特許第6772661号(P6772661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772661
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/158 20170101AFI20201012BHJP
   B01J 23/745 20060101ALI20201012BHJP
   B01J 23/90 20060101ALI20201012BHJP
   B01J 38/00 20060101ALI20201012BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C01B32/158
   B01J23/745 M
   B01J23/90 M
   B01J38/00 A
   B01J37/02 301B
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-162127(P2016-162127)
(22)【出願日】2016年8月22日
(65)【公開番号】特開2018-30739(P2018-30739A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】桑原 仁史
(72)【発明者】
【氏名】高井 広和
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−188811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/158
B01J 21/00 −38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に触媒層を設けてなるカーボンナノチューブ生成用基材を再利用しつつカーボンナノチューブを連続的に製造する方法であって、
基板上の触媒層形成面に触媒層を形成する工程(A)と、前記触媒層上にカーボンナノチューブを形成する工程(B)と、前記触媒層から前記カーボンナノチューブを剥離して回収する工程(C)と、前記カーボンナノチューブを剥離した触媒層を洗浄する工程(D)とを含み、
前記触媒層の総厚みが75nm以上であり、
前記カーボンナノチューブを形成する前の触媒層の光沢度(Gb)を200以上とし、
前記触媒層形成面の光沢度(Ga)に対する前記カーボンナノチューブを形成する前の触媒層の光沢度(Gb)の比(Gb/Ga)を1.50以上とする、カーボンナノチューブの製造方法。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ生成用基材を再利用する回数が4回以上である、請求項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブを形成する前の触媒層の光沢度(Gb)に対する前記洗浄を実施した後の触媒層の光沢度(Gc)の比(Gc/Gb)が0.20超である、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブの製造方法に関し、特には、高品質なカーボンナノチューブを効率的に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)は、力学的強度、光学特性、電気特性、熱特性、分子吸着能等の各種特性に優れており、電子デバイス材料、光学素子材料、導電性材料等の機能性材料としての展開が期待されている。
【0003】
ここで、CNTの製造方法の一つとして、化学気相成長法(以下、「CVD法」と称することがある。)が知られている。このCVD法は、高温雰囲気下で原料となる炭素化合物を金属微粒子よりなる触媒と接触させてCNTを合成することを特徴としている。そして、CVD法は、CNTの製造条件(例えば、触媒の種類または配置、炭素化合物の種類、或いは、反応条件など)の自由度が高く、また、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と多層カーボンナノチューブ(MWCNT)とのいずれも製造可能である製造方法として注目されている。
【0004】
また、CVD法を用いたCNTの製造方法の中でも、CNT合成用触媒からなる触媒層を担持した基材(以下、「CNT生成用基材」と称することがある。)を用いてCNTを合成する方法は、CNT生成用基材に対して垂直に配向した多数のCNTを大量に製造することができるため、特に注目されている。そのため、CNT生成用基材を使用してCVD法によりCNTを製造する方法に関し、製造コストの低減などを目的とした様々な提案がなされている。
【0005】
具体的には、例えば特許文献1,2では、CNT生成用基材上に形成したCNTを回収した後、使用済みのCNT生成用基材をCNTの合成に再利用することによりCNTの製造コストを低減する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−27948号公報
【特許文献2】特開2007−91485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、使用済みのCNT生成用基材の再利用を繰り返しつつCNTを連続的に製造する上記従来のCNTの製造方法には、高品質なCNTを効率的に製造し得るようにするという点において改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、高品質なカーボンナノチューブを連続して効率的に製造することを可能にするカーボンナノチューブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた。そして、本発明者は、CNT生成用基材を調製する際に触媒層を形成する部分(触媒層形成面)の光沢度と、CNTを形成する前のCNT生成用基材の触媒層の光沢度とが所定の比率になるようにすれば、高品質なカーボンナノチューブを連続して効率的に製造できることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、基板上に触媒層を設けてなるカーボンナノチューブ生成用基材を再利用しつつカーボンナノチューブを連続的に製造する方法であって、基板上の触媒層形成面に触媒層を形成する工程(A)と、前記触媒層上にカーボンナノチューブを形成する工程(B)と、前記触媒層から前記カーボンナノチューブを剥離して回収する工程(C)と、前記カーボンナノチューブを剥離した触媒層を洗浄する工程(D)とを含み、前記触媒層形成面の光沢度(Ga)に対する前記カーボンナノチューブを形成する前の触媒層の光沢度(Gb)の比(Gb/Ga)を0.70以上とすることを特徴とする。カーボンナノチューブ生成用基材を用いてカーボンナノチューブを形成する際に、触媒層形成面の光沢度(Ga)に対するカーボンナノチューブを形成する前の触媒層の光沢度(Gb)の比(Gb/Ga)を0.70以上とすれば、高品質なカーボンナノチューブを高収量で効率的に製造することができる。
なお、本発明において、「光沢度」とは、JIS Z8741に準拠し、光沢度計を用いて測定した60度鏡面光沢度を指す。
【0011】
ここで、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、前記触媒層の総厚みが60nm超であることが好ましい。触媒層の総厚みが60nm超の場合に光沢度の比(Gb/Ga)を上記範囲内にすると、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することができるからである。
なお、本発明において、「触媒層の総厚み」は、蛍光X線元素分析法(XRF)で測定することができる。そして、本発明において、基板上に複数の触媒層が形成されている場合には、「触媒層の総厚み」とは、カーボンナノチューブが形成される各触媒層の総厚みを指す。
【0012】
また、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、前記カーボンナノチューブ生成用基材を再利用する回数が4回以上であることが好ましい。カーボンナノチューブ生成用基材を再利用する回数が4回以上であれば、光沢度の比(Gb/Ga)を上記範囲内にした際に、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することができるからである。
【0013】
更に、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、前記カーボンナノチューブを形成する前の触媒層の光沢度(Gb)に対する前記洗浄を実施した後の触媒層の光沢度(Gc)の比(Gc/Gb)が0.20超であることが好ましい。光沢度の比(Gc/Gb)が0.20超であれば、カーボンナノチューブの品質および収量を更に高めることができるからである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカーボンナノチューブの製造方法によれば、高品質なカーボンナノチューブを連続して効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のカーボンナノチューブの製造方法では、基板と、基板上に設けられた触媒層とを備えるカーボンナノチューブ生成用基材の触媒層上でカーボンナノチューブ(CNT)を合成し、合成したCNTを触媒層から剥離することによりCNTを得る。そして、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、CNTの合成に使用された後のカーボンナノチューブ生成用基材(以下、「使用済み基材」と称することがある。)を再利用することにより低コストでCNTを製造する際に好適に用いられる。
【0016】
具体的には、本発明のカーボンナノチューブの製造方法は、基板上に触媒層を形成する工程(A)と、触媒層上にカーボンナノチューブを形成する工程(B)と、触媒層からカーボンナノチューブを剥離して回収する工程(C)と、カーボンナノチューブを剥離した触媒層を洗浄する工程(D)とを含む。そして、本発明のカーボンナノチューブの製造方法では、工程(A)〜(D)を繰り返して実施することにより、使用済み基材を再利用しつつカーボンナノチューブを連続して製造することができる。
【0017】
また、本発明のカーボンナノチューブの製造方法では、触媒層形成面の光沢度(Ga)に対するカーボンナノチューブを形成する前の触媒層の光沢度(Gb)の比(Gb/Ga)を0.70以上とすることを必要とする。このように、Gb/Gaが0.70以上となるようにすれば、高品質なCNTを高収量で効率的に製造することができる。
【0018】
<工程(A)>
工程(A)では、基板上の触媒層形成面に触媒層を形成し、カーボンナノチューブ生成用基材を得る。なお、基板と触媒層との間には、浸炭防止層などが設けられていてもよい。即ち、工程(A)では、任意の層を介して基板上に触媒層を形成してもよい。そして、触媒層形成面は、基板の表面であってもよいし、浸炭防止層などの任意の層の表面であってもよいし、使用済みの触媒層(洗浄後の触媒層)の表面であってもよい。
【0019】
[基板]
ここで、基板としては、その表面にCNT合成用の触媒を担持することが可能であれば任意の基板が用いられる。具体的には、基板としては、CNTの製造に実績のあるものを、適宜、用いることができる。なお、基板は、400℃以上の高温でも形状を維持できることが好ましい。
【0020】
そして、基板の材質としては、例えば、鉄、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、アルミニウム、マンガン、コバルト、銅、銀、金、白金、ニオブ、タンタル、鉛、亜鉛、ガリウム、インジウム、ゲルマニウムおよびアンチモンなどの金属、並びに、これらの金属を含む合金および酸化物、或いは、シリコン、石英、ガラス、マイカ、グラファイトおよびダイヤモンドなどの非金属、並びに、セラミックなどが挙げられる。これらの中でも、金属は、シリコンおよびセラミックと比較して、低コスト且つ加工が容易であるから好ましく、特に、Fe−Cr(鉄−クロム)合金、Fe−Ni(鉄−ニッケル)合金、Fe−Cr−Ni(鉄−クロム−ニッケル)合金などは好適である。
【0021】
基板の形状としては、平板状、薄膜状またはブロック状などが挙げられ、CNTを大量に製造する観点からは、体積の割に表面積を大きくとれる平板状が特に有利である。
【0022】
なお、平板状の基板を使用する場合、基板の厚さに特に制限はなく、例えば数μm程度の薄膜から数cm程度までのものを用いることができる。好ましくは、基板の厚さは0.05mm以上3mm以下である。基板の厚さが3mm以下であれば、CNTを合成する際に基板を十分に加熱することができ、CNTの成長不良の発生を抑制することができる。また、基板のコストを低減できる。一方、基板の厚さが0.05mm以上であれば、CNT合成時の浸炭による基板の変形を抑制することができ、また、基板自体のたわみが起こり難いため、基板の搬送や再利用に有利である。なお、本明細書にいう「浸炭」とは、基板に炭素成分が浸透することをいう。
【0023】
また、平板状の基板の形状および大きさに特に制限はないが、形状としては、長方形もしくは正方形のものを用いることができる。また、基板の一辺の長さに特に制限はないが、CNTの量産性の観点からは、一辺の長さは長いほど望ましい。
【0024】
[浸炭防止層]
ここで、基板は、表面上および裏面上の少なくとも一方に、浸炭防止層を有していてもよく、基板は、表面上および裏面上の両方に浸炭防止層を有していることが好ましい。浸炭防止層は、CNTを合成する際に基板が浸炭されて変形してしまうことを防止するための保護層である。
【0025】
そして、浸炭防止層は、金属またはセラミック材料によって構成されることが好ましく、特に浸炭防止効果の高いセラミック材料で構成されることが好ましい。金属としては、銅、アルミニウム等を例示できる。セラミック材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカアルミナ、酸化クロム、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の酸化物、窒化アルミニウムおよび窒化ケイ素等の窒化物を例示できる。これらの中でも、浸炭防止効果が高いことから、浸炭防止層を構成する材料としては、酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素が好ましい。
【0026】
なお、浸炭防止層上には後述する触媒層を形成するが、浸炭防止層の材質と触媒層の材質とが共通する場合には、浸炭防止層を設けることなく、触媒層を浸炭防止層として機能させてもよい。
【0027】
浸炭防止層の厚さは、0.01μm以上1.0μm以下が望ましい。浸炭防止層の厚さが0.01μm以上であると、浸炭防止効果を充分に得ることができる。一方、浸炭防止層の厚さが1.0μm以下であると、基板の熱伝導性が変化するのを抑制し、CNT合成時に基板を十分に加熱してCNTを良好に成長させることができる。浸炭防止層の層形成(コーティング)の方法としては、例えば、蒸着、スパッタリング等の物理的方法、CVD、塗布等の方法を用いることができる。
【0028】
[触媒層]
上述した基板上の触媒層形成面に設けられる触媒層は、CNT合成用触媒の微粒子を含む層である。ここで、触媒層を構成するCNT合成用触媒としては、例えば、これまでのCNTの製造に実績のあるものを、適宜、用いることができる。具体的には、鉄、ニッケル、コバルトおよびモリブデン、並びに、これらの塩化物および合金等をCNT合成用触媒として例示することができる。
【0029】
なお、触媒層は、上述したCNT合成用触媒のみで形成されていてもよいし、例えば、アルミニウム、チタン等の金属、または、アルミナ、チタニア、窒化チタン、酸化シリコンなどのセラミック材料からなる層の上に上述したCNT合成用触媒からなる層を積層した積層体であってもよい。
【0030】
中でも、基板を再利用した場合であってもCNTを良好に成長させる観点からは、触媒層としては、セラミック材料からなる層の上にCNT合成用触媒からなる層を積層した積層体が好ましく、アルミナ−鉄薄膜、アルミナ−コバルト薄膜、および、アルミナ−鉄−モリブデン薄膜がより好ましい。
【0031】
また、基板上への触媒層の形成方法としては、ウェットプロセスまたはドライプロセスのいずれを用いてもよい。具体的には、スパッタリング蒸着法や、金属微粒子を適宜な溶媒に分散させた液体の塗布・焼成法などを適用することができる。また、周知のフォトリソグラフィーまたはナノインプリンティングなどを適用したパターニングを併用して、触媒層を任意の形状とすることもできる。基板上に形成する触媒層の形状およびCNTの成長時間の調整により、薄膜状、円柱状、角柱状などの様々な形状のCNT配向集合体を得ることができる。
【0032】
なお、触媒層は、基板の表面側および裏面側の両側に形成してもよいし、何れか一方側のみに形成してもよい。また、使用済み基材を再利用してCNTを製造する場合には、触媒層は、使用済み基材が有する触媒層(使用済みの触媒層)の上に形成することができる。
【0033】
そして、工程(A)で新たに形成する触媒層の厚さは、0.1nm以上30nm以下が好ましく、0.5nm以上20nm以下がより好ましい。
また、基板上に形成された触媒層の総厚み(使用済み基材を再利用して使用済みの触媒層の上に新たに触媒層を形成した場合には、使用済みの触媒層の厚みと新たに形成した触媒層の厚みとの合計)は、60nm超であることが好ましく、75nm以上であることがより好ましい。
【0034】
なお、工程(A)において触媒層を形成する部分の表面(触媒層形成面)の光沢度(Ga)は、特に限定されることなく、50以上であることが好ましく、200以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましい。触媒層形成面の光沢度(Ga)が上記範囲内であれば、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することができるからである。
なお、光沢度(Ga)は、例えば触媒層を形成する部分の厚み、素材等を変更することにより、調整することができる。
【0035】
また、工程(A)において形成した触媒層の表面の光沢度(工程(B)においてカーボンナノチューブを形成する前の触媒層の光沢度(Gb))は、特に限定されることなく、150以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、400以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましい。カーボンナノチューブを形成する前の触媒層の光沢度(Gb)が上記範囲内であれば、得られるカーボンナノチューブの品質および収量を更に高めることができる。
なお、光沢度(Gb)は、例えば触媒層の厚み、形成条件、素材等を変更することにより、調整することができる。
【0036】
更に、光沢度(Ga)に対する光沢度(Gb)の比(Gb/Ga)は、0.70以上であることが必要であり、1.00以上であることが好ましく、1.50以上であることがより好ましく、2.50以下であることが好ましく、2.00以下であることがより好ましい。光沢度の比(Gb/Ga)が上記範囲内であれば、得られるカーボンナノチューブの品質および収量を更に高めることができる。
【0037】
<工程(B)>
工程(B)では、工程(A)で形成した触媒層上にカーボンナノチューブを形成する。ここで、触媒層上へのCNTの形成方法は、特に限定されないが、カーボンナノチューブ生成用基材の周囲環境をCNTの原料ガスを含む環境とした状態で当該カーボンナノチューブ生成用基材および原料ガスのうち少なくとも一方を加熱し、化学気相成長によりCNTを成長させる方法(CVD法)が好ましい。この方法によれば、カーボンナノチューブ生成用基材上に高効率でCNTを成長させることができ、触媒から成長した多数のCNTが特定の方向に配向したCNT配向集合体を容易に形成することができる。
【0038】
より具体的には、工程(B)における触媒層上へのCNTの形成は、特に限定されることなく、触媒層のCNT合成用触媒を還元するフォーメーション工程と、触媒層上でCNTを成長させる成長工程と、CNTが成長した基材を冷却する冷却工程とを順次実施することにより行うことができる。
【0039】
[フォーメーション工程]
フォーメーション工程では、CNTを形成するカーボンナノチューブ生成用基材の周囲環境を還元ガスを含む環境とした後、カーボンナノチューブ生成用基材および還元ガスのうち少なくとも一方を加熱して、触媒層のCNT合成用触媒を還元および微粒子化する。このフォーメーション工程により、CNT合成用触媒の還元、CNT合成用触媒の微粒子化の促進、およびCNT合成用触媒の活性向上のうち少なくとも一つの効果が現れる。フォーメーション工程におけるカーボンナノチューブ生成用基材および/または還元ガスの温度は、好ましくは400℃以上1100℃以下である。また、フォーメーション工程の実施時間は、3分以上30分以下が好ましく、3分以上8分以下がより好ましい。フォーメーション工程の実施時間がこの範囲であれば、触媒粒子の粗大化が防止され、多層CNTの生成を抑制することができる。
【0040】
なお、還元ガスとしては、例えば、水素ガス、アンモニアガス、水蒸気およびそれらの混合ガスを用いることができる。また、還元ガスは、これらのガスをヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスと混合した混合ガスでもよい。還元ガスは、一般的には、フォーメーション工程で用いるが、適宜成長工程に用いてもよい。
【0041】
[成長工程]
成長工程では、カーボンナノチューブ生成用基材の周囲環境をCNTの原料ガスを含む環境とした後、カーボンナノチューブ生成用基材および原料ガスのうち少なくとも一方を加熱して、化学気相成長により触媒層上にCNTを成長させる。
【0042】
ここで、原料ガスとしては、CNTの原料となる物質を含むガス、例えば、CNTを成長させる温度において原料炭素源を有するガスが用いられる。中でも、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、プロピレンおよびアセチレンなどの炭化水素のガスが好適である。この他にも、メタノール、エタノールなどの低級アルコールのガスでもよい。これらの混合物も使用可能である。また、この原料ガスは、不活性ガスで希釈されていてもよい。
【0043】
なお、成長工程で使用し得る不活性ガスは、CNTが成長する温度で不活性であり、触媒の活性を低下させず、且つ、成長するCNTと反応しないガスである。例えば、窒素ガス;ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガスおよびクリプトンガスなどの希ガス;並びにこれらの混合ガスを例示でき、特に窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスおよびこれらの混合ガスが好適である。
【0044】
また、成長工程におけるカーボンナノチューブ生成用基材の周囲環境は、触媒の活性を高め且つ触媒の活性寿命を延長させる作用(触媒賦活作用)を有する触媒賦活物質をさらに含むことがより好ましい。触媒賦活物質の添加によって、CNTの生産効率や純度をより一層改善することができる。触媒賦活物質としては、例えば酸素を含む物質であって、CNTの成長温度でCNTに多大なダメージを与えない物質が好ましい。具体的には、触媒賦活物質としては、例えば、水、酸素、オゾン、酸性ガス、酸化窒素、一酸化炭素および二酸化炭素などの低炭素数の含酸素化合物;エタノール、メタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトンなどのケトン類;アルデヒド類;エステル類;並びにこれらの混合物が有効である。この中でも、水、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、エーテル類が好ましく、特に水および二酸化炭素が好適である。
【0045】
なお、一酸化炭素やアルコール類など、炭素と酸素の両方を含む物質は、原料ガスと触媒賦活物質との両方の機能を有する場合がある。例えば一酸化炭素は、エチレンなどのより反応性の高い原料ガスと組み合わせれば触媒賦活物質として作用し、水などの微量でも大きな触媒賦活作用を示す触媒賦活物質と組み合わせれば原料ガスとして作用する。
【0046】
カーボンナノチューブ生成用基材および原料ガスのうち少なくとも一方を加熱する温度は、CNTの成長が可能な温度であればよいが、好ましくは400℃以上1100℃以下である。400℃以上とすることで触媒賦活物質の効果が良好に発現され、1100℃以下とすることで触媒賦活物質がCNTと反応することを抑制できる。
【0047】
[冷却工程]
冷却工程では、CNTが成長したカーボンナノチューブ生成用基材を不活性ガス環境下において冷却し、成長工程後の高温状態にあるCNTおよびカーボンナノチューブ生成用基材が酸素存在環境下に置かれて酸化するのを抑制する。ここで、不活性ガスとしては、成長工程で使用し得る不活性ガスと同様の不活性ガスを使用し得る。また、冷却工程では、CNTが成長したカーボンナノチューブ生成用基材の温度は、好ましくは400℃以下、さらに好ましくは200℃以下まで低下させる。
【0048】
[CNTの性状]
なお、工程(B)においてカーボンナノチューブ生成用基材の触媒層上に形成されるCNT配向集合体は、例えば以下の性状を有していることが好ましい。
即ち、CNT配向集合体の好ましいBET比表面積は、CNTが主として未開口のものにあっては、600m/g以上であり、より好ましくは、800m/g以上である。BET比表面積が高いほど、金属や炭素などの不純物の量をCNTの質量の数十パーセント(40%程度)より低く抑えることができる。また、BET比表面積の大きいCNTは、触媒の担持体やエネルギー・物質貯蔵材として有効であり、スーパーキャパシタやアクチュエータなどの用途に好適である。
【0049】
また、CNT配向集合体の重量密度は、0.002g/cm以上0.2g/cm以下であることが好ましい。重量密度が0.2g/cm以下であれば、CNT配向集合体を構成するCNT同士の結びつきが弱くなるので、CNT配向集合体を溶媒などに攪拌した際に、均質に分散させることが容易になる。また、重量密度が0.002g/cm以上であれば、CNT配向集合体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取扱いが容易になる。
【0050】
更に、特定の方向に配向したCNT配向集合体は、高い配向度を有していることが好ましい。ここで、高い配向度を有するとは、以下の1.から3.の少なくともいずれか1つ以上を満たすことを指す。
1.CNTの長手方向に平行な第1方向と、第1方向に直交する第2方向とからX線を入射してX線回折強度を測定(θ−2θ法)した場合に、第2方向からの反射強度が第1方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在し、且つ、第1方向からの反射強度が第2方向からの反射強度より大きくなるθ角と反射方位とが存在する。
2.CNTの長手方向に直交する方向からX線を入射して得られた2次元回折パターン像でX線回折強度を測定(ラウエ法)した場合に、異方性の存在を示す回折ピークパターンが出現する。
3.ヘルマンの配向係数が、θ−2θ法又はラウエ法で得られたX線回折強度を用いると0より大きく1以下、より好ましくは0.25以上1未満である。
【0051】
また、CNT配向集合体は、前述のX線回折において、単層CNT間のパッキングに起因する(CP)回折ピークおよび(002)ピークの回折強度と、単層CNTを構成する炭素六員環構造に起因する(100)、(110)ピークの平行(第1方向)と垂直(第2方向)との各入射方向の回折ピーク強度との度合いが互いに異なることも好ましい。
【0052】
更に、CNT配向集合体が高い配向性および高いBET比表面積を示すためには、CNT配向集合体の高さ(長さ)は10μm以上10cm以下の範囲にあることが好ましい。高さが10μm以上であると、配向性が向上する。また高さが10cm以下であると、生成を短時間で行なえるため炭素系不純物の付着を抑制でき、BET比表面積を向上できる。
【0053】
また、CNTのG/D比は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは2.5以上である。G/D比とはCNTの品質を評価するのに一般的に用いられている指標である。ラマン分光装置によって測定されるCNTのラマンスペクトルには、Gバンド(1600cm−1付近)とDバンド(1350cm−1付近)と呼ばれる振動モードが観測される。GバンドはCNTの円筒面であるグラファイトの六方格子構造由来の振動モードであり、Dバンドは非晶箇所に由来する振動モードである。よって、GバンドとDバンドのピーク強度比(G/D比)が高いものほど、結晶性の高いCNTと評価できる。
【0054】
<工程(C)>
工程(C)では、工程(B)において形成したCNTを触媒層から剥離して回収する。ここで、形成したCNTを触媒層から剥離する方法としては、物理的、化学的あるいは機械的な剥離方法を例示できる。具体的には、例えば、電場、磁場、遠心力、表面張力等を用いて触媒層から剥離する方法、機械的に触媒層から直接剥ぎ取る方法、並びに、圧力または熱を用いて触媒層から剥離する方法等が適用可能である。また、真空ポンプを用いてCNTを吸引し、触媒層から剥ぎ取ることも可能である。なお、簡単でCNTを損傷させ難い剥離方法としては、CNTをピンセットで直接つまんで触媒層から剥がす方法や、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラまたはカッターブレード等の薄い刃物を使用してCNTを触媒層から剥ぎ取る方法が挙げられる。中でも、剥離方法としては、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラまたはカッターブレード等の薄い刃物を使用してCNTを触媒層から剥ぎ取る方法が好適である。
【0055】
<工程(D)>
工程(D)では、工程(C)においてCNTを剥離した後の触媒層(使用済み基材の触媒層)を洗浄する。なお、触媒層に対する洗浄処理は、複数回繰り返して実施してもよい。
【0056】
そして、触媒層を洗浄する方法としては、特に限定されることなく、使用済み基材の触媒層を硝酸、塩酸、ふっ酸等の酸と接触させる方法、酸素プラズマリアクターやUVオゾンクリーナー等を用いて使用済み基材の触媒層上の不純物を灰化させる方法、使用済み基材の触媒層を平均気泡径が50μm以下の微細気泡を含有する液体と接触させる方法、使用済み基材の触媒層に液体を衝突させる方法などが挙げられる。中でも、使用済み基材を洗浄する方法としては、使用済み基材に液体を衝突させて触媒層を洗浄する方法を用いることが好ましく、研磨材を分散媒中に分散させてなるウェットブラスト処理用スラリーを使用済み基材の触媒層の表面に対して衝突させて使用済み基材の触媒層を物理的に洗浄する方法を用いることがより好ましい。
【0057】
ここで、ウェットブラスト処理用スラリーに含有させる研磨材としては、アルミナ、炭化珪素、樹脂、ガラス、ジルコニア、ステンレス、および、これらの組み合わせなどが挙げられる。これらの中でもアルミナが好ましい。なお、研磨材の平均粒子径は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。
また、ウェットブラスト処理用スラリーの分散媒としては、研磨材を分散可能であれば特に限定されないが、例えば水を用いることができる。
そして、ウェットブラスト処理用スラリーは、例えば投射ガンを用いて圧縮空気により加速させてから、使用済み基材の触媒層に衝突させることができる。
【0058】
なお、洗浄を実施した後の触媒層の表面の光沢度(Gc)は、100以上300以下であることが好ましい。洗浄を実施した後の触媒層の光沢度(Gc)が上記範囲内であれば、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することができる。
ここで、光沢度(Gc)は、例えば触媒層の洗浄条件、洗浄方法等を変更することにより、調整することができる。
【0059】
そして、CNT形成前の触媒層の光沢度(Gb)に対する洗浄後の触媒層の光沢度(Gc)の比(Gc/Gb)は、0.20超であることが好ましく、0.50以上であることがより好ましい。光沢度の比(Gc/Gb)が上記範囲内であれば、得られるカーボンナノチューブの品質および収量を十分に高めることができる。また、光沢度の比(Gc/Gb)は、特に限定されることなく、1.6以下にすることができ、1.1以下にすることもできる。
【0060】
<CNTの連続製造>
そして、使用済み基材を再利用しつつカーボンナノチューブを連続して製造する場合には、上述した工程(A)〜(D)を繰り返して実施する。このように、使用済み基材を洗浄してCNTの形成に再利用すれば、CNTの製造コストを更に低減することができる。
【0061】
ここで、上述した工程(A)〜(D)を繰り返して実施する場合、n回目(但し、nは2以上の整数)のCNTの形成をする際の触媒層を形成する部分の表面の光沢度(Ga)は、通常、n−1回目のCNTの形成および回収を実施した後に洗浄を行った触媒層の表面の光沢度(Gc)と等しくなる。
また、工程(A)〜(D)を繰り返して実施する場合、通常、工程(D)における洗浄条件は同一とする。
【0062】
そして、工程(A)〜(D)を繰り返して実施する回数、即ち、カーボンナノチューブ生成用基材を再利用する回数は、4回以上であることが好ましい。カーボンナノチューブ生成用基材を再利用する回数が4回以上であれば、高品質なカーボンナノチューブを安定的に製造することができるからである。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、光沢度および残存炭素付着物、並びに、CNTのG/D比はそれぞれ以下の方法を使用して評価した。
【0064】
<G/D比>
顕微レーザラマンシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製、NicoletAlmega XR)を用い、カーボンナノチューブ生成用基材の中心部付近のCNTについて測定した。
<光沢度>
カーボンナノチューブ生成用基材の表面の60度鏡面光沢度をJIS Z8741に基づいて測定した。具体的には、光沢度計(堀場製作所社製、装置名「高光沢グロスチェッカー IG−410」)を使用し、カーボンナノチューブ生成用基材のMD方向(即ち、CVD装置に搬入する方向である縦方向)の中央部において5cm間隔で9点の異なる位置で測定端子を垂直に置いて測定し、測定値の平均値を求め、光沢度とした。なお、測定に用いた光沢度計の仕様は、レンジ:Gs(60°)1000、光源:LED(波長890nm)、受光部:シリコンフォトダイオード(中心波長890nm)であった。
<残存炭素付着物>
洗浄後の使用済み基材の表面を目視により観察し、残存炭素付着物の有無を確認した。なお、「残存炭素付着物」とは、カーボンナノチューブ生成用基材の表面上に供給された炭素源となる材料がカーボンナノチューブとならずに、アモルファスカーボンになったものを言う。
【0065】
(実施例1)
<カーボンナノチューブ生成用基材の調製>
基板としてのFe−Cr合金SUS430基板(JFEスチール株式会社製、50cm×50cm、厚さ0.3mm、Cr18%、算術平均粗さRa≒0.59μm)の上に厚さ60nmの触媒層を備える使用済み基材を準備し、表面の光沢度(Ga)を測定した。結果を表1に示す。なお、この使用済み基材は、厚さ15nmのアルミナ−鉄薄膜よりなる触媒層の形成、触媒層上でのCNTの形成、CNTの回収および触媒層のウェットブラスト処理による洗浄の操作を4回繰り返したものである。
また、アルミニウム化合物であるアルミニウムトリ−sec−ブトキシド1.9gを、有機溶剤である2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤であるトリイソプロパノールアミン0.9gを加えて溶解させて、塗工液Aを調製した。
更に、鉄化合物である酢酸鉄174mgを有機溶剤である2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤であるトリイソプロパノールアミン190mgを加えて溶解させて、塗工液Bを調製した。
そして、準備した使用済み基材の触媒層形成面(洗浄された触媒層の表面)に、室温25℃、相対湿度50%の環境下でディップコーティングにより、上述の塗工液Aを塗布した。具体的には、使用済み基材を塗工液Aに浸漬後、20秒間保持して、10mm/秒の引き上げ速度で使用済み基材を引き上げた。その後、5分間風乾し、300℃の空気環境下で30分間加熱後、室温まで冷却することにより、使用済み基材上に膜厚14nmのアルミナ薄膜を形成した。
次いで、室温25℃、相対湿度50%の環境下で、使用済み基材に設けられたアルミナ薄膜の上に、ディップコーティングにより上述の塗工液Bを塗布した。具体的には、アルミナ薄膜を備える使用済み基材を塗工液Bに浸漬後、20秒間保持して、3mm/秒の引き上げ速度でアルミナ薄膜を備える使用済み基材を引き上げた。その後、5分間風乾(乾燥温度45℃)することにより、膜厚1nmの鉄薄膜を形成し、使用済み基材の触媒層の上に、アルミナ−鉄薄膜からなる厚さ15nmの触媒層を新たに形成し(使用済み基材の再利用回数:4回)、カーボンナノチューブ生成用基材を得た(工程(A))。その結果、触媒層の総厚みは75nmになった(工程(A))。
そして、カーボンナノチューブ生成用基材(CNT形成前の基材)について、触媒層の表面の光沢度(Gb)を測定した。結果を表1に示す。
<CNTの形成>
次に、CVD装置を用いてカーボンナノチューブ生成用基材上にCNT配向集合体を形成した。具体的には、作製したカーボンナノチューブ生成用基材を、炉内温度:750℃、炉内圧力:1.02×10Paに保持されたCVD装置の反応チャンバ内に設置し、この反応チャンバ内に、He:100sccm、H:900sccmを6分間導入した。これにより、CNT合成用触媒(鉄)は還元されて微粒子化が促進され、CNTの成長に適した状態(ナノメートルサイズの触媒微粒子が多数形成された状態)となった(フォーメーション工程)。なお、このときの触媒微粒子の密度は、1×1012〜1×1014個/cmに調整した。その後、炉内温度:750℃、炉内圧力:1.02×10Paに保持された状態の反応チャンバ内に、He:850sccm、C:59sccm、HO:HO濃度が300ppmとなる量を5分間供給した。これにより、単層CNTが各触媒微粒子から成長した(CNT成長工程)。
そして、CNT成長工程の終了後、反応チャンバ内にHe:1000sccmのみを供給し、残余の原料ガスや触媒賦活物質を排除した。これにより、カーボンナノチューブ配向集合体が触媒層の表面に形成された基材が得られた(工程(B))。
<CNTの回収>
その後、得られた基材の表面から、触媒層上に成長したCNT配向集合体を剥離した。具体的には、鋭利部を備えたプラスチック製のヘラを使用し、CNT配向集合体を剥離した。剥離時には、ヘラの鋭利部をCNT配向集合体と基材との境界に当て、基材からCNT配向集合体をそぎ取るように、基材面に沿って鋭利部を動かした。これにより、CNT配向集合体を基材から剥ぎ取り、使用済み基材を得た(工程(C))。
また、得られたCNTの収量およびG/D比を測定した。結果を表1に示す。
<使用済み基材の洗浄>
得られた使用済み基材に対し、幅広スリット式投射ガンを備えたウェットブラスト装置(マコー(株)社製、PFE300)を用いてウェットブラスト処理による洗浄(再生処理)を行った(工程(D))。そして、洗浄後の使用済み基材について、触媒層の光沢度(Gc)および残存炭素付着物の有無を測定した。結果を表1に示す。
なお、ウェットブラスト処理に用いるウェットブラスト処理用スラリーとしては、平均粒子径が7μm(JIS R6001(1998、精密研磨用微粉/電気抵抗試験法)に規定された粒度♯2000に相当)であるアルミナからなる研磨材(砥粒)を、分散媒としての水中に分散させて調製したものを用いた。なお、研磨材の濃度は15体積%であった。またウェットブラスト処理は、投射ガンの下を50mm/秒で水平方向に搬送される使用済み基材に対して、以下の条件で1回行った。
投射ガンの圧縮空気圧力:0.09MPa
投射ガンの投射口から使用済み基材表面までの距離:30mm
投射角度φ:90°
【0066】
(実施例2)
<カーボンナノチューブ生成用基材の調製>
実施例1において工程(D)を実施した後の、洗浄済みの使用済み基材の触媒層の表面の光沢度(Ga)を測定した。結果を表1に示す。そして、洗浄済みの使用済み基材の触媒層の上に、実施例1と同様にして厚さ15nmの触媒層(アルミナ−鉄薄膜)を新たに形成した(使用済み基材の再利用回数:5回)。その結果、触媒層の総厚みは90nmになった(工程(A))。
その後、触媒層の表面の光沢度(Gb)を測定した。結果を表1に示す(工程(B))。
<CNTの形成>
実施例1と同様にしてCNTを形成した(工程(B))。
<CNTの回収>
実施例1と同様にしてCNTを回収した(工程(C))。
そして、形成したCNTの収量およびG/D比を測定した。結果を表1に示す。
<使用済み基材の洗浄>
実施例1と同様にして使用済み基材の洗浄を行った(工程(D))。
そして、洗浄後の使用済み基材について、触媒層の光沢度(Gc)および残存炭素付着物の有無を測定した。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例3)
<カーボンナノチューブ生成用基材の調製>
実施例2において工程(D)を実施した後の、洗浄済みの使用済み基材の触媒層の表面の光沢度(Ga)を測定した。結果を表1に示す。そして、洗浄済みの使用済み基材の触媒層の上に、実施例1と同様にして厚さ15nmの触媒層(アルミナ−鉄薄膜)を新たに形成した(使用済み基材の再利用回数:6回)。その結果、触媒層の総厚みは105nmになった(工程(A))。
その後、触媒層の表面の光沢度(Gb)を測定した。結果を表1に示す(工程(B))。
<CNTの形成>
実施例1と同様にしてCNTを形成した(工程(B))。
<CNTの回収>
実施例1と同様にしてCNTを回収した(工程(C))。
そして、形成したCNTの収量およびG/D比を測定した。結果を表1に示す。
<使用済み基材の洗浄>
実施例1と同様にして使用済み基材の洗浄を行った。
そして、洗浄後の使用済み基材について、触媒層の光沢度(Gc)および残存炭素付着物の有無を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
(比較例1)
<カーボンナノチューブ生成用基材の調製>
基板としてのFe−Cr合金SUS430基板(JFEスチール株式会社製、50cm×50cm、厚さ0.3mm、Cr18%、算術平均粗さRa≒0.59μm)の上に厚さ60nmの触媒層を備える使用済み基材を準備し、表面の光沢度(Ga)を測定した。結果を表1に示す。なお、この使用済み基材は、厚さ15nmのアルミナ−鉄薄膜よりなる触媒層の形成、触媒層上でのCNTの形成、CNTの回収および触媒層の水洗浄の操作を1回行ったものである。
また、アルミニウム化合物であるアルミニウムトリ−sec−ブトキシド1.9gを、有機溶剤である2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤であるトリイソプロパノールアミン0.9gを加えて溶解させて、塗工液Aを調製した。
更に、鉄化合物である酢酸鉄174mgを有機溶剤である2−プロパノール100mLに溶解させた。さらに、安定剤であるトリイソプロパノールアミン190mgを加えて溶解させて、塗工液Bを調製した。
そして、準備した使用済み基材の触媒層形成面(洗浄された触媒層の表面)に、室温25℃、相対湿度50%の環境下でディップコーティングにより、上述の塗工液Aを塗布した。具体的には、使用済み基材を塗工液Aに浸漬後、20秒間保持して、10mm/秒の引き上げ速度で使用済み基材を引き上げた。その後、5分間風乾し、300℃の空気環境下で30分間加熱後、室温まで冷却することにより、使用済み基材上に膜厚14nmのアルミナ薄膜を形成した。
次いで、室温25℃、相対湿度50%の環境下で、使用済み基材に設けられたアルミナ薄膜の上に、ディップコーティングにより上述の塗工液Bを塗布した。具体的には、アルミナ薄膜を備える使用済み基材を塗工液Bに浸漬後、20秒間保持して、3mm/秒の引き上げ速度でアルミナ薄膜を備える使用済み基材を引き上げた。その後、5分間風乾(乾燥温度45℃)することにより、膜厚1nmの鉄薄膜を形成し、使用済み基材の触媒層の上に、アルミナ−鉄薄膜からなる厚さ15nmの触媒層を新たに形成し(使用済み基材の再利用回数:1回)、カーボンナノチューブ生成用基材を得た(工程(A))。その結果、触媒層の総厚みは30nmになった(工程(A))。
そして、カーボンナノチューブ生成用基材(CNT形成前の基材)について、触媒層の表面の光沢度(Gb)を測定した。結果を表1に示す。
<CNTの形成>
実施例1と同様にしてCNTを形成した(工程(B))。
<CNTの回収>
実施例1と同様にしてCNTを回収した(工程(C))。
そして、形成したCNTの収量およびG/D比を測定した。結果を表1に示す。
<使用済み基材の洗浄>
ウェットブラスト処理用スラリーに替えて水を使用した以外は実施例1と同様にして使用済み基材の洗浄を行った。
そして、洗浄後の使用済み基材について、触媒層の光沢度(Gc)および残存炭素付着物の有無を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1より、光沢度の比(Gb/Ga)を0.70以上とすれば、高品質なカーボンナノチューブを効率的に製造することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のカーボンナノチューブの製造方法によれば、高品質なカーボンナノチューブを連続して効率的に製造することができる。