特許第6774238号(P6774238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774238
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】ターンテーブル用クロスの剥離治具
(51)【国際特許分類】
   B25B 33/00 20060101AFI20201012BHJP
   H01L 21/304 20060101ALN20201012BHJP
【FI】
   B25B33/00
   !H01L21/304 622F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-135947(P2016-135947)
(22)【出願日】2016年7月8日
(65)【公開番号】特開2018-1388(P2018-1388A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】外崎 宏
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】曽根 忠一
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−217149(JP,A)
【文献】 米国特許第06221199(US,B1)
【文献】 登録実用新案第3138501(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 33/00
B24B 37/10、37/34
H01L 21/304
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスの外周縁を挟持するクロス挟持部材と、
前記クロス挟持部材を引っ張るためのハンドルと、
前記クロス挟持部材と前記ハンドルとを接続する延長バーと、
を備え、
前記クロス挟持部材は、前記クロスの外周縁をその上下から挟持する上部材および下部材を有し、
前記上部材および下部材の互いに対向する面には互いに噛合可能な歯が設けられており、
前記歯が設けられた部分の長手方向の長さは5cm以上であり、
前記延長バーの一端は前記クロス挟持部材の長手方向端部に回転可能に取り付けられ、前記延長バーの他端は前記ハンドルの長手方向端部に回転可能に取り付けられている
ことを特徴とするターンテーブル用クロスの剥離治具。
【請求項2】
前記上部材および下部材のいずれか一方には前記クロスの外周縁を挟持した際に当該クロスを突き破るピンが設けられており、他方には当該ピンが挿入されるピン挿入穴が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のターンテーブル用クロスの剥離治具。
【請求項3】
前記上部材および下部材の少なくとも一部は、軟質部材からなるカバーで覆われている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のターンテーブル用クロスの剥離治具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターンテーブルに貼り付けられたクロスを剥離するのに用いられるターンテーブル用クロスの剥離治具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの製造工程においては、半導体ウェハ表面を平坦且つ鏡面化するためにポリッシング装置が使用されている。この種のポリッシング装置は、各々独立した回転数で回転するターンテーブルとトップリングとを有し、トップリングに保持された半導体ウェハの表面をターンテーブル上に貼り付けられたクロスの表面(研磨面)に接触させ、砥液を供給しながらこれを研磨する。
【0003】
ところで、ターンテーブル上のクロスは半導体ウェハを研磨する際に当該ターンテーブルから剥がれないように、当該ターンテーブル上に強固に接着されている。このため、クロスが摩耗して新規のクロスと貼り替える必要が生じた場合には、クロスを剥がすのに強い力が必要になる。
【0004】
特許文献1および2には、従来のターンテーブル用クロスの剥離治具が開示されている。この剥離治具では、ラチェットハンドルを使用して巻取シリンダを回転させるようになっている。
【0005】
ところで、特許文献3には、ターンテーブル上からクロスを引き剥がすのに強大な力を必要とすることなく、比較的容易にクロスを引き剥がすことができるターンテーブルが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−217148号公報
【特許文献2】特開平10−217149号公報
【特許文献3】特開2007−75949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2に開示された従来の剥離治具では、少なくともクロスの巻取開始時は、ラチェットハンドルが巻取シリンダの一端部に直接係合されるため、当該ラチェットハンドはポリッシングルーム内に配置されることになる。ポリッシングルーム内にはドレッサー、アトマイザ、トップリング、砥液ノズル等の多数の周辺機器が予め設置されているため、ラチェットハンドルを揺動させる際にラチェットハンドルが周辺機器に干渉する可能性がある。
【0008】
したがって、従来の剥離治具では、ラチェットハンドルが周辺機器に干渉する直前までクロスを剥がしたら、ラチェットハンドルが周辺機器に干渉しなくなる位置までターンテーブルを回転させ、またラチェットハンドルが周辺機器に干渉する直前までターンテーブル用クロスを剥がしていく、という作業を何度も繰り返す必要があり、作業が煩雑であった。
【0009】
従来の剥離治具を用いる代わりに、ペンチやプライヤでクロスの外周縁を掴んで引っ張ることも考えられるが、ペンチやプライヤのハンドルを握りながら引っ張るため、力が入りづらく、確実にクロスを把持できずに不安全な作業となるおそれがあった。
【0010】
また、特許文献3に開示されたような、ターンテーブル上からクロスを引き剥がすのに強大な力を必要とすることなく、比較的容易に引き剥がすことができるターンテーブルにおいては、クロスの接着力が比較的弱いため、ラチェットハンドルを使用した複雑な構造の剥離治具までは必要とされない。
【0011】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものである。本発明の目的は、ターンテーブルからクロスを容易に剥離することができ、しかもその構造が簡単なターンテーブル用クロスの剥離治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるターンテーブル用クロスの剥離治具は、
クロスの外周縁を挟持するクロス挟持部材と、
前記クロス挟持部材を引っ張るためのハンドルと、
を備え、
前記クロス挟持部材は、前記クロスの外周縁をその上下から挟持する上部材および下部材を有し、
前記上部材および下部材の互いに対向する面には互いに噛合可能な歯が設けられており、
前記歯が設けられた部分の長手方向の長さは5cm以上である。
【0013】
本発明によれば、5cm以上の長さで設けられた上部材の歯と下部材の歯との間にクロスが挟み込まれることで、クロスがクロス挟持部材に強固に固定される。これにより、ハンドルを掴んで引っ張る際にクロス挟持部材からクロスが抜け落ちることを防止でき、ターンテーブルからクロスを容易に剥離することができる。また、本発明によれば、ラチェット構造などの複雑な構造を採用しておらず、構造が簡単である。したがって、従来の剥離治具に比べて製造コストを大幅に低減できる。
【0014】
本発明によるターンテーブル用クロスの剥離治具において、前記上部材および下部材のいずれか一方には前記クロスの外周縁を挟持した際に当該クロスを突き破るピンが設けられており、他方には当該ピンが挿入されるピン挿入穴が形成されていてもよい。
【0015】
このような態様によれば、クロス挟持部材のピンがクロスを突き破ることで、クロスがクロス挟持部材に更に強固に固定され、ハンドルを掴んで引っ張る際にクロス挟持部材からクロスが抜け落ちることを確実に防止できる。
【0016】
本発明によるターンテーブル用クロスの剥離治具において、前記上部材および下部材の少なくとも一部は、軟質部材からなるカバーで覆われていてもよい。
【0017】
このような態様によれば、ハンドルを掴んで引っ張る際にクロス挟持部材をターンテーブルの上面に誤って接触させたとしても、カバーにより衝撃が吸収されることで、ターンテーブルの損傷が低減され得る。
【0018】
本発明によるターンテーブル用クロスの剥離治具において、前記クロス挟持部材と前記ハンドルとを接続する延長バーをさらに備え、前記延長バーの一端は前記クロス挟持部材の長手方向端部に回転可能に取り付けられ、前記延長バーの他端は前記ハンドルの長手方向端部に回転可能に取り付けられていてもよい。
【0019】
このような態様によれば、ハンドルを掴んで引っ張る際に、引っ張る力の向きに応じて延長バーの両端部が回動することで、ハンドルの位置を持ち易い位置に位置決めすることができる。これにより、ハンドルに効果的に力をかけることができ、ターンテーブルからクロスを一層容易に剥離することができる。
【0020】
本発明によるターンテーブル用クロスの剥離治具において、前記ハンドルは、U字形状を有し、前記クロス挟持部材に直接固定されていてもよい。
【0021】
このような態様によれば、構造が極めて簡単であり、剥離治具の製造コストを一層低減できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ターンテーブルからクロスを容易に剥離することができ、しかもその構造が簡単なターンテーブル用クロスの剥離治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施の形態による剥離治具を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す剥離治具を異なる角度から見た斜視図である。
図3図3は、図1に示す剥離治具のクロス挟持部材の縦断面図である。
図4図4は、図3に示すクロス挟持部材の異なる位置における縦断面図である。
図5図5は、図1に示す剥離治具の使用方法を説明するための模式図である。
図6図6は、図1に示す剥離治具の使用方法を説明するための模式図である。
図7図7は、本発明の一変形例による剥離治具を示す斜視図である。
図8図8は、本発明の別の変形例による剥離治具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示の理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態による剥離治具を示す斜視図である。図2は、図1に示す剥離治具を異なる角度から見た斜視図である。
【0026】
図1および図2に示すように、剥離治具10は、クロスの外周縁を挟持するクロス挟持部材11と、クロス挟持部材11を引っ張るためのハンドル12と、クロス挟持部材11とハンドル12とを接続する一対の延長バー13a、13bと、を備えている。以下、各構成部品について説明する。
【0027】
図3は、クロス挟持部材11の縦断面図である。図4は、図3に示すクロス挟持部材の異なる位置における縦断面図である。
【0028】
図1図4に示すように、クロス挟持部材11は、上部材21および下部材22と、上部材21および下部材22を固定する3本の固定用ネジ23と、上部材21と下部材22との間に挟持されたクロス55を突き破る2本のピン24と、を有している。
【0029】
このうち上部材21は、金属製であって細長平板形状を有しており、その長手方向中央および両端近傍にそれぞれ固定用ネジ23を挿通する貫通孔が形成されている。図示された例では、固定用ネジ23は、その頭部が指で直接回動できるように、いわゆる蝶ネジタイプに形成されている。
【0030】
図1図4に示すように、上部材21の一側辺中央には舌片状に突出する挟持部分21aが設けられている。この挟持部分21aの下面には多数の平行な凹凸溝からなる歯21bが形成されている。また、上部材21の挟持部分21aには、クロス55の外周縁を挟持した際に当該クロス55を突き破る(または押し付ける)ピン24が螺合する螺合孔21fが形成されている。
【0031】
さらに、挟持部分21aの上面中央には上下に貫通する確認孔25が形成されている。
【0032】
一方、下部材22は、金属製であって細長平板形状を有しており、その長手方向中央および両端近傍に固定用ネジ23と螺合する螺合孔が形成されている。
【0033】
また、下部材22の一側辺中央には舌片状に突出する挟持部分22aが設けられている。この挟持部分22aの上面には多数の平行な凹凸溝からなる歯22bが形成されている。上部材21の歯21bと下部材22の歯22bとは互いに噛合可能となっている。また、下部材22の挟持部分22aには、クロス55を突き破るピン24が挿入されるピン挿入穴22fが形成されている。
【0034】
上部材21および下部材22の歯21b、22bが設けられた部分(すなわち挟持部分21a、22a)の長手方向の長さLは5cm以上であり、より好ましくは10cm以上であり、さらに好ましくは20cm以上である。挟持部分21a、22aの長手方向の長さLが長くなる程、上部材21と下部材22との間でクロス55を強固に挟み付けることができる。ただし、挟持部分21a、22aの長手方向の長さLは、後述するハンドル12の長さより短く設計する必要がある。ハンドル12を両手で掴むことを想定した場合、ハンドル12の長さは30cm程度であるから、挟持部分21a、22aの長手方向の長さLは現実的には30cm以下となる。また、クロス55の大きさとの比較では、挟持部分21a、22aの長手方向の長さLは、クロス55の直径に対して1/15以上1/2.5以下であることが、本件発明者らの経験上好ましい。
【0035】
本実施の形態では、挟持部分21a、21b側から見て上部材21の背面と下部材22の背面および底面とは、それぞれ、軟質部材からなるカバー21d、22dにより覆われている。カバー21d、21dの材質としては、たとえば、樹脂やゴム、軟質発泡体などが用いられる。
【0036】
上部材21のカバー21dは、上部材21の背面にカバー取付ネジ21eによって取り付けられており、下部材22のカバー22dは、下部材22の背面および底面にカバー取付ネジ22eによって取り付けられている。このような構成により、カバー21d、22eが破損または汚損した場合に、カバー取付ネジ21e、22eを外すだけで、カバー21d、22eを容易に交換することができる。
【0037】
本実施の形態では、ハンドル12は両手で掴むことが想定されたハンドルであり、ハンドル12の長手方向の長さは例えば20cm〜30cmである。
【0038】
図1および図2に示すように、クロス挟持部材11の上部材21とハンドル12とは、一対の延長バー13a、13bにより接続されている。一方の延長バー13aの一端は、上部材21の長手方向の一端に設けられた支柱31aに回転可能に取り付けられ、他端は、ハンドル12の長手方向の一端に設けられた支柱32aに回転可能に取り付けられている。また、他方の延長バー13bの一端は、上部材21の長手方向の他端に設けられた支柱31bに回転可能に取り付けられ、他端は、ハンドル12の長手方向の他端に設けられた支柱32bに回転可能に取り付けられている。
【0039】
次に、このような構成からなる剥離治具10の使用方法を説明する。
【0040】
まず、図5に示すように、ポリッシング装置50のポリッシングルーム52の扉53が開放され、ターンテーブル51の上面に貼り付けられている円板状のクロス55の外周縁の一部が少しだけ剥がされる。そして、当該クロス55の剥がされた部分がクロス挟持部材11の上部材21の歯21bおよび下部材22の歯22bで挟み込まれる(図3および図4参照)。
【0041】
次いで、固定用ネジ23が上部材21の貫通孔(不図示)に挿通され、下部材22の螺合孔(不図示)にねじ込まれることで、上部材21の歯21bと下部材22の歯22bとの間にクロス55が強固に挟み込まれる。このとき上部材21の挟持部分21aおよび下部材22の挟持部分22aはいずれも、固定用ネジ23の取り付け位置からクロス55側に突出しているため、たとえクロス挟持部材11の長さ寸法が短くなったとしても、クロス55が固定用ネジ23に当接して上部材21の挟持部分21aと下部材22の挟持部分22aとの間に十分挿入できなくなることはなく、その挟持を確実に行うことができる。
【0042】
また、図1および図2に示すように、上部材21に形成された確認孔25から、挟持されたクロス55を目視できるため、クロス55がクロス挟持部材11内にどの程度挿入されているかを即座に判断することができる。
【0043】
次いで、ピン24が上部材21の螺合孔21fに挿通され、挟持部分22a、22b間に挟持されたクロス55を突き破って、下部材22のピン挿入穴22fに挿入される。これにより、上部材21の挟持部分21aと下部材22の挟持部分22aとの間にクロス55が一層強固に挟み込まれる。
【0044】
以上のようにクロス挟持部材11にクロス55の外周縁が固定される作業は、図5に示すように作業者の手前側のクロスについて行われてもよいし、(図示は省略するが)作業者の向こう側のクロスについて行われてもよい。図5に示すように作業者の手前側のクロスについて行われた方が作業性がよい。
【0045】
次に、ターンテーブル51が図5における矢印Aの方向に回転され、剥離治具10が作業者の向こう側に配置される(図6参照)。そして、剥離治具10のハンドル12が両手で掴まれて手前側(図6における矢印Bの方向)に引っ張られることで、ターンテーブル51上からクロス55が連続して剥ぎ取られていく。
【0046】
ところで、発明が解決しようとする課題の欄でも言及したように、ラチェットハンドルを使用した従来の剥離治具では、少なくとも巻取開始時は、ラチェットハンドルが巻取シリンダの一端部に直接係合されるため、ラチェットハンドルを揺動させる際にラチェットハンドルが周辺機器に干渉する可能性がある。そのため、従来の剥離治具では、ラチェットハンドルが周辺機器に干渉する直前までクロスを剥がしたら、ラチェットハンドルが周辺機器に干渉しなくなる位置までターンテーブルを回転させ、またラチェットハンドルが周辺機器に干渉する直前までターンテーブル用クロスを剥がしていく、という作業を何度も繰り返す必要があった。また、複雑なラチェット構造を採用しているため、製造コストを低減することが困難であった。
【0047】
また、ラチェットハンドルを使用した従来の剥離治具を用いる代わりに、ペンチやプライヤでクロスの外周縁を掴んで引っ張る場合には、ペンチやプライヤのハンドルを握りながら引っ張るため、力が入りづらく、確実にクロスを把持できずに不安全な作業となるおそれがあった。
【0048】
一方、本実施の形態によれば、5cm以上の長さで設けられた上部材21の歯21bと下部材22の歯22bとの間にクロス55が挟み込まれることで、クロス55がクロス挟持部材11に強固に固定される。これにより、ハンドル12を掴んで引っ張る際にクロス挟持部材11からクロス55が抜け落ちることを防止でき、ターンテーブル51からクロス55を容易かつ安全確実に剥離することができる。また、本実施の形態によれば、ラチェット構造などの複雑な構造を採用しておらず、構造が簡単である。したがって、従来の剥離治具に比べて製造コストを大幅に低減できる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、クロス挟持部材11のピン24がクロス55を突き破ることで、クロス55がクロス挟持部材11に更に強固に固定され、ハンドル12を掴んで引っ張る際にクロス挟持部材11からクロス55が抜け落ちることを一層確実に防止できる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、挟持部分21a、21b側から見て上部材21の背面と下部材22の背面および底面が、軟質部材からなるカバー21d、22dで覆われているため、ハンドル12を掴んで引っ張る際にクロス挟持部材11をターンテーブル51の上面に誤って接触させたとしても、カバー21d、22dにより衝撃が吸収され、ターンテーブル51の損傷が低減され得る。
【0051】
また、本実施の形態によれば、クロス挟持部材11とハンドル12とが延長バー13a、13bにより接続され、延長バー13a、13bの一端はクロス挟持部材11の長手方向端部に回転可能に取り付けられ、延長バー13a、13bの他端はハンドル12の長手方向端部に回転可能に取り付けられているため、ハンドル12を掴んで引っ張る際に、引っ張る力の向きに応じて延長バー13a、13bの両端部が回動し、ハンドル12の位置を持ち易い位置に位置決めすることができる。これにより、ハンドル12に効果的に力をかけることができ、ターンテーブル51からクロス55を一層容易に剥離することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、この実施形態に対して様々な変形を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0053】
図7は、本発明の一変形例による剥離治具10a、10bを示す斜視図である。
【0054】
図7に示す例では、ハンドル12は片手で掴むことが想定されたハンドルであり、ハンドル12の長手方向の長さは、図1および図2に示す実施形態におけるハンドル12の長さより短くなっている。これに伴って、図1および図2に示す実施形態に比べて、クロス挟持部材11の固定用ネジ23の数が1本減っており、ピン24の数も1本減っている。
【0055】
図7に示す例では、2つの剥離治具10a、10bの各々のハンドル12を左右の手で掴んで同時に引っ張ることで、ターンテーブル51からクロス55を容易に剥離することができる。この場合、図1および図2に示す実施形態に比べて、剥離治具10a、10bの1個当たりが小型軽量化されるため、剥離治具10a、10bをターンテーブル51の上面に誤って接触させたとしても、ターンテーブル51の損傷を比較的軽減することができる。
【0056】
図8は、本発明の別の変形例による剥離治具10cを示す斜視図である。
【0057】
図8に示す例では、ハンドル19は、U字形状を有し、クロス挟持部材11の上部材21に直接固定されている。この場合、構造が極めて簡単であり、剥離治具10cの製造コストを一層低減することができる。
【0058】
なお、上記した各実施形態ではクロス挟持部材11を金属製としたが金属以外の材料で構成してもよい。
【0059】
また、上記した各実施形態では固定用ネジ23として蝶ネジが用いられたが、他の形状構造のネジが用いられてもよいことは言うまでもない。また、上部材21と下部材22とを固定するのは必ずしも固定用ネジ23である必要はなく、ボルト・ナットなど、他の固定手段でもよい。また、上部材21および下部材22の一端をヒンジ構造とすれば、固定用ネジ23はヒンジ構造の反対側に1本取り付ければよい。
【0060】
また、上記した各実施形態では剥離治具がターンテーブル用クロス55を剥離するために用いられたが、ビニル床材や壁紙クロスを剥がすために用いられてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 剥離治具
11 クロス挟持部材
12 ハンドル
13a、13b 延長バー
19 ハンドル
21 上部材
21a 挟持部分
21b 歯
21d カバー
21e カバー取付ネジ
21f 螺合孔
22 下部材
22a 挟持部分
22b 歯
22d カバー
22e カバー取付ネジ
22f ピン挿入穴
23 固定用ネジ
24 ピン
25 確認孔
31a、31b 支柱
32a、32b 支柱
50 ポリッシング装置
51 ターンテーブル
52 ポリッシングルーム
53 扉
55 クロス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8