特許第6771485号(P6771485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6771485パターニングされた透明導電膜及びこのようなパターニングされた透明導電膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771485
(24)【登録日】2020年10月1日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】パターニングされた透明導電膜及びこのようなパターニングされた透明導電膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20201012BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20201012BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20201012BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20201012BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   H01B5/14 B
   H01B13/00 503D
   H01B13/00 503B
   B32B27/18 J
   B32B27/30 B
   B32B27/32 Z
【請求項の数】24
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-554275(P2017-554275)
(86)(22)【出願日】2016年4月13日
(65)【公表番号】特表2018-517238(P2018-517238A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】EP2016058101
(87)【国際公開番号】WO2016166148
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2019年4月12日
(31)【優先権主張番号】62/148,241
(32)【優先日】2015年4月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ルーイ レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】カナリアン,ガロ
(72)【発明者】
【氏名】ディーチュ,ハーフェ
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−507199(JP,A)
【文献】 特開2013−073748(JP,A)
【文献】 特表2016−522535(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/019805(WO,A1)
【文献】 特表2017−514264(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/046058(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0078436(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/161500(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0174703(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0106134(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
B32B 27/18
B32B 27/30
B32B 27/32
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターニングされた透明導電膜であって、高導電率を有する領域及び低導電率を有する領域を含み、高導電率を有する領域ではナノ物体が相互接続するようにバインダーマトリックス中に配置されて、これにより高導電率を有する領域が形成され、低導電率を有する領域ではナノ物体は高導電率を有する領域のナノ物体と同じ構造を有し、低導電率を有する領域を形成するために破壊されず、及び絶縁性コーティング材で被覆される、透明導電膜。
【請求項2】
前記絶縁性コーティング材は、絶縁性酸化物、複合絶縁性酸化物及び絶縁性ポリマーからなる群より選択される、請求項1に記載のパターニングされた透明導電膜。
【請求項3】
前記絶縁性酸化物は、SiO、Al、ZrO及びケイ酸ジルコニウムから選択される、請求項2に記載のパターニングされた透明導電膜。
【請求項4】
前記絶縁性ポリマーは、ポリスチレン、ポリエチレン、酸化グラフェン及びフッ素化ポリイミドから選択される、請求項2に記載のパターニングされた透明導電膜。
【請求項5】
記ナノ物体は、ナノワイヤ又はナノチューブである、請求項1に記載のパターニングされた透明導電膜。
【請求項6】
記ナノ物体は、銀、銅、金、白金、パラジウム、ニッケル又は炭素で作られる、請求項1に記載のパターニングされた透明導電膜。
【請求項7】
記ナノ物体は、1〜100nmの範囲の直径、及び1〜500μmの範囲の長さを有する、請求項1に記載のパターニングされた透明導電膜。
【請求項8】
前記ナノ物体は、低導電率を有する領域及び高導電率を有する領域で、実質的に同じ数密度を有する、請求項1に記載のパターニングされた透明導電膜。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のパターニングされた透明導電膜を製造する方法であって、前記透明導電膜は、低導電率を有する領域及び高導電率を有する領域とを含み、該方法は、以下の工程を含む、
(a)前記ナノ物体及びバインダーを含むインクを基材上に施与して第一の層を形成し、ここでのナノ物体の量は、前記第一の層が乾燥後に導電性であるような量であり、
(b)前記第一の層を乾燥させ、
(c)絶縁性コーティング材又は絶縁性コーティング材の前駆体を含む混合物を、前記第一の層の低導電率を有する領域が形成される部分に施与し、ここで前記絶縁
性コーティング材又は前記前駆体は電気伝導性ナノワイヤのまわりに絶縁性被覆を形成し、 (d)被覆した基材を洗浄し、乾燥させる、ことを特徴とするパターニングされた透明導電膜を製造する方法。
【請求項10】
記ナノ物体は、ナノワイヤ又はナノチューブである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
記ナノ物体は、銀、銅、金、白金、パラジウム、ニッケル又は炭素で作られる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
記ナノ物体は、1〜100nmの範囲の直径、及び1〜500μmの範囲の長さを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
記ナノ物体を含む前記インクは、0.01〜0.5質量%の前記ナノ物体を含み、0.02〜2.5質量%のバインダー及び溶媒を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒は、水、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素及び芳香族溶媒からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電気伝導性ナノワイヤ及び前記バインダーを含む前記インクは、スピンコーティング、引き下ろしコーティング、ロールツーロールコーティング、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷及びスロットダイコーティングによって施与される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記電気伝導性ナノワイヤを含む前記インクは、前記第一の層のぬれ膜厚が100nm〜40μmの範囲となるように施与される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
工程(b)における乾燥及び工程(d)における乾燥は、いずれも独立して、20〜200℃の範囲の温度で0.5〜30分間行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記絶縁性コーティング材は、絶縁性酸化物、複合絶縁性酸化物及び絶縁性ポリマーからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記絶縁性酸化物は、SiO、Al、ZrO及びケイ酸ジルコニウムから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記絶縁性ポリマーは、ポリスチレン、ポリエチレン及びフッ素化ポリイミドから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記絶縁性コーティング材はSiOであり、前記絶縁性コーティング材の前駆体はケイ素アルコキシド又は水ガラスである、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記絶縁性コーティング材又は前記絶縁性コーティング材を含む前記混合物中の、前記絶縁性コーティング材又は前記絶縁性コーティング材の前駆体は、濃度が0.01〜0.5mol/lの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
工程(c)において前記絶縁性コーティング材の前駆体を使用する場合、前記前駆体は、ゾル−ゲル法、化学蒸着、物理蒸着又は原子層堆積により前記絶縁性コーティング材に変換されて絶縁性被覆を形成する、請求項9に記載の方法。
【請求項24】
工程(c)における前記混合物を、浸漬、スピンコーティング、引き下ろしコーティング、ロールツーロールコーティング、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷及びスロットダイコーティングによって施与する、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低導電率を有する領域及び高導電率を有する領域を含む、パターニングされた透明導電膜に関する。本発明はさらに、低導電率を有する領域及び高導電率を有する領域を含むこのようなパターニングされた透明導電膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な導電層を含むパターニングされた透明導電膜は、例えば、平らな液晶ディスプレイ、タッチパネル、エレクトロルミネセンス素子、薄膜光電池において、帯電防止層として、及び電磁波遮蔽層として使用される。
【0003】
透明導電層は一般に複合材料であり、光学的に透明な連続固相と、固相全体に延びる導電性ナノ物体の導電性ネットワークを含む。固相は、マトリックスとも呼ばれ、1つ以上の光学的に透明なポリマーから形成される。マトリックスは、層内の導電性ナノ物体を結合し、導電性ナノ物体間の空隙を充填し、層に機械的完全性及び安定性をもたらし、層を基材の表面に結合する。導電性ナノ物体の導電ネットワークは、層内で隣接し重なり合う導電性ナノ物体の間に電流が流れることを可能にする。ナノ物体は寸法が小さいため、複合体の光学的挙動に対するそれらの影響は極めて小さく、従って、光学的に透明な複合体、すなわち、ASTM D 1003に準拠して測定して、可視領域(400〜700nm)で80%以上の光透過率を有する複合体の形成が可能となる。
【0004】
透明導電層及びその製造方法は、例えばWO−A2013/095971に開示されている。透明電気伝導体を製造するために、電気伝導層が透明基材上に配置される。電気伝導層は、複数の相互接続する金属製ナノワイヤと高分子オーバーコート層とを含む。電気伝導層ではパターンが形成され、このパターンは、電気絶縁性トレースによって分離された高導電率を有する領域を含む。トレースは、レーザーの照射によって生成され、電気伝導層の材料物質が除去される。従って、トレースは電気伝導層に谷部として形成される。谷部は、10〜100nmの範囲の深さと、10〜1000μmの範囲の断面幅を有する。谷部はさらに、50〜100nmの範囲の深さを有する複数の割れ目を含む。
【0005】
ポリマーマトリックス及び導電性ナノワイヤを含むさらなる透明導電層が、US−A2007/0074316又はUS−B8018568に開示されている。導電率のより高い領域では、ナノワイヤは相互接続する。導電率のより低い領域は、エッチング、又は光硬化性マトリックス材料を用いた光パターニングによって形成される。
【0006】
これらの従来技術では、金属製ナノワイヤは、パターニングされた領域において完全に又は部分的に除去される。従って、パターンが見えることがある。WO−A2013/095971に開示された方法の欠点は、ナノワイヤの金属が気化し、レーザー照射された場所の縁に再堆積し、数十ミクロンの大きさで高反射率のドット又は円を形成することである。従って、照射領域でヘーズ、透明度及び反射率に著しい変化が生じることがあり、パターンもまた見えることがある。
【0007】
C.Grafら、A General Method To Coat Colloidal Particles with Silica、Langmuir、2003年、第19巻、6693〜6700ページ、又は、Y.Yinら、Silver Nanowires Can Be Directly Coated with Amorphous Silica To Generate Well−Controlled coaxial Nanocables of Silver/Silica、Nano Letters、2002年、第2巻、No.4、427〜430ページから、ナノワイヤ又はナノ粒子をシリカで被覆することが知られている。しかし、これらの方法は、ポリマーマトリックスに埋め込まれていないナノ物体に使用されるのみである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO−A2013/095971
【特許文献2】US−A2007/0074316
【特許文献3】US−B8,018,568
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】C.Grafら、A General Method To Coat Colloidal Particles with Silica、Langmuir、2003年、第19巻、6693〜6700ページ
【非特許文献2】Y.Yinら、Silver Nanowires Can Be Directly Coated with Amorphous Silica To Generate Well−Controlled coaxial Nanocables of Silver/Silica、Nano Letters、2002年、第2巻、No.4、427〜430ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、パターンが見えず、パターニングされた領域においてナノ物体が除去されない透明導電層を提供することである。本発明のさらなる目的は、このような透明導電層を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、高導電率を有する領域及び低導電率を有する領域を含むパターニングされた透明導電膜によって達成される。高導電率を有する領域では、ナノ物体が相互接続するようにバインダーマトリックス中に配置され、これにより高導電率を有する領域が形成される。低導電率を有する領域では、ナノ物体は構造的に損なわれておらず、絶縁性のコーティング材で被覆される。
【0012】
さらなる目的は、高導電率を有する領域及び低導電率を有する領域を含む、このようなパターニングされた透明導電膜を製造する方法によって達成される。この方法は以下の工程を含む。
【0013】
(a)電気伝導性ナノ物体及びバインダーを含むインクを基材上に施与して第一の層を形成する。ここでの導電性ナノ物体の量は、前記第一の層が乾燥後に導電性であるような量である。
(b)前記第一の層を乾燥させる。
(c)絶縁性コーティング材又は絶縁性コーティング材の前駆体を含む混合物を、第一の層の低導電率を有する領域が形成される部分に施与する。ここで、絶縁性コーティング材又は前駆体は電気伝導性ナノワイヤの周りに絶縁性被覆を形成する。
(d)被覆した基材を洗浄し、乾燥させる。
【0014】
絶縁性コーティング材又はその前駆体を含む混合物を施与することにより、乾燥させた第一の層中のナノ物体を被覆することが可能である。この被覆によって、ナノ物体は絶縁され、ナノ物体間の電子輸送は低減するか、又は好ましくは停止する。被覆後、ナノ物体は構造的に損なわれていないままである。さらに、ナノ物体の数密度は、高導電率を有する領域及び低導電率を有する領域で実質的に同じである。従って、パターニングされた透明導電膜の光学特性は大きく変化せず、パターンは見えない。
【0015】
「構造的に損なわれていない(構造的に変化していない)」とは、低導電率を有する領域のナノ物体が、高導電率を有する領域のナノ物体と同じ構造を有し、低導電率を有する領域を形成するために破壊されないことを意味する。
【0016】
パターニングされた透明導電膜が施与された基材も、一般に光学的に透明である。基材は、好ましくはガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンポリマー、ポリイミド、熱可塑性ポリウレタン又はポリメチルメタクリレートから作られる。
【0017】
高導電率を有する領域及び低導電率を有する領域は、そのシート抵抗によって定義される。シート抵抗とは、すなわち厚さが均一なシートの抵抗の尺度である。「シート抵抗」という用語は、電流がシートの平面に沿っており、シートに対して垂直ではないことを意味する。厚さt、長さL及び幅Wを有するシートについて、抵抗Rは、以下の式で表わされる。
【0018】
【数1】
【0019】
ここで、Rshは、シート抵抗である。よって、シート抵抗Rshは、以下の式で表わされる。
【0020】
【数2】
【0021】
上記の式において、体積抵抗Rに無次元量(W/L)をかけてシート抵抗Rshを求めると、シート抵抗の単位はOhmとなる。体積抵抗Rとの混同を避けるために、シート抵抗の値は、一般に「オームパースクエア(Ω/□)」として示される。これは、正方形のシートという特定の場合に、W=L及びRsh=Rが適用されるためである。シート抵抗は、例えば四探針プローブを用いて測定する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好ましい実施形態では、低導電率を有する領域及び高導電率を有する領域のシート抵抗の比は、1000より大きい。特に好ましい実施形態では、低導電率を有する領域及び高導電率を有する領域のシート抵抗の比は、10000より大きい。低導電率を有する領域のシート抵抗は、好ましくは、100,000オームパースクエア(OPS)より大きく、より好ましくは1,000,000OPSより大きく、特に10,000,000OPSより大きい。高導電率を有する領域のシート抵抗は、好ましくは1000OPSより小さく、より好ましくは5から500OPSの範囲で、特に10から100OPSの範囲である。
【0023】
不可視のパターニングされた透明導電膜を達成するために、低導電率を有する領域と高導電率を有する領域の光透過率の差は、好ましくは5%未満である。特に好ましくは、低導電率を有する領域及び高導電率を有する領域の光透過率の差は、0.5%未満である。光透過率は、媒体を透過する入射光の百分率を指す。本発明による高導電率を有する領域の光透過率は、ASTM D 1003(手順A)に従って測定して、少なくとも80%である。より好ましくは、光透過率はASTM D 1003(手順A)に従って測定して、少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%である。
【0024】
低導電率を有する領域及び高導電率を有する領域のヘーズの差は、好ましくは0.5%未満である。特に好ましくは、ヘーズの差は0.1%未満である。透明導電層の高導電率を有する領域のヘーズは、いずれもASTM D 1003(手順A)に従って測定して、好ましくは2%以下、より好ましくは1.8%以下、さらに好ましくは1.5%以下、また特に好ましくは1.2%である。
【0025】
ヘーズメーターを用いたヘーズ及び光透過率(ASTM D 1003において、入射光束に対する本体を透過した光束の比である視感透過率に相当する)の測定は、ASTM D 1003の「手順A−ヘーズメーター」で定義される。本発明との関連において得られるヘーズ及び光透過率(ASTM D 1003で定義される光透過率に対応する)の値は、この手順を参照する。
【0026】
一般に、ヘーズは光拡散の指標である。ヘーズは、入射光から分離され、透過中に散乱する光の量の百分率を指す。これは、典型的には、表面の粗さ、及び媒体中の埋め込まれた粒子又は組成の不均質によって引き起こされる。
【0027】
ASTM D 1003によると、透過において、ヘーズは試料による光の散乱である(試料は、その試料を通して観察される対象物のコントラストの低下を引き起こす)。すなわち、入射ビームの方向から所定の角度(2.5°)を超えて逸脱した方向に散乱する透過光の割合である。
【0028】
本発明に関するナノ物体は、1種、2種又は3種の外形寸法のナノスケール、すなわち、約1nm〜100nmの範囲の大きさを有する物体である。本発明に使用される電気伝導性ナノ物体は、1nm〜100nmの範囲で2種の外形寸法と、1μm〜100μmの範囲で第3の外形寸法を有する電気伝導性ナノ物体である。典型的には、1nm〜100nmの範囲にある前述の2種の外形寸法は類似している。すなわち、大きさの差は3倍未満である。電気伝導性ナノ物体の第3の寸法は、さらに著しく大きい。すなわち、他の2つの外形寸法と3倍以上異なる。このようなナノ物体はまた、ナノファイバと呼ばれる。
【0029】
本発明で使用される電気伝導性ナノ物体は、好ましくはナノワイヤ又はナノチューブである。ナノワイヤは電気伝導性ナノ繊維であり、ナノチューブは中空のナノ繊維である。
【0030】
本発明に用いられる電気伝導性ナノ物体は、典型的には、円形に近い断面を有する。前記断面は、1μm〜500μmの範囲の前記外形寸法に対して垂直に延びる。従って、ナノスケールの前記2種の外形寸法は、前記円形断面の直径によって定義される。前記直径に対して垂直に延びる前記第3の外形寸法は、長さと呼ばれる。
【0031】
好ましくは、電気伝導性ナノ物体は、長さを1μm〜500μm、より好ましくは3μm〜100μm、また特に好ましくは10μm〜50μmの範囲で有する。電気伝導性ナノ物体の直径は、好ましくは1nm〜100nm、より好ましくは2nm〜50nm、特に好ましくは3nm〜30nmの範囲にある。
【0032】
十分な電気伝導性を提供するために、電気伝導性ナノ物体は金属又は炭素で作られる。好ましくは、電気伝導性ナノ物体は、銀、銅、金、白金、パラジウム、ニッケル又は炭素で作られる。電気伝導性ナノ物体が金属で、好ましくは銀、銅、金、白金、パラジウム又はニッケルで作られる場合、ナノ物体は好ましくはナノワイヤである。電気伝導性ナノ物体が炭素で作られる場合、ナノ物体は好ましくはナノチューブである。特に好ましくは、ナノ物体は、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ又は銅ナノワイヤ、特に銀ナノワイヤである。
【0033】
透明導電層で高導電率を有する領域では、ナノ物体が相互接続する。ナノ物体の量は、相互接続するナノ物体が接触するような量である。ナノ物体が接触しているため、高導電率を有する領域では、電流が流れることができる。
【0034】
金属製のナノワイヤ、例えば銀ナノワイヤは、典型的には水中分散液の形態で市販されているが、ここにおいて、ポリビニルピロリドンがナノワイヤの表面上に吸着し、分散を安定させる。ナノワイヤの表面上に吸着したいずれの物質も、電気伝導性ナノ物体の上記寸法及び組成に含まれない。
【0035】
導電性である第一の層の達成には、第一の層を形成するために工程(a)で施与する電気伝導性ナノ物体を含むインクは、好ましくは0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%の電気伝導性ナノ物体を含み、0.02〜5質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%のバインダー及び溶媒を含む。
【0036】
インクに含まれるバインダーは、乾燥によって第一の層のマトリックスを形成する。基材に施与することができるインクを提供するために、溶媒は、バインダーが溶媒中に可溶であるか、又は粒子又は繊維として溶媒中に分散できるように選択される。ナノワイヤは不溶性なので、溶解又は分散したバインダーを含む溶媒中に分散する。バインダーは、好ましくは、ヒドロプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、スチレン(メタ)アクリルコポリマー、結晶セルロース、ポリ(メタ)アクリレート、アクリレートとメタクリレートのコポリマー、スチレンと(メタ)アクリレートのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸、デキストラン又はそれらの配合物である。
【0037】
溶媒は好ましくは水である。しかしながら、水に不溶であるか、又は粒子又は繊維として水中に分散することができないバインダーとしてポリマーを使用する場合、溶媒は好ましくは有機溶媒である。好ましくは、溶媒は、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素及び芳香族溶媒からなる群より選択される。適切な芳香族溶媒は、例えばベンゼン、トルエン又はキシレンである。しかしながら、バインダーは水溶性ポリマーから選択され、溶媒は水であることが特に好ましい。場合によっては、溶媒は、2種以上の混和性溶媒の混合物、例えば、水とイソプロパノールの混合物であることができる。
【0038】
基材上にインクを施与するために、あらゆる適切な印刷方法を使用することができる。好ましい実施形態では、導電性ナノワイヤ及びバインダーを含むインクは、スピンコーティング、引き下ろしコーティング(draw down coating)、ロールツーロールコーティング(roll-to-roll coating)、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷及びスロットダイコーティングによって施与される。
【0039】
好ましくは、インクは基材の表面に、1μm〜200μm、好ましくは2μm〜60μmの範囲の厚さで施与される。厚さは「ぬれ膜厚(wet thickness)」とも呼ばれ、乾燥によってインクの液体成分を除去する前の状態に関連する。所与の目標厚さ(上述のように組成物の液体成分除去後の厚さ)と、これに従った所与の目標シート抵抗及び作製する電気伝導層の光透過率において、インクの組成物に含まれる固体成分の濃度が低いほど、ぬれ膜厚が増す。特に低いぬれ膜厚を使用する必要がない場合には、インクを施与する工程が容易になる。
【0040】
基材にインクを施与した後、インクを施与して形成した層を乾燥させ、溶媒を除去し、固体層を得る。乾燥によってインクから形成される固体層は、好ましくは10nm〜1000nm、好ましくは50nm〜500nmの範囲の厚さを有する。
【0041】
第一の層の乾燥は、好ましくは20〜200℃の範囲の温度で、0.5〜30分間行う。特に好ましくは、乾燥は100〜150℃の範囲の温度で行う。乾燥工程の持続時間は、特に好ましくは1〜15分の範囲である。
【0042】
乾燥工程を行う温度は、使用する溶媒や、ナノワイヤの融点及び被覆方法に依存する。銀ナノワイヤについては、上限は約200℃である。容易に蒸発する溶媒を使用する場合、より低い温度、例えば周囲温度を使用することができる。一方、溶媒が低温で蒸発しないか、溶媒が少量しか蒸発しない場合には、層を乾燥させるためにより高い温度を使用しなければならない。乾燥工程を加速するために、乾燥は、好ましくは少なくとも100℃より高い温度で行う。しかし、グラビア印刷、フレキソ印刷及びスロットダイコーティングのようなロールツーロールコーティングによりインクを基材に施与する場合、層の乾燥は周囲条件で行ってよい。
【0043】
乾燥工程の持続時間は、乾燥温度に依存する。この持続時間は、乾燥工程の終了時に、インク中の残留水分の含有量が規定値以下になるように選択される。所望の残留水分含有量を達成するために、蒸発の持続時間は、同じ溶媒であっても、溶媒の温度が低下するにつれて増加する。
【0044】
水が溶媒として使用される場合、一般に乾燥は100〜150℃の範囲の温度で1〜15分間行う。ロールツーロールコーティング等の場合には、乾燥は周囲温度で行うこともできる。
【0045】
乾燥を行う雰囲気は、好ましくは、雰囲気及びインクのあらゆる成分間で化学反応が起こらないように選択される。第一の層の乾燥を行う雰囲気は、好ましくは、空気、窒素又は希ガス、例えばアルゴンを含む。空気又は窒素が特に好ましい。
【0046】
典型的には、パターンは、低導電率を有する線と、低導電率を有する線で囲まれた高導電率を有する領域とを含む。低導電率を有する線の幅は、好ましくは10〜1000μm、特に50〜500μmの範囲である。
【0047】
低導電率を有する領域と高導電率を有する領域とを含むパターニングされた導電膜を形成するために、絶縁性コーティング材又は絶縁性コーティング材の前駆体を含む混合物が第一の層上に施与される。絶縁性コーティング材は第一の層に浸透し、電気伝導性ナノ物体の周りに絶縁性被覆を形成する。これにより、導電率の低い領域が形成される。
【0048】
従って、絶縁性コーティング材は、好ましくは、絶縁性酸化物及び絶縁性ポリマーからなる群より選択される。前駆体が使用される場合、前駆体は、第一の層に浸透し、絶縁性コーティング材料に変換され、電気伝導性ナノ物体を封入するように選択される。前駆体の変換が化学反応の結果である場合、前駆体を含む混合物は、絶縁性被覆を形成するための化学反応を起こすのに必要な全ての成分をさらに含む。
【0049】
適切な絶縁性酸化物は、例えば、SiO、Al、ZrO及びケイ酸ジルコニウムである。適切な絶縁性ポリマーは、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、酸化グラフェン及びフッ素化ポリイミドである。絶縁性酸化物として特に好ましいのは、SiOである。
【0050】
SiOを絶縁性コーティング剤として使用する場合、工程(c)において、SiOの前駆体を含む混合物が施与される。SiOの絶縁性被膜を形成する適切な前駆体は、例えばケイ素アルコキシド又は水ガラスである。前駆体として特に好ましいものは、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)である。
【0051】
第一の層上に施与することができ、電気伝導性ナノ物体の周りに絶縁性被覆を形成する混合物を達成するために、前駆体としてのケイ素アルコキシドの場合、前駆体を水酸化アンモニウム又はフッ化アンモニウムのような触媒と、水及び第二の溶媒(ケイ素アルコキシド及び水の両方と混和する)を含んだ混合溶媒と混合する。適切な第二の溶媒は、例えばアルコール又はアセトン、好ましくはイソプロピルアルコールである。
【0052】
第一の層上に施与することができ、電気伝導性ナノ物体の周りに絶縁性被覆を形成する混合物を達成するために、前駆体としての水ガラスの場合、前駆体を水及び塩酸のような酸性触媒と混合する。
【0053】
好ましい実施形態では、絶縁性コーティング材又は絶縁性コーティング材の前駆体を含む混合物中の、絶縁性コーティング材又は絶縁性コーティング材の前駆体は、濃度が0.01〜1mol/lの範囲である。特に好ましくは、絶縁性コーティング材又は絶縁性コーティング材の前駆体の濃度は、0.05〜0.5mol/lの範囲である。
【0054】
工程(c)において絶縁性コーティング材の前駆体を使用する場合、ゾル−ゲル法、化学蒸着、物理蒸着又は原子層堆積により、前駆体を絶縁性コーティング材に変換することで、電気伝導性ナノ物体上の絶縁性被覆が形成される。特に、前駆体がTEOS又は水ガラスである場合、前駆体は、ゾル−ゲル法によって絶縁性コーティング材に変換される。
【0055】
絶縁性コーティング材又は絶縁性コーティング材の前駆体を含む混合物を施与するために、あらゆる適切な印刷方法又は被覆方法を使用することができる。適切な被覆方法は、例えば、浸漬、スピンコーティング、引き下ろしコーティング、ロールツーロールコーティング、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷及びスロットダイコーティングである。浸漬の場合、マスクを使用してパターンを定義し、絶縁性コーティング材で被覆されない領域を保護することができる。
【0056】
絶縁性コーティング材又は絶縁性コーティング材の前駆体を含む混合物の施与後、絶縁性コーティング材が第一の層に浸透してナノ物体を被覆するように、被覆方法に応じて、接触時間を設けることが好ましい。絶縁性コーティング材の前駆体との混合物を施与し、ゾル−ゲル法によって絶縁性コーティング材を処理する場合には、接触時間を0.5分〜1時間、好ましくは1分〜30分、特に1分〜10分設けることが好ましい。
【0057】
絶縁性コーティング材又は絶縁性コーティング材の前駆体を含む混合物の施与及び接触時間後、必要な場合は、被覆された基材を洗浄し、工程(d)で乾燥させる。洗浄溶媒は、ゾル−ゲル法で使用される溶媒であることが好ましい。この乾燥工程の乾燥パラメータは、工程(b)における最初の乾燥工程の乾燥パラメータに相当することが好ましい。つまり、乾燥は好ましくは20〜200℃の範囲の温度で0.5〜30分間行うという意味である。特に好ましくは、乾燥は100〜150℃の範囲の温度で行う。乾燥工程の持続時間は、特に好ましくは1〜15分の範囲である。
【実施例】
【0058】
製造例1:ガラス基材上の銀ナノワイヤ膜の作製
35質量%の固形分を有するスチレンアクリルコポリマー水溶液(例えばBASF SEによるJoncryl(登録商標)60として入手可能)を、水中で20質量%の濃度に希釈する。2−エチルヘキシルアクリレートメチルメタクリレートのコポリマー(BASF SEによるAcronal(登録商標)LR9014として入手可能)を、水中で10質量%の濃度に希釈する。銀ナノワイヤーの0.5質量%水中分散液、スチレンアクリルコポリマーの水中希釈液及び2−エチルヘキシルアクリレートメチルメタクリレートのコポリマーの希釈液を水中で混合し、銀ナノワイヤの最終濃度を0.4質量%とし、スチレンアクリルコポリマー、2−エチルヘキシルアクリレートメチルメタクリレートのコポリマーと、ナノワイヤの質量比をそれぞれ4:3:3とする。混合物を、ガラス基材上に1000rpm、30秒間でスピンコーティングし、135℃で5分間乾燥させる。シート抵抗を、四探針プローブステーション(Lucas lab pro−4)を用いて測定し、光学特性をBYKヘイズガードプラスを用いて測定する。
【0059】
製造例2:ポリカーボネート基材上の銀ナノワイヤ膜の作製
35質量%の固形分を有するスチレンアクリルコポリマー水溶液(例えばBASF SEによるJoncryl(登録商標)60として入手可能)を、水中で20質量%の濃度に希釈する。2−エチルヘキシルアクリレートメチルメタクリレートのコポリマー(BASF SEによるAcronal(登録商標)LR9014として入手可能)を、水中で10質量%の濃度に希釈する。銀ナノワイヤーの0.5質量%水中分散液、スチレンアクリルコポリマーの水中希釈液及び2−エチルヘキシルアクリレートメチルメタクリレートのコポリマーの希釈液を水中で混合し、銀ナノワイヤの最終濃度を0.4質量%とし、スチレンアクリルコポリマー、2−エチルヘキシルアクリレートメチルメタクリレートのコポリマーと、ナノワイヤの質量比をそれぞれ4:3:3とする。混合物を、3分間ボールミルにかけ、均質化を達成する。導電膜を光学ポリカーボネート箔上に印刷する。例えば、市販されているBayer Material Scienceからの製品仕様Makrofol(登録商標)DE1−1(175μm)に、ぬれ膜厚6μmの引き下ろしバーを使用して5cm/秒の被覆スピードで印刷し、その後135℃で5分間乾燥させる。シート抵抗及び光学特性は、製造例1と同様に測定した。
【0060】
製造例3:ガラス基材上の銀ナノワイヤ膜の作製
銀ナノワイヤの最終濃度が0.2wt%となるよう、銀ナノワイヤ量が0.5質量%の銀ナノワイヤ水中分散液と、1質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の水溶液を水中で混合し、HPMCと銀ナノワイヤの質量比をそれぞれ2:1とする。混合物を、ガラス基材上に1000rpm、30秒間でスピンコーティングし、135℃で5分間乾燥させる。シート抵抗を、四探針プローブステーション(Lucas lap pro−4)を用いて測定し、光学特性をBYKヘイズガードプラスを用いて測定する。
【0061】
実施例1、2及び3:ガラス基材上のSiO被覆銀ナノワイヤ膜
連続的な磁気撹拌下で、0.4mlの28%アンモニア水溶液及び様々な量のテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を、イソプロピルアルコール20mlと水4mlの混合物に連続的に添加した。製造例1に従って製造したガラス基材上の銀ナノワイヤ膜を、この溶液に一定時間浸漬してナノワイヤ上にSiO被覆を形成し、脱イオン水で洗浄して、135℃で5分間乾燥させる。SiOで被覆する前後のシート抵抗と光学特性を製造例1のように測定する。結果を表1に示す。実施例1及び2は、同量のTEOSを用いた異なる浸漬時間の結果を示し、実施例3は、TEOSを含まない比較例である。表1において、「Rsh」はシート抵抗を意味し、「T」は透過率を意味し、「H」はヘーズを意味する。「前」は、SiOで被覆する前のシルバーナノワイヤ膜で被覆した基材の測定を示し、「後」はSiOで被覆した後の測定を示す。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例より、同じ濃度のTEOSで浸漬時間が長いと、被覆された膜にはるかに高いシート抵抗がもたらされることがわかる。一方、TEOSを含まないアンモニア溶液中への浸漬は、シート抵抗の差を示さない。さらに、SiOによる被覆は、パターニングされた導電膜の透過率に何ら影響を及ぼさず、ヘーズはわずかに低い値に過ぎない。
【0064】
実施例4、5:ポリカーボネート基材上のSiO被覆銀ナノワイヤ膜
連続的な磁気撹拌下で、0.4mlの28%アンモニア水溶液及び様々な量のテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を、イソプロピルアルコール20mlと水4mlの混合物に連続的に添加した。製造例2に従って製造したポリカーボネート基材上の銀ナノワイヤ膜の細片の両端に、速乾性の銀ペーストを接触パッドとして施与した。細片の中央領域を30分間溶液中に浸漬し、脱イオン水で洗浄して、135℃で5分間乾燥させる。SiOで被覆する前後の2つの銀接触パッド間の抵抗を、Keithleyのソースメーターを用いて測定する。結果を表2に示す。実施例5は比較例である。表1のように、「Rsh」はシート抵抗を意味し、「前」及び「後」は、TEOS含有溶液で被覆する前後の測定を示す。
【0065】
この例では、SiO被覆領域の外側に銀接触パッドを配置して、SiO被覆領域を横切る電子流が停止するかどうかを示している。
【0066】
【表2】
【0067】
実施例6:ガラス基材上のSiO被覆銀ナノワイヤ膜
連続的な磁気撹拌下で、0.4mlの28%アンモニア水溶液及び様々な量のテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を、イソプロピルアルコール20mlと水4mlの混合物に連続的に添加した。製造例3に従って製造したガラス基材上の銀ナノワイヤ膜を、この溶液に30分間浸漬してナノワイヤ上にSiO被覆を形成し、脱イオン水で洗浄して、135℃で5分間乾燥させる。SiOで被覆する前後のシート抵抗と光学特性を製造例6のように測定する。結果を表3に示す。表3において、「Rsh」はシート抵抗を意味し、「T」は透過率を意味し、「H」はヘーズを意味する。「前」は、SiOで被覆する前のシルバーナノワイヤ膜で被覆した基材の測定を示し、「後」はSiOで被覆した後の測定を示す。
【0068】
【表3】