(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程では、エッチングや成膜等の処理が行われ、これらの処理には純水が使用される。使用後の純水は排水として排出される。また、半導体の製造工場には、スクラバー等の排ガス洗浄設備が設置される場合があり、この場合は、スクラバーからの排水も発生する。
【0003】
半導体の製造工場では、これらの排水が一箇所に集められ、水処理装置によって浄化処理が行われる。浄化された浄化水は、純水製造装置に供給されるか、スクラバー用水としてスクラバーに供給されるか、または外部に放流される。純水製造装置やスクラバーに供給された浄化水は、純水やスクラバー用水となって半導体工場において再利用される。
【0004】
半導体製造工程から排出される排水には、フッ素、アンモニア等が含まれる。また、スクラバーでは、スクラバー用水の一部が蒸発するため、スクラバー用水中の不純物成分が濃縮される。このような不純物成分として、例えばカルシウムが挙げられる。従って、半導体の製造工場の水処理装置には、これらの物質の除去能力が求められる。
【0005】
特許文献1には、フッ素を含有する排水の処理方法として、排水を透過水と濃縮水とに逆浸透膜分離する際に、アルカリ金属水酸化物を添加してpH8以上に調整したフッ化物含有排水を逆浸透膜に通水することによって逆浸透膜分離する処理方法が記載されている。また、特許文献1には、逆浸透膜分離後に、透過水に残留するアンモニア性窒素を除去する脱窒素工程を行うことが記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたフッ素を含有する排水の処理方法では、蒸発により使用水の濃縮が進むような設備からの排水を処理することまでは想定されていない。例えば、スクラバーからの排水は、使用水の一部が蒸発することでCaが濃縮されるが、Ca及びフッ素を含む排水は、CaF
2を析出させ、このCaF
2が逆浸透膜を目詰まりさせてしまうおそれがある。
【0007】
また、特許文献1に記載されたフッ素を含有する排水の処理方法では、逆浸透膜分離の際に排水のpHを8以上に調整するが、この際に、排水中のアンモニアがガス化して放出されるおそれがある。
【0008】
更に、特許文献1に記載された処理方法以外のフッ素を含有する排水の処理方法として、排水にCaを添加することにより、フッ素をCaF
2として凝集沈殿処理することが考えられる。しかし、この方法によって処理された処理水を純水製造装置やスクラバーにおいて再利用する場合は、処理水に含まれる高濃度のCaを除去する必要があり、例えば軟水器のようなCa除去設備が新たに必要になる。この場合の軟水器は、かなり大規模なものになることが想定され、処理コストが大幅に増大するおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、純水製造用の原水や設備用水等に利用可能な処理水を得るための、水処理装置及び水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] フッ素及びアンモニウムを含有する排水に対し、pHを9〜11の範囲に調整するとともに、スケール分散剤を添加する第1の前処理手段と、
前記第1の前処理手段の後段に設置され、前記排水を、一次透過水と一次濃縮水とに分離する第1の逆浸透膜と、
前記第1の逆浸透膜を透過した前記一次透過水に対し、pHを5〜9の範囲に調整するとともに、スライム抑制剤を添加する第2の前処理手段と、
前記第2の前処理手段の後段に設置され、前記一次透過水を、二次透過水と二次濃縮水とに分離する第2の逆浸透膜と、が備えられていることを特徴とする水処理装置。
[2] 前記一次濃縮水中のフッ素を除去するフッ素除去手段が更に備えられていることを特徴とする[1]に記載の水処理装置。
[3] 前記二次透過水をユースポイントに供給するために前記二次透過水を貯留する水槽と、
原水中の少なくともカルシウムを除去してCaフリー水を製造するカルシウム除去手段と、
前記二次透過水の水量が、前記ユースポイントの需要量を下回る場合に、前記カルシウム除去手段により製造される前記Caフリー水を、前記水槽に供給する制御部と、が更に備えられていることを特徴とする[1]または[2]に記載の水処理装置。
【0012】
[4] フッ素及びアンモニウムを含有する排水に対し、第1の前処理手段により、pHを9〜11の範囲に調整するとともにスケール分散剤を添加する第1の前処理工程と、
前記第1の前処理工程後の前記排水を、第1の逆浸透膜により、一次透過水と一次濃縮水とに分離する第1の逆浸透膜分離工程と、
前記第1の逆浸透
膜分離工程後の前記一次透過水に対し、第2の前処理手段により、pHを5〜9の範囲に調整するとともにスライム抑制剤を添加する第2の前処理工程と、
前記第2の前処理工程後の前記一次透過水を、第2の逆浸透膜により、二次透過水と二次濃縮水とに分離する第2の逆浸透膜分離工程と、を順次行うことを特徴とする水処理方法。
[5] フッ素除去手段により、前記一次濃縮水中のフッ素を除去するフッ素除去工程を更に行うことを特徴とする[4]に記載の水処理方法。
[6] 前記二次透過水の水量が、前記二次透過水のユースポイントの需要量を下回る場合に、
カルシウム除去手段により、原水中の少なくともカルシウムを除去してCaフリー水を製造し、
前記Caフリー水を、前記ユースポイントに供給する工程を更に行うことを特徴とする[4]または[5]に記載の水処理方法。
[7] 前記排水は、前記ユースポイントにおいて使用された使用水を含むものであることを特徴とする
[6]に記載の水処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水処理装置は、第1の前処理手段によってpH調整及びスケール分散剤が添加された排水を第1の逆浸透膜に流すことで、逆浸透膜に目詰まりを生じさせないままフッ素を除去することができる。また、第2の前処理手段によってpH調整及びスライム抑制剤が添加された一次透過水を第2の逆浸透膜に流すことで、アンモニウムを除去することができる。これにより、純水製造装置の原水や設備用水として利用可能な二次透過水を得ることができる。また、本発明の水処理装置では、排水からフッ素を除去する際にCaの添加が不要になるため、大規模な軟水器を設置する必要がない。更に、本発明の水処理装置では、pHを調整したのちに第2の逆浸透膜によってアンモニウムを除去するので、アンモニウムをアンモニアに気化させることなく、アンモニウムを除去できる。また、本発明の水処理装置によれば、活性汚泥法等の生物処理を行うことなく、有機物を含む排水であっても処理できる。
【0014】
また、本発明の水処理装置には、一次濃縮水中のフッ素を除去するフッ素除去手段が備えられており、フッ素除去手段は、排水に比べて水量が少ない一次濃縮水中のフッ素を除去すればよく、フッ素除去手段に求められる処理能力が比較的小さくなり、水処理装置を小型にできる。
【0015】
また、本発明の水処理装置は、二次透過水の水量がユースポイントの需要量を下回る場合に、カルシウム除去手段によって製造されたCaフリー水を二次透過水の水槽に供給する制御部が備えられており、二次透過水が需要量に対して不足した場合にCaフリー水を水処理装置内に補充することができる。これにより、水処理装置及びユースポイントによって水循環システムを構成する場合に、水循環システム内に流通する水のCa濃度が低く抑えられ、スケール発生が予防され、水処理装置の逆浸透膜の目詰まりやユースポイントにおけるスケール発生を防止できる。
【0016】
次に、本発明の水処理方法によれば、第1の前処理手段によってpH調整及びスケール分散剤が添加された排水を第1の逆浸透膜に流すことで、逆浸透膜に目詰まりを生じさせないままフッ素を除去することができる。また、第2の前処理手段によってpH調整及びスライム抑制剤が添加された一次透過水を第2の逆浸透膜に流すことで、アンモニウムを除去することができる。これにより、純水製造装置の原水や設備用水として利用可能な二次透過水を得ることができる。また、本発明の水処理方法では、排水からフッ素を除去する際にCaの添加が不要になるため、大規模な軟水器を設置する必要がない。更に、本発明の水処理方法では、pHを調整したのちに第2の逆浸透膜によってアンモニウムを除去するので、アンモニウムをアンモニアに気化させることなく、アンモニウムを除去できる。また、本発明の水処理方法によれば、活性汚泥法等の生物処理を行うことなく、有機物を含む排水であっても処理できる。
【0017】
また、本発明の水処理方法では、一次濃縮水中のフッ素を除去するフッ素除去工程が行われ、フッ素除去工程は、排水に比べて水量が少ない一次濃縮水中のフッ素を除去すればよく、フッ素除去に求められる処理能力が比較的小さくて済み、水処理に必要なエネルギーを少なくすることができる。
【0018】
また、本発明の水処理方法によれば、二次透過水の水量がユースポイントの需要量を下回る場合に、カルシウム除去手段によって製造されたCaフリー水を、ユースポイントに供給することで、二次透過水が需要量に対して不足した場合にCaフリー水を補充できる。これにより、水処理装置及びユースポイントによって構成される水循環システム内に流通する水のCa濃度が低く抑えられ、スケール発生が予防され、水処理装置の逆浸透膜の目詰まりやユースポイントにおけるスケール発生を防止できる。
【0019】
また、本発明の水処理方法によれば、排水が、ユースポイントにおいて使用された使用水を含むものであるので、水処理装置及びユースポイントによって構成される水循環システム内に流通する水のCa濃度が低く抑えられ、スケール発生が予防され、水処理装置の逆浸透膜の目詰まりやユースポイントにおけるスケール発生を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態の水処理装置及び水処理方法の処理対象である排水w1は、フッ素及びアンモニウムを含有する排水である。排水w1は、例えば、半導体の製造工程において、エッチングや成膜等の処理に使用された純水が含まれる。また、排水w1には、スクラバー等の排ガス洗浄設備から排出される排水も含まれ、本実施形態で後述するように、二次透過水w21を供給したユースポイント31の排水を含めてもよい。排水w1には、フッ素及びアンモニウムの他に、リン酸塩、過酸化水素、カルシウム及び有機物等が含まれる場合もある。例えば、フッ素は1〜100ppm程度、アンモニウムは10〜500ppm程度、過酸化水素は0〜300ppm程度、カルシウムは1ppm程度、有機物は全有機性炭素量として1〜100ppm程度含まれる場合がある。また、本明細書におけるアンモニウムとはアンモニウムイオンを意味するが、排水中にアンモニアの形態で存在する場合は、アンモニアもアンモニウムに含まれる。
【0023】
本実施形態では、このような排水w1を、
図1に示す水処理装置1によって処理する。以下、本実施形態の水処理装置1及び水処理方法について説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の水処理装置1は、第1の前処理手段2と、第1の逆浸透膜3と、第2の前処理手段4と、第2の逆浸透膜5とが備えられている。また、本実施形態の水処理装置1には、フッ素除去手段11が備えられている。更に、本実施形態の水処理装置1には、二次透過水を貯留する第1水槽6及び第2水槽7(水槽)と、カルシウム除去手段21と、カルシウム除去手段21に原水を送る原水供給部20と、制御部22とが備えられている。第1水槽6は別のユースポイント32に接続され、第2水槽7はユースポイント31に接続されている。更に、本実施形態の水処理装置1には、中和処理手段41が備えられている。更にまた、本実施形態の水処理装置1には、排水中の過酸化水素を除くための過酸化水素除去手段51が備えられている。ただし、排水w1中に過酸化水素が含有されない場合は、過酸化水素除去手段51は省略してもよい。
【0025】
また、本実施形態の水処理装置1には、各装置間に水を流すための水路が備えられている。すなわち、
図1に示すように、水路L1によって過酸化水素除去手段51と第1の逆浸透膜3とが接続され、水路L2によって第1の逆浸透膜3と第2の逆浸透膜5とが接続され、水路L3によって第2の逆浸透膜5と第1水槽6とが接続されている。
【0026】
また、水路L4によって第1の逆浸透膜3とフッ素除去手段11とが接続され、水路L5によってフッ素除去手段11と中和処理手段41とが接続され、水路L6によって第2の逆浸透膜5と中和処理手段41とが接続されている。
【0027】
更に、水路L7によって第1水槽6と第2水槽7とが接続され、水路L8によって原水供給部20とカルシウム除去手段21とが接続され、水路L9によってカルシウム除去手段21と第2水槽7とが接続され、水路L10によって第2水槽7とユースポイント31とが接続され、水路L11によって第1水槽6と別のユースポイント32とが接続されている。
【0028】
過酸化水素除去手段51は、過酸化水素が含まれる排水w1を処理する場合に用いられる。過酸化水素は殺菌性があり、かつそれ自体がCOD源となるため、直接公共用水域に排出することができず、過酸化水素の分解処理が必要となる。過酸化水素除去手段51としては、例えば、重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を添加する手段や、連続通水が可能な活性炭塔を例示できる。排水w1に過酸化水素が含まれる場合は、最初に、過酸化水素除去手段51によって過酸化水素を除去するとよい。
【0029】
第1の前処理手段2は、水路L1を流れる排水w1のpHを9〜11の範囲に調整するとともに、スケール分散剤Scを添加するものである。第1の前処理手段2として例えば、1次pH調整部2a及び1次薬剤注入部2bを備えたものを例示できる。1次pH調整部2aは、水酸化カリウム等によって排水w1のpHを9〜11の範囲に調整する。また、1次薬剤注入部2bは、pH調整後の排水w1にスケール分散剤Scを添加する。
【0030】
第1の逆浸透膜3は、pH調整及びスケール分散剤Scが添加された排水w1を、一次透過水w11と一次濃縮水w12に分離させる。排水w1は、第1の逆浸透膜3を通水することによって、フッ素が除去され、リン酸塩、カルシウム及び有機物も除去されて一次透過水w11とされる。除去されたフッ素等は一次濃縮水w12に含有される。第1の逆浸透膜3は、例えば、一次濃縮水w12中の全有機性炭素量が100mg/L未満になるように回収率が調整された状態で操業するとよい。
【0031】
第1の逆浸透膜3は、浸透膜(メンブレン)を何層にも重ねて海苔巻き状に巻き、容器に収めたスパイラル型モジュールを好適に使用できるが、これに限定されるものではない。また、第1の逆浸透膜3には、一次透過水w11を第2の逆浸透膜に送る水路L2と、一次濃縮水w12をフッ素除去手段11に送る水路L4とが接続されている。
【0032】
第1の逆浸透膜3によって、排水w1中のフッ素が一次濃縮水w12中に濃縮されるので、フッ素除去手段11の処理対象になる対象水の容積が低減する。これにより、フッ素除去手段11の規模を小さくすることが可能になり、また、フッ素除去手段11に求められる処理能力が軽減される。
【0033】
第2の前処理手段4は、水路L2を流れる一次透過水w11のpHを5〜9の範囲に調整するとともに、スライム抑制剤Slmを添加するものである。第2の前処理手段4として例えば、2次pH調整部4a及び2次薬剤注入部4bを備えたものを例示できる。2次pH調整部4aは、硫酸等によって一次透過水w11のpHを5〜9の範囲に調整する。また、2次薬剤注入部4bは、pH調整後の一次透過水w11にスライム抑制剤Slmを添加する。
【0034】
第2の逆浸透膜5は、pH調整及びスライム抑制剤Slmが添加された一次透過水w11を、二次透過水w21と二次濃縮水w22に分離させる。一次透過水w11は、第2の逆浸透膜5を通水することによって、アンモニウムが主に除去されて二次透過水w21とされる。除去されたアンモニウム等は二次濃縮水w22に含有される。第2の逆浸透膜5は、例えば、二次濃縮水w22中の全窒素量が排出基準以下になるように回収率が調整された状態で操業するとよい。
【0035】
第2の逆浸透膜5は、浸透膜(メンブレン)を何層にも重ねて海苔巻き状に巻き、容器に収めたスパイラル型モジュールを好適に使用できるが、これに限定されるものではない。また、第2の逆浸透膜5には、二次透過水w21を第1水槽6に送る水路L3と、二次濃縮水w22を中和処理手段41に送る水路L6とが接続されている。
【0036】
二次透過水w21中のCa量は1mg/L未満になることが好ましい。
【0037】
第1水槽6は、水路L3を介して第2の逆浸透膜5から送られた二次透過水w21を貯留するものである。第1水槽6には、二次透過水w21を別のユースポイント32に供給するための水路L11が接続されている。
【0038】
第2水槽7は、水路L7を介して第1水槽6から送られた二次透過水w21を貯留するものである。また、第2水槽7は、水路L9が接続されており、水路L9を介してカルシウム除去手段21から送られたCaフリー水w4も貯留できるようになっている。また、第2水槽7には、二次透過水w21、Caフリー水w4をユースポイント31に供給するための水路L10が接続されている。
【0039】
フッ素除去手段11は、一次濃縮水w12に含まれるフッ素を除去するためのものである。フッ素除去手段11としては例えば、一次濃縮水w12のpHを8以上に調整した上で、カルシウムを添加することによりフッ素をCaF
2とし、このCaF
2を凝集分離する設備を例示できる。また、フッ素除去手段11には、フッ素除去手段11によって処理された処理水w40を中和処理手段41に送る水路L5が接続されている。
【0040】
次に、原水供給部20、カルシウム除去手段21及び制御部22について説明する。
原水供給部20は、上水または工業用水からなる原水w3の供給源である。原水供給部20は、水路L8を介して、原水w3をカルシウム除去手段21に供給する。
【0041】
カルシウム除去手段21は、原水w3に含まれるカルシウムを除去してCaフリー水w4とする。カルシウム除去手段21として具体的には、逆浸透膜や脱イオン装置を用いることができる。また、カルシウム除去手段21には、Caフリー水w4を第2水槽7に送るための水路L9が接続されている。カルシウム除去手段21が逆浸透膜である場合は、透過水がCaフリー水w4として第2水槽7に送られ、濃縮水は水路L12を介して中和処理手段41送られる。カルシウム除去手段21が脱イオン装置の場合は、水路L12は不要になり、脱イオン処理後のCaフリー水w4が第2水槽7に送られる。
【0042】
カルシウム除去手段21は、Caフリー水w4中のCa量を1mg/L未満に低減できるものがよい。すなわち、Caフリー水w4は、Ca量が1mg/L未満に低減されたものをいう。
【0043】
制御部22は、二次透過水w21の供給量が、ユースポイント31の需要量を下回る場合に、カルシウム除去手段21により製造されるCaフリー水w4を、第2水槽7に供給させる。制御部22は、第2水槽7における貯水量を監視するとともに、ユースポイント31における水使用量を監視する。そして、これらの監視結果に基づいて、カルシウム除去手段21及び原水供給部20に指令を発して、Caフリー水w4を生産させ、これを第2水槽7に供給させる。
【0044】
制御部22として具体的には例えば、第2水槽7における貯水量及びユースポイント31における水使用量を受け入れるデータ入力部と、中央演算装置と、メモリ装置と、監視結果を原水供給部20及びカルシウム除去手段21に出力するデータ出力部と、表示部とを備えたコンピュータを用いることができる。メモリ装置には、制御部22を動作させるためのコンピュータプログラムが保持され、このコンピュータプログラムが中央演算装置によって実行されるようにしてもよい。また、第2水槽7、ユースポイント31、カルシウム除去手段21及び原水供給部20と制御部22とは、有線回線で接続されていてもよく、無線回線で接続されていてもよい。
【0045】
中和処理手段41は、フッ素除去手段11によって処理された処理水w40や、第2の逆浸透膜5から送られた二次濃縮水w22などを貯留し、この貯留水のpHを6〜8の中性に調整する設備である。中和処理手段41によって中和処理された処理水w41は、下水道または公共水域に放流できるようになっている。
【0046】
ユースポイント31は、二次透過水w21またはCaフリー水w4を設備用水として利用可能な設備若しくは施設である。このような設備の一例として半導体製造工程からの排ガス洗浄設備(以下単に「排ガス洗浄設備」と記す)やクーリングタワー等を例示できる。ユースポイント31において使用された二次透過水w21は、排水w1の一部として再び水処理装置1によって処理することが好ましい。このため、ユースポイント31から過酸化水素除去手段51の手前または第1の前処理手段2の手前にユースポイント31の排水を送るための水路を設けてもよい。
【0047】
別のユースポイント32は、二次透過水w21を利用する設備若しくは施設である。このようなユースポイント32として例えば、二次透過水w21を純水製造の原水として利用可能な純水製造装置を例示できる。
【0048】
本実施形態の水処理装置1は、二次透過水w21を主としてユースポイント31に供給する。二次透過水w21に余剰が生じた場合には、二次透過水w21を別のユースポイント32にも供給してもよい。このため、水処理装置1には、二次透過水w21またはCaフリー水w4の供給先を調整する供給制御部が備えられていてもよい。供給制御部は例えば、第1水槽6及び第2水槽7における貯水量を監視するとともに、各ユースポイント31、32における水使用量を監視し、これらの監視結果に基づいて、水路L10、L11における通水量を制御するものが好ましい。上記の制御部22に、この供給制御部の機能を持たせてもよい。
【0049】
次に、
図1を参照しつつ、本実施形態の水処理方法について説明する。本実施形態の水処理方法は、排水w1に対して第1の前処理工程を行い、その後、排水w1に対する第1の逆浸透膜分離工程、一次透過水w11に対する第2の前処理工程及び第2の逆浸透膜分離工程を順次行う。また、本実施形態の水処理方法は、一次濃縮水w12に対するフッ素除去工程を行ってもよい。更に、本実施形態の水処理方法は、二次透過水w21の水量が、二次透過水w21のユースポイント31における需要量を下回る場合に、Caフリー水w4をユースポイント31に供給する工程を行ってもよい。以下、各工程について説明する。
【0050】
まず、排水w1に過酸化水素が含有される場合は、過酸化水素除去手段51において排水w1から過酸化水素を除去する。排水w1に過酸化水素が含有されない場合は、過酸化水素除去手段51における処理は省略してもよい。
【0051】
次に、第1の前処理工程では、1次pH調整部2aによって排水w1のpHを9〜11の範囲に調整するとともに、排水w1にスケール分散剤Scを添加する。排水w1のpHを9〜11の範囲に調整することにより、排水w1に含まれる有機物に起因する第1の逆浸透膜3の閉塞を予防する。すなわち、排水w1が中性のままでは、有機物を分解する微生物が繁殖し、有機物及び微生物によって第1の逆浸透膜3閉塞するおそれがあることから、pHを高くして微生物の繁殖を抑制する。pHが低いと微生物の繁殖を抑制することが困難になる。また、pHが高すぎると、排水w1中に金属水酸化物または金属酸化物が析出して第1の逆浸透膜3を閉塞させるおそれがあるため、第1の前処理工程では排水w1のpHを9〜11の範囲に調整する。
【0052】
また、第1の前処理工程では、pH調整後の排水w1にスケール分散剤Scを添加する。これにより、排水w1の含まれるカルシウム金属に起因するスケール生成が抑制され、第1の逆浸透膜3の目詰まりが抑制されることで、一次透過水w11の水量の低下が防止される。スケール分散剤Scとしては、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩などのキレート剤、ポリマレイン酸などのポリマー分散剤、或はこれらの混合物を好適に用いることができる。
【0053】
次に、第1の逆浸透膜分離工程では、第1の逆浸透膜3によって、排水w1を一次透過水w11と一次濃縮水w12とに分離する。第1の逆浸透膜3によって排水w1からフッ素が除去され、更に、リン酸塩、カルシウム及び有機物も除去されて一次透過水w11が得られる。除去されたフッ素等は一次濃縮水w12に含有される。一次透過水w11は水路L2に送られ、一次濃縮w12は水路L4を介してフッ素除去手段11に送られる。
【0054】
第1の逆浸透膜分離工程によって、排水w1中のフッ素が一次濃縮水w12中に濃縮され、フッ素除去工程の処理対象になる対象水の容積が低減する。これにより、フッ素除去工程を行う際に投入すべきエネルギーを抑制することが可能になる。
【0055】
次に、第2の前処理工程では、2次pH調整部4aによって一次透過水w11のpHを5〜9の範囲に調整するとともに、一次透過水w11にスライム抑制剤Slmを添加する。一次透過水w11のpHを5〜9の範囲に調整することにより、一次透過水w11に残留するアンモニアをアンモニウムに変化させることで、アンモニアガスの飛散を予防する。すなわち、第1の前処理工程において排水w1のpHを高くしたため、排水w1中のアンモニウムがアンモニアに変化してアンモニアガスとして飛散するおそれがあるので、第1の逆浸透膜分離工程後の一次透過水w11のpHを下げることでアンモニアをアンモニウムに変化させる。pHが低いとスライムが生成して第2の逆浸透膜5を閉塞させるおそれがあり、また、pHが高すぎると、アンモニアが残留するおそれがある。そのため、第2の前処理工程では一次透過水w11のpHを5〜9の範囲に調整する。
【0056】
また、第2の前処理工程では、pH調整後の一次透過水w11にスライム抑制剤Slmを添加する。これにより、一次透過水w11に残留する有機物や微生物に由来するスライムの生成を抑制することにより、第2の逆浸透膜5の目詰まりを抑制して、二次透過水w21の水量の低下を防止する。スライム抑制剤Slmとしては、例えば、クロロスルファミン酸塩など塩素や臭素などのハロゲンを安定化した安定化ハロゲンや、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンや、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾロン化合物、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド等のハロシアノアセトアミド化合物等が好ましい。
【0057】
次に、第2の逆浸透膜分離工程では、第2の逆浸透膜5によって、一次透過水w11を二次透過水w21と二次濃縮水w22とに分離する。第2の逆浸透膜5によって一次透過水w11からアンモニウムが除去され、更に、リン酸塩、カルシウム及び有機物も除去されて二次透過水w21が得られる。除去されたアンモニウム等は二次濃縮水w22に含有される。二次透過水w21は水路L3により第1水槽6に送られ、二次濃縮水w22は水路L6により中和処理手段41に送られる。
【0058】
二次透過水w21中のCa量は1mg/L未満であることが好ましい。
【0059】
第1水槽6に送られた二次透過水w21は、第1水槽6に貯留されたのち、第2水槽7に送られる。そして、第2水槽7からユースポイント31に送られ、設備用水として利用される。ユースポイント31が排ガス洗浄設備である場合、二次透過水w21は排ガス洗浄設備でスクラバー用水として利用された後に、排水として排出される。排ガス洗浄設備から排出された排水は、半導体製造工程から排出された他の排水とともに、水処理装置1に送られ、再び、本実施形態の水処理方法に供される。
【0060】
また、二次透過水w21の生成量が、ユースポイント31での水の需要量を超える場合は、二次透過水w21が余剰になるので、余剰分の二次透過水w21を第1水槽6から別のユースポイント32に供給してもよい。この制御は、先に説明した供給制御部によって制御してもよい。ユースポイント31が純水製造装置である場合、二次透過水w21は純水製造装置によって純水とされる。純水は例えば半導体製造工程において利用された後に、排水として排出される。半導体製造工程から排出された排水は、水処理装置1に送られ、再び、本実施形態の水処理方法に供される。
【0061】
次に、フッ素除去工程について説明する。
第1の逆浸透膜分離工程において生成した一次濃縮水w12は、水路L4を介してフッ素除去手段11に送られ、フッ素除去工程に供される。フッ素除去工程では、一次濃縮水w12からフッ素が除去される。フッ素除去工程としては例えば、一次濃縮水w12のpHを8以上に調整した上で、カルシウムを添加することによりフッ素をCaF
2とし、このCaF
2を凝集分離する工程を例示できる。フッ素除去工程後の処理水w40は、水路L5によって中和処理手段41に送られ、中和工程がなされる。
【0062】
中和工程は、処理水w40や、第2の逆浸透膜5から送られた二次濃縮水w22などを集め、pHを6〜8の中性に調整したのち、水処理装置1の外部に放流する。下水道または公共水域に放流してもよい。
【0063】
次に、Caフリー水w4をユースポイント31に供給する工程について説明する。
本実施形態の水処理方法では、ユースポイント31への二次透過水w21の供給量が、ユースポイント31の需要量を下回る場合に、Caフリー水w4を製造してユースポイント31に供給する。より具体的には、制御部22は、第2水槽7における貯水量を監視するとともに、ユースポイント31における水使用量を監視する。そして、ユースポイント31への水供給によって、第2水槽7における貯水量が減少し続ける場合は、二次透過水w21の供給量がユースポイント31の需要量を下回ると判断して、制御部22が原水供給部20及びカルシウム除去手段21に指令を発する。
【0064】
原水供給部20は、上水または工業用水からなる原水w3を、カルシウム除去手段21に供給する。カルシウム除去手段21は、原水w3に含まれるカルシウムを除去してCaフリー水w4とした上で、第2水槽7に供給する。そして、第2水槽7に貯留された二次透過水w21及びCaフリー水w4を、ユースポイント31に送る。第2水槽7の二次透過水w21が少ない場合は、Caフリー水w4のみをユースポイント31に送ってもよい。Caフリー水w4中のCa量は1mg/L未満であることが好ましい。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の水処理装置1は、第1の前処理手段2によってpH調整及びスケール分散剤が添加された排水w1を第1の逆浸透膜3に流すことで、第1の逆浸透膜3に目詰まりを生じさせないままフッ素を除去することができる。また、第2の前処理手段4によってpH調整及びスライム抑制剤が添加された一次透過水w11を第2の逆浸透膜5に流すことで、アンモニウムを除去することができる。これにより、純水製造装置の原水や設備用水として利用可能な二次透過水を得ることができる。また、本実施形態の水処理装置1では、排水w1からフッ素を除去する際にCaの添加が不要になるため、大規模な軟水器を設置する必要がない。更に、本実施形態の水処理装置1では、pHを調整したのちに第2の逆浸透膜5によってアンモニウムを除去するので、アンモニウムをアンモニアに気化させることなく、アンモニウムを除去できる。また、本実施形態の水処理装置1によれば、活性汚泥法等の生物処理を行うことなく、有機物を含む排水であっても処理できる。
【0066】
また、本実施形態の水処理装置1には、一次濃縮水w12中のフッ素を除去するフッ素除去手段11が備えられており、フッ素除去手段11は、排水w1に比べて水量が少ない一次濃縮水w12中のフッ素を除去すればよく、フッ素除去手段11に求められる処理能力が比較的小さくなり、水処理装置1を小型にできる。
【0067】
また、本実施形態の水処理装置1は、二次透過水w21の水量がユースポイント31の需要量を下回る場合に、カルシウム除去手段21によって製造されたCaフリー水w4を、第2水槽7に供給する制御部22が備えられており、二次透過水w21が需要量に対して不足した場合にCaフリー水w4を水処理装置1内に補充することができる。これにより、水処理装置1及びユースポイント31によって水循環システムを構成する場合に、水循環システム内に流通する水のCa濃度が低く抑えられ、例えば1mg/L未満にすることができ、スケール発生が予防され、水処理装置1の逆浸透膜3、5の目詰まりやユースポイント31におけるスケール発生を防止できる。
【0068】
次に、本実施形態の水処理方法によれば、第1の前処理手段2によってpH調整及びスケール分散剤が添加された排水を第1の逆浸透膜3に流すことで、第1の逆浸透膜3に目詰まりを生じさせないままフッ素を除去することができる。また、第1の前処理手段2によってpH調整及びスライム抑制剤が添加された一次透過水w11を第2の逆浸透膜5に流すことで、アンモニウムを除去することができる。これにより、純水製造装置の原水や設備用水として利用可能な二次透過水w21を得ることができる。また、本実施形態の水処理方法では、排水w1からフッ素を除去する際にCaの添加が不要になるため、大規模な軟水器を設置する必要がない。更に、本実施形態の水処理方法では、pHを調整したのちに第2の逆浸透膜5によってアンモニウムを除去するので、アンモニウムをアンモニアに気化させることなく、アンモニウムを除去できる。また、本実施形態の水処理方法によれば、活性汚泥法等の生物処理を行うことなく、有機物を含む排水であっても処理できる。
【0069】
また、本実施形態の水処理方法では、一次濃縮水w22中のフッ素を除去するフッ素除去工程が行われ、フッ素除去工程は、排水w1に比べて水量が少ない一次濃縮水w12中のフッ素を除去すればよく、フッ素除去に求められる処理能力が比較的小さくて済み、水処理に必要なエネルギーを少なくすることができる。
【0070】
また、本実施形態の水処理方法によれば、二次透過水w21の水量がユースポイント31の需要量を下回る場合に、カルシウム除去手段21によって製造されたCaフリー水w4を、ユースポイント31に供給することで、二次透過水w21が需要量に対して不足した場合にCaフリー水w4を補充できる。これにより、水処理装置1及びユースポイント31によって構成される水循環システム内に流通する水のCa濃度が低く抑えられ、例えば1mg/L未満にすることができ、スケール発生が予防され、水処理装置1の逆浸透膜3、5の目詰まりやユースポイント31におけるスケール発生を防止できる。
【0071】
また、本実施形態の水処理方法によれば、排水w1が、ユースポイント31において使用された使用水を含むものであるので、水処理装置1及びユースポイント31によって構成される水循環システム内に流通する水のCa濃度が低く抑えられ、例えば1mg/L未満にすることができ、スケール発生が予防され、水処理装置1の逆浸透膜3、5の目詰まりやユースポイント31におけるスケール発生を防止できる。