℃から300℃までの範囲、好ましくは200℃から280℃までの範囲、とりわけ好ましくは220℃から260℃までの範囲にある。
【0147】
したがって、本発明の対象は、塩含有ポリマー(sP)を工程b)において抽出剤(E)と接触させる際の第二温度T
2が、160℃から300℃までの範囲にある方法でもある。
【0148】
第二温度T
2は、いずれの場合も第一温度T
1および第二温度T
2が、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eを上回っており、好ましくはガラス転移温度T
Gを上回っており、およびポリアリールエーテルの分解温度を下回っているという条件下で、第一温度T
1を上回っていてよく、同じく第二温度T
2は、第一温度T
1を下回っていてよい。本発明の1つの実施形態では、第二温度T
2は、第一温度T
1に等しい。
【0149】
したがって、本発明の対象は、工程b)において、工程a)で準備された塩含有ポリマー(sP)を第一温度T
1で抽出剤(E)と接触させる方法でもある。この実施形態が好ましい。
【0150】
工程b)の圧力は、通常、6barから100barまでの範囲、好ましくは10barから70barまでの範囲、とりわけ好ましくは20barから50barまでの範囲にある。
【0151】
したがって、本発明の対象は、工程b)において、工程a)で準備された塩含有ポリマー(sP)を、6barから100barまでの範囲の圧力で抽出剤(E)と接触させる方法でもある。
【0152】
工程b)において、脱塩されたポリマー(eP)および塩含有抽出剤(sE)が得られる。
【0153】
工程b)で得られた塩含有抽出剤(sE)は、塩含有ポリマー(sP)から除去された塩(S)の一部を含む。一般的に、塩含有抽出剤(sE)は、それぞれ塩含有抽出剤(sE)の全質量を基準として0.1質量%から20質量%までの塩(S)、好ましくは0.5質量%から10質量%までの塩(S)、とりわけ好ましくは1質量%から5質量%までの塩(S)を含む。
【0154】
本発明の別の好ましい実施形態では、工程a)における塩含有ポリマー(sP)の準備は、以下の工程i)からiv)まで:
i)ポリアリールエーテルおよび塩(S)を含む第一の塩含有ポリマー(s1P)を準備する工程、
ii)工程i)で準備された第一の塩含有ポリマー(s1P)をペレット化して、ペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)を得る工程、
iii)工程ii)で得られたペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)を抽出剤(E)と接触させて、ポリアリールエーテルおよび塩(S)の残分を含む塩含有ポリマー(sP)と、抽出剤(E)および塩(S)の一部を含む第一の塩含有抽出剤(sE1)とを得る工程、
iv)工程iii)で得られた塩含有ポリマー(sP)を、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eを上回る、好ましくはガラス転移温度T
Gを上回る第一温度T
1に加熱する工程
を含み、工程b)は、以下の工程v):
v)工程iv)で加熱された塩含有ポリマー(sP)を抽出剤(E)と接触させて、ポリアリールエーテルを含む脱塩されたポリマー(eP)と、抽出剤(E)および塩(S)の残分を含む第二の塩含有抽出剤(sE2)とを得る工程
を含む。
【0155】
したがって、本発明の対象は、さらに、以下の工程:
i)ポリアリールエーテルおよび塩(S)を含む第一の塩含有ポリマー(s1P)を準備する工程、
ii)工程i)で準備された第一の塩含有ポリマー(s1P)をペレット化して、ペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)を得る工程、
iii)工程ii)で得られたペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)を抽出剤(E)と接触させて、ポリアリールエーテルおよび塩(S)の残分を含む塩含有ポリマー(sP)と、抽出剤(E)および塩(S)の一部を含む第一の塩含有抽出剤(sE1)とを得る工程、
iv)工程iii)で得られた塩含有ポリマー(sP)を、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eを上回る第一温度T
1に加熱する工程、
v)工程iv)で加熱された塩含有ポリマー(sP)を抽出剤(E)と接触させて、ポリアリールエーテルを含む脱塩されたポリマー(eP)と、抽出剤(E)および塩(S)の残分を含む第二の塩含有抽出剤(sE2)とを得る工程
を含む方法である。
【0156】
第一の塩含有ポリマー(s1P)が、第一の塩含有ポリマー(s1P)の全質量を基準として10質量%未満、好ましくは8質量%未満、とりわけ好ましくは6質量%未満の塩(S)を含む場合、工程i)からiv)までを実施する必要はない。その代わりに、一般的に、工程a)およびb)のみが実施される。この実施形態では、第一の塩含有ポリマー(s1P)は、塩含有ポリマー(sP)に等しい。
【0157】
それに反して、第一の塩含有ポリマー(s1P)が、塩(S)を少なくとも6質量%、好ましくは少なくとも8質量%、とりわけ好ましくは少なくとも10質量%含む場合、一般的に、工程i)からiv)までは実施される。第一の塩含有ポリマー(s1P)は、その場合、塩含有ポリマー(sP)とは異なる。
【0158】
工程i)では、第一の塩含有ポリマー(s1P)が準備される。第一の塩含有ポリマー(s1P)を準備するための方法は、当業者にそれ自体公知である。好ましくは、第一の塩含有ポリマー(s1P)は、工程i)において溶融重合法によって準備される。
【0159】
したがって、本発明の対象は、第一の塩含有ポリマー(s1P)が、工程i)において溶融重合法で準備される方法でもある。
【0160】
溶融重合法には、前述の説明および選好が適用される。
【0161】
第一の塩含有ポリマー(s1P)には、相応して、塩含有ポリマー(sP)に対する前述の説明および選好が適用される。第一の塩含有ポリマー(s1P)が、塩含有ポリマー(sP)と異なる場合、つまり、工程i)からiii)までが実施される場合、第一の塩含有ポリマー(s1P)は、塩含有ポリマー(sP)より多くの塩(S)を含む。
【0162】
工程ii)では、工程i)で準備された第一の塩含有ポリマー(s1P)がペレット化されて、ペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)が得られる。そのための方法は、当業者にそれ自体公知である。
【0163】
好ましくは、工程i)および工程ii)は連続的に行われる。この実施形態では、第一の塩含有ポリマー(s1P)は、好ましくは、溶融重合法によって準備され、ここで、溶融重合に使用される反応器は押出機を含み、それを通って、第一の塩含有ポリマー(s1P)が工程i)に続いて押し出され、その後、工程ii)にしたがいペレット化することができる。ペレット化は、例えばストランドペレット化として行われるか、水中ペレット化として行われてよい。
【0164】
工程ii)では、第一の塩含有ポリマー(s1P)は、例えば0.3mmから10mmまでの範囲、好ましくは0.4mmから6mmまでの範囲、とりわけ好ましくは0.5mmから2mmまでの範囲の粒径にペレット化される。
【0165】
したがって、ペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)は、一般的に、画像解析によって測定して、0.3mmから10mmまでの範囲、好ましくは0.4mmから6mmまでの範囲、とりわけ好ましくは0.5mmから2mmまでの範囲の粒径を有している。
【0166】
したがって、本発明の対象は、第一の塩含有ポリマー(s1P)が、工程ii)において、0.3mmから10mmまでの範囲の粒径にペレット化される方法でもある。
【0167】
工程iii)では、工程ii)で得られたペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)を抽出剤(E)と接触させる。抽出剤(E)には、工程b)の記載と同じ説明および選好が適用される。
【0168】
工程iii)は、「予備抽出」とも呼ばれる。「工程iii)」および「予備抽出」という用語は、以下において同義に用いられる。
【0169】
工程iii)は、通常、ポリアリールエーテルのガラス転移温度T
Gを下回る温度で実施される。好ましくは、工程iii)は、ポリアリールエーテルの軟化温度T
E未満で実施される。
【0170】
工程iii)は、一般的に、50℃から150℃までの範囲、好ましくは60℃から100℃までの範囲、とりわけ好ましくは70℃から100℃までの範囲で実施される。
【0171】
工程iii)の間の反応器内の絶対圧は、好ましくは1barから10barまでの範囲、特に好ましくは1barから7barまでの範囲、最も好ましくは1barから5barまでの範囲にある。
【0172】
工程iii)の好適な反応器は、当業者にそれ自体公知である。好適な反応器は、例えば撹拌槽型反応器および管型反応器である。本発明により好ましいのは、管型反応器である。
【0173】
さらに、工程iii)で使用される反応器は、ペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)を抽出剤(E)と接触させる際の温度に外部から加熱できることが好ましい。
【0174】
本発明によれば、反応器は、場合によって、工程iii)で得られた第一の塩含有抽出剤(sE1)を工程iii)で得られた塩含有ポリマー(sP)と分離するために、例えば遠心分離機および/またはフィルターが設けられていてもよい。
【0175】
ペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)は、反応器内で固定床として存在していてよいため、使用される反応器は、固定床反応器である。同じく、工程iii)において向流反応器を使用することも可能であり、本発明によれば好ましい。
【0176】
向流反応器は、当業者にそれ自体公知である。本発明の1つの実施形態では、ペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)を、例えば連続的に向流反応器に流して、反対方向から抽出剤(E)を供給することができる。
【0177】
工程iii)が固定床反応器で実施される場合、抽出剤(E)がそこに通される。一般的に、抽出剤(E)は、下から上に向かって、または上から下に向かって反応器に通される。好ましくは、抽出剤(E)は、下から上に向かって反応器に通される。
【0178】
向流反応器が使用される場合、一般的に、ペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)は、連続的に上から反応器に供給されて、下でこの反応器から除去される一方、同時に、下から抽出剤(E)が反応器に導入されて、上で流出する。
【0179】
工程iii)では、ポリアリールエーテルおよび塩(S)の残分を含む塩含有ポリマー(sP)と、抽出剤(E)および塩(S)の一部を含む第一の塩含有抽出剤(sE1)とが得られる。
【0180】
第一の塩含有抽出剤(sE1)は、抽出剤(E)と、ペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)から除去された塩(S)の一部を含む。一般的に、第一の塩含有抽出剤(sE1)は、それぞれ第一の塩含有抽出剤(sE1)の全質量を基準として0.09質量%から18質量%までの塩(S)、好ましくは0.45質量%から9質量%までの塩(S)、とりわけ好ましくは0.9質量%から5質量%までの塩(S)を含む。
【0181】
「塩(S)の残分」とは、本発明によれば、それぞれ塩含有ポリマー(sP)の全質量を基準として0.02質量%から10質量%まで、好ましくは0.1質量%から8質量%まで、とりわけ好ましくは0.2質量%から6質量%までの塩(S)であると理解される。
【0182】
言い換えれば、工程iii)で得られた塩含有ポリマー(sP)は、一般的に、それぞれ塩含有ポリマー(sP)の全質量を基準として0.02質量%から10質量%まで、好ましくは0.1質量%から8質量%まで、とりわけ好ましくは0.2質量%から6質量%までの塩(S)を含む。
【0183】
工程iii)で得られた塩含有ポリマー(sP)が、第一の塩含有ポリマー(s1P)およびペレット化された第一の塩含有ポリマー(gs1P)より少ない塩(S)を含むことは明らかである。
【0184】
第一の塩含有ポリマー(s1P)が、第一の塩含有ポリマー(s1P)の全質量を基準として10質量%未満、好ましくは8質量%未満、とりわけ好ましくは6質量%未満の塩(S)を含む場合、工程i)からiii)までは、一般的に実施されない。
【0185】
第一の塩含有ポリマー(s1P)は、その場合、直接、塩含有ポリマー(sP)として使用される。
【0186】
工程iv)では、工程iii)で得られた塩含有ポリマー(sP)は、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eを上回る、好ましくはポリアリールエーテルのガラス転移温度T
Gを上回る第一温度T
1に加熱される。
【0187】
工程iv)では、塩含有ポリマー(sP)は、一般的に反応器内で加熱される。工程iv)における反応器としては、工程a)に関して上に記載されているのと同じ反応器が好適である。したがって、工程iv)における反応器には、工程a)における反応器の場合と同じ説明および選好が適用される。
【0188】
塩含有ポリマー(sP)の加熱は、当業者に公知のあらゆる方法で行うことができる。
【0189】
塩含有ポリマー(sP)が工程iv)で加熱される第一温度T
1には、工程a)における第一温度T
1に関して上に記載の説明および選好が適用される。
【0190】
工程v)では、工程iv)で加熱された塩含有ポリマー(sP)を抽出剤(E)と接触させる。工程iv)で加熱された塩含有ポリマー(sP)と抽出剤(E)との接触には、工程b)に関する上の記載と同じ説明および選好が適用される。
【0191】
工程v)では、ポリアリールエーテルを含む脱塩されたポリマー(eP)と、抽出剤(E)および塩(S)の残分を含む第二の塩含有抽出剤(sE2)とが得られる。
【0192】
工程v)で得られる第二の塩含有抽出剤(sE2)が、第一の塩含有ポリマー(s1P)が塩含有ポリマー(sP)に等しい場合、工程b)で得られる塩含有抽出剤(sE)に等しいことは明らかである。
【0193】
第二の塩含有抽出剤(sE2)は、本発明の1つの実施形態では、抽出剤(E)として工程iii)で使用することができる。
【0194】
工程b)もしくは工程v)で得られる脱塩されたポリマー(eP)が、第一の塩含有ポリマー(s1P)および塩含有ポリマー(sP)より少ない塩(S)を含むことは明らかである。一般的に、脱塩されたポリマー(eP)は、微量の塩(S)を含む。
【0195】
「微量の塩(S)」とは、本発明によれば、それぞれ脱塩されたポリマー(eP)の全質量を基準として最大で150質量ppmまでの、好ましくは最大で100質量ppmまでの、とりわけ好ましくは最大で80質量ppmまでの、最も好ましくは最大で50質量ppmまでの、脱塩されたポリマー(eP)中の塩含有量であると理解される。
【0196】
一般的に、脱塩されたポリマー(eP)は、それぞれ脱塩されたポリマー(eP)の全質量を基準として0.01質量ppmから150質量ppmまでの塩(S)、好ましくは0.1質量ppmから100質量ppmまでの塩(S)、特に好ましくは1質量ppmから80質量ppmまでの塩(S)、とりわけ5質量ppmから50質量ppmまでの塩(S)を含む。
【0197】
本発明の1つの実施形態では、脱塩されたポリマー(eP)は、それぞれ脱塩されたポリマー(eP)の全質量を基準として最大で150質量ppmまでの、好ましくは最大で100質量ppmまでの、とりわけ好ましくは最大で80質量ppmまでの、最も好ましくは最大で50質量ppmまでの塩(S)を含む。
【0198】
したがって、本発明の対象は、工程b)で得られた脱塩されたポリマー(eP)が、脱塩されたポリマー(eP)の全質量を基準として最大で150質量ppmまでの塩(S)を含む方法でもある。
【0199】
脱塩されたポリマー(eP)中の塩(S)の含有量の下限は、一般的に、0.01質量ppm、好ましくは0.1質量ppm、特に好ましくは1質量ppm、とりわけ好ましくは5質量ppmである。
【0200】
とりわけ好ましい実施形態では、脱塩されたポリマー(eP)は、塩(S)を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、本発明の範囲では、脱塩されたポリマー(eP)が、最大で15質量ppmまでの、好ましくは最大で10質量ppmまでの、とりわけ好ましくは最大で5質量ppmまでの塩(S)を含むことを意味する。
【0201】
工程b)は、本発明の1つの実施形態では繰り返すことができる。ここで、1回繰り返すか、または複数回繰り返すこともできる。同様に、工程iii)および工程v)も1回または複数回繰り返すことができる。
【0202】
脱塩されたポリマー(eP)は、塩含有抽出剤(sE)と当業者に公知の方法によって分離することができる。例えば、沈降によって塩含有抽出剤(sE)と分離することができる。
【0203】
さらに、脱塩されたポリマー(eP)を乾燥することが可能である。乾燥には、根本的に、当業者に公知のあらゆる方法が好適である。例えば、脱塩されたポリマー(eP)は、高められた温度で乾燥することができる。好ましいのは、50℃から160℃までの範囲、特に好ましくは100℃から150℃までの範囲の温度である。乾燥時の温度は、通常、ポリアリールエーテルの軟化温度T
Eを下回っている。乾燥は、場合によって、減圧下に実施することができる。
【0204】
脱塩されたポリマー(eP)の第二の塩含有抽出剤(sE2)との分離には、脱塩されたポリマー(eP)の塩含有抽出剤(sE)との分離に関する前述の説明および選好が適用される。
【0205】
塩含有ポリマー(sP)が溶融重合法で製造されている場合、塩含有ポリマー(sP)ひいては脱塩されたポリマー(eP)も、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、ジフェニルスルホンおよびその混合物からなる群から選択される非プロトン性極性溶媒を含まず、好ましくは脱塩されたポリマー(eP)は、非プロトン性極性溶媒を含まない。
【0206】
したがって、本発明の対象は、0質量ppmから100質量ppmまで、好ましくは0質量ppmから20質量ppmまで、とりわけ好ましくは0質量ppmから10質量ppmまでの、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、ジフェニルスルホンおよびその混合物からなる群から選択される非プロトン性極性溶媒を含み、最も好ましくは非プロトン性極性溶媒を含まない、かつ150質量ppm未満、好ましくは100質量ppm未満、より好ましくは80質量ppm未満、最も好ましくは50質量ppm未満の塩(S)を含む脱塩されたポリマー(eP)でもあり、ここで、質量ppmは、それぞれ脱塩されたポリマー(eP)の全質量を基準としている。
【0207】
したがって、本発明の対象は、本発明による方法によって得られる脱塩されたポリマー(eP)でもある。
【0208】
本発明の対象は、さらに、0質量ppmから100質量ppmまでの、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、ジフェニルスルホンおよびその混合物からなる群から選択される非プロトン性極性溶媒を含み、かつ150質量ppm未満の塩(S)を含む、本発明による方法によって得られる脱塩されたポリマー(eP)であり、ここで、質量ppmは、それぞれ脱塩されたポリマー(eP)の全質量を基準としている。
【0209】
本発明による方法によって得られる脱塩されたポリマー(eP)は、好ましくは、100Pa・sから1000Pa・sまで、好ましくは150Pa・sから300Pa・sまで、とりわけ好ましくは150Pa・sから275Pa・sまでの、350℃/1150s
-1での見掛け溶融粘度を有している。
【0210】
溶融粘度は、毛管粘度計を用いて測定された。ここで、350℃での見掛け粘度は、せん断速度の関数として、長さ30mmの円形毛管、半径0.5mm、ノズルの流入角180°、溶融物の貯蔵容器の直径12mmを有する毛管粘度計(Goettfert Kapillarviskosimeter Rheograph 2003)で、予熱時間5分で測定された。1150s
-1で測定された値が記載されている。
【0211】
本発明による方法によって脱塩されたポリマー(eP)の粘度数は、DIN51562に準拠して、1:1のフェノール/1,2−ジクロロベンゼン混合物中の塩含有ポリマー(sP)の溶液0.01g/mlをウベローデ粘度計によって測定して、一般的に、20ml/gから120ml/gまで、好ましくは30ml/gから100ml/gまで、とりわけ好ましくは35ml/gから95ml/gまでの範囲にある。
【0212】
本発明の対象は、さらに、ガラス転移温度T
Gを有するポリアリールエーテルおよび塩(S)を含む塩含有ポリマー(sP)の脱塩方法であって、以下の工程
a)塩含有ポリマー(sP)を、ポリアリールエーテルのガラス転移温度T
Gを上回る第一温度T
1で準備する工程、
b)工程a)で準備された塩含有ポリマー(sP)を抽出剤(E)と接触させて、ポリアリールエーテルを含む脱塩されたポリマー(eP)と、抽出剤(E)および塩(S)を含む塩含有抽出剤(sE)とを得る工程
を含む脱塩方法である。
【実施例】
【0213】
以下において、本発明を、実施例をもとに詳述するが、本発明はこれに制限されない。
【0214】
実施例:
例1および2
ポリエーテルスルホン(PESU、Ultrason E)を、成分(a1)としてビスフェノールSおよび成分(a2)として4,4’−ジハロゲンジフェニルスルホンから出発して、炭酸塩成分(C)として炭酸カリウムの存在下に溶融重合法で製造した。
【0215】
得られたポリエーテルスルホンをペレット化して、80℃で24時間にわたって水により抽出した。そのようにして得られた塩含有ポリマー(sP)の塩含有率は、塩(S)の最初の濃度の1%未満であった。次に、塩(S)(塩化カリウム)を、得られた塩含有ポリマー(sP)から250℃の温度でオートクレーブにて水により抽出した。それぞれ30gの塩含有ポリマー(sP)を水により抽出した。
【0216】
異なる例とするため、水を異なる時間の後に交換した。例1では、水は、7時間後、23時間後、29時間後および48時間後に交換し、例2では、水は、2時間毎に交換した。
【0217】
例1の抽出時間に応じた、結果として生じた脱塩されたポリマー(eP)の塩含有量は、第1表に示されており、例2の塩含有量は第2表に示されている。同じく、第1表および第2表には、塩(S)を抽出した水の伝導率も示されている。
【0218】
【表1】
【0219】
【表2】