(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6771907
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】筒状構造物の補修構造および補修方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20201012BHJP
E04H 12/28 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
E04G23/02 F
E04H12/28 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-44345(P2016-44345)
(22)【出願日】2016年3月8日
(65)【公開番号】特開2017-160632(P2017-160632A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2018年11月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】大原 良友
【審査官】
前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−044090(JP,A)
【文献】
特開2003−278389(JP,A)
【文献】
特開2014−066017(JP,A)
【文献】
実開昭60−103788(JP,U)
【文献】
特開昭62−228572(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0014467(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04H 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座屈部分を有する筒状構造物を補修する筒状構造物の補修構造であって、
前記筒状構造物の外周面に、前記座屈部分を前記筒状構造物の軸方向に挟んで固定された一対のリング状部材と、
一対の前記リング状部材間に掛け渡されて当該リング状部材に両端部がそれぞれ固定されるとともに、前記リング状部材の周方向に所定間隔で配置された複数の柱状部材と、を備え、
前記複数の柱状部材の前記筒状構造物の軸と直交する方向の断面積の総和が、前記筒状構造物の軸方向と直交する断面積以上であり、
前記柱状部材は、前記座屈部分より前記筒状構造物の径方向外側に、当該柱状部材の長手方向全域にわたって前記筒状構造物の外周面との間に所定の隙間を設けて配置されていることを特徴とする筒状構造物の補修構造。
【請求項2】
前記柱状部材と前記筒状構造物とは、所定の間隔で配置された複数の接続部材によって接続されていることを特徴とする請求項1に記載の筒状構造物の補修構造。
【請求項3】
前記柱状部材の外周側に設けられた外筒が前記柱状部材および前記リング状部材に固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の筒状構造物の補修構造。
【請求項4】
座屈部分を有する筒状構造物を補修する筒状構造物の補修方法であって、
前記筒状構造物の外周面に、前記座屈部分を前記筒状構造物の軸方向に挟んで一対のリング状部材を固定することと、
次に、一対の前記リング状部材間に柱状部材を掛け渡してその両端部をそれぞれ一対の前記リング状部材に固定するとともに、前記リング状部材の周方向に前記柱状部材を所定間隔で複数配置することと、
を備え、
複数の前記柱状部材の前記筒状構造物の軸と直交する方向の断面積の総和が、前記筒状構造物の軸方向と直交する断面積以上であり、
前記柱状部材は、前記座屈部分より前記筒状構造物の径方向外側に、当該柱状部材の長手方向全域にわたって前記筒状構造物の外周面との間に所定の隙間を設けて配置されることを特徴とする筒状構造物の補修方法。
【請求項5】
前記柱状部材と前記筒状構造物とは、所定の間隔で配置された複数の接続部材によって接続されることを特徴とする請求項4に記載の筒状構造物の補修方法。
【請求項6】
前記柱状部材の外周側に設けられた外筒が前記柱状部材および前記リング状部材に固定されることを特徴とする請求項4または5に記載の筒状構造物の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座屈部分を有する煙突等の筒状構造物を補修する筒状構造物の補修構造および補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経年変化、腐食等により座屈のおそれがある既存の鋼製煙突を補強する既存鋼製煙突の補強方法の一例として、特許文献1に記載のものが知られている。
この既存鋼製煙突の補強方法は、既存鋼製煙突の内周面に、その周方向に沿って間隔を隔てて縦方向リブを接合する工程と、既存鋼製煙突の内周面に、その高さ方向に沿って間隔を隔ててかつ前記縦方向リブと井桁をなすように、横方向リブを接合する工程と、既存鋼製煙突の外周面に、炭素繊維の線材を巻き付ける工程とからなることを特徴としており、これによって、既存鋼製煙突の経年変化、腐食等に起因する脆弱化によってこれが内側ないし外側に倒れないように補強している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−321482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来の既存鋼製煙突の経年変化、腐食等に起因する座屈防止に関する補強方法では、当該既存鋼製煙突が地震等の荷重を受けて大きく揺れて、当該煙突に座屈が生じた場合は、その座屈部分は円筒胴としての強度を保有できないため、座屈部分を新規部材に交換するか、あるいは一式新規の構造物(煙突など)に交換していた。このため、これらの交換に要する手間と経済的な負担が大きいという問題があった。
また、座屈部分自体を外側から補強する方法も考えられるが、座屈部分が同形状と同間隔でない場合が多いため、それぞれの座屈形状に合った補強を要し、補強作業が煩雑となるとともに工期もかかる。
一方、座屈部分をそのまま残して、煙突等の筒状構造物をその自重および地震等による荷重に耐え得るよう補修する方法は現在のところ無い。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、座屈部分を新規に交換することなく、当該座屈部分を残したままで、自重および地震による荷重に耐え得る筒状構造物の補修構造および補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明に係る筒状構造物の補修構造は、座屈部分を有する筒状構造物を補修する筒状構造物の補修構造であって、
前記筒状構造物の外周面に、前記座屈部分を前記筒状構造物の軸方向に挟んで固定された一対のリング状部材と、
一対の前記リング状部材間に掛け渡されて当該リング状部材に両端部がそれぞれ固定されるとともに、前記リング状部材の周方向に所定間隔で配置された複数の柱状部材と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る筒状構造物の補修方法は、座屈部分を有する筒状構造物を補修する筒状構造物の補修方法であって、
前記筒状構造物の外周面に、前記座屈部分を前記筒状構造物の軸方向に挟んで一対のリング状部材を固定し、
次に、一対の前記リング状部材間に柱状部材を掛け渡してその両端部をそれぞれ一対の前記リング状部材に固定するとともに、前記リング状部材の周方向に前記柱状部材を所定間隔で複数配置することを特徴とする。
【0008】
本発明においては、一対のリング状部材が座屈部分を挟んで筒状構造物の外周面に固定され、当該一対のリング状部材間に掛け渡された柱状部材の両端部が一対のリング状部材に固定されているので、座屈部分を有していても、これらリング状部材と柱状部材とで筒状構造物の自重および地震による荷重に耐えることができる。
【0009】
また、本発明の前記構成において、前記柱状部材は、前記座屈部分より前記筒状構造物の径方向外側に配置されることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、座屈部分が筒状構造物の外周面から突出している場合に、当該座屈部分に干渉することなく、柱状部材を設けることができるので、座屈部分の凹凸の形状と配置に拘らず、リング状部材と柱状部材とで筒状構造物の自重および地震による荷重に耐えることができる。
【0011】
また、本発明の前記構成において、前記柱状部材と前記筒状構造物とは、接続部材によって接続されていることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、接続部材によって柱状部材が筒状構造物に接続されているので、柱状部材の座屈強度が向上し、これによって、リング状部材と柱状部材とで筒状構造物の自重および地震による荷重に確実に耐えることができる。
【0013】
また、本発明の前記構成において、前記柱状部材に凹所が設けられ、この凹所に前記筒状構造物の外周面から突出している前記座屈部分が収められてもよい。
【0014】
このような構成によれば、柱状部材の凹所に筒状構造物の外周面から突出している座屈部分が収められるので、当該座屈部分に干渉することなく柱状部材を設けることができ、よって、リング状部材と柱状部材とで筒状構造物の自重および地震による荷重に耐えることができる。
【0015】
また、本発明の前記構成において、前記柱状部材の外周側に設けられた外筒が前記柱状部材および前記リング状部材に固定されてもよい。
【0016】
このような構成によれば、柱状部材およびリング状部材が外筒によって補強されるので、リング状部材と柱状部材とで筒状構造物の自重および地震による荷重に、より確実に耐えることができるとともに、複数の柱状部材が外筒によって覆われるので、外観上も見映えがよくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、筒状構造物の外周面に、座屈部分を筒状構造物の軸方向に挟んで固定された一対のリング状部材と、一対のリング状部材間に掛け渡されて当該リング状部材に両端部がそれぞれ固定されるとともに、リング状部材の周方向に所定間隔で配置された複数の柱状部材とを備えているので、座屈部分を有していても、これらリング状部材と柱状部材とで筒状構造物の自重および地震による荷重に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施の形態を示すもので、筒状構造物の補修構造を示す断面図である。
【
図3】同、筒状構造物の補修方法の工程を説明するためのもので、(a)は煙突にリング状部材を固定した状態を示す要部の断面図、(b)はリング状部材間に柱状部材を設けて固定した状態を示す要部の断面図、(c)は接続部材によって柱状部材と煙突とを接続した状態を示す要部の断面図、(d)は外筒を設けた状態を示す要部の断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態を示すもので、筒状構造物の補修構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1および
図2は、第1の実施の形態を示すもので、
図1は筒状構造物の補修構造を示す断面図、
図2は
図1におけるA−A線断面図である。
【0020】
本実施の形態では、本発明を円筒状の煙突1の補修に適用した場合について説明する。
円筒状の煙突(筒状構造物)1の軸方向の所定の位置に、地震等の外力を受けることによって、座屈部分2が生じている。この座屈部分2は煙突1の周方向に沿って形成され、径方向外側に向けて突出する形状となっている。なお、座屈部分2は突出する形状に限らず、径方向内側に向けて凹む形状、あるいは突出した形状と凹んだ形状とが混在している形状であってもよい。
【0021】
煙突1の座屈が生じていない健全部の外周面には、座屈部分2を煙突1の軸方向に挟んで上下一対のリング状部材3が溶接によって前記煙突と同軸に固定されている。リング状部材3は、その内径が煙突1の外径とほぼ等しくなっており、その内周面が煙突1の外周面に溶接されている。本実施の形態では、リング状部材3は、鋼材によって形成されており、当該リング状部材3を周方向に所定間隔で分割してなる複数の円弧板状の分割リング片をリング状に溶接接合することによって、形成されているが、煙突1が小径の場合は、一体物で形成してもよい。
【0022】
上側のリング状部材3の上面には、略三角形板状のガセット4の下辺部が溶接によって固定されており、この下辺部と直角な縦辺部が煙突1の外周面に溶接によって固定されている。同様に、下側のリング状部材3の下面には、略三角形板状のガセット4の上辺部が溶接によって固定されており、この上辺部と直角な縦辺部が煙突1の外周面に溶接によって固定されている。
このようなガセット4はリング状部材3の周方向に所定間隔で複数設けられている。
【0023】
また、一対のリング状部材3,3間には柱状部材5が掛け渡され、当該柱状部材5の上端部は上側のリング状部材3に溶接によって固定され、下端部は下側のリング状部材3に溶接によって固定されている。柱状部材5は上下に長尺な矩形板状の鋼板によって形成されており、リング状部材3の周方向に所定間隔で、かつその短辺をリング状部材3の径方向に向けて放射状に設けられている。また、柱状部材5と前記ガセット4とはリング状部材3の周方向において等しい位置に配置されている。このような複数の柱状部材5の煙突1の軸と直交する方向の断面積の総和は、煙突1の軸方向と直交する断面積と等しいか、当該断面積より大きくなっている。
また、柱状部材5は座屈部分2より煙突1の径方向外側に配置されており、この柱状部材5の煙突1側を向く長辺部と煙突1の外周面との間には所定の隙間が設けられ、この隙間に座屈部分2が配置されている。
【0024】
柱状部材5と煙突1とは接続部材6によって接続されている。
すなわち、接続部材6は矩形板状の鋼板によって形成されており、本実施の形態では座屈部分2より上側に上下に所定間隔で2つ、下側に上下に所定間隔で3つ設けられている。接続部材6の一端部は煙突1の外周面に溶接によって固定され、他端部は柱状部材5の側面に溶接によって固定されている。
【0025】
また、複数の柱状部材5の外周側には円筒状の外筒7が設けられている。この外筒7の内径は複数の柱状部材5の外側の側端面を結ぶ仮想円筒の外径とほぼ等しく、上下の高さは上下のリング状部材3,3間の距離とほぼ等しくなっている。このような外筒7はその内周面が柱状部材5に溶接よって固定され、上下端部がそれぞれ上下のリング状部材3,3に溶接によって固定されている。
【0026】
また、外筒7は鋼材によって形成されており、当該外筒7を周方向に所定間隔で分割してなる複数の円筒分割片7aを円筒状に溶接接合することによって、形成されているが、煙突1が小径の場合は、一体物で形成してもよい。
周方向に隣り合う円筒分割片7a,7aを溶接接合する場合、柱状部材5の外側を向く側端面上において、隣り合う円筒分割片7a,7aの側端部どうしを接合してもよいし、
図2に破線で示すように、断面L形でかつ柱状部材5の長手方向に延在するアングル材10の一片を柱状部材5の側面に溶接によって固定し、他片に一方の円筒分割片7aの側端部を当接したうえで、当該一方の円筒分割片7aの側端部に他方の円筒分割片7aの側端部を溶接によって接合してもよい。
【0027】
次に、上述したような筒状構造物の補修構造の施工方法、つまり、筒状構造物の補修方法について
図3を参照して説明する。
図3(a)に示すように、煙突1の軸方向の所定の位置に、地震等の外力を受けることによって、座屈部分2が生じている。
この状態において、煙突1の座屈が生じていない健全部の外周面に、座屈部分2を軸方向に挟んで、一対のリング状部材3,3を溶接によって煙突1と同軸に固定する。この場合、当該リング状部材3を周方向に所定間隔で分割してなる複数の分割リング片をリング状に溶接接合するとともに、煙突1の外周面に溶接接合することによってリング状部材3を形成する。
【0028】
次に、上側のリング状部材3の上面にガセット4の下辺部を溶接によって固定するとともに、この下辺部と直角な縦辺部を煙突1の外周面に溶接によって固定する。同様にして、下側のリング状部材3の下面に、ガセット4の上辺部を溶接によって固定するとともに、この上辺部と直角な縦辺部を煙突1の外周面に溶接によって固定する。ガセット4はリング状部材3の周方向に所定間隔で複数設ける。このようにして、リング状部材3を補強する。
【0029】
次に、
図3(b)に示すように、上下のリング状部材3,3間に、柱状部材5を掛け渡し、その上端部を上側のリング状部材3に溶接よって固定し、下端部を下側のリング状部材3に溶接によって固定する。柱状部材5はリング状部材3の周方向に所定間隔で、かつその短辺をリング状部材3の径方向に向けて放射状に設けるとともに、座屈部分2より径方向外側に配置する。
【0030】
次に、
図3(c)に示すように、柱状部材5と煙突1とを接続部材6によって接続する。この場合、接続部材6を座屈部分2より上側に上下に所定間隔で2つ、下側に上下に所定間隔で3つ配置したうえで、それぞれの接続部材6の一端部を煙突1の外周面に溶接によって固定し、他端部を柱状部材5の側面に溶接によって固定する。
【0031】
最後に、
図3(d)に示すように、複数の柱状部材5の外周側に、円筒状の外筒7を設け、この外筒7の内周面を柱状部材5に溶接によって固定し、上下端部をそれぞれ上下のリング状部材3,3に溶接によって固定する。
この場合、外筒7を周方向に所定間隔で分割してなる複数の円筒分割片7aを円筒状に溶接接合するとともに、当該円筒分割片7aの内面を柱状部材5に溶接によって固定し、上下端部をそれぞれ上下のリング状部材3,3に溶接によって固定する。
【0032】
以上のように本実施の形態によれば、一対のリング状部材3,3が座屈部分2を挟んで煙突1の外周面に固定され、当該一対のリング状部材3,3間に掛け渡された柱状部材5の両端部が一対のリング状部材3,3に固定されているので、座屈部分2を有していても、これらリング状部材3,3と柱状部材5とで煙突1の自重および地震による荷重に耐えることができる。
特に、複数の柱状部材5の煙突1の軸と直交する方向の断面積の総和が、煙突1の軸方向と直交する断面積と等しいか、当該断面積より大きくなっているので、リング状部材3,3と柱状部材5とで煙突1の自重および地震による荷重に確実に耐えることができる。
また、柱状部材5が座屈部分2より煙突1の径方向外側に配置されているので、座屈部分2に干渉することなく、柱状部材5を設けることができる。したがって、座屈部分2の凹凸の形状と配置に拘らず、リング状部材3と柱状部材5とで煙突1の自重および地震による荷重に耐えることができる。
【0033】
さらに、接続部材6によって柱状部材5が煙突1に接続されているので、柱状部材5の座屈強度が向上し、これによって、リング状部材3と柱状部材5とで煙突1の自重および地震による荷重に確実に耐えることができる。
加えて、柱状部材5の外周側に設けられた外筒7が柱状部材5およびリング状部材3に固定されているので、リング状部材3と柱状部材5とで煙突1の自重および地震による荷重に、より確実に耐えることができるとともに、複数の柱状部材5が外筒7によって覆われるので、外観上も見映えがよくなる。
【0034】
(第2の実施の形態)
図4および
図5は、第2の実施の形態を示すもので、
図4は筒状構造物の補修構造を示す断面図、
図5は
図4におけるA−A線断面図である。
【0035】
本実施の形態でも、本発明を円筒状の煙突1の補修に適用した場合について説明する。本実施の形態に係る筒状構造物の補修構造が、第1の実施の形態に係る筒状構造物の補修構造と異なる点は、柱状部材の構成であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と同一の構成については同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0036】
本実施の形態では、一対のリング状部材3,3間に柱状部材15が掛け渡され、当該柱状部材15の上端部は上側のリング状部材3に溶接によって固定され、下端部は下側のリング状部材3に溶接によって固定されている。
柱状部材15は上下に長尺な矩形板状の鋼板によって形成されており、リング状部材3の周方向に所定間隔で、かつその短辺をリング状部材3の径方向に向けて放射状に設けられている。また、柱状部材15とガセット4とはリング状部材3の周方向において等しい位置に配置されている。このような複数の柱状部材15の煙突1の軸と直交する方向の断面積の総和は、煙突1の軸方向と直交する断面積と等しいか、当該断面積より大きくなっている。
【0037】
また、柱状部材15の煙突1側を向く長辺部は煙突1の外周面に当接しており、当該長辺部の少なくとも一部が煙突1の外周面に溶接によって固定されている。この溶接長さは、第1の実施の形態における接続部材6を煙突1の外周面に溶接する場合の、複数の接続部材6の総溶接長さと等しいかそれ以上とされている。
また、柱状部材15の煙突1側を向く長辺部には、凹所15aが設けられており、この凹所15aに煙突1の外周面から突出している座屈部分2が収められている。この凹所15aは、座屈部分2の位置や大きさに応じて、現場で柱状部材15を矩形状に切り欠くことによって形成されている。
【0038】
本実施の形態における筒状構造物の補修方法は、図示は省略するが、第1の実施の形態と同様に、煙突1の外周面に、座屈部分2を軸方向に挟んで、一対のリング状部材3,3を溶接によって固定した後、ガセット4を一対のリング状部材3,3および煙突1の外周面に溶接によって固定する。
次に、上下のリング状部材3,3間に、柱状部材15を掛け渡し、その上端部を上側のリング状部材3に溶接よって固定し、下端部を下側のリング状部材3に溶接によって固定する。この際、座屈部分2の位置や大きさに応じて、現場で柱状部材15の長辺部を矩形状に切り欠くことによって、柱状部材15に凹所15aを形成するとともに、この凹所15aに座屈部分2を収める。また、柱状部材15の長辺部を所定長さだけ煙突1の外周面に溶接する。
最後に、複数の柱状部材15の外周側に、円筒状の外筒7を設け、この外筒7の内周面を柱状部材5に溶接によって固定し、上下端部をそれぞれ上下のリング状部材3,3に溶接によって固定する。
【0039】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、一対のリング状部材3,3が座屈部分2を挟んで煙突1の外周面に固定され、当該一対のリング状部材3,3間に掛け渡された柱状部材15の両端部が一対のリング状部材3,3に固定されているので、座屈部分2を有していても、これらリング状部材3,3と柱状部材15とで煙突の自重および地震による荷重に耐えることができる。
また、柱状部材15に凹所15aが設けられ、この凹所15aに煙突1の外周面から突出している座屈部分2が収められているので、座屈部分2に干渉することなく柱状部材15を設けることができる。
また、現場で座屈部分2の位置や大きさに応じて柱状部材15に凹所15aを設けるという手間がかかるが、第1の実施の形態のような複数の接続部材6の配置や、溶接の手間がないという利点がある。
【0040】
なお、上述した2つの実施の形態では、本発明を円筒状の煙突1の補修に適用した場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限ることなく、その他の筒状構造物の補修にも適用できる。また、筒状構造物としては、円筒状に限ることなく、角筒状、楕円筒状、長円筒状等あらゆる筒状構造物が挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
1 煙突(筒状構造物)
2 座屈部
3 リング状部材
4 ガセット
5,15 柱状部材
15a 凹所
6 接続部材
7 外筒
10 アングル材