特許第6773166号(P6773166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773166
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20201012BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20201012BHJP
   H01L 33/54 20100101ALI20201012BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20201012BHJP
【FI】
   H01L33/62
   H01L33/50
   H01L33/54
   H01L33/60
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-74702(P2019-74702)
(22)【出願日】2019年4月10日
(62)【分割の表示】特願2015-54369(P2015-54369)の分割
【原出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2019-145820(P2019-145820A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大久保 真樹
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−130923(JP,A)
【文献】 特開2006−196889(JP,A)
【文献】 特開2013−182917(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/165007(WO,A1)
【文献】 特開2014−143396(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0070235(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104124325(CN,A)
【文献】 特開2011−108744(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0217428(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
F21K 9/00 − 9/90
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された配線部と、
前記基板または前記配線部上に配置された複数の発光素子と、を備え、
前記複数の発光素子からなる第1発光部を構成する第1発光素子群と、
前記複数の発光素子からなる第1発光部と色温度の異なる第2発光部を構成する第2発
光素子群と、
前記配線部は、前記第1発光素子群を駆動させる第1配線部と、前記第2発光素子群を
駆動させる第2配線部と、を有し、
前記第1発光部は前記基板の中央領域にあり、前記第2発光部は前記第1発光部の外側にあり、
前記配線部は、パッド部と、弧状部分を複数有しており、
前記第1配線部は前記第2配線部より内側にあり、前記第2配線部は前記第1配線部を囲むように同心円状に配置され、
前記第1配線部は、前記弧状部分から外側へ引き出されるように延伸して前記基板の端部に前記パッド部を有しており、
前記第2配線部は、前記引き出された第1配線部を挟んで離間して弧状に延伸しており、一つの第2配線部にワイヤの一端が接続され、その第2配線部から離間して配置された別の第2配線部に前記ワイヤの他端が接続されている、ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記基板がAlNからなる請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記基板の発光素子載置面に光反射樹脂を設ける、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記光反射樹脂は、反射性粒子と有機物からなる請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記ワイヤの最も高い位置の高さが前記光反射樹脂の高さよりも低くなる1〜4のい
ずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記基板の前記配線部に保護素子を実装し前記光反射樹脂内に埋設させる請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記複数の発光素子から出射される光を透過する封止部材を備える請求項1〜6のいず
れか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記封止部材に蛍光体を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記封蛍光体にLAG系蛍光体及びSCASN系蛍光体を含む請求項1〜8のいずれか
1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記複数の発光素子がp電極及びn電極が下面に位置するように接合されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、青色光を発光する発光素子と、青色光の一部を吸収することにより励起され、より長波長の光を発する蛍光物質とを用いて白色発光するように構成された発光装置が知られている。このような発光装置において、複数の発光部を同心円状に設け、これらの発光部を同時に光らせることが可能な発光装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−82236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では各発光部を発光させる際の配線については、明確に開示されていない。例えば、各発光部の発光量を調整して調色を行う場合には、2系統の独立した回路が必要となるため、基板の表面のみに配線を設けるいわゆる片面基板の場合、配線の形成が困難である。多層基板とすることもできるがコストの上昇を招くため、より一層のコストの低減が望まれている。
【0005】
本発明に係る実施形態は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、片面基板を用いる場合であっても、複数の発光部を独立して駆動することが可能な発光装置を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る発光装置は、基板と、前記基板上に形成された配線部と、前記基板または前記配線部上に配置された複数の発光素子と、を備え、前記複数の発光素子は、第1封止部材により被覆されて第1発光部を構成する第1発光素子群と、前記第1封止部材を囲むように形成された第2封止部材により被覆されて第2発光部を構成する第2発光素子群と、を有し、前記配線部は、前記第1発光素子群を駆動させる第1配線部と、前記第2発光素子群を駆動させる第2配線部と、を有し、前記第2配線部は、前記第1配線部を挟んで離間して形成されており、前記離間した第2配線部を接続するワイヤが、前記第1配線部を跨いで接続されていることを特徴とする発光装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る実施形態によれば、片面基板を用いる場合であっても、複数の発光部を独立して駆動することが可能な発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の全体構成を示す正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示す正面図である。
図3図2に示すA−A線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光装置は、本開示の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示を以下のものに限定しない。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。
各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。図中の「X」方向を「横」方向、「Y」方向を「縦」方向、「Z」方向を「上下」方向または「高さ(厚さ)」方向ともよぶ。
【0010】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る発光装置100について、図1図3を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、図2における光反射性樹脂6は、外形のみを線で示して透過させた状態で図示しており、封止部材(第1封止部材7および第2封止部材8)も透過させた状態で図示している。
【0011】
図1および図2に示すように、本実施形態の発光装置100は、基板1と、基板1上に形成された配線部と、基板1上に配置された複数の発光素子2(ここでは66個)を備える。発光素子2は、第1封止部材7により被覆されて第1発光部を構成する第1発光素子群10(図2中に破線で囲った発光素子。ここでは33個)と、第1封止部材7を囲むように形成された第2封止部材8により被覆されて第2発光部を構成する第2発光素子群11(図2中に破線で囲った発光素子。ここでは33個)と、を有している。
【0012】
配線部は、図2に示すように同心円状に形成されており、第1発光素子群10に沿って形成され、第1発光素子群10を駆動させる第1配線部4a〜4cと、第2発光素子群11に沿って形成され、第2発光素子群11を駆動させる第2配線部5a〜5fを有している。第1配線部4a〜4cと、第2配線部5a〜5fは、それぞれ弧状の部分を有しており、第1配線部4a〜4cで内側の円、第2配線部5a〜5fで外側の円が形成されている。また、第2配線部5aおよび5cは、第1配線部4aを挟んで離間して配置されており、第2配線部5aと第2配線部5cとを接続するワイヤ12が、第1配線部4aを跨いで接続されている。さらに、第2配線部5eと第2配線部5fとを接続するワイヤ12が、第1配線部4bを跨いで接続されている。
【0013】
第1配線部4aは、平面視において内側から外側へ引き出されるような形で第2配線部5aと第2配線部5cの間を通り、基板1の端部まで延伸されている。第1配線部4aは第1発光素子群10の発光素子から遠いほうの端部にパッド部(給電部)を有しており、第1配線部4bも同様にパッド部(給電部)を有している。ワイヤ12は、第2配線部5aが引き出される方向と直交する方向に延びるように、第2配線部5aおよび5cの端部同士を接続している。言い換えると、ワイヤ12は、光反射樹脂6bが形成する枠体の形状に沿って延びている。
また、ワイヤの長さは、第1配線部4aを跨いで第2配線部5aと第2配線部5cとを接続することが可能な長さであれば特に限定されない。
【0014】
第1発光素子群10の33個の発光素子は、11個ずつ直列に接続され、直列接続されたこれらの発光素子が、3つ並列に接続されている(11直3並列)。具体的には、隣接する発光素子2の電極同士がワイヤ12により直列接続され、さらに直列接続された両端(始点および終点)の発光素子2が、第1配線部4a、4bに、ワイヤ12によりそれぞれ電気的に接続されている。
【0015】
第1発光素子群10は、基板1の中央領域に複数の発光素子2が円形状に載置されてなり、第1発光素子群10を囲むように弧状の部分を有する第1配線部4a、4bが配置されている。第1配線部4aと4bの間には、保護素子9が搭載される第1配線部4cが配置されており、第1発光素子群10と保護素子9とが逆並列接続になるように、第1配線部4a及び4bとワイヤにより電気的に接続されている。
【0016】
第1発光素子群10は、前述のとおり第1封止部材7により被覆され、ここでは第1配線部4a、4bの弧状の部分と、第1配線部4cとを被覆するように光反射樹脂6aが形成されている。第1発光素子群10は光反射樹脂6aで囲まれており、この囲まれた領域に第1封止部材7が充填されており、第1封止部材7により被覆された部分が第1発光部を構成する。
【0017】
第2発光素子群11は、第1封止部材7の周囲に沿って発光素子2が環状に配置されてなる。第2発光素子群11も、第1発光素子群10と同様に、11個の発光素子が直列接続されたものが3つ並列に接続されている。具体的には、隣接する発光素子2の電極同士がワイヤ12により直列接続され、さらに直列接続された両端(始点および終点)の発光素子2が第2配線部5cおよび5e、5fおよび5a、5bおよび5aと、それぞれワイヤにより電気的に接続されている。
【0018】
第2発光素子群11は、第1封止部材7を囲むように配置されている。また、第2発光素子群11は、第2封止部材8により被覆されて第2発光部を構成している。ここでは第2配線部5a、5bの弧状の部分と、第2配線部5c、5d、5e、5fとを被覆するように光反射樹脂6bが形成されている。第2発光素子群11は光反射樹脂6bで囲まれており、光反射樹脂6aと6bとに囲まれた領域に第2封止部材8が充填されている。
【0019】
言い換えると第1封止部材7と第2封止部材8は、図1に示すように、光反射樹脂6aにより隔てられて、それぞれ第1発光部と第2発光部を構成しており、第1発光部と第2発光部は同心円状に形成されている。
【0020】
第1配線部4a、4bと、第2配線部5a、5bは、外部端子電極としての役割を担うため、図1および図2に示すように平面視において基板1の四隅に、配線部が幅広となるように略矩形状のパッド部(給電部)が形成されている。正極として機能する第1配線部4aおよび第2配線部5aには、アノードであることを示すアノードマークAMが形成されている。第1配線部4bおよび第2配線部5bはカソードとなる。この構成により、発光装置100は、第1配線部と第2配線部の2系統の回路を持ち、第1発光素子群10と第2発光素子群11の発光素子をそれぞれ別々に点灯させることができる。よって、配線を2層以上の構造とすることなく、片面基板を用いる場合であっても第1発光部と第2発光部をそれぞれ独立して点灯することができる。
【0021】
第1発光部と第2発光部を同じ発光色とする場合には、いずれか一方の発光部のみ点灯させたり、双方の発光部を点灯させたりすることで、発光面積を選択することができる。例えば、小さい発光径で発光させたい場合は第1発光部のみを点灯させ、大きい発光径としたい場合は第1発光部および第2発光部を同時に点灯させる。
【0022】
また、第1発光部と第2発光部の発光スペクトルや色温度を異ならせてもよい。この場合は、第1発光部と第2発光部が異なる発光色を呈し、これらの光を混色することで所望の色調を得ることができる。例えば、第1発光部と第2発光部をそれぞれ寒色系と暖色系のような2色とすることにより、電球色から昼光色の調色が可能な発光装置とすることが可能となる。第1発光部と第2発光部を異なる発光色とするために、第1発光素子群10と第2発光素子群11の発光色を異ならせてもよいし、第1封止部材7と第2封止部材8の波長変換部材の種類や配合比を異ならせてもよい。
【0023】
平面視における第1発光部の面積と第2発光部の面積は、用途や色調にあわせて所望の面積比とすることができる。図1〜3に示す例では、第1発光部の面積と第2発光部の面積が略同じになるように形成されている。
本実施形態では、第1発光部と第2発光部が同心円状に配置されるものについて説明したが、平面視において、第1発光部が内側、第2発光部が外側になるようなものであればその形状は特に限定されない。例えば、第1発光部および第2発光部の平面視における外形は、円形、楕円形、四角形、六角形等、どのような形状であってもよい。特に、第1発光部および第2発光部が、中心を同じくする相似形状であることが好ましい。
【0024】
(基板)
基板1は、発光素子2や保護素子9等の電子部品を配置するためのものであり、その表面に配線部を有している。基板1は、図1図3に示すように、矩形平板状に形成されている。コストを抑える観点から、平板状であることが好ましいが、発光素子を載置する部分に凹部を有するものであってもよい。基板1のサイズは特に限定されず、発光素子2の数や配列間隔、発光面積等、目的および用途に応じて適宜選択することができる。
【0025】
基板1の材料としては、絶縁性材料を用いることが好ましく、かつ、発光素子から放出される光や外光等が透過しにくい材料を用いることが好ましい。またある程度の強度を有する材料を用いることが好ましい。具体的にはセラミックス(Al、AlN等)、あるいはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジン、ポリフタルアミド(PPA)等の樹脂が挙げられる。光反射性を高めるために、発光素子載置面に反射部材を設けても良い。反射部材は、例えば、TiO等の反射性粒子と有機物ないし無機物のバインダーとを混錬したものである。いわゆる白色レジストや白色インク、セラミックスインク等が該当する。有機物のバインダーとしては、耐熱性・耐光性に優れたシリコーン樹脂を用いることが特に好ましい。これにより、基板表面で光を反射して、光取り出し効率の高い発光装置とすることができる。
【0026】
(発光素子)
発光素子2は、電圧を印加することで発光する半導体素子である。発光素子2は図2に示すように、基板1の上面に複数配置され、当該複数の発光素子2が一体となって発光装置100の発光部を構成している。発光素子は接合部材によって基板1または配線部に接合されており、その接合方法としては、例えば樹脂や半田ペーストを用いる接合方法を用いることができる。図2に示すように、p電極およびn電極が上面に位置するように接合されていてもよいし、p電極およびn電極が下面に位置するように接合される、いわゆるフリップチップ接合で接合されていてもよい。
【0027】
発光素子のそれぞれは、図2に示すように矩形状に形成されている。発光素子としては、具体的には発光ダイオードを用いるのが好ましく、用途に応じて任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色(波長430nm〜490nm)、緑色(波長490nm〜570nm)の発光素子としてはZnSe、窒化物半導体、GaP等を用いることができる。また、赤色(波長620nm〜750nm)の発光素子としてはGaAlAs、AlInGaP等を用いることができる。
【0028】
また、第1封止部材7、第2封止部材8に波長変換部材を含有させる場合は、その波長変換部材を効率よく励起することができる短波長の発光が可能な窒化物半導体を用いることが好ましい。ただし、発光素子2の成分組成や発光色、サイズ等は上記に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。また、発光素子2は可視光領域の光だけではなく、紫外線や赤外線を出力する素子で構成することもできる。
【0029】
第1発光素子群10を構成する発光素子と、第2発光素子群11を構成する発光素子は、同じ種類であってもよく、例えば発光色が異なる等、異なる種類であってもよい。
【0030】
(配線部)
第1配線部4a〜4cおよび第2配線部5a〜5fは、基板上の複数の発光素子2や保護素子9等の電子部品と、図示しない外部電源とを電気的に接続し、これらの電子部品に対して外部電源からの電圧を印加するためのものである。すなわち、外部から通電させるための電極(端子)、またはその一部としての役割を担うものである。
【0031】
配線部を構成する金属部材の素材は特に限定されない。例えば、セラミックスに形成する配線部の材料としては、W、Mo、Ti、Ni、Au、Cu、Ag、Pd、Rh、Pt、Sn等を主成分とする金属又は合金層を基板に配置することによって形成される。具体的には、蒸着、スパッタ、印刷法等により、さらに、その上にめっき等により形成することができる。劣化が少なく、接合部材との密着性の観点から、Auを主成分とする金属を配線部の最表面に用いることが好ましい。配線部の厚みは特に限定されず、接続するワイヤの数、搭載する発光素子の数、投入電力等、目的および用途に応じて適宜選択することができる。
【0032】
なお、配線部を形成する際に、合わせて位置決め用のマークや、極性を示すマーク、温度測定用のパターンを同時に形成してもよい。例えば、図1に示すアノードマークAM、温度測定用パターンTP等である。
【0033】
ここで配線部の一部は図1および図2に示すように、光反射樹脂6a、6bによって覆われている。そのため、波長によっては光を吸収しやすいAuを用いる場合であっても、発光素子から出射された光が配線部には到達せずに光反射樹脂6a、6bによって反射される。したがって出射光のロスを軽減することができ、発光装置100の光の取り出し効率を向上させることができる。
【0034】
(ワイヤ)
ワイヤ12は、配線部と発光素子2の電極、発光素子2の電極同士、配線部同士を電気的に接続する部材である。ワイヤ12として、Au、Cu、Ag、Pt、Alまたはこれらの合金の金属線を用いることができる。ワイヤ12としては、特に、封止部材からの応力による破断が生じにくく、熱抵抗等に優れるAuが好ましい。あるいは、ワイヤ12は、光の取り出し効率を高めるために、少なくとも表面がAgまたはその合金で構成されてもよい。また、ワイヤの径は、18μm〜30μmが好ましい。
【0035】
(光反射樹脂)
光反射樹脂6a、6bは、例えば、絶縁性の樹脂に光反射部材を含有させたものを用いることが好ましい。ある程度の強度を確保するために、例えば熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。より具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、BTレジンや、PPAやシリコーン樹脂などが挙げられる。保護素子等の非発光デバイスを基板に実装する場合には、光吸収の原因となるため、光反射樹脂内に埋設することが好ましい。図1〜3に示すように、光反射樹脂は、枠状とされていることが好ましく、この枠体の中に封止部材が充填される。このような枠体は、ディスペンサで樹脂を吐出しながら描画する方法や、樹脂印刷法、トランスファー成形、圧縮成形などで形成することができる。
【0036】
光反射樹脂の光反射率が、配線部の光反射率よりも高い場合は、図2に示すように発光領域内の配線部の全てを覆うように光反射樹脂を形成することが好ましい。
【0037】
第1配線部4aを跨いで、第2配線部5aと第2配線部5cとを接続するワイヤ12は、光反射樹脂6bで被覆されていることが好ましく、完全に埋設されていることがより好ましい。これにより、ワイヤを塵芥、水分、外力等から保護することができるのみならず、配線部4aとワイヤ12とが接触してショートすることを抑制することができる。ワイヤ12が光反射樹脂6bで埋設される場合は、ワイヤの最も高い位置の高さが光反射樹脂6bの高さよりも低くなる。
また、ワイヤの一部が光反射樹脂6bから露出される構成としてもよく、例えば光反射樹脂6bの高さよりもワイヤの最も高い位置の高さが高くなるようにしてもよい。第2配線部5eと第2配線部5fとを接続するワイヤ12についても同様に光反射樹脂6bで被覆することが好ましい。
【0038】
(封止部材)
第1封止部材7および第2封止部材8は、電気的絶縁性を有し、発光素子から出射される光を透過可能であり、かつ固化前は流動性を有する材料であることが好ましい。封止部材の光透過率は、好ましくは70%以上である。光透過性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、TPX樹脂、ポリノルボルネン樹脂、またはこれらの樹脂を1種以上含むハイブリッド樹脂等が挙げられる。中でも、シリコーン樹脂は、耐熱性や耐光性に優れ、固化後の体積収縮が少ないので好ましい。
【0039】
(波長変換部材)
第1封止部材7および/または第2封止部材8は、発光素子が発する光の少なくとも一部により励起されて発光素子の発光波長とは異なる波長の光を発する波長変換部材を含んでもよい。代表的な波長変換部材としては蛍光体や量子ドットが挙げられる。
【0040】
例えば、第1発光素子群10と第2発光素子群として青色発光素子を用い、第1封止部材7に黄色蛍光体を含有させ、第2封止部材に黄色蛍光体と赤色蛍光体を含有させることで、第1発光部を白色に、第2発光部を電球色に発光させることができる。
【0041】
(蛍光体)
波長変換部材として用いられる蛍光体は、1種類の蛍光体を用いてもよいし、2種類以上の蛍光体を用いてもよい。LED用の蛍光体として公知の蛍光体のいずれを用いてもよい。例えば、粒径及び発光色の異なる2種類の蛍光体を用いてもよい。このように、発光色の異なる蛍光体を複数種類用いることで、色再現性や演色性を向上させることができる。
【0042】
蛍光体としては、例えば黄色〜緑色蛍光体としては、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)およびルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(LAG系蛍光体)を用いることができる。緑色蛍光体としては、例えばクロロシリケート蛍光体およびβサイアロン蛍光体を用いることができる。赤色蛍光体としては、例えば(Sr,Ca)AlSiN:Eu等のSCASN系蛍光体、CaAlSiN:Eu等のCASN系蛍光体、SrAlSiN:Eu蛍光体、およびKSiF:Mn等のKSF系蛍光体等を用いることができるが、これに限られない。
【0043】
例えば照明用として、発光素子2に青色発光素子を用い、第1封止部材にYAG系蛍光体およびSCASN系蛍光体、第2封止部材にYAG系蛍光体を含有させればよい。これにより、第1発光部は2700K程度、第2発光部は5000K程度の色温度の光を発光することができ、これらの混色で2700〜5000K程度を発光可能な発光装置とすることができる。
【0044】
封止部材は、上述の波長変換部材に加えて、フィラー、拡散材等の添加剤を更に含んでもよい。例えば、拡散材としては、SiO、TiO等を用いてもよい。
【0045】
以上、発光部が2つの場合について述べたが、発光部がさらに多くてもよい。例えば、第2発光部の外側に、さらに第3発光部を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の発光装置は、各種照明器具、液晶ディスプレイのバックライト光源、大型ディスプレイ、広告、行き先案内等の各種表示装置、さらには、デジタルビデオカメラ、ファクシミリ、コピー機、スキャナ等における画像読取装置、プロジェクタ装置などに利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
100 発光装置
1 基板
2 発光素子
4a、4b、4c 第1配線部
5a、5b、5c、5d、5e、5f 第2配線部
6a、6b 光反射樹脂
7 第1封止部材
8 第2封止部材
9 保護素子
10 第1発光素子群
11 第2発光素子群
12 ワイヤ
AM アノードマーク
TP 温度測定用パターン
図1
図2
図3