【文献】
日比野 謙一、外3名,位相シフトロンキー干渉計による波面位相計測,機械技術研究所所報,1999年,Vol.53, No.4,pp.145-151
【文献】
HIBINO K. et al.,Dynamic range of Ronchi test with a phase-shifted sinusoidal grating,Applied Optics,1997年,Vol.36, No.25,pp.6178-6189
【文献】
LIN, et al. ,Testing a zone plate with a grating interferometer,Applied Optics,1990年,Vol.29, No.34,pp.5151-5158
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回折格子は、前記第1方向に関して、光を透過する第1部分と光を遮光する第2部分とを交互にN対(Nは2以上の整数)配列した領域を有し、かつ隣接する前記第1部分と前記第2部分との幅の比が次第に変化している請求項1に記載の波面計測方法。
前記回折格子は、前記第1方向に関して、前記正弦波状の透過率分布の1周期分の幅内に、光を透過する第1部分と光を遮光する第2部分とを交互にN対配列した第1領域と、前記1周期分の幅内に、光を透過する第3部分と光を遮光する第4部分とを交互にN1対(N1は2以上で、Nと異なる整数)配列した第2領域とを有する請求項2に記載の波面計測方法。
前記回折格子は、前記第1方向に直交する第2方向にも周期性を持ち、かつ前記第2方向の透過率分布が正弦波状の透過率分布を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の波面計測方法。
前記回折格子は、前記第1方向に関して、光を透過する第1部分と光を遮光する第2部分とを交互にN対(Nは2以上の整数)配列した領域を有し、隣接する前記第1部分と前記第2部分との幅の比が次第に変化している請求項7に記載の波面計測装置。
前記回折格子は、前記第1方向に関して、前記正弦波状の透過率分布の1周期分の幅内に、光を透過する第1部分と光を遮光する第2部分とを交互にN対配列した第1領域と、前記1周期分の幅内に、光を透過する第3部分と光を遮光する第4部分とを交互にN1対(N1は2以上で、Nと異なる整数)配列した第2領域とを有する請求項8に記載の波面計測装置。
前記回折格子は、前記第1方向に直交する第2方向にも周期性を持ち、かつ前記第2方向の透過率分布が正弦波状の透過率分布を有する請求項7乃至10のいずれか一項に記載の波面計測装置。
前記回折格子は、前記第4部分の前記第1方向側に配置され、前記第1方向に沿って第5幅を有し、光を通過させる第5部分と、前記第5部分の前記第1方向側に配置され、前記第1方向に沿って第6幅を有し、光を遮光する第6部分とをさらに含み、
前記第5部分の前記第5幅は、前記第3部分の前記第3幅よりも広く、
前記第6部分の前記第6幅は、前記第4部分の前記第4幅よりも狭い請求項15又は16に記載の波面計測方法。
前記回折格子は、前記第4部分の前記第1方向側に配置され、前記第1方向に沿って第5幅を有し、光を通過させる第5部分と、前記第5部分の前記第1方向側に配置され、前記第1方向に沿って第6幅を有し、光を遮光する第6部分とをさらに含み、
前記第5部分の前記第5幅は、前記第3部分の前記第3幅よりも広く、
前記第6部分の前記第6幅は、前記第4部分の前記第4幅よりも狭い、
請求項21又は22に記載の波面計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態につき
図1〜
図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る露光装置EXの全体構成を概略的に示す。露光装置EXは、一例としてスキャニングステッパー(スキャナー)よりなる走査露光型の投影露光装置である。
図1において、露光装置EXは投影光学系PO(投影ユニットPU)を備えており、以下においては、投影光学系POの光軸AXと平行にZ軸を取り、これに直交する面(ほぼ水平面に平行な面)内でレチクルとウエハとが相対走査される方向(走査方向)に沿ってY軸を、Z軸及びY軸に直交する方向(非走査方向)に沿ってX軸を取り、X軸、Y軸、及びZ軸の回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx 、θy 、及びθz 方向として説明を行う。
【0014】
露光装置EXは、照明系ILS、照明系ILSからの露光用の照明光(露光光)ELにより照明されるレチクルR(マスク)を保持するレチクルステージRST、レチクルRから射出された照明光ELをウエハW(基板)に投射する投影光学系POを含む投影ユニットPU、ウエハWを保持するウエハステージWST、装置全体の動作を制御するコンピュータよりなる主制御系16、及び投影光学系POの波面収差情報を計測する波面計測装置80を備えている。
【0015】
照明系ILSは、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、照明光学系とを含み、照明光学系は、回折光学素子又は空間光変調器等を含み通常照明、複数極照明、又は輪帯照明等のための光量分布を形成する光量分布形成光学系、オプティカルインテグレータを含む照度均一化光学系、視野絞り(固定レチクルブラインド及び可動レチクルブラインド)、並びにコンデンサ光学系(いずれも不図示)等を有する。照明系ILSは、視野絞りで規定されたレチクルRのパターン面(下面)のX方向に細長いスリット状の照明領域IARを照明光ELによりほぼ均一な照度で照明する。
【0016】
照明光ELとしては、一例としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。なお、照明光としては、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)、YAGレーザ若しくは固体レーザ(半導体レーザなど)の高調波、又は水銀ランプの輝線(i線等)なども使用できる。
レチクルRはレチクルステージRSTの上面に真空吸着等により保持され、レチクルRのパターン面には、回路パターン及びアライメントマークが形成されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むステージ駆動系(不図示)によって、XY
平面内で微少駆動可能であると共に、走査方向(Y方向)に指定された走査速度で駆動可能となっている。
【0017】
レチクルステージRSTの移動面内の位置情報(X方向、Y方向の位置、及びθz 方向の回転角を含む)は、レーザ干渉計よりなるレチクル干渉計72によって、移動鏡74(又は鏡面加工されたステージ端面)を介して例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計72の計測値は、主制御系16に送られる。主制御系16は、その計測値に基づいて上記のステージ駆動系を制御することで、レチクルステージRSTの位置及び速度を制御する。
【0018】
図1において、レチクルステージRSTの下方に配置された投影ユニットPUは、鏡筒60と、鏡筒60内に所定の位置関係で保持された複数の光学素子を有する投影光学系POとを含む。投影光学系POは、例えば両側テレセントリックで所定の投影倍率β(例えば1/4倍、1/5倍などの縮小倍率)を有する。照明系ILSからの照明光ELによってレチクルRの照明領域IARが照明されると、レチクルRを通過した照明光ELにより、投影ユニットPU(投影光学系PO)を介して照明領域IAR内のレチクルRのパターンの像が、ウエハWの一つのショット領域上の露光領域IA(照明領域IARと共役な領域)に形成される。ウエハWは、例えばシリコン等からなる直径が200mmから450mm程度の円板状の基材の表面に、フォトレジスト(感光剤)を所定の厚さ(例えば数10〜200nm程度)で塗布した基板を含む。
【0019】
また、本実施形態では、投影光学系POの結像特性を補正するために、例えば米国特許出願公開第2006/244940号明細書に開示されているように、投影光学系PO中の所定の複数の光学素子の光軸方向の位置、及び光軸に垂直な平面内の直交する2つの軸の回りの傾斜角を制御する結像特性補正装置2が設けられている。結像特性の補正量に応じて結像特性補正装置2を駆動することで、投影光学系POの結像特性が所望の状態に維持される。
【0020】
また、露光装置EXは、液浸法を適用した露光を行うため、投影光学系POを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子である先端レンズ66を保持する鏡筒40の下端部の周囲を取り囲むように、局所液浸装置の一部を構成するノズルユニット62が設けられている。ノズルユニット62は、露光用の液体Lq(例えば純水)を供給可能な供給口と、液体Lqを回収可能な多孔部材(メッシュ)が配置された回収口とを有する。ノズルユニット62の供給口は、供給流路及び供給管64Aを介して、液体Lqを送出可能な液体供給装置(不図示)に接続されている。
【0021】
液浸法によるウエハWの露光時に、その液体供給装置から送出された液体Lqは、
図1の供給管64A及びノズルユニット62の供給流路を流れた後、その供給口より照明光ELの光路空間を含むウエハW上の液浸領域に供給される。また、液浸領域からノズルユニット62の回収口を介して回収された液体Lqは、回収流路及び回収管64Bを介して液体回収装置(不図示)に回収される。なお、液浸タイプの露光装置としない場合には、上記の局所液浸装置は設けなくともよい。
【0022】
また、ウエハステージWSTは、不図示の複数のエアパッドを介して、ベース盤WBのXY面に平行な上面に非接触で支持されている。また、ウエハステージWSTは、例えば平面モータ、又は直交する2組のリニアモータを含むステージ駆動系17によってX方向及びY方向に駆動可能である。露光装置EXは、ウエハステージWSTの位置情報を計測するためにレーザ干渉計よりなるウエハ干渉計76及び/又はエンコーダシステム(不図示)を含む位置計測システムを備えている。
【0023】
ウエハステージWSTの移動面内の位置情報(X方向、Y方向の位置、及びθz 方向の回転角を含む)は、その位置計測システムによって例えば0.5〜0.1nm程度の分解能で常時検出され、その計測値は主制御系16に送られる。主制御系16は、その計測値に基づいてステージ駆動系17を制御することで、ウエハステージWSTの位置及び速度を制御する。
【0024】
ウエハステージWSTは、X方向、Y方向に駆動されるステージ本体70と、ステージ本体70上に搭載されたウエハテーブルWTBと、ステージ本体70内に設けられて、ステージ本体70に対するウエハテーブルWTB(ウエハW)のZ方向の位置、及びθx 方向、θy 方向のチルト角を相対的に微小駆動するZ・レベリング機構とを備えている。ウエハテーブルWTBの中央の上部には、ウエハWを真空吸着等によってほぼXY平面に平行な吸着面上に保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。
【0025】
ウエハテーブルWTBの上面には、ウエハホルダ上に載置されるウエハの表面とほぼ同一面となる、液体Lqに対して撥液化処理された表面(又は保護部材)を有し、かつ外形(輪郭)が矩形でその中央部にウエハホルダ(ウエハの載置領域)よりも一回り大きい円形の開口が形成された高平面度の平板状のプレート体68が設けられている。
また、ウエハステージWSTの上部に、上面がプレート対68の表面とほぼ同じ高さになるように、投影光学系POの波面収差を計測するための計測本体部8(詳細後述)が装着されている。そして、投影光学系POの波面収差計測時には、一例としてレチクルステージRSTにレチクルRの代わりに、計測用レチクル4がロードされる。波面計測装置80は、照明系ILS、計測用レチクル4、計測本体部8、計測本体部8の撮像素子14(
図2(A)参照)から出力される撮像信号を処理して投影光学系POの波面収差情報を求める演算装置12、及び計測本体部8の動作を制御する主制御系16を有する。演算装置12は求めた波面収差情報を主制御系16に供給する。主制御系16は、必要に応じてその計測された波面収差を補正するように、結像特性補正装置2を介して投影光学系POの結像特性を補正する。
【0026】
さらに、露光装置EXは、レチクルR及びウエハWのアライメントを行うためのアライメント系(不図示)、及びウエハWの表面のZ位置(フォーカス位置)の分布を計測するオートフォーカスセンサ(不図示)を有する。オートフォーカスセンサの計測値に基づいて、ウエハステージWSTのZ・レベリング機構を駆動することで、露光中にウエハWの表面を投影光学系POの像面に合焦される。
【0027】
ウエハWの露光時に、基本的な動作として、ウエハWのアライメントが行われた後、ウエハステージWSTのX方向、Y方向への移動(ステップ移動)によって、ウエハWの露光対象のショット領域が投影光学系POの露光領域の手前に移動する。そして、主制御系12の制御のもとで、レチクルRのパターンの一部の投影光学系POによる像でウエハWの当該ショット領域を露光しつつ、レチクルステージRST及びウエハステージWSTを同期して駆動して、投影光学系POに対してレチクルR及びウエハWを例えば投影倍率を速度比としてY方向に走査することによって、当該ショット領域の全面にレチクルRの転写用パターンの像が走査露光される。このようにステップ移動と走査露光とを繰り返すことによって、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハWの複数のショット領域に対して順次レチクルRのパターンの像が露光される。
【0028】
このような露光に際しては、投影光学系POの波面収差が所定の許容範囲内に収められている必要がある。そのためには、まず波面計測装置80を用いて投影光学系POの波面収差を高精度に計測する必要がある。
以下、本実施形態の露光装置EXが備える波面計測装置80の構成、及び投影光学系POの波面収差の計測方法につき説明する。投影光学系POの波面収差計測時には、レチク
ルステージRSTに計測用レチクル4がロードされる。計測用レチクル4のパターン面には、一例として複数の規則的に配列されたピンホールアレー6が形成されている。そして、投影光学系PLの露光領域に計測本体部8の上部が移動し、照明系ILSから射出された照明光ELがピンホールアレー6及び投影光学系POを介して計測本体部8に入射する。また、露光装置EXが液浸型であるときには、投影光学系POの波面収差計測時にも投影光学系POと計測本体部8との間に液体Lqを供給してもよい。ただし、液体Lqを供給することなく、投影光学系POの波面収差を計測してもよい。
【0029】
図2(A)は、投影光学系POの波面収差の計測時の計測用レチクル4、投影光学系PO、及び計測本体部8の配列の一例を示す。
図2(A)において、計測本体部8は、XY平面にほぼ平行に配置されて、2次元の格子パターンDP1(詳細後述)が形成された回折格子10と、回折格子10からの複数の回折光によるシアリング干渉の干渉縞を検出するCCD型又はCMOS型等の2次元の撮像素子14と、回折格子10及び撮像素子14を保持する保持部材(不図示)と、この保持部材に対して回折格子10をX方向及びY方向に微小量(回折格子10の1周期〜2周期程度の距離)駆動するピエゾ素子等の2軸の駆動素子9と、を備えている。駆動素子9の駆動量は
図1の主制御系16により制御され、撮像素子14の検出信号は演算装置12に供給される。
【0030】
駆動素子9は、後述のように位相シフト法でシアリング波面を求める場合に使用される。ただし、駆動素子9を備えることなく、ウエハステージWSTによって回折格子10を計測用レチクル4に対して移動するようにしてもよい。さらに、位相シフト法ではなく、フーリエ変換法でシアリング波面を求める場合には、駆動素子9を備えることなく、計測中に回折格子10と計測用レチクル4とを相対移動する必要もない。
【0031】
図2(A)の光学系は、シアリング干渉を行うタルボ(Talbot)干渉計である。
図2(A)において、投影光学系POの物体面に計測用レチクル4のピンホールアレー6が設置され、ピンホールアレー6が照明光ELで照明される。ピンホールアレー6は、計測用レチクル4の平板状のガラス基板のパターン面(下面)の金属膜よりなる遮光膜6b中に周期的に形成された複数のピンホール6aよりなる。
【0032】
図2(B)に示すように、ピンホールアレー6は、複数のピンホール6aをX方向、Y方向に周期(ピッチ)Ps/βで配列したものである。ここで、βは投影光学系POの投影倍率であり、ピンホールアレー6の投影光学系POによる像(複数のピンホールの像6aP)のX方向、Y方向の周期はPsである。なお、ピンホールアレー6のX方向、Y方向の周期は異なっていてもよい。個々のピンホール6aの直径は、一例として回折限界以下程度である。照明光ELの波長λ、投影光学系POの物体側の開口数NAinを用いると、回折限界はλ/(2NAin)である。
【0033】
ピンホール6aの直径≦λ/(2NAin) …(A1)
ここで、波長λを193nm、開口数NAinをほぼ0.25とすると、回折限界はほぼ400nmとなるため、ピンホール6aの直径は例えば400nm程度又はこれより小さい。実際には、一つのピンホール6aを用いるのみでも投影光学系POの波面収差を計測することができる。ただし、このような多数のピンホール6aが周期的に形成されたピンホールアレー6を使用することで、撮像素子14上での干渉縞の光量が大きくなるため、高いSN比でシアリング干渉方式の波面計測を行うことができる。
【0034】
また、ピンホールアレー6の周期Ps/βは、例えば照明光ELの空間的コヒーレンス長以上である。照明光学系の射出側の開口数NAIL及び波長λを用いて、その空間的コヒーレンス長は、一例として高々、λ/NAILである。従って、周期Ps/βは次の条件を満たせばよい。
Ps/β≧λ/NAIL≒λ/NAin …(A2)
この場合、波長λを193nm、開口数NAinを0.25とすると、空間的コヒーレンス長はほぼ800nmとなるため、周期Ps/βは例えば800nm程度より大きければよい。ただし、後述のようにピンホールアレー6の像の周期Psは、さらに所定の条件を満たす必要があるとともに、周期Psは例えば1μm程度以上となる。この場合、投影倍率βを1/4とすると、ピンホールアレー6の周期Ps/βはほぼ4μm程度以上となり、式(A2)の条件は十分に満たされる。
【0035】
また、
図2(A)において、ピンホールアレー6の投影光学系POによる像が像面18上に形成され、この像面18から−Z方向に距離Lgの位置に回折格子10が配置され、この下方で像面18から距離Lcの位置に撮像素子14の受光面が配置される。回折格子10は、平板状のガラス基板の一面の金属膜等の遮光膜10b中にX方向、Y方向に周期的に格子パターンユニット11Sを形成したものである。
【0036】
図2(C)に示すように、回折格子10の遮光膜10b中に複数の格子パターンユニット11SをX方向及びY方向に周期Pgで配列した2次元の格子パターンDP1が形成されている。格子パターンDP1中のX方向及びY方向の格子パターンユニット11Sの配列数は、実際には
図2(C)の配列よりもかなり多い。格子パターンユニット11Sは、遮光膜10b中にX方向及びY方向の平均的な透過率分布がほぼ正弦波の1周期分の変化となるように、大きさが様々な多数の矩形(正方形でもよい)の開口パターン11Saを形成したものである。このため、回折格子10(格子パターンDP1)のY方向の平均的な透過率TYの分布は、
図2(D)に示すように周期Pgの正弦波状の分布である。同様に、回折格子10のX方向の平均的な透過率TXの分布も周期Pgの正弦波状の分布である。なお、回折格子10の正弦波状の透過率分布のX方向及びY方向の周期が互いに異なっていてもよい。このように、格子パターンDP1は、その透過率分布として、正弦波状の透過率分布を有するため擬似正弦格子パターンと称することができる。以下、格子パターンDP1を擬似正弦格子パターンDP1と称する場合がある。
【0037】
図3(A)は、回折格子10中の一つの格子パターンユニット11Sを示す。格子パターンユニット11Sの透過率分布は、
図3(B)に示すX方向に周期Pgで形成された1次元の格子パターンユニット11SXの正弦波状の透過率分布と、
図3(C)に示すY方向に周期Pgで形成された1次元の格子パターンユニット11SYの正弦波状の透過率分布との積に等しい。格子パターンユニット11SXは、X方向に線幅Li(i=1〜7)の遮光部LXAと線幅Siの透過部SXAとからなる部分パターンを線幅比(Li/Si)を次第に変化させながら7個配列して、1周期を7分割したパターンである。同様に、格子パターンユニット11SYは、Y方向に線幅Li(i=1〜7)の遮光部LYAと線幅Siの透過部SYAとからなる部分パターンを7個配列した7分割のパターンである。格子パターンユニット11SX,11SYの7つの部分パターンの線幅Li,Siの一例を
図4(A)の左側の表に示す。各部分パターンは幅が一定の1143nmで周期Pgはほぼ8μm(=1143μm×7)である。
【0038】
また、格子パターンユニット11SX,11SYの1周期内の分割数を多くするほど、透過率分布をより正弦波に近づけることができる。このため、格子パターンユニット11SX,11SYとして、1周期(ここでは8μm)を9分割又は11分割したパターンを使用して、格子パターンユニット11Sの透過率分布を、9分割又は11分割等の格子パターンユニット11SX,11SYの透過率分布の積の透過率分布としてもよい。
図4(A)の中央の表は、9分割する場合の遮光部及び透過部の線幅Li,Siの一例を示し、
図4(A)の右側の表は、11分割する場合の遮光部及び透過部の線幅Li及びSiの一例を示す。また、
図4(A)の線幅Li,Siでは透過部の最小線幅が100nmである。
【0039】
また、
図4(B)は、照明光ELの照射によって回折格子10の擬似正弦格子パターンDP1から発生する0次光及び1次、2次、3次等の回折光の強度(回折強度)の計算結果を示す。
図4(B)には、擬似正弦格子パターンDP1の格子パターンユニット11Sとして、1周期をそれぞれ7分割、9分割、及び11分割したパターンを使用した場合の回折強度が示されている。この回折強度から、1周期を7分割、9分割、及び11分割したパターンを使用した場合には、0次光及び1次回折光の他にそれぞれ7次、9次、及び11次の回折光が発生することが分かる。
【0040】
これに関して、
図4(C)には、
図2(B)のピンホールアレー6のような周期的面光源からの光束を投影光学系POを介して回折格子10に入射させた場合の、回折格子10からの0次光と他の1次、2次、3次等の回折光との可干渉度(コヒーレンス)の計算結果を示す。
図4(C)に示すように、回折光の次数が大きくなるほど可干渉度が低下していることが分かる。シアリング干渉で必要になるのは、0次光と±1次回折光との干渉縞であり、これ以外の干渉縞は少ないことが好ましい。そして、
図4(B)に示すように、格子パターンユニット11Sから発生する回折強度は、7分割〜11分割のパターンでは、それぞれ7次〜11次の回折強度が大きくなるが、
図4(C)に示すように、前述した
図2(B)のピンホールアレー6、投影光学系POを介して回折格子10に入射させた場合、回折格子10から発生する0次光と7次〜11次の回折光との可干渉度は低くなる。このため、0次光と7次〜11次の回折光との干渉縞の強度はかなり小さくなり、本実施形態の擬似正弦格子パターンDP1から発生する有効な回折光はほぼ0次光及び1次回折光のみとなり、ノイズ光の割合を大幅に低減できるため、シアリング波面の計測を高精度に行うことができる。
【0041】
本実施形態において、格子パターンユニット11Sの1周期内の部分パターンの分割数は奇数個であっても偶数個であってもよい。計測精度によって、1周期内の部分パターンの分割数を奇数個又は偶数個に設定することが可能である。さらに、
図4(A)の例では、1周期内の複数の部分パターンの幅は同じであるが、複数の部分パターンの幅を次第に変化させることも可能である。
【0042】
また、
図3(A)の格子パターンユニット11Sの代わりに、
図5(A)に示すように、格子パターンユニット11Sを構成する種々の大きさの矩形の開口パターン11Saを同じ面積の円形の開口パターン11SAaで置き換えた構成の格子パターンユニット11SAを使用してもよい。さらに、格子パターンユニット11Sの透過率分布は、X方向、Y方向の格子パターンユニット11SX,11SYの透過率分布の積であるが、
図5(B)に示すように、X方向、Y方向の格子パターンユニット11SX,11SYの透過率分布の和の正弦波状の透過率分布を持つ格子パターンユニット11SBを使用することもできる。格子パターンユニット11SBは、格子パターンユニット11SX,11SYの透過部の和のパターンを作成した後、このパターン内の矩形の開口パターンを同じ面積の円形の開口パターン11SBaで置き換え、そのパターン内の矩形の遮光パターンを同じ面積の円形の遮光パターン11SBbで置き換えたものである。
【0043】
図2(A)において、ピンホールアレー6を通過した照明光ELが投影光学系POを介して回折格子10に入射し、回折格子10の擬似正弦格子パターンDP1から発生する0次光(0次回折光)20、X方向の±1次回折光(不図示)、及びY方向の±1次回折光20A,20B等によって、撮像素子14の受光面に
図2(E)に示すようなシアリング干渉の干渉縞(フーリエ像)22が形成される。
【0044】
回折格子10の周期Pgは、回折光の所望の横ずれ量(シア量)に応じて設定されるが、例えば1μm〜10μm程度に設定される。
図4(A)の3つの例では、周期Pgは8
μmである。
この場合、撮像素子14の受光面に干渉縞22が形成されるためには、回折格子10の擬似正弦格子パターンDP1の形成面の像面18からの距離Lg、及び撮像素子14の受光面の像面18からの距離Lcは、露光波長λ、回折格子10の周期Pg、及びタルボ次数nを用いて、次の条件(タルボ条件)を満たす必要がある。なお、タルボ条件(Talbot条件)の詳細は、「応用光学1(鶴田)」(p.178-181,培風館,1990年)に記載されている。
【0045】
(1/Lg)+{1/(Lc−Lg)}=λ/(2nPg
2) …(A3)
なお、n=0,0.5,1,1.5,2,…である。即ち、タルボ次数nは整数又は半整数である。
本実施形態では、Lc≫Lgが成立するため、式(A3)の代わりに次の近似式を使用することができる。
【0046】
Lg=2n×Pg
2/λ …(A4)
さらに、撮像素子14上に干渉縞が高いコントラストで形成されるためには、ピンホールアレー6の像の周期Psは、周期Pg、距離Lg、距離Lc、及び所定の整数m(例えば2又は4)を用いて次の条件を満たす必要がある。この条件については、例えば特開2011−108696号公報に開示されている。
【0047】
Ps={Pg/(1−Lg/Lc)}m …(A5)
この条件は、
図2(A)において、撮像素子14上の干渉縞22上の或る点22aに、ピンホールアレー6の一つのピンホールの像6aPからの光束E1が到達する場合に、他のピンホールの像6aPからの光束E2も達する条件である。言い換えると、この条件によって、高いコントラストの干渉縞22が形成される。
【0048】
なお、Lg/Lcは1よりもかなり小さい値であるため、式(A5)の代わりに次の近似式を使用してもよい。
Ps=Pg×m …(A6)
この式において周期Pgを8μm、mを2とすると、ピンホールアレー6の像の周期Psは16μmとなる。この場合、投影倍率βを1/4として、ピンホールアレー6の周期は64μmとなる。
【0049】
式(A4)及び式(A6)の条件のもとで、撮像素子14の受光面に形成される干渉縞22の強度分布の情報を
図1の演算装置12に取り込み、その強度分布に後述の演算を施すことで、投影光学系POの波面とこれをX方向にずらした波面とのシアリング波面(以下、X方向のシア波面という)Wx、及び投影光学系POの波面とこれをY方向にずらした波面とのシアリング波面(Y方向のシア波面)Wyを求めることができる。さらに、演算装置12は、これらのシア波面Wx,Wyから投影光学系POの波面、ひいてはその波面収差を求め、この波面収差の情報を主制御系16に供給する。
【0050】
なお、
図7(A)の計測本体部の第1変形例で示すように、回折格子10のパターンは、投影光学系POの像面18の上方に距離Lgの位置に配置することも可能である。この場合には、距離Lgを負の値として扱えばよい。
また、本実施形態のように照明光ELとしてArFエキシマレーザ光(波長193nm)のような紫外光が使用される場合には、
図7(B)の第2変形例で示すように、回折格子10のパターンを投影光学系POの像面18に配置することも可能である。この場合には、上記のタルボ条件は満たす必要がない。
【0051】
以下、本実施形態の露光装置EXにおいて、波面計測装置80を用いて投影光学系PO
の波面収差を計測する動作の一例につき
図6のフローチャートを参照して説明する。この計測動作は主制御系16によって制御される。本実施形態では一例として位相シフト法を用いてシアリング波面を求める。位相シフト法については、例えば特開2011−108696号公報に開示されている。なお、フーリエ変換法でシアリング波面を求めることも可能である。
【0052】
先ず、
図6のステップ102において、
図1のレチクルステージRSTに計測用レチクル4をロードし、計測用レチクル4のピンホールアレー6を照明装置ILSの照明領域に移動する。そして、ウエハステージWSTを駆動し、
図2(A)に示すように、計測本体部8の回折格子10の中心をピンホールアレー6の像の中心に移動する(ステップ104)。
【0053】
次に、主制御系16は、制御用のパラメータkの値を1に初期化し、駆動素子9を用いて回折格子10のX方向、Y方向の移動量(位相シフト量)を1回目の計測点の値に設定し、照明系ILSからの照明光ELで計測用レチクル4を照明する(ステップ106)。そして、計測用レチクル4から射出された照明光ELが、投影光学系POを介して回折格子10に入射し、回折格子10から発生する0次光を含む複数の回折光によるk回目(ここでは1回目)のシアリング干渉の干渉縞22の強度分布Ikを撮像素子14で検出する(ステップ108)。検出結果は演算装置12内の記憶装置に記憶される(ステップ110)。
【0054】
次に、主制御系16は、パラメータkが予め定められた計測回数を示すK(例えば4以上の整数)に達したか否かを判断し(ステップ112)、パラメータkがKより小さいときに動作はステップ114に移行して、主制御系16はパラメータkの値に1を加算する。そして、主制御系16は、駆動素子9を介して計測本体部8の回折格子10をX方向にΔXk及びY方向にΔYkだけ移動して、位相シフト量をk回目の計測点における値に合わせる(ステップ116)。この後、ステップ108に戻り、回折格子10から発生する回折光によるk番目のシアリング干渉の干渉縞22の強度分布Ikの検出、及びこの光強度分布の記憶(ステップ110)を繰り返す。
【0055】
その後、ステップ112において、パラメータkがKに達しているときには、動作はステップ118に移行する。そして、演算装置12は、内部の記憶装置からK個の干渉縞の強度分布Ik(k=1〜K)の情報を読み出し、これらの強度分布Ikを用いて、X方向のシア波面Wx及びY方向のシア波面Wyを計算する。このシア波面の計算方法は、例えば特開2011−108696号公報に開示されている。このシア波面は、撮像素子14の各画素の検出信号(光強度)毎に計算される位相分布である。
【0056】
そして、演算装置12は、X方向及びY方向のシア波面より投影光学系POを通過する照明光の波面を求め、さらにこの波面から波面収差を求める(ステップ120)。ここで求められた波面収差の情報は主制御系16に供給される。また、主制御系16は、必要に応じて、結像特性補正装置2を用いて投影光学系POの波面収差を補正する(ステップ122)。この後、レチクルステージRSTに実際の露光用のレチクルRをロードし(ステップ124)、ウエハステージRSTに順次載置されるウエハの複数のショット領域にレチクルRのパターン像を走査露光する(ステップ126)。
【0057】
この際に、回折格子10の擬似正弦格子パターンDP1から射出されるのは0次光と±1次回折光が大部分であり、高次干渉光の量が大幅に低減されているため、波面計測装置80によって投影光学系POの波面収差を高精度に計測できる。従って、常に投影光学系POの結像特性を所望の状態に維持して高精度に露光を行うことができる。
本実施形態の効果等は以下の通りである。
【0058】
本実施形態の露光装置EXは、計測用レチクル4のピンホールアレー6から射出された光束に基づいて、投影光学系POの波面情報を求める波面計測装置80を備えている。そして、波面計測装置80は、ピンホールアレー6から射出されて投影光学系POを通過した光束が入射するとともに、X方向及びY方向に周期性を持ち、かつX方向及びY方向の透過率分布が正弦波状の分布を有する回折格子10と、回折格子10から発生する複数の光束による干渉縞22の強度分布を検出する撮像素子14(検出器)と、撮像素子14の検出結果に基づいて投影光学系POの波面情報を求める演算装置12と、を備えている。
【0059】
また、波面計測装置80を用いて投影光学系POの波面情報を求める波面計測方法は、計測用レチクル4のピンホールアレー6から射出された光束を投影光学系POに照射するステップ106と、投影光学系POを通過した光束をX方向及びY方向に周期性を持ちX方向及びY方向の透過率分布が正弦波状の分布を有する回折格子10に入射させるステップ108と、回折格子10から発生する複数の光束による干渉縞22に基づいて投影光学系POの波面情報を求めるステップ120と、を含んでいる。
【0060】
本実施形態によれば、回折格子10の擬似正弦格子パターンDP1から発生するのは主に0次光と±1次回折光であり、2次以上の高次回折光の強度が大幅に低減している。このため、回折格子10から発生する0次光及び1次回折光よりなる干渉縞の強度分布から高精度に投影光学系POのX方向及びY方向へのシア波面を求めることができる。従って、高次干渉光等の影響を軽減させて、投影光学系POの波面情報を効率的に、かつ高精度に計測できる。
【0061】
また、本実施形態の露光方法は、照明光EL(露光光)でレチクルRのパターンを照明し、照明光ELでそのパターン及び投影光学系POを介してウエハW(基板)を露光する露光方法において、投影光学系POの波面収差を計測するために、本実施形態の波面計測方法を用いている。また、本実施形態の露光装置EXは、投影光学系POの波面収差を計測するために波面計測装置80を備えている。
【0062】
従って、露光装置の投影光学系POの波面収差を露光波長で高精度に評価できる。また、計測された波面収差を補正することによって、高精度に露光を行うことができる。また、その波面収差の計測結果を投影光学系POの各光学部材のアラインメントに使用することで、高性能の投影光学系を製造できる。さらに、露光装置EXにおいてオンボディで投影光学系POのフルフィールドでの波面収差を高精度に計測できる。
【0063】
なお、本実施形態では以下のような変形が可能である。
先ず、本実施形態の回折格子10の擬似正弦格子パターンDP1はX方向、Y方向に周期性を持つ2次元のパターンであるが、例えば投影光学系POのX方向のシア波面を求めるだけでよい場合には、擬似正弦格子パターンとして、
図3(B)のX方向の格子パターンユニット11SXをX方向に周期的に配列したパターンを使用できる。同様に、Y方向のシア波面を求めるだけでよい場合には、擬似正弦格子パターンとして、
図3(C)のY方向の格子パターンユニット11SYをY方向に周期的に配列したパターンを使用できる。
【0064】
また、
図2(A)の回折格子10のパターンとして、
図8の第1変形例の擬似正弦格子パターンDP2を使用してもよい。擬似正弦格子パターンDP2は、Y方向に周期3Pgで、複数の格子パターンユニット11MYを形成したものである。この場合、擬似正弦格子パターンDP2のY方向の平均的な透過率分布は周期Pgの正弦波状である。そして、各格子パターンユニット11MYは、
図8中の拡大
図Bで示すように、正弦波状の透過率分布の1周期Pgを7分割した部分パターン(遮光部LYA及び透過部SYA)よりなる
格子パターンユニット11SYと、1周期Pgを9分割した部分パターン(遮光部LYB及び透過部SYB)よりなる格子パターンユニット11TYと、1周期Pgを11分割した部分パターン(遮光部LYC及び透過部SYC)よりなる格子パターンユニット11UYとをY方向に並べて形成された3種混合パターンである。
【0065】
この擬似正弦格子パターンDP2(3種混合パターン)から発生する回折光の強度は、
図4(B)に示すように、0次光及び1次回折光の強度が大きく、2次以上の回折光の強度はほぼ0となっている。従って、擬似正弦格子パターンDP2が形成された回折格子を投影光学系POの像面側に配置してシアリング波面の計測を行う場合、形成される干渉縞中の高次干渉光のノイズがほぼ0になるため、極めて高精度にシアリング波面の計測を行うことができる。
【0066】
また、
図2(A)の回折格子10のパターンとして、
図9(A)の第2変形例の擬似正弦格子パターンDP3を使用してもよい。擬似正弦格子パターンDP3は、X方向、Y方向にそれぞれ周期2Pgで、複数の格子パターンユニット11M2を形成したものである。この場合、擬似正弦格子パターンDP3のX方向及びY方向の平均的な透過率分布はそれぞれ周期Pgの正弦波状である。そして、各格子パターンユニット11M2は、
図9(B)の拡大図で示すように、正弦波状のX方向及びY方向の透過率分布の1周期Pgをそれぞれ7分割した部分パターンの積(又は和でもよい。以下同様)に相当する2次元の格子パターンユニット11Sと、1周期Pgを9分割した部分パターンの積に相当する2次元の格子パターンユニット11Tと、1周期Pgを11分割した部分パターンの積に相当する格子パターンユニット11Uと、1周期Pgを13分割した部分パターンの積に相当する格子パターンユニット11Wと、をX方向及びY方向に並べて形成された4種混合の2次元パターンである。
【0067】
この2次元の擬似正弦格子パターンDP3(4種混合パターン)から発生する回折光の強度は、X方向及びY方向の両方で2次以上の回折光の強度がほぼ0となる。従って、擬似正弦格子パターンDP3が形成された回折格子を投影光学系POの像面側に配置してシアリング波面の計測を行う場合、形成される干渉縞中の高次干渉光のノイズがほぼ0になるため、極めて高精度にX方向及びY方向のシアリング波面の計測を行うことができる。
【0068】
また、上記の実施形態は、周期的面光源を用いたインコヒーレント照明計測系にも適用でき、単一ピンホールを用いたコヒーレント照明計測系にも適用できる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態につき
図10(A)〜
図11(B)を参照して説明する。本実施形態の波面収差計測装置の基本的な構成は
図1の波面計測装置80と同様であるが、本実施形態では、計測用レチクルのパターンが正弦波状の透過率分布を持ち、回折格子には通常の複数の開口パターンが形成されている。以下、
図10(A)〜
図11(B)において、
図2(A)〜
図2(D)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略又は簡略化する。
【0069】
図10(A)は、本実施形態の波面収差計測装置の計測本体部8A、計測用レチクル4A、及び投影光学系POを示す図である。本実施形態では、計測用レチクル4Aには、X方向及びY方向に周期Ps/β(βは投影倍率)で複数の射出パターンユニット7Sを配列した構成で、X方向及びY方向の平均的な透過率分布が周期Ps/βの正弦波状の格子パターン(以下、擬似正弦格子パターンと称する)LP1が形成されている。
図10(B)に示すように、一つの射出パターンユニット7Sは、
図2(C)の回折格子10の格子パターンユニット11Sと同様に、遮光膜7b中に大きさが異なる複数の矩形(正方形であってもよい)の開口パターン7Saを形成したものである。射出パターンユニット7SのY方向及びX方向の平均的な透過率分布TY及びTXは、
図10(C)及び(D)に示
すように周期Ps/βの正弦波状である。
【0070】
また、計測本体部8Aの回折格子10Aには、
図10(E)に示すように、遮光膜10b中に正方形の開口パターン10aがX方向、Y方向に周期Pgで形成されている。従って、計測本体部8Aの撮像素子14の受光面には、0次光20、+1次回折光20A、及び−1次回折光20A等による干渉縞22(
図11(F)参照)が形成される。
本実施形態において、
図10(B)の計測用レチクル4Aの射出パターンユニット7Sとして、1周期を9分割した部分パターンよりなるパターンを使用した場合に、回折格子10Aから射出される0次光と1次、2次、3次等の回折光との可干渉度を計算した結果を
図11(B)に示す。また、この場合の射出パターンユニット7Sの9分割した部分の遮光部及び透過部の線幅Li,Si(nm)の例を
図11(A)に示す。
図11(A)の右側の例は最小線幅が100nmの例であり、左側の例は最小線幅が400nmの例である。これら2つの例は、各部分パターンの線幅がほぼ3556nmで、周期Ps/βがほぼ32μm(=3556nm×9)の例である。
【0071】
そして、
図11(B)には、最小線幅が100nm及び400nmの射出パターンユニットよりなる擬似正弦格子パターンLP1を用いた場合の可干渉度が示されている。
図11(B)より、1次光との可干渉度が大きく、9次以外の回折光との可干渉度はほぼ0であることが分かる。また、9次の回折光との可干渉度が比較的大きいが、回折格子10Aから発生する9次の回折光の強度はかなり小さいため、高次干渉光は大幅に低減される。この結果、本実施形態においても、位相シフト法又はフーリエ変換法によって、投影光学系POのX方向、Y方向のシア波面を高精度に求めることができる。
【0072】
また、本実施形態の波面計測装置は、X方向及びY方向(又はこれらのうち一つの方向)の光量分布として正弦波状の分布(このうちの1周期分の分布でもよい)を有する光束を射出する射出パターンユニット7Sを有する計測用レチクル4A(光射出部)と、計測用レチクル4Aから射出されて投影光学系POを通過した光束(照射工程を経た光束)が入射する(入射工程を実行する)とともに、X方向及びY方向(又はこれらのうちの一つの方向)に周期性を持つ回折格子10Aと、回折格子10Aから発生する複数の光束による干渉縞22の強度分布を検出する撮像素子14(検出器)と、撮像素子14の検出結果に基づいて投影光学系POの波面情報を求める(波面情報を求める工程を実行する)演算装置(
図1の演算装置12と同様の演算装置)と、を備えている。
本実施形態によれば、投影光学系POに入射する光束の光量分布が正弦波状の分布を有するため、回折格子10Aから射出される高次回折光等の影響が低減される。従って、高次干渉光等の影響が低減されて、投影光学系POの波面情報を高精度に計測できる。
【0073】
なお、本実施形態においても、計測用レチクル4Aの擬似正弦格子パターンLP1としてX方向又はY方向に正弦波状の透過率分布を持つ1次元のパターンを使用してもよい。さらに、擬似正弦格子パターンLP1として、
図8(A)に示すように、1周期内の分割数が異なる複数の射出パターンユニット(格子パターンユニット11SY,11TY,11UYに相当するパターン)を組み合わせた混合パターンを使用してもよい。また、
図9(A)に示すように、X方向及びY方向で1周期内の分割数が異なる複数の射出パターンユニット(格子パターンユニット11S〜11Wに相当するパターン)を組み合わせた混合パターンを使用してもよい。
【0074】
図9(A)のような混合パターンよりなる擬似正弦格子パターン(周期的な正弦波状の輝度分布を持つ面光源)からの光束で投影光学系POを介して回折格子10Aを照明した場合、回折格子10Aからの0次光と1次、2次等の回折光との可干渉度は、
図9(C)に示すように、1次回折光との可干渉度が大きく、他の回折光との可干渉度はほぼ0となる。従って、シアリング干渉法でより高精度に投影光学系POの波面収差を計測すること
ができる。
【0075】
なお、回折格子10Aのパターンは市松格子状であってもよい。さらに、計測用レチクル4Aに擬似正弦格子パターンLP1を設けた状態で、回折格子10Aとしても擬似正弦格子パターンが形成された回折格子を使用してもよい。
また、上記の実施形態において、計測用レチクル4Aの代わりに、輝度分布が正弦波状の光源(光射出部)を使用してもよい。
【0076】
なお、本発明は、タルボ干渉計以外の任意の干渉計を用いてシアリング干渉等による干渉縞を検出して被検光学系の波面収差を計測する場合に適用可能である。
また、上記の実施形態では、露光用の照明光EL(露光光)としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)等を用いて屈折系又は反射屈折系等からなる投影光学系を使用する露光装置において、投影光学系の波面収差を計測している。しかしながら、上記の実施形態の波面計測方法及び装置は、露光光として、波長が100nm程度以下で例えば11〜15nm程度の範囲内(例えば13.5nm)のEUV光(Extreme Ultraviolet Light)を用いて、反射系からなる投影光学系を使用する露光装置(EUV露光装置)において、投影光学系の波面収差を計測する場合にも適用できる。EUV露光装置に適用する場合には、計測本体部の計測用レチクルも反射型である。
【0077】
また、上記の実施形態の露光装置EX又は露光方法を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造する場合、この電子デバイスは、
図12に示すように、デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造するステップ223、前述した実施形態の露光装置EX又は露光方法によりマスクのパターンを基板に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0078】
言い替えると、上記のデバイスの製造方法は、上記の実施形態の露光装置EX又は露光方法を用いて、マスクのパターンを介して基板(ウエハW)を露光する工程と、その露光された基板を処理する工程(即ち、基板のレジストを現像し、そのマスクのパターンに対応するマスク層をその基板の表面に形成する現像工程、及びそのマスク層を介してその基板の表面を加工(加熱及びエッチング等)する加工工程)と、を含んでいる。
【0079】
このデバイス製造方法によれば、露光装置EXの投影光学系の結像特性を目標とする状態に高精度に維持できるため、電子デバイスを高精度に製造できる。
なお、上記の実施形態の波面計測方法及び装置は、ステッパー型の露光装置の投影光学系の波面収差を計測する場合にも適用できる。
さらに、本発明は、露光装置の投影光学系以外の光学系、例えば顕微鏡の対物レンズ、又はカメラの対物レンズ等の波面収差を計測する場合にも適用可能である。
【0080】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
また、本願に記載した上記公報、各国際公開パンフレット、米国特許、又は米国特許出願公開明細書における開示を援用して本明細書の記載の一部とする。また、明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約を含む2012年5月30日付け提出の日本国特許出願第2012−123813号の全ての開示内容は、そっくりそのまま引用して本願に組み込まれている。