特許第6772685号(P6772685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6772685エポキシ化合物、エポキシ化合物の製造方法、エポキシ化合物含有組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772685
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】エポキシ化合物、エポキシ化合物の製造方法、エポキシ化合物含有組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/14 20060101AFI20201012BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20201012BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20201012BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   C08G59/14
   C08G59/40
   C08G59/68
   C08G59/20
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-173721(P2016-173721)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2019-194275(P2019-194275A)
(43)【公開日】2019年11月7日
【審査請求日】2019年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】戸部 暁文
(72)【発明者】
【氏名】深山 航
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−126249(JP,A)
【文献】 特開昭54−029400(JP,A)
【文献】 特開昭56−152462(JP,A)
【文献】 特開平02−055726(JP,A)
【文献】 特開昭51−126240(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/036164(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0286310(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 59/00 − 59/72
C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 − 101/14
C09D 1/00 − 10/00
C09D 1001/00 − 201/10
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される2価の基及び下記式(2)で表される2価の基を有し、エポキシ当量が200g/当量以上、200,000g/当量以下であり、全塩素量及び全臭素量の合計が3重量%以下であるエポキシ化合物。
【化1】
((1)式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜4の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基を示す。)
【化2】
((2)式中、Xは塩素及び臭素を含まず、置換基を有していてもよい炭素数1〜50の2価の基を示す。)
【請求項2】
前記式(1)で表される2価の基として異なる2種以上の基を含む、請求項1に記載のエポキシ化合物。
【請求項3】
前記式(2)で表される2価の基として異なる2種以上の基を含む、請求項1又は2に記載のエポキシ化合物。
【請求項4】
Xは、下記式(3)、下記式(4)、下記式(5)、下記式(6)、下記式(7)又は下記式(8)のいずれかで表される構造を有する基であり、下記式(3)〜(8)における各々の芳香環又はシクロアルキレン基は、各々アルキル基で置換されていてもよい、請求項1からのいずれか1項に記載のエポキシ化合物。
【化3】
((3)式中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、水素原子又はアルキル基を示す。)
【化4】
((4)式中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、水素原子又はアルキル基を示す。)
【化5】
【化6】
【化7】
((7)式中、R及びR10は同一でも異なっていてもよく、直接結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を示す。)
【化8】
((8)式中、R11及びR12は同一でも異なっていてもよく、直接結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を示す。)
【請求項5】
ピペリジン環含有化合物と、全塩素量及び全臭素量の合計が5重量%以下であるエポキシ基含有化合物とを反応させて得られる請求項1からのいずれか1項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【請求項6】
ピペリジン環含有化合物、全塩素量及び全臭素量の合計が5重量%以下であるエポキシ基含有化合物、並びに、フェノール化合物を反応させて得られる請求項1からのいずれか1項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載のエポキシ化合物と、硬化剤とを含む、エポキシ化合物含有組成物。
【請求項8】
前記エポキシ化合物100重量部に対し、硬化剤0.1〜1000重量部を含む、請求項に記載のエポキシ化合物含有組成物。
【請求項9】
前記硬化剤が、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、メルカプタン系化合物、カチオン重合開始剤及び有機ホスフィン類からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項又はに記載のエポキシ化合物含有組成物。
【請求項10】
請求項からのいずれか1項に記載のエポキシ化合物含有組成物を硬化させてなる、硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐光性に優れたエポキシ化合物及びその製造方法に関する。また、本発明は、該エポキシ化合物を用いて得られるエポキシ化合物含有組成物及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化合物は耐熱性、接着性、柔軟性、電気特性等に優れていることから、塗料、土木、接着、電気材料等の分野で広く使用されている。特許文献1には、高ハロゲン含量のエポキシ樹脂とヒンダードアミン系化合物の反応物について記載されているが、高ハロゲン含量のエポキシ化合物は耐光性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−165437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の課題は、耐光性及び塗膜硬度に優れたエポキシ化合物、エポキシ化合物の製造方法、エポキシ化合物含有組成物並びにその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ピペリジン環を有する非塩素・非臭素型エポキシ化合物であって、エポキシ当量が200g/当量以上、200,000g/当量以下であるエポキシ化合物が、上記課題を解決し得ることを見出し、発明の完成に至った。即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[11]に存する。
[1] 下記式(1)で表される2価の基及び下記式(2)で表される2価の基を有し、エポキシ当量が200g/当量以上、200,000g/当量以下であるエポキシ化合物。
【0006】
【化1】
【0007】
((1)式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜4の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基を示す。)
【0008】
【化2】
【0009】
((2)式中、Xは塩素及び臭素を含まず、置換基を有していてもよい炭素数1〜50の2価の基を示す。)
[2]全塩素量及び全臭素量の合計が3重量%以下である[1]に記載のエポキシ化合物。
[3]前記式(1)で表される2価の基として異なる2種以上の基を含む、[1]又は[2]に記載のエポキシ化合物。
[4]前記式(2)で表される2価の基として異なる2種以上の基を含む、[1]から[3]のいずれか1に記載のエポキシ化合物。
[5]Xは、下記式(3)、下記式(4)、下記式(5)、下記式(6)、下記式(7)又は下記式(8)のいずれかで表される構造を有する基であり、下記式(3)〜(8)における各々の芳香環又はシクロアルキレン基は、各々アルキル基で置換されていてもよい、[1]から[4]のいずれか1に記載のエポキシ化合物。
【0010】
【化3】
【0011】
((3)式中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、水素原子又はアルキル基を示す。)
【0012】
【化4】
【0013】
((4)式中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、水素原子又はアルキル基を示す。)
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】
【0016】
【化7】
【0017】
((7)式中、R及びR10は同一でも異なっていてもよく、直接結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を示す。)
【0018】
【化8】
【0019】
((8)式中、R11及びR12は同一でも異なっていてもよく、直接結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を示す。)
[6]ピペリジン環含有化合物と、全塩素量及び全臭素量の合計が5重量%以下であるエポキシ基含有化合物とを反応させて得られる[1]から[5]のいずれか1に記載のエポキシ化合物の製造方法。
[7]ピペリジン環含有化合物、全塩素量及び全臭素量の合計が5重量%以下であるエポキシ基含有化合物、並びに、フェノール化合物を反応させて得られる[1]から[5]のいずれか1に記載のエポキシ化合物の製造方法。
[8][1]から[5]のいずれか1に記載のエポキシ化合物と、硬化剤とを含む、エポキシ化合物含有組成物。
[9]前記エポキシ化合物100重量部に対し、硬化剤0.1〜1000重量部を含む、[8]に記載のエポキシ化合物含有組成物。
[10]前記硬化剤が、多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、メルカプタン系化合物、カチオン重合開始剤及び有機ホスフィン類からなる群から選ばれる少なくとも1つである、[8]又は[9]に記載のエポキシ化合物含有組成物。
[11][8]から[10]のいずれか1に記載のエポキシ化合物含有組成物を硬化させてなる、硬化物。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐光性及び塗膜硬度に優れたエポキシ化合物及びエポキシ化合物含有組成物が提供される。このような特長を有することから、本発明のエポキシ化合物、エポキシ化合物含有組成物及び硬化物は、電気・電子材料、FRP(繊維強化樹脂)、接着剤及び塗料等の分野において応用展開が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
また、本明細書において説明する各種の基の炭素数は、当該基が置換基を有する場合、その置換基の炭素数を含めた合計の炭素数をさす。
【0022】
〔エポキシ化合物〕
本発明のエポキシ化合物は、下記式(1)で表される2価の基及び下記式(2)で表さ
れる2価の基を有し、エポキシ当量が200g/当量を超え200,000g/当量以下のエポキシ化合物である。下記式(1)で表される2価の基及び下記式(2)で表される2価の基を有することにより耐光性と塗膜硬度に優れる。エポキシ当量が200g/当量を超え200,000g/当量以下であることにより塗膜の柔軟性と硬度両立に優れる。
【0023】
【化9】
【0024】
((1)式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜4の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基を示す。)
前記式(1)において、R〜Rは同一でも異なっていてもよく水素原子又は炭素数1〜4の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基を示す。これらの中でも、水素原子、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、R〜Rは同一であってメチル基であることが更に好ましい。
【0025】
【化10】
【0026】
((2)式中、Xは塩素及び臭素を含まない炭素数1〜50の2価の基を示す。)
前記式(2)で表される2価の基において、Xは置換基を有していてもよい、炭素数1〜50、好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜35の2価の炭化水素基を示す。Xは直鎖、分岐鎖又は環状の鎖状炭化水素基のいずれであってもよいが、好ましくは、環状構造を含む炭化水素基である。またXは置換基を有していてもよい。また、Xは塩素も臭素も含まないことが必要である。式(2)の構造を有する事で、耐薬品性、接着性、柔軟性に優れる。
【0027】
Xは、好ましくは下記式(3)〜(8)のいずれかで表される構造を有する基であり、下記式(3)〜(8)における各々の芳香環又はシクロへキシレン基は、各々アルキル基で置換されていてもよい。
【0028】
【化11】
【0029】
((3)式中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、水素原子又はアルキル基を示す。)
【0030】
【化12】
【0031】
((4)式中、R及びRは同一でも異なっていてもよく、水素原子又はアルキル基を示す。)
【0032】
【化13】
【0033】
【化14】
【0034】
【化15】
【0035】
((7)式中、R及びR10は同一でも異なっていてもよく、直接結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を示す。)
【0036】
【化16】
【0037】
((8)式中、R11及びR12は同一でも異なっていてもよく、直接結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を示す。)
前記式(3)において、R及びRは同一でも異なっていてもよく水素原子又はアルキル基を示す。R及びRは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基がより好ましい。
【0038】
前記式(4)において、R及びRは同一でも異なっていてもよく水素原子又はアルキル基を示す。R及びRは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基がより好ましい。
前記式(7)においてR及びR10は直接結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を示す。R及びR10は直接結合であることが好ましい。
【0039】
前記式(8)においてR11及びR12は直接結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を示す。R11及びR12は直接結合であることが好ましい。
式(3)〜(8)に示される芳香環またはシクロヘキシレン基が置換基を有する場合、該置換基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜2のアルキル基が挙げられ、1つのシクロへキシレン基当たりの置換基数は2以下であることが好ましい。
【0040】
[エポキシ化合物の製造方法]
本発明のエポキシ化合物の製造方法は特に限定されないが、エポキシ化合物の原料として後述するエポキシ基含有化合物(A)と、ピペリジン環含有化合物(B)と、必要に応じてフェノール化合物(C)とを共重合する手法が挙げられる。この共重合反応において、以下のエポキシ基含有化合物(A)、ピペリジン環含有化合物(B)及びフェノール化合物(C)は各々2種類以上使用することができる。
【0041】
[エポキシ基含有化合物(A)]
エポキシ基含有化合物(A)とは、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。本発明のエポキシ基含有化合物(A)は、前記式(2)であらわされる2価の基を導入するものであれば特に限定されない。
例えば、2官能のエポキシ基含有化合物としてビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールEジグリシジルエーテル、ビスフェノールZジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールアセトフェノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラ−t−ブチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノール系ジグリシジルエーテル類;ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル、ジメチルビフェノールジグリシジルエーテル、テトラ−t−ブチルビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール系ジグリシジルエーテル類;ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロアントラセンジグリシジルエーテル、メチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジブチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、メチルレゾルシンジグリシジルエーテル等のベンゼンジオール系ジグリシジルエーテル類;ジヒドロアントラハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルエーテルジグリシジルエーテル、チオジフェノールジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等の芳香族系ジグリシジルエーテル類;前記ビスフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類、ベンゼンジオール系ジグリシジルエーテル類及び芳香族系ジグリシジルエーテル類から選ばれるジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ化合物;アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ダイマー酸等の種々のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,5−ペンタンジオールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,7−ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールジグリシジルエーテル等の鎖状構造のみからなる(ポリ)アルキレングリコールジグリシジルエーテル類;1,
4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等の環状構造を有するアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。
【0042】
また、3官能以上のエポキシ基含有化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。なお、以下の例示において、型エポキシ樹脂とは、ヒドロキシ基がグリシジルエーテル基で置換されたものをいう。
α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシ―α,α−ジメチルベンジル)−エチルベンゼン型エポキシ樹脂、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン型エポキシ樹脂、4,4’,4’’−エチリジントリス(2−メチルフェノール)型エポキシ樹脂、4,4’−(2−ヒドロキシベンジリデン)ビス(2,3,6−トリメチルフェノール)型エポキシ樹脂、2,3,4−トリヒドロキシジフェニルメタン型エポキシ樹脂、2,4,6−トリス(4,ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン型エポキシ樹脂、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン型エポキシ樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2−メチルフェノール)型エポキシ樹脂、2,6−ビス(4−ヒドロキシ―3,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール型エポキシ樹脂等の3官能エポキシ樹脂類;2,2’−メチレンビス[6−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−p−クレゾール型エポキシ樹脂、4−[ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]ベンゼン−1,2−ジオール型エポキシ樹脂、1,1,2,2−テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタン型エポキシ樹脂、α,α,α’,α’,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン型エポキシ樹脂等の4官能エポキシ樹脂類;2,4,6−トリス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール型エポキシ樹脂等の5官能エポキシ樹脂類;ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミン等の種々のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ化合物、脂肪族ポリオールと、エピハロヒドリンから製造されるエポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール変性キシレン型エポキシ樹脂や、これら種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール系化合物等を使用したエポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂類が挙げられる。
【0043】
これらのうち、製造中のゲル化を防ぐ観点から2官能エポキシ基含有化合物を使用する事が好ましい。また、良好な塗膜硬度を得る観点からビスフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビスフェノール系ジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ基含有化合物、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ基含有化合物を使用する事が好ましい。
【0044】
以上に挙げたエポキシ基含有化合物(A)は1種のみでも複数種を組み合わせて使用することができる。好ましい組み合わせとしてはビスフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類、ビスフェノール系ジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ基含有化合物、ビフェノール系ジグリシジルエーテル類の芳香環に水素を添加したエポキシ基含有化合物から選ばれる組み合わせである。
【0045】
[ピペリジン環含有化合物(B)]
ピペリジン環含有化合物(B)は、ピペリジン環を分子内に1個以上有し、かつ分子内に1個以上のNH基及び/又は分子内に1個以上のOH基を有する化合物である。
本発明のピペリジン環含有化合物(B)としては、前記式(1)であらわされる2価の基を導入するものであれば特に限定されないが、塩素も臭素も含まないことが望ましい。例えばNH基を分子内に1個有する化合物として2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート等が挙げられる。OH基を分子内に1個有する化合物としてコハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物等が挙げられる。NH基を分子内に2個有する化合物としてセバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)等が挙げられる。NH基を分子内に3個以上有する化合物としてはテトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート、ポリ[(6−モルフォリノ−S−トリアジン−2,4−ジイル)〔2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル〕イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]等が挙げられる。これらのうち、重合性の観点からOH基とNH基の合計基数が2である化合物が好ましい。
以上に挙げたピペリジン環含有化合物(B)は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用することもできる。2種以上のピペリジン環含有化合物(B)を用いる場合、好ましい組み合わせとしてはOH基を1個有する化合物、OH基を2個有する化合物、NH基を1個有する化合物、NH基を2個有する化合物から選ばれる組み合わせである。
【0046】
[フェノール化合物C]
本発明のフェノール化合物(C)とは、芳香環に結合した水酸基を2個以上有する化合物である。フェノール化合物(C)を共重合させることにより、製造過程の粘度調整や、得られるエポキシ化合物の物性コントロールをする上で有用となる。
本発明のフェノール系化合物(C)は塩素も臭素も含まないことが必要である。例えば、芳香環に結合した水酸基を2個有する化合物としてビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン、ビスフェノールフルオレン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラ−t−ブチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールS等のビスフェノール類;ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジメチルビフェノール、テトラ−t−ブチルビフェノール等のビフェノール類;ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン等のベンゼンジオール類(ここで、「ベンゼンジオール類」とは、1個のベンゼン環を有する化合物であって、当該ベンゼン環に2個の水酸基が直接結合した化合物である。);ジヒドロアントラハイドロキノン類;ジヒドロキシジフェニルエーテル等のジヒドロキシジフェニルエーテル類;チオジフェノール等のチオジフェノール類;ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;ジヒドロキシスチルベン等のジヒドロキシスチルベン類物等が挙げられる。
【0047】
芳香環に結合した水酸基を3個以上有する化合物としては、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシ―α,α−ジメチルベンジル)−エチルベンゼン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,4’’−エチリジントリス(2−メチルフェノール)、4,4’−(2−ヒドロキシベンジリデン)ビス(2,3,6−トリメチルフェノール)、2,3,4−トリヒドロキシジフェニルメタン、2,4,6−トリス(4,ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2−メチルフェノール)、2,6−ビス(4−ヒドロキシ―3,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール等の3官能フェノール系化合物類;2,2’−メチレンビス[6−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−p−クレゾール、4−[ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メチル]ベンゼン−1,2−ジオール、1,1,2,2−テトラキス(p−ヒドロキシフ
ェニル)エタン、α,α,α’,α’,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン等の4官能フェノール系化合物類;2,4,6−トリス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−1,3−ベンゼンジオール等の5官能フェノール系化合物類、フェノールノボラック樹脂類、クレゾールノボラック樹脂類、ビスフェノールAノボラック樹脂等のビスフェノール系ノボラック樹脂類;ナフトールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールビフェニレン樹脂、フェノール変性キシレン樹脂等の種々のフェノール樹脂類や、これらの種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油又はピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の多官能フェノール系化合物類等が挙げられる。
【0048】
これらのうち、製造中のゲル化を防ぐ観点から芳香環に結合した水酸基を2個有する化合物を使用する事が好ましい。また、良好な塗膜硬度を得る観点からビスフェノール類、ビフェノール類を使用する事が好ましい。
本発明のエポキシ化合物の製造に使用するエポキシ基含有化合物(A)とピペリジン環含有化合物(B)とフェノール化合物(C)の配合比は、得られるエポキシ化合物の理論エポキシ当量が200,000g/当量以下となる配合比であることが好ましく、150,000g/当量以下となる配合比であることがより好ましく、100,000g/当量以下となる配合比であることが他材料との相溶性を確保する点で特に好ましい。一方、理論エポキシ当量の上限は、100g/当量を超え、120g/当量以上、特に150g/当量以上、とりわけ200g/当量以上であることが、柔軟性に優れたエポキシ化合物を得ることができ、好ましい。
【0049】
ここで理論エポキシ当量とは、2官能エポキシ基含有化合物(A)とピペリジン環含有化合物(B)とフェノール化合物(C)に含まれる全てのエポキシ基とNH基及び/又はOH基が1:1で反応したときの反応生成物のエポキシ当量を意味する。
なお、本発明において「エポキシ当量」とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物の質量」と定義され、JIS K7236に準じて測定することができる。
【0050】
[触媒(D)]
本発明のエポキシ化合物を製造するための反応工程には触媒(D)を用いてもよい。触媒(D)としては、通常、エポキシ樹脂の製法におけるアドバンス法の触媒として用いられるものであれば特に制限されない。
触媒(D)としては、例えば、アルカリ金属化合物、有機リン化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。
【0051】
アルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属の水素化物;酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0052】
有機リン化合物の具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−2,4−キシリルホスフィン、トリ−2,5−キシリルホスフィン、トリ−3,5−キシリルホスフィン、トリス(p−tert−ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−tert−ブトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p−n−オクチルフェニル)ホスフィン、トリ(p−n−ノニルフェニル)ホスフィン、トリア
リルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、ジ−t−ブチルメチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、シクロヘキシルジ−tert−ブチルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、ジ−n−ブチルフェニルホスフィン、ジ−tert−ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジフェニルプロピルホスフィン、イソプロピルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラメチルホスホニウムアイオダイド、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
【0053】
第3級アミン類の具体例としては、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン等が挙げられる。
第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0054】
環状アミン類の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネン等が挙げられる。
イミダゾール類の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。
以上に挙げた触媒(D)は1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
触媒(D)を用いる場合、その使用量は通常、前記エポキシ基含有化合物(A)の使用量に対して10000重量ppm以下、例えば10〜5000重量ppmとすることが好ましい。
【0055】
[反応溶媒(E)]
本発明のエポキシ化合物を製造するための反応工程において、反応溶媒(E)を用いてもよい。この反応溶媒(E)としては、原料を溶解するものであれば、特に制限はないが、通常は有機溶媒である。
有機溶媒としては例えば、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。芳香族系溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等が挙げられる。アミド系溶媒の具体例としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトア
ミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。グリコールエーテル系溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
以上に挙げた反応溶媒(E)は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、反応途中で高粘性生成物が生じたときは反応溶媒(E)を更に加えて反応を続けることもできる。
【0056】
[反応条件]
前記エポキシ基含有化合物(A)とピペリジン環含有化合物(B)とフェノール化合物(C)との反応は、常圧、加圧、減圧いずれの条件で行うこともできる。
また、反応温度は通常、60〜240℃、好ましくは80〜220℃、より好ましくは100〜200℃である。反応温度が上記下限以上であると反応を進行させやすいために好ましい。また、反応温度が上記上限以下であると副反応が進行しにくく、高純度のエポキシ化合物を得る観点から好ましい。
反応時間としては特に限定されないが、通常0.5〜24時間であり、好ましくは1〜22時間であり、更に好ましくは1.5〜20時間である。反応時間が上記上限以下であると、生産効率向上の点で好ましく、上記下限以上であると、未反応成分を削減できる点で好ましい。
【0057】
[希釈溶剤(F)]
本発明のエポキシ化合物は、反応終了後に希釈溶剤(F)を混合して固形分濃度を調整してもよい。その希釈溶剤(F)としては、通常、エポキシ化合物を溶解するものであれば、どのようなものでもよいが、通常は有機溶剤である。有機溶剤の具体例としては前述の反応溶媒(E)として挙げたものと同様のものを用いることができる。
なお、本発明において、「溶媒」と「溶剤」という語は、エポキシ化合物の反応時に用いるものを「溶媒」、反応終了後に用いるものを「溶剤」として用いることとするが、同種のものを用いても、異種のものを用いてもよい。
【0058】
[エポキシ当量]
本発明のエポキシ化合物のエポキシ当量は、好ましくは200g/当量以上、より好ましくは250g/当量以上、更に好ましくは300g/当量以上である。これにより柔軟性を更に良好にすることができる。
また、本発明のエポキシ化合物のエポキシ当量の上限値としては特に限定されないが、他材料との相溶性の観点から、200,000g/当量であり、100,000g/当量であることが好ましく、50,000g/当量であることがより好ましい。
【0059】
[全塩素量及び全臭素量の合計]
本発明のエポキシ化合物中の全塩素量及び全臭素量の合計は、当該エポキシ化合物と全塩素量及び全臭素量との合計に対して、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下であることが、耐光性を良くする観点で好ましい。下限値としては0%が好ましいが、実際には0.0001%でもよい。
本発明のエポキシ化合物の全塩素量及び全臭素量の合計を前記範囲にする方法としては、特に限定されないが例えば、エポキシ基含有化合物(A)として全塩素量及び全臭素量の
合計が5重量%以下、好ましくは4重量%以下であるエポキシ化合物を使用する方法が挙げられる。
【0060】
[重量平均分子量(Mw)]
本発明のエポキシ化合物の重量平均分子量(Mw)は、240以上が好ましく、300以上がより好ましく、400以上が柔軟性を良好にする点で特に好ましい。また、本発明のエポキシ化合物の重量平均分子量(Mw)は200,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが他材料との相溶性の観点から特に好ましい。
なお、エポキシ化合物の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定することができる。より詳細な方法の例について後述の実施例において説明する。
【0061】
〔エポキシ化合物含有組成物〕
本発明のエポキシ化合物含有組成物は、少なくとも前述した本発明のエポキシ化合物と硬化剤とを含むものである。また、本発明のエポキシ化合物含有組成物には、必要に応じて、他のエポキシ化合物、硬化促進剤、その他の成分等を適宜配合することができる。
【0062】
[硬化剤]
本発明のエポキシ化合物含有組成物に用いる硬化剤は、エポキシ化合物のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質である。なお、本発明においては通常、「硬化促進剤」と呼ばれるものであってもエポキシ化合物のエポキシ基間の架橋反応及び/又は鎖長延長反応に寄与する物質であれば、硬化剤とみなすこととする。
【0063】
本発明のエポキシ化合物含有組成物における硬化剤の含有量は、本発明のエポキシ化合物100重量部に対して好ましくは0.1〜1000重量部であり、より好ましくは100重量部以下であり、更に好ましくは80重量部以下であり、特に好ましくは60重量部以下である。
また、本発明のエポキシ化合物含有組成物において、本発明のエポキシ化合物以外の後述する他のエポキシ化合物が含まれる場合、硬化剤の含有量は、固形分としての全エポキシ化合物成分100重量部に対して好ましくは0.1〜1000重量部であり、より好ましくは100重量部以下であり、更に好ましくは80重量部以下であり、特に好ましくは60重量部以下である。
【0064】
硬化剤のより好ましい量は、硬化剤の種類に応じてそれぞれ以下に記載する通りである。
本発明において、「固形分」とは溶媒を除いた成分を意味し、固体のエポキシ化合物のみならず、半固形や粘稠な液状物をも含むものとする。また、「全エポキシ化合物成分」とは、本発明のエポキシ化合物と後述する他のエポキシ化合物との合計を意味する。
【0065】
本発明のエポキシ化合物含有組成物において、硬化剤としては多官能フェノール類、ポリイソシアネート系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物、カチオン重合開始剤及び有機ホスフィン類からなる群のうちの少なくとも1つを用いることが好ましい。
多官能フェノール類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールZ、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール等のビフェノール類;カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレン類;及びこれらの化合物の芳香環に結合した水素原子がハロゲン基、アルキル基、アリール基、エーテル基、エステル基、硫黄、リン、珪素
等のヘテロ元素を含む有機置換基等の非妨害性置換基で置換されたもの等が挙げられる。
【0066】
更に、これらのフェノール類やフェノール、クレゾール、アルキルフェノール等の単官能フェノール類とアルデヒド類の重縮合物であるノボラック類、レゾール類等が挙げられる。
ポリイソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。更に、これらのポリイソシアネート化合物と、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、水等の活性水素原子を少なくとも2個有する化合物との反応により得られるポリイソシアネート化合物、又は前記のポリイソシアネート化合物の3〜5量体等を挙げることができる。
【0067】
アミン系化合物の例としては、脂肪族の一級、二級、三級アミン、芳香族の一級、二級、三級アミン、環状アミン、グアニジン類、尿素誘導体等があり、具体的には、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、メタキシレンジアミン、ジシアンジアミド、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネン、ジメチル尿素、グアニル尿素等が挙げられる。
【0068】
酸無水物系化合物の例としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸と不飽和化合物の縮合物等が挙げられる。
イミダゾール系化合物の例としては、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。なお、イミダゾール系化合物は後述する硬化促進剤としての機能も果たすが、本発明においては硬化剤に分類するものとする。
【0069】
アミド系化合物の例としては、ジシアンジアミド及びその誘導体、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
カチオン重合開始剤は、熱又は活性エネルギー線照射によってカチオンを発生するものであり、芳香族オニウム塩等が挙げられる。具体的には、SbF6−、BF4−、AsF6−、PF6−、CF3SO32−、B(C6F5)4−等のアニオン成分とヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族カチオン成分とからなる化合物等が挙げられる。特に、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩が好ましい。
【0070】
有機ホスフィン類としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が例示され、ホスホニウム塩としては、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等が例示され、テトラフェニルボロン塩としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等が例示される。
【0071】
硬化剤として多官能フェノール類、アミン系化合物、酸無水物系化合物を用いる場合は、エポキシ化合物含有組成物中の全エポキシ基に対する硬化剤中の官能基(多官能フェノール類の水酸基、アミン系化合物のアミノ基又は酸無水物系化合物の酸無水物基)の当量比で0.8〜1.5の範囲となるように用いることが好ましい。ポリイソシアネート系化
合物を用いる場合、エポキシ化合物含有組成物中の水酸基数に対してポリイソシアネート系化合物中のイソシアネート基数が、当量比で1:0.01〜1:1.5の範囲で用いることが好ましい。イミダゾール系化合物を用いる場合、エポキシ化合物含有組成物中の固形分としての全エポキシ化合物成分100重量部に対して0.5〜10重量部の範囲で用いることが好ましい。アミド系化合物を用いる場合、エポキシ化合物含有組成物中の固形分としての全エポキシ化合物成分とアミド系化合物との合計量に対して0.1〜20重量%の範囲で用いることが好ましい。カチオン重合開始剤を用いる場合、エポキシ化合物含有組成物中の固形分としての全エポキシ化合物成分100重量部に対し、0.01〜15重量部の範囲で用いることが好ましい。有機ホスフィン類を用いる場合、エポキシ化合物含有組成物中の固形分としての全エポキシ化合物成分と有機ホスフィン類との合計量に対して0.1〜20重量%の範囲で用いることが好ましい。
本発明のエポキシ化合物含有組成物には以上に挙げた硬化剤の他、例えば、メルカプタン系化合物、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体等も硬化剤として用いることができる。これらの硬化剤は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
[他のエポキシ化合物]
本発明のエポキシ化合物含有組成物には、本発明のエポキシ化合物以外のエポキシ化合物(本明細書において、「他のエポキシ化合物」と称することがある。)を用いることができる。
他のエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、その他の多官能フェノール型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、上記芳香族エポキシ樹脂の芳香環を水素添加したエポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等のエポキシ化合物が挙げられる。以上に挙げた他のエポキシ化合物は1種のみで用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
本発明のエポキシ化合物含有組成物が、本発明のエポキシ化合物と他のエポキシ化合物とを含有する場合、エポキシ化合物含有組成物中の固形分としての全エポキシ化合物成分中の他のエポキシ化合物の割合は、好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上であり、一方、好ましくは99重量%以下であり、より好ましくは95重量%以下である。他のエポキシ化合物の割合が上記下限値以上であることにより、他のエポキシ化合物を配合することによる物性向上効果を十分に得ることができる。一方、他のエポキシ化合物の割合が前記上限値以下であることにより、本発明のエポキシ化合物による耐光性及び塗膜硬度向上効果を得ることができる。
【0074】
[溶剤]
本発明のエポキシ化合物含有組成物には、塗膜形成時等の取り扱い時に、エポキシ化合物含有組成物の粘度を適度に調整するために溶剤を配合し、希釈してもよい。本発明のエポキシ化合物含有組成物において、溶剤は、エポキシ化合物含有組成物の成形における取り扱い性、作業性を確保するために用いられ、その使用量には特に制限がない。なお、前述の通り、本発明においては「溶剤」という語と「溶媒」という語をその使用形態により区別して用いるが、それぞれ独立して同種のものを用いても異なるものを用いてもよい。
本発明のエポキシ化合物が含み得る溶剤としては、本発明のエポキシ化合物の製造に用いる反応溶媒(E)として例示した有機溶媒の1種又は2種以上を用いることができる。
【0075】
[その他の成分]
本発明のエポキシ化合物含有組成物には、以上に挙げた成分の他にその他の成分を含有することができる。その他の成分としては例えば、硬化促進剤(ただし、前記硬化剤に該当するものを除く。)、カップリング剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、反応性希釈剤、顔料、無機充填材、有機充填材等が挙げられる。以上に挙げたその他の成分はエポキシ化合物含有組成物の所望の物性により適宜組み合わせて用いることができる。
【0076】
[硬化物]
本発明のエポキシ化合物含有組成物を硬化させることにより、硬化物を得ることができる。ここでいう「硬化」とは熱及び/又は光等によりエポキシ化合物を意図的に硬化させることを意味するものであり、その硬化の程度は所望の物性、用途により制御すればよい。
【0077】
本発明のエポキシ化合物含有組成物を硬化させてなる硬化物とする際のエポキシ化合物含有組成物の硬化方法は、エポキシ化合物含有組成物中の配合成分や配合量、配合物の形状によっても異なるが、通常、50〜200℃で5秒〜180分の加熱条件が挙げられる。この加熱は50〜160℃で5秒〜30分の一次加熱と、一次加熱温度よりも40〜120℃高い90〜200℃で1分〜150分の二次加熱との二段処理で行うことが、硬化不良を少なくする点で好ましい。
【0078】
硬化物を半硬化物として製造する際には、加熱等により形状が保てる程度にエポキシ化合物含有組成物の硬化反応を進行させればよい。エポキシ化合物含有組成物が溶剤を含んでいる場合には、加熱、減圧、風乾等の手法で大部分の溶剤を除去するが、半硬化物中に5重量%以下の溶剤を残留させてもよい。
【0079】
[用途]
本発明のエポキシ化合物は、耐光性及び塗膜硬度に優れたものである。このことから、本発明のエポキシ化合物、及びそれを配合したエポキシ化合物含有組成物は、塗料、電気・電子材料、接着剤、繊維強化樹脂(FRP)等の分野において好適に用いることができる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0081】
[原料等]
以下の実施例及び比較例において用いた原料、触媒、溶媒及び溶剤は以下の通りである。
[エポキシ基含有化合物(A)]
A−1:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学社製 jER(登録商標)828US、エポキシ当量:186g/当量、全塩素量:0.16%)
A−2:水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(新日本理化社製 HBE−100、エポキシ当量:215g/当量、全塩素量:5%)
【0082】
[ピペリジン環含有化合物(B)]
B−1:セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(BASF社製 Tinuvin770DF)
[フェノール化合物(C)]
C−1:ビスフェノールA(三菱化学社製)
C−2:テトラブロモビスフェノールA(東京化成工業社製)
【0083】
[触媒(D)]
D−1:テトラメチルアンモニウムクロライド50%水溶液(東京化成工業社製)
[希釈溶媒(F)]
F−1:メチルエチルケトン(東京化成工業社製)
[評価方法]
以下の実施例及び比較例における評価方法は以下の通りである。
【0084】
[エポキシ当量]
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたエポキシ化合物について、JIS K 7236に基づいてエポキシ当量を測定した。
[全塩素量及び全臭素量]
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたエポキシ化合物について、サンプルを磁性ボードに採取して、石英管管状炉で加熱し、燃焼ガス中の塩素及び臭素分を0.1%−H2O2水溶液で吸収した。吸収液中の塩素分及び臭素分をイオンクロマトグラフで測定した。
装置:石英管管状炉:三菱化学社製、AQF−100型
イオンクロマトグラフ:Dionex社製、ICS−1000型
【0085】
[重量平均分子量(Mw)]
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたエポキシ化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、重量平均分子量を測定した。GPCの測定に用いた装置及び測定条件は以下の通りである。
装置:GPC
機種:HLC−8120GPC(東ソー製)
カラム:TSKGEL HM−H+H4000+H4000+H3000+H2000(東ソー製)
検出器:UV−8020(東ソー製)、254nm
溶離液:THF(0.5mL/分、40℃)
サンプル:1%テトラヒドロフラン溶液(10μインジェクション)
検量線:標準ポリスチレン(東ソー製)
【0086】
[耐光性]
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたエポキシ化合物溶液(比較例1ではエポキシ化合物)100重量部に対し、シクロヘキサノン20重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール(三菱化学社製 jERキュア(登録商標)EMI24)0.2重量部を混合し、150μmのフィルムアプリケーターを用いて、JIS K5600−1−4に記載の鋼板上に塗布し、150℃で90分加熱することにより、塗膜を作成した。得られた塗膜を、以下のウェザーメーターにより167時間光照射した後、以下の色差計で測定した黄変度(ΔYI)を耐光性の評価指標として評価した。
・ウェザーメーター
装置:アトラス・ウエザオメータCi4000(東洋精機製作所製)
光源:6500W水冷式キセノンアークランプ
試験条件:
ブラックパネル温度 89℃
室湿度 50%
照射強度 100W/m(300〜400nm)
・測色色差計:ZE6000(日本電色製)
【0087】
[塗膜硬度]
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたエポキシ化合物溶液又はエポキシ化合物を用いて、上記耐光性の評価におけると同様の上記の手法で鋼板上に塗膜を作成した。得られた塗膜について、JIS K5600−5−4に基づいて、鉛筆硬度試験器(大佑機材製)を用いて鉛筆硬度を測定し、塗膜硬度の指標として用いた。
【0088】
[エポキシ化合物の製造・評価]
(実施例1)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)1200重量部、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(B−1)24.9重量部、ビスフェノールA(C−1)460重量部、テトラメチルアンモニウムクロライド50%水溶液(D−1)
0.72重量部を5Lフラスコに入れ、窒素ガス雰囲気下165℃で6時間、重合反応を行い、目的とするエポキシ化合物を得た。これを1685重量部のメチルエチルケトン(F−1)中に溶解させた(固形分50重量%)。得られたエポキシ化合物溶液について、エポキシ当量、全塩素量及び全臭素量の合計、重量平均分子量(Mw)、耐光性及び塗膜硬度を前記の方法にて評価し、その結果を表−1に示した。
【0089】
(実施例2)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)200重量部、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(B−1)14.5重量部、ビスフェノールA(C−1)72重量部、テトラメチルアンモニウムクロライド50%水溶液(D−1)
0.12重量部を1Lフラスコに入れ、窒素ガス雰囲気下165℃で6時間、重合反応を行い、目的とするエポキシ化合物を得た。これを287重量部のメチルエチルケトン(F−1)中に溶解させた(固形分50重量%)。得られたエポキシ化合物溶液について、エポキシ当量、全塩素量及び全臭素量の合計、重量平均分子量(Mw)、耐光性及び塗膜硬度を前記の方法にて評価し、その結果を表−1に示した。
【0090】
(実施例3)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)200重量部、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(B−1)29.5重量部、ビスフェノールA(C−1)65重量部、テトラメチルアンモニウムクロライド50%水溶液(D−1)0.12重量部を1Lフラスコに入れ、窒素ガス雰囲気下165℃で6時間、重合反応を行い、目的とするエポキシ化合物を得た。これを295重量部のメチルエチルケトン(F−1)中に溶解させた(固形分50重量%)。得られたエポキシ化合物溶液について、エポキシ当量、全塩素量及び全臭素量の合計、重量平均分子量(Mw)、耐光性及び塗膜硬度を前記の方法にて評価し、その結果を表−1に示した。
【0091】
(実施例4)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)175重量部、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(B−1)145重量部、テトラメチルアンモニウムクロライド50%水溶液(D−1)0.105重量部を1Lフラスコに入れ、窒素ガス雰囲気下165℃で6時間、重合反応を行い、目的とするエポキシ化合物を得た。これを295重量部のメチルエチルケトン(F−1)中に溶解させた(固形分50重量%)。得られたエポキシ化合物溶液について、エポキシ当量、全塩素量及び全臭素量の合計、重量平均分子量(Mw)、耐光性及び塗膜硬度を前記の方法にて評価し、その結果を表−1に示した。
【0092】
(比較例1)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)200重量部、ビスフェノールA(C−1)80重量部、テトラメチルアンモニウムクロライド50%水溶液(D−1)0.12重量部を1Lフラスコに入れ、窒素ガス雰囲気下165℃で6時間、重合反応を行い、エポキシ化合物を得た。これを280重量部のメチルエチルケトン(F−1)中に溶解させた(固形分50重量%)。得られたエポキシ化合物溶液について、エポキシ当量、全塩素量及び全臭素量の合計、重量平均分子量(Mw)、耐光性及び塗膜硬度を前記の方法にて評価し、その結果を表−1に示した。
【0093】
(比較例2)
水添ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(A−2)200重量部、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(B−1)29.5重量部、ビスフェノールA(C−1)55重量部、テトラメチルアンモニウムクロライド50%水溶液(D−1)0.12重量部を1Lフラスコに入れ、窒素ガス雰囲気下165℃で6時間、重合反応を行い、目的とするエポキシ化合物を得た。これを285重量部のメチルエチルケトン(F−1)中に溶解させた(固形分50重量%)。得られたエポキシ化合物溶液について、エポキシ当量、全塩素量及び全臭素量の合計、重量平均分子量(Mw)、耐光性及び塗膜硬度を前記の方法にて評価し、その結果を表−1に示した。
【0094】
(比較例3)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(A−1)200重量部、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(B−1)36重量部、テトラブロモビスフェノールA(C−2)125重量部、テトラメチルアンモニウムクロライド50%水溶液(D−1)0.12重量部を1Lフラスコに入れ、窒素ガス雰囲気下165℃で6時間、重合反応を行い、目的とするエポキシ化合物を得た。これを361重量部のメチルエチルケトン(F−1)中に溶解させた(固形分50重量%)。得られたエポキシ化合物溶液について、エポキシ当量、全塩素量及び全臭素量の合計、重量平均分子量(Mw)、耐光性及び塗膜硬度を前記の方法にて評価し、その結果を表−1に示した。
【0095】
【表1】
【0096】
[評価結果]
表−1からわかるように、式(1)で表される2価の基及び式(2)で表される2価の基を有し、かつエポキシ当量が200g/当量以上、200,000g/当量以下であるエポキシ化合物は、高い耐光性を示すと共に、高い塗膜硬度を有するものであった。一方
、式(1)の構造を有さない比較例1のエポキシ化合物では耐光性が不十分であり、比較例2の化合物では塗膜強度が不十分であった。式(2)の構造を有さない比較例3の化合物では耐光性不十分であった。本発明のエポキシ化合物は、式(1)と式(2)の構造を併せ持つ事により耐光性、塗膜硬度が良好であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のエポキシ化合物は、優れた耐候性と柔軟性を有するものである。このことから、本発明のエポキシ化合物、このエポキシ化合物を含有するエポキシ化合物含有組成物及びその硬化物は、塗料、電気・電子材料、接着剤、繊維強化樹脂(FRP)等の分野において好適に用いることができる。