特許第6772110号(P6772110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772110
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20201012BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20201012BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20201012BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20201012BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20201012BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   G01N21/956 A
   G01N21/84 E
   G02B3/00 A
   G02B21/00
   G03F1/84
   H01L21/66 J
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-146953(P2017-146953)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-27893(P2019-27893A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2019年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】長 浜 博 幸
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/082357(WO,A1)
【文献】 特開2004−212132(JP,A)
【文献】 特開2014−202679(JP,A)
【文献】 特開2009−293994(JP,A)
【文献】 特開2013−113689(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3107388(JP,U)
【文献】 国際公開第2015/164844(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/958
G02B 21/00
G03F 1/84
H01L 21/66
F21V 5/00−5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象にレーザ光を出射する光源と、
前記レーザ光の径を拡大させるエキスパンダレンズと、
前記エキスパンダレンズを通過した前記レーザ光を透過させる複数の要素レンズを有する回転可能なレンズアレイとを備え、
前記複数の要素レンズは、前記レンズアレイ上において該レンズアレイの回転軸の周囲に配置され、前記複数の要素レンズの配置の略中心からの放射線に沿って、かつ、前記略中心に対する複数の同心円に沿って設けられ、
前記レンズアレイの回転軸は、前記略中心からずれている、検査装置。
【請求項2】
前記レンズアレイの回転軸は、前記略中心から、前記放射線の方向における前記要素レンズのピッチの半分以上ずれている、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記レンズアレイの回転軸は、前記略中心から、前記放射線の方向における前記要素レンズのピッチの半分の整数倍ずれている、請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記検査対象からの光を受けて該検査対象の画像を取得する撮像部をさらに備え、
前記撮像部の画像取得時間は、前記レンズアレイの回転周期以上である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記検査対象からの光を受けて該検査対象の画像を取得する撮像部をさらに備え、
前記撮像部の画像取得時間は、前記レンズアレイの回転周期の整数倍である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置は、露光工程において、マスクに形成された回路パターンをウェハ上に転写する。このとき、マスクのパターンに形状欠陥が存在すると、回路パターンだけで無く欠陥もウェハ上に転写され、半導体装置の製造における歩留まりが低下してしまう。そこで、マスクのパターンの検査が必要となる。
【0003】
マスクのパターンを検査する装置では、光源に深紫外レーザを用いた光学系が一般的に用いられる。レーザは点光源であるため、ビームエキスパンダによりレーザの径が拡大される。レーザの径の拡大後、レーザがレンズアレイと呼ばれる光学素子を透過することにより、レンズアレイに含まれる要素レンズの数に応じた2次光源が光学系の瞳面に生成される。それぞれの2次光源がマスク全体を照射するため、レーザ光における強度のばらつき(光量ムラ)を抑制してマスクを照射することができる。
【0004】
瞳面に無数の2次光源を均一に配置できれば、光量ムラのない均一な面光源を生成することができる。しかし、要素レンズの配置パターンの精度やコストの面から、実際には要素レンズの数は有限であるため、2次光源に光量ムラが発生する。この光量ムラは、マスクのパターン検査装置で得られる光学像の特性を変化させてしまう。
【0005】
また、この光量ムラにより、光エネルギー密度の高い部分が発生することがある。この光エネルギーによって、照明系の光学素子や対物レンズが劣化したり、不純物が付着して透過率が低下することがある。このように、2次光源の光量ムラは、検査装置で使用している光学素子の劣化を加速させるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−202679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光学系の瞳面における2次光源の光量ムラを抑制し、かつ、光学素子の劣化を抑制することができる検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態による検査装置は、検査対象にレーザ光を出射する光源と、レーザ光の径を拡大させるエキスパンダレンズと、エキスパンダレンズを通過したレーザ光を透過させる複数の要素レンズを有する回転可能なレンズアレイとを備え、複数の要素レンズは、レンズアレイ上において該レンズアレイの回転軸の周囲に配置され、複数の要素レンズの配置の略中心からの放射線に沿って、かつ、略中心に対する複数の同心円に沿って設けられ、レンズアレイの回転軸は、略中心からずれている。
【0009】
レンズアレイの回転軸は、略中心から、放射線の方向における要素レンズのピッチの半分以上ずれていてもよい。
【0010】
レンズアレイの回転軸は、略中心から、放射線の方向における要素レンズのピッチの半分の整数倍ずれていてもよい。
【0011】
検査対象からの光を受けて該検査対象の画像を取得する撮像部をさらに備え、撮像部の画像取得時間は、レンズアレイの回転周期以上であってもよい。
【0012】
検査対象からの光を受けて該検査対象の画像を取得する撮像部をさらに備え、撮像部の画像取得時間は、レンズアレイの回転周期の整数倍であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態による検査装置の構成の一例を示す図。
図2】本実施形態による照明装置の構成の一例を示す図。
図3】本実施形態によるレンズアレイの構成の一例を示す平面図。
図4図2に示す瞳面における光量ムラと、レンズアレイの回転軸からレンズアレイ中心までのシフト量との関係を示すグラフ。
図5】マスクに形成されたパターンの欠陥を検出するための光学画像の取得手順を説明する図。
図6図1の検査装置におけるデータの流れを示す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0015】
図1は、本実施形態による検査装置100の構成の一例を示す図である。検査装置100は、フォトリソグラフィ技術等で使用されるマスク1の光学画像を取得し、マスク1のパターンを検査する。光学画像は、設計パターンデータに含まれる図形データに基づく図形が描画されたマスク1の画像である。尚、検査装置100は、ナノインプリント技術で使用されるテンプレートのパターンの検査に適用してもよい。
【0016】
検査装置100は、ダイ−トゥ−データベース方式によりマスク1を検査する。この場合、マスク1の光学画像と比較される基準画像は、設計パターンデータをベースに作成された参照画像である。しかし、検査装置100は、ダイ−トゥ−ダイ方式によりマスク1を検査しても良い。この場合、検査装置100は、マスク1に形成された複数のダイのパターン同士を比較する。
【0017】
検査装置100は、照明装置2と、XYテーブル3と、対物レンズ104と、撮像部7と、レーザ測長システム122と、オートローダ130と、X軸モータMxと、Y軸モータMyと、制御計算機110と、位置回路107と、比較回路108と、参照回路112と、展開回路111と、オートローダ制御回路113と、テーブル制御回路114と、記憶部109と、表示部117とを備える。
【0018】
照明装置2は、検査対象としてのマスク1に対して、欠陥検査用のレーザ光を照射する。照明装置2の詳細は、図2を参照して後で説明する。
【0019】
XYテーブル3は、マスク1を載置可能であり、かつ、水平方向(X方向、Y方向)に移動可能である。XYテーブル3は、テーブル制御回路114によって制御されたX軸モータMxおよびY軸モータMyによって駆動される。これらのモータには、例えば、ステップモータを用いることができる。尚、XYテーブル3は、回転方向(θ方向)にも移動可能な構造とすることができる。
【0020】
対物レンズ104は、マスク1を透過した光を撮像部7に光学像として結像する。尚、対物レンズ104は、マスク1で反射した光を撮像部7に光学像として結像させてもよい。
【0021】
撮像部7は、センサ105と、センサ回路106とを備え、マスク1からの光を受けてマスク1の画像を取得する。センサ105は、画像センサである。センサ105は、例えば、フォトダイオードアレイであってもよく、撮像素子としてのCCD(Charge Coupled Device)カメラを一列に並べたラインセンサであってもよい。ラインセンサの例としては、TDI(Time Delay Integration)センサが挙げられる。この場合、XYテーブル3がX軸方向に連続的に移動しながら、TDIセンサによってマスク1のパターンが撮像される。センサ105上に結像したパターンの像は、センサ105によって光電変換され、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログ−デジタル)変換される。センサ回路106は、得られた光学画像を比較回路108へ送る。
【0022】
レーザ測長システム122は、XYテーブル3の移動位置を測定する。レーザ測長システム122は、XYテーブル3の測定位置を位置回路107へ送る。
【0023】
オートローダ130は、オートローダ制御回路113により駆動されて、XYテーブル3上のマスク1を自動的に搬送し、検査終了後に自動的に搬出する。
【0024】
制御計算機110は、マスク1の検査に関連する各種の制御を実行する。制御計算機110は、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照回路112、展開回路111、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、記憶部109および表示部117に接続されている。
【0025】
オートローダ制御回路113は、上述の通り、マスク1を搬送するため、オートローダ130を制御する。
【0026】
テーブル制御回路114は、XYテーブル3を適切に動作させるためにX軸モータMxおよびY軸モータMyを制御する。
【0027】
位置回路107は、レーザ測長システム122からXYテーブル3の測定位置を受け取り、XYテーブル3の位置を検出する。位置回路107は、XYテーブル3の位置を比較回路108へ送る。
【0028】
記憶部109は、マスク1のパターン形成時に用いた設計パターンデータを記憶する。記憶部109は、例えば、磁気ディスク装置等である。
【0029】
展開回路111は、記憶部109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出されたマスク1の設計パターンデータを2値ないしは多値のイメージデータ(設計画像データ)に変換する。展開回路111は、このイメージデータを参照回路112へ送る。
【0030】
参照回路112は、送られた図形のイメージデータである設計画像データに適切なフィルタ処理を施して、光学画像と比較する参照画像を作成する。参照回路112は、この参照画像を比較回路108へ送る。
【0031】
比較回路108は、センサ回路106から送られた光学画像と、参照回路112が生成した参照画像とを、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較する。
【0032】
表示部117は、マスク1の欠陥箇所の画像を表示する。また、表示部117は、欠陥判定の判断条件や、判定の根拠となった光学画像と参照画像をならべて表示する。表示部117は、例えば、制御計算機110の画面である。しかし、これに限られず、表示部117は外部のモニタであってもよい。
【0033】
図2は、本実施形態による照明装置2の構成の一例を示す図である。照明装置2は、光源4と、エキスパンダレンズ5と、レンズアレイ60と、コンデンサレンズ6とを備える。
【0034】
光源4は、マスク1にレーザ光を出射する。レーザ光は、例えば、193nmの波長を有するArFレーザ光である。しかし、これに限られず、レーザ光は波長266nm以下の深紫外レーザ光であればよい。
【0035】
エキスパンダレンズ5は、光源4から出射されたレーザ光の径を拡大させて光束52を出射する。
【0036】
レンズアレイ60は、エキスパンダレンズ5を通過したレーザ光を透過させる複数の要素レンズ62を有する。図2に示す複数の要素レンズ62は、レーザ光の入射面に設けられている。しかし、これに限られず、複数の要素レンズ62はレーザ光の出射面に設けられてもよい。要素レンズ62は、例えば、球面レンズである。要素レンズ62の曲率は、透過した光を集光するように設計されている。複数の要素レンズ62は、光束52の入射により、要素レンズ62の数に応じた2次光源を瞳面64に生成する。図2に示す光束52は、4個の要素レンズ62を透過している。これにより、透過光が集光する瞳面64に、4個の2次光源が生成されている。
【0037】
また、レンズアレイ60には、図示しない回転機構が設けられている。これにより、レンズアレイ60は、回転軸60aを中心として所定の速度で回転可能である。レンズアレイ60の回転軸60aは、例えば、レーザ光の光軸と略平行な軸である。レンズアレイ60は、回転することにより、レーザ光が透過する要素レンズ62を平均化し、瞳面64における2次光源を平均化する。これにより、2次光源の光量ムラを抑制することができる。尚、瞳面64には絞りが設けられてもよい。
【0038】
コンデンサレンズ6は、レンズアレイ60を透過した光をマスク1の面に集光させる。
【0039】
図3は、本実施形態によるレンズアレイ60の構成の一例を示す平面図である。
レンズアレイ60は、例えば、図3に示すように円盤形状である。レンズアレイ60の直径は、例えば、100mmであるが、設計事項であるためこれに限られない。尚、レンズアレイ60は、円盤形状に限られず、円筒形状であってもよい。
【0040】
複数の要素レンズ62は、レンズアレイ60の回転軸60aの周囲に配置されている。複数の要素レンズ62は、複数の要素レンズ62の配置の略中心(以下、レンズアレイ中心ともいう)62aからの放射線に沿って略直線状に配置され、かつ、レンズアレイ中心62aに対する複数の同心円に沿って略円形状に配置されている。図3に示す各要素レンズ62の外形は、上記放射線の線分と上記同心円の円弧とで構成される。従って、複数の要素レンズ62間の境界線は円弧や放射状の直線で構成される。しかし、実際には、レンズアレイ60の面積に対する一つひとつの要素レンズ62の面積の比率は図3に示す比率よりも小さい。即ち、図3に示すよりも多くの要素レンズ62がレンズアレイ60上に設けられている。従って、各要素レンズ62の外形は、矩形(例えば、略長方形または略正方形)とみなすことができる。複数の要素レンズ62間の境界線は直交する複数の直線とみなすことができる。複数の要素レンズ62のパターンは、例えば、フォトリソグラフィ技術により作製される。
【0041】
光束52は、図2に示すエキスパンダレンズ5を通過して要素レンズ62に入射するレーザ光を示している。光束52の直径は、例えば、10mmであるが、設計事項であるためこれに限られない。光束52は、複数の要素レンズ62に入射している。図3に示す光束52は、4個の要素レンズ62を透過している。しかし、上述のように、レンズアレイ60の面積に対する各要素レンズ62の面積の比率は、図3に示すその比率よりも小さいため、例えば、光束52は10から20個程度の要素レンズ62を透過してもよい。
【0042】
レンズアレイ60上における光束52の入射位置は、レンズアレイ60の回転により変化する。光束52の軌道52aは、レンズアレイ60上における光束52の入射位置の軌道を示す。光束の軌道52aは、レンズアレイ60の回転軸60aを中心とした軌道となる。
【0043】
光束52は、図3に示すように、レンズアレイ60が1回転する毎に、レンズアレイ中心62aに対する同心円の方向(以下、同心円方向D1)に配列するn個(nは自然数)の要素レンズ62を透過する。従って、2次光源は、レンズアレイ60が1回転することにより、同心円方向にn個分に平均化される。これにより、瞳面64における2次光源の光量ムラが抑制される。
【0044】
また、レンズアレイ60の回転軸60aは、図3に示すように、レンズアレイ中心62aからずれている。これにより、レンズアレイ60上における光束52の入射位置とレンズアレイ中心62aとの間の距離は、レンズアレイ60の回転により変化する。上記放射線の方向(以下、放射方向D2)の要素レンズ62の幅(あるいは長さ)を1ピッチとした場合、レンズアレイ中心62aと回転軸60aとの間のずれの大きさは、0.5ピッチの整数倍にする。例えば、図3に示す例では、レンズアレイ中心62aと回転軸60aとの間のずれは、放射方向に1ピッチ分である。従って、レンズアレイ60が180°回転したとき、光束52は2ピッチ分ずれる。即ち、レンズアレイ60が1回転するごとに、放射方向に配列する要素レンズ62の2個分(2ピッチ分)の2次光源が平均化される。これにより、瞳面64における2次光源の光量ムラが抑制される。
【0045】
図4は、図2に示す瞳面64における光量ムラと、レンズアレイ60の回転軸60aからレンズアレイ中心62aまでのシフト量との関係を示すグラフである。縦軸に示す光量ムラは、レンズアレイ60が1回転したときに、瞳面64における光量の最大値と最小値との差(ばらつき)である。瞳面64における2次光源は点であるが、要素レンズ62の面積の10分の1の面積に光が集光していると仮定して計算している。また、光量ムラは、シフト量が0の場合を1とした相対値である。横軸に示すシフト量は、レンズアレイ60の回転軸60aとレンズアレイ中心62aとの間の距離を、要素レンズ62の放射方向の1ピッチで割った値である。従って、回転軸60aとレンズアレイ中心62aとが一致する場合、シフト量は0である。回転軸60aとレンズアレイ中心62aとの間のずれが大きくなるほど、シフト量は大きくなる。例えば、図3に示すレンズアレイ60において、回転軸60aとレンズアレイ中心62aとの間のずれが1ピッチである場合、シフト量は1(1ピッチ)となる。
【0046】
まず、図4においてシフト量が0の場合について説明する。シフト量が0である場合、レンズアレイ60上における光束52の入射位置とレンズアレイ中心62aとの間の距離は、レンズアレイ60の回転によっては変化しない。この場合、光束52から見て要素レンズ62は、同心円方向に相対的に移動するが、放射方向には移動しない。従って、2次光源は、同心円方向に配列する要素レンズ62によって平均化されるが、放射方向に配列する要素レンズ62によっては平均化されない。例えば、図3の回転軸60aとレンズアレイ中心62aとが一致しているものとすると、光束52のうち、要素レンズ62の中心が通過する位置52_1では、2次光源の光量は平均化される。また、放射方向に隣接する要素レンズ62間の境界線Bが通過する位置52_2でも、2次光源の光量は平均化される。しかし、位置52_1と位置52_2との間では、2次光源の光量は平均化されない。従って、光束52内において、位置52_1と位置52_2とで、2次光源の光量差が大きくなる。このときの2次光源の光量の最大値と最小値との差(光量ムラ)を1とする。
【0047】
次に、図4においてシフト量が0から0.5までの間にある場合について説明する。この場合、レンズアレイ60の回転によって、要素レンズ62は、光束52に対して、同心円方向に相対移動し、かつ、放射方向にも0〜1ピッチだけ相対移動(往復運動)する。これにより、上記境界線Bは、レンズアレイ60の回転に伴って、放射方向に移動する。従って、位置52_1と位置52_2との間でも、2次光源の光量は放射方向に平均化されていき、光量ムラは1から低下する。
【0048】
しかし、回転軸60aとレンズアレイ中心62aとの間のシフト量が0.5未満の場合、レンズアレイ60の回転によって、光束52に対する要素レンズ62の放射方向への相対的な移動距離(180°回転するごとの移動距離)は、1ピッチ未満となる。即ち、境界線Bの放射方向への移動距離は1ピッチ未満となる。従って、2次光源の光量は、光束52の全体としてはまだ平均化されていない。よって、図4に示すように、シフト量が0.5未満の場合、光量ムラは、0になっていない。
【0049】
次に、シフト量が0.5である場合について説明する。回転軸60aとレンズアレイ中心62aとの間のシフト量が0.5になると、レンズアレイ60の回転によって、光束52に対する要素レンズ62の放射方向への相対的な移動距離(180°回転するごとの移動距離)は、1ピッチとなる。即ち、境界線Bの放射方向への移動距離が1ピッチとなる。従って、2次光源の光量は、放射方向においても光束52の全体に亘って平均化される。よって、図4に示すように、シフト量が0.5の場合、光量ムラは、ほぼ0になっている。つまり、瞳面64全体において、2次光源の光量は平均化され、ほぼ一定となる。
【0050】
次に、シフト量が0.5から1までの間について説明する。
【0051】
この場合、レンズアレイ60の回転によって、要素レンズ62は、光束52に対して、同心円方向に相対移動し、かつ、放射方向にも1〜2ピッチだけ相対移動(往復運動)する。シフト量が0.5よりも大きくかつ1未満の場合、レンズアレイ60の回転によって、光束52に対する要素レンズ62の放射方向への相対的な移動距離(180°回転するごとの移動距離)は、1ピッチより大きくかつ2ピッチ未満となる。即ち、境界線Bの放射方向への移動距離は、1ピッチより大きくかつ2ピッチ未満となる。従って、2次光源の光量は、光束52の全体としては平均化されていない。よって、図4に示すように、シフト量が0.5〜1未満の場合、光量ムラは、0になっていない。
【0052】
シフト量が1になると、レンズアレイ60の回転によって、境界線Bの放射方向への移動距離が2ピッチとなる。従って、2次光源の光量は、放射方向においても光束52の全体に亘って平均化され、光量ムラはほぼ0になる。
【0053】
同様に、シフト量が0.5の整数倍のときに、光量ムラはほぼ0となる。一方、シフト量が0.5の整数倍でないときに、光量ムラは0より大きい値となる。
例えば、シフト量が0.5の整数倍である場合、レンズアレイ60の回転によって、境界線Bの放射方向への移動距離が1ピッチの整数倍となる。これにより、瞳面64全体の光量が均一になるため、光量ムラは0になる。
【0054】
一方、シフト量が0.5の整数倍からずれている場合、レンズアレイ60の回転によって、境界線Bの放射方向への移動距離が1ピッチの整数倍からずれる。この場合、瞳面64全体の光量は均一にならず、光量ムラが発生する。また、図4に示すように、シフト量が大きくなるにつれて、光量ムラのピークは小さくなる傾向にある。シフト量が大きくなるにつれて、レンズアレイ60が回転したときに、光束52を放射方向へ相対的に通過する要素レンズ62の数が多くなり、光束52の光量がより平均化されるからである。
【0055】
従って、シフト量を調整して光量ムラを抑制することにより、瞳面64における2次光源の光量ムラを抑制することができる。その結果、マスク1の照射面における光の光量ムラを抑制することができる。
【0056】
シフト量が小さくなるにつれ、シフト量が0.5の整数倍からずれると、光量ムラの増加率(増加度合い)は大きくなる。従って、シフト量が小さい場合には、シフト量は0.5の整数倍に近い方が好ましい。すなわち、レンズアレイ60の回転軸60aは、レンズアレイ中心62aから、放射方向の要素レンズ62のピッチの半分の略整数倍ずれていることが好ましい。
【0057】
一方、シフト量が大きくなるにつれ、シフト量が0.5の整数倍から多少ずれても、光量ムラの増加率はあまり大きくならない。従って、シフト量が大きい場合には、シフト量は0.5の整数倍から或る程度ずれていても許容される場合がある。従って、光量ムラを抑制するためには、シフト量は大きい方が好ましいと言える。例えば、シフト量が0.5以上の場合の光量ムラは、シフト量が0.5未満の場合の光量ムラに比べて十分小さい。従って、シフト量は0.5以上であることが好ましい。すなわち、レンズアレイ60の回転軸60aは、レンズアレイ中心62aから、放射方向の要素レンズ62のピッチの半分以上ずれていることが好ましい。
【0058】
次に、画像取得時間におけるレンズアレイ60の回転数(回転速度)と2次光源の光量ムラとの関係について説明する。尚、画像取得時間を一定として回転数を変化させてもよく、回転速度を一定として画像取得時間を変化させてもよい。
【0059】
シフト量が0.5の整数倍の場合、画像取得時間(あるいは単位時間)におけるレンズアレイ60の回転数が整数倍であれば、光束52は、レンズアレイ60に対して放射方向に1ピッチの整数倍だけ往復する。この場合、瞳面64全体の光量が均一になるため、光量ムラはほぼ0である。
【0060】
一方、シフト量が0.5の整数倍の場合であっても、画像取得時間におけるレンズアレイ60の回転数が整数倍でなければ、光束52は、レンズアレイ60に対して放射方向に1ピッチの整数倍±α(α<1ピッチ)だけ往復する。従って、光量ムラが存在する。
【0061】
また、回転速度が速くなるにつれ、画像取得時間におけるレンズアレイ60の回転数が大きくなり、2次光源の光量ムラの増大は抑制される。これは、回転速度が速くなると、単位時間に光束52を通過する要素レンズ62の数が多くなるので、光束52の光量がより均一に平均化されるからである。よって、レンズアレイ60の回転速度が速ければ、画像取得時間におけるレンズアレイ60の回転数が整数倍からずれても、2次光源の光量ムラの増大は抑制される。従って、レンズアレイ60の回転速度が速い場合には、画像取得時間は、レンズアレイ60の回転周期の整数倍であってもよく、整数倍から或る程度ずれていてもよい。例えば、画像取得時間においてレンズアレイ60が1回転すれば、光量は比較的均一に平均化される。従って、レンズアレイ60は、画像取得時間において、少なくとも1回転すればよい。すなわち、画像取得時間は、レンズアレイ60の回転周期以上であればよい。
【0062】
逆に、レンズアレイ60の回転速度が比較的遅い場合、画像取得時間におけるレンズアレイ60の回転数は、整数であることが好ましい。すなわち、画像取得時間は、レンズアレイ60の回転周期の略整数倍であることが好ましい。レンズアレイ60の回転速度が比較的遅い場合、画像取得時間におけるレンズアレイ60の回転数が整数からずれると、2次光源の光量ムラの増加率は大きくなるからである。
【0063】
次に、本実施形態に従った検査装置100によるマスク1のパターン検査の動作について説明する。
【0064】
検査工程は、マスク1の光学画像を取得する工程(光学画像取得工程)と、マスク1に形成されたパターンの設計パターンデータを記憶する工程(記憶工程)と、参照画像を生成する工程の一例となる展開工程およびフィルタ処理工程と、光学画像と参照画像を比較する工程(比較工程)とを有する。
【0065】
<光学画像取得工程>
光学画像取得工程では、検査装置100は、マスク1の光学画像(測定データ)を取得する。
【0066】
図5は、マスク1に形成されたパターンの欠陥を検出するための光学画像の取得手順を説明する図である。
【0067】
図5のマスク1は、図1のXYテーブル3の上に載置されているものとする。また、マスク1上の検査領域は、図5に示すように、短冊状の複数のストライプ20,20,20,20,・・・に仮想的に分割されている。各ストライプは、例えば、幅が数百μmであって、長さがマスク1のX方向またはY方向の全長に対応する100mm程度の領域とすることができる。
【0068】
検査装置100は、ストライプ毎に光学画像を取得する。すなわち、図5で光学画像を取得する際には、各ストライプ20,20,20,20,・・・を連続的に走査するように、検査装置100はXYテーブル3の動作を制御する。具体的には、XYテーブル3が図5の−X方向に移動しながら、撮像部7がマスク1の光学画像を取得する。このとき、マスク1への照射光は、図2の2次光源(瞳面64)から得られる光であり、光量ムラの無い略均一な光量を有する光である。そして、図1のセンサ105に、図5に示されるような走査幅Wの画像が連続的に入力される。すなわち、第1のストライプ20における画像を取得した後、第2のストライプ20における画像を取得する。この場合、XYテーブル3が−Y方向にステップ移動した後、第1のストライプ20における画像の取得時の方向(−X方向)とは逆方向(X方向)に移動しながら光学画像を取得して、走査幅Wの画像がセンサ105に連続的に入力される。第3のストライプ20における画像を取得する場合には、XYテーブル3が−Y方向にステップ移動した後、第2のストライプ20における画像を取得する方向(X方向)とは逆方向、すなわち、第1のストライプ20における画像を取得した方向(−X方向)に、XYテーブル3が移動する。尚、図5の矢印は、光学画像が取得される方向と順序を示しており、斜線部分は、光学画像の取得が済んだ領域を表している。
【0069】
センサ回路106は、以上のようにして得られた光学画像を、図1の比較回路108へ送る。
【0070】
図6は、図1の検査装置100におけるデータの流れを示す概念図である。
【0071】
図6に示すように、設計者(ユーザ)が作成したCADデータ201は、階層化されたフォーマットの設計中間データ202に変換される。設計中間データ202には、レイヤ(層)毎に作成されてマスク1に形成されるパターンデータが格納される。設計中間データ202は、レイヤ毎に各検査装置に固有のフォーマットデータ203に変換された後に検査装置100に入力される。
【0072】
<記憶工程>
記憶部109は、マスク1のパターン形成時に用いた設計パターンデータを記憶する。
【0073】
<展開工程>
展開工程では、図1の展開回路111は、記憶部109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出す。
【0074】
図形データとなる設計パターンデータが展開回路111に入力されると、展開回路111は、設計パターンデータを図形毎のデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値のイメージデータ(設計画像データ)を展開する。
【0075】
そして、展開回路111は、このイメージデータを参照回路112に送る。
【0076】
<フィルタ処理工程>
フィルタ処理工程では、参照回路112は、展開回路111から送られた図形のイメージデータである設計画像データに適切なフィルタ処理を施す。これにより、光学画像と比較する参照画像を作成する。
【0077】
<比較工程>
上述した通り、センサ回路106は、得られた光学画像データを比較回路108へ送る。また、参照回路112は、参照画像データを比較回路108へ送る。
【0078】
比較回路108は、センサ回路106から送られた光学画像と、参照回路112で生成した参照画像とを、適切な比較判定アルゴリズムを用いて比較する。
【0079】
比較判定の結果、光学画像と参照画像との差が所定の値を超えたとき、その箇所は欠陥と判定される。次いで、欠陥の座標と、欠陥判定の根拠となった光学画像および参照画像とが、記憶部109に保存される。
【0080】
検査結果205は、レビュー装置500に送られる。レビューは、オペレータによって、検出された欠陥が実用上問題となるものであるかどうかを判断する動作である。
【0081】
レビュー工程を経て判別された欠陥情報は、図1の記憶部109に保存される。レビュー装置500で1つでも修正すべき欠陥が確認されると、マスク1は、欠陥情報リスト207とともに、検査装置100の外部装置である修正装置600に送られる。修正方法は、欠陥のタイプが凸系の欠陥か凹系の欠陥かによって異なるので、欠陥情報リスト207には、凹凸の区別を含む欠陥の種別と欠陥の座標が添付される。このように、マスク検査は実行される。
【0082】
以上のように、本実施形態による検査装置100において、複数の要素レンズ62は、レンズアレイ60の回転軸60aの周囲に配置される。また、複数の要素レンズ62は、レンズアレイ中心62aからの放射線に沿って配置され、かつ、レンズアレイ中心62aに対する複数の同心円に沿って配置される。さらに、レンズアレイ60の回転軸60aは、レンズアレイ中心62aからずれている。これにより、レンズアレイ60の回転によって、光束52が透過する要素レンズ62は、放射方向および同心円方向の両方において平均化される。従って、光学系の瞳面64における2次光源の光量ムラが抑制され、マスク1の照射面における照射光の光量ムラも抑制される。
【0083】
また、2次光源の光量ムラが抑制されることにより、光エネルギー密度がより均一になる。これにより、照明系の光学素子や対物レンズが劣化したり、不純物が付着して透過率が低下することを抑制することができる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0085】
100 検査装置、1 マスク、4 光源、5 エキスパンダレンズ、60 レンズアレイ、60a 回転軸、62 要素レンズ、62a レンズアレイ中心、7 撮像部
図1
図2
図3
図4
図5
図6