特許第6773711号(P6773711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6773711半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6773711
(24)【登録日】2020年10月5日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20201012BHJP
【FI】
   C23C16/44 E
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-60037(P2018-60037)
(22)【出願日】2018年3月27日
(65)【公開番号】特開2019-173062(P2019-173062A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】磯辺 紀之
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−280945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応管内に収容された基板に対して、金属元素および炭素元素を含む有機系原料ガスを供給する第1の工程と、
前記反応管に接続された排気管から、前記反応管内に残留する前記有機系原料ガスを排気する第2の工程と、
前記基板に対して、前記有機系原料ガスと反応する反応ガスを供給する第3の工程と、
前記排気管から、前記反応管内に残留する前記反応ガスを排気する第4の工程と、
を順に所定回数行って前記基板上に膜を形成する工程を有し、少なくとも前記第1および第3の工程では、前記反応管の温度を、55℃以上130℃以下の第1の温度に設定し、前記排気管の温度を前記第1の温度の1.0倍以上1.6倍以下である第2の温度に設定する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第2の温度は前記第1の温度より高く設定する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程から前記第4の工程では反応管内を減圧し、
前記基板上に膜を形成した後、前記排気管の温度を前記第2の温度から前記第1の温度まで下げた状態で前記排気管内の圧力を大気圧にする第5の工程をさらに有する請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2および第4の工程では、前記排気管の温度を前記第2の温度に設定する請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2および第4の工程では、前記排気管の温度を前記第1の温度より高くする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の工程から前記第4の工程では、前記排気管の温度を前記第2の温度に維持する請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記原料ガスを前記反応管内に供給する原料ガス供給管の前記反応管との接続部の温度と、前記反応ガスを前記反応管内に供給する反応ガス供給管の前記反応管との接続部の温度と、を前記第1の温度に設定する請求項1〜のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記原料ガス供給管と前記反応ガス供給管の温度を、前記反応管との接続部からの距離と比例して、低くなるよう設定する請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2の温度は、、前記有機系原料ガスが熱分解して生成される副生成物の粉化が生じない温度である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記金属元素は、チタンである請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記有機系原料ガスは、TDMATである請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
反応管内に収容された基板に対して、金属元素および炭素元素を含む有機系原料ガスを供給する第1の工程と、
前記反応管に接続された排気管から、前記反応管内に残留する前記有機系原料ガスを排気する第2の工程と、
前記基板に対して、前記有機系原料ガスと反応する反応ガスを供給する第3の工程と、
前記排気管から、前記反応管内に残留する前記反応ガスを排気する第4の工程と、
を順に所定回数行って前記基板上に膜を形成する工程を有し、少なくとも前記第1および第3の工程では、前記反応管の温度を、55℃以上130℃以下の温度に設定し、前記排気管の温度を前記反応管の温度の1.0倍以上1.6倍以下である温度であって前記反応管と前記排気管との接続部からの距離に比例して変化する温度変動率を有する温度に設定する半導体装置の製造方法。
【請求項13】
基板を収容する反応管と、
前記反応管を加熱する加熱系と、
前記反応管内に金属元素および炭素元素を含む有機系原料ガスおよび前記有機系原料ガスと反応する反応ガスを供給するガス供給系と、
前記反応管内の雰囲気を排気する排気系であって、前記反応管に接続された排気管を有する排気系と、
前記反応管内に収容された基板に対して、前記有機系原料ガスを供給する第1の処理と、前記排気管から、前記反応管内に残留する前記有機系原料ガスを排気する第2の処理と、前記基板に対して前記反応ガスを供給する第3の処理と、前記排気管から、前記反応管内に残留する前記反応ガスを排気する第4の処理と、を順に所定回数行って前記基板上に膜を形成する際、少なくとも前記第1および第3の処理では、前記反応管の温度を、55℃以上130℃以下の第1の温度に設定し、前記排気管の温度を前記第1の温度の1.0倍以上1.6倍以下である第2の温度に設定するよう、前記加熱系、前記ガス供給系および前記排気系を制御するように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項14】
基板処理装置の反応管内に収容された基板に対して、金属元素および炭素元素を含む有機系原料ガスを供給する第1の手順と、
前記反応管に接続された排気管から、前記反応管内に残留する前記有機系原料ガスを排気する第2の手順と、
前記基板に対して、前記有機系原料ガスと反応する反応ガスを供給する第3の手順と、
前記排気管から、前記反応管内に残留する前記反応ガスを排気する第4の手順と、
を順に所定回数行って前記基板上に膜を形成する手順と、少なくとも前記第1および第3の手順では、前記反応管の温度を、55℃以上130℃以下の第1の温度に設定し、前記排気管の温度を前記第1の温度の1.0倍以上1.6倍以下である第2の温度に設定することを特徴とする手順と
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、処理室内に収容された基板上に膜を形成する処理が行われることがある。形成される膜としては、例えば、チタン酸化膜(TiO膜)等の導電膜が挙げられる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6023854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような導電膜を形成する際、液体原料を気化して気化ガスとして使用することがあるが、処理室内に気化ガスを供給した後に排気する際、排気管内で熱分解して排気管内に副生成物が堆積したり、気化ガスが再液化して排気管内に詰まりが発生したりする場合がある。
【0005】
本発明の目的は、液体原料を気化して気化ガスとして使用して基板に膜を形成する際、排気管内における気化ガスの熱分解および再液化を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
反応管内に収容された基板に対して、原料ガスを供給する第1の工程と、
反応管に接続された排気管から、反応管内に残留する原料ガスを排気する第2の工程と、
基板に対して、原料ガスと反応する反応ガスを供給する第3の工程と、
排気管から、反応管内に残留する反応ガスを排気する第4の工程と、
を順に所定回数行って基板上に膜を形成する工程を有し、少なくとも第1および第3の工程では、反応管の温度を、原料ガスの熱分解温度未満であって凝縮温度より高い温度である第1の温度に設定し、排気管の温度を第1の温度の1.0倍以上1.6倍以下である第2の温度に設定する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体原料を気化して気化ガスとして使用して基板に膜を形成する際、排気管内における気化ガスの熱分解および再液化を抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図1に示す基板処理装置の配管関係を示す概略図である。
図4図1に示す基板処理装置が有するコントローラの構成を示すブロック図である。
図5】本発明の一実施形態におけるシーケンスを示す図である。
図6】TDMATガスの蒸気圧曲線を示す図であり、本実施形態で適用する温度帯を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
近年では、成膜処理の低温化が求められているが、液体原料を気化して気化ガス(原料ガスとも称する)として使用する際、処理室内に気化ガスを供給した後に排気するときに、排気管内で熱分解して排気管内に副生成物が堆積したり、気化ガスが再液化して排気管内に詰まりが発生したりする場合がある。発明者らは鋭意研究を行い、以下のようにその要因を見出した。
【0010】
成膜処理を行う場合、通常、排気管は処理室の温度より顕著に高い温度であって、例えば、1.8倍から3倍程度の温度とする。しかし、液体原料のうち、特に自己分解温度が低い液体原料である有機系原料(有機化合物)を気化して得られた気化ガスは、低温であっても熱分解して副生成物を生成しやすい。その副生成物は、顕著に高い排気管の温度のために熱分解が促進され、粉化していることが多い。気化ガスの熱分解により生じる生成物は、ある温度までは膜として排気管に付着するが、一定温度を超えると粉化し始めて粉として排気管に付着するようになる。粉として付着すると、膜として付着するよりも熱対流が起きやすくなってしまう。また、液体原料のうち、特に蒸気圧が低い液体原料は、低温になるほど再液化しやすい。また、排気管は処理室より容積が小さいため、気化ガスから離脱したリガンドや副生成物の密度が高くなる(圧力が高くなる)と考えられる。したがって、排気管内は、処理室より再液化しやすく、再液化した液体原料は排気管やAPCバルブ(後述)等で詰まりの原因になりやすい。
【0011】
そこで、発明者らは、成膜処理の低温化を達成しつつ、排気管における副生成物の堆積や詰まりを抑制するために、処理室の温度を気化ガスの熱分解温度未満であって凝縮温度より高い温度に設定する場合、排気管の温度を処理室の温度と同じか、もしくは少し高い温度であって、例えば1倍より高く1.6倍以下であるような温度に設定することを考えた。このような温度に設定することにより、気化ガスの熱分解は抑制され、たとえ熱分解したとしても粉化せず膜として排気管に付着することとなる。また、凝縮温度より高いため再液化が抑制されることとなる。本技術について、以下に詳細を説明する。
【0012】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の好ましい実施の形態について図1〜4を参照してより詳細に説明する。基板処理装置10は半導体装置の製造工程において使用される装置の一例として構成されている。
【0013】
(1)基板処理装置の構成
基板処理装置10は、加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0014】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属からなり、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203はヒータ207と垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
【0015】
処理室201内には、ノズル410,420が、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル410,420には、ガス供給管310,320が、それぞれ接続されている。ガス供給管310,320はガス供給ラインとして機能する。ノズル410,420をガス供給ラインに含めて考えてもよい。本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。ノズル等の数は、必要に応じて、適宜変更される。
【0016】
ガス供給管310,320には、上流方向から順に、タンク(容器)610,620、開閉弁であるバルブ314,324がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320のバルブ314,324よりも下流側には、ガス供給管510,520がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520は不活性ガスを供給するガス供給ラインとして機能する。ガス供給管510,520には、上流方向から順に、MFC512,522およびバルブ514,516,524,526がそれぞれ設けられている。タンク610,620には、不活性ガスを供給するガス供給ラインとしてのガス供給管530,540が接続されている。ガス供給管530,540には、上流方向から順に、MFC532,542およびバルブ534,544がそれぞれ設けられている。
【0017】
ノズル410,420は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁および反応管203を貫通するように設けられている。ノズル410,420の垂直部は、反応管203とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がり、延在するようにそれぞれ設けられている。
【0018】
ノズル410,420の側面のウエハ200と対応する高さ(ウエハ200の装填領域に対応する高さ)には、ガスを供給する複数のガス供給孔410a,420aがそれぞれ設けられている。ガス供給孔410a,420aは、反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔410a,420aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、さらに同じ開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420aは上述の形態に限定されない。例えば、ノズル410,420の下部(上流側)から上部(下流側)に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0019】
ガス供給管310からは、処理ガス(原料ガス)として、例えば、金属元素としてのチタン(Ti)元素を含み、かつCを含む(C含有)金属原料、すなわち、有機系原料(有機金属化合物、有機系チタン原料)であるTi原料ガスとしてのTDMAT(テトラキスジメチルアミノチタン、Ti(NMe)が、バルブ314,516、ノズル410を介して処理室201内へ供給される。TDMATは、タンク610に液体状態で収容されている。不活性ガスがガス供給管530から、MFC532およびバルブ534を介してタンク610内に供給されることにより気化される。そして、気化ガスとしてのTDMATガスがガス供給管310へ流れる。本明細書において、「TDMAT」という言葉を用いた場合は、「液体状態であるTDMAT」を意味する場合、「気体状態であるTDMAT」を意味する場合、または、それらの両方を意味する場合がある。
【0020】
ガス供給管320からは、処理ガス(反応ガス)として、例えば、酸素(O)含有ガスである水(HO)が、バルブ324,526、ノズル420を介して処理室201内へ供給される。HOは、タンク620に液体状態で収容されている。不活性ガスがガス供給管540から、MFC542およびバルブ544を介してタンク620内に供給されることにより気化される。そして、気化ガスとしてのHOガスがガス供給管320へ供給される。本明細書において、「HO」という言葉を用いた場合は、「液体状態であるHO」を意味する場合、「気体状態であるHO」を意味する場合、または、それらの両方を意味する場合がある。
【0021】
ガス供給管510,520からは、不活性ガスとして、例えば、Nガスが、それぞれMFC512,522、バルブ514,516,524,526、ガス供給管310,320、ノズル410,420を介して処理室201内へ供給される。
【0022】
主に、ガス供給管310、バルブ314により、原料ガス供給系が構成される。ノズル410を原料ガス供給系に含めて考えてもよいし、タンク610、ガス供給管530、MFC532、バルブ534を原料ガス供給系に含めて考えてもよい。主に、ガス供給管320、バルブ324により、反応ガス供給系が構成される。ノズル420を反応ガス供給系に含めて考えてもよいし、タンク620、ガス供給管540、MFC542、バルブ544を反応ガス供給系に含めて考えてもよい。主に、ガス供給管510,520、MFC512,522、バルブ514,516,524,526により、不活性ガス供給系が構成される。原料ガス供給系、反応ガス供給系を合わせてガス供給系と称することもできる。不活性ガス供給系をガス供給系に含めて考えてもよい。
【0023】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気流路としての排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および排気バルブ(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0024】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続され、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。また、マニホールド209の下方には、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を降下させている間、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0025】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて装填(配列、載置)させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる図示しない断熱板が多段に支持されている。
【0026】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、ノズル410,420と同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0027】
制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0028】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する成膜処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0029】
I/Oポート121dは、上述のMFC512,522,532,542、バルブ314,324、514,516,524,526,534,544、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0030】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC512,522,532,542による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324、514,516,524,526,534,544の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ243による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御するように構成されている。
【0031】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0032】
(2)基板処理工程(成膜工程)
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に、TiO膜を形成する工程の一例について説明する。TiO膜を形成する工程は、上述した基板処理装置10の処理炉202を用いて実行される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0033】
なお、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合(すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合)がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。なお、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0034】
以下、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について、詳細に説明する。
【0035】
(ウエハ搬入)
複数枚のウエハ200を処理室201内に搬入(ボートロード)する。具体的には、複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端開口を閉塞した状態となる。
【0036】
(圧力・温度調整)
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0037】
(成膜ステップ)
その後、原料ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、反応ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップをこの順で所定回数行う。
【0038】
(原料ガス供給ステップ)
バルブ314,516を開き、ガス供給管310内に原料ガスであるTDMATガスを流す。ガス供給管310内を流れたTDMATガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対してTDMATガスが供給されることとなる。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にNガスを流す。ガス供給管510内を流れたNガスは、MFC512により流量調整される。流量調整されたNガスはTDMATガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル420内へのTDMATガスの侵入を防止するために、バルブ524,526を開き、ガス供給管520内にNガスを流す。Nガスは、ガス供給管320,ノズル420を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0039】
このときAPCバルブ243を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1〜1200Pa、好ましくは10〜100Pa、より好ましくは40〜60Paの範囲内の(所定の)圧力とする。圧力が1200Paより高いと後述する残留ガス除去が十分に行われない場合があり、圧力が1Paより低いと、TDMATガスの反応速度を十分に得られない可能性がある。なお、本明細書では、数値の範囲として、例えば1〜1200Paと記載した場合は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味しており、1Pa以上1200Pa以下を意味する。圧力のみならず、本明細書に記載される他の全ての数値についても同様である。
【0040】
MFC322で制御するTDMATガスの供給流量は、例えば0.008〜0.1slmの範囲内の(所定の)流量とする。MFC512,522,532で制御するNガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1〜40slmの範囲内の(所定の)流量とする。TDMATガスをウエハ200に対して供給するガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜60秒の範囲内の(所定の)時間とする。
【0041】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度T(第1の温度)が、例えば55〜250℃、好ましくは55〜130℃、より好ましくは90〜100℃の範囲内の(所定の)温度となるような温度に設定する。温度が130℃より高いとTDMATガスが熱分解して粉化し、粉化した副生成物を膜中に取り込みやすくなる可能性があり、その他のプロセス条件との兼ね合いにもよるが、温度が250℃より高いと液体状態のTDMATであっても分解してしまう可能性がある。また、TDMATガスの凝縮温度は、90℃未満であり、特に55℃付近から顕著に液化が進み始める。したがって、温度が55℃より低いとTDMATガスが再液化してしまう可能性がある。図6にTDMATガスの蒸気圧曲線を示す。太線内でTDMATガスの供給を行う。ヒータ207は反応管203を加熱しており、ウエハ200の温度Tは、反応管203の温度(または処理室201内の温度)ともいえる。
【0042】
このとき処理室201内に流しているガスは、TDMATガスとNガスのみである。TEMATガスの供給により、ウエハ200上にTiを含むTi含有層が形成される。TDMATガスを用いる原料ガス供給ステップでは、C、H、O等有機物および1価のアルコールであるイソプロパノールが含まれる場合がある。したがって、Ti含有層はTDMATの吸着層であるTDMAT層であるともいえる。
【0043】
処理室201とAPCバルブ243との間の排気管231は、温度T(第2の温度)となるよう設定する。温度Tは、温度T〜130℃、好ましくは温度Tより高く110℃以下、より好ましくは、温度Tより高く100℃以下の範囲内の(所定の)温度に設定する。あるいは、温度Tは、例えば、温度Tの1.0倍〜1.6倍、好ましくは温度Tの1.0倍〜1.4倍、より好ましくは温度Tの1.0倍〜1.2倍の範囲内の(所定の)温度に設定する。
【0044】
(残留ガス除去ステップ)
その後、バルブ314を閉じてTDMATガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応又は上記したTi含有層の形成に寄与した後のTDMATガスを処理室201内から排除する。なお、このときバルブ510,520は開いたままとして、Nガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応又は上記したTi含有層の形成に寄与した後のTDMATガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。このとき、後述するO含有供給ステップまで、真空排気とNガスパージとを同時に行ってもよいし、真空排気とNガスパージとを交互に(サイクリックに)所定回数ずつ行ってもよい。同時に行う場合は、Nガスの供給によりNガスパージ時の処理室201内の圧力を、原料ガス供給ステップにおける処理室201内の圧力より高くなるよう設定する。交互に行う場合は、例えば、真空排気時の処理室201内の圧力を、原料ガス供給ステップにおける圧力より低い値であって、例えば1〜100Paであって、好ましくは1〜30Paとなるよう設定し、Nガスパージ時の処理室201内の圧力を、原料ガス供給ステップにおける圧力より高い値であって、例えば1〜1500Paであって、好ましくは80〜110Paとなるよう設定する。真空排気とNガスパージとを交互に行うことにより、残留ガスの除去効率を向上させることが可能となる。
【0045】
(反応ガス供給ステップ)
バルブ324を開き、ガス供給管320内にO含有ガスであるHOガスを流す。ガス供給管320内を流れたHOガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気される。このとき同時にバルブ534を開き、ガス供給管530内にNガスを流す。ガス供給管530内を流れたNガスは、MFC532により流量調整されHOガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル410内へのHOガスの侵入を防止するために、バルブ514,516を開き、ガス供給管510内にNガスを流す。Nガスは、ガス供給管310,ノズル410を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0046】
Oガスを流すときは、APCバルブ243を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1〜1200Pa、好ましくは10〜100Pa、より好ましくは30〜50Paの範囲内の(所定の)圧力とする。圧力1200Paより高いと後述する残留ガス除去が十分に行われない場合があり、圧力が1Paより低いと、十分な成膜レートが得られない可能性がある。
【0047】
MFC322で制御するHOガスの供給流量は、例えば1〜80slm、好ましくは5〜40slm、より好ましくは10〜30slmの範囲内の(所定の)流量とする。流量は多いほど原料ガスに由来する不純物のTiO膜中への取り込みを減らすことができるため好ましいが、40slmより多いと後述する残留ガス除去が十分に行われない場合がある。
【0048】
MFC512,522で制御するNガスの供給流量は、それぞれ例えば0.2〜30slmの範囲内の(所定の)流量とする。HOガスをウエハ200に対して供給するガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜60秒の範囲内の(所定の)時間とする。このときのヒータ207および処理室201とAPCバルブ243との間の排気管231の温度は、原料ガス供給ステップと同様の温度に設定する。
【0049】
このとき処理室201内に流しているガスは、HOガスとNガスのみである。HOガスは、原料ガス供給ステップでウエハ200上に形成されたTi含有層と反応し、ウエハ200上にTiとOとを含むTiO層(TiO層)が形成される。
【0050】
(残留ガス除去ステップ)
TiO層が形成された後、バルブ324を閉じて、HOガスの供給を停止する。そして、原料ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはTiO層形成に寄与した後のH22Oガスを処理室201内から排除する。真空排気とNガスパージとを同時に行ってもよいし、真空排気とNガスパージとを交互に(サイクリックに)所定回数ずつ行ってもよい点も、原料ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様である。
【0051】
(所定回数実施)
上記した原料ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、反応ガス供給ステップ、残留ガス供給ステップを順に行うサイクルを1回以上(所定回数)行うことにより、すなわち、原料ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、反応ガス供給ステップ、残留ガス供給ステップの処理を1サイクルとして、これらの処理をnサイクル(nは1以上の整数)だけ実行することにより、ウエハ200上に、所定の厚さ(例えば0.05〜100nm)のTiO膜を形成する。
【0052】
(パージおよび大気圧復帰)
バルブ514,516,524,526を開き、ガス供給管510,520のそれぞれからNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや副生成物が処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0053】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0054】
なお、排気管231の温度Tは、処理室201との接続部からAPCバルブまで一定の温度に設定してもよいし、処理室201からの距離に応じて徐々に変動させてもよい。処理室201に近い位置で、温度が変わると、処理ガスが逆流してコールドスポットとなる可能性がある。同じ温度の場合は、処理ガスが逆流したとしてもコールドスポットにはならない。排気管231の温度Tを処理室201からの距離に応じて徐々に変動させる場合、処理室201との接続部は、処理室201と同じ温度に設定し、下流側にいくにしたがって温度を高く設定してもよい。このように、反応管と排気管との接続部からの距離に比例して変化する温度変動率を有するように設定してもよい。
【0055】
なお、成膜ステップで、排気管231の温度Tをヒータ207の温度(処理室201の温度)Tより高く設定する場合、原料ガス供給ステップおよび反応ガス供給ステップと、各ステップ後の残留ガス除去ステップとで、排気管231の温度Tの値を維持してもよいし、変えてもよい。例えば、原料ガス供給ステップおよび反応ガス供給ステップでは、温度Tを処理室201の温度Tと同じ温度に設定し、各ステップ後の残留ガス除去ステップでは、処理室201の温度Tより高く設定してもよい。原料ガス供給ステップおよび反応ガス供給ステップの方が、各ステップ後の残留ガス除去ステップより、処理室201内の圧力が高い。圧力が高いと、より液化しやすくなるため、各ステップ後の残留ガス除去ステップにおいて排気管231内の圧力を下げることにより液化リスクが低減される。このように、原料ガスの熱分解温度や処理室201内の圧力(液化リスク)に応じて、適宜、排気管231の温度を同じ温度に維持してもよいし、ステップごとに変えてもよい。
【0056】
なお、少なくとも成膜ステップでは、ガス供給管310,320,510,520,タンク610,620の温度は、以下のように設定する。
【0057】
ガス供給管310,320,510,520は、それぞれ図示しない加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータにより加熱されている。処理室201とバルブ516の間のガス供給管310および処理室201とバルブ526との間のガス供給管320は、ヒータ207(処理室201)と同じ温度Tとなるよう設定する。処理室201に近い位置で、温度が変わると、処理ガスが逆流してコールドスポットとなる可能性がある。同じ温度の場合は、処理ガスが逆流したとしてもコールドスポットにはならない。
【0058】
バルブ516とバルブ514、タンク610の間のガス供給管310,510およびバルブ526とバルブ524、タンク620の間のガス供給管320,520は、温度Tとなるよう設定する。温度Tは、55℃〜温度T、好ましくは70℃〜温度T、より好ましくは80℃以上温度T未満の範囲内の(所定の)温度となるような温度に設定する。温度Tは気化効率を考慮して温度Tと同じ温度としてもよいし、後述する温度Tとの温度差を小さくするために、温度Tより低い温度としてもよい。
【0059】
タンク610,620の温度Tは、25〜40℃の範囲内の(所定の)温度に設定する。このように、ガス供給管310,320,510,520の温度を、処理室201からの距離に比例して低くなるよう設定してもよい。徐々に処理室201と同じ温度へ変動させることによって各ガスを安定して供給することが可能となる。
【0060】
また、成膜ステップ中に排気管231の温度Tを処理室201の温度Tより高く設定していた場合、大気圧復帰時には、温度Tを温度Tまで下げてもよい。処理室201と排気管231の温度が異なると、排気管231が大気圧になった際に、ガスの対流(逆流)が発生する場合がある。したがって、対流抑制のために、大気圧復帰時は、排気管231の温度を処理室201の温度と同じ温度へ変えてもよい。
【0061】
また、1サイクルのステップ内における原料ガス供給ステップで、TDMATガスの供給と除去を交互に複数回行ってもよい(分割フロー)。1サイクル内に供給するTDMATガスの総量を変えずに、分割して供給することにより、Ti含有層へ取り込まれる不純物の量を低減することができる。また、1サイクルのステップ内における反応ガス供給ステップで、H2Oガスの供給と除去を交互に複数回行ってもよい(分割フロー)。1サイクル内に供給するH2Oガスの総量を変えずに、分割して供給することにより、Ti含有層との反応を促進することが可能となる。
【0062】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0063】
(a)処理室の温度を気化ガスの熱分解温度未満であって凝縮温度より高い温度に設定する場合、排気管の温度を処理室の温度と同じか、もしくは少し高い温度であって、気化ガスの熱分解は抑制され、たとえ熱分解したとしても粉化せず膜として排気管に付着させることが可能となるとともに、再液化を抑制することが可能となる。
(b)処理室の温度を気化ガスの熱分解温度未満であって凝縮温度より高い温度に設定する場合、排気管の温度を1倍より高く1.6倍以下であるような温度に設定することにより、気化ガスの熱分解は抑制され、たとえ熱分解したとしても粉化せず膜として排気管に付着させることが可能となるとともに、再液化を抑制することが可能となる。
(c)残留ガス除去ステップで、真空排気とNガスパージとを交互に行うことで、残留ガスの除去効率を向上させることが可能となる。
(d)排気管の温度を、処理室内の温度と同じ温度とすることで、処理ガスが逆流したとしてもコールドスポットが形成されないようにすることが可能となる。
(e)排気管の温度を、処理室からの距離に応じて徐々に変動させる場合、処理室との接続部は、処理室と同じ温度に設定し、下流側にいくにしたがって温度を高く設定することにより、処理ガスが逆流したとしてもコールドスポットが形成されないようにすることが可能となる。
(f)排気管の温度を、原料ガス供給ステップおよび反応ガス供給ステップと、各ステップ後の残留ガス除去ステップとで変えることにより、処理室内の圧力による液化リスクを低減することが可能となる。
(g)処理室より上流側のガス供給管の処理室との接続部の温度を、処理室の温度と同じ温度とすることで、処理ガスが逆流したとしてもコールドスポットが形成されないようにすることが可能となる。
(h)処理室より上流側の各ガス供給管の温度を、処理室からの距離に比例して低くなるよう設定することにより、各処理ガスを安定して供給することが可能となる。
(i)大気圧復帰時に、排気管の温度を処理室の温度と同じ温度に設定することにより、ガスの対流を抑制することが可能となる。
(j)1サイクルのステップ内における原料ガス供給ステップで、原料ガスの供給と除去を交互に複数回行うことで、形成される層へ取り込まれる不純物の量を低減することが可能となる。
(k)1サイクルのステップ内における反応ガス供給ステップで、反応ガスの供給と除去を交互に複数回行うことで、原料ガスの供給により形成された層との反応を促進することが可能となる。
【0064】
<本発明の他の実施形態>
上述の各実施形態は、適宜組み合わせて用いることができる。さらに、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0065】
上述の実施形態では、金属元素としてTiを用いてTiO膜を形成する場合について述べたが、有機系原料を使用して形成する膜であれば、他の膜にも適用可能である。例えば、ジルコニウム酸化膜(ZrO)、ハフニウム酸化膜(HfO)、アルミニウム酸化膜(Al)、タングステン酸化膜(WO)、タンタル酸化膜(Ta)等が挙げられる。
【0066】
有機系原料ガスとしては、例えば、TDMATの他に、クロロトリ(N−エチルメチルアミノ)チタン(Ti[N(CH)CHCHCl、略称TIA)、テトラキスジエチルアミノチタン(Ti[N(CHCH、略称TDEAT)、テトラキスジメチルアミノチタン(Ti[N(CH、略称TDMAT)、テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム(Zr[N(CH)CHCH、略称TEMAZ)、テトラキスエチルメチルアミノハフニウム(Hf[N(CH)CHCH、略称TEMAH)、トリメチルアルミニウム((CHAl)、略称TMA)、ビス(ターシャリブチルイミノ)ビス(ターシャリブチルアミノ)タングステン((CNH)W(CN)、)、タングステンヘキサカルボニル(W(CO))、ペンタエトキシタンタル(Ta(OC、略称PET)、トリスエチルメチルアミノターシャリーブチルイミノタンタル(Ta[NC(CH][N(C)CH、略称TBTEMT)等を用いることも可能である。
【0067】
反応ガスとしては、例えば、Oの他に、プラズマ励起した酸素(O)、水蒸気(HO)、過酸化水素(H)、亜酸化窒素(NO)、プラズマ励起したO+Hの混合ガス等を用いることも可能である。
【0068】
また、上述の実施形態では、不活性ガスとして、Nガスを用いる例について説明しているが、これに限らず、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0069】
また、TiO膜等の膜を形成する下地膜としては、適宜、選択可能だが、例えば、アルミニウム(Al)膜等が挙げられる。
【0070】
上述の実施の形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置であって、1つの反応管内に処理ガスを供給するノズルが立設され、反応管の下部に排気口が設けられた構造を有する処理炉を用いて成膜する例について説明したが、他の構造を有する処理炉を用いて成膜する場合にも本発明を適用可能である。例えば、同心円状の断面を有する2つの反応管(外側の反応管をアウタチューブ、内側の反応管をインナチューブと称する)を有し、インナチューブ内に立設されたノズルから、アウタチューブの側壁であって基板を挟んでノズルと対向する位置(線対称の位置)に開口する排気口へ処理ガスが流れる構造を有する処理炉を用いて成膜する場合にも本発明を適用可能である。また、処理ガスはインナチューブ内に立設されたノズルから供給されるのではなく、インナチューブの側壁に開口するガス供給口から供給されるようにしてもよい。このとき、アウタチューブに開口する排気口は、処理室内に積層して収容された複数枚の基板が存在する高さに応じて開口していてもよい。また、排気口の形状は穴形状であってもよいし、スリット形状であってもよい。
【0071】
成膜処理やクリーニング処理に用いられるレシピ(処理手順や処理条件等が記載されたプログラム)は、処理内容(形成、或いは、除去する膜の種類、組成比、膜質、膜厚、処理手順、処理条件等)に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになり、それぞれの場合に適正な処理を行うことができるようになる。また、オペレータの負担(処理手順や処理条件等の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0072】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0073】
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。これらの場合においても、処理手順、処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理手順、処理条件とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明は、例えば、半導体装置の製造方法、半導体ウエハやガラス基板等の基板を処理する基板処理装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10・・・基板処理装置
121・・・コントローラ
200・・・ウエハ
201・・・処理室
202・・・処理炉

図1
図2
図3
図4
図5
図6