(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
銀粉は高い導電性能を有するものであり、導電性ペースト等の材料として好適に用いることができる。しかしながら、銀粉は非常に高価なものであることから、近年では安価な銅粉に置き換えられてきている。また、銅粉は、銀粉と比較すると酸化されやすく、長期耐候性が悪いという欠点があるため、銅粉の表面に銀を被覆した銀コート銅粉の使用が検討されている。なお、特に、低抵抗への要求が比較的低い電磁波シールドフィルム用途では、銀粉から銀コート銅粉への置き換えが検討されている。
【0003】
例えばこのようなペースト材料向けの金属粉末においては、その形状で特性が大きく変わることから、粉末製造時における形状制御が重要になっている。
【0004】
銅粉末の形状は、銅を電解析出する工程の操業条件でほぼ決まる。例えば、特許文献1及び2に開示されているように、粉末の形状制御のために、電解液に有機物の添加剤を添加する方法が提案されており、その添加剤の1つとして、染料であるサフラニンが知られている。
【0005】
さて、サフラニンを添加剤として用いて所定の形状の銅粉末を製造した場合、その銅粉末製造後に発生する製造廃液は、COD源を含む廃液となる。しかしながら、我が国の公共用水域の有機物に関する環境基準では、河川についてはBODを、湖沼及び海域についてはCODが指標となっており、水質汚濁防止法では一律排水基準としてCOD及びBODの許容限度を160mg/L(日間平均120mg/L)以下として定めている。また、都道府県によってはこれより厳しい上乗せ基準を条例で定めている場合もある。さらに、汚濁の著しい閉鎖海域にあっては、水質環境基準を確保するため、濃度規制ではなく、当該海域へ排出される有機汚濁物質の総量を基準値以下に削減する水質総量規制を課している。このようなことから、水質汚濁等の公害を防止する観点から、製造後の廃液を処理してCODを低減するか、又は製造工程での添加量を低減する必要がある。
【0006】
上述したように、サフラニンは染料であり、低濃度でも含有廃液は赤色を呈する。このことから、公共用水域への放流を行うためには、CODを低減するだけでなく、着色成分を除去して脱色することが望ましい。このような着色成分を含む廃液中の有機物を分解する方法としては、従来から様々な方法が提案されている。
【0007】
例えば、漂白剤等に用いられている次亜塩素酸ナトリウムを用いた方法がある。しかしながら、次亜塩素酸ナトリウムはpH5以下では自己分解して塩素ガスになり、有効塩素濃度が低下して酸化能力が低下する。そのため、通常アルカリ性で用いることが多い。ところが、銅粉末の電解液は酸性であることから、次亜塩素酸による処理のためにpH調整を行ってアルカリ性にした後に、公共用水域への放流のために再度pH調整を行って中性にする必要がある。したがって、中和剤コストが高くなるといったデメリットがある。さらに、は次亜塩素酸を扱う設備には環境保全のためにスクラバー等の高価な除害設備を設けることが必要になり、コスト的に負担が大きくなる。
【0008】
また、近年では、着色した畜産排水の処理に光触媒を用いた技術が知られている(例えば、非特許文献1)。この方法は、光触媒を担持したシリカゲルを着色排水と接触させ、UVランプを用いて紫外線を照射させることによって脱色を行うという方法であり、次亜塩素酸ナトリウムのような環境に影響を及ぼす可能性のある薬剤を使用しないといったメリットがある。しかしながら、この技術は未だ研究段階にあり、コストがどの程度の負担になるか不明である。
【0009】
一方、簡便な方法として活性炭吸着法を用いたCOD除去方法、脱色方法が知られている(例えば、特許文献3)。活性炭吸着法は、活性炭と処理排水を接触させるだけの処理になることから、カラム方式による連続処理が可能となり、簡便かつ設備費用も安価になる。さらに、カラム方式による連続処理は、薬剤添加等の方法と比較すると、処理操作者(人)が行わなければならない操作が圧倒的に少なくなるため、工数を削減でき、ランニングコストが安価になるといったメリットもある。
【0010】
吸着法において使用する吸着剤としては、シリカやアルミナのような極性吸着剤と、活性炭のような非極性吸着剤に分けられ、非極性吸着剤は高い親和性により非極性分子を吸着することが知られている。活性炭のような非極性吸着剤を用いた吸着法では、このような原理を利用して、水より極性の弱い有機物を選択的に吸着除去して脱色又はCOD除去を行う。
【0011】
しかしながら、廃液から活性炭のような非極性吸着剤を用いて有機物を除去する場合、廃液の条件等によってその非極性吸着剤の能力が損なわれることがあり、処理効率が低下するとともに、無駄なコスト増加を招くおそれもある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0023】
≪1.廃液の処理方法の概要≫
本実施の形態に係る廃液の処理方法は、サフラニンを含有する廃液を処理する方法である。サフラニンを含有する廃液としては、例えば、サフラニンを添加剤として銅電解液中に添加し、電解析出により所定の形状の銅粉末を製造するプロセスから排出される銅粉末の製造廃液が挙げられる。
【0024】
具体的に、この廃液の処理方法は、廃液のpHを所定の範囲に調整するpH調整工程と、pH調整後の廃液を活性炭に接触させて活性炭処理する活性炭処理工程と、を有する。
【0025】
サフラニンは、上述したように銅粉末の製造において銅粉末の性状を制御するための添加剤であるとともに、一般的には染料として用いられるものである。そのため、サフラニンを含有する製造廃液は、低濃度でも赤色を呈している。本実施の形態に係る廃液の処理方法によれば、製造廃液に含まれていたCOD成分を有効に低減させることができるとともに、サフラニンにより赤色を呈した廃液を効果的に脱色することができる。
【0026】
しかも、この廃液の処理方法では、廃液のpHを所定の範囲に調整し、pH調整後の廃液に対して活性炭処理を行うようにしているため、その活性炭による高い吸着能力を安定的に維持させながら処理することができる。
【0027】
≪2.銅粉の製造プロセスから排出される製造廃液について≫
ここで、本実施の形態に係る廃液の処理方法についての具体的な説明に先立ち、その処理対象である廃液について、銅粉の製造プロセスにより排出される銅粉の製造廃液を一例として挙げて説明する。
【0028】
上述したように、銅粉の製造プロセスにおいては、サフラニンを添加剤として銅電解液中に添加し、電解析出される銅粉末の形状を制御することができる。具体的に、銅粉の製造プロセスは、所定の電解液を用いた電解法により銅粉を析出生成させる電解析出工程と、析出した銅粉末を回収し、洗浄する回収洗浄工程と、を有する。
【0029】
(電解析出工程)
電解析出工程では、例えば、金属銅を陽極(アノード)とし、ステンレス板やチタン板等を陰極(カソード)とし設置した電解槽中に、銅イオンを含有する硫酸酸性の電解液を収容し、その電解液に所定の電流密度で直流電流を通電することによって電解処理を施す。これにより、通電に伴って陰極上に銅粉を析出(電析)させることができる。
【0030】
電解液としては、例えば、水溶性銅塩と、硫酸と、サフラニン等の添加剤と、塩化物イオンとを含有するものを用いることができる。
【0031】
具体的に、水溶性銅塩は、銅イオンを供給する銅イオン源であり、例えば硫酸銅五水和物等の硫酸銅、塩化銅、硝酸銅等が挙げられるが特に限定されない。また、電解液中での銅イオン濃度としては、1g/L〜20g/L程度とすることができる。
【0032】
硫酸は、硫酸酸性の電解液とするためのものであり、電解液中の濃度としては、遊離硫酸濃度として20g/L〜300g/L程度とすることができる。なお、硫酸濃度は、電解液の電導度に影響するため、カソード上に得られる銅粉の均一性に影響する。
【0033】
また、添加剤として、サフラニンを添加する。このサフラニンは、電解析出する銅粉末の形状を制御するためのものである。サフラニンの添加量としては、電解液中における濃度が0.1mg/L〜500mg/L程度の範囲となる量とすることが好ましい。サフラニンは、塩基性アジン染料の一種で、ピラジン(1,4−ジアジン)誘導体であり、サフラニンTとしてよく知られている。他に、サフラニンB、G、OK、ベーシックレッド2等として市販されている。
【0034】
塩化物イオンとしては、塩酸、塩化ナトリウム等の塩化物イオンを供給する化合物(塩化物イオン源)を電解液中に添加することによって含有させることができる。塩化物イオンは、上述したサフラニンと共に、析出する銅粉の形状制御に寄与する。電解液中の塩化物イオン濃度としては、30mg/L〜1000mg/L程度とすることができる。
【0035】
電解析出工程においては、例えば、上述したような組成の電解液を用いて電解することによって陰極上に銅粉を析出生成させる。電解方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、電流密度としては、硫酸酸性の電解液を用いて電解するにあたっては5A/dm
2〜30A/dm
2の範囲とすることが好ましく、電解液を撹拌しながら通電させる。また、電解液の液温(浴温)としては、例えば20℃〜60℃程度とすることができる。また、電解時間としては、電解液の銅イオン濃度等に応じて適宜設定すればよく、例えば6時間〜15時間程度とすることができる。
【0036】
(回収洗浄工程)
次に、回収洗浄工程では、陰極板上に析出した電解銅粉を、スクレーパーを用いて機械的に電解槽の槽底に掻き落として回収し、回収した銅粉末を純水で洗浄する。また、純水での洗浄後、苛性ソーダ水溶液を用いてさらに洗浄を施す。なお、このような洗浄処理を施した後、減圧乾燥器に入れて乾燥することで、電解銅粉を得ることができる。
【0037】
さて、この回収洗浄工程における洗浄処理を経て排出される洗浄液が、製造廃液として発生する。この製造廃液には、電解析出工程で使用した電解液中のサフラニンが微量に含むものである。そのため、製造廃液は、サフラニンに由来して赤色を呈している。ここで、製造廃液は、洗浄条件によってアルカリ性を呈する場合も酸性を呈する場合もある。
【0038】
なお、銅粉の製造プロセスにて排出される製造廃液は、上述したようなサフラニンを含有する洗浄液に限られず、数回に亘って使用した後の電解液であってもよい。
【0039】
≪3.銅粉の製造廃液の処理について(廃液の処理方法の具体的説明)≫
本実施の形態においては、銅粉の製造プロセスから排出された製造廃液である、微量のサフラニンを含有する洗浄液等(以下、「製造廃液」と総称する)に対して、廃液のpHを所定の範囲に調整するpH調整工程と、pH調整後の廃液を活性炭に接触させて活性炭処理する活性炭処理工程と、を有する処理方法を実行する。
【0040】
<3−1.pH調整工程>
pH調整工程では、サフラニンを含有する製造廃液のpHを所定の範囲に調整する。具体的には、製造廃液に酸又はアルカリ剤を添加することによって、そのpHを5以上9以下の範囲に調整する。
【0041】
ここで、廃液においては、そのpH条件によって廃液中の有機物の形態が変わり、その形態変化により極性が変わる。後工程にて使用する活性炭は、非極性吸着剤であることから、有機物の極性の変化によってその活性炭の吸着能力を低下させることがある。このことから、廃液の処理方法においては、後工程の活性炭による処理に先立ち、その廃液のpHを調整することが重要となり、これにより、安定的に、廃液中のCOD成分とサフラニンを有効に除去することができ、その廃液を効率的に脱色することができる。
【0042】
具体的に、廃液のpHが9を超えると、後工程の活性炭処理工程における早い段階で、COD値や吸光度が上昇してしまう。一方で、廃液のpHが5未満であると、排出側の通液量BV800以上で、COD値が上昇してしまう。したがって、活性炭処理に先立ち、廃液のpHを5以上9以下の範囲に調整することによって、活性炭の吸着能力を安定的に維持して、COD成分やサフラニンを有効に除去することができる。
【0043】
pHを調整するための酸やアルカリ剤の種類としては、特に限定されない。例えば、三としては、鉱酸が広く工業的に用いられており好ましく、その中でも、作業性や排出規制、設備への腐食性等の総合的な観点から、硫酸が特に好ましい。また、アルカリ剤としては、常温で液体であり、広く工業的に用いられている点から苛性ソーダが好ましい。
【0044】
<3−2.活性炭処理工程>
活性炭処理工程では、pH調整後の製造廃液に対して、活性炭を接触させることで活性炭処理を施す。このように製造廃液を活性炭と接触させることで、廃液中のCOD成分やサフラニンを活性炭に吸着させて除去することができる。
【0045】
製造廃液と活性炭との接触方法としては、特に限定されないが、所定の槽の中に活性炭と製造廃液とを装入して混合撹拌するバッチ方式や、カラムに詰めた活性炭に製造廃液を通液させるカラム方式が挙げられる。なお、工業的には、カラム方式を好適に用いることができる。
【0046】
活性炭としては、特に限定されない。粉末状及び粒状活性炭の由来原料として、例えば、オガコ、石炭、ヤシ殻等があるが、その中でも、ヤシ殻由来のヤシ殻活性炭を用いることが好ましい。また、水蒸気等のガスにより賦活した活性炭を好ましく使用することができる。このような活性炭は、白鷺WH2C(日本エンバイロケミカルズ社製)、太閣CW(二村化学工業社製)、クラレコールGW、クラレコールGW−H(以上、クラレケミカル社製)等が市販されており、好適に用いることができる。
【0047】
このように、活性炭処理工程において活性炭と接触させた後の製造廃液(処理液)は、COD値が低減しているとともに、活性炭にサフラニンを吸着させたことから脱色されている。特に、本実施の形態に係る廃液の処理方法では、活性炭処理工程に先立ち、廃液のpHを5以上9以下の範囲に調整していることから、COD成分やサフラニンの形態の変化や、その形態変化に伴う極性の変化を抑制することができ、活性炭による吸着能力の低下を防ぐことができる。これにより、高い吸着能力を維持しながら、その活性炭によるCOD成分やサフラニンの吸着処理を施すことができる。
【0048】
活性炭処理をカラム方式で行う場合、活性炭を充填したカラムへの通液量及び通液速度は、通常それぞれ「BV」及び「SV」で表わされる。例えば、SV20でBV100とは、1時間に充填した活性炭量の20倍の速度で、活性炭量の100倍の液量まで通液するという意味であり、活性炭量が10mlの場合では200mL/hrの速度で1リットルの通液となる。したがって、SV及びBVが同じであっても、通液量と通液速度の絶対値は、活性炭量に比例して変化する。
【0049】
具体的に、活性炭を充填したカラムへ通液速度(SV)としては、特に限定されないが、SV=5以上、40以下の範囲とすることが好ましい。SV=5未満では、生産性(効率性)が低下する可能性があるため好ましくなく、SV=40を超えると、活性炭への吸着量が低下する可能性がある。
【0050】
また、活性炭処理に際しての製造廃液(原液)の液温としては、10℃以上、60℃以下の範囲とすることが好ましい。原液の温度が10℃未満であると、活性炭への吸着量は増加するものの、冷却コストがかかる。一方位で、原液の温度が60℃を超えると、活性炭への吸着量が低下する可能性がある。
【0051】
ここで、活性炭処理工程における活性炭処理後の処理液(製造廃液)は、水質汚濁防止法での一律排水基準の許容限度として、COD成分及びBOD成分の濃度が160mg/L(日間平均120mg/L)であることが必要である。COD値は、活性炭処理に供する原液でも十分に低いことがあり、そのまま活性炭処理せずに公共用水域に放流できる濃度であることから、そのような場合、処理後に得られる処理液の着色の程度が、処理条件の設定の基準とすることが好ましい。
【0052】
具体的に、この活性炭処理工程においては、活性炭処理後の廃液が、光路長10mmのセルを用いて測定したときの、波長517nm〜522nmの範囲の吸光度が0.004(abs)以下となるまで処理することが好ましい。波長517nm〜522nmの範囲は、製造廃液に含まれるサフラニンの極大吸収波長の範囲であり、特に波長520nmの吸光度を測定することが好ましい。
【0053】
上述した吸光度測定により得られる吸光度の値が0.004以下であることにより、処理液の透過率は99%を確保することができる。一方で、吸光度が0.004を超える場合には、若干の着色が認識される可能性がある。
【0054】
なお、上述したような活性炭処理後に得られた処理液は、公共用水域に放流可能なpHであれば、処理後のそのままの状態で放流することができ、また適宜、酸又はアルカリ剤を添加して放流可能なpHに調整することで放流することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0056】
[実施例1]
サフラニン(和光純薬工業社製)を0.13mg/L、銅を0.04g/Lの割合で含み、pHが12である、銅粉の製造廃液を処理対象として廃液処理を行った。
【0057】
(pH調整工程)
具体的には、製造廃液に、硫酸水溶液を添加してpHを7に調整した。なお、pH調整した直後の廃液の吸光度(abs)を測定したところ0.037であった。また、廃液中のCOD成分の濃度は約8.6mg/Lであった。なお、吸光度測定においては、廃液を光路長10mmの角型セルに入れ、分光光度計を使用して、波長517nm〜522nmの範囲の吸光度を測定した。
【0058】
(活性炭処理工程)
次に、pH調整後の製造廃液について、温度を10〜60℃に調整維持し、その廃液を、活性炭(平均粒径1.154mm、細孔半径0.31nm)(クラレコールGW10/32,株式会社クラレ製)を約10mL(乾燥重量約8g)充填したガラス製カラム(直径30mm)に200mL/hの通液速度(SV=20)で通液した。
【0059】
カラムに通液した液に得られた流出液(処理液)について、その吸光度とCOD成分の濃度を測定した。吸光度は、光路長10mmの角型セルに処理液を入れ、分光光度計(MP−1200,エルマ販売株式会社製)を使用して、吸収波長を520nmとして測定した。また、処理液中のCOD成分の濃度は、COD測定装置(COD60A,東亜ディーケーケー株式会社製)を使用して測定した。
【0060】
下記表1に、pHの調整条件とpH調整後の吸光度及びCOD測定値、活性炭処理後(BV=800)の処理液の吸光度及びCOD測定値を示す。また、
図1に、製造廃液を11.6L(BV=1160)の通液量でカラムに通液したときの、BV40単位毎での吸光度の測定結果を示し、
図2に、BV40単位毎でのCODの測定結果を示す。
【0061】
[実施例2〜3、比較例1〜4]
実施例2〜3及び比較例1〜4では、実施例1と同様にして、製造廃液のpH調整工程において、下記表1に示すようにpHを調整した。また、活性炭処理工程では、活性炭を充填したカラムに11.6L(BV=1160)の通液量で廃液を通液した。そして、BV40単位毎に、処理後に得られた処理液の吸光度とCODの測定を行った。
【0062】
下記表1に、pHの調整条件とpH調整後の吸光度及びCOD測定値、活性炭処理後(BV=800)の処理液の吸光度及びCOD測定値を示す。
【0063】
また、比較例1及び2について、
図1に、製造廃液を11.6L(BV=1160)の通液量でカラムに通液したときの、BV40単位毎での吸光度の測定結果を示し、
図2に、BV40単位毎でのCODの測定結果を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
製造廃液のpHを5以上9以下の範囲に調整し、pH調整後の廃液を活性炭処理した実施例1〜3では、処理後の廃液(処理液)の吸光度が0.003と極めて低く、透明度が高い液となり、またCOD成分も4.0mg/Lと有効に低減していた。一方で、製造廃液のpHを5以上9以下の範囲外とし、その後活性炭処理した比較例1〜4では、処理液の吸光度が実施例に比べて高くなり、未だ着色されていることが確認された。また、COD成分も活性炭処理前の段階で十分に低かったものの、実施例に比べて高い値となった。
【0066】
この結果から、活性炭処理前のpH調整が重要であることが分かる。すなわち、
図1及び
図2に示されるように、活性炭処理前の製造廃液のpHを12に調整した比較例1では、実施例1や比較例2に比べて、吸光度とCODの両者の値が急速に上昇する傾向がみられ、したがって、活性炭処理にあたってアルカリ性の条件とすることは適切ではないことが分かる。
【0067】
また、
図1及び
図2から分かるように、活性炭処理前の製造廃液のpHを4に調整した比較例2では、CODの値は、実施例1と同等かやや良好な傾向を示したものの、吸光度がBV800以降に高くなる傾向を示した。
【0068】
以上の結果から、サフラニンを含有する製造廃液において、pHを5以上9以下に調整し、pH調整後の廃液に対して活性炭処理を行うことによって、COD成分の濃度を有効に低減することができるとともに、波長517nm以上〜522nm以下の範囲での吸光度が0.004以下の、透明度の高い処理液とすることができることが分かった。