特許第6773464号(P6773464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773464
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】電圧供給回路及び半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11C 16/30 20060101AFI20201012BHJP
   G11C 5/14 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   G11C16/30 100
   G11C16/30 120
   G11C5/14 550
   G11C5/14 400
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-125270(P2016-125270)
(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-228337(P2017-228337A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】小川 絢也
【審査官】 後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−040385(JP,A)
【文献】 特開2000−331489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 16/30
G11C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の最小電圧値から所定の最大電圧値の範囲内の電圧値を有する電源電圧を受け、前記電源電圧を降圧して前記最小電圧値以下の一定の電圧値を有する降圧電圧を生成する降圧回路と、
前記降圧電圧を昇圧して前記電源電圧の電圧値よりも高い電圧値を有する電圧を出力電圧として生成する昇圧回路と、を有することを特徴とする電圧供給回路。
【請求項2】
前記昇圧回路は、
自身のゲート端及びソース端同士が接続されている第1〜第k(kは2以上の整数)のトランジスタが縦続接続されているトランジスタ群と、
前記降圧電圧を前記第1のトランジスタのソース端に供給する電圧供給トランジスタと、
前記降圧電圧に対応した振幅を有するクロック信号に応じて前記第1〜第kのトランジスタのうちの奇数番目のトランジスタ各々のソース端及びゲート端の電圧を昇圧すると共に、前記クロック信号の位相を反転させた反転クロック信号に応じて前記第1〜第kのトランジスタのうちの偶数番目のトランジスタ各々のソース端及びゲート端の電圧を昇圧する第1〜第kの容量素子と、を含み、
前記第kのトランジスタのドレイン端の電圧を前記出力電圧として出力することを特徴とする請求項1に記載の電源供給回路。
【請求項3】
前記出力電圧の電圧値が所定の基準電圧未満となる場合には論理レベル0の状態及び論理レベル1の状態を交互に繰り返す信号を前記クロック信号として生成する一方、前記出力電圧の電圧値が前記基準電圧以上となる場合には前記クロック信号の生成を停止する制御回路を有することを特徴とする請求項2に記載の電源供給回路。
【請求項4】
複数のメモリセルを含むメモリセルアレイと、
データ書込時に書込電圧を前記メモリセルアレイに供給するメモリ駆動部と、
所定の最小電圧値から所定の最大電圧値の範囲内の電圧値を有する電源電圧を受け、前記電源電圧に基づき出力電圧を生成し、前記出力電圧を前記書込電圧として前記メモリ駆動部に供給する電圧供給回路と、を含む半導体記憶装置であって、
前記電圧供給回路は、
前記電源電圧を降圧して前記最小電圧値以下の一定の電圧値を有する降圧電圧を生成する降圧回路と、
前記降圧電圧を昇圧して前記電源電圧の電圧値よりも高い電圧値を有する電圧を前記出力電圧として生成する昇圧回路と、を有することを特徴とする半導体記憶装置
【請求項5】
前記昇圧回路は、
自身のゲート端及びソース端同士が接続されている第1〜第k(kは2以上の整数)のトランジスタが縦続接続されているトランジスタ群と、
前記降圧電圧を前記第1のトランジスタのソース端に供給する電圧供給トランジスタと、
前記降圧電圧に対応した振幅を有するクロック信号に応じて前記第1〜第kのトランジ
スタのうちの奇数番目のトランジスタ各々のソース端及びゲート端の電圧を昇圧すると共に、前記クロック信号の位相を反転させた反転クロック信号に応じて前記第1〜第kのトランジスタのうちの偶数番目のトランジスタ各々のソース端及びゲート端の電圧を昇圧する第1〜第kの容量素子と、を含み、
前記第kのトランジスタのドレイン端の電圧を前記出力電圧として出力することを特徴とする請求項4に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記出力電圧の電圧値が所定の基準電圧未満となる場合には論理レベル0の状態及び論理レベル1の状態を交互に繰り返す信号を前記クロック信号として生成する一方、前記出力電圧の電圧値が前記基準電圧以上となる場合、又は前記データ書込時以外のときには前記クロック信号の生成を停止する制御回路を有することを特徴とする請求項5記載の半導体記憶装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧を昇圧する昇圧回路を含む電圧供給回路及び半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
NAND型フラッシュメモリなどの半導体記憶装置は、外部から供給された電源電圧よりも高い電圧を用いて、データの書き込み、消去および読み出しを行う。そのため、半導体記憶装置には、電源電圧を昇圧する昇圧回路を有する電圧供給回路が設けられている(例えば、特許文献1参照)。当該昇圧回路は、縦続接続された複数のMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)型のトランジスタと、トランジスタ同士の接続ノード(ドレイン端又はソース端)に、夫々の一端が接続されている複数のコンデンサを含む。縦続接続された複数のトランジスタのうちの初段のトランジスタのソース端には電源電圧が印加されており、各コンデンサの他端にはクロック信号(又はクロック信号の反転信号)が供給されている。かかる構成により、昇圧回路では、クロック信号に応じて各コンデンサが充電しその電圧をトランジスタ同士の接続ノードに印加することにより、当該接続ノードの電圧を昇圧する。よって、各トランジスタは、前段のトランジスタが接続ノードに供給した電圧よりも高い電圧を次段のトランジスタに供給する。かかる動作により、電源電圧よりも高い電圧に昇圧された電圧が最終段のトランジスタから出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−305467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、NAND型フラッシュメモリでは、このような昇圧回路によって昇圧された電圧に基づきデータ書込用の書込電圧を生成し、当該書込電圧をデータの書込対象となるメモリセルに印加することにより、データを書き込むようにしている。ところが、製造上のバラツキ等により、メモリセル毎に、適正な書込電圧の電圧値が異なっている。そこで、NAND型フラッシュメモリでは、書込電圧の適正電圧値が異なる各メモリセルに確実にデータの書き込みが為されるように、書込電圧の電圧値を段階的に増加させて行き、その段階毎に異なる電圧値を有する書込電圧によってデータの書き込みを行うようにしている。
【0005】
しかしながら、上記したような昇圧回路で生成された電圧には、設定電圧の近傍でその電圧値が振動する、いわゆるリップルが生じる。
【0006】
よって、書込電圧に生じるリップルの振幅が大きい場合には、書込電圧の電圧値を所定の電圧幅で増加させることが困難となり、データの書き込みが正常に為されなくなる虞があった。
【0007】
そこで、本発明は、リップルの振幅を抑制した電圧を生成することが可能な電圧供給回路、及び当該電圧供給回路を含む半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電圧供給回路は、所定の最小電圧値から所定の最大電圧値の範囲内の電圧値を有する電源電圧を受け、前記電源電圧を降圧して前記最小電圧値以下の一定の電圧値を有する降圧電圧を生成する降圧回路と、前記降圧電圧を昇圧して前記電源電圧の電圧値よりも高い電圧値を有する電圧を出力電圧として生成する昇圧回路と、を有する。
【0009】
また、本発明に係る半導体記憶装置は、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイと、データ書込時に書込電圧を前記メモリセルアレイに供給するメモリ駆動部と、所定の最小電圧値から所定の最大電圧値の範囲内の電圧値を有する電源電圧を受け、前記電源電圧に基づき出力電圧を生成し、前記出力電圧を前記書込電圧として前記メモリ駆動部に供給する電圧供給回路と、を含む半導体記憶装置であって、前記電圧供給回路は、前記電源電圧を降圧して前記最小電圧値以下の一定の電圧値を有する降圧電圧を生成する降圧回路と、前記降圧電圧を昇圧して前記電源電圧の電圧値よりも高い電圧値を有する電圧を前記出力電圧として生成する昇圧回路と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、外部から供給された電源電圧よりも電圧値が高い電圧を生成するにあたり、一旦、電源電圧を降圧してこの電源電圧の電圧値よりも低い一定の電圧値を有する降圧電圧を生成する。そして、昇圧回路が、当該降圧電圧を昇圧することにより、電源電圧の電圧値よりも高い所定の設定電圧値を有する出力電圧を得るようにしている。
【0011】
かかる構成によれば、昇圧回路では、電源電圧の電圧値よりも低い電圧値を有する降圧電圧が昇圧対象となるので、電源電圧自体を昇圧対象とした場合に比して、出力電圧に対応した出力電流が小さくなる。その結果、出力電流が大きいほど大きくなるという出力電圧のリップルの振幅が抑制される。
【0012】
尚、昇圧回路では、昇圧対象となる電圧が大きいほど出力電流が大きくなり、その分だけ出力電圧に生じるリップルの振幅も増加する。そこで、本発明における昇圧回路では、上記したように電源電圧の電圧値よりも低く、且つ電源電圧の電圧値に依存しない一定の電圧値を有する降圧電圧を昇圧対象としている。よって、電源電圧が高電圧となる場合であっても、出力電流を出力電圧に対応した一定の小電流に維持させることができる。
【0013】
よって、本発明によれば、電源電圧の電圧値に依存せずに、リップルの振幅を抑制した電圧を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る電圧供給回路を含む半導体記憶装置200の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2】電圧供給回路10の構成を示す回路図である。
図3】降圧回路11の内部構成の一例を示す回路図である。
図4】制御回路13の内部構成の一例を示す回路図である。
図5】電圧供給回路10の内部動作の一例を示すタイムチャートである。
図6】昇圧回路12の内部構成の一例を示す回路図である。
図7】出力電圧VPPと出力電流との関係を表す電圧電流特性図である。
図8】出力電圧VPPに生じるリップルの形態の一例を表す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る電圧供給回路を含む半導体記憶装置200の概略構成の一例を示すブロック図である。半導体記憶装置200は、例えばNAND型のフラッシュメモリであり、電圧生成部100及びメモリセルアレイ101と共に、ロウデコーダ102、メモリ制御部103及びカラムデコーダ104からなるメモリ駆動部を有する。
【0017】
メモリセルアレイ101は、列方向に配列された複数のビット線BL1〜BLm(mは2以上の整数)と、これらビット線BL1〜BLmと交叉して行方向に配列された複数のワード線WL1〜WLn(nは2以上の整数)とを含み、ビット線BL及びワード線WLの各交叉部にメモリセル(図示せず)が形成されている。メモリセルの各々は、ワード線WLを介して供給された選択電圧、及び一対のビット線BLを介して供給された書込電圧又は読出電圧に応じて、2値又は多値のデータの書き込み及び読み出しを行う。
【0018】
ロウデコーダ102は、メモリ制御部103から供給された制御信号に応じて、メモリセルアレイ101のワード線WL1〜WLnに選択電圧を印加する。
【0019】
カラムデコーダ104は、メモリ制御部103から供給された制御信号に応じて、メモリセルアレイ101のビット線BL1〜BLmに接地電位、読出電圧、又は書込電圧を印加する。
【0020】
メモリ制御部103は、外部から供給された各種メモリ制御信号CMD(チップイネーブル信号、書込イネーブル信号、読出イネーブル信号、アドレスラッチイネーブル信号、コマンドラッチイネーブル信号等)に応じて、データ読出、データ書込又はデータ消去を指示する各種制御信号を、ロウデコーダ102及びカラムデコーダ104に供給する。ここで、データ読出時には、メモリ制御部103は、アドレスADにて示される番地に対応したワード線WLに選択電圧を印加させることを示す制御信号をロウデコーダ102に供給する。更に、この間、メモリ制御部103は、接地電位又は読出電圧をビット線BL1〜BLmに印加させることを示す制御信号をカラムデコーダ104に供給する(読出制御)。かかる読出制御により、メモリセルは、自身に蓄積されている電荷に応じた電流をビット線BL上に送出する。この際、カラムデコーダ104は、ビット線BL上に送出された電流値を表す読出電流値をメモリ制御部103に供給する。メモリ制御部103は、当該読出電流値に基づきデータの値を判定し、その値を示す読出データをデータDTとして出力する。
【0021】
また、メモリ制御部103は、データ書込時には、昇圧動作を実行させる論理レベル1の昇圧制御信号Sを電圧生成部100に供給する。そして、メモリ制御部103は、データDTとして供給された書込データに応じて、以下のベリファイ書込制御を実行する。
【0022】
すなわち、メモリ制御部103は、アドレスADにて示される番地に対応したワード線WLに選択電圧を印加させることを示す制御信号をロウデコーダ102に供給する。この間、メモリ制御部103は、アドレスADにて示される1つの番地に対して繰り返し書込電圧を印加させることを示す書込制御信号を生成し、これをカラムデコーダ104に供給しつつ、上記した読出制御を繰り返し実行する。更に、この間、メモリ制御部103は、書込電圧の電圧値を徐々に増加させることを指示する電圧調整信号CVを電圧生成部100に供給する。
【0023】
当該ベリファイ書込制御により、カラムデコーダ104は、時間経過につれて電圧値が増加する書込電圧を断続的に繰り返しビット線BLを介してメモリセルの各々に印加する。よって、各メモリセルには、書込電圧が印加される度に電荷が注入され、当該電荷が徐々に蓄積されて行く。この際、上記した読出制御により、カラムデコーダ104は、メモリセルから送出された読出電流値をメモリ制御部103に供給する。メモリ制御部103は、当該読出電流値が書込データに対応した値に到達したか否かを判定し、読出電流値が書込データに対応した値に到達したら、カラムデコーダ104への書込制御信号の供給を停止する。
【0024】
電圧生成部100は、外部電源(図示せぬ)から供給された電源電圧VDDに基づき、メモリ制御部103を動作させる為のロジック電源電圧を生成してメモリ制御部103に供給する。
【0025】
また、電圧生成部100は、電源電圧VDDに基づき、メモリセルに対してデータの読出又は消去を行うための選択電圧、消去電圧及び読出電圧を生成する。電圧生成部100は、選択電圧をロウデコーダ102に供給すると共に、消去電圧および読出電圧をカラムデコーダ104に供給する。
【0026】
更に、電圧生成部100は、当該電源電圧VDDに基づき、電源電圧VDDよりも高い電圧値を有する書込電圧を生成してカラムデコーダ104に供給する。
【0027】
図2は、電圧生成部100に含まれており、電源電圧VDDを昇圧することによって書込電圧としての出力電圧VPPを生成する電圧供給回路10の構成を示す回路図である。
【0028】
図2に示すように、電圧供給回路10は、降圧回路11、昇圧回路12、制御回路13、出力端子14及び電圧検知回路15を有する。
【0029】
降圧回路11は、電源電圧VDDを降圧した降圧電圧VDDLを生成し、これを昇圧回路12に供給する。尚、電源電圧VDDは、所定の最小電圧値から所定の最大電圧値までの電圧範囲内の電圧値を有する。降圧電圧VDDLは、例えば電源電圧VDDの電圧値として取り得る電圧範囲内の最小電圧値を有する一定の電圧である。
【0030】
図3は、降圧回路11の一例を示す回路図である。図3に示すように、降圧回路11は、nチャネルMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)型のトランジスタQ1〜Q3、pチャネルMOS型のトランジスタQ4〜Q6、コンデンサCN、抵抗R1およびR2を含む。
【0031】
差動対を為すトランジスタQ1及びQ2のうちのQ1のゲート端には、降圧電圧VDDLの電圧値を設定する為の参照電圧VRが供給されている。尚、参照電圧VRは、上記した最小電圧値に対応した一定電圧値を有する。トランジスタQ2のゲート端には、抵抗R1及びR2によって降圧電圧VDDLを分圧した、以下の分圧電圧Vdが供給されている。
Vd=(R2・VDDL)/(R1+R2)
トランジスタQ1及びQ2各々のソース端は、トランジスタQ3のドレイン端に接続されている。トランジスタQ3のゲート端には固定のバイアス電圧VBが供給されており、そのソース端には接地電位VSS(例えば0ボルト)が印加されている。トランジスタQ1のドレイン端は、ラインL1を介して、トランジスタQ4のドレイン端及びゲート端と、トランジスタQ5のゲート端と、トランジスタQ6のゲート端とに接続されている。トランジスタQ4及びQ5各々のソース端には電源電圧VDDが印加されている。トランジスタQ5のドレイン端はラインL2を介してトランジスタQ2のドレイン端に接続されている。トランジスタQ6のソース端には電源電圧VDDが供給されており、ドレイン端は、出力ラインLOTを介して、抵抗R1の一端及びコンデンサCNの一端に接続されている。抵抗R1の他端は帰還ラインLfを介して抵抗R2の一端及びトランジスタQ2のゲート端に接続されている。抵抗R2及びコンデンサCN各々の他端には接地電位VSSが印加されている。ここで、降圧回路11のトランジスタQ1は、参照電圧VRの電圧値に対応した大きさの電流をラインL1に流す。この際、ラインL1の電圧PGに基づき、トランジスタQ6は、出力ラインLOTの電圧値が参照電圧VRと等しくなるように、ドレイン電流を出力ラインLOTに送出する。
【0032】
上記した構成により、降圧回路11は、電源電圧VDDを降圧して、この電源電圧VDDの電圧値よりも低い一定の電圧値(例えば、電源電圧VDDにおける電圧範囲内の最小電圧値)を有する降圧電圧VDDLを生成し、これを昇圧回路12に供給する。
【0033】
図2に示す制御回路13は、例えば図4に示すように、クロック発生回路131及びアンドゲート132を有する。
【0034】
クロック発生回路131は、図5に示すように論理レベル1に対応した状態と論理レベル0に対応した状態とを交互に繰り返すクロック信号CLK0を生成し、これをアンドゲート132に供給する。アンドゲート132は、電圧検知回路15から供給されたフラグ信号FLGと、メモリ制御部103から供給された昇圧制御信号Sと、が共に図5に示すように論理レベル1を表す場合には、クロック信号CLK0をそのままクロック信号CLKとして昇圧回路12に供給する。一方、昇圧制御信号S及びフラグ信号FLGのうちの少なくとも一方が論理レベル0を表す場合には、アンドゲート132は、クロック信号CLKを論理レベル0の状態に固定し、事実上、クロック信号CLKの生成動作を停止する。
【0035】
昇圧回路12は、降圧電圧VDDLを昇圧して、電源電圧VDDよりも高い電圧値を有する出力電圧VPPを生成する。
【0036】
図6は、昇圧回路12の一例を示す回路図である。図6に示すように、昇圧回路12は、縦続に接続されたnチャネルMOS型のトランジスタT0、T1、T2、・・・T(k)(kは2以上の整数)と、コンデンサC1〜C(k)と、インバータIV1及びIV2とを含む。トランジスタT0〜T(k)の各々は、自身のゲート端及びソース端同士が接続されている。これらトランジスタT0〜T(k)のうちの先頭のトランジスタT0のソース端には降圧電圧VDDLが印加されており、ドレイン端は、次段のトランジスタT1のソース端及びコンデンサC1の一端に接続されている。また、トランジスタT1のドレイン端は、次段のトランジスタT2のソース端及びコンデンサC2の一端に接続されている。また、トランジスタT2のドレイン端は、次段のトランジスタT3のソース端及びコンデンサC3の一端に接続されている。要するに、トランジスタTj(jは0〜k−1の整数)のドレイン端は、次段のトランジスタT(j+1)のソース端及びコンデンサC(j+1)の一端に接続されている。
【0037】
コンデンサC1〜C(k)のうちの偶数番のコンデンサ各々の他端には、クロック信号CLKの論理レベルをインバータIV1によって反転した、例えば図5に示すような反転クロック信号CLKPが供給されている。奇数番のコンデンサ各々の他端には、反転クロック信号CLKPの論理レベルをインバータIV2によって反転した、例えば図5に示すようなクロック信号CLKQが供給されている。
【0038】
インバータIV1は、降圧電圧VDDLを自身のソース端に受けるpチャネルMOS型のトランジスタQPと、接地電位VSSを自身のソース端で受けるnチャネルMOS型のトランジスタQNとを含む。インバータIV1は、トランジスタQP及びQN各々のゲート端でクロック信号CLKを受ける。インバータIV1は、図5に示すように当該クロック信号CLKの論理レベルを反転させたクロック信号として、降圧電圧VDDに対応した振幅を有する反転クロック信号CLKPを生成する。インバータIV1は、この反転クロック信号CLKPを、トランジスタQP及びQN各々のドレイン端を介して、コンデンサC1〜C(k)のうちの偶数番のコンデンサ各々の他端及びインバータIV2に供給する。インバータIV2は、インバータIV1と同様な構成、つまり降圧電圧VDDLを自身のソース端に受けるpチャネルMOS型のトランジスタQPと、接地電位VSSを自身のソース端で受けるnチャネルMOS型のトランジスタQNとを含む。インバータIV2は、自身のトランジスタQP及びQN各々のゲート端で反転クロック信号CLKPを受け、当該反転クロック信号CLKPの論理レベルを反転させたクロック信号として、降圧電圧VDDに対応した振幅を有するクロック信号CLKQを生成する。インバータIV2は、このクロック信号CLKQを、自身のトランジスタQP及びQN各々のドレイン端を介して、コンデンサC1〜C(k)のうちの奇数番のコンデンサ各々の他端に供給する。
【0039】
図6に示す構成では、先ず、電圧供給トランジスタとしてのトランジスタT0が、降圧電圧VDDLに対応した電圧をトランジスタT1のソース端に供給する。この際、コンデンサC1〜C(k)は、クロック信号CLKQに応じて、トランジスタT1〜T(k)のうちの奇数番目のトランジスタ各々のソース端及びゲート端の電圧を昇圧すると共に、反転クロック信号CLKPに応じてトランジスタT1〜T(k)のうちの偶数番目のトランジスタ各々のソース端及びゲート端の電圧を昇圧する。これにより、トランジスタT1〜T(k)のうちの奇数番目のトランジスタ群と、偶数番目のトランジスタ群とが交互に以下のように動作する。
【0040】
つまり、奇数番目のトランジスタの各々が、前段のトランジスタに接続されているコンデンサにて昇圧された電圧を取り込んで次段のトランジスタに供給する動作と、偶数番目のトランジスタの各々が、前段のトランジスタに接続されているコンデンサにて昇圧された電圧を取り込んで次段のトランジスタに供給する動作と、が交互に繰り返される。これにより、縦続接続されているトランジスタT1〜T(k)のうちのトランジスタT1のソース端に供給された降圧電圧VDDLの電圧値が、トランジスタT2〜T(k)を経て徐々に増加する。そして、最終段のトランジスタT(k)のドレイン端から、最も高い電圧値にまで昇圧された出力電圧VPPが出力される。ここで、クロック信号CLKの周波数、或いはコンデンサC1〜C(k)各々の静電容量を変更することにより、昇圧回路12の昇圧能力を制御することが可能である。つまり、クロック信号CLKの周波数を高くする、或いはコンデンサC1〜C(k)各々の静電容量を大きくするほど、昇圧回路12での単位時間あたりの電圧の増加量を増やすことができる。
【0041】
昇圧回路12は、この出力電圧VPPを、図2に示すように出力端子14及び電圧検知回路15に供給する。
【0042】
電圧検知回路15は、抵抗RA及びリミッタLMを含む分圧回路151と、コンパレータ152と、を有する。抵抗RAは抵抗値r1を有し、その一端は出力端子14に接続されており、他端はリミッタLMの一端に接続されている。リミッタLMの他端には接地電位VSSが印加されている。リミッタLMは、電圧調整信号CVに応じて自身の抵抗値r2が可変な例えば可変抵抗である。リミッタLMは、出力電圧VPPの電圧値を設定する設定電圧の増加を促す電圧調整信号CVが供給された場合には、自身の抵抗値r2を低下する一方、この設定電圧の低下を促す電圧調整信号CVが供給された場合には抵抗値r2を増加する。
【0043】
電圧検知回路15は、出力端子14の電圧、つまり出力電圧VPPを抵抗RA及びリミッタLMで分圧した以下のモニタ電圧VMONを、コンパレータ152の反転入力端子に供給する。
VMON=(VPP・r2)/(r1+r2)
コンパレータ152の非反転入力端子には、昇圧動作を実行するか否かを判定する閾値となる基準電圧VREFが印加されている。コンパレータ152は、モニタ電圧VMONの電圧値と基準電圧VREFの電圧値とを大小比較する。この際、コンパレータ152は、モニタ電圧VMONの電圧値が基準電圧VREF以上である場合には論理レベル0、モニタ電圧VMONの電圧値が基準電圧VREF未満である場合には論理レベル1を有するフラグ信号FLGを制御回路13に供給する。
【0044】
よって、モニタ電圧VMONの電圧値が基準電圧VREF未満となる期間、つまりフラグ信号FLGが論理レベル1となる期間中は、制御回路13は、図5に示すように論理レベル0の状態と論理レベル1の状態を交互に繰り返すクロック信号CLKを昇圧回路12に供給する。かかるクロック信号CLKが供給されている間に亘り、昇圧回路12は、降圧電圧VDDLを昇圧する。一方、モニタ電圧VMONの電圧値が基準電圧VREF以上となる期間、つまりフラグ信号FLGが論理レベル0となる期間中は、制御回路13は、図5に示すように論理レベル0の状態固定となるクロック信号CLKを昇圧回路12に供給する。これにより、昇圧回路12は、降圧電圧VDDLの昇圧動作を停止する。よって、この間、降圧電圧VDDLの電圧値は徐々に低下する。
【0045】
このように、昇圧回路12による昇圧処理と、昇圧処理の停止とを交互に繰り返すことにより、出力電圧VPPの電圧値が、電源電圧VDDよりも高い所望の設定電圧値に収束(リップルを含む)して行く。
【0046】
次に、上記した電源電圧VDD及び出力電圧VPPと、出力電圧VPPに生じるリップルとの関係について、図2に示される電圧供給回路10と、特許文献1に開示されている電圧供給回路100とで対比しつつ説明する。
【0047】
図7は、出力電圧VPPと出力電流との関係を表す電圧(VPP)電流特性図である。
【0048】
尚、図7において、破線は、特許文献1に記載の電圧供給回路に、比較的高い第1の電圧値を有する電源電圧VDDが供給された場合での電圧電流特性CHUを示し、一点鎖線は、特許文献1に記載の電圧供給回路に、第1の電圧値よりも低い第2の電圧値を有する電源電圧VDDが供給された場合での電圧電流特性CHLを示す。また、図7において、実線は、図2に示す電圧供給回路10の昇圧回路12での電圧電流特性CHXを示す。
【0049】
ここで、図7に示すように、昇圧回路の昇圧動作によって生成された出力電圧VPPの電圧値が低いほど、当該昇圧回路によって出力可能な出力電流が大きくなる。つまり、昇圧回路は、出力電圧VPPとして設定する設定電圧を低くするほど、多くの電流を出力することが可能となる。
【0050】
ところで、特許文献1に記載の電圧供給回路では、昇圧回路が電源電圧VDDを受け、この電源電圧VDDを昇圧対象として昇圧処理を施すようにしている。この際、図7に示すように、昇圧回路が受ける電源電圧VDDの電圧値が高い場合(CHU)には、低い場合(CHL)に比して出力電流が大きくなる。よって、特許文献1に記載の電圧供給回路では、外部から供給された電源電圧VDDの電圧値に依存して、図7に示すように、出力電流の差UVが生じる。
【0051】
一方、図2に示す電圧供給回路10では、昇圧回路12は、電源電圧VDDではなく、この電源電圧VDDの電圧値を降圧回路11によって降圧した降圧電圧VDDLを受け、当該降圧電圧VDDLに昇圧処理を施すようにしている。この際、降圧電圧VDDLは、電源電圧VDDの電圧値に依存しない、当該電源電圧VDDよりも電圧値が低い一定電圧である。
【0052】
よって、図2に示される電圧供給回路10によれば、図7の電圧電流特性CHXにて示されるように、出力電圧VPPの電圧値に対応した出力電流の大きさは、特許文献1に記載の昇圧回路に比べて小さく、且つ電源電圧VDDの電圧値に依存することなく一定である。
【0053】
従って、図2に示される電圧供給回路10によれば、電源電圧VDDの電圧値に拘わらず、出力電流を小さくすることができるので、この出力電流が大きいほど大きくなるという出力電圧VPPのリップルの振幅を抑制することが可能となる。
【0054】
図8は、昇圧回路の昇圧動作によって出力電圧VPPの電圧値が上昇し、所望の設定電圧Vsetに到達した後に出力電圧VPPに生じるリップルの形態を表す波形図である。尚、図8において、破線は、特許文献1に記載の電圧供給回路に比較的高い第1の電圧値を有する電源電圧VDDが供給された場合に生成される出力電圧VPPの波形を示し、一点鎖線は、この電圧供給回路に第1の電圧値よりも低い第2の電圧値を有する電源電圧VDDが供給された場合に生成される出力電圧VPPの波形を示す。また、図8において、実線は、図2に示される電圧供給回路10から出力される出力電圧VPPの波形を示す。
【0055】
ここで、特許文献1に記載の電圧供給回路では、電源電圧VDDの電圧値が高いほど出力電流が大きくなり、出力電圧VPPの電圧値の上昇速度が上がるが、その分だけリップルの振幅も大きくなる。例えば、図8に示すように、比較的高い電圧値を有する電源電圧VDDが供給されている場合(破線にて示す)に出力電圧VPPに生じるリップルの振幅A1は、比較的低い電圧値を有する電源電圧VDDが供給されている場合(一点鎖線にて示す)に出力電圧VPPに生じるリップルの振幅A2よりも大きくなる。
【0056】
一方、図2に示される電圧供給回路10では、電源電圧VDDにおける電圧値の電圧範囲内の最小電圧値に固定された降圧電圧VDDLを昇圧して出力電圧VPPを得ている。よって、図8に示すように、電圧供給回路10で生成された出力電圧VPPに生じるリップルの振幅は、特許文献1に記載の電圧供給回路によるリップルの振幅A1及びA2のいずれよりも小であり、且つ電源電圧VDDの電圧値に拘わらず一定の振幅A3となる。
【0057】
よって、電圧供給回路10によれば、電源電圧(VDD)を昇圧して所望の設定電圧値を有する出力電圧(VPP)を得るにあたり、当該出力電圧に生じるリップルの振幅を抑えることが可能となる。
【0058】
従って、当該出力電圧を書込電圧とし、この書込電圧の電圧値を段階的に増加させつつNAND型フラッシュメモリにデータを書き込むにあたり、その電圧値の増加幅を所望の幅にすることが可能となるので、正確なデータ書込が為されるようになる。
【0059】
尚、上記した実施例では、電圧供給回路10を、NAND型フラッシュメモリに設けた場合について説明したが、該電圧供給回路10を、NOR型EEPROM(electrically erasable programmable read-only memory)、DINOR型EEPROM、 AND型EEPROMなどの半導体記憶装置や、電源電圧VDDよりも電圧値が高い電圧を必要とする回路等に設けるようにしても良い。
【0060】
また、上記実施例による電圧供給回路10では、降圧回路11が、電源電圧VDDの電圧値を、当該電源電圧の電圧値として取り得る最小電圧値に降圧した降圧電圧VDDLを昇圧回路12に供給しているが、降圧電圧VDDLの電圧値としては、電源電圧の電圧値として取り得る最小電圧値よりも低い電圧値であっても構わない。これにより、リップルの振幅を図3に示す振幅A3よりも小さくすることが可能となる。
【0061】
要するに、電圧供給回路としては、電源電圧(VDD)に基づいて出力電圧(VPP)を生成する為に、以下の降圧回路(11)及び昇圧回路(12)を設けたものであれば良いのである。すなわち、降圧回路は、電源電圧を降圧してこの電源電圧の電圧値よりも低い一定の電圧値を有する降圧電圧(VDDL)を生成する。昇圧回路は、この降圧電圧を昇圧することにより電源電圧の電圧値よりも高い電圧値を有する電圧を出力電圧として生成する。
【符号の説明】
【0062】
10 電圧供給回路
11 昇圧回路
12 降圧回路
100 電圧生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8