【実施例】
【0106】
以下において、本発明を下記の実施例によって詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0107】
実施例1: ヨーグルトとスフィンゴミエリンの同時投与におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、乳由来のスフィンゴミエリンのみを投与するか、粉末のヨーグルトと乳由来のスフィンゴミエリンを同時に投与して、リンパ液中に取り込まれたスフィンゴミエリンの吸収量を評価した。
【0108】
[実験方法]
Sugawaraらの方法(J. Lipid Res. 2010, 51, 1761-1769)に従って実験した。具体的には、下記の通りであった。
【0109】
(1−1) スフィンゴミエリンの投与およびリンパ液の回収
ラット(SD系、雄、体重:約350g)を1週間で馴化飼育した後に、胸管リンパと胃にカニュレを処置し、シリンジポンプを用いて、緩衝液(グルコース:139mM、塩化ナトリウム:85mM)を胃内へ一晩で(約12時間で)送液(流速:3mL/min)した。
【0110】
そして、後述するような各試験溶液(A)、(B)および(C)に対応して、ラットを3群(a、b、c)に群分けし、これら各試験溶液を胃内に投与する1時間前から、3群(a、b、c)について、EDTA処理したスピッツ管にリンパ液を回収した。
【0111】
さらに、シリンジポンプを用いて、各試験溶液(A)、(B)および(C)(各3mL)を胃内へ1分間で送液(流速:3mL/min)した後に、シリンジポンプを用いて、緩衝液を胃内へ6時間で送液(流速:3mL/min)した。
【0112】
そして、この1時間毎で、3群(a、b、c)について、EDTA処理したスピッツ管にリンパ液を回収した。
【0113】
(1−2) 試験溶液
各試験溶液(A)、(B)および(C)を下記のようにして調製した。
(A) トリオレイン:200mg、牛血清アルブミン:50mg、およびタウロコール酸ナトリウム:200mgを混合した。
【0114】
(B) トリオレイン:195mg、牛血清アルブミン:50mg、およびタウロコール酸ナトリウム:200mgを混合した液体に、乳由来のスフィンゴミエリン(SM、純度98%、長良サイエンス社):5mgを超音波で乳化させた。
【0115】
(C) トリオレイン:192mg、牛血清アルブミン:50mg、およびタウロコール酸ナトリウム200mgを混合した液体に、乳由来のスフィンゴミエリン(SM、純度98%、長良サイエンス社):4.75mgを超音波で乳化させた。これと合わせて、粉末のヨーグルト(YG、脂肪:約0%、明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):250mgを用意した。
【0116】
(1−3) 評価群の構成
試験溶液(A)、(B)および(C)に対応した3群(a、b、c)を次に示し、それらの内容を表1に示した。なお、各群のラットを5匹ずつとした。
(a) 対照群: 試験溶液(A):3mL/rat(SM:0mg/rat)で胃内投与した。
(b) SM群: 試験溶液(B):3mL/rat(SM:5mg/rat)で胃内投与した。
(c) SM+YG群: 試験溶液(C):3mL/rat(SM:4.75mg/rat)と合わせて、YG:250mg/ratで胃内投与した。
【0117】
【表1】
【0118】
(1−4) 評価指標
試験溶液を投与した後に、ラットのリンパ液のスフィンゴミエリンの吸収量を評価した。具体的には、ラットのリンパ液には存在せず、乳由来のスフィンゴミエリンに特異的に存在するセラミド分子種(d16:1−C16:0)、スフィンゴミエリン分子種(d16:1−C16:0 SM)の動態を指標として、吸収性の違いを比較した。
【0119】
(1−5) 分析方法
ラットから採取したリンパ液の脂質の抽出は、Folchらの方法(J. Biol. Chem., 1957, 226, 497-509)に従った。
具体的には、リンパ液:200μL(リンパ液を2.5mL/hで回収した場合)に、生理食塩水:800μLを加えて、クロロホルム−メタノールの混合液(2:1(v/v)):4mLを加え、振とう(200rpm、15分間)した。次いで、遠心分離(2000rpm、10分間)した後に、下層を別のチューブに移し、遠心濃縮してから、メタノール:500μLを加えて、セラミドの分析用の試料を調製した。さらに、メタノールで10倍に希釈して、スフィンゴミエリンの分析用の試料を調製した。
【0120】
標準品には、セラミド(d18:1−C16:0、Avanti polar lipids社より入手)、スフィンゴミエリン(d18:1−C16:0 SM、Avanti polar lipids社より入手)を用いた。これらの標準品を当量として、LC/MS/MS(ACQUITY premier XE (Waters社製))を用いて、セラミド(d16:1−C16:0)、スフィンゴミエリン(d16:1−C16:0 SM)を定量した。このとき、カラムには、ACQUITY UPLC BEH C18(2mm×100mm、Waters社製)を用い、移動相Aには、酢酸アンモニウム(5mM)/メタノール(95%)を、移動相Bには、酢酸アンモニウム(5mM)/メタノールを用いた。
【0121】
そして、移動相Aを100%から開始し、30分後に、移動相Bを100%になるようにグラジエントしてから、移動相Bを100%にして2分間で保持し、さらに3分後に、移動相Aが100%になるように切り替えた。ここで、LC/MS/MSにおける1試料の測定時間を35分間、移動相の流速を0.4mL/分、カラムの温度を40℃に設定し、エレクトロ・スプレー・イオン化を用いて、ポジティブモードで検出した。LC/MS/MSの分析変数として、キャピラリーの電圧を3000V、ソースの温度を120℃、脱溶媒の温度を400℃、脱溶媒ガスの流速を850L/時間、コーンガスの流速を50L/時間、コーン電圧を40V/時間に設定した。
【0122】
[結果]
結果は
図1および
図2に示されるとおりであった。
【0123】
図1には、セラミド分子種(d16:1−C16:0)量の推移を示した。ここで、各試験溶液を経口投与してから4、5、6時間後に、SM群に比べて、SM+YG群において、セラミド分子種量は高値であった。
図2には、スフィンゴミエリン分子種(d16:1−C16:0 SM)量の推移を示した。ここで、各試験溶液を経口投与してから3、4、5、6時間後に、SM群に比べて、SM+YG群において、スフィンゴミエリン分子種量は高値であった。
【0124】
これらの結果から、スフィンゴミエリンとヨーグルトを同時に経口摂取することにより、セラミドの吸収が促進されると共に、スフィンゴミエリンの吸収が促進されることがわかった。
【0125】
実施例2: ヨーグルトと乳由来スフィンゴミエリン高含有リン脂質濃縮物(MPL)の同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与するか、ヨーグルトとMPLを同時に経口投与するかして、血中のセラミド量を評価した。
【0126】
[実験方法]
(2−1) MPLの経口投与および採血
ラット(SD系、雄、体重:約300g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、2群に群分けし、下記に示す各試験溶液(D)および(E)を経口投与し、その投与前、その投与の90分後、180分後、270分後、360分後に、尾静脈より採血した。そして、常法に従い、血清を得た。
【0127】
(2−2) 評価群の構成
(d) MPL群: 試験溶液(D):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(e) MPL+YG群: 試験溶液(E):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
【0128】
(2−3) 評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、ラットの血清には存在せず、乳由来のスフィンゴミエリンに特異的に存在するセラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)の動態を指標として、血清濃度の違いを比較した。
【0129】
(2−4) 分析方法
ラットから採取した血清脂質の抽出は、Folchらの方法(J. Biol. Chem., 1957, 226, 497-509)に従った。
具体的には、血清:50μLに、生理食塩水:200μLを加えてから、クロロホルム−メタノールの混合液(2:1(v/v)):1mLを加え、抽出した。次いで、遠心分離(2000rpm、10分間)した後に、下層を別のチューブに移し、遠心濃縮してから、メタノール:200μLを加えて、セラミドの分析用の試料を調製した。
【0130】
標準品には、セラミド(d18:1−C16:0、d18:1−C22:0、d18:1−C23:0、d18:1−C24:0、Avanti polar lipids社より入手)を用いた。これらの標準品を当量として、LC/MS/MS(ACQUITY premier XE(Waters社製))を用い、セラミド(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を定量した。このとき、カラムには、ACQUITY UPLC BEH C18(2mm×100mm、Waters社製)を用い、移動相Aには、酢酸アンモニウム(5mM)/メタノール(95%)を、移動相Bには、酢酸アンモニウム(5mM)/メタノールを用いた。
【0131】
そして、移動相Aを100%から開始し、30分後に、移動相Bを100%になるようにグラジエントしてから、移動相Bを100%にして2分間で保持し、さらに3分後に、移動相Aが100%になるように切り替えた。ここで、LC/MS/MSにおける1試料の測定時間を35分間、移動相の流速を0.4mL/分、カラムの温度を40℃に設定し、エレクトロ・スプレー・イオン化を用いて、ポジティブモードで検出した。LC/MS/MSの分析変数として、キャピラリーの電圧を3000V、ソースの温度を120℃、脱溶媒の温度を400℃、脱溶媒ガスの流速を850L/時間、コーンガスの流速を50L/時間、コーン電圧を40V/時間に設定した。
【0132】
[結果]
結果は
図3および
図4に示されるとおりであった。
【0133】
図3には、血清セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)量の変化を示した。セラミド分子種(d16:1−C16:0)では、試験溶液の投与後90、180分後、セラミド分子種(d16:1−C22:0、d16:1−C23:0)では、試験溶液の投与後90、180、270分後、セラミド分子種(d16:1−C24:0)では、試験溶液の投与後90、180、270、360分後に、MLP群に比べて、MPL+YG群において、有意に高値であった。
【0134】
図4には、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL+YG群において、有意に高値であった。
【0135】
スフィンゴミエリンを高含有に含む乳由来のリン脂質濃縮物とヨーグルトを同時に経口摂取することにより、スフィンゴミエリンの吸収が促進されることがわかった。
【0136】
実施例3: 紫外線の照射下における皮膚のバリア機能の悪化に対するヨーグルトとスフィンゴ脂質の影響
紫外線を照射することによって、皮膚のバリア機能を悪化させたヘアレスマウスに、スフィンゴミエリンまたは、スフィンゴミエリンとヨーグルトを3日間経口摂取させて、皮膚バリア機能(角層水分量、経皮水分蒸散量(TEWL))への影響を評価した。
スフィンゴ脂質として、乳由来のスフィンゴミエリン(SM、純度98%、長良サイエンス社)を使用した。
【0137】
[実験方法]
(3−1) 紫外線の照射による皮膚のバリア機能悪化状態の誘導
ヘアレスマウス(Hos:HR−1、雌、4週齢 星野試験動物飼育所)を1週間で馴化させた後に、20mJ/cm
2の条件で、紫外線(UV−B(GL20SE、三共電気株式会社))を照射した。
【0138】
(3−2) 評価群の構成
皮膚のバリア機能悪化の試験系を用いて、スフィンゴミエリンまたはスフィンゴミエリンとヨーグルトの経口投与による皮膚の状態への影響を評価した。各群の試験系を8匹ずつとした。動物実験の群構成(評価群の構成)とスフィンゴミエリンとヨーグルトの含量の関係を、下記に示した。
【0139】
Control群(対照群): 通常飼料を摂取する群
SM群: スフィンゴミエリンを10mg/kg/dayで経口投与する群
SM+YG群: スフィンゴミエリンとヨーグルトをそれぞれ10mg/kg/day、11.3g/kg/dayで経口投与する群
(ただし、前記SM群とSM+YG群では共に、スフィンゴミエリンやヨーグルトに加えて、さらにコラーゲンを1000mg/kg/dayの割合で経口投与している)。
【0140】
(3−3) 評価試験方法
各試験群について、角層水分量およびTEWLを測定し、これらより、皮膚のバリア機能を評価した。
【0141】
(3−3−1) 角層水分量
角層水分量は、コルネオメーター(Corneometer,Courage and Khazaka Electronic GmbH社)を用いて、5回/匹で測定した。このうち、最大値と最小値を除いた3回の測定値の平均を採用し、角層水分量とした。
【0142】
(3−3−2) 経皮水分蒸散量(TEWL)
経皮水分蒸散量(TEWL)は、テヴァメーター(Tewemeter MPA580,Courage and Khazaka Electronic GmbH社)に、29℃に保温したプローブを20秒間で用いて測定した。これら得られた測定結果について、3回の平均を採用、経皮水分蒸散量とした。
【0143】
[評価結果]
(角層水分量)
結果は、
図5に示した通りであった。
図5において、Control群の角層水分量に比べて、SM群およびSM+YG群の角層水分量は高値であった。さらに、SM+YG群はSM群に比べ、高値であった。このことから、SM+YG群は、SM群に比べて皮膚のバリア機能の悪化がより抑制(改善)されたと考えられた。
【0144】
(経皮水分蒸散量(TEWL))
結果は、
図6に示した通りであった。
図6において、Control群のTEWLに比べて、SM群のTEWLは低値であった。さらに、SM+YG群はSM群に比べ、低値であった。これらから、SM+YG群は、SM群に比べて皮膚のバリア機能の悪化がより抑制(改善)されたと考えられた。
【0145】
スフィンゴ脂質とヨーグルト(発酵乳)を経口摂取することで、紫外線に基づく皮膚のバリア機能の悪化がより抑制(改善)されることが示唆された。さらに、スフィンゴミエリンとヨーグルト(発酵乳)を3日間以上で継続して摂取する程、皮膚のバリア機能の悪化が抑制(改善)されやすいことが示唆された。
【0146】
実施例4: 未発酵乳とMPLの同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与した場合、ヨーグルトとMPLを同時に経口投与した場合、および、未発酵乳とMPLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
【0147】
[実験方法]
(4−1)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(F)、(G)および(H)を経口投与した。次いで、投与前、投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
【0148】
(4−2)評価群の構成
(f)MPL群: 試験溶液(F):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(g)MPL+YG群: 試験溶液(G):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(h)MPL+未発酵乳群: 試験溶液(H):体重の1kgあたり、脱脂粉乳(明治脱脂粉乳、株式会社明治より入手):1.3g、およびMPL:537mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
【0149】
(4―3)評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を指標とした。
【0150】
[結果]
結果は、
図7に示されるとおりであった。
【0151】
図7では、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL群、MPL+未発酵乳群、MPL+YG群の順に有意に高値になった。
【0152】
スフィンゴミエリンを高含有に含む乳由来のリン脂質濃縮物と未発酵乳を同時に経口摂取することにより、スフィンゴミエリンの吸収が促進されるが、スフィンゴミエリンを高含有に含む乳由来のリン脂質濃縮物とヨーグルトを同時に経口摂取することにより、さらにスフィンゴミエリンの吸収が促進されることがわかった。
【0153】
実施例5: ヨーグルト分画物とMPLの同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与した場合、ヨーグルトとMPLを同時に経口投与した場合、ヨーグルト分画上清物とMPLを同時に経口投与した場合、およびヨーグルト分画沈殿物とMPLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
【0154】
[実験方法]
(5−1)ヨーグルト分画物の調製方法
ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手)を6000rpmで10分間遠心分離し、ヨーグルト分画上清物およびヨーグルト分画沈殿物を得た。
【0155】
(5−2)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(I)、(J)および(K)および(L)を経口投与した。次いで、投与前、投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
【0156】
(5−3)評価群の構成
(i)MPL群: 試験溶液(I):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(j)MPL+YG群: 試験溶液(J):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(k)MPL+YG上清群: 試験溶液(J):体重の1kgあたり、ヨーグルト上清:743mg、およびMPL:539mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(l)MPL+YG沈殿群: 試験溶液(K):体重の1kgあたり、ヨーグルト沈殿:455mg、およびMPL:536mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
【0157】
(5―4)評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を指標とした。
【0158】
[結果]
結果は、
図8に示されるとおりであった。
【0159】
図8では、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL+YG群およびMPL+YG上清群において、有意に高値であったが、MPL群とMPL+YG沈殿群の間に有意な差はみられなかった。
【0160】
スフィンゴミエリンを高含有に含む乳由来のリン脂質濃縮物とヨーグルトの上清画分を同時に経口摂取することにより、スフィンゴミエリンの吸収が促進されることがわかった。これらの結果は、ヨーグルトの上清画分にスフィンゴミエリンの吸収を促進させる成分が含まれていることを示していると考えられた。
【0161】
実施例6: 乳酸とMPLの同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与した場合、ヨーグルトとMPLを同時に経口投与した場合、および乳酸とMPLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
【0162】
[実験方法]
(6−1)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(L)、(M)および(N)を経口投与した。次いで、投与前、投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
【0163】
(6−2)評価群の構成
(l)MPL群: 試験溶液(L):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(m)MPL+YG群: 試験溶液(M):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(n)MPL+乳酸群: 試験溶液(N):体重の1kgあたり、乳酸(和光純薬工業株式会社より入手):109mg(ヨーグルト中の乳酸量とpHを等しくした)、およびMPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
【0164】
(6―3)評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を指標とした。
【0165】
[結果]
結果は、
図9に示されるとおりであった。
【0166】
図9では、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL+YG群において、有意に高値であったが、MPL群とMPL+乳酸群の間に有意な差が見られなかった。
【0167】
これらの結果は、ヨーグルト中の乳酸はスフィンゴミエリンの吸収を促進させる成分でないことを示していると考えられた。
【0168】
実施例7: ホエイたんぱく質とMPLの同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与した場合、ヨーグルトとMPLを同時に経口投与した場合、およびホエイたんぱく質とMPLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
【0169】
[実験方法]
(7−1)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(O)、(P)および(Q)を経口投与た。次いで、投与前、投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
【0170】
(7−2)評価群の構成
(o)MPL群: 試験溶液(O):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(p)MPL+YG群: 試験溶液(P):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(q)MPL+ホエイたんぱく質群: 試験溶液(Q):体重の1kgあたり、ホエイたんぱく質(アラセン8899、フォンテラ社より入手):109mg(ヨーグルト中のホエイたんぱく質量と等しくした)、およびMPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
【0171】
(7―3)評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を指標とした。
【0172】
[結果]
結果は、
図10に示されるとおりであった。
【0173】
図10では、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL+YG群において、有意に高値であったが、MPL群とMPL+ホエイたんぱく質群の間に有意な差はみられなかった。
【0174】
これらの結果は、ヨーグルト中のホエイたんぱく質はスフィンゴミエリンの吸収を促進させる成分でないことを示していると考えられた。
【0175】
実施例8: 多糖類とMPLの同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与した場合、ヨーグルトとMPLを同時に経口投与した場合、および多糖類とMPLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
【0176】
[実験方法]
(8−1)多糖類の精製
多糖類の精製はCerningらの方法(J. Dairy Sci., 1992, 75, 692-699)に従った。ヨーグルト上清画分をプロナーゼ(ロシュ製)処理し、たんぱく質を加水分解した。3倍量のエタノールを添加し、一晩冷凍し、遠心分離により多糖類を含む沈殿物を得た。沈殿物を限外ろ過膜(Merck Millipore, Centriprep Ultracel YM−3)により、たんぱく質加水分解物を除去し、多糖類を精製した。
【0177】
(8−2)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(R)、(S)および(T)を経口投与した。次いで、投与前、その投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
【0178】
(8−3)評価群の構成
(r)MPL群: 試験溶液(R):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(s)MPL+YG群: 試験溶液(S):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(t)MPL+多糖類群: 試験溶液(T):体重の1kgあたり、多糖類:52.5mg(ヨーグルト中の多糖類と等しくした)、およびMPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
【0179】
(8―4)評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を指標とした。
【0180】
[結果]
結果は、
図11に示されるとおりであった。
【0181】
図11には、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL+YG群およびMPL+多糖類群において、有意に高値であった。
【0182】
スフィンゴミエリンを高含有に含む乳由来のリン脂質濃縮物とヨーグルト中の多糖類を同時に経口摂取することにより、スフィンゴミエリンの吸収が促進され、ヨーグルト中の多糖類がスフィンゴミエリンの吸収を促進させる成分の一つであることを示していると考えられた。
【0183】
実施例9: 乳酸菌および/またはビフィズス菌により調製されたヨーグルトとMPLの同時摂取におけるスフィンゴミエリンの吸収性の評価試験
ラットに、MPLのみを経口投与した場合、乳酸菌および/またはビフィズス菌により調製されたヨーグルトとMPLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
【0184】
(9−1)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(U)、(V)、(W)、(X)および(Y)を経口投与した。次いで、投与前、その投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
【0185】
(9−2)評価群の構成
(u)MPL群: 試験溶液(U):体重の1kgあたり、MPL:540mg(スフィンゴミエリンとして100mg)の用量を投与した。
(v)MPL+YG(1)群: 試験溶液(V):体重の1kgあたり、ヨーグルト(1)(乳酸菌Lactobacillus GasseriおよびStreptococcus thermophilusにより調製、明治プロビオヨーグルトLG21脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(w)MPL+YG(2)群: 試験溶液(W):体重の1kgあたり、ヨーグルト(2)(乳酸菌Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusおよびStreptococcus thermophilusにより調製、明治プロビオヨーグルトR−1脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(x)MPL+YG(3)群: 試験溶液(W):体重の1kgあたり、ヨーグルト(3)(乳酸菌Lactobacillus Gasseri、ビフィズス菌Bifidobacterium longumにより調製、ナチュレ恵 megumi脂肪0(ゼロ)、雪印メグミルク株式会社より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
(y)MPL+YG(4)群: 試験溶液(Y):体重の1kgあたり、ヨーグルト(4)(ビフィズス菌 Bifidobacterium longumにより調製、ビヒダスBB536プレーンヨーグルト脂肪ゼロ、森永乳業株式会社より入手):11.3g、およびMPL:535mg(スフィンゴミエリンの総量として100mg)の用量を投与した。
【0186】
(9―3)評価指標
試験溶液を経口投与した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、セラミド分子種(d16:1−C16:0、d16:1−C22:0、d16:1−C23:0、d16:1−C24:0)を指標とした。
【0187】
[結果]
結果は、
図12に示されるとおりであった。
【0188】
図12では、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がMPL群に比べて、MPL+YG(1)群、MPL+YG(2)群、MPL+YG(3)群、MPL+YG(4)群において、有意に高値であった。
【0189】
スフィンゴミエリンを高含有に含む乳由来のリン脂質濃縮物と様々な乳酸菌および/またはビフィズス菌によって調製されたヨーグルトを同時に経口摂取することにより、スフィンゴミエリンの吸収が促進されることを示していると考えられた。
【0190】
実施例10: ヨーグルトとグルコシルセラミドの同時摂取におけるグルコシルセラミドの吸収性の評価試験
ラットに、グルコシルセラミド(GC)のみを経口投与した場合、ヨーグルトとグルコシルセラミドLを同時に経口投与した場合のそれぞれについて、血中のセラミド量を評価した。
【0191】
[実験方法]
(10−1)
ラット(SD系、雄、体重:約270g)を1週間で馴化飼育した。そして、ラットを16時間で絶食させた後に、3群に群分けし、下記に示す試験溶液(Y)および(Z)を経口投与した場合、投与前、投与の90分後、180分後、270分後、および360分後の各タイミングに、尾静脈より採血を行い、常法に従い、血清を得た。
【0192】
(10−2)評価群の構成
(y)GC群: 試験溶液(Y):体重の1kgあたり、GC:1613mg(グルコシルセラミドとして100mg、ニップンセラミドRPS、日本製粉より入手)の用量を投与した。
(z)GC+YG群: 試験溶液(Z):体重の1kgあたり、ヨーグルト(明治ブルガリアヨーグルト脂肪ゼロ、株式会社明治より入手):11.3g、およびGC:1613mgの用量を投与した。
【0193】
(10―3)評価指標
試験溶液を携行した後に、ラット血清中のセラミド量を評価した。
具体的には、Sugawaraらの報告(J. Lipid Res., 2010, 51, 1761-1769)により、グルコシルセラミド投与後に増加することが知られている血清セラミド分子種(d18:2−C16:0、d18:2−C23:0)を指標とした。
【0194】
[結果]
結果は、
図13に示されるとおりであった。
【0195】
図13では、血清中のセラミド分子種量の時間曲線下面積を示した。いずれのセラミド分子種も、時間曲線下面積がGC群に比べて、GC+YG群において、有意に高値であった。
【0196】
グルコシルセラミドとヨーグルトを同時に経口摂取することにより、グルコシルセラミドの吸収が促進されることがわかった。