特許第6772834号(P6772834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6772834非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6772834
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20201012BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20201012BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20201012BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20201012BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20201012BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M4/587
   H01M4/36 E
   H01M4/38 Z
   H01M10/052
【請求項の数】9
【全頁数】113
(21)【出願番号】特願2016-552083(P2016-552083)
(86)(22)【出願日】2015年9月29日
(86)【国際出願番号】JP2015077582
(87)【国際公開番号】WO2016052542
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2014-201660(P2014-201660)
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】中澤 英司
(72)【発明者】
【氏名】澤 脩平
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−149535(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/001955(WO,A1)
【文献】 特開2013−191827(JP,A)
【文献】 特開2008−159865(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/080870(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/129428(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/587
H01M 10/052
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極及び負極を備えるリチウム二次電池用の非水系電解液であって、該非水系電解液がアルカリ金属塩を含有する電解質及び非水系溶媒とともに下記一般式(A)で表される化合物を含有する、リチウム二次電池用非水系電解液:
【化1】

(式(A)中、RおよびR、それぞれ炭素数〜12のアルキル基を示し、Yは、シアノ基、もしくはアルコキシカルボニル基によって置換されている炭素数1〜12のアルキル基、または置換基を有さない炭素数2〜12のアルキル基を示し、但し、シアノ基、及びアルコキシカルボニル基における炭素は、Yのアルキル基における炭素の数に含まない。Xは水素を示す。RおよびRそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)。
【請求項2】
前記一般式(A)中、Yが置換基を有さない炭素数2〜12のアルキル基である、請求項1に記載の非水系電解液。
【請求項3】
前記一般式(A)で表される化合物の添加量が非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上10質量%以下である、請求項1又は2に記載の非水系電解液。
【請求項4】
前記非水系電解液が、さらに炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、ニトリル化合物、イソシアネート化合物、イソシアヌル酸骨格を有する化合物、フッ素化された塩、酸無水物化合物、アクリレート化合物、芳香族化合物、環状エーテル化合物、オキサラート塩及び環状スルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項5】
前記非水系溶媒が鎖状カルボン酸エステルを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項6】
金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極及び負極と、非水系電解液とを備えた非水系電解液二次電池であって、該非水系電解液が請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非水系電解液である、リチウム二次電池。
【請求項7】
前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極の負極活物質が炭素を構成元素として有する、請求項6に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極の負極活物質がケイ素(Si)またはスズ(Sn)を構成元素として有する、請求項6に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極の負極活物質が、Liと合金可能な金属粒子と黒鉛粒子との混合体または複合体である、請求項6に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯用電子機器の急速な進歩に伴い、その主電源やバックアップ電源に用いられる電池に対する高容量化への要求が高くなっている。この要求の高まりに伴い、ニッケル・カドミウム電池やニッケル・水素電池に比べてエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池等の非水系電解液電池が注目されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の電解液としては、LiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiCF(CFSO等の電解質を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の高誘電率溶媒と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の低粘度溶媒との混合溶媒に溶解させた非水系電解液が代表例として挙げられる。
【0004】
また、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、主にリチウムイオンを吸蔵・放出することができる炭素質材料が用いられている。天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等が前記炭素質材料の代表例として挙げられる。更に高容量化を目指してシリコンやスズ等を負極活物質として用いた金属又は合金系の負極も知られている。一方正極活物質としては、主にリチウムイオンを吸蔵・放出することができる遷移金属複合酸化物が用いられている。前記遷移金属複合酸化物における遷移金属の代表例としてはコバルト、ニッケル、マンガン、鉄等が挙げられる。
【0005】
例えば上記で説明した非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池では、その非水系電解液の組成によって反応性が異なるため、非水系電解液により電池特性が大きく変わることになる。非水系電解液二次電池の保存特性等の電池特性を改良したり、過充電時の電池の安全性を高めたりするために、非水溶媒や電解質について種々の検討がなされている。
【0006】
特許文献1では、コバルト酸リチウムに代表されるリチウム遷移金属酸化物を活物質とする正極と、黒鉛を用いる負極と、非水電解液とからなるリチウム二次電池において、電解液中にマロン酸エステル化合物を添加することにより、サイクル特性を改善する検討がなされている。
【0007】
特許文献2では、電気二重層キャパシタ向け電解液中にマロン酸エステルやトリカルボン酸エステル化合物を添加することにより、電解液の耐還元性を高める検討や定電圧充電時の漏れ電流を抑制する検討がなされている。
【0008】
特許文献3では、V、Pから成る非晶質材料を活物質とする正極と、金属リチウムを用いる負極と、非水電解液とからなるリチウム二次電池において、電解液中にジカルボン酸化合物を添加することにより、サイクル特性を改善する検討がなされている。
【0009】
特許文献4では、コバルト酸リチウムに代表されるリチウム遷移金属酸化物を活物質とする正極と、人造黒鉛を用いる負極と、非水電解液とからなるリチウム二次電池において、電解液中に特定のカルボン酸エステル化合物を添加することにより、高温サイクル後の容量維持率を改善する検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】日本国特開平11−135148号公報
【特許文献2】国際公開番号WO2008−001955号公報
【特許文献3】日本国特開昭64−30178号公報
【特許文献4】国際公開番号WO2011−034067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、近年のリチウム非水系電解液二次電池の特性改善への要求はますます高まっている。具体的には、電池が高温保存特性、エネルギー密度、出力特性、寿命、高速充放電特性、低温特性等の全ての性能を高いレベルで併せ持つことが求められているが、未だに達成されていない。これは、高温保存特性をはじめとする耐久性能と、容量、抵抗、出力特性などの性能とがトレードオフの関係になっており、従来の電池ではこれら全ての性能についての総合的なバランスを良好にすることが困難であるという問題があるからである。
【0012】
特許文献1、3、4に記載される、マロン酸ジメチルに代表されるマロン酸エステル化合物、コハク酸に代表されるジカルボン酸化合物、あるいは2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸メチルに代表される特性化合物を含有させた電解液を用いると、サイクル特性は向上することがこれらの文献に開示されている。しかし、そのような電解液は電極上での反応性が高く、高温保存時の保存ガス膨れに関して改善する余地があった。
【0013】
特許文献2で実施または記載される電解質は四級アンモニウム塩のみであり、電解質塩としてリチウム塩に代表されるアルカリ金属塩を用いた際の効果については何ら明らかとなっていない。また、発明の用途は電気二重層キャパシタに限定され、リチウム二次電池を用途とするような記載は特許文献2にはなされていない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち本発明は、非水系電解液二次電池において、耐久性と容量、抵抗、出力特性などの性能につき、総合的なバランスがよく、高温保存特性及び負荷特性を改善し得る、非水系電解液を提供することを目的とする。また本発明は、そのような非水系電解液を使用した非水系電解液電池を提供することをも目的とする。
【0015】
本発明の発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物を非水系電解液中に含有させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0016】
本発明の要旨は、以下に示す通りである。
(a)金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極及び負極を備える非水系電解液二次電池用の非水系電解液であって、該非水系電解液が電解質及び非水系溶媒とともに下記一般式(A)で表される化合物を含有する、非水系電解液:
【0017】
【化1】
【0018】
(式(A)中、R、RおよびYは、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示し、Xは水素又はフッ素原子を示す。R、RおよびYはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)。
【0019】
(b)前記一般式(A)中、Xが水素原子である、(a)に記載の非水系電解液。
【0020】
(c)前記一般式(A)中、R、RおよびYがそれぞれ置換基を有さない炭素数1〜12の炭化水素基である、(a)又は(b)に記載の非水系電解液。
【0021】
(d)前記一般式(A)中、R、RおよびYがそれぞれ置換基を有さない炭素数1〜12のアルキル基である、(a)又は(b)に記載の非水系電解液。
【0022】
(e)前記一般式(A)で表される化合物の添加量が非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上10質量%以下である、(a)〜(d)のいずれかに記載の非水系電解液。
【0023】
(f)前記非水系電解液が、さらに炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、ニトリル化合物、イソシアネート化合物、イソシアヌル酸骨格を有する化合物、フッ素化された塩、酸無水物化合物、アクリレート化合物、芳香族化合物、環状エーテル化合物、オキサラート塩及び環状スルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有する、(a)〜(e)のいずれかに記載の非水系電解液。
【0024】
(g)前記非水系溶媒が鎖状カルボン酸エステルを含む、(a)〜(f)のいずれかに記載の非水系電解液。
【0025】
(h)金属イオンを吸蔵及び放出可能な正極及び負極と、非水系電解液とを備えた非水系電解液二次電池であって、該非水系電解液が(a)〜(g)のいずれかに記載の非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
【0026】
(i)前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極の負極活物質が炭素を構成元素として有する、(h)に記載の非水系電解液二次電池。
【0027】
(j)前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極の負極活物質がケイ素(Si)またはスズ(Sn)を構成元素として有する、(h)に記載の非水系電解液二次電池。
【0028】
(k)前記金属イオンを吸蔵及び放出可能な負極の負極活物質が、Liと合金可能な金属粒子と黒鉛粒子との混合体または複合体である、(h)に記載の非水系電解液二次電池。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、非水系電解液二次電池に関して、高温保存特性や負荷特性などの性能に優れ、総合的な性能のバランスのよい電池を提供することができる。
【0030】
本発明の非水系電解液を用いて作製された非水系電解液二次電池が、総合的な性能のバランスが良い二次電池となる作用・原理は明確ではないが、以下のように考えられる。ただし、本発明は、以下に記述する作用・原理に限定されるものではない。
【0031】
一般式(A)で表される化合物は、カルボニル基に挟まれた炭素原子上(α位)に活性な水素原子等を有する。この水素のプロトン互変異性によってケト体とエノール体の互変異体を生じている。また、一般式(A)の化合物はα位に水素原子のみならず、炭化水素基Yを有する。炭化水素基は水素原子よりも電子供与性が高いため、先述の水素原子の酸性度が下がる。これにより、非水系電解液二次電池において、一般式(A)で表される化合物と負極上で生成したアルコラート等の塩基成分との副反応が抑制されると同時に、非水系電解液の負極上での還元反応性も低下するため、水素に代表されるガスの発生も抑制される。
【0032】
先述の炭化水素基Yは、α位の水素原子の反応性のみならず、ケト体とエノール体の平衡状態にも影響を及ぼすと考えられる。α位が炭化水素基で置換されていない化合物よりは反応性は低下するが、一般式(A)で表される化合物も負極上でわずかに還元される。この還元によりα位にラジカルアニオンが生成し、このラジカルアニオンも水素原子と同様にケト−エノール互変異性を起すと考えられる。α位には電子供与性の炭化水素基が結合しているので、α位のラジカルアニオンの安定性は悪く、平衡はエノール側に偏っていると考えられる。エノール体は、カルボニル基の酸素原子上にアニオンを有するため、正極活物質の遷移金属元素とより強く相互作用すると考えられる。これにより、正極表面の活性を低下させ、正極活物質表面での非水系電解液の分解反応が抑制されると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0034】
また、ここで“重量%”、“重量ppm”及び“重量部”と“質量%”、“質量ppm”及び“質量部”とは、それぞれ同義である。また、単にppmと記載した場合は、“重量ppm”のことを示す。
【0035】
1.非水系電解液
1−1.本発明の非水系電解液
本発明の非水系電解液は、下記一般式(A)で表される化合物を含有することを特徴としている。
【0036】
1−1−1.一般式(A)で表される化合物
【0037】
【化2】
【0038】
式(A)中、R、RおよびYは、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示し、Xは水素又はフッ素原子を示す。R、RおよびYはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。なお、R、RおよびYは互いに結合して環を形成することはない。
【0039】
ここで、前記置換基としては、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(−(C=O)−Ra)、アシルオキシ基(−O(C=O)−Ra)、アルコキシカルボニル基(−(C=O)O−Ra)、スルホニル基(−SO−Ra)、スルホニルオキシ基(−O(SO)−Ra)、アルコキシスルホニル基(−(SO)−O−Ra)、アルコキシカルボニルオキシ基(−O−(C=O)−O−Ra)、エーテル基(−O−Ra)、アクリル基、メタクリル基、ハロゲン(好ましくは、フッ素)、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、Raは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、または炭素数2〜10のアルキニル基を示す。なお、これら置換基における炭素は、R、RおよびYの炭素数1〜12の炭化水素基における炭素の数にカウントしない。
【0040】
これらの置換基の中でも好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(−(C=O)−Ra)、アシルオキシ基(−O(C=O)−Ra)、アルコキシカルボニル基(−(C=O)O−Ra)であり、更に好ましくは、シアノ基、アシル基(−(C=O)−Ra)、アルコキシカルボニル基(−(C=O)O−Ra)であり、特に好ましくは、シアノ基、アルコキシカルボニル基(−(C=O)O−Ra)であり、最も好ましくはシアノ基である。
【0041】
また、上述の通り、式(A)中、R、RおよびYは、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を示す。
【0042】
当該炭化水素基の具体例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基を介していてもよいアリール基が挙げられる。これらの中でも好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基であり、さらに好ましくは、アルキル基、アルケニル基であり、特に好ましくは、アルキル基である。R、RおよびYが以上説明した炭化水素基であると、一般式(A)で表される化合物が非水系電解液の分解物と反応し、電極の抵抗が増加しすぎることを抑えられる。
【0043】
前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、t−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基であり、より好ましくは、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が挙げられる。化合物の製造難度、工業品の入手性の観点から、アルキル基としてはエチル基、n−ブチル基が特に好ましい。また、Yとしてアルキル基である化合物を用いる場合には、同様な観点からアルキル基としてはエチル基、n−ブチル基が特に好ましく、n−ブチル基が最も好ましい。
【0044】
前記シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられ、シクロヘキシル基、アダマンチル基が好ましい。
【0045】
前記アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、2−ブテニル基、3−メチル2−ブテニル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、2−ブテニル基であり、さらに好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基であり、特に好ましくは、アリル基、メタリル基であり、最も好ましくはアリル基である。炭化水素基がこのようなアルケニル基であると、立体障害が適切であり、且つ一般式(A)の化合物が電極上で反応して電極抵抗が増大することを好適な程度に調整できるためである。
【0046】
前記アルキニル基の具体例としては、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、4−ペンチニル基、5−ヘキシニル基等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、エチニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基であり、さらに好ましくは、2−プロピニル基、3−ブチニル基であり、特に好ましくは、2−プロピニル基である。炭化水素基がこのようなアルキニル基であると、立体障害が適切であり、且つ一般式(A)の化合物が電極上で反応して電極抵抗が増大することを好適な程度に調整できるためである。
【0047】
前記アルキレン基を介していてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0048】
次に、一般式(A)において、Xは水素又はフッ素原子を示す。非水系電解液の反応性、それから形成される皮膜の抵抗の観点から、Xとしては水素原子が好ましい。
【0049】
一般式(A)で表される化合物と電極との反応性の観点から、当該式におけるR、R、Yである炭素数1〜12の炭化水素基は、無置換であることが好ましい。これにより、一般式(A)で表される化合物の、電極上での反応性及び電極上で生成した非水系電解液の還元生成物等の塩基成分との反応性が低下する。これにより、副反応による、本発明の非水系電解液を使用して得られる非水系電解液二次電池(以下、単に「非水系電解液二次電池」、又は「本発明の非水系電解液二次電池」と記載する場合がある)の劣化が抑制される。とりわけ、R、R、Yの中でもYが無置換の炭化水素基であることが好ましい。
【0050】
本発明の非水系電解液に用いる、一般式(A)で表される化合物の具体的な例としては、以下の構造の化合物が挙げられる。
【0051】
【化3】
【0052】
【化4】
【0053】
【化5】
【0054】
【化6】
【0055】
【化7】
【0056】
【化8】
【0057】
【化9】
【0058】
【化10】
【0059】
【化11】
【0060】
【化12】
【0061】
【化13】
【0062】
化合物の正極上での反応を好適な程度に調整することができるため、一般式(A)で表されるとして好ましくは以下の構造の化合物である。
【0063】
【化14】
【0064】
【化15】
【0065】
【化16】
【0066】
【化17】
【0067】
【化18】
【0068】
化合物の負極上での反応を好適な程度に調整できるため、一般式(A)で表されるとしてより好ましくは以下の構造の化合物である。
【0069】
【化19】
【0070】
【化20】
【0071】
【化21】
【0072】
【化22】
【0073】
化合物が電極上で反応して電極抵抗が増大することを好適な程度に調整できるため、一般式(A)で表されるとして更に好ましくは以下の構造の化合物である。
【0074】
【化23】
【0075】
【化24】
【0076】
化合物が電極上で反応して電極抵抗が増大することをさらに好適な程度に調整できるため、一般式(A)で表されるとして特に好ましくは以下の構造の化合物である。
【0077】
【化25】
【0078】
化合物の立体障害が小さく、電解液粘度の上昇を抑制することができるため、一般式(A)で表されるとして最も好ましくは以下の構造の化合物である。
【0079】
【化26】
【0080】
これらの化合物は入手・製造が比較的容易であり、適度な反応性を有するため、電池特性の向上効果も大きい。本発明の非水系電解液は、一般式(A)で表される化合物を含有することを特徴としているが、含有する一般式(A)で表される化合物は1種類に限られず、複数種を併用してもよい。
【0081】
本発明の非水系電解液全量に対する一般式(A)で表される化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液の全量に対して(すなわち非水系電解液の質量を100とした場合)、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上、最も好ましくは2質量%以上であり、また、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは4質量%以下、最も好ましくは3質量%以下である。上記の濃度であれば、電極上での反応性及び電極上で生成した非水系電解液の還元生成物等の塩基成分との反応性が調節でき、電池特性を最適にすることが可能である。
【0082】
すなわち上記範囲を満たした場合は、高温保存特性、放電保存特性等の効果がより向上する。
【0083】
1−2.炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、ニトリル化合物、イソシアネート化合物、イソシアヌル酸骨格を有する化合物、フッ素化された塩、酸無水物化合物、アクリレート化合物、芳香族化合物、環状エーテル化合物、オキサラート塩及び環状スルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の特定添加剤
本発明の非水系電解液は、一般式(A)で表される化合物の他に、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、ニトリル化合物、イソシアネート化合物、イソシアヌル酸骨格を有する化合物、フッ素化された塩、酸無水物化合物、アクリレート化合物、芳香族化合物、環状エーテル化合物、オキサラート塩及び環状スルホン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の特定添加剤をさらに含有することが、電池特性向上の点から好ましい。
【0084】
これらの中でも、電池特性向上の観点から炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、ニトリル化合物、イソシアヌル酸骨格を有する化合物がより好ましく、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、イソシアヌル酸骨格を有する化合物が更に好ましく、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネートが特に好ましく、フッ素原子を有する環状カーボネートが最も好ましい。
【0085】
一般式(A)で表される化合物、及び特定添加剤は電極の活物質上で還元反応を受けて、構造内にアニオン(求核種)を形成する。また、これらは分子構造中に求核攻撃受容部位を有しているため、一般式(A)で表される化合物及び特定添加剤の還元生成物、並びに非水溶媒の還元生成物によって複合的な被膜が形成されることが考えられる。
【0086】
上述より、これらの特定添加剤と一般式(A)で表される化合物を非水系電解液に共添加することにより、活物質上で互いに反応し、複合的な被膜を形成する。そのため、それぞれの化合物を単独で添加した時よりも、活物質表面での非水系電解液の反応をより抑制するため、電池特性は向上する。以下、上記の特定添加剤について、個別に説明する。
【0087】
1−2−1.炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート
炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」と記載する場合がある)としては、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する環状カーボネートであれば、特に制限はない。不飽和環状カーボネートとしては、任意の不飽和カーボネートを用いることができる。なお、芳香環を有する環状カーボネートも、不飽和環状カーボネートに包含されることとする。また、不飽和環状カーボネートは、フッ素原子を有していてもよく(フッ素化不飽和カーボネートとも呼ぶ)、その場合、フッ素原子は通常6以下であり、好ましくは4以下であり、1又は2であることが最も好ましい。
【0088】
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環または炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類、カテコールカーボネート類等が挙げられる。
【0089】
前記ビニレンカーボネート類としては、
ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5−ジビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5−ジアリルビニレンカーボネート、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0090】
前記芳香環または炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、
ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−ビニル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−エチニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、4−フェニル−5−ビニルエチレンカーボネート、4−アリル−5−フェニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−メチル−5−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0091】
以上挙げた中でも、好ましい不飽和環状カーボネートとしては、
ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5−ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5−ジアリルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−ビニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−メチル−5−アリルエチレンカーボネート、4−アリル−5−ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカーボネート、4−メチル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−ビニル−5−エチニルエチレンカーボネート、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネートが挙げられる。
【0092】
また、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボ
ネートは特に安定な界面保護被膜を形成するので、特に好ましい。
【0093】
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記分子量は、好ましくは、80以上、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。不飽和環状カーボネートの分子量は、より好ましくは85以上であり、また、より好ましくは150以下である。
【0094】
以上説明した不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0095】
本発明の非水系電解液において不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。この範囲内であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0096】
1−2−2.フッ素原子を有する環状カーボネート
特定添加剤であるフッ素原子を有する環状カーボネートとしては、炭素原子数2〜6のアルキレン基を有する環状カーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられる。それらの例としては、エチレンカーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられる。前記エチレンカーボネートのフッ素化物の誘導体としては、例えば、アルキル基(例えば、炭素原子数1〜4個のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられる。フッ素原子を有する環状カーボネートとしては、フッ素原子を1〜8個有するエチレンカーボネート、及びその誘導体が好ましい。なお、フッ素原子を有し、かつ不飽和結合を有する環状カーボネートについては、上記1−2−1.に記載している。
【0097】
それらの具体例としては、
モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0098】
これらの中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が、高イオン伝導性を与え、かつ好適に界面保護被膜を形成する点でより好ましい。
【0099】
フッ素原子を有する環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0100】
本発明の非水系電解液全体に対するフッ素原子を有する環状カーボネートの配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。ただし、モノフルオロエチレンカーボネートは溶媒として用いてもよく、その場合は上記の含有量に限定されない。
【0101】
1−2−3.ニトリル化合物
特定添加剤であるニトリル化合物は、分子内にシアノ基を有している化合物であれば特にその種類は限定されない。
【0102】
ニトリル化合物の具体例としては、例えば、
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、デカンニトリル、ラウロニトリル、2−メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3−メチルクロトノニトリル、2−メチル−2−ブテン二トリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−2−ペンテンニトリル、3−メチル−2−ペンテンニトリル、2−ヘキセンニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2−フルオロプロピオニトリル、3−フルオロプロピオニトリル、2,2−ジフルオロプロピオニトリル、2,3−ジフルオロプロピオニトリル、3,3−ジフルオロプロピオニトリル、2,2,3−トリフルオロプロピオニトリル、3,3,3−トリフルオロプロピオニトリル、3,3’−オキシジプロピオニトリル、3,3’−チオジプロピオニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル等のニトリル基を1つ有する化合物;
マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert−ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2−ジメチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,3,3−トリメチルスクシノニトリル、2,2,3,3−テトラメチルスクシノニトリル、2,3−ジエチル−2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,2−ジエチル−3,3−ジメチルスクシノニトリル、ビシクロヘキシル−1,1−ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル−2,2−ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル−3,3−ジカルボニトリル、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジカルボニトリル、2,3−ジイソブチル−2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,2−ジイソブチル−3,3−ジメチルスクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2,3−ジメチルグルタロニトリル、2,4−ジメチルグルタロニトリル、2,2,3,3−テトラメチルグルタロニトリル、2,2,4,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,2,3,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,3,3,4−テトラメチルグルタロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、1,4−ジシアノペンタン、2,6−ジシアノヘプタン、2,7−ジシアノオクタン、2,8−ジシアノノナン、1,6−ジシアノデカン、1,2−ジアノベンゼン、1,3−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノベンゼン、3,3’−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’−(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル、3,9−ビス(2−シアノエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のニトリル基を2つ有する化合物;
シクロヘキサントリカルボニトリル、トリスシアノエチルアミン、トリスシアノエトキシプロパン、トリシアノエチレン、ペンタントリカルボニトリル、プロパントリカルボニトリル、ヘプタントリカルボニトリル等のシアノ基を3つ有する化合物
等が挙げられる。
【0103】
これらのうち、バレロニトリル、デカンニトリル、ラウロニトリル、クロトノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、フマロニトリル、3,9−ビス(2−シアノエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが、非水系電解液の保存特性向上の点から好ましい。また、バレロニトリル、デカンニトリル、ラウロニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、フマロニトリル、3,9−ビス(2−シアノエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のジニトリル化合物が特に好ましい。
【0104】
ニトリル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本発明の非水系電解液全体に対するニトリル化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。上記範囲を満たした場合は、非水系電解液二次電池の出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0105】
1−2−4.イソシアネート化合物
特定添加剤であるイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を有している化合物であれば特にその種類は限定されない。
【0106】
イソシアネート化合物の具体例としては、例えば、
メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ターシャルブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、フロロフェニルイソシアネートなどの炭化水素系モノイソシアネート化合物;
ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、エチニルイソシアネート、プロピニルイソシアネートなどの炭素−炭素不飽和結合を有するモノイソシアネート化合物;
モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトプロパン、1,4−ジイソシアナト−2−ブテン、1,4−ジイソシアナト−2−フルオロブタン、1,4−ジイソシアナト−2,3−ジフルオロブタン、1,5−ジイソシアナト−2−ペンテン、1,5−ジイソシアナト−2−メチルペンタン、1,6−ジイソシアナト−2−ヘキセン、1,6−ジイソシアナト−3−ヘキセン、1,6−ジイソシアナト−3−フルオロヘキサン、1,6−ジイソシアナト−3,4−ジフルオロヘキサン、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−1,1’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−3,3’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、カルボニルジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトブタン−1,4−ジオン、1,5−ジイソシアナトペンタン−1,5−ジオン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートなどの炭化水素系ジイソシアネート化合物;
ジイソシアナトスルホン、(オルト−、メタ−、パラ−)トルエンスルホニルイソシアネート、ベンゼンスルホニルイソシアネート、フルオロスルホニルイソシアネート、フェノキシスルホニルイソシアネート、ペンタフルオロフェノキシスルホニルイソシアネート、メトキシスルホニルイソシアネートなどのイソシアネート化合物;
等が挙げられる。
【0107】
これらのうち、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、エチニルイソシアネート、プロピニルイソシアネートなどの炭素−炭素不飽和結合を有するモノイソシアネート化合物;
モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等の炭化水素系ジイソシアネート化合物;
ジイソシアナトスルホン、(オルト−、メタ−、パラ−)トルエンスルホニルイソシアネート、ベンゼンスルホニルイイソシアネート、フルオロスルホニルイソシアネート、フェノキシスルホニルイソシアネート、ペンタフルオロフェノキシスルホニルイソシアネート、メトキシスルホニルイソシアネートなどのイソシアネート化合物;
が、非水系電解液二次電池のサイクル特性・保存特性向上の点から好ましい。
【0108】
さらに好ましくは、アリルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジイソシアナトスルホン、(オルト−、メタ−、パラ−)トルエンスルホニルイソシアネートであり、特に好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、(オルト−、メタ−、パラ−)トルエンスルホニルイソシアネートであり、最も好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンである。
【0109】
また、イソシアネート化合物としては分岐鎖を有するイソシアネート化合物が好ましい。
また、本発明に用いるイソシアネート化合物は、分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物から誘導される三量体化合物、もしくはそれに多価アルコールを付加した脂肪族ポリイソシアネートであってもよい。そのような脂肪族ポリイソシアネートとして、例えば、下記一般式(1−2−1)〜(1−2−4)の基本構造で示されるビウレット、イソシアヌレート、アダクト、及び二官能のタイプの変性ポリイソシアネート等が例示できる(下記一般式(1−2−1)〜(1−2−4)中、R及びR’はそれぞれ独立して任意の炭化水素基である)。
【0110】
【化27】
【0111】
【化28】
【0112】
【化29】
【0113】
【化30】
【0114】
本発明で用いるイソシアネート化合物のうち、分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物には、ブロック剤でブロックして保存安定性を高めた、所謂ブロックイソシアネートも含まれる。前記ブロック剤としては、アルコール類、フェノール類、有機アミン類、オキシム類、ラクタム類を挙げることができ、これらの具体例としては、n−ブタノール、フェノール、トリブチルアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルエチルケトキシム、ε−カプロラクタム等を挙げることができる。
【0115】
前記分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物に基づく反応を促進し、より高い効果を得る目的で、ジブチルスズジラウレート等のような金属触媒や、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7のようなアミン系触媒等を併用することも好ましい。
【0116】
以上説明したイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0117】
本発明の非水系電解液全体に対するイソシアネート化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記配合量は、本発明の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。
【0118】
上記範囲を満たした場合は、非水系電解液二次電池の出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0119】
1−2−5.イソシアヌル酸骨格を有する化合物
特定添加剤であるイソシアヌル酸骨格を有する化合物としては、下記一般式(U)で表される化合物が挙げられる。
【0120】
【化31】
【0121】
式(U)中、R〜Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の有機基である。但し、R〜Rのうち少なくとも1つは炭素−炭素不飽和結合あるいはシアノ基を有する。好ましくは、式(U)中、R〜Rが、互いに同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の有機基である。より好ましくは、式(U)中、R〜Rのうち少なくとも1つが炭素−炭素不飽和結合を有する有機基である。
【0122】
ここで、有機基とは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、硫黄原子及びハロゲン原子からなる群から選ばれる原子で構成された官能基のことを表す。
【0123】
置換基を有していてもよい有機基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、アクリル基、メタクリル基、ビニルスルホニル基、ビニルスルホ基等が挙げられる。
【0124】
ここでいう置換基としては、ハロゲン原子、アルキレン基等が挙げられる。また、前記アルキレン基の一部に不飽和結合などが含まれていてもよい。ハロゲン原子の中でも、フッ素原子が好ましい。
【0125】
置換基を有していてもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及びシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。
【0126】
置換基を有していてもよいアルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基等が挙げられる。
【0127】
置換基を有していてもよいアルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロパルギル基、1−プロピニル基等が挙げられる。
【0128】
置換基を有していてもよいアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0129】
以上説明した置換基を有していてもよい置換基としてさらに好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アクリル基、メタクリル基、シアノ基である。
【0130】
特に好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アクリル基、メタクリル基、シアノ基である。
【0131】
最も好ましくは、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、メタリル基である。とりわけ非置換のアリル基及びメタリル基が好ましい。被膜形成能の観点からアリル基が好ましい。
【0132】
一般式(U)で表される化合物の具体的な例としては、以下の構造の化合物が挙げられる。
【0133】
【化32】
【0134】
【化33】
【0135】
【化34】
【0136】
前記一般式(U)で表される化合物のうち、好ましくは、以下の構造の化合物である。
【0137】
【化35】
【0138】
【化36】
【0139】
さらに好ましくは、以下の構造の化合物である。
【0140】
【化37】
【0141】
特に好ましくは、以下の構造の化合物である。
【0142】
【化38】
【0143】
最も好ましくは、以下の構造の化合物である。
【0144】
【化39】
【0145】
また、これら最も好ましい化合物の中でも、被膜形成能の観点から以下の構造の化合物が好ましい。
【0146】
【化40】
【0147】
本発明の非水系電解液全体に対する、以上説明したイソシアヌル酸骨格を有する化合物(一般式(U)で表される化合物)の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記配合量は、本発明の非水系電解液全体に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。
【0148】
上記範囲を満たした場合は、非水系電解液二次電池の出力特性、負荷特性、サイクル特性、高温保存特性、電池膨れ等の効果がより向上する。
【0149】
1−2−6.フッ素化された塩
特定添加剤であるフッ素化された塩に特に制限はないが、構造内に脱離性の高いフッ素原子を有しているため、例えば、一般式(A)で表される化合物が還元反応を受け生成するアニオン(求核種)と好適に反応し、複合的被膜を形成することができることから、ジフルオロリン酸塩、フルオロスルホン酸塩、フルオロホウ塩及びフルオロイミド塩が好ましい。フッ素原子の脱離性が特に高いこと、求核種との反応が好適に進行することから、フルオロホウ塩、フルオロスルホン酸塩がより好ましい。以下、これらの各種塩について説明する。
【0150】
(ジフルオロリン酸塩)
前記ジフルオロリン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び、NR13141516(式中、R13〜R16は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等がその例として挙げられる。
【0151】
上記アンモニウムのR13〜R16で表わされる炭素数1〜12の有機基としては特に限定はないが、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR13〜R16が、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は窒素原子含有複素環基であることが好ましい。
【0152】
ジフルオロリン酸塩の具体例としては、
ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸ナトリウム、ジフルオロリン酸カリウム等が挙げられ、ジフルオロリン酸リチウムが好ましい。
【0153】
ジフルオロリン酸塩は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、ジフルオロリン酸塩の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
【0154】
ジフルオロリン酸塩の配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
【0155】
この範囲内であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0156】
(フルオロスルホン酸塩)
前記フルオロスルホン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び、NR13141516(式中、R13〜R16は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等がその例として挙げられる。
【0157】
上記アンモニウムのR13〜R16で表わされる炭素数1〜12の有機基としては特に限定はないが、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR13〜R16が、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は窒素原子含有複素環基であることが好ましい。
【0158】
フルオロスルホン酸塩の具体例としては、
フルオロスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸ナトリウム、フルオロスルホン酸カリウム、フルオロスルホン酸ルビジウム、フルオロスルホン酸セシウム等が挙げられ、フルオロスルホン酸リチウムが好ましい。
【0159】
フルオロスルホン酸塩は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、フルオロスルホン酸塩の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
【0160】
フルオロスルホン酸塩の配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
【0161】
この範囲内であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0162】
(フルオロホウ塩)
前記フルオロホウ塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び、NR13141516(式中、R13〜R16は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等がその例として挙げられる。
【0163】
上記アンモニウムのR13〜R16で表わされる炭素数1〜12の有機基としては特に限定はないが、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR13〜R16が、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は窒素原子含有複素環基であることが好ましい。
【0164】
フルオロホウ素塩の具体例としては、
LiBF、LiB(C2i+1(F)4−j等が挙げられ、LiBFが好ましい。なお、iは1〜10の整数、jは1〜4の整数を表す。
【0165】
フルオロホウ素塩は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、フルオロホウ素塩の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
【0166】
フルオロホウ素塩の配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常3質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは0.3質量%以下である。
【0167】
この範囲内であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0168】
(フルオロイミド塩)
前記フルオロイミド塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び、NR13141516(式中、R13〜R16は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等がその例として挙げられる。
【0169】
上記アンモニウムのR13〜R16で表わされる炭素数1〜12の有機基としては特に限定はないが、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR13〜R16が、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は窒素原子含有複素環基であることが好ましい。
【0170】
フルオロイミド塩の具体例としては、
LiN(FCO)、LiN(FCO)(FSO)、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CFSO)(CSO)が挙げられ、LiN(FSO、LiN(CFSO、LiN(CSOが好ましい。
【0171】
フルオロイミド塩は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、フルオロイミド塩の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
【0172】
フルオロイミド塩の配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
【0173】
この範囲内であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0174】
1−2−7.酸無水物化合物
前記酸無水物化合物については、特にその構造は限定されない。酸無水物化合物の例としては、カルボン酸無水物、硫酸無水物、硝酸無水物、スルホン酸無水物、リン酸無水物、亜リン酸無水物、環状酸無水物、鎖状酸無水物等が挙げられる。
【0175】
酸無水物化合物の具体例としては、例えば、
無水マロン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、2、3−ジメチルマレイン酸無水物、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水フェニルマレイン酸、2、3−ジフェニルマレイン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、フェニルコハク酸無水物、2−フェニルグルタル酸無水物、アリルコハク酸無水物、2−ブテン−1−イルコハク酸無水物、(2-メチル-2-プロペニル)コハク酸無水物、テトラフルオロコハク酸無水物、ジアセチル−酒石酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、クロトン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物、無水酢酸等が挙げられる。
【0176】
これらのうち、
無水コハク酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水フェニルマレイン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、アリルコハク無水物、無水酢酸、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、メタンスルホン酸無水物が特に好ましい。
【0177】
酸無水物化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0178】
本発明の非水系電解液全体に対する酸無水物化合物の配合量に特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記配合量は、本発明の非水系電解液全体に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。
【0179】
上記範囲を満たした場合は、非水系電解液二次電池の出力特性、負荷特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0180】
1−2−8.アクリレート化合物
前記アクリレート化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0181】
【化41】
【0182】
(R21〜R23はそれぞれ独立に同一であっても異なっていてもよく、水素、または、炭素数1〜6の炭化水素基を表す。nは4〜8の整数を表す。Aは炭素数1〜12のヘテロ元素を有していてもよい有機基を表す。)
【0183】
21〜R23はそれぞれ独立に同一であっても異なっていてもよく、水素、または、炭素数1〜6の炭化水素基を表す。当該炭化水素基は炭素原子および水素原子からなる群から選ばれる原子で構成された官能基のことを表す。R21〜R23は、水素、または、炭素数1以上通常6以下の炭化水素基であり、好ましくは炭素数4以下の炭化水素基、より好ましくは炭素数2以下の炭化水素基である。その範囲であれば、立体障害が少なく、皮膜を安定化できる。
【0184】
好ましい炭化水素基としては、水素基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。
【0185】
また、一般式(1)においてAは炭素数1〜12のヘテロ元素を有してもよい有機基であるが、有機基とは炭素原子および水素原子からなる群から選ばれる原子で構成された官能基のことを表し、ヘテロ元素を有していてもよい有機基とは、炭素原子、水素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、硫黄原子、珪素原子および酸素原子からなる群から選ばれる一種以上の原子で構成された官能基のことを表す。
【0186】
Aで表される炭素数1〜12のヘテロ元素を有していてもよい有機基の具体例として、アルキレン基またはその誘導体、アルケニレン基またはその誘導体、シクロアルキレン基またはその誘導体、アルキニレン基またはその誘導体、シクロアルケニレン基またはその誘導体、アリーレン基またはその誘導体、カルボニル基またはその誘導体、スルホニル基またはその誘導体、スルフィニル基またはその誘導体、ホスホニル基またはその誘導体、ホスフィニル基またはその誘導体、アミノ基またはその誘導体、アミド基またはその誘導体、イミド基またはその誘導体、エーテル基またはその誘導体、チオエーテル基またはその誘導体、ボリン酸基またはその誘導体、ボラン基またはその誘導体等が挙げられる。誘導体とはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、又はアルコキシ基で置換された官能基を表す。
【0187】
これらのなかでも、電池特性向上の点から、アルキレン基またはその誘導体、アルケニレン基またはその誘導体、アリーレン基またはその誘導体、エーテル基またはその誘導体が好ましい。Aの炭素数は1以上であり、4以上が好ましく、5以上がより好ましい。また前記炭素数は12以下であり、11以下が好ましく、10以下がより好ましい。この範囲であれば電極の耐酸化性も保ちつつ、抵抗の上昇を抑えることができる。
【0188】
一般式(1)において、nの下限は4であり、一方上限は8、好ましくは7、より好ましくは6である。この範囲であれば、安定な負極SEI(Solid electrolyte interface)を形成でき、界面抵抗も上がりすぎない。
【0189】
以上説明したアクリレート化合物(一般式(1)で表される化合物)の好ましい具体例としては、以下に示す化合物が挙げられる。
【0190】
【化42】
【0191】
分子の自由度を上げて、生成する負極SEIの抵抗を抑えるためにも、以下にあげる構造の化合物がより好ましい。
【0192】
【化43】
【0193】
アクリレート化合物(一般式(1)で表される化合物)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。本発明の非水系電解液全体に対するアクリレート化合物の配合量に特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記配合量は、本発明の非水系電解液全体に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。上記範囲を満たした場合は、非水系電解液二次電池の出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0194】
1−2−9.芳香族化合物
前記芳香族化合物は、下記一般式(※)で表される少なくとも1つの置換基を有する芳香族化合物である。
【0195】
【化44】

式(※)中、置換基Tはハロゲン原子、又はハロゲン原子もしくはヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す。
【0196】
ヘテロ原子を有していてもよい有機基とは、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖又は環状の飽和炭化水素基、カルボン酸エステル構造を有する基、カーボネート構造を有する基、リン含有基、硫黄含有基、ケイ素含有基を示す。
【0197】
またそれぞれの置換基Tはさらにハロゲン原子、炭化水素基、芳香族基、ハロゲン含有炭化水素基、ハロゲン含有芳香族基などで置換されていてもよい。また置換基Tの数は1以上6以下であり、複数の置換基を有する場合、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよく、また複数の置換基どうしが結合して環を形成していてもよい。)
【0198】
中でも、置換基Tとしては、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖又は環状の飽和炭化水素基、カルボン酸エステル構造を有する基、カーボネート構造を有する基が電池特性の観点から好ましい。より好ましくは炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖又は環状の飽和炭化水素基、及びカーボネート構造を有する基である。
【0199】
上述の通り、置換基Tはハロゲン原子、又はハロゲン原子もしくはヘテロ原子を有していてもよい有機基を表す。
前記ハロゲン原子として、塩素、フッ素等が挙げられ、好ましくはフッ素である。
【0200】
ヘテロ原子を有さない有機基として、炭素数3〜12の直鎖状、分岐状、環状の飽和炭化水素基が挙げられ、直鎖状、分岐状のものには環構造を持つものも含まれる。炭素数3〜12の直鎖状、分岐状、環状の飽和炭化水素基として具体的には、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ターシャリーペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、等が挙げられる。ヘテロ原子を有さない有機基の炭素数は好ましくは3以上12以下、より好ましくは3以上10以下、更に好ましくは3以上8以下、更により好ましくは3以上6以下、最も好ましくは3以上5以下である。
【0201】
ヘテロ原子を有する有機基を構成するヘテロ原子として、酸素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子等が挙げられる。
酸素原子を有するものとして、カルボン酸エステル構造を有する基、カーボネート構造を有する基等が挙げられる。
硫黄原子を有するものとして、スルホン酸エステル構造を有する基等が挙げられる。
リン原子を有するものとして、リン酸エステル構造を有する基、ホスホン酸エステル構造を有する基等が挙げられる。
ケイ素原子を有するものとして、ケイ素―炭素構造を有する基等が挙げられる。
【0202】
一般式(※)で表される芳香族化合物としては、例えば以下の具体例が挙げられる。
Tがハロゲン原子又はハロゲン原子を有していてもよい有機基であるものとして、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等が挙げられ、好ましくはフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼンである。より好ましくはフルオロベンゼンである。
【0203】
置換基Tに関して、炭素数3〜12の炭化水素基の例として、2,2−ジフェニルプロパン、1,4−ジフェニルシクロヘキサン、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、シス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、2,2−ジフェニルブタン、1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1,1−ジフェニル−4−メチルシクロヘキサン、2,2−ジ−(p−フルオロフェニル)プロパン、1,1−ジ−(p−フルオロフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス−(4−ターシャリーブチルフェニル)プロパン、1,3−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)―ベンゼン、1,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)―ベンゼン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン、2,3−ジヒドロ−1,3−ジメチル−1−(2−メチル−2−フェニルプロピル)−3−フェニル−1H−インダン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等が挙げられ、
好ましくは2,2−ジフェニルプロパン、1,4−ジフェニルシクロヘキサン、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、シス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1,1−ジフェニル−4−メチルシクロヘキサン、2,2−ジ−(p−フルオロフェニル)プロパン、1,1−ジ−(p−フルオロフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス−(4−ターシャリーブチルフェニル)プロパン、1,3−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)―ベンゼン、1,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)―ベンゼン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン、2,3−ジヒドロ−1,3−ジメチル−1−(2−メチル−2−フェニルプロピル)−3−フェニル−1H−インダン、ブチルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼンであり、
より好ましくは2,2−ジフェニルプロパン、ターフェニルの部分水素化体、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロヘキサン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン、トルエン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼンであり、
さらにより好ましくはシクロヘキシルベンゼン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼンであり、
特に好ましくはシクロヘキシルベンゼン、1−フェニル−1,3,3−トリメチルインダンである。
【0204】
置換基Tに関して、カルボン酸エステル構造を有する基の例として、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピル、プロピオン酸3−フェニルプロピル、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、α,α,ジメチル−フェニル酢酸メチル、1−フェニル−シクロペンタン酸メチルフェニル酢酸エチル、フェニルプロピオン酸メチル、フェニル酪酸メチル、フェニル吉草酸メチル、フェニル酢酸エチル、フェニルプロピオン酸エチル、フェニル酪酸エチル、フェニル吉草酸エチル、フェニル酢酸フェニル、フェニル酢酸ベンジル、フェニル酢酸2−フェニルエチル、フェニルプロピオン酸フェニル、フェニルプロピオン酸ベンジル、フェニルプロピオン酸2−フェニルエチル、ビスフェノールAのアセテート体等が挙げられ、
好ましくは、酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピル、プロピオン酸3−フェニルプロピル、フェニル酢酸メチル、α,α,ジメチル−フェニル酢酸メチル、1−フェニル−シクロペンタン酸メチルフェニル酢酸エチル、フェニルプロピオン酸メチル、フェニル酪酸メチル、フェニル酢酸エチル、フェニルプロピオン酸エチル、フェニル酪酸エチル、フェニル酢酸ベンジル、フェニル酢酸2−フェニルエチル、フェニルプロピオン酸ベンジル、フェニルプロピオン酸2−フェニルエチル、ビスフェノールAのアセテート体であり、
より好ましくは酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピル、プロピオン酸3−フェニルプロピル、フェニル酢酸メチル、α,α,ジメチル−フェニル酢酸メチル、1−フェニル−シクロペンタン酸メチルフェニルプロピオン酸メチル、フェニル酪酸メチル、フェニル酢酸ベンジル、フェニル酢酸2−フェニルエチル、フェニルプロピオン酸ベンジル、フェニルプロピオン酸2−フェニルエチル、ビスフェノールAのアセテート体であり、さらに好ましくは酢酸2−フェニルエチル、酢酸3−フェニルプロピル、α,α,ジメチル−フェニル酢酸メチル、1−フェニル−シクロペンタン酸メチルフェニルプロピオン酸メチル、フェニル酢酸2−フェニルエチル、フェニルプロピオン酸ベンジル、フェニルプロピオン酸2−フェニルエチルである。
【0205】
置換基Tに関して、カーボネート構造を有する基の例として、ビスフェノールAのカーボネート体、ビスフェノールZのカーボネート体、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、2−t−ブチルフェニルメチルカーボネート、4−t−ブチルフェニルメチルカーボネート等が挙げられ、
好ましくはビスフェノールAのカーボネート体、ビスフェノールZのカーボネート体、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネートであり、
より好ましくはジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネートであり、
さらに好ましくはメチルフェニルカーボネートである。
【0206】
置換基Tに関して、スルホン酸エステル構造を有する基の例として、メチルフェニルスルホネート、エチルフェニルスルホネート、ジフェニルスルホネート、2−t−ブチルフェニルメチルスルホネート、4−t−ブチルフェニルメチルスルホネート、シクロヘキシルフェニルメチルスルホネート等が挙げられ、
好ましくはメチルフェニルスルホネート、ジフェニルスルホネート、2−t−ブチルフェニルメチルスルホネート、4−t−ブチルフェニルメチルスルホネート、シクロヘキシルフェニルメチルスルホネートであり、
より好ましくはメチルフェニルスルホネート、2−t−ブチルフェニルメチルスルホネート、4−t−ブチルフェニルメチルスルホネート、シクロヘキシルフェニルメチルスルホネートである。
【0207】
置換基Tに関して、ケイ素―炭素構造を有する基の例として、トリメチルフェニルシラン、ジフェニルシラン、ジフェニルテトラメチルジシラン等が挙げられ、好ましくはトリメチルフェニルシランである。
【0208】
置換基Tに関して、リン酸エステル構造を有する基の例として、トリフェニルホスフェート、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(3−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2−t−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(3−t−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(4−t−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(3−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、ジエチル(4−メチルベンジル)ホスフェート等が挙げられ、
好ましくはトリフェニルホスフェート、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(3−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2−t−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(3−t−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(4−t−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(3−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェートであり、
より好ましくはトリス(2−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェートである。
【0209】
置換基Tに関して、ホスホン酸エステル構造を有する基の例として、ジメチルフェニルホスホネート、ジエチルフェニルホスホネート、メチルフェニルフェニルホスホネート、エチルフェニルフェニルホスホネート、ジフェニルフェニルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロフェニル)−ホスホネート、ジメチルベンジルホスホネート、ジエチルベンジルホスホネート、メチルフェニルベンジルホスホネート、エチルフェニルベンジルホスホネート、ジフェニルベンジルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネート、ジエチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネート等が挙げられ、
好ましくはジメチルフェニルホスホネート、ジエチルフェニルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロフェニル)−ホスホネート、ジメチルベンジルホスホネート、ジエチルベンジルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネート、ジエチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネートであり、
より好ましくはジメチルフェニルホスホネート、ジエチルフェニルホスホネート、ジメチルベンジルホスホネート、ジエチルベンジルホスホネート、ジメチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネート、ジエチル−(4−フルオロベンジル)ホスホネートである。
【0210】
以上説明した芳香族化合物はフッ素化体であってもよく、当該フッ素化体の例として、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の炭化水素基を有するものの部分フッ素化物;2−フルオロフェニルアセテート、4−フルオロフェニルアセテート等のカルボン酸エステル構造を有するものの部分フッ素化物等が挙げられ、
好ましくは2−フルオロフェニルアセテート、4−フルオロフェニルアセテート等のカルボン酸エステル構造を有するものの部分フッ素化物等である。
【0211】
上記芳香族化合物は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。非水系電解液全体に占める芳香族化合物の割合は、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。上記範囲内にあることにより、本発明の効果が発現しやすく、また、非水系電解液二次電池の抵抗増大を防ぐことができる。
【0212】
1−2−10.環状エーテル化合物
特定添加剤である環状エーテル化合物として、酸素原子を分子内に有する脂肪族化合物である環状エーテル化合物および酸素原子を分子内に有する芳香族化合物である環状エーテル化合物が挙げられる。酸化電位が適度であり、常温での副反応量を少なくできるため、酸素原子を分子内に有する脂肪族化合物である環状エーテル化合物が好ましい。
【0213】
環状エーテル化合物の具体的な化合物としては以下のものが挙げられる。
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、オキセタン、2−メチルオキセタン、3−メチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2−エチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、3−エチルテトラヒドロフラン、2,2−ジメチルテトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフラン、2−ビニルテトラヒドロフラン、3−ビニルテトラヒドロフラン、2−エチニルテトラヒドロフラン、3−エチニルテトラヒドロフラン、2−フェニルテトラヒドロフラン、3−フェニルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロピラン、2−エチルテトラヒドロピラン、3−メチルテトラヒドロピラン、3−エチルテトラヒドロピラン、4−メチルテトラヒドロピラン、4−エチルテトラヒドロピラン、2、2−ジメチルテトラヒドロピラン、2,3−ジメチルテトラヒドロピラン、2,4-ジメチルテトラヒドロピラン、3,3-ジメチルテトラヒドロピラン、3,4-ジメチルテトラヒドロピラン、4,4-ジメチルテトラヒドロピラン、2−ビニルテトラヒドロピラン、3−ビニルテトラヒドロピラン、4−ビニルテトラヒドロピラン、2−エチニルテトラヒドロピラン、3−エチニルテトラヒドロピラン、4−エチニルテトラヒドロピラン、2−フェニルテトラヒドロピラン、3−フェニルテトラヒドロピラン、4−フェニルテトラヒドロピラン、ヘキサメチレンオキシド、2−メチルヘキサメチレンオキシド、3−メチルヘキサメチレンオキシド、4−エチルヘキサメチレンオキシド2−ビニルヘキサメチレンオキシド、3−エチニルヘキサメチレンオキシド、4−フェニルヘキサメチレンオキシド、ヘプタメチレンオキシド、2−メチルヘプタメチレンオキシド、3−メチルヘプタメチレンオキシド、4−エチルヘプタメチレンオキシド、オクタメチレンオキシド、ノナメチレンオキシド、デカメチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、2−メトキシ−1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、2−エトキシ−1,3−ジオキソラン、2−エチル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジエチル−1,3−ジオキソラン、4−エチル−1,3−ジオキソラン、2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン、2,2,4−トリエチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、2,4−ジメチル−1,3−ジオキサン、2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキサン、4−エチル−1,3−ジオキサン、2,4−ジエチル−1,3−ジオキサン、2,2,4−トリエチル−1,3−ジオキサン、4−フェニル−1,3−ジオキサン、3−メチル−1,3−ジオキサン、5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン、2,5,5−トリメチル−1,3−ジオキサン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン、2,5−ジメチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン。
【0214】
これらの中でも、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2−エチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、3−エチルテトラヒドロフラン、2,2−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロピラン、2−エチルテトラヒドロピラン、3−メチルテトラヒドロピラン、3−エチルテトラヒドロピラン、4−メチルテトラヒドロピラン、4−エチルテトラヒドロピラン、2,2−ジメチルテトラヒドロピラン、ヘキサメチレンオキシド、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサンが好ましく、
プロピレンオキシド、スチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2−エチルテトラヒドロフラン、2,2−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロピラン、2−エチルテトラヒドロピラン、2,2−ジメチルテトラヒドロピラン、ヘキサメチレンオキシド、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサンが更に好ましく、
オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ヘキサメチレンオキシド、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサンが特に好ましく、
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキサンがより好ましく、
テトラヒドロピランが最も好ましい。
好ましい例で挙げた化合物を用いると、ガス発生の抑制効果が特に大きい為である。
【0215】
環状エーテル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本発明の非水系電解液全体に対する環状エーテル化合物の配合量に特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、最も好ましくは1.0質量%以下である。上記の含有量で用いることで、ガス発生抑制効果を十分に発揮できると共に、不要な抵抗上昇を抑制することができる。
【0216】
1−2−11.オキサラート塩
特定添加剤であるオキサラート塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び、NR13141516(式中、R13〜R16は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等がその例として挙げられる。
【0217】
上記アンモニウムのR13〜R16で表わされる炭素数1〜12の有機基としては特に限定はないが、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR13〜R16が、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は窒素原子含有複素環基であることが好ましい。
【0218】
オキサラート塩の具体例としては、
リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等が挙げられ、
リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェートが好ましい。
【0219】
オキサラート塩は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、オキサラート塩の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
【0220】
オキサラート塩の配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1.5質量%以下である。
【0221】
この範囲内であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0222】
1−2−12.環状スルホン酸エステル
特定添加剤である環状スルホン酸エステルについては、特にその種類は限定されない。
【0223】
環状スルホン酸エステルの具体例としては、例えば、
1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−メチル−1, 3−プロパンスルトン、2−メチル−1,3−プロパンスルトン、3−メチル−1 ,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、2−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、1−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、2−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、3−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、1−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、2−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、3−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、1−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、2−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、3−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、4−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、1−メチル−1,4−ブタンスルトン、2−メチル−1,4−ブタンスルトン、3−メチル−1,4−ブタンスルトン、4−メチル−1,4−ブタンスルトン、1−ブテン−1,4−スルトン、2−ブテン−1,4−スルトン、3−ブテン−1,4−スルトン、1−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、2−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、3−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、4−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、1−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、2−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、3−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、4−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、1−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、2−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、3−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、4−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、1−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、2−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、3−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、4−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、1−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、2−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、3−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、4−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、1−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、2−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、3−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、4−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、1,5−ペンタンスルトン、1−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、2−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、3−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、4−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、5−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、1−メチル−1,5−ペンタンスルトン、2−メチル−1,5−ペンタンスルトン、3−メチル−1,5−ペンタンスルトン、4−メチル−1,5−ペンタンスルトン、5−メチル−1,5−ペンタンスルトン、1−ペンテン−1,5−スルトン、2−ペンテン−1,5−スルトン、3−ペンテン−1,5−スルトン、4−ペンテン−1,5−スルトン、1−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、2−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、3−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、4−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、5−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、1−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、2−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、3−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、4−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、5−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、1−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、2−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、3−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、4−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、5−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、1−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、2−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、3−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、4−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、5−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、1−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、2−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、3−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、4−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、5−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、1−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、2−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、3−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、4−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、5−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、1−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、2−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、3−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、4−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、5−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、1−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、2−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、3−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、4−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、5−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトンなどのスルトン化合物;
メチレンスルフェート、エチレンスルフェート、プロピレンスルフェートなどのスルフェート化合物;
メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネートなどのジスルホネート化合物;
1,2,3−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3H−1,2,3−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、5H−1,2,3−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、1,2,4−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3H−1,2,4−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、5H−1,2,4−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、1,2,5−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3H−1,2,5−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、5H−1,2,5−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、1,2,3−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、1,2,4−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,4−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,6−ジヒドロ−1,2,4−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,4−ジヒドロ−1,2,4−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、1,2,5−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,5−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,6−ジヒドロ−1,2,5−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,4−ジヒドロ−1,2,5−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、1,2,6−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、6−メチル−1,2,6−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,6−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,4−ジヒドロ−1,2,6−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,6−オキサチアジン−2,2−ジオキシドなどの含窒素化合物;
1,2,3−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2,3−トリオキシド、3−メトキシ−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2,3−トリオキシド、1,2,4−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアホスラン−2,2,4−トリオキシド、4−メトキシ−1,2,4−オキサチアホスラン−2,2,4−トリオキシド、1,2,5−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアホスラン−2,2,5−トリオキシド、5−メトキシ−1,2,5−オキサチアホスラン−2,2,5−トリオキシド、1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、3−メトキシ−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、4−メチル−1,5,2,4−ジオキサチアホスフィナン−2,4−ジオキシド、4−メトキシ−1,5,2,4−ジオキサチアホスフィナン−2,4−ジオキシド、3−メトキシ−1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、5−メトキシ−1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、6−メチル−1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、6−メチル−1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、6−メトキシ−1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシドなどの含リン化合物;
が挙げられる。
【0224】
これらのうち、1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネートが非水系電解液の保存特性向上の点から好ましく、
1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトンがより好ましい。
【0225】
環状スルホン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。本発明の非水系電解液全体に対する環状スルホン酸エステルの配合量に特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。上記範囲を満たした場合は、非水系電解液二次電池の出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0226】
1−3.電解質
本発明の非水系電解液に含まれる電解質に特に制限はなく、従来非水系電解液二次電池に使用される各種の電解質が使用可能である。
なお、下記電解質のなかには、上記で説明した特定添加剤と同一の化合物も存在しているが、その使用量によっては、その特定添加剤として記載の化合物を電解質としても使用することができることを意味する。
【0227】
電解質としては、通常アルカリ金属塩が用いられ、その具体例としてはリチウム塩、ナトリウム塩が挙げられ、リチウム塩が好ましく用いられる。リチウム塩としては、この用途に用いることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを用いることができ、その具体例としては以下のものが挙げられる。
【0228】
LiPF、LiBF、LiClO、LiAlF、LiSbF、LiTaF、LiWF等の無機リチウム塩;
LiWOF等のタングステン酸リチウム類;
HCOLi、CHCOLi、CHFCOLi、CHFCOLi、CFCOLi、CFCHCOLi、CFCFCOLi、CFCFCFCOLi、CFCFCFCFCOLi等のカルボン酸リチウム塩類;
FSOLi、CHSOLi、CHFSOLi、CHFSOLi、CFSOLi、CFCFSOLi、CFCFCFSOLi、CFCFCFCFSOLi等のスルホン酸リチウム塩類;
LiN(FCO)、LiN(FCO)(FSO)、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CFSO)(CSO)等のリチウムイミド塩類;
LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO等のリチウムメチド塩類;
リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等のリチウムオキサラトフォスフェート塩類;
その他、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBFCF、LiBF、LiBF、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO等の含フッ素有機リチウム塩類。
【0229】
これらの中でも、LiPF、LiBF、LiSbF、LiTaF、FSOLi、CFSOLi、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、リチウムビスオキサラトボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビスオキサラトフォスフェート、LiBFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(C等が、非水系電解液二次電池の出力特性やハイレート充放電特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から特に好ましい。
【0230】
これらのリチウム塩は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の好ましい一例は、LiPFとLiBF、LiPFとLiN(FSOや、LiPFとFSOLi等の併用である。これらの組合せは、非水系電解液二次電池の負荷特性やサイクル特性を向上させる効果がある。
【0231】
この場合、非水系電解液全体100質量%に対するLiBF或いはFSOLiの配合量に特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記配合量は、本発明の非水系電解液全体に対して、通常、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
【0232】
また、他の一例は、無機リチウム塩と有機リチウム塩との併用であり、この両者の併用は、非水系電解液二次電池の高温保存による劣化を抑制する効果がある。
【0233】
前記有機リチウム塩としては、CFSOLi、LiN(FSO、LiN(FSO)(CFSO)、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO、LiC(CFSO、LiC(CSO、リチウムビスオキサラトボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビスオキサラトフォスフェート、LiBFCF、LiBF、LiPF(CF、LiPF(C等が好ましい。
【0234】
この場合には、非水系電解液全体100質量%に対する有機リチウム塩の割合は、好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0235】
非水系電解液中の、以上説明した電解質の濃度は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限されない。電解液の電気伝導率を良好な範囲とし、良好な電池性能を確保する点から、非水系電解液中の電解質の総モル濃度は、好ましくは0.3mol/L以上、より好ましくは0.4mol/L以上、更に好ましくは0.5mol/L以上、特に好ましくは1.0mol/L以上であり、また、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2.5mol/L以下、更に好ましくは2.0mol/L以下である。
【0236】
電解質の総モル濃度が上記範囲内にあることにより、非水系電解液の電気伝導率が十分となり、また、粘度上昇による電気伝導度の低下、それに起因する電池性能の低下を防ぐことができる。
【0237】
1−4.非水溶媒
本発明の非水系電解液における非水溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることが可能である。これらを例示すると、フッ素原子を有さない環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル、エーテル化合物、スルホン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、高温保存特性向上の点から鎖状カルボン酸エステルが好ましい。
【0238】
以下、上記で挙げた各非水溶媒について説明する。なお、下記非水溶媒のなかには、上記で説明した特定添加剤と同一の化合物も存在しているが、その使用量によっては、その特定添加剤として記載の化合物を非水溶媒としても使用することができることを意味する。
【0239】
<フッ素原子を有さない環状カーボネート>
上記フッ素原子を有さない環状カーボネートとしては、炭素数2〜4のアルキレン基を有する環状カーボネートが挙げられる。
【0240】
炭素数2〜4のアルキレン基を有する、フッ素原子を有さない環状カーボネートの具体的な例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートが挙げられる。中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0241】
フッ素原子を有さない環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0242】
フッ素原子を有さない環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。1種を単独で用いる場合の配合量は、非水溶媒100体積%中、通常5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また、前記配合量は通常95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、さらに好ましくは85体積%以下である。この範囲とすることで、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の負荷特性を良好な範囲としやすくなる。
【0243】
<鎖状カーボネート>
上記鎖状カーボネートとしては、炭素数3〜7の鎖状カーボネートが好ましく、炭素数3〜7のジアルキルカーボネートがより好ましい。
【0244】
鎖状カーボネートの具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t−ブチルメチルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t−ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
【0245】
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
【0246】
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と記載する場合がある)も好適に用いることができる。
【0247】
フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。
【0248】
フッ素化鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート及びその誘導体、フッ素化エチルメチルカーボネート及びその誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート及びその誘導体等が挙げられる。
【0249】
前記フッ素化ジメチルカーボネート及びその誘導体としては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
【0250】
前記フッ素化エチルメチルカーボネート及びその誘導体としては、2−フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、2−フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2−フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
【0251】
前記フッ素化ジエチルカーボネート及びその誘導体としては、エチル−(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、2,2−ジフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’,2’−ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0252】
以上説明した鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0253】
鎖状カーボネートの配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上である。このように下限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。また、鎖状カーボネートの配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは90体積%以下、より好ましくは85体積%以下、特に好ましくは80体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0254】
<鎖状カルボン酸エステル>
上記鎖状カルボン酸エステルとしては、炭素数が3〜7のものが好ましい。具体的には、
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸−t−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸−n−プロピル、イソ酪酸イソプロピル等が挙げられる。
【0255】
中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル等が、粘度低下によるイオン伝導度の向上の点から好ましい。
【0256】
鎖状カルボン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0257】
鎖状カルボン酸エステルの配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上である。このように下限を設定することで、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、鎖状カルボン酸エステルの配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは60体積%以下、より好ましくは50体積%以下、特に好ましくは30体積%以下、最も好ましくは20体積%以下である。このように上限を設定することで、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。
【0258】
<環状カルボン酸エステル>
上記環状カルボン酸エステルとしては、炭素原子数が3〜12のものが好ましい。
その具体例としては、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。中でも、ガンマブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0259】
環状カルボン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0260】
環状カルボン酸エステルの配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲であれば、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、環状カルボン酸エステルの配合量は、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0261】
<エーテル系化合物>
上記エーテル系化合物としては、一部の水素がフッ素にて置換されていてもよい炭素数3〜10の鎖状エーテル、及び炭素数3〜6の環状エーテルが好ましい。
【0262】
前記炭素数3〜10の鎖状エーテルとしては、
ジエチルエーテル、ジ(2−フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2−ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2−フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、エチル−n−プロピルエーテル、エチル(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2−フルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2−フルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2,2,2−トリフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−プロピルエーテル、(n−プロピル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2−フルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2−フルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0263】
前記炭素数3〜6の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。
【0264】
以上挙げたエーテル系化合物の中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましい。特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンである。
【0265】
エーテル系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0266】
エーテル系化合物の配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上、また、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下、さらに好ましくは50体積%以下である。
【0267】
この範囲であれば、エーテル系化合物のリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすく、負極活物質が炭素質材料の場合、エーテル系化合物がリチウムイオンと共に共挿入されて容量が低下するといった事態を回避しやすい。
【0268】
<スルホン系化合物>
上記スルホン系化合物としては、炭素数3〜6の環状スルホン、及び炭素数2〜6の鎖状スルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
【0269】
前記炭素数3〜6の環状スルホンとしては、
モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;
ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。
【0270】
中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類が特に好ましい。
【0271】
前記テトラメチレンスルホン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と記載する場合がある)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
【0272】
中でも、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、2−フルオロスルホラン、3−フルオロスルホラン、2,2−ジフルオロスルホラン、2,3−ジフルオロスルホラン、2,4−ジフルオロスルホラン、2,5−ジフルオロスルホラン、3,4−ジフルオロスルホラン、2−フルオロ−3−メチルスルホラン、2−フルオロ−2−メチルスルホラン、3−フルオロ−3−メチルスルホラン、3−フルオロ−2−メチルスルホラン、4−フルオロ−3−メチルスルホラン、4−フルオロ−2−メチルスルホラン、5−フルオロ−3−メチルスルホラン、5−フルオロ−2−メチルスルホラン、2−フルオロメチルスルホラン、3−フルオロメチルスルホラン、2−ジフルオロメチルスルホラン、3−ジフルオロメチルスルホラン、2−トリフルオロメチルスルホラン、3−トリフルオロメチルスルホラン、2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、3−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、5−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン等が、イオン伝導度が高く、非水系電解液二次電池の入出力特性を高める点で好ましい。
【0273】
また、前記炭素数2〜6の鎖状スルホンとしては、
ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、n−プロピルエチルスルホン、ジ−n−プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、t−ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル−n−プロピルスルホン、ジフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−t−ブチルスルホン等が挙げられる。
【0274】
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−t−ブチルスルホン等がイオン伝導度が高く、非水系電解液二次電池の入出力特性を高める点で好ましい。
【0275】
以上説明したスルホン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0276】
スルホン系化合物の配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは0.3体積%以上、より好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは5体積%以上であり、また、好ましくは40体積%以下、より好ましくは35体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下である。
【0277】
この範囲であれば、非水系電解液二次電池についてサイクル特性や保存特性等の耐久性の向上効果が得られやすく、また、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避することができる。その結果として、非水系電解液二次電池の充放電を高電流密度で行う場合に、充放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0278】
<フッ素原子を有する環状カーボネートを非水溶媒として用いる場合>
フッ素原子を有する環状カーボネートは、本発明の非水系電解液において、1−2.で示したとおり、特定添加剤としても用いられるものであるが、非水溶媒としても用いることができる。
【0279】
本発明において、フッ素原子を有する環状カーボネートを非水溶媒として用いる場合は、フッ素原子を有する環状カーボネート以外の非水溶媒として、上記例示した非水溶媒の1種をフッ素原子を有する環状カーボネートと組み合わせて用いてもよく、2種以上をフッ素原子を有する環状カーボネートと組み合わせて用いてもよい。
【0280】
例えば、非水溶媒の好ましい組合せの一つとして、フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せが挙げられる。この組み合わせにおいて、非水溶媒に占めるフッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計が、好ましくは60体積%以上、より好ましくは80体積%以上、更に好ましくは90体積%以上であり、かつ
フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計に対するフッ素原子を有する環状カーボネートの割合が3体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上であり、また通常60体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下、さらに好ましくは35体積%以下、特に好ましくは30体積%以下、最も好ましくは20体積%以下である。
【0281】
これらの非水溶媒の組み合わせを用いると、これを用いて作製された非水系電解液二次電池のサイクル特性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスが良くなることがある。
【0282】
例えば、フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートの好ましい組み合わせの具体例としては、
モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート
等が挙げられる。
【0283】
フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせの中で、鎖状カーボネートとして対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものが更に好ましい。特に、モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート
といった、モノフルオロエチレンカーボネートと対称鎖状カーボネート類と非対称鎖状カーボネート類とを含有する非水溶媒が、非水系電解液二次電池のサイクル特性と大電流放電特性のバランスを良くするので好ましい。中でも、対称鎖状カーボネート類がジメチルカーボネートであることが好ましく、又、鎖状カーボネートのアルキル基の炭素数は1〜2が好ましい。
【0284】
これらのフッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせに、更にフッ素原子を有さない環状カーボネートを加えた組み合わせも、好ましい組み合わせとして挙げられる。中でも、非水溶媒に占めるフッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有さない環状カーボネートとの合計が、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上であり、かつ
フッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有さない環状カーボネートとの合計に対するフッ素原子を有する環状カーボネートの割合が、通常1体積%以上、好ましくは3体積%以上、より好ましくは5体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上、特に好ましくは20体積%以上であり、また、好ましくは95体積%以下、より好ましくは85体積%以下、さらに好ましくは75体積%以下、特に好ましくは60体積%以下の組合せが好ましい。
【0285】
この濃度範囲で非水溶媒がフッ素原子を有さない環状カーボネートを含有すると、負極に安定な保護被膜を形成しつつ、非水系電解液の電気伝導度を維持できる。
【0286】
フッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートとの好ましい組み合わせの具体例としては、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート
等が挙げられる。
【0287】
フッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせの中で、鎖状カーボネートとして非対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものがさらに好ましく、特に、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート
といった、モノフルオロエチレンカーボネートと非対称鎖状カーボネート類を含有するものが、非水系電解液二次電池のサイクル特性と大電流放電特性のバランスを良くするので好ましい。中でも、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートである組合せが好ましく、又、鎖状カーボネートのアルキル基の炭素数は1〜2が好ましい。
【0288】
非水溶媒中にエチルメチルカーボネートを含有する場合は、全非水溶媒中に占めるエチルメチルカーボネートの割合が、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは25体積%以上、特に好ましくは30体積%以上であり、また、好ましくは95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、さらに好ましくは85体積%以下、特に好ましくは80体積%以下である。この範囲で含有させると、非水系電解液二次電池の負荷特性が向上することがある。
【0289】
上記フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せにおいては、上記フッ素原子を有さない環状カーボネート以外にも、環状カルボン酸エステル類、鎖状カルボン酸エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、含硫黄有機溶媒、含燐有機溶媒、含フッ素芳香族溶媒等、他の溶媒を混合してもよい。
【0290】
<フッ素原子を有する環状カーボネートを特定添加剤として用いる場合>
本発明において、フッ素原子を有する環状カーボネートを、1−2.にて説明した通り特定添加剤として用いる場合は、フッ素原子を有する環状カーボネート以外の、上記例示した非水溶媒1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0291】
例えば、非水溶媒の好ましい組合せの一つとして、フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せが挙げられる。
【0292】
中でも、非水溶媒に占めるフッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計が、好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上であり、かつ
環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計に対するフッ素原子を有さない環状カーボネートの割合が好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上であり、また、好ましくは50体積%以下、より好ましくは35体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下、特に好ましくは25体積%以下である組合せである。
【0293】
これらの非水溶媒の組み合わせを用いると、これを用いて作製された非水系電解液二次電池のサイクル特性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスが良くなることがある。
【0294】
例えば、フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートの好ましい組み合わせの具体例としては、
エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、
エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、
プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、
プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネート、
プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネート
等が挙げられる。
【0295】
フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせの中で、鎖状カーボネートとして非対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものがさらに好ましい。特に、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、
プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネート、
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネート、
プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネート、
プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネート
といった組合せが、非水系電解液二次電池のサイクル特性と大電流放電特性のバランスを良くするので好ましい。
【0296】
中でも、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートである組合せが好ましく、又、鎖状カーボネートのアルキル基の炭素数は1〜2が好ましい。
【0297】
非水溶媒中にジメチルカーボネートを含有する場合は、全非水溶媒中に占めるジメチルカーボネートの割合が、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは25体積%以上、特に好ましくは30体積%以上であり、また、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは75体積%以下、特に好ましくは、70体積%以下である。この範囲で含有させると、非水系電解液二次電池の負荷特性が向上することがある。
【0298】
中でも、ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを含有し、ジメチルカーボネートの含有割合をエチルメチルカーボネートの含有割合よりも多くすることにより、非水系電解液の電気伝導度を維持できながら、高温保存後の電池特性が向上することがある。そのためこのような含有割合の組合せが好ましい。
【0299】
非水溶媒中において、ジメチルカーボネートのエチルメチルカーボネートに対する体積比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)は、非水系電解液の電気伝導度の向上と保存後の電池特性を向上させる点で、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。上記体積比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)は、電池特性向上の点で、40以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、8以下が特に好ましい。
【0300】
上記フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートとを主体とする組合せにおいては、環状カルボン酸エステル類、鎖状カルボン酸エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、含硫黄有機溶媒、含燐有機溶媒、芳香族含フッ素溶媒等、他の溶媒を混合してもよい。
【0301】
なお、本明細書において、非水溶媒の体積は25℃での測定値であるが、エチレンカーボネートのように25℃で固体のものは融点での測定値をその非水溶媒の体積とみなす。
【0302】
1−5.助剤
本発明の非水系電解液において、一般式(A)で表される化合物、並びに特定添加剤以外に、目的に応じて適宜助剤を用いてもよい。助剤としては、以下に示される三重結合を有する化合物、その他の助剤等が挙げられる。
【0303】
1−5−1.三重結合を有する化合物
前記三重結合を有する化合物については、分子内に三重結合を1つ以上有している化合物であれば特にその種類は限定されない。
【0304】
三重結合を有する化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキシン、2−ヘキシン、3−ヘキシン、1−ヘプチン、2−ヘプチン、3−ヘプチン、1−オクチン、2−オクチン、3−オクチン、4−オクチン、1−ノニン、2−ノニン、3−ノニン、4−ノニン、1−ドデシン、2−ドデシン、3−ドデシン、4−ドデシン、5−ドデシン、フェニルアセチレン、1−フェニル−1−プロピン、1−フェニル−2−プロピン、1−フェニル−1−ブチン、4−フェニル−1−ブチン、4−フェニル−1−ブチン、1−フェニル−1−ペンチン、5−フェニル−1−ペンチン、1−フェニル−1−ヘキシン、6−フェニル−1−ヘキシン、ジフェニルアセチレン、4−エチニルトルエン、ジシクロヘキシルアセチレン等の炭化水素化合物;
【0305】
2−プロピニルメチルカーボネート、2−プロピニルエチルカーボネート、2−プロピニルプロピルカーボネート、2−プロピニルブチルカーボネート、2−プロピニルフェニルカーボネート、2−プロピニルシクロヘキシルカーボネート、ジ−2−プロピニルカーボネート、1−メチル−2−プロピニルメチルカーボネート、1、1−ジメチル−2−プロピニルメチルカーボネート、2−ブチニルメチルカーボネート、3−ブチニルメチルカーボネート、2−ペンチニルメチルカーボネート、3−ペンチニルメチルカーボネート、4−ペンチニルメチルカーボネート等のモノカーボネート;
2−ブチン−1,4−ジオール ジメチルジカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジエチルジカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジプロピルジカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジブチルジカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジフェニルジカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジシクロヘキシルジカーボネート等のジカーボネート;
【0306】
酢酸2−プロピニル、プロピオン酸2−プロピニル、酪酸2−プロピニル、安息香酸2−プロピニル、シクロヘキシルカルボン酸2−プロピニル、酢酸1、1−ジメチル−2−プロピニル、プロピオン酸1、1−ジメチル−2−プロピニル、酪酸1、1−ジメチル−2−プロピニル、安息香酸1、1−ジメチル−2−プロピニル、シクロヘキシルカルボン酸1、1−ジメチル−2−プロピニル、酢酸2−ブチニル、酢酸3−ブチニル、酢酸2−ペンチニル、酢酸3−ペンチニル、酢酸4−ペンチニル、2−プロピン酸メチル、2−プロピン酸エチル、2−プロピン酸プロピル、2−プロピン酸ビニル、2−プロピン酸2−プロペニル、2−プロピン酸2−ブテニル、2−プロピン酸3−ブテニル、2−ブチン酸メチル、2−ブチン酸エチル、2−ブチン酸プロピル、2−ブチン酸ビニル、2−ブチン酸2−プロペニル、2−ブチン酸2−ブテニル、2−ブチン酸3−ブテニル、3−ブチン酸メチル、3−ブチン酸エチル、3−ブチン酸プロピル、3−ブチン酸ビニル、3−ブチン酸2−プロペニル、3−ブチン酸2−ブテニル、3−ブチン酸3−ブテニル、2−ペンチン酸メチル、2−ペンチン酸エチル、2−ペンチン酸プロピル、2−ペンチン酸ビニル、2−ペンチン酸2−プロペニル、2−ペンチン酸2−ブテニル、2−ペンチン酸3−ブテニル、3−ペンチン酸メチル、3−ペンチン酸エチル、3−ペンチン酸プロピル、3−ペンチン酸ビニル、3−ペンチン酸2−プロペニル、3−ペンチン酸2−ブテニル、3−ペンチン酸3−ブテニル、4−ペンチン酸メチル、4−ペンチン酸エチル、4−ペンチン酸プロピル、4−ペンチン酸ビニル、4−ペンチン酸2−プロペニル、4−ペンチン酸2−ブテニル、4−ペンチン酸3−ブテニル等のモノカルボン酸エステル;
【0307】
2−ブチン−1,4−ジオール ジアセテート、2−ブチン−1,4−ジオール ジプロピオネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジブチレート、2−ブチン−1,4−ジオール ジベンゾエート、2−ブチン−1,4−ジオール ジシクロヘキサンカルボキシレート等のジカルボン酸エステル;
シュウ酸メチル 2−プロピニル、シュウ酸エチル 2−プロピニル、シュウ酸プロピル 2−プロピニル、シュウ酸2−プロピニル ビニル、シュウ酸アリル 2−プロピニル、シュウ酸ジ−2−プロピニル、シュウ酸2−ブチニル メチル、シュウ酸2−ブチニル エチル、シュウ酸2−ブチニルプロピル、シュウ酸2−ブチニル ビニル、シュウ酸アリル 2−ブチニル、シュウ酸 ジ−2−ブチニル、シュウ酸3−ブチニル メチル、シュウ酸3−ブチニル エチル、シュウ酸3−ブチニルプロピル、シュウ酸3−ブチニル
ビニル、シュウ酸アリル 3−ブチニル、シュウ酸ジ−3−ブチニル等のシュウ酸ジエステル;
【0308】
メチル(2−プロピニル)(ビニル)ホスフィンオキシド、ジビニル(2−プロピニル)ホスフィンオキシド、ジ(2−プロピニル)(ビニル)ホスフィンオキシド、ジ(2−プロペニル)(2−プロピニル)ホスフィンオキシド、ジ(2−プロピニル)(2−プロペニル)ホスフィンオキシド、ジ(3−ブテニル)(2−プロピニル)ホスフィンオキシド、及びジ(2−プロピニル)(3−ブテニル)ホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド;
【0309】
メチル(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロピニル、2−ブテニル(メチル)ホスフィン酸2−プロピニル、ジ(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロピニル、ジ(3−ブテニル)ホスフィン酸2−プロピニル、メチル(2−プロペニル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、2−ブテニル(メチル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、ジ(2−プロペニル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、及びジ(3−ブテニル)ホスフィン酸1,1−ジメチル−2−プロピニル、メチル(2−プロピニル)ホスフィン酸2−プロペニル、メチル(2−プロピニル)ホスフィン酸3−ブテニル、ジ(2−プロピニル)ホスフィン酸2−プロペニル、ジ(2−プロピニル)ホスフィン酸3−ブテニル、2−プロピニル(2−プロペニル)ホスフィン酸2−プロペニル、及び2−プロピニル(2−プロペニル)ホスフィン酸3−ブテニル等のホスフィン酸エステル;
【0310】
2−プロペニルホスホン酸メチル 2−プロピニル、2−ブテニルホスホン酸メチル(2−プロピニル)、2−プロペニルホスホン酸(2−プロピニル)(2−プロペニル)、3−ブテニルホスホン酸(3−ブテニル)(2−プロピニル)、2−プロペニルホスホン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(メチル)、2−ブテニルホスホン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(メチル)、2−プロペニルホスホン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(2−プロペニル)、及び3−ブテニルホスホン酸(3−ブテニル)(1,1−ジメチル−2−プロピニル)、メチルホスホン酸(2−プロピニル)(2−プロペニル)、メチルホスホン酸(3−ブテニル)(2−プロピニル)、メチルホスホン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(2−プロペニル)、メチルホスホン酸(3−ブテニル)(1,1−ジメチル−2−プロピニル)、エチルホスホン酸(2−プロピニル)(2−プロペニル)、エチルホスホン酸(3−ブテニル)(2−プロピニル)、エチルホスホン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(2−プロペニル)、及びエチルホスホン酸(3−ブテニル)(1,1−ジメチル−2−プロピニル)等のホスホン酸エステル;
【0311】
リン酸(メチル)(2−プロペニル)(2−プロピニル)、リン酸(エチル)(2−プロペニル)(2−プロピニル)、リン酸(2−ブテニル)(メチル)(2−プロピニル)、リン酸(2−ブテニル)(エチル)(2−プロピニル)、リン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(メチル)(2−プロペニル)、リン酸(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(エチル)(2−プロペニル)、リン酸(2−ブテニル)(1,1−ジメチル−2−プロピニル)(メチル)、及びリン酸(2−ブテニル)(エチル)(1,1−ジメチル−2−プロピニル)等のリン酸エステル。
【0312】
これらのうち、アルキニルオキシ基を有する化合物は、非水系電解液中でより安定に負極被膜を形成するため好ましい。
【0313】
さらに、
2−プロピニルメチルカーボネート、ジ−2−プロピニルカーボネート、2−ブチン−1,4−ジオール ジメチルジカーボネート、酢酸2−プロピニル、2−ブチン−1,4−ジオール ジアセテート、シュウ酸メチル 2−プロピニル、シュウ酸ジ−2−プロピニル
等の化合物が保存特性向上の点から特に好ましい。
【0314】
上記三重結合を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本発明の非水系電解液全体に対する三重結合を有する化合物の配合量に特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。前記配合量は、本発明の非水系電解液全体に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。上記範囲を満たした場合は、非水系電解液二次電池の出力特性、負荷特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0315】
1−5−2.その他の助剤
その他の助剤としては、上記特定添加剤、フッ素化不飽和環状カーボネート及び三重結合を有する化合物以外の公知の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、
エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;
2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;
エチレンサルファイト、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホレン、ジフェニルスルホン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸エチル、ビニルスルホン酸アリル、ビニルスルホン酸プロパルギル、アリルスルホン酸メチル、アリルスルホン酸エチル、アリルスルホン酸アリル、アリルスルホン酸プロパルギル、1,2−ビス(ビニルスルホニロキシ)エタン等の含硫黄化合物;
【0316】
1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;
亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジメチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ジメチルホスフィン酸メチル、ジエチルホスフィン酸エチル、トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド等の含燐化合物;
【0317】
ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物;
フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物;
等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を非水系電解液に添加することにより、非水系電解液二次電池の高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
【0318】
その他の助剤の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤の配合量は、非水系電解液100質量%中、好ましくは、0.01質量%以上であり、また、通常5質量%以下である。この範囲であれば、その他の助剤の効果が十分に発現しやすく、高負荷放電特性等の非水系電解液二次電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。
【0319】
以上、本発明の非水系電解液について説明してきたが、上述の非水系電解液は、本発明の非水系電解液二次電池の内部に存在するものも含まれる。
【0320】
非水系電解液が非水系電解液二次電池の内部に存在する場合とは、具体的には、
電解質や非水溶媒、特定添加剤等の非水系電解液の構成要素を別途合成し、実質的に単離されたものから非水系電解液を調製し、下記に記載する方法にて別途組み立てた電池内に注液して得た非水系電解液電池内の非水系電解液である場合;
本発明の非水系電解液の構成要素を個別に電池内に入れておき、電池内にて混合させることにより本発明の非水系電解液と同じ組成を得る場合;
本発明の非水系電解液を構成する化合物を該非水系電解液二次電池内で発生させて、本発明の非水系電解液と同じ組成を得る場合;
などのことである。
【0321】
2.電池構成
本発明の非水系電解液は、非水系電解液二次電池の中でも、例えばリチウム二次電池用の電解液として用いるのに好適である。以下、本発明の非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池について説明する。
【0322】
本発明の非水系電解液二次電池は、公知の構造を採ることができ、典型的には、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵及び放出可能な負極及び正極と、上記の本発明の非水系電解液とを備える。以下、負極及び正極、そして非水系電解液二次電池におけるその他の構成の順に説明する。
【0323】
2−1.負極
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。負極活物質としては、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。具体例としては、炭素質材料などの構成元素として炭素を有するもの、合金系材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
【0324】
<負極活物質>
負極活物質としては、前記の通り炭素質材料、合金系材料等が挙げられる。
【0325】
前記炭素質材料としては、(1)天然黒鉛、(2)人造黒鉛、(3)非晶質炭素、(4)炭素被覆黒鉛、(5)黒鉛被覆黒鉛、(6)樹脂被覆黒鉛等が挙げられる。
【0326】
(1)天然黒鉛としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土壌黒鉛及び/又はこれらの黒鉛を原料に球形化や緻密化等の処理を施して得られた黒鉛粒子等が挙げられる。これらの中でも、粒子の充填性や充放電レート特性の観点から、球形化処理を施した球状もしくは楕円体状の黒鉛が特に好ましい。
【0327】
前記球形化処理に用いる装置としては、例えば、衝撃力を主体に粒子の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し粒子に与える装置を用いることができる。
【0328】
具体的には、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有し、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された天然黒鉛(1)の原料に対して衝撃圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与え、球形化処理を行なう装置が好ましい。また、原料を循環させることによって機械的作用を繰り返して与える機構を有する装置が好ましい。
【0329】
例えば前述の装置を用いて球形化処理する場合は、回転するローターの周速度を30〜100m/秒に設定するのが好ましく、40〜100m/秒に設定するのがより好ましく、50〜100m/秒に設定するのが更に好ましい。また、球形化処理は、単に原料を通過させるだけでも可能であるが、30秒以上装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、1分以上装置内を循環又は滞留させて処理するのがより好ましい。
【0330】
(2)人造黒鉛としては、コールタールピッチ、石炭系重質油、常圧残油、石油系重質油、芳香族炭化水素、窒素含有環状化合物、硫黄含有環状化合物、ポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、天然高分子、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の有機化合物を、通常2500℃以上、通常3200℃以下の範囲の温度で黒鉛化し、必要に応じて粉砕及び/又は分級して製造されたものが挙げられる。
【0331】
この際、ケイ素含有化合物やホウ素含有化合物等を黒鉛化触媒として用いることもできる。また、ピッチの熱処理過程で分離したメソカーボンマイクロビーズを黒鉛化して得た人造黒鉛が挙げられる。更に一次粒子からなる造粒粒子の人造黒鉛も挙げられる。例えば、メソカーボンマイクロビーズや、コークス等の黒鉛化可能な炭素質材料粉体とタール、ピッチ等の黒鉛化可能なバインダと黒鉛化触媒を混合し、黒鉛化し、必要に応じて粉砕することで得られる、扁平状の粒子を複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した黒鉛粒子が挙げられる。
【0332】
(3)非晶質炭素としては、タール、ピッチ等の易黒鉛化性炭素前駆体を原料に用い、黒鉛化しない温度領域(400〜2200℃の範囲)で1回以上熱処理した非晶質炭素粒子や、樹脂等の難黒鉛化性炭素前駆体を原料に用いて熱処理した非晶質炭素粒子が挙げられる。
【0333】
(4)炭素被覆黒鉛としては、以下のようにして得られるものが挙げられる。天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、タール、ピッチや樹脂等の有機化合物である炭素前駆体とを混合し、400〜2300℃の範囲で1回以上熱処理する。得られた天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、これを非晶質炭素により被覆して炭素黒鉛複合体を得る。この炭素黒鉛複合体が炭素被覆黒鉛(4)として挙げられる。
【0334】
また、前記複合の形態は、核黒鉛の表面全体又は一部を非晶質炭素が被覆した形態でも、複数の一次粒子を前記炭素前駆体起源の炭素をバインダーとして複合させた形態であってもよい。また、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛にベンゼン、トルエン、メタン、プロパン、芳香族系の揮発分等の炭化水素系ガス等を高温で反応させ、黒鉛表面に炭素を堆積(CVD)させることでも、前記炭素黒鉛複合体を得ることができる。
【0335】
(5)黒鉛被覆黒鉛としては、以下のようにして得られるものが挙げられる。天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、タール、ピッチや樹脂等の易黒鉛化性の有機化合物の炭素前駆体とを混合し、2400〜3200℃程度の範囲で1回以上熱処理する。得られた天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、黒鉛化物でその核黒鉛の表面全体又は一部を被覆して黒鉛被覆黒鉛(5)が得られる。
【0336】
(6)樹脂被覆黒鉛は、例えば、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、樹脂等を混合し、400℃未満の温度で乾燥して得られる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、樹脂等でその核黒鉛を被覆することで得られる。
【0337】
また、以上説明した(1)〜(6)の炭素質材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0338】
上記(2)〜(5)の炭素質材料に用いられるタール、ピッチや樹脂等の有機化合物としては、石炭系重質油、直系重質油、分解系石油重質油、芳香族炭化水素、N環化合物、S環化合物、ポリフェニレン、有機合成高分子、天然高分子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれた炭化可能な有機化合物等が挙げられる。また、原料有機化合物は混合時の粘度を調整するため、低分子有機溶媒に溶解させて用いてもよい。
【0339】
また、核黒鉛の原料となる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛としては、球形化処理を施した天然黒鉛が好ましい。
【0340】
次に、負極活物質として用いられる上記合金系材料は、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム単体、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の化合物のいずれであってもよく、特に制限されない。リチウム合金を形成する単体金属及び合金は、13族及び14族の金属・半金属元素(即ち炭素を除く)を含む材料であることが好ましく、
より好ましくはアルミニウム、ケイ素及びスズの単体金属及びこれら原子を含む合金又は化合物であり、
更に好ましくはケイ素及びスズの単体金属及びこれら原子を含む合金又は化合物などの、ケイ素又はスズを構成元素として有るものである。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0341】
<炭素質材料の物性>
負極活物質として炭素質材料を用いる場合、当該炭素質材料は、以下の物性を有することが望ましい。
【0342】
(X線パラメータ)
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)は、通常0.335nm以上であり、また、通常0.360nm以下であり、0.350nm以下が好ましく、0.345nm以下がさらに好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、1.0nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であることがさらに好ましい。
【0343】
(体積基準平均粒径)
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)であり、それは通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。
【0344】
体積基準平均粒径が上記範囲を下回ると、非水系電解液二次電池の不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また、上記範囲を上回ると、塗布により電極(の負極活物質層)を作製する際に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
【0345】
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素質材料を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
【0346】
(ラマンR値)
炭素質材料のラマンR値は、レーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値であり、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上がさらに好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1.0以下がさらに好ましく、0.5以下が特に好ましい。
【0347】
ラマンR値が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、非水系電解液二次電池の充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。即ち、電池の充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に炭素質材料を含む負極材料を塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に、電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、電池の負荷特性の低下を招く場合がある。
【0348】
一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、電池の効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
【0349】
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(例えば、日本分光社製ラマン分光器)を用いて、試料(炭素質材料)を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光(若しくは半導体レーザー光)を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm−1付近のピークPAの強度IAと、1360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、炭素質材料のラマンR値と定義する。
【0350】
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・レーザー波長 :Arイオンレーザー514.5nm(半導体レーザー532nm)
・測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
・ラマンR値 :バックグラウンド処理、
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
【0351】
(BET比表面積)
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値であり、通常0.1m・g−1以上であり、0.7m・g−1以上が好ましく、1.0m・g−1以上がさらに好ましく、1.5m・g−1以上が特に好ましく、また、通常100m・g−1以下であり、25m・g−1以下が好ましく、15m・g−1以下がさらに好ましく、10m・g−1以下が特に好ましい。
【0352】
BET比表面積の値がこの範囲を下回ると、そのような炭素質材料を負極材料として用いた場合の非水系電解液二次電池の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなりやすく、リチウムが電極表面で析出しやすくなり、電池の安定性が低下する可能性がある。一方、この範囲を上回ると、そのような炭素質材料を負極材料として用いた時に非水系電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい場合がある。
【0353】
BET法による比表面積の測定は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料(炭素質材料)に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。
【0354】
(円形度)
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
【0355】
炭素質材料の粒径が3〜40μmの範囲にある場合の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.85以上がさらに好ましく、0.9以上が特に好ましい。非水系電解液二次電池の高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
【0356】
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(例えば、シスメックス社製FPIA)を用いて行う。試料(炭素質材料)約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。
【0357】
円形度を向上させる方法は、特に制限されないが、球形化処理を施して球形にした炭素質材料が、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので、球形化処理により円形度を向上させることが好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダーもしくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
【0358】
(タップ密度)
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm−3以上であり、0.5g・cm−3以上が好ましく、0.7g・cm−3以上がさらに好ましく、1g・cm−3以上が特に好ましく、また、2g・cm−3以下が好ましく、1.8g・cm−3以下がさらに好ましく、1.6g・cm−3以下が特に好ましい。タップ密度が、上記範囲を下回ると、その炭素質材料を使用して負極を作製した場合に、負極活物質の充填密度が上がり難く、高容量の非水系電解液二次電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
【0359】
タップ密度の測定は、以下のようにして行う。目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセルに試料(炭素質材料)を落下させてセルの上端面まで試料を満たす。その後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、試料を満たしたセルに対してストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量からタップ密度を算出する。
【0360】
(配向比)
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.015以上がさらに好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲を下回ると、非水系電解液二次電池の高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
【0361】
配向比は、試料(炭素質材料)を加圧成型してからX線回折により測定する。試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し58.8MN・m−2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる配向比を算出する。
【0362】
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
【0363】
(アスペクト比(粉))
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下がさらに好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、非水系電解液二次電池の高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
【0364】
アスペクト比の測定は、炭素質材料の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個の炭素質材料粒子を選択する。それぞれについて粒子が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察する。その時の炭素質材料粒子の最長となる径Aと、それと直交する最短となる径Bを測定する。そして50個の粒子についてのA/Bの平均値を求める。
【0365】
<Liと合金化可能な金属粒子>
リチウム合金を形成する単体金属及び合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の化合物を負極活物質として使用する場合、Liと合金化可能な金属は、粒子形態である。金属粒子が、Liと合金化可能な金属粒子であることを確認するための手法としては、X線回折による金属粒子相の同定、電子顕微鏡による粒子構造の観察及び元素分析、蛍光X線による元素分析等が挙げられる。
【0366】
Liと合金化可能な金属粒子としては、従来公知のいずれのものも使用可能であるが、非水系電解液二次電池の容量とサイクル寿命の点から、前記金属粒子は、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Ag、Si、Sn、Al、Zr、Cr、P、S、V、Mn、As、Nb、Mo、Cu、Zn、Ge、In、Ti及びWからなる群から選ばれる金属又はその化合物であることが好ましい。また、2種以上の金属からなる合金を使用してもよく、金属粒子が、2種以上の金属元素により形成された合金粒子であってもよい。これらの中でも、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn及びWからなる群から選ばれる金属又はその金属化合物が好ましい。
【0367】
前記金属化合物としては、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等が挙げられる。また、2種以上の金属からなる合金を使用してもよい。
【0368】
Liと合金可能な金属粒子の中でも、Si又はSi金属化合物が好ましい。Si金属化合物は、Si金属酸化物であることが好ましい。Si又はSi金属化合物は、電池の高容量化の点で、好ましい。本明細書では、Si又はSi金属化合物を総称してSi化合物と呼ぶ。Si化合物としては、具体的には、SiO,SiN,SiC、SiZ(Z=C、N)等が挙げられる。Si化合物は、好ましくは、Si金属酸化物であり、Si金属酸化物は、一般式で表すとSiOである。この一般式SiOは、二酸化Si(SiO)と金属Si(Si)とを原料として得られるが、そのxの値は通常0≦x<2である。SiOは、黒鉛と比較して理論容量が大きく、更に非晶質SiあるいはナノサイズのSi結晶は、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りがしやすく、高容量を得ることが可能となる。
【0369】
Si金属酸化物は、具体的には、SiOと表されるものであり、xは0≦x<2であり、より好ましくは、0.2以上1.8以下、更に好ましくは、0.4以上1.6以下、特に好ましくは、0.6以上1,4以下である。この範囲であれば、電池が高容量であると同時に、Liと酸素との結合による不可逆容量を低減させることが可能となる。
【0370】
・Liと合金化可能な金属粒子の平均粒子径(d50)
Liと合金化可能な金属粒子の平均粒子径(d50)は、非水系電解液二次電池のサイクル寿命の観点から、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下である。平均粒子径(d50)が前記範囲内であると、電池の放電に伴う体積膨張が低減され、充放電容量を維持しつつ、良好なサイクル特性を得ることができる。
なお、平均粒子径(d50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定方法等で求められる。
【0371】
・Liと合金化可能な金属粒子のBET法比表面積
Liと合金化可能な金属粒子のBET法により求めた比表面積は、通常0.5〜60m/gであり、1〜40m/gであることが好ましい。Liと合金化可能な金属粒子のBET法による比表面積が前記範囲内であると、電池の充放電効率及び放電容量が高く、高速充放電においてリチウムの出し入れが速く、レート特性に優れるので好ましい。
【0372】
・Liと合金化可能な金属粒子の含有酸素量
Liと合金化可能な金属粒子の含有酸素量は、特に制限はないが、通常0.01〜8質量%であり、0.05〜5質量%であることが好ましい。粒子内の酸素分布状態は、表面近傍に存在、粒子内部に存在、粒子内一様に存在のいずれでもかまわないが、特に表面近傍に存在していることが好ましい。Liと合金化可能な金属粒子の含有酸素量が前記範囲内であると、金属粒子とOの強い結合により、非水系電解液二次電池の充放電に伴う体積膨張が抑制され、サイクル特性に優れるので好ましい。
【0373】
<Liと合金可能な金属粒子と黒鉛粒子とを含有する負極活物質>
負極活物質は、Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子とを含有するものであってもよい。その負極活物質とは、
Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子とが互いに独立した粒子の状態で混合されている混合物でもよいし、Liと合金化可能な金属粒子が黒鉛粒子の表面及び/又は内部に存在している複合体でもよい。
【0374】
上記Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子との複合体(複合粒子ともいう)とは、特に、Liと合金化可能な金属粒子及び黒鉛粒子が含まれている粒子であれば特に制限はないが、好ましくは、Liと合金化可能な金属粒子及び黒鉛粒子が物理的及び/又は化学的な結合によって一体化した粒子である。より好ましい形態としては、Liと合金化可能な金属粒子及び黒鉛粒子が、少なくとも複合粒子表面及びバルク内部の何れにも存在する程度に各々の固体成分が粒子内で分散して存在している状態にあり、それらを物理的及び/又は化学的な結合によって一体化させるために、黒鉛粒子が存在しているような形態である。更に具体的な好ましい形態は、Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子から少なくとも構成される複合材であって、黒鉛粒子、好ましくは、天然黒鉛が曲面を有する折り畳まれた構造を持つ粒子内に、該構造内の間隙にLiと合金化可能な金属粒子が存在していることを特徴とする複合材(負極活物質)である。また、間隙は空隙であってもよいし、非晶質炭素や黒鉛質物、樹脂等、Liと合金化可能な金属粒子の膨張、収縮を緩衝するような物質が、前記間隙中に存在していてもよい。
【0375】
・Liと合金化可能な金属粒子の含有割合
Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子の合計に対するLiと合金化可能な金属粒子の含有割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上である。また、通常99質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。この範囲であると、非水系電解液二次電池において十分な容量を得ることが可能となる点で好ましい。
【0376】
(被覆率)
本発明の負極活物質は、炭素質物又は黒鉛質物で被覆されていてもよい。この中でも非晶質炭素質物で被覆されていることが、リチウムイオンの受入性の点から好ましい。この被覆率は、通常0.5%以上30%以下、好ましくは1%以上25%以下、より好ましくは、2%以上20%以下である。この被覆率が大きすぎると炭素質材料の非晶質炭素部分が多くなり、電池を組んだ際の可逆容量が小さくなる傾向がある。被覆率が小さすぎると、核となる炭素質材料が非晶質炭素によって均一にコートされないとともに強固な造粒がなされず、焼成後に粉砕した際、粒径が小さくなりすぎる傾向がある。
【0377】
なお、最終的に得られる負極活物質の有機化合物由来の炭化物の被覆率(含有率)は、負極活物質の量と、有機化合物の量及びJIS K 2270に準拠したミクロ法により測定される残炭率により、下記式で算出することができる。
【0378】
式:有機化合物由来の炭化物の被覆率(%)=(有機化合物の質量×残炭率×100)/{負極活物質の質量+(有機化合物の質量×残炭率)}
【0379】
(内部間隙率)
負極活物質の内部間隙率は通常1%以上、好ましくは3%以上、より好ましく5%以上、更に好ましくは7%以上である。また通常50%未満、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。この内部間隙率が小さすぎると、非水系電解液二次電池において負極活物質の粒子内の液量が少なくなり、充放電特性が悪化する傾向がある。一方内部間隙率が大きすぎると、電極にした場合に粒子間間隙が少なく、非水系電解液の拡散が不十分になる傾向がある。また、この空隙には、非晶質炭素や黒鉛質物、樹脂等、Liと合金化可能な金属粒子の膨張、収縮を緩衝するような物質が、空隙中に存在又は空隙がこれらにより満たされていてもよい。
【0380】
<負極の構成と作製法>
負極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法をも用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
【0381】
また、合金系材料負極は、公知のいずれの方法を用いても製造することが可能である。具体的に、負極の製造方法としては、例えば、上述の負極活物質に結着剤や導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法や、圧縮成形してペレット電極とする方法も挙げられるが、通常は負極用の集電体(以下「負極集電体」という場合がある。)上に塗布法、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法が用いられる。この場合、上述の負極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、負極集電体上に負極活物質層を形成する。
【0382】
負極集電体の材質としては、鋼、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工し易いという点及びコストの点から、銅箔が好ましい。
【0383】
負極集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、非水系電解液二次電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがある。
【0384】
なお、表面に形成される負極活物質層との結着効果を向上させるため、これら負極集電体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線等を備えたワイヤーブラシ等で集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。
【0385】
また、負極集電体の質量を低減させて電池の質量当たりのエネルギー密度を向上させるために、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの負極集電体を使用することもできる。このタイプの負極集電体は、その開口率を変更することで、質量も自在に変更可能である。また、このタイプの負極集電体の両面に負極活物質層を形成させた場合、この穴を通してのリベット効果により、負極活物質層の剥離が更に起こり難くなる。しかし、開口率があまりに高くなった場合には、負極活物質層と負極集電体との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなることがある。
【0386】
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常は負極材に対して結着剤、増粘剤等を加えて作製される。なお、本明細書における「負極材」とは、負極活物質と導電材とを合わせた材料を指すものとする。
【0387】
負極材中における負極活物質の含有量は、通常70質量%以上、特に75質量%以上、また、通常97質量%以下、特に95質量%以下であることが好ましい。負極活物質の含有量が少な過ぎると、得られる負極を用いた二次電池の容量が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に導電材の含有量が不足することにより、負極としての電気伝導性を確保しづらい傾向にある。なお、二以上の負極活物質を併用する場合には、負極活物質の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0388】
負極に用いられる導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に、導電材として炭素材料を用いると、炭素材料が活物質としても作用するため好ましい。負極材中における導電材の含有量は、通常3質量%以上、好ましくは5質量%以上、また、通常30質量%以下であり、25質量%以下であることが好ましい。導電材の含有量が少な過ぎると導電性が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や強度が低下する傾向となる。なお、二以上の導電材を併用する場合には、導電材の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0389】
負極に用いられる結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム・イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。結着剤の含有量は、負極材100質量部に対して通常0.5質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、通常10質量部以下であり、8質量部以下であることが好ましい。結着剤の含有量が少な過ぎると得られる負極の強度が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や導電性が不足する傾向となる。なお、二以上の結着剤を併用する場合には、結着剤の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0390】
負極に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。増粘剤は必要に応じて使用すればよいが、使用する場合には、負極活物質層中における増粘剤の含有量が通常0.5質量%以上、5質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
【0391】
負極活物質層を形成するためのスラリーは、上記負極活物質に、必要に応じて導電材や結着剤、増粘剤を混合して、水系溶媒又は有機溶媒を分散媒として用いて調製される。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の環状アミド類等の有機溶媒を、水に対して30質量%以下の範囲で併用することもできる。また、有機溶媒としては、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。なお、これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0392】
得られたスラリーを上述の負極集電体上に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより、負極活物質層が形成され、負極が得られる。塗布の手法は特に制限されず、それ自体既知の方法を用いることができる。乾燥の手法も特に制限されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の手法を用いることができる。
【0393】
(電極密度)
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がさらに好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm−3以下が好ましく、2.1g・cm−3以下がより好ましく、2.0g・cm−3以下がさらに好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、非水系電解液二次電池の初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
【0394】
2−2.正極
<正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質(リチウム遷移金属系化合物)について述べる。
〈リチウム遷移金属系化合物〉
リチウム遷移金属系化合物とは、Liイオンを脱離、挿入することが可能な構造を有する化合物であり、例えば、硫化物やリン酸塩化合物、リチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられる。硫化物としては、TiSやMoS等の二次元層状構造をもつ化合物や、一般式MeMo(MeはPb,Ag,Cuをはじめとする各種遷移金属)で表される強固な三次元骨格構造を有するシュブレル化合物等が挙げられる。リン酸塩化合物としては、オリビン構造に属するものが挙げられ、一般的にはLiMePO(Meは少なくとも1種の遷移金属)で表され、具体的にはLiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO等が挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、三次元的拡散が可能なスピネル構造や、リチウムイオンの二次元的拡散を可能にする層状構造を有するものが挙げられる。スピネル構造を有するものは、一般的にLiMe(Meは少なくとも1種の遷移金属)と表され、具体的にはLiMn、LiCoMnO、LiNi0.5Mn1.5、LiCoVO等が挙げられる。層状構造を有するものは、一般的にLiMeO(Meは少なくとも1種の遷移金属)と表される。具体的にはLiCoO、LiNiO、LiNi1−xCo、LiNi1−x−yCoMn、LiNi0.5Mn0.5、Li1.2Cr0.4Mn0.4、Li1.2Cr0.4Ti0.4、LiMnO等が挙げられる。
【0395】
〈組成〉
また、リチウム遷移金属系化合物としては、例えば、下記組成式(F)又は(G)で示される化合物が挙げられる。
【0396】
1)下記組成式(F)で示されるリチウム遷移金属系化合物
Li1+xMO …(F)
ただし、xは通常0以上、0.5以下である。Mは、Ni及びMn、或いは、Ni、Mn及びCoから構成される元素であり、Mn/Niモル比は通常0.1以上、5以下である。Ni/Mモル比は通常0以上、0.5以下である。Co/Mモル比は通常0以上、0.5以下である。なお、xで表されるLiのリッチ分は、遷移金属サイトMに置換している場合もある。
【0397】
なお、上記組成式(F)においては、酸素量の原子比は便宜上2と記載しているが、多少の不定比性があってもよい。また、上記組成式中のxは、リチウム遷移金属系化合物の製造段階での仕込み組成である。通常、市場に出回る非水系電解液二次電池は、電池を組み立てた後に、エージングを行っている。そのため、充放電に伴い、正極のLi量は欠損している場合がある。その場合、組成分析上、3Vまで放電した場合のxが−0.65以上、1以下に測定されることがある。
【0398】
また、リチウム遷移金属系化合物の中では、正極活物質の結晶性を高めるために酸素含有ガス雰囲気下で高温焼成を行って焼成されたものが電池特性に優れる。
【0399】
さらに、組成式(F)で示されるリチウム遷移金属系化合物は、以下の一般式(F’)のとおり、213層と呼ばれるLiMOとの固溶体であってもよい。
αLiMO・(1−α)LiM’O・・・(F’)
一般式中、αは、0<α<1を満たす数である。
【0400】
Mは、平均酸化数が4+である少なくとも1種の金属元素であり、具体的には、Mn、Zr、Ti、Ru、Re及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である。
【0401】
M’は、平均酸化数が3+である少なくとも1種の金属元素であり、好ましくは、V、Mn、Fe、Co及びNiからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であり、より好ましくは、Mn、Co及びNiからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である。
【0402】
2)下記組成式(G)で表されるリチウム遷移金属系化合物
Li[LiMn2−b−a]O4+δ・・・(G)
ただし、Mは、Ni、Cr、Fe、Co、Cu、Zr、Al及びMgから選ばれる遷移金属のうちの少なくとも1種から構成される元素である。
【0403】
bの値は通常0.4以上、0.6以下である。
bの値がこの範囲であれば、リチウム遷移金属系化合物における単位重量当たりのエネルギー密度が高い。
【0404】
また、aの値は通常0以上、0.3以下である。また、上記組成式中のaは、リチウム遷移金属系化合物の製造段階での仕込み組成である。通常、市場に出回る電池は、電池を組み立てた後に、エージングを行っている。そのため、充放電に伴い、正極のLi量は欠損している場合がある。その場合、組成分析上、3Vまで放電した場合のaが−0.65以上、1以下に測定されることがある。
【0405】
aの値がこの範囲であれば、リチウム遷移金属系化合物における単位重量当たりのエネルギー密度を大きく損なわず、かつ、良好な負荷特性が得られる。
【0406】
さらに、δの値は通常±0.5の範囲である。
δの値がこの範囲であれば、結晶構造としての安定性が高く、このリチウム遷移金属系化合物を用いて作製した正極を有する電池のサイクル特性や高温保存が良好である。
【0407】
ここで、リチウム遷移金属系化合物の組成である上記組成式(G)におけるリチウム組成の化学的な意味について、以下により詳細に説明する。
【0408】
上記リチウム遷移金属系化合物の組成式のa,bは、各遷移金属とリチウムを誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)で分析して、Li/Ni/Mnの比を求める事で計算される。
【0409】
構造的視点では、aに係るリチウムは、同じ遷移金属サイトに置換されて入っていると考えられる。ここで、aに係るリチウムによって、電荷中性の原理によりMとマンガンの平均価数が3.5価より大きくなる。
【0410】
また、上記リチウム遷移金属系化合物は、フッ素置換されていてもよく、そのような化合物はLiMn4−x2xと表記される。
【0411】
〈ブレンド〉
上記の組成のリチウム遷移金属系化合物の具体例としては、例えば、Li1+xNi0.5Mn0.5、Li1+xNi0.85Co0.10Al0.05、Li1+xNi0.33Mn0.33Co0.33、Li1+xNi0.45Mn0.45Co0.1、Li1+xMn1.8Al0.2、Li1+xMn1.5Ni0.5等が挙げられる。これらのリチウム遷移金属系化合物は、1種を単独で用いてもよく、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0412】
〈異元素導入〉
また、リチウム遷移金属系化合物には、異元素が導入されてもよい。異元素としては、B,Na,Mg,Al,K,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Sr,Y,Zr,Nb,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sb,Te,Ba,Ta,Mo,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Pb,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Bi,N,F,S,Cl,Br,I,As,Ge,P,Pb,Sb,Si及びSnの何れか1種以上が選択される。これらの異元素は、リチウム遷移金属系化合物の結晶構造内に取り込まれていてもよく、あるいは、リチウム遷移金属系化合物の結晶構造内に取り込まれず、その粒子表面や結晶粒界等に単体もしくは化合物として偏在していてもよい。
【0413】
[非水系電解液二次電池用正極]
非水系電解液二次電池用正極は、上述のリチウム遷移金属系化合物の粉体及び結着剤を含有する正極活物質層を集電体上に形成してなるものである。
【0414】
正極活物質層は、通常、正極材料と結着剤と更に必要に応じて用いられる導電材及び増粘剤等を、乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、或いはこれらの材料を液体媒体中に溶解又は分散させてスラリー状にして、正極集電体に塗布、乾燥することにより作成される。
【0415】
正極集電体の材質としては、通常、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料や、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。また、形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。なお、前記金属薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
【0416】
正極集電体として金属薄膜を使用する場合、その厚さは任意であるが、通常1μm以上、100mm以下の範囲が好適である。上記範囲よりも薄いと、集電体として必要な強度が不足する可能性がある一方で、上記範囲よりも厚いと、取り扱い性が損なわれる可能性がある。
【0417】
正極活物質層の製造に用いる結着剤は、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して安定な材料であればよい。その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子、
SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレンスチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子、
シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子、
ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、
アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物
等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0418】
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上、80質量%以下である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう可能性がある一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる可能性がある。
【0419】
正極活物質層には、通常、導電性を高めるために導電材を含有させる。その種類に特に制限はないが、具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料や、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料等を挙げることができる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。正極活物質層中の導電材の割合は、通常0.01質量%以上、50質量%以下である。導電材の割合が低すぎると導電性が不十分になることがあり、逆に高すぎると電池容量が低下することがある。
【0420】
スラリーを形成するための液体媒体は、正極材料であるリチウム遷移金属系化合物粉体、結着剤、並びに必要に応じて使用される導電材及び増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等を挙げることができる。特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。
【0421】
以上説明した溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0422】
正極活物質層中の正極材料としてのリチウム遷移金属系化合物粉体の含有割合は、通常10質量%以上、99.9質量%以下である。正極活物質層中のリチウム遷移金属系化合物粉体の割合が多すぎると正極の強度が不足する傾向にあり、少なすぎると容量の面で不十分となることがある。
また、正極活物質層の厚さは、通常10〜200μm程度である。
【0423】
正極のプレス後の電極密度は、通常、2.2g/cm以上、4.2g/cm以下である。
【0424】
なお、塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
かくして、非水系電解液二次電池用正極が調製できる。
【0425】
2−3.セパレータ
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
【0426】
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等で形成されたセパレータが用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態のセパレータ等を用いるのが好ましい。
【0427】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、さらに好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0428】
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上がさらに好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。セパレータが、上記範囲より薄いと、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚いと、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
【0429】
さらに、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上がさらに好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下がさらに好ましい。空孔率が、上記範囲より小さいと、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大きいと、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
【0430】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
【0431】
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
【0432】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状のセパレータ以外に、樹脂製の結着材を用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に、フッ素樹脂を結着材として用いて、90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を付着させて多孔層を形成させて得られたセパレータが挙げられる。
【0433】
セパレータの非水系電解液二次電池における特性を、ガーレ値で把握することができる。ガーレ値とは、フィルム厚さ方向の空気の通り抜け難さを示し、100mlの空気が該フィルムを通過するのに必要な秒数で表されるため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚さ方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルムの厚さ方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは、フィルム厚さ方向の孔のつながり度合いである。セパレータのガーレ値が低ければ、様々な用途に使用することが出来る。例えば非水系電解液二次電池のセパレータとして使用した場合、ガーレ値が低いということは、リチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。セパレータのガーレ値は、任意ではあるが、好ましくは10〜1000秒/100mlであり、より好ましくは15〜800秒/100mlであり、更に好ましくは20〜500秒/100mlである。ガーレ値が1000秒/100ml以下であれば、実質的には電気抵抗が低く、セパレータとしては好ましい。
【0434】
2−4.電池設計
<電極群>
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。
【0435】
電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、その結果として、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
【0436】
<外装ケース>
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0437】
金属類を用いる外装ケースとしては、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とした外装ケース、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とした外装ケースが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とした外装ケース等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0438】
<保護素子>
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスター、温度ヒューズ、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子としては高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0439】
(外装体)
本発明の非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体(外装ケース)内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
【0440】
外装体の材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金、ニッケル、チタン等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0441】
上記金属類を用いる外装体としては、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とした外装体、及び、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とした外装体が挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装体では、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とした外装体等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0442】
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
【実施例】
【0443】
3.実施例
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0444】
本実施例及び比較例に使用した化合物を以下に示す。
【0445】
【化45】
【0446】
【化46】
【0447】
【化47】
【0448】
【化48】
【0449】
【化49】
【0450】
【化50】
【0451】
【化51】
【0452】
【化52】
【0453】
【化53】
【0454】
【化54】
【0455】
【化55】
【0456】
【化56】
【0457】
【化57】
【0458】
【化58】
【0459】
【化59】
【0460】
【化60】
【0461】
【化61】
【0462】
【化62】
【0463】
【化63】
【0464】
【化64】
【0465】
【化65】
【0466】
【化66】
【0467】
【化67】
【0468】
【化68】
【0469】
【化69】
【0470】
【化70】
【0471】
【化71】
【0472】
【化72】
【0473】
【化73】
【0474】
<実施例1−1〜1−19、比較例1−1〜1−15、参考例1−1〜1−2>
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、及びジエチルカーボネート(DEC)の混合物(体積容量比3:4:3)に、十分に乾燥させたLiPFを1.2モル/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させた(これを予備溶液と呼ぶ)。
【0475】
得られた予備溶液に、さらに、ビニレンカーボネート(VC)とモノフルオロエチレンカーボネート(MFEC)とをそれぞれ2.0質量%(溶液の合計100質量%中)ずつ添加した電解液(これを基準電解液1と呼ぶ)、
前記予備溶液にVCを5.0質量%(溶液の合計100質量%中)添加した電解液(これを基準電解液2と呼ぶ)、
前記予備溶液にMFECを5.0質量%(溶液の合計100質量%中)添加した電解液を調製した(これを基準電解液3と呼ぶ)。
【0476】
基準電解液1〜3の各々に対して、下記表1に記載の割合で各化合物を加えて非水系電解液を調製した。ただし、比較例1−1は基準電解液1、比較例1−14は基準電解液2、比較例1−15は基準電解液3そのものである。なお、表中の「添加量(wt%)」は、非水系電解液100重量%中の濃度である。
【0477】
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ21μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0478】
[負極の作製]
負極活物質としての天然黒鉛粉末に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)を、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン−ブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0479】
[非水系電解液二次電池(ラミネート型)の製造]
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、上述した非水系電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0480】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで放電した。次に0.2Cで4.1Vまで電池のCC−CV充電を行った。その後、45℃、72時間の条件でエージングを実施した。その後、0.2Cで3.0Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。さらに、0.2Cで4.4Vまで電池のCC−CV充電を行った後、0.2Cで3.0Vまで放電し、電池の初期コンディショニングを行った。
【0481】
[充電保存試験]
初期コンディショニング後の電池について再度、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電を行った後、85℃、24時間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、保存試験前後の体積変化から発生ガス量を求め、これを「充電保存ガス量」とした。
【0482】
下記表1に、比較例1−1の値で規格化した、各実施例及び比較例の充電保存ガス量を示す。
【0483】
【表1】
【0484】
表1から明らかなように、一般式(A)で表される化合物を含む本発明の非水系電解液を用いた場合、前記化合物を含有していない比較例1−1、比較例1−14、比較例1−15よりも充電保存ガスを抑制することができる。また、比較例1−2〜1−9のような一般式(A)で表される化合物以外の化合物を添加すると充電保存ガスは増大してしまうことが示されている。これより、非水系電解液に一般式(A)で表される化合物を添加した非水系電解液を用いることで、充電保存時の電池膨れが抑制されることがわかる。
【0485】
また、一般式(A)で表される化合物と、イソシアネート化合物、酸無水物、アクリレート化合物、ニトリル化合物、フッ素化されたホウ塩に代表される特定添加剤とを併用した場合、それぞれの化合物を単独で用いた場合よりも充電保存ガス量が抑制されていることが分かる。これより、併用による相乗効果が示されている。
【0486】
<実施例2−1〜2−2、比較例2−1〜2−2>
基準電解液1に対して、下記表2に記載の割合で各化合物を加えて非水系電解液を調製した。ただし、比較例2−1は基準電解液1そのものである。なお、表中の「添加量(wt%)」は、非水系電解液100重量%中の濃度である。実施例1と同様の正極、負極及び非水系電解液二次電池を作成し、実験を行った。
【0487】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで放電した。次に0.2Cで4.1Vまで電池のCC−CV充電を行った。その後、45℃、72時間の条件でエージングを実施した。その後、0.2Cで3.0Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。さらに、0.2Cで4.4Vまで電池のCC−CV充電を行った後、0.2Cで3.0Vまで放電し、電池の初期コンディショニングを行った。
【0488】
[保存後1.0C/0.2C負荷試験]
初期コンディショニング後の電池について再度、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電を行った後、85℃、24時間の条件で高温保存を行った。その後、0.2Cで3.0Vまで放電した。続いて0.2Cで4.4Vまで電池をCC−CVした後、0.2C・1.0Cで3.0Vまで放電し、得られた0.2C・1.0C容量の比(1.0C/0.2C)の百分率を「保存後1.0C/0.2C負荷」とした。
【0489】
下記表2に、比較例2−1の値で規格化した、各実施例及び比較例の保存後1.0C/0.2C負荷を示す。
【0490】
【表2】
【0491】
表2から明らかなように、一般式(A)で表される化合物とイソシアヌル酸骨格を有する化合物を併用して用いた場合、それぞれの化合物を単独で用いた場合よりも保存後1.0C/0.2C負荷特性が向上していることが分かる。特にイソシアヌル酸骨格を有する化合物単独では特性の改善効果が確認されない。これより、併用による相乗効果が示されている。
【0492】
<実施例3−1〜3−2、比較例3−1>
[非水系電解液の調製]
基準電解液3に対して、下記表3に記載の割合で各化合物を加えて非水系電解液を調製した。ただし、比較例3−1は基準電解液3そのものである。なお、表中の「添加量(wt%)」は、非水系電解液100重量%中の濃度である。
【0493】
[正極の作製]
実施例1と同様の正極を作製し、使用した。
【0494】
[負極の作製]
実施例1と同様の負極を作製し、使用した。
【0495】
[非水系電解液二次電池(ラミネート型)の製造]
実施例1と同様の非水系電解液二次電池を作製し、使用した。
【0496】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで放電した。次に0.2Cで4.1Vまで電池のCC−CV充電を行った。その後、45℃、72時間の条件でエージングを実施した。その後、0.2Cで3.0Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。さらに、0.2Cで4.4Vまで電池のCC−CV充電を行った後、0.2Cで3.0Vまで放電し、電池の初期コンディショニングを行った。
【0497】
[60℃充電保存試験]
初期コンディショニング後の電池について再度、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電を行った後、60℃、168時間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、保存試験前後の体積変化から発生ガス量を求め、これを「60℃充電保存ガス量」とした。
【0498】
下記表3に、比較例3−1の値で規格化した、各実施例及び比較例の60℃充電保存ガス量を示す。
【0499】
【表3】
【0500】
表3から明らかなように、一般式(A)で表される特定物を含む本発明の非水系電解液を用いた場合、前記化合物を含有していない比較例3−1よりも60℃充電保存ガス量を抑制することができる。
【0501】
<実施例4−1〜4−5、比較例4−1〜4−3>
基準電解液1に対して、下記表4に記載の割合で各化合物を加えて非水系電解液を調製した。ただし、比較例4−1は基準電解液1そのものである。なお、表中の「添加量(wt%)」は、非水系電解液100重量%中の濃度である。実施例1と同様の正極、負極、及び非水系電解液電池を作成し、評価を行った。
【0502】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで放電した。次に0.2Cで4.1Vまで電池のCC−CV充電を行った。その後、45℃、72時間の条件でエージングを実施した。その後、0.2Cで3.0Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。さらに、0.2Cで4.4Vまで電池のCC−CV充電を行った後、0.2Cで3.0Vまで放電し、電池の初期コンディショニングを行った。
【0503】
[連続充電試験]
初期コンディショニングを行った後の非水系電解液電池を、60℃において、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(168時間カット)を行うことで、連続充電試験を実施した。試験終了後、電池を十分に冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、連続充電試験前後の体積変化から発生ガス量を求め、これを「連続充電試験ガス量」とした。
【0504】
下記表4に、比較例4−1の値で規格化した、各実施例及び比較例の連続充電試験ガス量を示す。
【0505】
【表4】
【0506】
表4から明らかなように、一般式(A)で表される化合物とニトリル化合物を併用して用いた場合、それぞれの化合物を単独で用いた場合よりも連続充電試験ガスが抑制できる。これより、併用による相乗効果が示されている。
【0507】
<実施例5−1〜5−2、比較例5−1〜5−2>
基準電解液1に対して、下記表5に記載の割合で各化合物を加えて非水系電解液を調製した。ただし、比較例5−1は基準電解液1そのものである。なお、表中の「添加量(wt%)」は、非水系電解液100重量%中の濃度である。実施例1と同様の正極、負極、及び非水系電解液二次電池を作成し、実験を行った。
【0508】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期の電池特性評価]
非水系電解液二次電池をエタノール浴中に浸し、そのときの浮力から初期電池体積を求めた(アルキメデスの原理)。その後、ガラス板で挟んで加圧した状態で、25℃において、0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで定電流放電を行った。更に、0.2Cに相当する電流で4.1Vまで定電流―定電圧充電(「CC−CV充電」ともいう)(0.05Cカット)した後、45℃、72時間の条件下で放置した。その後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。次いで、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)した後、0.2Cで3.0Vまで再度放電し、初期の電池特性を安定させた。
【0509】
初期の電池特性評価後の非水系電解液二次電池について、25℃において、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)をした後、エタノール浴中に浸し、そのときの浮力から電池体積を求め、初期電池体積からの変化分を保存前状態の「初期ガス量」とした。
下記表5に、比較例5−1の値で規格化した、各実施例及び比較例の初期ガス量を示す。
【0510】
【表5】
【0511】
表5から明らかなように、一般式(A)で表される化合物を含む本発明の非水系電解液を用いた場合、前記化合物を含有していない比較例5−1よりも初期ガス量を抑制することができる。また、一般式(A)で表される化合物と環状スルホン酸エステルを併用した実施例5−2は、それぞれの化合物を単独で用いた場合よりも初期ガス量が抑制されていることが分かる。特に、環状スルホン酸エステルを単独で添加した場合(比較例5−2)は初期ガス量が増大しているため、併用による相乗効果が示されている。
【0512】
<実施例6−1〜6−2、比較例6−1〜6−2>
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、EC、EMC及びDECの混合物(体積容量比3:4:3)に、十分に乾燥させたLiPFを1.2モル/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させ、さらに、VCとMFECと化合物19とを、それぞれ2.0質量%、2.0質量%、1.0質量%ずつ添加した(これを基準電解液4と呼ぶ)。基準電解液4全体に対して、下記表6に記載の割合で各化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例6−1は基準電解液4そのものである。なお、表中の「添加量(wt%)」は、非水系電解液100重量%中の濃度である。
【0513】
[正極の作製]
実施例1と同様の正極を作製し使用した。
【0514】
[負極の作製]
実施例1と同様の負極を作製し使用した。
【0515】
[非水系電解液二次電池(ラミネート型)の製造]
実施例1と同様の非水系電解液二次電池を製造し使用した。
【0516】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで放電した。次に0.2Cで4.1Vまで電池のCC−CV充電を行った。その後、45℃、72時間の条件でエージングを実施した。その後、0.2Cで3.0Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。さらに、0.2Cで4.4Vまで電池のCC−CV充電を行った後、0.2Cで3.0Vまで放電し、電池の初期コンディショニングを行った。
【0517】
[充電保存試験]
初期コンディショニング後の電池について再度、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電を行った後、80℃、72時間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、保存試験前後の体積変化から発生ガス量を求め、これを「80℃充電保存ガス量」とした。
【0518】
下記表6に、比較例6−1の値で規格化した、各実施例及び比較例の80℃充電保存ガス量を示す。
【0519】
【表6】
【0520】
表6から明らかなように、一般式(A)で表される化合物と環状エーテル化合物を併用した場合、それぞれの化合物を単独で用いた場合よりも80℃充電保存ガス量が抑制することができる。これより、併用による相乗効果が示されている。
【0521】
<実施例7−1〜7−2、比較例7−1〜7−2>
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、EC、化合物22及びDECの混合物(体積容量比3:4:3)に、十分に乾燥させたLiPFを1.2モル/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させ、さらに、MFECを5.0質量%(溶液の合計100質量%中)添加した(これを基準電解液5と呼ぶ)。基準電解液3又は5全体に対して、下記表7に記載の割合で各化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例7−1は基準電解液3そのものであり、比較例7−2は基準電解液5そのものである。なお、表中の「添加量(wt%)」は、非水系電解液100重量%中の濃度である。
【0522】
[正極の作製]
実施例1と同様の正極を作製し、使用した。
【0523】
[負極の作製]
実施例1と同様の負極を作製し、使用した。
【0524】
[非水系電解液二次電池(ラミネート型)の製造]
実施例1と同様の非水系電解液二次電池を製造し使用した。
【0525】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで放電した。次に0.2Cで4.1Vまで電池のCC−CV充電を行った。その後、45℃、72時間の条件でエージングを実施した。その後、0.2Cで3.0Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。さらに、0.2Cで4.4Vまで電池のCC−CV充電を行った後、0.2Cで3.0Vまで放電し、電池の初期コンディショニングを行った。
【0526】
[60℃充電保存試験]
初期コンディショニング後の電池について再度、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電を行った後、60℃、168時間の条件で高温保存を行った。その後、25℃において0.2Cで3Vまで放電させ、さらに、25℃において0.2Cの定電流で4.40Vまで電池のCC−CV充電(0.05Cカット)をした後、0.2Cで3Vまで再度放電し、これを「回復0.2C容量」とした。
【0527】
下記表7に、比較例7−1の値で規格化した、各実施例及び比較例の回復0.2C容量を示す。
【0528】
【表7】
【0529】
表7から明らかなように、一般式(A)で表される化合物を用いた場合、回復0.2C容量が向上する。特に鎖状カルボン酸エステルである、化合物22を使用した電解液と一般式(A)で表される化合物を併用した時の向上効果が高いことが分かる。
【0530】
<実施例8−1、比較例8−1>
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、EC、ジメチルカーボネート(DMC)、EMCとの混合物(体積容量比3:3:4)に、十分に乾燥させたLiPFを1.0モル/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させ、さらに、VCを1.2質量%(溶液の合計100質量%中)添加した(これを基準電解液6と呼ぶ)。基準電解液6全体に対して、下記表8に記載の割合で各化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例8−1は基準電解液6そのものである。なお、表中の「添加量(wt%)」は、非水系電解液100重量%中の濃度である。
【0531】
[正極の作製]
正極活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO4)83.5質量部を用い、カーボンブラック10質量部とポリフッ化ビニリデン6.5質量部を混合した。この混合物にN−メチル−2−ピロリドンを加えスラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に13.8mg・cm−2となるように塗布し、乾燥した後、正極活物質層の密度が1.85g・cm−3になるようにプレスして正極とした。
【0532】
[負極の作製]
黒鉛に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)と、バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面に均一に6.0mg・cm−2となるように塗布して乾燥し、その後、負極活物質層の密度が1.36g・cm−3になるようにプレスして負極とした。用いた黒鉛は、d50値が10.9μmであり、比表面積が3.41m・g−1であり、タップ密度が0.985g・cm−3である。また、スラリーは乾燥後の負極において、黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン−ブタジエンゴム=97.5:1.5:1の質量比となるように作成した。
【0533】
[非水系電解液二次電池(ラミネート型)の製造]
上記の正極、負極、及びセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。セパレータにはポリプロピレン製、厚み20μm、空孔率54%のものを用いた。こうして得られた電池要素を筒状のアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、前記電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。更に、電極間の密着性を高めるために、ガラス板でシート状電池を挟んで加圧した。
【0534】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃雰囲気下において、シート状の非水系電解液二次電池を0.05Cで10時間充電後、3時間休止させ、その後3.8Vまで0.2Cで定電流充電した。さらに3時間の休止の後に、3.8Vまで0.2Cで定電流−定電圧充電し、次いで1/3Cで2.5Vまで定電流放電した。その後、3.8Vまでの1/3C定電流−定電圧充電と、これに続く2.5Vまでの1/3C定電流放電を1サイクルとする充放電サイクルを2サイクル行った。さらに、3.8Vまで1/3Cで定電流−定電圧充電した後に、電池を60℃で12時間保管することで電池を安定させた。その後、25℃にて3.8Vまでの1/3C定電流−定電圧充電と、これに続く2.5Vまでの1/3C定電流放電の充放電サイクルを2サイクル行った。このときの最後の放電容量を初期容量とした。
【0535】
[高温保存試験]
初期コンディショニング後の電池を3.8Vに調整し、60℃にて1週間保存した。初期コンディショニング後高温保存前、および、高温保存後の電池をエタノール中に完全に浸漬させ、その時に発生した浮力A(g)、および、浮力B(g)をそれぞれ電子天秤で測定した。浮力Aに対する浮力Bの差分をエタノールの比重(=0.789g・mL−1)で除して得られた値を「保存後セル膨れ」とした。
【0536】
下記表8に、比較例8−1の値で規格化した、各実施例及び比較例の保存後セル膨れを示す。
【0537】
【表8】
【0538】
表8から明らかなように、一般式(A)で表される化合物を用いた場合、保存後セル膨れが抑制される。
【0539】
<実施例9−1〜9−2、比較例9−1>
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、EC、DECとの混合物(体積容量比3:7)に、十分に乾燥させたLiPFを1.0モル/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させ、さらに、VC、MFECをそれぞれ2.0質量%(溶液の合計100質量%中)添加した(これを基準電解液7と呼ぶ)。基準電解液7全体に対して、下記表10に記載の割合で各化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例9−1は基準電解液7そのものである。なお、表中の「添加量(wt%)」は、非水系電解液100重量%中の濃度である。
【0540】
[正極の作製]
正極活物質としてリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(Li1.05Ni0.33Mn0.33Co0.33)85質量%と、導電材としてアセチレンブラック10質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ21μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0541】
[Si含有負極活物質の作製]
平均粒子径0.2μmのSi微粒子50gを平均粒径35μmの鱗片状黒鉛2000g中に分散させ、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)に投入し、ローター回転数7000rpm、180秒装置内を循環又は滞留させて処理し、Siと黒鉛粒子の複合体を得た。得られた複合体を、焼成後の被覆率が7.5%になるように炭素質物となる有機化合物としてコールタールピッチを混合し、2軸混練機により混練・分散させた。得られた分散物を、焼成炉に導入し、窒素雰囲気下1000℃、3時間焼成した。得られた焼成物は、更にハンマーミルで粉砕後、篩(45μm)を実施し、負極活物質1を作製した。前記測定法で測定した、珪素元素の含有量、平均粒径d50、タップ密度、比表面積はそれぞれ、2.0質量%、20μm、1.0g/cm3、7.2m2/gであった。
【0542】
負極活物質1と同様の方法によって、下記表9に表される種々のSi含有量の負極活物質2及び3を作製した。Si含有量は、Si微粒子と黒鉛粒子との合計(100質量%)に対するSi微粒子の質量濃度(質量%)である。
【0543】
【表9】
【0544】
[Si含有量が0、2.0、12.0、17.0質量%である活物質を用いた負極の作製]
負極活物質(天然黒鉛)及び負極活物質1〜3の各々に対して、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして、Si含有量が0、2.0、12.0、17.0質量%である活物質を用いた負極を得た。なお、乾燥後の負極において、負極活物質:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン−ブタジエンゴム=97.5:1.5:1の質量比となるように作製した。
【0545】
[非水系電解液二次電池(ラミネート型)の製造]
上記の正極、各Si含有量の負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、上記の非水系電解液を注入した後で真空封止し、各Si含有量の負極を有する、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0546】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、上記各Si含有量の負極を有する、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で4.0Vまで定電流−定電圧充電をした。その後、0.05Cで2.5Vまで放電した。続いて0.2Cで4.0Vまで電池をCC−CVした後、0.2Cで2.5Vまで放電した。さらに、0.2Cで4.2Vまで電池をCC−CVした後、0.2Cで2.5Vまで放電し非水系電解液二次電池を安定させた。その後、0.2Cで4.3Vまで電池のCC−CV充電を行った後、0.2Cで2.5Vまで放電させ初期のコンディショニングを行った。
【0547】
[高温保存試験]
初期コンディショニング後の電池について、再度、0.2Cで4.3VまでCC−CV充電し、60℃、168時間の条件で高温保存を行った。電池を十分に冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、保存試験前後の体積変化から発生ガス量を求め、これを「保存ガス量」とした。
【0548】
下記表10に、比較例9−1の値で規格化した、各実施例及び比較例の保存ガス量を示す。
【0549】
【表10】
【0550】
表10から明らかなように、一般式(A)で表される化合物を用いた場合、保存時のガスが抑制される。特に、Si微粒子と黒鉛粒子を組み合わせた負極活物質を用いた方が保存時のガス抑制効果が高いことが分かる。
【0551】
<実施例10−1〜10−2、比較例10−1>
[非水系電解液の調製]
実施例9と同様にして、基準電解液7全体に対して、下記表11に記載の割合で各化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例10−1は基準電解液7そのものである。なお、表中の「添加量(wt%)」は、非水系電解液100重量%中の濃度である。
【0552】
[正極の作製]
実施例9と同様の正極を作製し、使用した。
【0553】
[負極の作製]
負極活物質(黒鉛:SiO(質量比)=100:0、95:5、90:10)に対して、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、負極活物質:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレンブタジエンゴム=97.5:1.5:1の質量比となるように作製した。
【0554】
[非水系電解液二次電池(ラミネート型)の製造]
実施例9と同様の非水系電解液二次電池を作製し、使用した。
【0555】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で4.0Vまで定電流−定電圧充電をした。その後、0.05Cで2.5Vまで放電した。続いて0.2Cで4.0VまでCC−CVした後、0.2Cで2.5Vまで放電した。さらに0.2Cで4.2VまでCC−CVした後、0.2Cで2.5Vまで放電し非水系電解液二次電池を安定させた。その後、0.2Cで4.3VまでCC−CV充電を行った後、0.2Cで2.5Vまで放電させ初期のコンディショニングを行った。
【0556】
[高温保存試験]
初期コンディショニング後の電池について再度、0.2Cで4.3VまでCC−CV充電し、60℃、168時間の条件で高温保存を行った。その後、25℃において0.2Cで4.3VまでCC−CVした後、0.2C・0.5Cで2.5Vまで放電し、得られた0.2C・0.5C容量の比(0.5C/0.2C)を「保存後0.5C/0.2C負荷」とした。
【0557】
下記表11に、比較例10−1の値で規格化した、各実施例及び比較例の保存後0.5C/0.2C負荷を示す。
【0558】
【表11】
【0559】
表11から明らかなように、一般式(A)で表される化合物を用いた場合、保存後の0.5C/0.2C負荷が向上する。特に、SiO微粒子と黒鉛粒子を組み合わせた負極活物質を用いた方が保存後0.5C/0.2C負荷の改善効果が高いことが分かる。
【0560】
<実施例11−1、比較例11−1〜11−2>
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、EC、DMC、EMCとの混合物(体積容量比3:3:4)に、十分に乾燥させたLiPFを1.0モル/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させ、さらに、MFEC、化合物26、化合物27をそれぞれ3.0、1.5、1.0質量%(溶液の合計100質量%中)添加した(これを基準電解液8と呼ぶ)。基準電解液8全体に対して、下記表12に記載の割合で各化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例11−1は基準電解液8そのものである。なお、表中の「添加量(wt%)」は、非水系電解液100重量%中の濃度である。
【0561】
[正極の作製]
正極活物質としてリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(Li1.05Ni0.33Mn0.33Co0.33)90質量%と、導電材としてアセチレンブラック7質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0562】
[負極の作製]
黒鉛に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)と、バインダーとしてスチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。また、スラリーは乾燥後の負極において、黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン−ブタジエンゴム=97.5:1.5:1の質量比となるように作成した。
【0563】
[非水系電解液電池(ラミネート型)の製造]
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、した電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0564】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃雰囲気下において、シート状の非水系電解液二次電池を0.05Cで10時間充電後、3時間休止させ、その後3.8Vまで0.2Cで定電流充電した。さらに3時間の休止の後に、4.3Vまで0.2Cで定電流−定電圧充電し、次いで1/3Cで3.0Vまで定電流放電した。その後、4.3Vまでの1/3C定電流−定電圧充電と、これに続く3.0Vまでの1/3C定電流放電を1サイクルとする充放電サイクルを2サイクル行い、初期コンディショニングとした。
【0565】
[高温保存試験]
初期コンディショニング後の電池を、0.2Cで4.3VまでCC−CV充電し、60℃、30日間の条件で高温保存試験を行った。電池を十分に冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、保存試験前後の体積変化から発生ガス量を求め、これを「60℃保存ガス量」とした。
【0566】
下記表12に、比較例11−1の値で規格化した、各実施例及び比較例の60℃保存ガス量を示す。
【0567】
【表12】
【0568】
表12から明らかなように、一般式(A)で表される化合物を用いた場合、60℃保存ガス量が抑制される。
【0569】
<実施例12−1〜12−2、比較例12−1〜12−2>
[非水系電解液の調製]
基準電解液1に対して、下記表13に記載の割合で各化合物を加えて非水系電解液を調製した。ただし、比較例12−1は基準電解液1そのものである。なお、表中の「添加量(wt%)」は、非水系電解液100重量%中の濃度である。
【0570】
[正極の作製]
実施例1と同様の正極を作製し使用した。
【0571】
[負極の作製]
実施例1と同様の負極を作製し使用した。
【0572】
[非水系電解液二次電池(コイン型)の製造]
正極導電体を兼ねるステンレス鋼製の缶体に上記正極を収容し、その上に上記非水系電解液を含浸させたポリプロピレン製のセパレータを介して上記負極を載置した。この缶体と負極導電体を兼ねる封口板とを、絶縁用のガスケットを介してかしめて密封し、非水系電解液二次電池(コイン型)を作製した。
【0573】
<非水系電解液二次電池の評価>
[初期コンディショニング]
25℃の恒温槽中、前記の非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で6時間定電流充電した後、0.2Cで3.0Vまで放電した。次に0.2Cで4.1Vまで電池のCC−CV充電(0.05Cカット)を行った。その後、0.2Cで3.0Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。さらに、0.2Cで4.4Vまで電池のCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、0.2Cで3.0Vまで放電し、初期放電容量を求めた。
【0574】
[高温保存特性の評価]
初期コンディショニング後の電池について再度、0.2Cで4.4VまでCC−CV充電(0.05Cカット)を行った後、85℃、24時間の条件で高温保存を行った。その後、25℃において0.2Cの定電流で3Vまで放電させ、高温保存試験後の残存容量を測定した。初期容量に対する保存試験後の残存放電容量の割合((保存試験後の残存放電容量/初期容量)×100)を求め、これを「高温保存容量残存率(%)」とした。
【0575】
下記表13に、比較例12−1の値で規格化した、各実施例及び比較例の「高温保存容量残存率(%)」を示す。
【0576】
【表13】
【0577】
表13から明らかなように、一般式(A)で表される化合物を用いた場合、高温保存容量残存率が改善される。また、一般式(A)で表される化合物と化合物29を併用することで特性はさらに改善されることが示されている。一方で、化合物29を単独で添加した場合(比較例12−2)、特性が低下することから併用による相乗効果が示されている。
【産業上の利用可能性】
【0578】
本発明の非水系電解液によれば、放電保存特性及び高温保存特性がバランスよく改善されるので、非水系電解液二次電池が用いられる電子機器等のあらゆる分野において好適に利用できる。また、非水系電解液を用いるリチウムイオンキャパシタ等の電解コンデンサにおいても好適に利用できる。
【0579】
本発明の非水系電解液及び非水系電解液二次電池の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。その用途の具体例としては、ラップトップコンピュータ、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンタ、携帯オーディオプレーヤー、小型ビデオカメラ、液晶テレビ、ハンディクリーナー、トランシーバ、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ等を挙げることができる。