(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スタティックミキサーとして、1エレメントあたりの圧力損失が0.05MPa未満のスタティックミキサーを用いる請求項1又は2に記載のポリビニルアルコール粉体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略記することがある)粉体は、湿度65%RH、温度25℃にて光学顕微鏡観察により測定した時の平均粒子径が100〜2000μmであり、粒子径500〜1000μmの部分における嵩比重(g/ml)が0.60を超えて0.80未満であり、かつ粒子径500〜1000μmの部分の割合が35〜70質量%である。このような本発明のPVA粉体は、耐飛散性が良好であり、溶解性に優れており、かつ嵩比重が従来のPVA粉体より大きいという特徴を有しているため、単位体積あたりの充填量が多く、輸送コストを低下することができる。以下、本発明のPVA粉体およびその製造方法について詳細に説明する。
【0012】
本発明のPVA粉体の湿度65%RH、温度25℃にて光学顕微鏡観察により測定した時の平均粒子径は100〜2000μmである。平均粒子径が100μm未満であると、PVA微粉が飛散しやすく取扱い性が低下する。平均粒子径は300μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましい。一方、平均粒子径が2000μmを超える場合には、水溶性が低下し、溶液調整時に長時間を要する。平均粒子径は1500μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましい。なお、PVA粉体の平均粒子径は、デジタルマイクロスコープを用いた光学顕微鏡観察により測定された長径の値を示す。
【0013】
湿度65%RH、温度25℃にて光学顕微鏡観察により測定した時の平均粒子径が100〜2000μmである本発明のPVA粉体を、篩い(メッシュサイズが500μmと1000μm)を用いて篩い分けた場合、粒子径500〜1000μm(メッシュサイズが1000μmの篩を通過し、メッシュサイズが500μmの篩を通過しないPVA粉体)の部分の嵩比重(g/ml)は0.60を超えて0.80未満である。嵩比重が0.60未満であると、水溶性が低下するとともに、輸送コストも高くなる。嵩比重は0.61以上であることが好ましく、0.62以上であることがより好ましい。嵩比重が0.60未満であると、水溶性が低下するとともに、輸送コストも高くなる。一方、嵩比重が0.80超であるPVA粉体は製造が困難である。嵩比重は0.75以下であることが好ましく、0.70以下であることがより好ましく、0.65以下であることが更に好ましい。なお、本発明のPVA粉体の嵩比重は、JIS K6720−2に準じた方法により測定される数値を表す。
【0014】
本発明のPVA粉体の粒子径分布は粒子径500〜1000μmの部分の割合が最も多く、具体的には35〜70質量%である。後述する実施例で定義されるように、粒子径500〜1000μmの部分の割合は、5つに分けられた粒子径分布の合計を100質量%とした際の割合(質量%)を示す。粒子径500〜1000μmの部分の割合が上記範囲にあることにより、本発明の効果がより一層奏されるとともに、空気中へのPVA微粉の飛散を抑えることができる。粒子径500〜1000μmの部分の割合は、38質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。一方、粒子径500〜1000μmの部分の割合は、65質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
【0015】
本発明に用いるPVAの粘度平均重合度は200〜5000であることが好ましい。粘度平均重合度が上記範囲にあることにより、水溶性が優れることや、工業的な製造が容易となる。粘度平均重合度は250以上であることがより好ましく、400以上であることが更に好ましい。一方、粘度平均重合度は4500以下であることがより好ましく、3500以下であることが更に好ましい。なお、本発明に用いるPVAの粘度平均重合度はJIS K6726に準じて測定される。すなわち、PVAをけん化度99.5モル%以上に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:リットル/g)から次式により求めることができる。
P=([η]×10000/8.29)
(1/0.62)
【0016】
本発明に用いるPVAのけん化度は50〜99.99モル%であることが好ましい。けん化度が上記範囲にあることにより、水溶性が優れることや、安定的に製造できる点から好ましい。けん化度は60モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更に好ましい。一方、けん化度は99.8モル%以下であることがより好ましく、99.7モル%以下であることが更に好ましい。なお、本発明に用いるPVAのけん化度はJIS K6726に準じて測定される。
【0017】
以下、本発明のPVA粉体の製造方法について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する製造方法に限定されるものではない。例えば、PVAの前駆体であるポリビニルエステルのけん化工程においてスタティックミキサーを用いて混合し、特定の条件でけん化反応を行うことにより、本発明に用いるPVAを得ることができる。
【0018】
本発明に用いるPVAは、例えば、ビニルエステルを塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の従来公知の方法を採用して重合させ、得られたポリビニルエステルをけん化することにより製造することができる。工業的観点から好ましい重合方法は、溶液重合法、乳化重合法および分散重合法である。重合操作にあたっては、回分法、半回分法および連続法のいずれの重合方式を採用することも可能である。
【0019】
重合に用いることができるビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等を挙げることができ、これらの中でも酢酸ビニルが工業的観点から好ましい。
【0020】
ビニルエステルの重合に際して、本発明の趣旨を損なわない範囲であればビニルエステルと他の単量体とを共重合させても差し支えない。使用しうる他の単量体として、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン;アクリル酸およびその塩;アクリル酸エステル;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸エステル;アクリルアミド;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド;N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。
【0021】
ビニルエステルの重合に際して、得られるPVAの重合度を調節すること等を目的として、連鎖移動剤を共存させても差し支えない。連鎖移動剤としては、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド;アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサノン、シクロヘキサノン等のケトン;2−ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン;チオ酢酸等のチオカルボン酸;トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられ、中でもアルデヒドおよびケトンが好適に用いられる。連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動定数および目的とするPVAの重合度に応じて決定されるが、一般に、使用されるビニルエステルに対して0.1〜10質量%が望ましい。
【0022】
ポリビニルエステルのけん化反応には、従来公知の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド等の塩基性触媒、またはp−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を用いた、加アルコール分解ないし加水分解反応が適用できる。けん化反応に用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、メタノールまたはメタノールと酢酸メチルとの混合溶液を溶媒として用い、塩基性触媒である水酸化ナトリウムの存在下にけん化反応を行うのが簡便であり好ましい。
【0023】
図1は本実施形態のPVA粉体の製造方法で使用するけん化装置の構成を模式的に示す図である。また、
図2(a)はその触媒導入機構の構成例を示す断面図であり、
図2(b)は
図2(a)に示すX−X線による断面図である。本実施形態のPVA粉体の製造方法では、例えば
図1、2に示すように、流路1内に重合工程で得たポリビニルエステルと有機溶媒とからなるけん化原料溶液を通流させ、その中央部にけん化触媒を含む溶液を導入する。そして、これらを、スタティックミキサー2で混合した後、その混合物を、例えばベルト上などに載置してけん化反応を進行させる。スタティックミキサー2は、内部に互いにかみ合い交差した板状のバッフルを有するエレメントで構成され、エレメント内部のバッフルによって溶液の流れが何段にも分岐されることによって溶液が混合される。その為、粘性液体がエレメント内部のバッフルを通過する際のせん断速度が混合状態に大きく影響する。しかしながら、エレメント内部のバッフルを通過する際のせん断速度の測定やそのコントロールは困難である。その為、本願ではスタティックミキサーの配管内部において、粘性液体がバッフルを通過する直前の配管内のせん断速度を制御することでエレメント内部の混合状態を調整することとした。
【0024】
このとき、けん化原料溶液の粘度は、0.01〜30Pa・sとすることが好ましい。けん化原料溶液の粘度を上記範囲にすることで、移送も容易となり製造コストを抑えることができるため好ましい。
【0025】
さらに、けん化原料溶液中のポリビニルエステル濃度は、20〜60質量%とすることが好ましい。ポリビニルエステル濃度を上記範囲とすることで、移送も容易となり製造コストを抑えることができるため好ましい。
【0026】
一方、けん化触媒溶液中のけん化触媒濃度は、0.2〜10質量%とすることが好ましい。けん化触媒濃度を上記範囲とすることで、適度な反応速度でけん化反応が進行するため好ましい。
【0027】
また、けん化原料溶液が通流する流路1の中央部にけん化触媒溶液を導入する方法としては、例えば、
図2に示すように、流路1に、その通流方向と直交する方向に、導入口5aを備えたけん化触媒導入管5を貫通させて、その導入口5aを、流路1の中央部に通流方向下流側に向けて配置する方法がある。ここで、けん化触媒導入管5を貫通させているのは、流路1の通流方向に直交する断面における各位置での流速を極力等しくして、けん化原料溶液の流れの乱れを最小限に抑えるためである。
【0028】
更に、流路1の中央部にけん化触媒溶液を導入しているのは、混合効率を良好にするためである。なお、流路1の中央部から外れた位置にけん化触媒溶液を導入した場合、通流方向に直交する断面における各位置において濃度むらが生じる。なお、導入口5aの大きさは、特に限定されるものではないが、流路1の直径に対して、0.05〜0.5倍であることが望ましい。触媒導入機構をこのような構成にすることにより、けん化原料溶液の流れの乱れを抑制し、効率的に原料を混合することができる。
【0029】
なお、けん化触媒溶液の導入方法は、
図2の方法に限定されるものではなく、装置構成などに応じて適宜選択することができる。例えば、けん化触媒導入管5をL字状の片持ちとしたり、けん化触媒導入管5を十字状とし、その中心に導入口5aを設けたりすることもできる。
【0030】
スタティックミキサー2のエレメント種類や配設数は、特に限定されるものではなく、流量、流速及び濃度などの条件に応じて適宜選択することができる。その際、スタティックミキサー2としては、1エレメントあたりの圧力損失が0.05MPa未満のものを使用することが好ましい。これにより、許容圧力が高い高価なポンプを使用しなくても、複数のエレメントを配設することが可能となるため、既存の設備を利用して、従来よりも少ないエネルギーで、良好な混合状態を達成することができる。
【0031】
また、スタティックミキサー2の1エレメントあたりの圧力損失は、0.03MPa未満であることがより好ましく、これにより、スタティックミキサー2の配設数を多くすることができるため、混合度をより高めることができる。ただし、スタティックミキサー2の配設数(エレメント数)を多くすると、混合度合いが高くなる一方で圧力損失が大きくなるため、原料供給ポンプや供給配管の許容圧力に応じて、口径を選択することが望ましい。
【0032】
本発明の製造方法では、このようなスタティックミキサー2を用いて、けん化原料溶液と導入されたけん化触媒とをせん断速度5〜90s
−1にて混合する。せん断速度が5s
−1未満であると、けん化原料溶液とけん化触媒とが十分に混ざり合わず、けん化反応が十分に進行しない。せん断速度は6s
−1以上であることが好ましく、7s
−1以上であることがより好ましい。一方、せん断速度が90s
−1を超えると、得られるPVA粉体の嵩比重が小さくなる傾向がある。せん断速度は70s
−1以下であることが好ましく、50s
−1以下であることがより好ましい。なお、せん断速度は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
【0033】
スタティックミキサー2で混合した混合物は、所定の温度条件下で所定時間保持し、けん化反応を進行させる。例えば、ベルトを移動させながら、20〜50℃の温度条件下で保持する。このときの保持時間は、目的とするけん化度に応じて設定することができ、例えば平均けん化度を90モル%程度にしたいときは、30分程度保持すればよい。なお、本発明は、ベルト型反応器を使用するものに限定されるものではなく、ベルト型反応器以外に、例えばニーダー型反応器及び塔型反応器などにも適用することができる。
【0034】
このけん化工程により、ポリビニルエステルにおけるビニルエステル単位の一部又は全部がけん化されて、ビニルアルコール単位となる。なお、前述したけん化工程により得られるPVAのけん化度は、特に限定されるものではなく、用途などに応じて適宜設定することができる。
【0035】
また、本発明のPVA粉体の製造方法においては、前述した重合工程及びけん化工程を行った後、粉砕工程と乾燥工程を行ってもよい。さらに粉砕工程は予備粉砕工程と本粉砕工程に分けて行ってもよい。けん化工程を経たPVAは、乾燥前の予備粉砕工程や乾燥後の本粉砕工程で溶媒除去後の平均粒子径が前記の範囲内となるように調製され、本発明のPVA粉体となる。本発明に用いる粉砕装置は、本発明で規定する平均粒子径および好ましい粒度分布に粉砕機の回転速度等で適宜調整できるものであれば特に限定されない。本発明のPVA粉体の製造方法においては、さらには必要に応じて酢酸ナトリウムなどの不純物を除去するための洗浄工程を行ってもよい。
【0036】
図3(a)は実施例1のPVA粉体の予備粉砕後の表面を光学顕微鏡で観察した写真であり、(b)は比較例1のPVA粉体の予備粉砕後の表面を光学顕微鏡で観察した写真である。本実施形態のPVA粉体では、例えば実施例1の
図3(a)に示すようにPVA粉体の内部および表面に気泡はほとんど存在しない。一方、従来のPVA粉体では比較例1の
図3(b)に示すようにPVA粉体の内部および表面に多くの気泡が存在する。一般に、PVA粉体を水に溶解させて水溶液を調整する際には、平均粒子径が小さいほど、PVA表面付近が即座に溶解し凝集体が発生しやすい。この凝集体は内部に水を抱き込んだ状態になり、加熱しても容易に溶解せず、その後のPVA水溶液の調整が困難となる。その為、この凝集体の発生を回避するにはPVA粉体の平均粒子径は大きいことが望ましい。しかしながら、従来のPVA粉体の製造方法では
図3(b)に示すようにPVA粉体の内部および表面に多くの気泡が存在する為、平均粒子径の大きいPVA粉体では嵩比重が小さくなる問題があった。一方、本実施形態のPVA粉体では、PVA粉体の内部および表面に気泡はほとんど含まない。さらには、特定範囲の平均粒子径であり、かつ特定範囲の部分における嵩比重を調整することで、粉体形状から水溶液を調整する際の溶解性に優れ、かつ嵩比重が大きいPVA粉体が得られる。
【0037】
以上詳述したように、本発明のPVA粉体の製造方法においては、けん化原料溶液とけん化触媒溶液とを特定の方法で導入した後、特定のせん断速度の範囲にてスタティックミキサーで混合することにより、本発明のPVA粉体を容易に製造することができる。また、スタティックミキサーは、混合熱が発生しないため、混合時にけん化反応が進行することがない。このため、製造されるPVA粉体の品質を安定化することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。以下の実施例および比較例において「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準を意味する。
【0039】
[せん断速度の測定]
実施例および比較例の製造方法において、せん断速度は、ポリ酢酸ビニル(以下、「PVAc」と略記することがある)溶液のフィード量(m
3/s)、スタティックミキサーの断面積(m
2)およびスタティックミキサーの直径(m)から、次式により求められる。スタティックミキサーの直径を変更することによりせん断速度を制御することができる。
せん断速度(s
−1)=PVAc溶液のフィード量/(スタティックミキサーの断面積×スタティックミキサーの直径)
【0040】
[PVA粉体の平均粒子径の測定]
実施例および比較例で用いられたPVA粉体を湿度65%RH、温度25℃の条件下で24時間静置した。次いで、光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープKH−7700;株式会社ハイロックス社製)を用いて写真撮影をした。その写真から任意に50個のPVA粉体を選び、それぞれ実測し、その長径の平均値を平均粒子径(μm)とした。ただし、20μm未満のPVA微粉は、写真のコントラスト斑と区別がつかないため、測定の対象外とした。
【0041】
[PVA粉体の粒度分布の測定]
実施例および比較例で用いられたPVA粉体300gについて、メッシュサイズの異なる4種類の篩い(メッシュサイズ:250μm、500μm、1000μm、1180μm)を用いて篩い分けした。得られた各粒子径を持つPVA粉体の質量を測定して、各々の質量%を計算した。
【0042】
[PVAの嵩比重の測定]
実施例および比較例で用いられたPVA粉体、および粒子径500〜1000μmに篩い分けしたPVAについて、JIS K6720−2に準じた方法により嵩比重を測定した。
【0043】
[PVA粉体の溶解性の評価] 温度20℃の蒸留水288gが入ったフラスコ内を半月型攪拌翼で攪拌しながら、実施例および比較例で用いられたPVA粉体(粒子径500〜1000μmに篩い分けしたもの)を12g入れ、スラリーを調整した。その後、フラスコを0.9℃/分の速さで加熱し、スラリーの温度が30℃に達した直後にPVA水溶液を採取した。次いで、PVAの濃度(溶解度%)を測定することで、この過程で溶解したPVAの量を算出し、以下の基準に従って評価した。結果を表2に示す。A:60質量%以上B:55質量%以上60質量%未満C:50質量%以上55質量%未満
D:50質量%未満
【0044】
[PVA粉体の飛散性の評価] 内径5cm、高さ1mのアクリル円筒容器を垂直に立て、円筒上部よりPVA粉体を100g自然落下させる。落下後に舞い上がった微粉を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。結果を表2に示す。A:ほとんどないB:少しあるC:多い
【0045】
[実施例1]
けん化原料溶液であるポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液(濃度32質量%)を4700L/h(=1.31×10
−3m
3/s)でフィードし、けん化触媒溶液である水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度4質量%)を
図2に示す流路中央部に165L/hでフィードした。フィードされたけん化原料溶液およびけん化触媒溶液をエレメント数22個(1エレメント当たりの圧力損失は0.035MPa)のスタティックミキサーを用いて、せん断速度10.6s
−1の条件で混合した。得られた混合物を、ベルト上に載置し、40℃の温度条件下で18分保持して、けん化反応を進行させた。その後、予備粉砕、乾燥、本粉砕を行い、本粉砕時の粉砕機出口で12メッシュ(JIS規格)の篩いを通し、本発明のPVA粉体を得た。得られたPVAの粘度平均重合度は2400、けん化度は88.3モル%であった。得られたPVAの分析結果を表2に示す。
【0046】
[実施例2〜6および比較例1〜3]
けん化反応、粉砕の製造条件を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜6および比較例1〜3のPVA粉体をそれぞれ得た。得られたPVAの分析結果を表2に示す。
【0047】
[比較例4]
けん化反応の条件を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様に実施した。その結果、不均質な混合溶液の状態で鹸化反応が起こり、均質なPVA粉体が得られなかった。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
以上の結果から、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液からなるけん化原料溶液が通流する流路中央部に、けん化触媒を導入した後、スタティックミキサーを使用してせん断速度5〜90s
−1にてけん化原料溶液とけん化触媒とを混合することで、耐飛散性が良好であり、得られるPVA粉体が水溶性に優れ、かつ嵩比重が大きい為輸送コストを低下できることが分かる。このような本発明のPVA粉体は、各種バインダー、紙加工、繊維加工およびエマルジョン用等の安定剤や、PVA系フィルムおよびPVA系繊維等の原料として有用である。