(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロールイン用油脂組成物X中の油脂は、飽和脂肪酸(S)が結合したSSS型トリグリセリドと不飽和脂肪酸(U)が結合したUUU型トリグリセリドとを合計で15〜45質量%含有し、かつ、該SSS型トリグリセリドを該UUU型トリグリセリドよりも少なく含有し、
前記ロールイン用油脂組成物Y中の油脂は、該SSS型トリグリセリドと該UUU型トリグリセリドとを合計で15〜45質量%含有し、かつ、該SSS型トリグリセリドを該UUU型トリグリセリドよりも多く含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の成型済み積層状生地。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔成型済み積層状生地〕
本発明の成型済み積層状生地は、少なくとも2種類の異なる積層状生地(積層状生地A及び積層状生地B)を重ね合わせた生地を、焼成直前の形状に成型した生地である。ここで、積層状生地とは、穀粉層と油脂層とが交互に積層した生地のことである。
また、本発明の成型済み積層状生地は、前記積層状生地Bが前記積層状生地Aよりも外側に配置される。具体的には、積層状生地Aと積層状生地Bとを重ね合わせた生地を、積層状生地Bの面が外側になるように丸めて成型したり、積層状生地Bの面が外側になるように折り込んだり、ねじって成型したり、積層状生地Aを2枚の積層状生地Bで挟んで重ね合わせた生地を型抜きして成型した生地が例示される。
【0009】
〔積層状生地A〕
本発明で使用する積層状生地Aは、本発明で使用するロールイン用油脂組成物Xを含有する。具体的には、ロールイン用油脂組成物Xの層と穀粉層とが交互に積層した生地であり、該穀粉層は、通常、製菓や製パンで使用される穀粉生地であれば特に限定されない。
また、前記積層状生地A中の穀粉100質量部に対するロールイン用油脂組成物Xの配合量は、35〜65質量部であることが好ましく、40〜60質量部であることがより好ましい。ロールイン用油脂組成物Xの配合量が上記の範囲にあると、本発明の成型済み積層状生地を焼成して得られたペストリー食品は、生地浮きが良好になる。
【0010】
〔ロールイン用油脂組成物X〕
本発明で使用するロールイン用油脂組成物Xは、該油脂組成物X中の油脂の25℃におけるSFCが15%未満であり、6〜13%が好ましく、8〜12%がより好ましい。SFCが前記の範囲にあると、本発明の成型済み積層状生地を焼成して得られたペストリー食品は、その内側がしっとりとした食感になる。
また、該油脂組成物X中の油脂は、15℃におけるSFCと35℃のSFCとの差が、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましい。SFCの差が前記の範囲にあると、本発明の成型済み積層状生地を焼成して得られたペストリー食品は、口溶けの良い食感になる。
【0011】
本発明で使用するロールイン用油脂組成物X中の油脂は、25℃におけるSFCが上記の範囲を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等や、これらの油脂をエステル交換、分別、水素添加等の加工処理した油脂等が挙げられる。
【0012】
本発明で使用するロールイン用油脂組成物X中の油脂は、全油脂中の飽和脂肪酸(S)が3分子結合しているSSS型トリグリセリド(以下、SSSと略す。)の含有量が、全油脂中の不飽和脂肪酸(U)が3分子結合しているUUU型トリグリセリド(以下、UUUと略す。)の含有量より少なく、かつ、SSSとUUUとを合計で15〜45質量%含有することが好ましい。SSSとUUUとの合計含有量は、20〜40質量%含有することがより好ましく、25〜35質量%含有することが最も好ましい。SSSとUUUの含有量比、及びSSSとUUUとの合計含有量が上記の範囲にあると、本発明の成型済み積層状生地を焼成して得られたペストリー食品は、その内側がしっとりとした食感になる。
【0013】
また、本発明で使用するロールイン用油脂組成物X中の油脂は、全油脂中の飽和脂肪酸(S)が2分子、不飽和脂肪酸(U)が1分子結合しているS2U型トリグリセリド(以下、S2Uと略す。)と全油脂中の飽和脂肪酸(S)が1分子、不飽和脂肪酸(U)が2分子結合しているSU2型トリグリセリド(以下、SU2と略す。)とを、合計で55〜85質量%含有することが好ましく、60〜80質量%含有することがより好ましく、65〜75質量%含有することが最も好ましい。S2UとSU2との合計含有量が上記の範囲にあると、本発明の成型済み積層状生地を焼成して得られたペストリー食品は、口溶けの良い食感になる。
【0014】
なお、前記Sは、好ましくは炭素数が16〜22の直鎖飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数が16〜18の直鎖飽和脂肪酸である。また、前記Uは、好ましくは炭素数が16〜22の直鎖不飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数が16〜18の直鎖不飽和脂肪酸である。
【0015】
本発明で使用するロールイン用油脂組成物X中の油脂の含量は、30〜100質量%、好ましくは45〜90質量%、より好ましくは50〜80質量%である。
【0016】
本発明で使用するロールイン用油脂組成物Xは、水を含有しないショートニングタイプであってもよく、水との乳化物であるマーガリンタイプであってもよいが、マーガリンタイプであることが好ましい。なお、マーガリンタイプとして用いられる場合、その乳化形態は、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれであってもよいが、油中水型であることが好ましい。
【0017】
また、本発明で使用するロールイン用油脂組成物Xは、上記油脂と水以外の、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、乳化剤、増粘安定剤、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β‐カロテン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵及び各種卵加工品、香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、ココアマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0018】
上記乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、縮合リシノレイン脂肪酸エステル、グリセリドエステル等の合成乳化剤や、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の合成乳化剤でない乳化剤が挙げられる。
【0019】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられる。
【0020】
〔積層状生地B〕
本発明で使用する積層状生地Bは、本発明で使用するロールイン用油脂組成物Yを含有する。具体的には、ロールイン用油脂組成物Yの層と穀粉層とが交互に積層した生地であり、該穀粉層は、通常、製菓や製パンで使用される穀粉生地であれば特に限定されない。
また、前記積層状生地B中の穀粉100質量部に対するロールイン用油脂組成物Yの配合量は、35〜65質量部であることが好ましく、40〜60質量部であることがより好ましい。ロールイン用油脂組成物Xの配合量が上記の範囲にあると、本発明の成型済み積層状生地を焼成して得られたペストリー食品は、生地浮きが良好になる。
【0021】
〔ロールイン用油脂組成物Y〕
本発明で使用するロールイン用油脂組成物Yは、該油脂組成物Y中の油脂の25℃におけるSFCが15%以上であり、16〜25%が好ましく、17〜22%がより好ましい。SFCが前記の範囲にあると、本発明の成型済み積層状生地を焼成して得られたペストリー食品は、その外側がサクサクした食感(クリスピー)になる。
また、該油脂組成物Y中の油脂は、15℃におけるSFCと35℃のSFCとの差が、10%以下であることが好ましく、15%以上であることがより好ましい。SFCの差が前記の範囲にあると、本発明の成型済み積層状生地を焼成して得られたペストリー食品は、口溶けの良い食感になる。
【0022】
また、本発明で使用するロールイン用油脂組成物Y中の油脂は、乳脂を含有してもよい。ここで乳脂とは牛乳に由来する脂であり、具体的には、バター、バターオイル、調整乳脂等や、それらを、分別、硬化、エステル交換等をしたものが挙げられる。前記ロールイン用油脂組成物Y中の油脂に乳脂を含有することで、本発明の成型済み積層状生地を焼成して得られるペストリー食品は、バターの風味に優れたペストリー食品になる。
本発明で使用するロールイン用油脂組成物Yに含まれる油脂中の乳脂の含有量は、5〜25質量%が好ましく、7〜20質量%がより好ましく、8〜15質量%が最も好ましい。乳脂の含有量が少なすぎると、バターの風味が乏しくなる場合がある。また乳脂の含有量が多くなると、コストが高くなる場合がある。
【0023】
本発明で使用するロールイン用油脂組成物Y中の油脂は、25℃におけるSFCが上記の範囲を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等や、これらの油脂をエステル交換、分別、水素添加等の加工処理した油脂等が挙げられる。
【0024】
本発明で使用するロールイン用油脂組成物Y中の油脂は、全油脂中の飽和脂肪酸(S)が3分子結合しているSSS型トリグリセリド(以下、SSSと略す。)の含有量が、全油脂中の不飽和脂肪酸(U)が3分子結合しているUUU型トリグリセリド(以下、UUUと略す。)の含有量より多く、かつ、SSSとUUUとを合計で15〜45質量%含有することが好ましい。SSSとUUUとの合計含有量は、20〜40質量%含有することがより好ましく、25〜35質量%含有することが最も好ましい。SSSとUUUの含有量比、及びSSSとUUUとの合計含有量が上記の範囲にあると、本発明の成型済み積層状生地を焼成して得られたペストリー食品は、その外側がサクサクした食感になる。
【0025】
また、本発明で使用するロールイン用油脂組成物Y中の油脂は、全油脂中の飽和脂肪酸(S)が2分子、不飽和脂肪酸(U)が1分子結合しているS2U型トリグリセリド(以下、S2Uと略す。)と全油脂中の飽和脂肪酸(S)が1分子、不飽和脂肪酸(U)が2分子結合しているSU2型トリグリセリド(以下、SU2と略す。)とを、合計で55〜85質量%含有することが好ましく、60〜80質量%含有することがより好ましく、65〜75質量%含有することが最も好ましい。S2UとSU2との合計含有量が上記の範囲にあると、本発明の成型済み積層状生地を焼成して得られたペストリー食品は、口溶けの良い食感になる。
【0026】
なお、前記Sは、好ましくは炭素数が16〜22の直鎖飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数が16〜18の直鎖飽和脂肪酸である。また、前記Uは、好ましくは炭素数が16〜22の直鎖不飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数が16〜18の直鎖不飽和脂肪酸である。
【0027】
なお、本発明におけるロールイン用油脂組成物Y中の油脂の含量は、30〜100質量%、好ましくは45〜95質量%、より好ましくは50〜90質量%である。
【0028】
本発明で使用するロールイン用油脂組成物Yは、水を含有しないショートニングタイプであってもよく、水との乳化物であるマーガリンタイプであってもよいが、マーガリンタイプであることが好ましい。なお、マーガリンタイプとして用いられる場合、その乳化形態は、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれであってもよいが、油中水型であることが好ましい。
【0029】
また、本発明で使用するロールイン用油脂組成物Yは、上記油脂と水以外の、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、本発明で使用するロールイン用油脂組成物Xに含有できる成分と同様のものが挙げられる。
【0030】
本発明で使用するロールイン用油脂組成物X、及びロールイン用油脂組成物Y中の油脂のSFC(solid fat content;固体脂含量)は、社団法人日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の2.2.9−2003固体脂含量(NMR法)に従って測定することができる。具体的には、例えば、アステック株式会社製の測定装置SFC−2000(NMR法)を使用して、以下のようにして測定することができる。まず、完全に溶解させたサンプル(油脂組成物X又は油脂組成物Yに配合する原料油脂)を、測定装置SFC−2000の測定セルに入れ、60℃で30分間保持した後、0℃で30分間保持する。さらに、25℃で30分間保持した後、0℃で30分間保持し、その後、SFCを測定する温度で30分間保持後、SFCを測定する。
【0031】
本発明で使用するロールイン用油脂組成物X、及びロールイン用油脂組成物Yに含まれる油脂中のSSS、UUU、S2U、及びSU2の含有量は、ガスクロマトグラフィー法により測定することができる。具体的には、AOCS Ce5−86に準じて測定することができる。
【0032】
〔ロールイン用油脂組成物X、及びロールイン用油脂組成物Yの製造方法〕
本発明で使用するロールイン用油脂組成物X、及びロールイン用油脂組成物Yの製造方法は、特に制限されるものではなく、原料油脂を溶解し、その他の原料を混合した後、冷却混練して、圧延することで得ることができる。
具体的には、先ず、原料油脂と、必要に応じて乳化剤等の油溶性原料とを溶解する。また、必要により別途調製した水相と混合乳化してもよい。そして次に殺菌処理するのが好ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。次に、冷却し、結晶化させる。好ましくは冷却可塑化する。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、更に好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より急冷却の方が好ましい。
冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組合せが挙げられる。
【0033】
本発明で使用するロールイン用油脂組成物X、及びロールイン用油脂組成物Yの形状は、シート状、ブロック状、円柱状、直方体状等様々な形状とすることができる。その中でも、加工の容易性の観点から、シート状とすることが好ましい。なお、シート状とした場合の好ましい大きさは、その幅が50〜1000mm、その長さが50〜1000mm、その厚さが1〜50mmである。
【0034】
〔積層状生地A、及び積層状生地Bの製造方法〕
本発明で使用する積層状生地A、及び積層状生地Bの製造方法は、前記ロールイン用油脂組成物X、又はロールイン用油脂組成物Yを使用する以外は、公知の製造条件及び製造方法により製造することができる。具体的には、ロールイン用油脂組成物Xを穀粉生地で包み込み、折り込みと圧延を繰り返すことで製造することができる。積層の数は、適宜調節することができる。
また、必要に応じてリタードの工程を含めてもよい。圧延には、例えば、リバースシーター等を用いることができる。これらを用いて生地を展圧することで、生地を所望の厚みとすることができる。
【0035】
〔成型済み積層状生地の製造方法〕
本発明の成型済み積層状生地の製造方法は、本発明で使用する積層状生地Bが、本発明で使用する積層状生地Aよりも外側に配置されるように成型できる製造方法であれば特に限定されないが、例えば、成型済み積層状生地がクロワッサン用であれば、積層状生地Aと積層状生地Bとを重ね合わせた生地を、積層状生地Bの面が外側になるように丸めて成型することで製造できる。
成型済み積層状生地がパイ包み用であれば、積層状生地Aと積層状生地Bとを重ね合わせた生地を、積層状生地Bの面が外側になるように具材を包んで成型することで製造できる。
成型済み積層状生地がデニッシュ用であれば、積層状生地Aと積層状生地Bとを重ね合わせた生地を、積層状生地Bの面が外側になるように折り込んだり、ねじって成型したり、積層状生地Aを2枚の積層状生地Bで挟んで重ね合わせた生地を型抜きして成型することで製造できる。
〔クロワッサン、パイ、又はデニッシュの製造方法〕
本発明の成型済み積層状生地を焼成することで、ペストリー食品を製造することができる。具体的には、本発明の成型済み積層状生地が、クロワッサン用、パイ用、又はデニッシュ用生地である場合、通常の焼成条件で焼き上げることで、クロワッサン、パイ、及びデニッシュを製造することができる。
【実施例】
【0036】
次に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例になんら制限されるものではない。
【0037】
〔原料油脂〕
原料油脂は、以下のものを使用した。
・精製パーム油〔日清オイリオグループ(株)社内調製品〕
・パームステアリン〔日清オイリオグループ(株)社内調製品,ヨウ素価33,パーム油を乾式分別して得られた硬質部〕
・パームスーパーオレイン〔日清オイリオグループ(株)社内調製品,ヨウ素価60,パーム油を乾式分別して得られた軟質部〕
・パームエステル交換油〔日清オイリオグループ(株)社内調製品,パーム油を乾式分別して得られたヨウ素価56の軟質部をランダムエステル交換して得られた油脂〕
・大豆油〔日清オイリオグループ(株)社内調製品〕
・発酵バター〔Lactalis社製,水分15%〕
【0038】
〔ロールイン用油脂組成物の製造〕
以下の表1の配合表に従って、油脂を融解混合して油相を調製した。別途、食塩、脱脂粉乳、及び水を混合溶解し、水相を調製した。次に、常法に従って油相に水相を混合攪拌して予備乳化した後、コンビネーターにより急冷混捏し、レスティングチューブを通してシート状に成形し、ロールイン用油脂組成物X及びロールイン用油脂組成物Yを製造した。また、ロールイン用油脂組成物Yの油脂中の乳脂の含有量は、9.3質量%であった。
【0039】
【表1】
【0040】
〔積層状生地A、積層状生地B、及び積層状生地Cの製造〕
強力粉40質量部、中力粉60質量部、砂糖8質量部、食塩2質量部、脱脂粉乳3質量部、ショートニング6質量部、牛乳50質量部、水7質量部、及び生イースト4質量部からなる穀粉生地を調製した。次に前記穀粉生地3000gに対して、上記で製造したロールイン用油脂組成物Xを830gのせ、常法に従って、3つ折りを2回行い、厚さ3mmの積層状生地Aを製造した。同様にして、ロールイン用油脂組成物Yを使用した積層状生地Bを製造した。
積層状生地Cは、穀粉生地で包んだロールイン用油脂組成物Xと、穀粉生地で包んだロールイン用油脂組成物Yとを同質量重ね合わせて、常法に従って、ロールイン用油脂組成物Yがロールイン用油脂組成物Xよりも外側になるように、3つ折りを2回と2つ折りを1回行うことで製造した。積層状生地Cは、穀粉層、ロールイン用油脂組成物Xの層、ロールイン用油脂組成物Yの層が交互に含まれるものであった。また、前記積層状生地Cは、一番外側のロールイン用油脂組成物の層が、ロールイン用油脂組成物Yであった。
【0041】
〔成型済み積層状生地(クロワッサン生地)の製造〕
上記で製造した積層状生地Aと積層状生地Bとを同質量重ね合わせて、リバースシーターで3mmの厚さに圧延した。次に、積層状生地Bの面が外側になるように丸めて成型してクロワッサン生地を製造した(実施例1)。
また、上記とは別に、積層状生地Aの面が外側になるように丸めて成型してクロワッサン生地を製造した(比較例1)。
【0042】
上記で製造した積層状生地Cをリバースシーターで3mmの厚さに圧延し、丸めて成型してクロワッサン生地を製造した(比較例2)。
【0043】
上記で製造した積層状生地Bを、2つ折りしてリバースシーターで3mmの厚さに圧延し、丸めて成型してクロワッサン生地を製造した(比較例3)。
【0044】
〔クロワッサンの製造と評価〕
上記で製造したクロワッサン生地(実施例1、比較例1〜3)をホイロ後、焼成(上火220℃、下火200℃、15分間)してクロワッサンを得た。次に前記クロワッサンについて、生地浮き、風味、及び食感を評価した。評価は5名のパネラーの総合評価とし、結果を表2に示した。
【0045】
<評価の基準>
・生地浮き
生地浮きは、クロワッサンの外観を目視により下記の基準で評価した。
◎ : 生地浮きが「○」よりも良好である
○ : 生地浮きが良好である
× : 生地浮きが悪い
・風味
風味は、クロワッサンの食した時のバターの風味を下記の基準で評価した。
◎ : バターの風味が「○」よりも強く感じられる
○ : バターの風味が感じられる
× : バターの風味が弱い、又は感じられない
・中の食感
中の食感は、クロワッサンの内側の焼成生地を食した時のジューシー感を下記の基準で評価した。
◎ : ジューシー感が「○」よりも強く感じられる
○ : ジューシー感が感じられる
× : ジューシー感が弱い、又は感じられない
・外の食感
外の食感は、クロワッサンの外側の焼成生地を食した時のクリスピー感(サクサクした食感)を下記の基準で評価した。
◎ : クリスピー感が「○」よりも強く感じられる
○ : クリスピー感が感じられる
× : クリスピー感が弱い、又は感じられない
【0046】
【表2】
【0047】
実施例1の成型済み生地を焼成して得られたクロワッサンは、生地浮きが、通常のクロワッサンと同等以上と良好で、また、食してみると、外側はサクサクで内側はしっとりとした、今までに無い新しい食感であり、芳醇なバターの風味が感じられるものであった。