(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ワーク搬送部の断面正多角形状の周面を構成する個々の面毎に、上記ワーク搬送部の回転軸方向に配列した複数のワーク固定部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の切断加工機。
上記外周切断刃が、回転軸にスペーサーを介して複数の外周切断刃が取り付けられたマルチ切断刃であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の切断加工機。
上記ワーク搬送部の外周面部に、上記外周切断刃の外周縁部が進入可能な溝が、上記ワーク搬送部の回転方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の切断加工機。
上記ワーク搬送部の断面正多角形状の周面のエッジ部に、ワーク不在時の上記弾性ベルトを支持し、上記弾性ベルトの上記ワーク搬送部の回転軸方向のずれを規制するベルト支持部が、上記弾性ベルト毎に形成され、上記ベルト支持部の高さが、上記ワーク固定時の上記ワークの高さより低くなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の切断加工機。
上記2以上のベルト受けが、更に、上記弾性ベルトが上記ワーク搬送部の外周面と近接する部分以外で、上記弾性ベルトの引張状態を支持し、かつ弾性ベルトの循環回動における上記弾性ベルトの移動方向を転換する第3及び第4のベルト受けを備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の切断加工機。
上記ベルト拡張機構が、上記第3及び第4のベルト受けの間で、上記環状の弾性ベルトを、環の外側に引っ張って又は環の内側に押し入れて張力を与えるように構成されていることを特徴とする請求項8記載の切断加工機。
更に、上記ワーク搬送部の外周面上へ上記ワークを導入する部分に、上記ワーク固定部へのワークの導入位置にワークを位置合わせするためのガイドを備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の切断加工機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
焼結磁石を治具に固定して切断する方法では、治具に固定された焼結磁石を切断加工機に設置して切断し、焼結磁石の切断後、焼結磁石を切断加工機から治具ごと取り出し、焼結磁石を固定した治具を新たに切断加工機に設置して切断することを繰り返す。切断加工機から取り出された治具にあっては、切断された焼結磁石を治具から取り外して、切断する焼結磁石を新たに固定することが必要である。しかし、焼結磁石を治具に固定する作業、特に、接着により固定する場合においては、切断中に焼結磁石が治具から外れて、焼結磁石、外周切断刃、加工機が損傷することを避けるため、人手で接着し、固定が確実であるかを確認する必要がある。このような手順を必要とするため自動化が難しく、省人化、省エネルギー化された焼結磁石の固定及び切断の方法が求められていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、治具への焼結磁石の固定と取り外し、及び切断加工機への治具の設置と取り出しを必要としない、生産性の高い切断加工機及び切断加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、以下の焼結磁石の切断加工機を提供する。本発明の切断加工機は、以下の構成要素を備える。
(1)水平方向に回転軸を有し、回転軸に直交する断面が、略正多角形状(但し、多角形は3〜180角形)である筒状又は柱状のワーク搬送部。このワーク搬送部の外周面部には、ワーク搬送部の回転方向に沿って配列し、ワーク搬送部の断面正多角形状の周面を構成する個々の面毎に形成されたワーク固定部を有する。
(2)ワーク搬送部の外周面の一部に沿って近接して配設され、ワーク搬送部の外周面に、焼結磁石であるワークを押圧してワークを固定しつつ、ワーク搬送部の回転と同期して、ワーク搬送部の回転に対して逆回転して循環回動する環状の複数の弾性ベルト。この複数の弾性ベルトは、ワーク固定部に固定された各々のワークが2以上の弾性ベルトで固定され、かつ隣接する弾性ベルトの間が、各々所定の間隙を有するように配設される。
(3)弾性ベルトに張力を与えるベルト拡張機構。
(4)弾性ベルトの引張状態を支持し、かつ弾性ベルトの循環回動における弾性ベルトの移動方向を転換する2以上のベルト受け。この2以上のベルト受けは、ワーク搬送部の回転軸の高さより上側、好ましくはワーク搬送部の上端からワーク搬送部の回転方向前方側の範囲の外周面に近接して設けられた第1のベルト受けと、ワーク搬送部の回転軸の高さより下側、好ましくはワーク搬送部の下端からワーク搬送部の回転方向後方側の範囲の外周面に近接して設けられた第2のベルト受けとを含む。
(5)水平方向に回転軸を有し、外周縁部がワーク搬送部の外周面近傍に移動可能に配設された外周切断刃。
【0009】
本発明の切断加工機は、第1のベルト受けに対してワーク搬送部の回転方向後方側の近傍からワーク搬送部の外周面上に導入されたワークが、ワーク搬送部の回転と共に、第1のベルト受けと第2のベルト受けとの間で弾性ベルトによりワーク固定部に固定され、ワークが、ワーク搬送部の回転と共に移動して、ワークが、ワークを固定する2以上の弾性ベルト間の間隙からワーク搬送部の外周面近傍に向かって挿入された外周切断刃によって切断され、分割されたワークが、ワーク搬送部の回転と共に更に移動して、分割されたワークが解放されて、第2のベルト受けに対してワーク搬送部の回転方向前方側の近傍から排出されるように構成される。
【0010】
また、本発明者らは、上記課題を解決するため、切断加工機を用いた焼結磁石の切断加工方法を提供する。本発明の切断加工方法では、第1のベルト受けに対してワーク搬送部の回転方向後方側の近傍からワーク搬送部の外周面上にワークを導入して、ワーク搬送部の回転と共に、第1のベルト受けと第2のベルト受けとの間で上記弾性ベルトによりワーク固定部に固定し、ワークを、ワーク搬送部の回転と共に移動させて、ワークを、ワークを固定する2以上の弾性ベルト間の間隙からワーク搬送部の外周面近傍に向かって外周切断刃を挿入して切断し、分割されたワークを、ワーク搬送部の回転と共に更に移動させて、分割されたワークを解放して、第2のベルト受けに対してワーク搬送部の回転方向前方側の近傍から排出する。
【0011】
本発明の切断加工機及び切断加工方法では、焼結磁石であるワークを固定した後、外周切断刃で切断し、切断後の分割されたワークの固定を解除して、排出するという一連の工程を、自動で行うことができるようになっている。従って、本発明の切断加工機及び切断加工方法では、ワーク搬送部の外周面上に連続して導入されたワークが、ワーク搬送部(ワーク固定部)と弾性ベルトとの間に挟持されて固定され、固定されたワークが、その進行方向前方に設けられた外周切断刃によって切断され、分割されたワークが、その固定が解かれて排出されるという工程が、ワーク搬送部の回転と共に、一連の流れで進行するようになっており、従来行われていた、治具への焼結磁石の固定と取り外し、及び切断加工機への治具の設置と取り出しの必要がなく、切断加工機の待機時間を減らして、焼結磁石の確実な固定、精度よい切断を連続的に、生産性よく実施することができる。
【0012】
本発明の切断加工機には、外周切断刃によるワークの切断部に冷却液を供給するためのノズルを設けることができ、ノズルを設けることにより、切断部の確実な冷却が可能となる。
【0013】
ワーク搬送部には、その断面正多角形状の周面を構成する個々の面毎に、ワーク搬送部の回転軸方向に配列した複数のワーク固定部を有するようにすることができ、このようにすれば、ワーク搬送部の回転軸方向に対して、一度に複数のワークの配列が可能となる。更に、外周切断刃を、回転軸にスペーサーを介して複数の外周切断刃が取り付けられたマルチ切断刃とすることにより、1つのワークを一度に2つ又は3つ以上に分割することができ、また、ワーク搬送部の回転軸方向に配列した複数のワークを一度に、各々、2つ又は3つ以上に分割することもできる。
【0014】
ワーク搬送部の外周面部には、ワーク搬送部の回転方向に沿って、外周切断刃の外周縁部が進入可能な溝を形成することができ、これにより、ワークの底面までの確実な切断と、外周切断刃のワーク搬送部との接触を回避することができる。また、ワーク固定部には、そのワーク搬送部の回転軸方向両端側に向けて溝を形成することができ、これにより、ワークとワーク固定部との接触部分及びその近傍において、冷却液(加工液)や、切断により発生した切削屑(スラッジ)を、効率よく排出することができる。
【0015】
ワーク搬送部には、その断面正多角形状の周面のエッジ部に、ワーク不在時の弾性ベルトを支持し、弾性ベルトのワーク搬送部の回転軸方向のずれを規制するベルト支持部を設けることができる。ベルト支持部は、通常、弾性ベルト毎に形成される。このベルト支持部は、例えば、ワーク搬送部の断面正多角形状の周面のエッジ部からワーク搬送部の回転軸に直交する方向に、ワーク搬送部のエッジ部から立設させることができる。このようにすることで、例えば、切断作業開始時に、最初のワークが固定されたときや、切断作業終了時に、最後のワークが解放されるときなど、一部又は全部のワーク固定位置がワークで占められていないときに、弾性ベルトがワーク搬送部の複数のベルト支持部で接触して支持されることから、弾性ベルトを、ワーク搬送部の回転に同期して確実に循環回動させることができ、また、ワークが導入されるときの弾性ベルトのたるみを抑えて、ワークを確実に固定することができる。更に、ベルト支持部の高さが、ワーク固定時のワークの高さより低くなるように形成すれば、ワークが導入されて、ワークが、ワーク搬送部の回転方向に沿ってワーク搬送部のワーク固定部に順次固定されると、ワークとワークの間のベルト支持部には弾性ベルトが接触しなくなる一方、弾性ベルトが、ワーク搬送部の回転方向に配列したワークを架橋するようにワークに接触するようになるので、弾性ベルトの押圧力をワークのみに集中させて、確実に固定することができる。
【0016】
本発明の上記2以上のベルト受けには、更に、弾性ベルトのワーク搬送部の外周面と近接する部分以外で、弾性ベルトの引張状態を支持し、かつ循環回動における弾性ベルトの移動方向を転換する第3及び第4のベルト受けを設けることができ、第3及び第4のベルト受けにより、ベルト拡張機構が、弾性ベルトを、第3及び第4のベルト受けの間で、弾性ベルトを拡張するように、例えば、環状の弾性ベルトを、環の外側に引っ張って又は環の内側に押し入れて張力を与えるようにすれば、弾性ベルトに、より強力に張力を与えることができ、ワークに押圧力を与える弾性ベルトの引張状態を、安定して確立することができる。
【0017】
本発明の切断加工機には、ワーク搬送部の外周面上へ、人の手によりワークを導入することができるが、ワークが導入される部分に近接して、ワークを搬送する導入側コンベアを設けることができる。更に、ワーク搬送部の外周面上へワークを導入する部分に、ワーク固定部へのワークの導入位置に、ワークを位置合わせ(位置決め)するためのガイドを設けることにより、ワーク固定部へのワークの導入において、ワークの導入姿勢と導入位置を、容易かつ確実に所定の状態に合わせることができる。
【0018】
一方、本発明の切断加工機には、ワーク固定部から分割されたワークが排出される部分に近接して、分割されたワークを搬送する搬出側コンベアを設けることができ、これにより、切断されたワークの連続排出が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、治具への焼結磁石の固定と取り外し、及び切断加工機への治具の設置と取り出しを実施することなく、高い生産性で焼結磁石を、連続的に精度良く切断加工することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明の切断加工機の一例(実施例)を示す側面図であり、この切断加工機は、ワーク搬送部1と、弾性ベルト2と、ベルト拡張機構3と、第1のベルト受け41と、第2のベルト受け42と、外周切断刃5とを備える。なお、
図1中、10は、切断加工機の架台及びカバーを示している。
【0022】
ワーク搬送部1は、水平方向に回転軸1aを有し、回転軸1aに直交する断面が、略正多角形状である筒状又は柱状の回転ドラムである。ワーク搬送部1の多角形は、3以上、特に6以上、とりわけ12以上、180以下、特に60以下の多角形であり、
図1中では正24角形の柱状の回転ドラムを示している。ワーク搬送部1には、その多角形状の角数(
図1の場合は24角)に対応する数の面(
図1の場合は24面)で構成された外周面が存在する。
図2は、
図1に示されるワーク搬送部1の部分側面図であり、このワーク搬送部1の外周面部には、ワーク搬送部1の断面正多角形状(
図1の場合は断面正24角形状)の周面を構成する個々の面11毎に、ワーク搬送部1の回転方向に沿って配列して形成されたワーク固定部111を有している。ワーク固定部111は、面11毎に1つずつ形成されていても、2つ以上ずつ形成されていてもよい。例えば、ワーク搬送部1の断面正多角形状の周面を構成する個々の面11毎に、ワーク搬送部1の回転軸方向に配列した複数(例えば、2〜50)のワーク固定部111を形成してもよく、
図2の場合は、ワーク搬送部1の回転軸方向にワーク固定部111が2つ配列している。従って、
図2に示されるワーク搬送部1は、24つのワーク固定部111が、ワーク搬送部1の回転軸方向に配列しており、この列が2列存在するので、合計48のワーク固定部111を有している。
【0023】
ワーク搬送部1には、ワーク搬送部1の外周面部、具体的には、ワーク固定部111内に、外周切断刃5の外周縁部が進入可能な溝12が、ワーク搬送部1の回転方向に沿って形成されており、この溝12によって、外周切断刃5がワーク搬送部1と接触せずに、ワークの底面(即ち、ワーク搬送部1に対向する面)までワークを確実に切断することができるようになっている。この溝12は、ワークの切断位置と切断数に応じて形成される。例えば、
図2に示されるワーク搬送部1では、1つのワークに対して、ワーク固定部111内で1カ所切断して、2つに分割するようになっており、ワーク搬送部1の回転軸方向に配列した2つのワーク固定部111毎に1本、合計2本の溝12が形成されている。
【0024】
また、ワーク搬送部1には、
図2に示されるように、ワーク搬送部1の外周面部、具体的には、ワーク固定部111内に、ワーク搬送部1の回転軸方向両端側に向けて、溝13を形成してもよい。この回転軸方向両端側に向けて形成された溝13により、ワークとワーク固定部111との接触部分及びその近傍において、冷却液や、切断により発生した切削屑を、効率よく排出することができる。
図2に示されるワーク搬送部1の場合、溝13は、ワーク固定部111内に、ワーク固定部111毎に3本ずつ、回転軸方向に沿って形成されている。なお、ワーク搬送部1の回転軸方向に配列したワーク固定部111の列の間にも溝14を形成してもよい。この溝14は、ワークとワーク搬送部1とが接触した状態で、回転軸方向両端側に向けて形成された溝13から、冷却水や切削屑を外へ排出するための開口部として機能する。なお、この溝14には、切断に関与しない外周切断刃の外周縁部が進入するようにしてもよい。
図2に示されるワーク搬送部1の場合、溝14は、ワーク搬送部1の回転方向に配列したワーク固定部111の列の間に、ワーク搬送部1の回転方向に沿って、隣接するワーク固定部111間の各々に形成されており、この場合、2つのワーク固定部111間に1本の溝14が形成されている。
【0025】
更に、ワーク搬送部1には、
図2に示されるように、ワーク搬送部1の断面正多角形状の周面のエッジ部(角部)、即ち、断面正多角形状の周面を構成する個々の面11と面11との接線部(
図1の場合は24箇所存在)に、ワーク不在時の弾性ベルト2を支持し、弾性ベルト2のワーク搬送部1の回転軸方向のずれを規制するベルト支持部15が設けられている。このベルト支持部15は、例えば、
図2に示されるように、ワーク搬送部1の断面正多角形状の周面のエッジ部からワーク搬送部1の回転軸に直交する方向に、ワーク搬送部1のエッジ部から立設させることができる。この場合、各々のベルト支持部15では、ワーク搬送部1の回転軸から離間する側の端部のワーク搬送部1の回転軸方向両端部が、角状に突出しており、この2つの角151、151で、弾性ベルト2のワーク搬送部1の回転軸方向に対するずれを規制するようになっている。なお、このベルト支持部15は、ワークがワーク固定部111内に存在しているが、弾性ベルト2で固定される前の状態においては、ワーク搬送部1の回転方向前方又は後方へのワークの移動(落下)を規制する役割も担っている。
【0026】
ベルト支持部15は、通常、弾性ベルト2毎に形成される。
図2に示されるワーク搬送部1の場合、1つのワークを2本の弾性ベルト2で固定するように構成されており、ワーク固定部111毎に2つのベルト支持部15が、ワーク固定部111のワーク搬送部1の回転方向前方側(又は後方側)に2つずつ形成され、ワーク搬送部1の回転方向に沿って配列して形成された24つのワーク固定部111に対して48個のベルト支持部15が形成され、更に、ワーク固定部111は、ワーク搬送部1の回転軸方向に配列しており、この列が2列存在するので、ワーク搬送部1全体で、96のベルト支持部15が形成されている。また、ベルト支持部15の高さは、ワーク固定時のワークの高さより低くなるように形成されている。
【0027】
弾性ベルト2は、環状のベルトであり、
図1に示されるように、ワーク搬送部1の外周面の一部に沿って近接して配設され、ワーク搬送部1の外周面に、焼結磁石であるワークを押圧してワークを固定しつつ、ワーク搬送部1の回転と同期して、ワーク搬送部1の回転に対して逆回転して循環回動する。
図1に示される切断加工機の場合、弾性ベルト2は、ワーク搬送部1の回転においてワーク搬送部1の外周面が上から下に移動する側(図中左側)の外周面に沿って配設されており、後述する第1のベルト受け41と第2のベルト受け42との間で、ワーク搬送部1の外周面に近接するように設けられている。そして、
図1に示される切断加工機の場合、ワーク搬送部1の回転(
図1の場合は、反時計回り)に対して、逆回転(
図2の場合は、時計回り)に循環回動するようになっている。
【0028】
図3は、
図1に示されるワーク搬送部1に弾性ベルト2が近接した状態の部分側面図であり、弾性ベルト2は、
図1及び
図3に示されるように、ワーク不在時には、ワーク搬送部1の回転方向に沿って配列したベルト支持部15を架橋するように設けられている。本発明の切断加工機では、ワーク固定部111に固定された各々のワークが2以上の弾性ベルト2で固定されるように構成される。従って、弾性ベルト2は複数(2本以上)設けられる。
図3に示されるワーク搬送部1の場合、1つのワークを2本の弾性ベルト2a、2bで固定するように構成されており、ワーク搬送部1の回転方向に沿って配列して形成されたワーク固定部111に対して2本の弾性ベルト2a、2bがワーク搬送部1に近接して設けられ、更に、ワーク固定部111は、ワーク搬送部1の回転軸方向に配列しており、この列が2列存在するので、ワーク搬送部1全体で、4本の弾性ベルト2が設けられている。なお、
図1では、図面の複雑化を避けるため、弾性ベルト2は1本のみ図示されている。
【0029】
1つのワークの固定のために設けられる複数の弾性ベルト2は、外周切断刃5の外周縁部を挿入したとき、後述する外周切断刃5の外周縁部(砥石刃部)5aが、弾性ベルト2に接触することなくワークを切断できるように、隣接する弾性ベルト2の間が、各々所定の間隙を有するように配設される。従って、この弾性ベルト2の間の間隙の位置は、
図2及び
図3に示されるように、ワーク搬送部1に形成された外周切断刃5の外周縁部(砥石刃部)5aが進入可能な溝12に対応する位置に設けられる。
【0030】
本発明の切断加工機においては、2以上のベルト受けが設けられている。このベルト受けは、弾性ベルト2の引張状態を支持し、かつ弾性ベルト2の循環回動における弾性ベルト2の移動方向を転換する。ベルト受けは、断面円形の柱形状、筒形状又は盤状が好適であり、その外周面と弾性ベルト2を接触させ、ベルト受けの回転と共に、弾性ベルト2の移動方向を転換するように構成することが好ましい。
【0031】
本発明の切断加工機においては、ワーク搬送部1の回転軸の高さより上側の外周面に近接して第1のベルト受けを、ワーク搬送部1の回転軸の高さより下側の外周面に近接して第2のベルト受けを設けることができる。例えば、
図1に示される切断加工機においては、ワーク搬送部1の回転軸の高さより上側、かつワーク搬送部1の上端からワーク搬送部1の回転方向前方側の範囲の外周面に近接して第1のベルト受け41が設けられ、ワーク搬送部1の回転軸の高さより下側、かつワーク搬送部1の下端からワーク搬送部1の回転方向後方側の範囲の外周面に近接して第2のベルト受け42が設けられている。弾性ベルト2をワーク搬送部1の外周面に近接させ、後述するベルト拡張機構3により弾性ベルト2に張力が与えられた状態で、第1のベルト受け41と第2のベルト受け42とにより、弾性ベルト2の引張状態を支持し、かつ弾性ベルト2の循環回動における弾性ベルト2の移動方向を転換すること、具体的には、第1のベルト受け41においては、ワーク搬送部1の外周面から離間する側(
図1においては、左方向)から、ワーク搬送部1の外周面に沿った方向に弾性ベルト2の移動方向を転換し、第2のベルト受け42においては、ワーク搬送部1の外周面に沿った方向から、ワーク搬送部1の外周面から離間する側(
図1においては、左方向)に弾性ベルト2の移動方向を転換することにより、ワーク搬送部1の近傍において、弾性ベルト2をワーク搬送部1の外周面側に移動させる力が生じ、この力が、弾性ベルト2がワークを押圧する力となって、ワークを、弾性ベルト2とワーク搬送部1との間で挟持して固定することができるようになっている。
図4は、
図1に示される切断加工機において、第1のベルト受け41に弾性ベルト2が支持されている状態を示す側面図であり、この場合、4本の弾性ベルト2が、第1のベルト受け41で支持されている。また、図示はしていないが、4本の弾性ベルト2は、同様に、第2のベルト受け42でも支持されている。なお、
図4に示される第1のベルト受け41には、弾性ベルト2のワーク搬送部1の回転軸方向のずれを規制するように、リング状のガイド41a、41bが、弾性ベルト2毎に2つずつ設けられており、これらガイド41a、41bの間で、弾性ベルト2が、第1のベルト受け41の外周面に接触するようになっている。
図1に示される切断加工機の場合、第2のベルト受け42にも同様にガイドが設けられている。リング状のガイドは、第1及び第2のベルト受け以外の後述するベルト受けにも設けることができる。
【0032】
一方、ベルト拡張機構3は、弾性ベルト2に張力を与える。このベルト拡張機構3は、弾性ベルト2に、上述したように、弾性ベルト2をワーク搬送部1の外周面側に移動させる力を与えるように、弾性ベルト2を拡張できるものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、
図1及び
図5に示されるように、弾性ベルト2のワーク搬送部1の外周面と近接する部分以外で、弾性ベルト2の引張状態を支持し、かつ弾性ベルト2の循環回動における弾性ベルト2の移動方向を転換する第3及び第4のベルト受け43、44を設け、ベルト拡張機構3が、第3及び第4のベルト受け43、44の間で、環状の弾性ベルト2を、環の外側に引っ張って又は環の内側に押し入れて張力を与えるようにすることができる。この場合、第3及び第4のベルト受け43、44は、滑車となっている。また、ベルト拡張機構3の先端部(下端部)も滑車3aとなっており、ベルト拡張機構3の滑車3aも、弾性ベルト2の引張状態を支持し、かつ弾性ベルト2の循環回動における弾性ベルト2の移動方向を転換する。この滑車3aも、その外周面と弾性ベルト2を接触させ、滑車の回転と共に、弾性ベルト2の移動方向を転換するように構成することができる。
【0033】
本発明の切断加工機においては、上述した第1〜第4のベルト受け41、42、43、44以外の他のベルト受けを設けてもよい。例えば、
図1中、45は、第5のベルト受け45であり、この場合、第5のベルト受け45は、ワーク搬送部1から離間して、ベルト拡張機構3と第3及び第4のベルト受け43、44とが設けられている位置より更に遠方の位置に設けられている。他のベルト受けは、上述したベルト拡張機構3の設置位置に応じて、また、切断加工機内での空間の確保などの目的で、適宜設けることができる。
【0034】
第1及び第2のベルト受け41、42及び上記他のベルト受けは、
図4に示されるように、1つのベルト受けで、全ての弾性ベルト2を支持するようにしてもよいが、一部又は全部のベルト受けにおいて、弾性ベルト2毎に独立して設けること、例えば、弾性ベルト2毎に独立した動きができるようにすることもできる。具体的には、
図6に示されるように、各々の弾性ベルト2に対して、個々に滑車を設けて、複数の滑車411が集合したベルト受けを構成してもよい。
図6は、
図1に示される切断加工機において、第1のベルト受け41に弾性ベルト2が支持されている状態の他の例を示す側面図であり、この場合、4本の弾性ベルト2が、4個の滑車411で各々支持されている。なお、
図6に示されるベルト受けには、弾性ベルト2のワーク搬送部1の回転軸方向のずれを規制するように、リング状のガイド41a、41bが、滑車411毎(弾性ベルト2毎)に2つずつ設けられており、これらガイド41a、41bの間で、弾性ベルト2が、滑車411の外周面に接触するようになっている。
【0035】
外周切断刃5は、水平方向に回転軸を有し、外周縁部が、ワーク搬送部1の外周面近傍に移動可能、具体的には、第1のベルト受け41と第2のベルト受け42との間で、ワーク搬送部1の外周面近傍に移動可能に配設されている。この外周切断刃5がワーク搬送部1の外周面に近接する位置は、切削屑を効率よく外周切断刃周辺から排除できる第1のベルト受け41と第2のベルト受け42との間の中間付近が好適である。外周切断刃は、外周切断刃を移動又は固定させる機構を適宜設けて、切断位置に移動又は固定させればよい。また、外周切断刃5は、ワークを固定している弾性ベルト2間の間隙に挿入でき、かつワーク搬送部1のワーク固定部111に設けられた溝12に外周切断刃5の外周縁部が進入できる位置に配設される。
【0036】
外周切断刃5は、ワーク搬送部1の回転方向に沿って配列したワークが一列で、切断箇所が1つの場合は、単刃でもよいが、切断箇所が2つ以上の場合や、ワーク搬送部1の回転軸方向にワークが複数配列している場合は、外周切断刃5が、回転軸にスペーサーを介して複数の外周切断刃5が取り付けられたマルチ切断刃であることが好適である。マルチ切断刃における外周切断刃5の枚数は、切断態様に応じて、2枚以上で適宜設定することができる。これにより、ワーク搬送部1の回転に対して、一つのワークを一度に多数(2以上)の箇所で切断することや、多数のワークを一度に切断することができる。
図7は、
図1に示される切断加工機のマルチ切断刃を示す断面図である。このマルチ切断刃は、回転軸51にスペーサー511を介して複数の外周切断刃5が取り付けられている。外周切断刃5の外周縁部には、砥石刃部5aが設けられており、回転する外周切断刃5の砥石刃部5aがワークを徐々に切削して、ワークを切断するようになっている。
図1に示される切断加工機の場合、外周切断刃5は、1つのワークに対して、1箇所切断して、2つに分割するように構成されており、ワーク搬送部1の回転軸方向に配列した2つのワーク毎に1枚、計2枚の外周切断刃5が取り付けられている。そして、2枚の外周切断刃5の間に1枚のスペーサー511が取り付けられ、回転軸51の両端部が、各々、エンドキャップ512で固定されている。
【0037】
外周切断刃5の近傍、特に、外周切断刃5の外周縁部の近傍には、外周切断刃5によるワークの切断部に冷却液を供給するためのノズルを設けることが好適である。ノズルを設けることにより、切断部を効率的、かつ確実に冷却することができる。例えば、
図1に示される切断加工機のように、外周切断刃5の上部に、冷却液を外周切断刃5の外周縁部に向けて吐出するノズル52を設けることで、ノズル52から噴出した冷却液は、外周切断刃5の回転により外周切断刃5に同伴されて、ワークの切断部に到達するようにすることができる。
【0038】
本発明の切断加工機には、人手によりワークを導入することも可能であるが、ワーク搬送部1の外周面上へワークが導入される部分に近接して、ワークを搬送する導入側コンベアを設けてもよい。
図1に示される切断加工機では、ワーク搬送部1の外周面上へワークが導入される部分に近接して、ワークを搬送する導入側コンベア6が設けられており、ワークは、導入側コンベア6の一端側から、導入側コンベア6の他端側、即ち、ワークがワーク搬送部1の外周面上へワークが導入される部分の近傍に搬送される。導入側コンベア6からワーク搬送部1の外周面上へは、ワークを自重により落下させて導入することができる。また、ワーク搬送部1の外周面と導入側コンベア6の他端側の近傍に、ワークを導入側コンベア6からワーク搬送部1の外周面上へ受け渡す移載機構を設けてもよい。
【0039】
また、本発明の切断加工機には、ワーク搬送部1の外周面上へワークを導入する部分に、ワーク固定部111へのワークの導入位置にワークを位置合わせするためのガイドを設けることも好適である。また、このガイドは、ワーク搬送部1の回転に伴って、ワークをセンタリングでき得る構造であることも好適である。
図1に示される切断加工機では、ワーク搬送部1の外周面上へワークを導入する部分の上方に、ワーク固定部111へのワークの導入位置及びワークのサイズに対応して2つの穴61aが設けられたガイド61が設けられている。なお、ガイド61の具体例は、
図8にも示されている。
【0040】
本発明の切断加工機では、分割されたワーク(分割焼結磁石)を、自然落下させて回収しても、また、人手により順次回収してもよいが、ワーク固定部から分割されたワークが排出される部分に近接して、分割されたワークを搬送する搬出側コンベアを設けてもよい。また、搬出側コンベアを設ける場合、ワーク搬送部1の外周面から解放されたワークが搬出側コンベアに移動する際に、その移動をガイドするスロープを設けることが好適である。
図1に示される切断加工機では、ワーク固定部111から分割されたワークが排出される部分に近接して、分割されたワークを搬送する搬出側コンベア7が設けられており、分割されたワークは、搬出側コンベア7の一端側、即ち、分割されたワークがワーク固定部111から排出される部分の近傍から、搬出側コンベア7の他端側に搬送される。また、分割されたワークがワーク固定部111から排出される部分と、搬出側コンベア7との間を連絡するように、板状のスロープ71が、ワーク搬送部1の外周面に近接して設けられており、分割されたワークは、このスロープ71上を滑り下りて、搬出側コンベア7の一端側に到達するようになっている。
【0041】
次に、本発明の切断加工機を用いて、焼結磁石であるワークを切断する動作について、図面を参照して説明する。
【0042】
図8は、
図1に示される切断加工機のワーク搬送部1を上方から見た部分平面図であり、ワークWが、ワーク搬送部1のワーク固定部111に導入される様子を示している。ワークWは、通常、直方体形状のものが好適な対象であり、特に板状のものが好ましい。ワークWの厚さは、通常0.1mm以上、特に1mm以上で、30mm以下、特に10mm以下が好適である。ワークの厚さが、ワークが、ワーク搬送部のワーク固定部上で弾性ベルトにより固定されているときの弾性ベルトと、ワーク搬送部との距離に相当する。まず、導入側コンベア6のワーク搬送部1側に搬送されたワークWは、ガイド61の穴61aを通過して、ワーク搬送部1のワーク固定部111に導入される。
【0043】
図9は、
図1に示される切断加工機において、ワーク搬送部1の上部のワーク固定部111に導入されたワークWが、ワーク搬送部1のワーク固定部111上で弾性ベルト2により固定されて移動し、外周切断刃5により切断されて、ワーク搬送部1の下方から排出される様子を示す側面図である。第1のベルト受け41に対してワーク搬送部1の回転方向後方側の近傍からワーク搬送部1の外周面上(ワーク固定部111)に導入されたワークWは、ワーク搬送部1の回転(なお、ワーク搬送部1の回転は、連続的であっても、間欠的であってもよい)と共に移動し、ワークWは、第1のベルト受け41の下方を通過した後、第1のベルト受け41と第2のベルト受け42との間で、弾性ベルト2の押圧力によって、ワーク搬送部1と弾性ベルト2との間に挟持されて、固定される。この場合、ワーク搬送部1のベルト支持部15の高さは、ワークWの高さより低く設定されているので、ワーク搬送部1の回転方向に隣接するワークWの双方が、弾性ベルト2と面接触した状態となったときには、弾性ベルト2が、ワーク搬送部1の回転方向に隣接するワークW間のベルト支持部15から離脱しており、これにより、ワークWが、ワーク固定部111上に強固に固定される。ワークWを固定している弾性ベルト2は、直方体形状のワークWであれば、ワークWのワーク搬送部1の回転方向前方側及び後方側のエッジにおいて屈折することになる。この屈折の角度(真っ直ぐなベルトの角度を0°としたとき、これに対して、屈折したベルトがなす角度)を1°以上、特に3°以上で、60°以下、特に30°以下とすることが好ましく、このようにすることで、特に強固な固定が達成される。
【0044】
次に、ワーク搬送部1と弾性ベルト2との間に固定されたワークWは、ワーク搬送部1の回転と共に移動して下降し、第1のベルト受け41と第2のベルト受け42との間の中間付近で、ワークWを固定する隣接する弾性ベルト2の間の間隙からワーク搬送部1の外周面近傍に向かって挿入された外周切断刃5、具体的には、ワーク搬送部1の外周面部(ワーク固定部111内)に形成された溝12に進入した外周切断刃5の外周縁部(砥石刃部)5aに当接し、ワークWは、更に、ワーク搬送部1の回転と共に移動して下降すると同時に、ワークWが固定された状態で切断される。そして、ワークWは、回転する外周切断刃5によってワークW1つ当たり2つに、即ち、ワーク搬送部1の回転軸方向に配列した2つのワークWで合計4つに分割される。
図10は、
図1に示される切断加工機における切断の様子を示す図であり、ワーク搬送部1、弾性ベルト2及び外周切断刃5の部分側面図である。
【0045】
次に、ワーク搬送部1と弾性ベルト2との間に固定された分割されたワーク(分割片)Dは、ワーク搬送部1の回転と共に更に移動して、弾性ベルト2が、第2のベルト受け42の近傍で分割されたワークDから離脱し、分割されたワークDは弾性ベルト2による固定から解放されて、第2のベルト受け42に対してワーク搬送部1の回転方向前方側の近傍から排出される。そして、排出された分割されたワークDは、ワーク搬送部1の外周面(ワーク固定部111)から離脱(落下)してスロープ71上に移動し、スロープ71上を、自重で移動し、搬出側コンベア7に到達する。その後、搬出側コンベア7の一端側から、順次、搬出側コンベア7の他端側に搬送される。
【0046】
このように、本発明の切断加工機及び切断加工方法では、ワーク搬送部の外周面上に導入されたワークが、ワーク搬送部(ワーク固定部)と弾性ベルトとの間に挟持されて固定され、固定されたワークが、その進行方向前方に設けられた外周切断刃によって切断され、分割されたワークが、その固定が解かれて排出されるという工程が、ワーク搬送部の回転と共に、一連の流れで連続的に進行するようになっている。上述したような本発明の切断加工機及び切断加工方法により、従来実施されていた、治具への焼結磁石の固定と取り外し、及び切断加工機への治具の設置と取り出しが不要となり、切断加工機の待機時間を減らして、高い生産性で焼結磁石を、精度良く切断加工することができる。