特許第6773690号(P6773690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝マテリアル株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社坪田ラボの特許一覧

特許6773690近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法
<>
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000003
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000004
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000005
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000006
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000007
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000008
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000009
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000010
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000011
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000012
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000013
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000014
  • 特許6773690-近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773690
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20201012BHJP
   A61F 9/00 20060101ALI20201012BHJP
   F21V 9/38 20180101ALI20201012BHJP
   F21V 9/08 20180101ALI20201012BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20201012BHJP
【FI】
   A61N5/06 B
   A61F9/00
   F21V9/38
   F21V9/08 200
   H01L33/50
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-565562(P2017-565562)
(86)(22)【出願日】2017年1月31日
(86)【国際出願番号】JP2017003437
(87)【国際公開番号】WO2017135255
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2018年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-17471(P2016-17471)
(32)【優先日】2016年2月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-17472(P2016-17472)
(32)【優先日】2016年2月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513077162
【氏名又は名称】株式会社坪田ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 秀成
(72)【発明者】
【氏名】栗原 俊英
(72)【発明者】
【氏名】坪田 一男
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/186723(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/037120(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0081357(US,A1)
【文献】 特開2011−181739(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0018599(US,A1)
【文献】 特開2013−153965(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0083772(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/152913(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/061942(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
A61F 9/00
F21V 9/00− 9/38
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部を具備する近視抑制物品用光源であって、
前記発光部から放射される光の発光スペクトルは、360nm以上400nm以下の第1の波長から400nm超の第2の波長まで連続し、
前記光は、2600K以上7000K以下の色温度を有するとともに、
式1:∫B(λ)V(λ)dλ=∫P(λ)V(λ)dλ
(P(λ)は前記光の発光スペクトルを表し、B(λ)は、前記光と同じ色温度を示す黒体輻射スペクトルを表し、V(λ)は分光視感効率のスペクトルを表す)
を満たし、且つ、
式2:B(λ’)≦P(λ’)
(P(λ’)は300nm以上400nm以下の波長領域における前記光の発光強度の最大値を表し、B(λ’)は前記光の発光強度が前記最大値である波長における黒体輻射強度を表す)
を満たす、近視抑制物品用光源。
【請求項2】
前記第1の波長は、380nm以上400nm以下である、請求項1に記載の近視抑制物品用光源。
【請求項3】
400nm以下の波長領域において前記光の発光強度が最大である波長は、360nm以上400nm以下である、請求項1に記載の近視抑制物品用光源。
【請求項4】
前記発光スペクトルは、400nm以下の波長領域に発光強度ピークを有し、
前記発光強度ピークにおいて前記光の発光強度が最大である波長は、360nm以上400nm以下である、請求項1に記載の近視抑制物品用光源。
【請求項5】
前記発光スペクトルにおいて、400nmから800nmまでの波長領域の前記光の発光強度の積分値bに対する300nmから400nmまでの波長領域の前記光の発光強度の積分値aの比a/bは、0.1超0.5未満である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の近視抑制物品用光源。
【請求項6】
前記光は、
式3:B(λ’)≦P(λ’)≦B(λ’)×15
をさらに満たす、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の近視抑制物品用光源。
【請求項7】
前記光が4000K以上6700K以下の前記色温度を有する、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の近視抑制物品用光源。
【請求項8】
前記発光部は、
第1の発光ダイオード素子と、
第2の発光ダイオード素子と、を備え、
前記第1の発光ダイオード素子から放射される第1の光の発光スペクトルは、360nm以上400nm以下の波長領域に第1の発光強度ピークを有し、
前記第2の発光ダイオード素子から放射される第2の光の発光スペクトルは、400nm超の波長領域に第2の発光強度ピークを有する、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の近視抑制物品用光源。
【請求項9】
前記第1の発光ダイオード素子および前記第2の発光ダイオード素子は、互いに別々の基板に搭載されている、請求項8に記載の近視抑制物品用光源。
【請求項10】
前記第2の発光ダイオード素子は、
発光ダイオードチップと、
青色蛍光体、緑色乃至黄色蛍光体、および赤色蛍光体を含む3以上の蛍光体を有し、前記3以上の蛍光体が前記発光ダイオードチップから放射される光の少なくとも一部により励起されて前記第2の光を放射する蛍光体層と、を備える、請求項8または請求項9に記載の近視抑制物品用光源。
【請求項11】
前記第2の発光ダイオード素子は、赤色発光ダイオード素子と、緑色発光ダイオード素子と、青色発光ダイオード素子と、を含む、請求項8または請求項9に記載の近視抑制物品用光源。
【請求項12】
前記発光部は、発光ダイオード素子を備え、
前記発光ダイオード素子は、
発光ダイオードチップと、
青色蛍光体、緑色乃至黄色蛍光体、および赤色蛍光体を含む3以上の蛍光体を有し、前記3以上の蛍光体が前記発光ダイオードチップから放射される第1の光の一部により励起されて第2の光を放射する蛍光体層と、を備え、
前記第1の光の発光スペクトルは、360nm以上400nm以下の波長領域に第1の発光強度ピークを有し、
前記第2の光の発光スペクトルは、400nm超の波長領域に第2の発光強度ピークを有し、
前記蛍光体層は、前記第1の光の他の一部を透過する、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の近視抑制物品用光源。
【請求項13】
前記青色蛍光体がユーロピウム(Eu)付活アルカリ土類リン酸塩蛍光体を含み、
前記緑色乃至黄色蛍光体がユーロピウム(Eu)およびマンガン(Mn)付活アルカリ土類マグネシウム珪酸塩蛍光体を含み、
前記赤色蛍光体がユーロピウム(Eu)付活アルカリ土類ニトリドアルミノシリケート蛍光体を含む、請求項12に記載の近視抑制物品用光源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近視抑制物品用光源および近視抑制物品用光源の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末等の電子機器の普及に伴い、近視等の眼疾患の発症人数が世界中で増加している。
【0003】
近視としては、例えば屈折近視または軸性近視が挙げられ、近視の多くは軸性近視である。軸性近視では、眼軸長の伸長に伴って近視が進行し、伸長が不可逆的である。近視が進行して強度近視になると失明の原因にもなり得る。このため、近視を予防する方法や近視の進行を遅らせる方法等の近視抑制方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−181739号公報
【特許文献2】国際公開第2015/186723号
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様が解決しようとする課題の一つは、近視を抑制することである。
【0006】
実施形態の近視抑制物品用光源は、発光部を具備する。発光部から放射される光の発光スペクトルは、360nm以上400nm以下の第1の波長から400nm超の第2の波長まで連続する。光は、2600K以上7000K以下の色温度を有するとともに、式1:∫B(λ)V(λ)dλ=∫P(λ)V(λ)dλ(P(λ)は光の発光スペクトルを表し、B(λ)は、光と同じ色温度を示す黒体輻射スペクトルを表し、V(λ)は分光視感効率のスペクトルを表す)を満たし、且つ、式2:B(λ’)≦P(λ’)(P(λ’)は300nm以上400nm以下の波長領域における光の発光強度の最大値を表し、B(λ’)は光の発光強度が最大値である波長における黒体輻射強度を表す)を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】発光スペクトルの例を示す図である。
図2】発光スペクトルの例を示す図である。
図3】近視抑制物品用光源の使用方法例を説明するための図である。
図4】発光部の構成例を示す平面模式図である。
図5】発光部の構成例を示す断面模式図である。
図6】発光部の他の構成例を示す断面模式図である。
図7】発光部の他の構成例を示す断面模式図である。
図8】発光スペクトルを示す図である。
図9】発光スペクトルを示す図である。
図10】発光スペクトルを示す図である
図11】発光スペクトルを示す図である。
図12】発光スペクトルを示す図である。
図13】発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、例えば厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0009】
実施形態の近視抑制物品用光源は、光の放射が可能な発光部を具備する。近視抑制物品用光源とは、近視抑制光源の一つであり、近視を抑制する特性を有する光を放射することができる光源である。近視の抑制としては、例えば近視を予防することまたは近視の進行を遅らせること等が挙げられる。近視抑制物品用光源としては、例えば近視を抑制するための医療行為に用いられる医療用光照射装置等が挙げられる。これに限定されず、近視抑制物品用光源は、表示装置や照明機器等の発光装置に用いられていてもよい。表示装置や照明機器の具体例については後述する。
【0010】
発光部は、供給される電源電圧に応じて光を放射する。発光部から放射される光は、例えば白色光である。発光部から放射される光の色温度は、例えば2600K以上7000K以下、さらには4000K以上6700K以下であることが好ましい。発光部は、例えばLED(Light Emitting Diode:LED)を用いた発光ダイオード素子を具備する。発光ダイオード素子に限定されず、発光部は白熱電球や蛍光灯を具備していてもよい。
【0011】
図1は、発光部から放射される光の発光スペクトルの例を示す図である。横軸は光の波長であり、縦軸は光の相対発光強度(任意値)である。発光スペクトルは、例えばJIS−C−8152の規格に基づく全光束測定により測定される。
【0012】
図1に示す発光スペクトルは、360nm以上400nm以下の波長から400nm超の波長まで連続する曲線状である。換言すると、360nm以上400nm以下の波長から400nm超の波長までの各波長の発光強度が0超である。すなわち、実施形態の近視抑制物品用光源は、360nm以上400nm以下の波長から400nm超の波長にわたり発光強度を有する光を放射することができる。
【0013】
発光スペクトルは、380nm以上400nm以下の波長から400nm超の波長まで連続していてもよい。また、発光スペクトルは、380nm以上400nm以下の波長から400nm超700nm以下、さらには400nm超750nm以下の波長まで連続していてもよい。さらに、発光スペクトルは、380nm以上400nm以下の波長から750nm以上の波長まで連続していてもよい。例えば、発光部に白熱電球を用いる場合、発光スペクトルが赤外領域の波長まで延在する場合がある。
【0014】
図1に示す発光スペクトルは、400nm以下の波長領域に発光強度ピークを有し、400nm超の波長領域に複数の発光強度ピークを有する。400nm以下の波長領域の発光強度ピークにおいて光の発光強度が最大である波長は、360nm以上400nm以下であることが好ましい。なお、発光スペクトルは、400nm以下の波長領域に複数の発光強度ピークを有していてもよい。また、360nm以上400nm以下の波長領域は400nm超の波長領域よりも発光強度が高い発光強度ピークを有していてもよい。さらに、発光スペクトルは、400nm超の波長領域にブロード領域を有していてもよい。
【0015】
これに限定されず、発光スペクトルは、400nm以下の波長領域に発光強度ピークを有しなくてもよい。発光強度ピークを有しない場合とは、例えば400nm以下の波長領域に極大値がなく、360nmから400nmまで発光強度が高くなるスペクトル形状を有する場合等である。この場合、400nm以下の波長領域において光の発光強度が最大である波長は、360nm以上400nm以下であることが好ましい。
【0016】
発光スペクトルでは、図1に示すように、360nm未満の波長領域の発光強度が0であることが好ましい。換言すると、発光スペクトルは、360nm未満の波長領域に発光強度を有しないことが好ましい。
【0017】
図2は、発光部から放射される光の発光スペクトルと上記光と同じ色温度を示す黒体輻射スペクトルの例を示す図である。横軸は光の波長であり、縦軸は光および黒体輻射の相対発光強度(任意値)である。発光スペクトルは、例えばJIS−C−8152の規格に基づく全光束測定により測定される。黒体輻射は、黒体放射とも呼ばれ、自然光(太陽光)に相当する。自然光の色温度は、時間によって異なる。例えば、日中の自然光の色温度は約5100Kであり、朝の自然光の色温度は約2700Kないし4200Kであり、夕方の自然光の色温度は、約2700Kである。
【0018】
図2に示す発光スペクトルP(λ)は、360nm以上400nm以下の波長領域の波長から400nm超の可視領域の波長まで連続する曲線状である。換言すると、360nm以上400nm以下の波長領域の波長から400nm超の可視領域の波長までの各波長の発光強度が0超である。すなわち、実施形態の近視抑制物品用光源は、360nm以上400nm以下の波長領域の波長から400nm超の可視領域の波長にわたり発光強度を有する光を放射することができる。
【0019】
発光スペクトルP(λ)は、380nm以上400nm以下の波長領域の波長から400nm超の可視領域の波長まで連続していてもよい。また、発光スペクトルP(λ)は、380nm以上400nm以下の波長領域の波長から400nm超700nm以下、さらには400nm超750nm以下の波長まで連続していてもよい。さらに、発光スペクトルP(λ)は、380nm以上400nm以下の波長領域の波長から750nm以上の赤外領域の波長まで連続していてもよい。例えば、発光部に白熱電球を用いる場合、発光スペクトルP(λ)が赤外領域の波長まで延在する場合がある。
【0020】
図2に示す発光スペクトルP(λ)は、400nm以下の波長領域に発光強度ピークを有し、400nm超の可視領域に複数の発光強度ピークを有する。波長領域の発光強度ピークにおいて前記光の発光強度が最大である波長は、360nm以上400nm以下であることが好ましい。なお、発光スペクトルP(λ)は、400nm以下の波長領域に複数の発光強度ピークを有していてもよい。また、360nm以上400nm以下の波長領域は400nm超の可視領域よりも発光強度が高い発光強度ピークを有していてもよい。さらに、発光スペクトルP(λ)は、400nm超の可視領域にブロード領域を有していてもよい。
【0021】
これに限定されず、発光スペクトルP(λ)は、400nm以下の波長領域に発光強度ピークを有しなくてもよい。発光強度ピークを有しない場合とは、例えば400nm以下の波長領域に極大値がなく、360nmから400nmまで発光強度が高くなるスペクトル形状を有する場合等である。この場合、400nm以下の波長領域において前記光の発光強度が最大である波長は、360nm以上400nm以下であることが好ましい。
【0022】
発光スペクトルでは、図2に示すように、360nm未満の波長領域の発光強度が0であることが好ましい。換言すると、発光スペクトルは、360nm未満の波長領域に発光強度を有しないことが好ましい。
【0023】
図1および図2に示すように、実施形態の近視抑制物品用光源において、発光部から放射される光のスペクトル(P(λ))は、360nm以上400nm以下の波長領域に延在している。従来、眼は紫外光等の紫外領域を含む光を受けることで損傷しやすいことが知られている。眼が損傷すると近視等の視力の低下が起こる場合がある。紫外光は、波長に応じて、UVA、UVB、UVCに分類することができる。UVAの波長範囲は315nm以上400nm以下である。UVBの波長範囲は280nm以上315nm以下である。UVCが100nm以上280nm以下である。
【0024】
しかしながら、実施形態の近視抑制物品用光源から放射される光のように、360nm未満の波長領域の光成分が低減され、発光スペクトル(P(λ))が400nm以下の波長領域のうちの360nm以上400nm以下の波長領域に延在し、且つ特定の形状を有するように調整された光は、例えば紫外光や可視光等と比較して受光者の眼軸長の伸長度合いを小さくする特性を有する。よって、当該光を照射することにより受光者の近視を抑制することができる。
【0025】
実施形態の近視抑制光源は、被験者が特殊な透過スペクトルを有するメガネを着用しなくても当該メガネを透過する光の発光スペクトルと同等の光特性を有する。このため、メガネを着用しなくても近視を抑制することができるため利便性を向上させることができる。
【0026】
近視の抑制効果を高めるためには、図1に示すように、発光スペクトルにおいて、400nmから800nmまでの波長領域Bの光の発光強度の積分値bに対する、300nmから400nmまでの波長領域Aの発光強度の積分値aの比a/bが0.1超0.5未満であるように発光スペクトルの形状が調整されることが好ましい。a/bが0.1超0.5未満になるように調整された光は、上記眼軸長の伸長度合いを小さくすることができるだけでなく、自然光の発光スペクトルとの差異が小さいため、人体に対する悪影響が低減され、近視抑制効果を高めることができる。
【0027】
また、近視の抑制効果を高めるために、発光部から放射される光は、
式1:∫B(λ)V(λ)dλ=∫P(λ)V(λ)dλ
(P(λ)は発光部から放射される光の発光スペクトルを表し、B(λ)は、上記光と同じ色温度を示す黒体輻射スペクトルを表し、V(λ)は分光視感効率スペクトルを表す)
を満たし、且つ、
式2:B(λ’)≦P(λ’)
(P(λ’)は300nmから400nmまでの波長領域における上記光の発光強度の最大値を表し、B(λ’)は上記光の発光強度が上記最大値である波長における黒体輻射強度を表す)
を満たすことが好ましい。
【0028】
黒体輻射スペクトルB(λ)は、プランク分布により求められる。プランク分布は、下記の数式から求められる。
【0029】
【数1】
【0030】
上記数式において、hはプランク定数を表し、cは光速度を表し、λは波長を表し、eは自然対数の底を表し、kはボルツマン定数を表し、Tは色温度を表す。黒体輻射スペクトルでは、h、c、e、kが定数である。よって、色温度が決まれば波長に応じた発光スペクトルを求めることができる。
【0031】
分光視感効率とは、CIE(Commission International de l’Eclairage: CIE)で定められた標準分光比視感度である。CIEにより定められた分光視感効率スペクトルV(λ)は、555nmに最大ピーク波長を有する上に凸の曲線状である。このことから、人間は波長が約555nmの光を最も高い感度で認識することができることがわかる。
【0032】
P(λ)×V(λ)は分光視感効率スペクトルV(λ)の領域における近視抑制物品用光源の発光強度を示し、B(λ)×V(λ)は分光視感効率スペクトルV(λ)の領域における黒体輻射強度を示している。よって、式1は、分光視感効率スペクトルV(λ)の領域において、発光部から放射される光の発光スペクトルの積分値が黒体輻射スペクトルの積分値と同じであることを示している。また、式2は、360nm以上400nm以下の波長領域の発光強度ピークの最大値P(λ’)と、最大値P(λ’)と同じ波長のときの黒体輻射強度B(λ’)との比較を示している。
【0033】
式1および式2を満たすように調整された光は、上記眼軸長の伸長度合いを小さくすることができるだけでなく、自然光の発光スペクトルとの差異が小さいため、人体に対する悪影響が低減され、近視抑制効果を高めることができる。近視の抑制効果を高めるために、発光部から放射される光は、
式3:B(λ’)≦P(λ’)≦B(λ’)×15
をさらに満たすことがより好ましい。
【0034】
次に、近視抑制物品用光源の使用方法例について説明する。図3は、近視抑制物品用光源の使用方法例を説明するための図である。近視抑制物品用光源の使用方法例は、図3に示すように、発光部1から光1aを被照射部10に照射する工程を具備する。被照射部10は、例えば受光者(人または人以外の脊椎動物等)の眼である。
【0035】
被照射部10に光1aを照射する工程では、被照射部10における光の300nmから400nmまでの400nmを除く波長領域の放射照度が10μW/cm以上400μW/cm以下になるように、発光部1と被照射部10との間隔L、および発光部1に供給する電源電圧の値を調整する。上記放射照度に調整された光を受光者の眼に照射することにより、近視の抑制効果を高めることができる。
【0036】
実施形態の近視抑制物品用光源は、近視の高い抑制効果を実現することができるだけでなく、自然光の発光スペクトルに近い光を放射することができる。よって、実施形態の近視抑制物品用光源は、医療用光照射装置に限定されず、例えば照明器具(例えば室内灯、車内灯、機内灯、街灯、電気スタンド、スポットライト等)、表示装置(例えば、テレビ、パソコン用モニタ、ゲーム機、ポータブルメディアプレーヤー、携帯電話、タブレット端末、ウェアラブルデバイス、3D眼鏡、仮想眼鏡、携帯型ブックリーダー、カーナビ、デジタルカメラ、車内モニタ、航空機内モニタ等)に備えられるバックライト等の発光装置として用いられてもよい。発光装置の光を受けた場合であっても近視を抑制することができる。
【0037】
次に、発光部1の構成例について説明する。図4は、発光部の一部の構成例を示す平面模式図である。図5は、発光部の一部の構成例を示す断面模式図である。図4および図5に示す発光部の一部は、発光ダイオード素子21と、発光ダイオード素子22と、を具備する。なお、発光ダイオード素子22の代わりに白熱電球や蛍光ランプ等が用いられてもよい。
【0038】
図4および図5において、発光ダイオード素子21は、基板11上に設けられ、発光ダイオード素子22は、基板12上に設けられている。基板11および基板12としては、例えばアルミニウム基板等が挙げられる。アルミニウム基板は、発光ダイオード素子21および発光ダイオード素子22の熱を放出させやすいため好ましい。これに限定されず、他の金属基板や樹脂基板等が用いられてもよい。基板11および基板12の表面が導電性を有する場合、発光ダイオード素子21および発光ダイオード素子22は、例えば基板11または基板12上に設けられた絶縁膜を介して搭載されることが好ましい。発光ダイオード素子21および発光ダイオード素子22は、基板11もしくは基板12または基板11もしくは基板12上に設けられた配線に電気的に接続されてもよい。
【0039】
発光ダイオード素子21および発光ダイオード素子22は、電源回路30から供給される電源電圧に応じて発光する。発光ダイオード素子21および発光ダイオード素子22の発効に必要な電源電圧の値は、互いに異なっていてもよい。このとき、発光ダイオード素子21の搭載基板と発光ダイオード素子22の搭載基板とを別々にすることにより、電源回路30からの別々の値の電源電圧の供給が容易になる。これに限定されず、発光ダイオード素子21および発光ダイオード素子22は、一つの基板上に設けられていてもよい。
【0040】
図4において、発光ダイオード素子21および発光ダイオード素子22のそれぞれが複数配置されている。このとき、複数の発光ダイオード素子21は、互いに直列または並列に接続され、複数の発光ダイオード素子22は、互いに直列または並列に接続されている。発光ダイオード素子21の数および発光ダイオード素子22の数は特に限定されず、例えば近視抑制物品用光源の用途に応じて適宜設定される。
【0041】
発光ダイオード素子21から放射される光の発光スペクトルは、例えば360nm以上400nm以下の波長領域に発光強度ピークを有することが好ましい。図5に示す発光ダイオード素子21は、発光ダイオードチップ211と、発光ダイオードチップ211を覆う層212と、を備える。
【0042】
発光ダイオード素子22から放射される光の発光スペクトルは、例えば400nm超の波長領域に発光強度ピークを有することが好ましい。図5に示す発光ダイオード素子22は、発光ダイオードチップ221と、発光ダイオードチップ221を覆う層222と、を備える。
【0043】
発光ダイオードチップ211、221から放射される光の発光スペクトルは、例えば360nm以上400nm以下に発光強度ピークを有することが好ましい。発光ダイオードチップ211、221としては、例えばInGaN系、GaN系、AlGaN系等の発光ダイオードを有するチップを用いることができる。発光ダイオードは、例えば各材料の含有量や各層の厚さ等を変えることにより、発光スペクトルを調整することができる。
【0044】
層212および層222は、例えばシリコーン樹脂またはエポキシ樹脂等を含む。また、層222は、蛍光体を含む。蛍光体を含む層を蛍光体層ともいう。蛍光体層は、樹脂を含まなくてもよい。
【0045】
蛍光体層は、例えば赤色蛍光体、緑色乃至黄色蛍光体、および青色蛍光体を含む3以上の蛍光体を含むことが好ましい。蛍光体は、例えば粒子状である。各蛍光体の種類や配合比は、発光ダイオード素子に求められる色温度や発光スペクトル等を含む発光特性に応じて適宜設定される。3以上の蛍光体は、発光ダイオードチップから放射される光の少なくとも一部により励起されて400nm超の波長領域を含む光を放射する。
【0046】
各蛍光体の最大ピーク波長は異なることが好ましい。各蛍光体の最大ピーク波長を異ならせることにより、可視領域または400nm超の波長領域において発光スペクトルの形状をブロード状にすることができる。また、各蛍光体から放射される光の発光スペクトルにおいて、放射強度ピークの半値幅は、40nm以上、さらには50nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0047】
蛍光体層は、例えば58重量部以上75重量部以下の青色蛍光体と、3重量部以上30重量部以下の緑色乃至黄色蛍光体と、2重量部以上18重量部以下の赤色蛍光体と、を合計100重量部になるように含有することが好ましい。上記混合比にすることにより、例えば図1または図2に示す発光スペクトルを実現することができる。
【0048】
青色蛍光体から放射される光の発光スペクトルは、例えば430nm以上460nm以下の波長領域に発光強度ピークを有することが好ましい。青色蛍光体としては、例えば式(1)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活アルカリ土類クロロ燐酸塩蛍光体が用いられてもよい。
一般式:(Sr1−x−y−zBaCaEu(PO・Cl …(1)
(式中、x、y、およびzは0≦x<0.5、0≦y<0.1、0.005≦z<0.1を満足する数である)
【0049】
緑色乃至黄色蛍光体から放射される光の発光スペクトルは、例えば490nm以上580nm以下の波長領域に発光強度ピークを有することが好ましい。緑色乃至黄色蛍光体としては、例えば式(2)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)およびマンガン(Mn)付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、式(3)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)およびマンガン(Mn)付活アルカリ土類珪酸塩蛍光体、式(4)で表される組成を有するセリウム(Ce)付活希土類アルミン酸塩蛍光体、式(5)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活サイアロン蛍光体、および式(6)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活サイアロン蛍光体から選ばれる少なくとも1つが用いられてもよい。
一般式:(Ba1−x−y−zSrCaEu)(Mg1−uMn)Al1017 …(2)
(式中、x、y、z、およびuは0≦x<0.2、0≦y<0.1、0.005<z<0.5、0.1<u<0.5を満足する数である)
一般式:(Sr1−x−y−z−uBaMgEuMnSiO …(3)
(式中、x、y、z、およびuは0.1≦x≦0.35、0.025≦y≦0.105、0.025≦z≦0.25、0.0005≦u≦0.02を満足する数である)
一般式:REAl5−x−y12:Ce …(4)
(式中、REはY、Lu、およびGdから選ばれる少なくとも1つの元素を示し、AおよびBは対をなす元素であって、(A、B)が(Mg、Si)、(B、Sc)、(B.In)のいずれかであり、x、y、およびzはx<2、y<2、0.9≦x/y≦1.1、0.05≦z≦0.5 を満足する数である)
一般式:(Si、Al)(O、N):Eu …(5)
(式中、xは0<x<0.3を満足する数である)
一般式:(Sr1−xEuαSiβAlγδω …(6)
(式中、x、α、β、γ、δ、およびωは0<x<1、0<α≦3、12≦β≦14、2≦γ≦3.5、1≦δ≦3、20≦ω≦22を満足する数である)
【0050】
赤色蛍光体から放射される光の発光スペクトルは、例えば580nm以上630nm以下の波長領域に発光強度ピークを有することが好ましい。赤色蛍光体としては、例えば式(7)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)およびビスマス(Bi)付活酸化イットリウム蛍光体、式(8)で表される組成を有するユーロピウム付活アルカリ土類ニトリドアルミノシリケート蛍光体、および式(9)で表される組成を有するユーロピウム(Eu)付活サイアロン蛍光体から選ばれる少なくとも1つが用いられてもよい。
一般式:(Y1−x−yEuBi …(7)
(式中、xおよびyは0.01≦x<0.15、0.001≦y<0.05を満足する数である)
一般式:(Ca1−x−ySrEu)SiAlN …(8)
(式中、xおよびyは0≦x<0.4、0<y<0.5を満足する数である)
一般式:(Sr1−xEu)αSiβAlγδω …(9)
(式中、x、α、β、γ、δ、およびωは0<x<1、0<α≦3、5≦β≦9、1≦γ≦5、0.5≦δ≦2、5≦ω≦15を満足する数である)
【0051】
発光部の構成は、図4および図5に示す構成に限定されない。図6および図7は、発光部の一部の他の構成例を示す断面模式図である。
【0052】
図6に示す発光部の一部は、図4および図5に示す発光部と比較して発光ダイオード素子22として、基板12の絶縁表面上に発光ダイオード素子22Rと、発光ダイオード素子22Gと、発光ダイオード素子22Bと、発光ダイオード素子22Yと、を含む構成が異なる。発光ダイオード素子22Rから放射される光、発光ダイオード素子22Gから放射される光、発光ダイオード素子22Yから放射される光、または発光ダイオード素子22Bから放射される光は、400nm超の波長領域に発光強度ピークを有する。なお、発光ダイオード素子22は、発光ダイオード素子22R、発光ダイオード素子22G、発光ダイオード素子22B、および発光ダイオード素子22Yの少なくとも一つを含んでいればよい。また、発光ダイオード素子22Bと黄色蛍光体とを組合わせた白色発光ダイオード素子が用いられてもよい。
【0053】
発光ダイオード素子22Rは、発光ダイオードチップ221Rと、発光ダイオードチップ221Rを覆う層222Rと、を有する。発光ダイオードチップ221Rとしては、赤色光を発光することができる発光ダイオードを備えるチップが挙げられる。発光ダイオードチップ221Rから放射される光(発光ダイオード素子22Rから放射される光)の発光スペクトルは、例えば580nm以上630nm以下の波長領域に発光強度ピークを有することが好ましい。
【0054】
発光ダイオード素子22Gは、発光ダイオードチップ221Gと、発光ダイオードチップ221Gを覆う層222Gと、を有する。発光ダイオードチップ221Gとしては、緑色光を発光することができる発光ダイオードを備えるチップが挙げられる。発光ダイオードチップ221Gから放射される光(発光ダイオード素子22Gから放射される光)の発光スペクトルは、例えば490nm以上580nm以下の波長領域に発光強度ピークを有することが好ましい。
【0055】
発光ダイオード素子22Yは、発光ダイオードチップ221Yと、発光ダイオードチップ221Yを覆う層222Yと、を有する。発光ダイオードチップ221Yとしては、黄色光を発光することができる発光ダイオードを備えるチップが挙げられる。発光ダイオードチップ221Yから放射される光(発光ダイオード素子22Yから放射される光)の発光スペクトルは、例えば550nm以上580nm以下の波長領域に発光強度ピークを有することが好ましい。
【0056】
発光ダイオード素子22Bは、発光ダイオードチップ221Bと、発光ダイオードチップ221Bを覆う層222Bと、を有する。発光ダイオードチップ221Bとしては、青色光を発光することができる発光ダイオードを備えるチップが挙げられる。発光ダイオードチップ221Bから放射される光(発光ダイオード素子22Bから放射される光)の発光スペクトルは、例えば430nm以上460nm以下の波長領域に発光強度ピークを有することが好ましい。
【0057】
層222R、層222G、層222Y、および層222Bのそれぞれは、シリコーン樹脂またはエポキシ樹脂等を含む。層222R、層222G、層222Y、および層222Bのそれぞれは、蛍光体を含まなくてもよい。その他の説明は、層222の説明を適宜援用することができる。
【0058】
図7に示す発光部は、図5に示す発光部と比較して発光ダイオード素子21および発光ダイオード素子22の代わりに、基板13上に設けられた発光ダイオード素子23を備える構成が異なる。基板13の説明については、基板11または基板12の説明を適宜援用することができる。
【0059】
発光ダイオード素子23は、発光ダイオードチップ231と、発光ダイオードチップ231を覆い、上記青色蛍光体と、上記緑色乃至黄色蛍光体と、上記赤色蛍光体と、上記樹脂と、を含む層232と、を有する。3以上の蛍光体は、発光ダイオードチップ231から放射される光の一部により励起されて400nm超の波長領域を含む光を放射する。その他蛍光体および樹脂については上記の説明を適宜援用することができる。
【0060】
発光ダイオードチップ231から放射される光の発光スペクトルは、例えば360nm以上400nm以下の波長領域に発光強度ピークを有することが好ましい。3以上の蛍光体から放射される光の発光スペクトルは、例えば400nm超の波長領域に発光強度ピークを有することが好ましい。
【0061】
層232は、発光ダイオードチップ231の光の他の一部を透過することができる。よって、発光ダイオード素子23から放射される光の発光スペクトルは、360nm以上400nm以下の波長領域に第1の発光強度ピークを有し、400nm超の波長領域に第2の発光強度ピークを有する。
【0062】
発光ダイオードチップ231の光の他の一部を透過するためには、例えば層232を薄くすることが好ましい。層232の厚さは、例えば300μm以上1000μm以下であることが好ましい。また、発光ダイオードチップ231の光の他の一部を透過するためには、層232に含まれる蛍光体粒子の平均粒子径(粒度分布の中位値(D50))を調整することが好ましい。蛍光体粒子の平均粒子径は、例えば10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0063】
図4ないし図7に示す構成を備える発光部から放射される光のスペクトルは、図1に示すように、360nm以上400nm以下の波長領域の波長から400nm超の波長領域の波長まで連続し、かつ360nm以上400nm以下の波長領域に延在する発光スペクトルが特定の形状を有するように、または図2に示すように、上記360nm以上400nm以下の波長領域の波長から400nm超の可視領域の波長まで連続し、かつ360nm以上400nm以下の波長領域に延在する発光スペクトルが特定の形状を有し、且つ上記光が式1および上記式2を満たすように調整されている。よって、発光部から光を照射することにより、受光者の近視を抑制することができる。また、図1に示すように、発光スペクトルにおいて、400nmから800nmまでの波長領域Bの光の発光強度の積分値bに対する、300nmから400nmまでの波長領域Aの発光強度の積分値aの比a/bを調整することにより、近視抑制効果を高めることができる。なお、発光部の構成は、図4ないし図7に示す構成に限定されない。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
紫外線ランプと、白色蛍光ランプと、電源と、各々のランプの出力を調整する制御回路と、外囲器と、を具備する近視抑制物品用光源を作製した。
【0065】
紫外線ランプは、市販の紫外線ランプ(例えば東芝ライテック社製の型番FL10BLB)と同じ構造を有する。紫外線ランプは、内面に蛍光体膜を有するガラス管を有する。蛍光体膜は、近紫外光の発光材料として珪酸バリウム蛍光体を含む。上記紫外線ランプから放射される光を測定することにより得られた発光スペクトルは、365nmの波長にピーク波長を有し、340nmの第1の波長から410nmの第2の波長まで連続していた。
【0066】
蛍光ランプは、市販の蛍光ランプ(例えば東芝ライテック社製の型番FL20SS)と同じ構造を有する。蛍光ランプは、青色蛍光体として1重量部のユーロピウム付活アルカリ土類リン酸塩蛍光体と、緑色乃至黄色蛍光体として35重量部のセリウム、テルビウム共付活リン酸ランタン蛍光体(通称LAP)と、赤色蛍光体として64重量部のユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体と、を含む白色発光材料を有する。上記蛍光ランプから放射される白色光の色温度は、5000Kであった。
【0067】
実施例1の近視抑制物品用光源から放射される光の発光スペクトルにおいて、400nmから800nmまでの波長領域Bの光の発光強度の積分値bに対する、300nmから400nmまでの波長領域Aの発光強度の積分値aの比a/bが0.45になるように紫外線ランプと蛍光ランプとの出力比を調整した。このときの近視抑制物品用光源から放射される光の発光スペクトルを図8に示す。
【0068】
実施例1の近視抑制物品用光源から放射される光が式:∫B(λ)V(λ)dλ=∫P(λ)V(λ)dλを満たし、且つ式2:B(λ’)×13.6=P(λ’)を満たすように、紫外線ランプと蛍光ランプとの出力比を調整した。このときの近視抑制物品用光源から放射される光の発光スペクトルと上記光と同じ色温度を示す黒体輻射スペクトルとを図9に示す。
【0069】
上記近視抑制物品用光源では、蛍光ランプから放射される光と紫外線ランプから放射される光との2種類の光が混合される。しかしながら近視抑制物品用光源から放射される光の色温度に対する、紫外線ランプから放射される光の影響は無視される。よって、上記近視抑制物品用光源から放射される光の色温度は、蛍光ランプと同じ5000Kである。
【0070】
実施例1の近視抑制光源を被検眼から30cm離れた位置に配置し、被検眼の照射部において300nmから400nmまでの400nmを除く波長領域の放射照度が100μW/cmになるように近視抑制光源から放射される光を調整した。上記調整された光を被検眼に照射することにより、実施形態に示す近視の抑制効果を確認することができた。
【0071】
(実施例2)
発光ダイオード素子と、電源と、発光ダイオード素子の出力を調整する制御回路と、外囲器と、を具備する近視抑制物品用光源を作製した。
【0072】
発光ダイオード素子は、GaN系発光ダイオードチップと、GaN系発光ダイオードチップを覆い、発光材料を含む層を有する。発光ダイオード素子から放射される光の発光スペクトルは、380nmにピーク波長を有し、365nmから410nmまで連続している。
【0073】
発光材料を含む層は、青色蛍光体として72重量部のユーロピウム付活アルカリ土類リン酸塩蛍光体と、緑色乃至黄色蛍光体として21重量部のユーロピウム、マンガン共付活アルカリ土類マグネシウム珪酸塩蛍光体と、赤色蛍光体として7重量部のユーロピウム付活カルシウムニトリドアルミノシリケート蛍光体と、を含む。
【0074】
発光材料を含む層は、GaN系発光ダイオードチップから放射される光の一部を透過する。よって、実施例2の近視抑制物品用光源から放射される光は、GaN系発光ダイオードチップから放射される第1の光成分と発光材料を含む層により励起された第2の光成分とを含む。このとき、第1の光成分と第2の光成分との強度比は、発光材料を含む層の厚さに応じて変化する。また、実施例2の近視抑制物品用光源から放射される光の色温度は、第1の光成分と第2の光成分との強度比が変化しても変化しにくく、約5000Kであった。
【0075】
実施例2の近視抑制物品用光源から放射される光の発光スペクトルにおいて、400nmから800nmまでの波長領域Bの光の発光強度の積分値bに対する、300nmから400nmまでの波長領域Aの発光強度の積分値aの比a/bが0.10になるように発光材料を含む層の厚さを調整した。このときの近視抑制物品用光源から放射される光の発光スペクトルを図10に示す。
【0076】
実施例2の近視抑制物品用光源から放射される光が式:∫B(λ)V(λ)dλ=∫P(λ)V(λ)dλを満たし、且つ式2:B(λ’)×3.2=P(λ’)を満たすように、発光材料を含む層の厚さを調整した。このときの近視抑制物品用光源から放射される光の発光スペクトルと上記光と同じ色温度を示す黒体輻射スペクトルとを図11に示す。
【0077】
実施例2の近視抑制光源を被検眼から30cm離れた位置に配置し、被検眼の照射部において300nmから400nmまでの400nmを除く波長領域の放射照度が46μW/cmになるように近視抑制光源から放射される光を調整した。上記調整された光を被検眼に照射することにより、実施形態に示す近視の抑制効果を確認することができた。
【0078】
(実施例3)
第1の発光ダイオード素子と、第2の発光ダイオード素子と、電源と、第1および第2の発光ダイオード素子のそれぞれの出力を調整する制御回路と、外囲器と、を具備する近視抑制物品用光源を作製した。
【0079】
第1の発光ダイオード素子は、第1のGaN系発光ダイオードチップを有する。第1の発光ダイオード素子から放射される光は、380nmにピーク波長を有し、365nmから410nmまで連続している。
【0080】
第2の発光ダイオード素子は、第2のGaN系発光ダイオードチップと、GaN系発光ダイオードチップを覆い、発光材料を含む層を有する。第2の発光ダイオード素子から放射される光は、400nmにピーク波長を有する。
【0081】
発光材料を含む層は、青色蛍光体として72重量部のユーロピウム付活アルカリ土類リン酸塩蛍光体と、緑色乃至黄色蛍光体として21重量部のユーロピウム、マンガン共付活アルカリ土類マグネシウム珪酸塩蛍光体と、赤色蛍光体として7重量部のユーロピウム付活カルシウムニトリドアルミノシリケート蛍光体と、を含む。
【0082】
実施例3の近視抑制物品用光源から放射される光は、発光材料を含む層により励起された光成分を主成分として含む。また、実施例3の近視抑制物品用光源から放射される光の色温度は、約5000Kであった。
【0083】
実施例3の近視抑制物品用光源から放射される光の発光スペクトルにおいて、400nmから800nmまでの波長領域Bの光の発光強度の積分値bに対する、300nmから400nmまでの波長領域Aの発光強度の積分値aの比a/bが0.45になるように第1の発光ダイオード素子と第2の発光ダイオード素子との出力比を調整した。このときの近視抑制物品用光源から放射される光の発光スペクトルを図12に示す。なお、a/bの値は、例えば発光材料を含む層の厚さを調整することにより制御される。
【0084】
実施例3の近視抑制物品用光源から放射される光が∫B(λ)V(λ)dλ=∫P(λ)V(λ)dλを満たし、且つ式2:B(λ’)×7.1=P(λ’)を満たすように、第1の発光ダイオード素子と第2の発光ダイオード素子との出力比を調整した。このときの近視抑制物品用光源から放射される光の発光スペクトルと上記光と同じ色温度を示す黒体輻射スペクトルとを図13に示す。
【0085】
実施例3の近視抑制光源を被検眼から30cm離れた位置に配置し、被検眼の照射部において300nmから400nmまでの400nmを除く波長領域の放射照度が100μW/cmになるように近視抑制光源から放射される光を調整した。上記調整された光を被検眼に照射することにより、実施形態に示す近視の抑制効果を確認することができた。
【0086】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13