特許第6772347号(P6772347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772347
(24)【登録日】2020年10月2日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】高温処理チャンバリッド
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   C23C16/44 B
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-133677(P2019-133677)
(22)【出願日】2019年7月19日
(62)【分割の表示】特願2018-83677(P2018-83677)の分割
【原出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2019-203198(P2019-203198A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2019年8月16日
(31)【優先権主張番号】61/776,239
(32)【優先日】2013年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/204,252
(32)【優先日】2014年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】デュルカン イルカー
(72)【発明者】
【氏名】ヒューストン ジョエル エム
(72)【発明者】
【氏名】ウ ディエン イェ
(72)【発明者】
【氏名】カオ チェン テ
(72)【発明者】
【氏名】チャン メイ
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−45683(JP,A)
【文献】 特開平11−162393(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0157683(US,A1)
【文献】 特開2008−274437(JP,A)
【文献】 特開2009−065121(JP,A)
【文献】 特表2005−526375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバであって、
上面を有するチャンバ壁を含むチャンバ本体であって、前記チャンバ壁が処理領域を囲み、前記処理領域がウエハ支持体および処理ライナを含み、前記チャンバ壁が、前記処理領域へのアクセスを可能にするために選択的に開閉することのできるスリットバルブ開口を有する、チャンバ本体と、
チャンバリッドであって、
前記処理ライナの上面に隣接して配置される底面、および上面を有する、高温リッドモジュール、
前記高温リッドモジュールの外側エッジの周りにあるハウジングであって、前記ハウジングと前記高温リッドモジュールとの間に内側領域を形成し、前記チャンバ壁の前記上面に隣接する下端、および上端を有する中空円筒壁を備える、ハウジング、ならびに
前記ハウジングの前記中空円筒壁の前記上端と前記高温リッドモジュールの前記上面との間に配置される弾性シール用Oリング
を備える、チャンバリッドと
を備え、
前記処理領域が減圧下にないとき、前記高温リッドモジュールと前記処理ライナとの間にギャップがあり、前記処理領域が減圧下にあるとき、前記ハウジングが撓曲して、前記高温リッドモジュールが前記ハウジング内で移動し、それにより、前記ギャップを閉じて前記処理ライナの前記上面に接することができ、
前記弾性シール用Oリングが、前記ハウジングの大気側と、前記ハウジングと前記高温リッドモジュールの間にある前記内側領域との間に、シールを形成する、
処理チャンバ。
【請求項2】
前記ハウジングが可撓性であり、それにより、前記高温リッドモジュールが前記ハウジング内で移動でき、ある程度の移動を許容する一方で、初期の形状を保ち、したがって、圧力が等しくなると、前記高温リッドモジュールが前記初期の形状に戻ることができる、請求項1に記載の処理チャンバ。
【請求項3】
前記高温リッドモジュールが、初期の位置から最大で約1インチの距離を移動することができる、請求項2に記載の処理チャンバ。
【請求項4】
前記中空円筒壁が、外側中空円筒壁と、内側中空円筒壁と、前記外側中空円筒壁および前記内側中空円筒壁に接する下部環帯と、前記内側中空円筒壁に接続された上部環帯とを備える、請求項1に記載の処理チャンバ。
【請求項5】
前記弾性シール用Oリングが、前記上部環帯の下壁と前記高温リッドモジュールの前記上面との間に配置される、請求項4に記載の処理チャンバ。
【請求項6】
前記外側中空円筒壁と、前記下部環帯と、前記内側中空円筒壁と、前記上部環帯とが一体形成される、請求項4に記載の処理チャンバ。
【請求項7】
前記下部環帯が、前記外側中空円筒壁、前記内側中空円筒壁、および前記上部環帯よりも薄い、請求項6に記載の処理チャンバ。
【請求項8】
前記下部環帯と、前記内側中空円筒壁と、前記上部環帯とが一体形成され、前記外側中空円筒壁が独立している、請求項4に記載の処理チャンバ。
【請求項9】
前記外側中空円筒壁の上端と前記下部環帯の下面との間に配置されたOリングをさらに備える、請求項8に記載の処理チャンバ。
【請求項10】
前記高温リッドモジュールが、底面上に複数の開孔を含むシャワーヘッドアセンブリを備える、請求項1に記載の処理チャンバ。
【請求項11】
加熱時に前記高温リッドモジュールが膨張しても、前記高温リッドモジュールと前記ハウジングとの間に更なる接点が形成されない、請求項1に記載の処理チャンバ。
【請求項12】
加熱時に前記高温リッドモジュールが膨張することにより、前記高温リッドモジュールの外側エッジが前記ハウジングの内面に接する、請求項1に記載の処理チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理チャンバリッドに関する。より詳細には、本開示の実施形態は、シール材に対する損傷を防ぎ、処理キット構成要素に損傷を与えずにリッドを設置できるようにする、処理チャンバリッドを対象とする。
【背景技術】
【0002】
チャンバのリッドが加熱されると、チャンバリッドと壁との間の弾性シール材も加熱される。これにより、弾性シール材が機能しなくなり、表面に貼りつき、漏れて、形が崩れる。
さらに、リッドを加熱している間、リッドに接するチャンバ本体は、比較的低温のままでなければならない。温度差があるため、高温リッドが膨張し、チャンバ本体に対するリッドの相対的な変位が生じる。これにより、チャンバ内に擦傷および粒子が形成されるおそれがある。
さらに、処理領域の温度を均一に保つために、高温リッド構成要素を処理キット構成要素に接触させることができ、それにより、リッドと処理キット構成要素とが接し、熱均一性を可能にしている。しかし、リッドの設置中に、接することにより処理キット構成要素が損傷するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
チャンバリッドとチャンバ本体の温度差の影響を最小限に抑えながら、処理チャンバをシールする装置および方法が、当技術分野で引き続き必要とされている。
さらに、チャンバリッドが処理キット構成要素に接し、場合によっては、処理キット構成要素に損傷を与えてしまうことのないようにして、処理チャンバをシールする装置および方法が、当技術分野で引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つまたは複数の実施形態は、高温リッドモジュールと、ハウジングと、弾性シール用Oリングとを備えるリッドアセンブリを対象とする。高温リッドモジュールは、処理チャンバの処理キットに隣接して配置される底面、および上面を有する。ハウジングは、高温リッドモジュールの周りにある。ハウジングは、処理チャンバ本体に隣接して配置される下端、および上端を有する、中空円筒壁を備える。弾性シール用Oリングは、ハウジングの中空円筒壁の上端と高温リッドモジュールの上面との間に配置される。ハウジングは、高温リッドモジュールがハウジング内で移動できるように、可撓性である。
いくつかの実施形態では、ハウジングの中空円筒壁が、外側中空円筒壁と、内側中空円筒壁と、外側中空円筒壁および内側中空円筒壁に接する下部環帯と、内側中空円筒壁に接続された上部環帯とを備える。1つまたは複数の実施形態では、弾性シール用Oリングが、上部環帯の下壁と高温リッドの上面との間に配置される。いくつかの実施形態では、外側中空円筒壁と、下部環帯と、内側中空円筒壁と、上部環帯とが一体形成される。1つまたは複数の実施形態では、下部環帯が、外側中空円筒壁、内側中空円筒壁、および上部環帯よりも薄い。
いくつかの実施形態では、下部環帯と、内側中空円筒壁と、上部環帯とが一体形成され、外側中空円筒壁が独立している。1つまたは複数の実施形態では、リッドアセンブリが、外側中空円筒壁の上端と下部環帯の下面との間に配置されたOリングをさらに備える。
いくつかの実施形態では、ハウジングは、高温リッドモジュールがハウジング内で最大で約1インチ移動できるようにするのに十分な可撓性を有する。1つまたは複数の実施形態では、高温リッドモジュールは、底面上に複数の開孔を含むシャワーヘッドアセンブリを備える。
【0005】
本発明の更なる実施形態は、チャンバ本体と、チャンバリッドとを備える処理チャンバを対象とする。チャンバ本体は、上面を有する円筒チャンバ壁を含む。円筒チャンバ壁は、処理領域を囲み、処理領域は、ウエハ支持体、およびウエハ支持体を取り囲む処理ライナを含む。チャンバリッドは、高温リッドモジュール、およびハウジングを備える。高温リッドモジュールは、処理ライナの上面に隣接して配置される底面、および上面を有する。ハウジングは、高温リッドモジュールの周りにあり、円筒チャンバ壁の上面に隣接する下端、および上端を有する、中空円筒壁を備える。弾性シール用Oリングが、ハウジングの中空円筒壁の上端と高温リッドモジュールの上面との間に配置される。Oリングが、円筒チャンバ壁の上面とハウジングの中空円筒壁の下端との間に配置される。処理領域が大気圧下にあるとき、高温リッドモジュールの底面が処理ライナの上面に接触せず、処理領域が減圧下にあるとき、ハウジングが撓曲して、高温リッドモジュールがハウジング内で移動し、それにより、処理ライナの上面に接することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、ハウジングの中空円筒壁が、外側中空円筒壁と、内側中空円筒壁と、外側中空円筒壁および内側中空円筒壁に接する下部環帯と、内側中空円筒壁に接続された上部環帯とを備える。1つまたは複数の実施形態では、弾性シール用Oリングが、上部環帯の下壁と高温リッドの上面との間に配置される。いくつかの実施形態では、外側中空円筒壁と、下部環帯と、内側中空円筒壁と、上部環帯とが一体形成される。1つまたは複数の実施形態では、下部環帯が、外側中空円筒壁、内側中空円筒壁、および上部環帯よりも薄い。
いくつかの実施形態では、下部環帯と、内側中空円筒壁と、上部環帯とが一体形成され、外側中空円筒壁が独立している。1つまたは複数の実施形態は、外側中空円筒壁の上端と下部環帯の下面との間に配置されたOリングをさらに備える。
【0007】
いくつかの実施形態では、ハウジングは、高温リッドモジュールがハウジング内で最大で約1インチ移動できるようにするのに十分な可撓性を有する。1つまたは複数の実施形態では、高温リッドモジュールは、底面上に複数の開孔を含むシャワーヘッドアセンブリを備える。いくつかの実施形態では、加熱時に高温リッドモジュールが膨張しても、高温リッドモジュールとハウジングとの間に更なる接点が形成されない。
本発明の例示的な実施形態が達成され、それを詳細に理解することができるように、上で簡潔に要約した本発明のより詳細な説明を、添付の図面に示されている本発明の実施形態を参照して行うことができる。本発明を曖昧にしないために、特定の周知の処理については本明細書で論じないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】従来型の処理装置の断面概略図である。
図2】本発明の1つまたは複数の実施形態による、リッドアセンブリの断面概略図である。
図3】本発明の1つまたは複数の実施形態による、リッドアセンブリの断面概略図である。
図4】本発明の1つまたは複数の実施形態による、大気圧下での処理チャンバの断面概略図である。
図5】本発明の1つまたは複数の実施形態による、減圧条件下での図4の処理チャンバの断面概略図である。
図6】本発明の1つまたは複数の実施形態による、リッドアセンブリの部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
理解しやすくする目的で、これらの図に共通の同一要素を示すために、可能な限り同一の参照番号が使用されている。ある実施形態の要素および特徴を、さらに列挙しなくても他の実施形態に有利に組み込めることが企図されている。しかし、添付の図面は、本発明の例示的な実施形態を示すにすぎず、したがって、本発明が他の等しく効果的な実施形態を許容できるので、本発明の範囲を限定するものとは見なすべきでないことに留意されたい。
図1は、従来型の処理チャンバ100の概略図を示す。処理チャンバ100は、チャンバ本体112と、リッドアセンブリ120とを含む。リッドアセンブリ120は、チャンバ本体112の上端に配設される。処理チャンバ100および関連するハードウェアは、それらに限定されないが、例えば、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、ニッケルめっきアルミニウム、ニッケルめっきアルミニウム6061−T6、ステンレス鋼、ならびにそれらの組合せおよび合金を含む、任意の適切な材料で作製することができる。
【0010】
リッド120とチャンバ本体112との間に、例えばOリング125によってシールが形成される。リッド120の重量およびチャンバ100内の減圧により、リッド120がチャンバ本体112の上部に向かって移動し、それにより、Oリング125が圧縮してシールが強化される。
支持体アセンブリ140が、チャンバ本体112内に少なくとも部分的に配設される。図示の支持体アセンブリ140は、ウエハ支持体145と可動シャフト147の、2つの部分から構成される。可動シャフト147を、例えばアクチュエータモータによって、垂直に移動させて、ウエハ支持体145の上面146を、リッド120の下面121のより近くに、またはそこからより遠くに配置することができる。支持体アセンブリ140は、ウエハ支持体145内に電極として図示されているウエハヒータ148も含むことができるが、他のウエハヒータ148(例えば複数の加熱ランプ)を使用することもできる。
【0011】
チャンバ本体112は、チャンバ本体112の側壁内に形成される、処理チャンバ100の内部へのアクセスを可能にするためのスリットバルブ開口のような、図示していない構成要素を含むことができる。スリットバルブ開口は、ウエハハンドリングロボット(図示せず)によるチャンバ本体112の内部へのアクセスを可能にするために、選択的に開閉することができる。1つまたは複数の実施形態では、ウエハを、スリットバルブ開口を通じて処理チャンバ100内に輸送し、またスリットバルブ開口を通じて処理チャンバ100から外に出して、隣接する移送チャンバおよび/もしくはロードロックチャンバ、またはクラスタツール内の別のチャンバまで輸送することができる。
チャンバ本体112は、その中に形成される、熱伝達流体を中に流すためのチャネル113を含むこともできる。熱伝達流体は、加熱流体でも冷媒でもよく、それを使用して、処理および基板移送中に、チャンバ本体112の温度を制御することができる。熱伝達流体の例には、それらに限定されないが、水、エチレングリコール、またはそれらの混合液がある。例示的な熱伝達流体には、窒素ガスもあり得る。
【0012】
チャンバ本体112はさらに、支持体アセンブリ140を取り囲むライナ133を含むことができる。ライナ133は、「処理キット」の部分であり、点検および洗浄のために取出し可能であってよい。ライナ133は、アルミニウムなどの金属、またはセラミック材料から作製することができる。しかし、ライナ133は、処理に適合するどんな材料でもよい。ライナ133をビードブラストして、上に堆積した任意の材料の付着性を高め、それにより、処理チャンバ100を汚染する材料の剥離を防ぐことができる。1つまたは複数の実施形態では、ライナ133は、図6に示す1つまたは複数の開孔135、および真空システムと流体連通するポンピングチャネルを含む。開孔135は、処理ガスが処理チャンバ100に流れ込めるようにし、かつ/または処理チャンバ100からガスを除去できるようにする、流路を提供することができる。
処理チャンバ100は、真空ポンプと、ガスの流れを調整するためのスロットルバルブとを備えた、真空システムを含むことができる。真空ポンプを、チャンバ本体112の側部または底部に開いた真空ポートに結合して、処理チャンバ100内の処理領域との流体連通を可能にすることができる。
【0013】
処理チャンバ100のリッド120が加熱されると、Oリング125も加熱される。この結果、Oリング125を構成している弾性シール材が、機能しなくなる(例えば漏れ、貼りつき、形が崩れる)おそれがある。さらに、リッド120を加熱している間、120リッドに接するチャンバ本体112は、比較的低温に留まっている必要がある。例えば、リッド120は約250℃の温度まで加熱されることがあり、一方、チャンバ本体112は約65℃の温度に保たれる。高温リッドと比較的低温のチャンバ本体のこの温度差により、高温リッドが外側128に膨張することがある。この膨張により、チャンバ本体112に対するリッド120の相対的な変位が生じ、チャンバ100の内側に擦傷および/または粒子が形成するおそれがある。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、高温リッド部分が比較的低温のチャンバ本体に接するのを最小限に抑える、チャンバリッドを対象とする。いくつかの実施形態は、シール面をリッドの比較的低温の場所に移動させる。
【0014】
さらに、処理領域117の温度を均一に保つために、高温リッド120の構成要素を処理キット構成要素(例えば処理ライナ133)に接触させることができ、それにより、熱均一性が促進され得る。しかし、リッド120の設置中に、リッド120と処理キット構成要素とが接することにより、処理キット構成要素が損傷するおそれがある。損傷の可能性を軽減するために、本発明の実施形態は、リッド120が処理キットに対して上下に移動できるようにする。
いくつかの実施形態は、リッド上に薄い弾性構成要素を含み、それにより、リッド構成要素が上下に移動できるようになる。部品が設置されたとき、リッドと処理キットとの間には、損傷を防ぐのに十分な距離がある。チャンバが真空排気されると、弾性構成要素にかかる圧力差により、リッドが処理キットに向かって移動し、そこに接触する。この圧力差は、リッド構成要素にとって十分な移動を可能にしながらも、弾性材料の永久歪みは引き起こさない。
【0015】
したがって、本発明の1つまたは複数の実施形態は、低圧処理チャンバで用いるリッドアセンブリ200を対象とする。図2を参照すると、リッドアセンブリ200は、高温リッドモジュール220と、高温リッドモジュール220を取り囲むハウジング250とを含む。ハウジング250は、高温リッドモジュール220を取り囲むが、どんな所望の形状を有してもよい。本明細書に図示し記載するハウジングの形状は例示にすぎず、他の形状が本発明の範囲内に含まれてよい。
高温リッドモジュール220は、単一の一体型構成要素でもよく、いくつかの構成要素から構成されてもよい。例えば、図2に示す高温リッドモジュールは、シャワーヘッド230、およびガス源231を含む。シャワーヘッドは、ガスをシャワーヘッド230から(図4に示す)ウエハ160の上方の処理領域117に流すための、複数の開孔を含むことができる。高温リッドモジュール220内に他の構成要素が含まれてよいことを、当業者なら理解するであろう。説明の便宜上、図2以外の図は、高温リッドモジュール220を単一構成要素として示している。
【0016】
高温リッドモジュール220の形状および設計は、関与する特定の構成要素に応じた、任意の適切な形状であってよい。図中に示す形状は、可能な1つの形状を表しているにすぎず、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではない。高温リッドモジュール220は、例えば処理チャンバ100の処理キット(例えば処理ライナ133)に隣接して配置することのできる、底面221を有する。高温リッドモジュール220は、以下に記載するようにハウジング250と相互作用することのできる、上面222も含む。
【0017】
ハウジング250は、高温リッドモジュール220の周りにある。別の言い方をすれば、ハウジング250は、高温リッドモジュール220の、処理中に大気に晒される面積を最小限に抑えるように、高温リッドモジュール220の外側エッジを取り囲む。ハウジング250は、処理チャンバ本体112に隣接して配置される下端252、および上端253を有する、中空円筒壁251を備える。
弾性シール用Oリング225が、中空円筒壁251の上端253と高温リッドモジュール220の上面222との間に配置される。図2に示すOリング225は、中空円筒壁251の内面254に接する。Oリング225は、ハウジング250の大気側と、ハウジング250と高温リッドモジュール220の間にある内側領域216との間に、シールを形成する。
【0018】
ハウジング250は可撓性であり、それにより、高温リッドモジュール220がハウジング250内で移動できるようになっている。例えば、高温リッドモジュール220の下方の圧力が大気圧より低いとき、モジュールは下方に移動することになる。ハウジング250は、ある程度の移動を許容する一方で、その初期の形状を保ち、したがって、圧力が等しくなると、高温リッドモジュール220が元の位置に戻る。高温リッドモジュール220が移動する量はさまざまでよい。いくつかの実施形態では、高温リッドモジュール220が、その初期の位置から最大で約1インチの距離を移動することができる。1つまたは複数の実施形態では、高温リッドモジュール220が、約0.1インチ〜約1インチの範囲内、または約0.15インチ〜約0.5インチの範囲内、または約0.2インチ〜約0.4インチの範囲内で移動することができる。
高温リッドモジュール220は、それがハウジング250に対して垂直移動するのに加えて、加熱の結果、膨張することもある。高温リッドモジュール220が高温であり、ハウジングが比較的低温である場合、この温度差により、高温リッドモジュール220がハウジング250に対して膨張することになる。いくつかの実施形態では、高温リッドモジュール220が膨張することにより、高温リッドモジュール220の外側エッジがハウジング250の内面254に、接触する(touch)または接する(contact)。いくつかの実施形態では、加熱時に高温リッドモジュール220が膨張しても、高温リッドモジュール220とハウジング250との間に更なる接点が形成されない。
【0019】
図3は、中空円筒壁251がいくつかの区分から構成される、ハウジング250の別の実施形態を示す。この場合、中空円筒壁は、外側中空円筒壁261と、内側中空円筒壁263とを備える。外側中空円筒壁261および内側中空円筒壁263に接する下部環帯262。上部環帯264が、内側中空円筒壁263に接続される。いくつかの実施形態では、弾性シール用Oリング225が、上部環帯264の下壁265と高温リッドモジュール220の上面222との間に配置される。
図3に示す実施形態では、外側中空円筒壁261と、下部環帯262と、内側中空円筒壁263と、上部環帯264とが一体形成される。すなわち、これらの個別の構成要素が、単一部片として形成されるということである。
図4は、チャンバ本体と、チャンバリッド200とを含む、処理チャンバ100の一実施形態を示す。チャンバ本体は、上面114を有する円筒チャンバ壁112を含み、円筒チャンバ壁112は、処理領域117を囲む。処理領域117は、図ではウエハ160を支持しているウエハ支持体145、およびウエハ支持体145を取り囲む処理ライナ133を含む。チャンバリッド200は、処理ライナ133の上面115に隣接して配置される底面221を有する、高温リッドモジュール220を備える。処理ライナ133の上面115と高温リッドモジュール220の底面221との間には、ギャップ290がある。
【0020】
図4の実施形態は、下部環帯262と、内側中空円筒壁263と、上部環帯264とが一体形成され、外側中空円筒壁261が独立した構成要素である、ハウジング250を有する。区分または曲がり目の数に応じて、ハウジング250を構成する、一体形成される部分と独立した部分の他の構成があることを、当業者なら理解するであろう。例えば、外側円筒壁261と、下部環帯262と、内側円筒壁263とが一体形成され、上部環帯264が独立していてよい。いくつかの実施形態では、ハウジング250が、1つの別個の構成要素(例えば図2のドーム形状)から構成され、または2個、3個、4個(例えば図4)、5個、6個、7個、8個、9個、もしくはより多くの別個の部分から構成され、これらの別個の部分のうちの任意数が一体形成される。
【0021】
図4に示すように、外側中空円筒壁261が独立した構成要素である状態で、Oリング270が、外側中空円筒壁261の上端271と下部環帯262の下面272との間に配置される。このOリング270は、処理領域と大気との間のシールを破らずに、ハウジング250の部分が単独で撓曲するのを可能にすることができる。
ハウジング250、またはハウジングの部分の厚さは、撓曲をよりしやすく、またはよりしにくくするように、さまざまであってよい。いくつかの実施形態では、図4に示すように、ハウジング250の下部環帯262が上部環帯264よりも薄い。したがって、高温リッドモジュール220が下方に移動するとき、ハウジング250が下部環帯262を中心として撓曲する。すなわち、下部環帯262の部分が曲がる可能性があり、またはOリング270を通じて外側円筒壁261に至る接続部、もしくは内側円筒壁に至る接続部が、移動もしくは撓曲する可能性があるということである。
【0022】
処理領域117が減圧下にないとき、高温リッドモジュール220と処理ライナ133との間にはギャップ290がある。これにより、処理ライナ133と高温リッドモジュール220の底面221のどちらかに擦傷または打痕をつける危険を冒すことなく、リッドをチャンバ上に配置することができる。別の言い方をすれば、処理領域117が大気圧下にあるとき、高温リッドモジュール220の底面221は、処理ライナ133の上面115に接触しない。図5に示すように、処理領域117が減圧下にあるとき、ハウジング250が撓曲して、高温リッドモジュール220がハウジング250内で移動し、それにより、処理ライナ133の上面115に接することができる。この場合、ギャップ290は、狭かったものが存在しなくなるまでになり、したがって、高温リッド220と処理ライナ133が直接接して、処理チャンバ内の加熱均一性が強化される。
【0023】
図6は、本発明の1つまたは複数の実施形態による、ハウジング250の一部分の断面斜視図を示す。この場合、ハウジング250は、下部環帯262と、内側中空円筒263と、上部環帯264とを含む、一体型構成要素である。外側コネクタ領域273が、下部環帯262の外側周辺エッジの周りに示されている。図示の外側コネクタ領域273は、複数の孔295を有し、それを通じて、ハウジング250をチャンバの上部に、または外側円筒壁261の上部に接続することができる。上部環帯に開いた複数の孔296もあり、それを使用して、ハウジングを高温リッドモジュール220の上面に接続することができる。
【0024】
上述の内容は、本発明の実施形態を対象としているが、本発明の他の更なる実施形態を、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく考案することができ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
1.リッドアセンブリであって、
処理チャンバの処理キットに隣接して配置される底面、および上面を有する、高温リッドモジュールと、
前記高温リッドモジュールの周りにあるハウジングであって、処理チャンバ本体に隣接して配置される下端、および上端を有する中空円筒壁を備える、ハウジングと、
前記ハウジングの前記中空円筒壁の前記上端と前記高温リッドモジュールの前記上面との間に配置される、弾性シール用Oリングと
を備え、
前記ハウジングが、前記高温リッドモジュールが前記ハウジング内で移動できるように、可撓性である、
リッドアセンブリ。
2.処理チャンバであって、
上面を有する円筒チャンバ壁を含むチャンバ本体であって、前記円筒チャンバ壁が処理領域を囲み、前記処理領域が、ウエハ支持体、および前記ウエハ支持体を取り囲む処理ライナを含む、チャンバ本体と、
チャンバリッドであって、
前記処理ライナの上面に隣接して配置される底面、および上面を有する、高温リッドモジュール、
前記高温リッドモジュールの周りにあるハウジングであって、前記円筒チャンバ壁の前記上面に隣接する下端、および上端を有する中空円筒壁を備える、ハウジング、ならびに
前記ハウジングの前記中空円筒壁の前記上端と前記高温リッドモジュールの前記上面との間に配置される、弾性シール用Oリング
を備える、チャンバリッドと、
前記円筒チャンバ壁の前記上面と前記ハウジングの前記中空円筒壁の前記下端との間に配置される、Oリングと
を備え、
前記処理領域が大気圧下にあるとき、前記高温リッドモジュールの前記底面が前記処理ライナの前記上面に接触せず、前記処理領域が減圧下にあるとき、前記ハウジングが撓曲して、前記高温リッドモジュールが前記ハウジング内で移動し、それにより、前記処理ライナの前記上面に接することができる、
処理チャンバ。
3.前記ハウジングの前記中空円筒壁が、外側中空円筒壁と、内側中空円筒壁と、前記外側中空円筒壁および前記内側中空円筒壁に接する下部環帯と、前記内側中空円筒壁に接続された上部環帯とを備える、1または2に記載の装置。
4.前記弾性シール用Oリングが、前記上部環帯の下壁と前記高温リッドの前記上面との間に配置される、3に記載の装置。
5.前記外側中空円筒壁と、前記下部環帯と、前記内側中空円筒壁と、前記上部環帯とが一体形成される、3に記載の装置。
6.前記下部環帯が、前記外側中空円筒壁、前記内側中空円筒壁、および前記上部環帯よりも薄い、5に記載の装置。
7.前記下部環帯と、前記内側中空円筒壁と、前記上部環帯とが一体形成され、前記外側中空円筒壁が独立している、3に記載の装置。
8.前記外側中空円筒壁の上端と前記下部環帯の下面との間に配置されたOリングをさらに備える、7に記載の装置。
9.前記ハウジングが、前記高温リッドモジュールが前記ハウジング内で最大で約1インチ移動できるようにするのに十分な可撓性を有する、1または2に記載の装置。
10.前記高温リッドモジュールが、底面上に複数の開孔を含むシャワーヘッドアセンブリを備える、1または2に記載の装置。
11.加熱時に前記高温リッドモジュールが膨張しても、前記高温リッドモジュールと前記ハウジングとの間に更なる接点が形成されない、1または2に記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6