特許第6774256号(P6774256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許6774256-薬液塗布装置 図000002
  • 特許6774256-薬液塗布装置 図000003
  • 特許6774256-薬液塗布装置 図000004
  • 特許6774256-薬液塗布装置 図000005
  • 特許6774256-薬液塗布装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774256
(24)【登録日】2020年10月6日
(45)【発行日】2020年10月21日
(54)【発明の名称】薬液塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/08 20060101AFI20201012BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20201012BHJP
【FI】
   B05C11/08
   B05C11/00
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-156450(P2016-156450)
(22)【出願日】2016年8月9日
(65)【公開番号】特開2018-23918(P2018-23918A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】松崎 栄
(72)【発明者】
【氏名】児玉 祥一
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−114035(JP,U)
【文献】 実開昭63−10554(JP,U)
【文献】 特開2002−319559(JP,A)
【文献】 特開2010−62439(JP,A)
【文献】 特開平11−91948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00−21/00
B05D 1/00− 7/26
H01L 21/00−21/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの上面に薬液を塗布する薬液塗布装置であって、
ウェーハを上面に保持し回転可能なスピンナーテーブルと、該スピンナーテーブル上に保持されたウェーハ外周縁に向けて光を照射する少なくとも3つの光照射手段と、ウェーハの上面に薬液を供給する薬液供給部と、を備え、
各光照射手段から照射された少なくとも3つの光のそれぞれが離間してウェーハ外周縁を指し示し且つ該少なくとも3つの光が指し示す位置を結んだ円の中心がテーブル回転中心となる位置で各該光照射手段は配設され、
該光照射手段の該少なくとも3つの光が指し示す位置にウェーハ外周縁が位置づけられて該スピンナーテーブル上にウェーハが載置され、スピンナーテーブルを回転させた状態でウェーハ中心に該薬液が供給されてウェーハの上面に薬液が塗布され
該光照射手段の光を透過しない材質で形成され1点を指し示す先端を備える遮光性ポインタを該光照射手段と同一数備え、
該少なくとも3つの光が指し示す位置とは、該スピンナーテーブルと各該光照射手段との間で、該光照射手段から照射された光が該遮光性ポインタで遮光され該遮光性ポインタ先端の影がウェーハ外周縁を指し示す位置であり、
少なくとも3つの該遮光性ポインタの影が指し示した位置に、ウェーハ外周縁が位置づけられて該スピンナーテーブル上にウェーハが載置され、スピンナーテーブルを回転させた状態でウェーハ中心に該薬液が供給されてウェーハの上面に薬液が塗布されること、を特徴とする薬液塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ等のワークの上面に薬液を塗布する薬液塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、半導体ウェーハ等の上面に薬液を均一に塗布することで保護膜や絶縁膜等の表面膜が形成される。表面膜の形成方法としては、スピンナーテーブルの上面にウェーハが載置され、スピンナーテーブルを回転させた状態でウェーハの上面中心部に薬液を垂らす、いわゆるスピンナーコーティングという方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法では、ウェーハの上面中心部に垂らされた薬液が遠心力を受けて外周側に広げられることで、ウェーハの全面に均一に薬液が塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−043293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、開発品等で数枚のウェーハの上面に薬液を塗布する際には、専用装置を用いずにオペレータがスピンナーテーブル上にウェーハを載置し、回転中のスピンナーテーブル上のウェーハに対して手作業で薬液を垂らして塗布される。この場合、オペレータの目視でスピンナーテーブルの中心にウェーハ中心を位置づける必要があるが、手作業ではスピンナーテーブルに対してウェーハを精度よく位置づけることは難しい。スピンナーテーブルに対してウェーハを何度も置き直しすることで、ウェーハの載置に時間を要すると共にウェーハが傷付けられてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、手作業でスピンナーテーブルの中心にウェーハ中心を精度よく位置づけて載置することができる薬液塗布装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の薬液塗布装置は、ウェーハの上面に薬液を塗布する薬液塗布装置であって、ウェーハを上面に保持し回転可能なスピンナーテーブルと、該スピンナーテーブル上に保持されたウェーハ外周縁に向けて光を照射する少なくとも3つの光照射手段と、ウェーハの上面に薬液を供給する薬液供給部と、を備え、各光照射手段から照射された少なくとも3つの光のそれぞれが離間してウェーハ外周縁を指し示し且つ該少なくとも3つの光が指し示す位置を結んだ円の中心がテーブル回転中心となる位置で各該光照射手段は配設され、該光照射手段の該少なくとも3つの光が指し示す位置にウェーハ外周縁が位置づけられて該スピンナーテーブル上にウェーハが載置され、スピンナーテーブルを回転させた状態でウェーハ中心に該薬液が供給されてウェーハの上面に薬液が塗布されること、を特徴とする。
【0007】
この構成によれば、少なくとも3つの光が指し示す位置を結んだ円の中心がテーブル回転中心になるため、スピンナーテーブルに対するウェーハの位置合わせ箇所が少なくとも3つの光で指し示される。このため、少なくとも3つの光がウェーハ外周縁を指し示すように、オペレータが目視で確認しながらスピンナーテーブルにウェーハを載置することで、手作業であってもスピンナーテーブルのテーブル回転中心にウェーハ中心を的確に位置づけることができる。スピンナーテーブルに対してウェーハが位置合わせし易くなるため、ウェーハを短時間で載置できると共に、ウェーハの置き直しが頻繁に起こらないためウェーハが傷付けられることがない。
【0008】
本発明の一態様の薬液塗布装置において、該光照射手段の光を透過しない材質で形成され1点を指し示す先端を備える遮光性ポインタを該光照射手段と同一数備え、該少なくとも3つの光が指し示す位置とは、該スピンナーテーブルと各該光照射手段との間で、該光照射手段から照射された光が該遮光性ポインタで遮光され該遮光性ポインタ先端の影がウェーハ外周縁を指し示す位置であり、少なくとも3つの該遮光性ポインタの影が指し示した位置に、ウェーハ外周縁が位置づけられて該スピンナーテーブル上にウェーハが載置され、スピンナーテーブルを回転させた状態でウェーハ中心に該薬液が供給されてウェーハの上面に薬液が塗布される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スピンナーテーブルに対するウェーハの位置合わせ箇所が少なくとも3つの光で指し示されるため、手作業であってもスピンナーテーブルのテーブル回転中心にウェーハ中心を的確に位置づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態の薬液塗布装置の側面模式図である。
図2】本実施の形態のウェーハの位置合わせの説明図である。
図3】本実施の形態のウェーハへの薬液供給の説明図である。
図4】本実施の形態の薬液の塗布作業の一例を示す図である。
図5】変形例の薬液塗布装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態の薬液塗布装置について説明する。図1は、本実施の形態の薬液塗布装置の側面模式図である。なお、本実施の形態の薬液塗布装置は、手動で薬液を塗布する際に使用されるスピンコート用の装置であれば、どのように構成されていてもよい。
【0012】
図1に示すように、薬液塗布装置1は、製品の開発段階等で使用されるスピンコート用の装置であり、オペレータが手動にてスピンナーテーブル20上にウェーハWを載置して、回転中のウェーハWの上面に薬液を垂らすように構成されている。スピンコートでは、ウェーハ中心O1に垂らされた薬液が遠心力によってウェーハWの上面全体に広げられることで塗布される。この場合、オペレータが目視でスピンナーテーブル20にウェーハWを位置合わせするため、ウェーハWの上面に均一に薬液が広がらないため、薬液の塗りムラが生じて塗布をし直さなければならない。
【0013】
このため、本実施の形態の薬液塗布装置1では、ウェーハWに向けて照射した光を部分的に遮光した影で、スピンナーテーブル20に対するウェーハWの位置合わせ箇所を指し示すようにしている。ウェーハW上の影を目印にしてオペレータが手動で位置合わせすることで、手作業であってもテーブル回転中心O2にウェーハ中心O1を的確に位置づけることが可能になっている。なお、薬液はウェーハWの上面に保護膜や絶縁膜等の表面膜が形成可能であればよく、例えばPVA(Polyvinyl Alcohol)等の液状樹脂が使用される。また、ウェーハWは、保護被膜の形成対象であればよく、シリコン等の半導体ウェーハでもよいし、サファイア等の光デバイスウェーハでもよい。
【0014】
薬液塗布装置1のカバー部10の内側には、ウェーハWを保持するスピンナーテーブル20が回転可能に収容されている。スピンナーテーブル20の上面には、ポーラスセラミック材により保持面21が形成されており、保持面21に生じる負圧によってウェーハWが吸引保持される。また、スピンナーテーブル20の下部にはモータ(不図示)が連結されており、モータによってスピンナーテーブル20が回転駆動される。また、ウェーハWに対する薬液の塗布時にウェーハWの外周縁に到達した薬液がスピンナーテーブル20に付着しないように、スピンナーテーブル20がウェーハWよりも小径に形成されている。
【0015】
カバー部10の側壁には、スピンナーテーブル20上のウェーハ外周縁Waの位置合わせ箇所をパターン投影によって指し示す第1の投影機構30が設けられている。第1の投影機構30は、カバー部10の側壁に周方向に等間隔で3箇所(2箇所のみ図示)設けられており、各光照射手段31から各遮光性ポインタ32に光を照射して、各遮光性ポインタ32の影をウェーハ外周縁Wa付近に投影させている。光照射手段31はカバー部10の側壁から内側に突出したアーム33の先端に支持されており、遮光性ポインタ32は光照射手段31の下方でアーム33の先端に支持されている。
【0016】
光照射手段31は、スピンナーテーブル20上にウェーハWが保持された状態で、ウェーハ外周縁Waに向けて光を照射している。遮光性ポインタ32は、光照射手段31の光を透過しない材料で形成され、1点を指し示す先細りの先端をウェーハ外周縁Wa側に向けている。スピンナーテーブル20と光照射手段31との間で、光照射手段31から照射された光が遮光性ポインタ32で遮光され、遮光性ポインタ32の先端の影によってウェーハ外周縁Waが指し示される。すなわち、光照射手段31とウェーハ外周縁Waの間に遮光性ポインタ32の先端が位置付けられている。
【0017】
また、カバー部10の側壁には、スピンナーテーブル20に対してウェーハWが位置合わせされた状態で、スピンナーテーブル20上のウェーハ中心O1をパターン投影によって指し示す第2の投影機構40が設けられている。第2の投影機構40は、カバー部10の側壁に設けられており、光照射手段41から遮光性ポインタ42に光を照射して、遮光性ポインタ42の影を回転中心となるウェーハ中心O1付近に投影させている。光照射手段41はカバー部10の側壁に設けられており、遮光性ポインタ42は光照射手段41の下方でカバー部10の側壁に支持されている。
【0018】
光照射手段41は、スピンナーテーブル20上にウェーハWが保持された状態で、ウェーハWの上面に光を照射している。遮光性ポインタ42は、光照射手段41の光を透過しない材料で形成され、1点を指し示す先細りの先端をウェーハ中心O1側に向けている。スピンナーテーブル20のテーブル回転中心O2にウェーハ中心O1を位置付けて載置したウェーハWと光照射手段41の間で、光照射手段41から照射された光が遮光性ポインタ42で遮光され、遮光性ポインタ42の先端の影によってウェーハ中心O1が指し示される。すなわち、光照射手段41とウェーハ中心O1の間に遮光性ポインタ42の先端が位置付けられている。
【0019】
薬液塗布装置1には、ウェーハWの上面に薬液を供給する薬液供給部50が設けられている。薬液供給部50は薬液が入れられた容器であり、オペレータによってウェーハWの上方に位置付けられた状態で薬液供給部50からウェーハWの上面に薬液が供給される。このように構成された薬液塗布装置1では、第1の投影機構30の各遮光性ポインタ32の影が指した3点にウェーハ外周縁Waを位置付けてスピンナーテーブル20上にウェーハWが載置される。そして、スピンナーテーブル20を回転させて、第2の投影機構40の遮光性ポインタ42の影が指した1点に薬液を供給してウェーハWの上面に薬液が塗布される。
【0020】
図2及び図3を参照して、ウェーハの位置合わせ及びウェーハへの薬液供給について説明する。図2は、本実施の形態のウェーハの位置合わせの説明図である。図3は、本実施の形態のウェーハへの薬液供給の説明図である。なお、図2Aは第1の投影機構による遮光状態の斜視図、図2Bは第1の投影機構による遮光状態の側面図をそれぞれ示している。また、図3Aは第2の投影機構による遮光状態の斜視図、図3Bは第2の投影機構による遮光状態の側面図をそれぞれ示している。また、説明の便宜上、図2では第2の投影機構を省略し、図3では第1の投影機構を省略して記載している。
【0021】
図2A及び図2Bに示すように、第1の投影機構30は、ウェーハWの位置合わせ箇所Pと光照射手段31との間に遮光性ポインタ32の先端を位置付けている。光照射手段31から照射された光は遮光性ポインタ32に遮られ、遮光性ポインタ32の先端の影S1をウェーハWの上面に映し出している。このときの遮光性ポインタ32の先細りの先端の影S1が位置合わせ箇所Pを指し示しており、且つ遮光性ポインタ32の先端の影S1が指し示す3点の位置合わせ箇所Pを結んだ円の中心がスピンナーテーブル20のテーブル回転中心O2となる位置に光照射手段31が設置されている。
【0022】
また、遮光性ポインタ32毎に光照射手段31が設けられており、それぞれウェーハWに近い位置で遮光性ポインタ32の影S1をウェーハWの上面に投影させている。これにより、ウェーハWに映される遮光性ポインタ32の影S1の明暗がはっきりするため、光照射手段31から拡散光が照射されても遮光性ポインタ32の影S1の輪郭がぼやけて曖昧になることがない。3つの遮光性ポインタ32の先端の影S1が指し示す3点をオペレータが目視で確認しながら、この遮光性ポインタ32の影S1が示す3点全てにウェーハ外周縁Waが一致するように、スピンナーテーブル20に対してウェーハWが位置合わせされる。
【0023】
この場合、スピンナーテーブル20がウェーハWよりも小径に形成されているため、スピンナーテーブル20にウェーハWが載置されるまでは、ウェーハ外周縁Waの位置合わせ箇所を示す遮光性ポインタ32の先端の影S1をオペレータが確認することができない。このため、スピンナーテーブル20上にウェーハWが仮置きされ、ウェーハWの上面に投影された遮光性ポインタ32の影S1を手掛かりにしてウェーハWの位置が微調整される。このようにして、手動であってもウェーハ中心O1がテーブル回転中心O2に的確に位置づけられ、スピンナーテーブル20に対してウェーハWが載置される。
【0024】
図3A及び図3Bに示すように、第2の投影機構40は、ウェーハ中心O1と光照射手段41との間に遮光性ポインタ42の先端を位置づけている。光照射手段41から照射された光は遮光性ポインタ42に遮られ、遮光性ポインタ42の先端の影S2をウェーハWの上面に映し出している。このときの遮光性ポインタ42の先細りの先端の影S2がウェーハ中心O1を指し示すような位置関係で、遮光性ポインタ42と光照射手段41が設置されている。また、遮光性ポインタ42及び光照射手段41はウェーハ中心O1の真上から外れた位置に設置されているため、ウェーハ中心O1に薬液Lを供給する際に薬液供給部50の邪魔になることがない。
【0025】
また、第2の投影機構40においても、第1の投影機構30と同様に、光照射手段41はウェーハWに近い位置で遮光性ポインタ42の影S2をウェーハWの上面に投影させている。これにより、ウェーハWに映される遮光性ポインタ42の影S2の明暗がはっきりするため、光照射手段41から拡散光が照射されても遮光性ポインタ42の影S2の輪郭がぼやけて曖昧になることがない。遮光性ポインタ42の先端の影S2が指し示す1点をオペレータが目視で確認しながら、この遮光性ポインタ42の影S2が示す1点を狙って薬液供給部50から薬液Lが垂らされ、ウェーハWの上面に薬液が塗布される。
【0026】
この場合、ウェーハ中心O1がスピンナーテーブル20のテーブル回転中心O2に一致しているため、スピンナーテーブル20にウェーハWが偏心することなくウェーハWが回転されている。このため、ウェーハWの上面に投影された遮光性ポインタ42の先端の影S2を狙って薬液供給部50から薬液Lが垂らされることで、遠心力によってウェーハ中心O1からウェーハ外周縁Waに向かって薬液Lが均一に広げられる。このようにして、手動であってもウェーハ中心O1に対して薬液Lが的確に供給され、ウェーハWの上面全体に対して均一な厚みで薬液Lが塗布される。
【0027】
なお、本実施の形態では、第1、第2の投影機構30、40の光照射手段31、41が拡散光を照射する構成にしたが、光照射手段31、41が平行光を照射する構成にしてもよい。例えば、図5Aに示すように、第2の投影機構40の光照射手段41の光軸上にコリメートレンズ43等を設置して、平行光を作り出すようにしてもよい。これにより、ウェーハWの上面には遮光性ポインタ42の影S2がより明確に映し出されて、ウェーハ中心O1がより的確に指し示される。また、平行光であるため、光照射手段41をウェーハWから遠くに離しても、遮光性ポインタ42の影S2の輪郭が曖昧になることがない。
【0028】
続いて、図4を参照して、薬液塗布装置を用いた薬液の塗布作業について説明する。図4は、本実施の形態の薬液の塗布作業の一例を示す図である。なお、図4A及び図4Bはウェーハ載置ステップ、図4Cは薬液塗布ステップの一例を示す図である。また、図4では、第1の投影機構の光照射手段から拡散光が照射され、第2の投影機構の光照射手段から平行光が照射される一例を示している。
【0029】
図4Aに示すように、ウェーハ載置ステップでは、第1の投影機構30の各光照射手段31からスピンナーテーブル20の外周側の3箇所に光が照射される。各光照射手段31の光が各遮光性ポインタ32で遮られて、遮光性ポインタ32の影S1がスピンナーテーブル20の上面に映し出される。しかしながら、遮光性ポインタ32の先端の影S1がスピンナーテーブル20から外れているため、スピンナーテーブル20上にウェーハWが的確に載置されるまでは、遮光性ポインタ32の先端の影S1が指し示す位置合わせ箇所をオペレータが目視で確認することができない。このため、スピンナーテーブル20の保持面21上を滑らせるようにして、ウェーハWがスピンナーテーブル20上に仮置きされる。
【0030】
次に、図4Bに示すように、スピンナーテーブル20上にウェーハWが仮置きされると、ウェーハWの上面に遮光性ポインタ32の影S1が映し出される。このとき、遮光性ポインタ32の先端の影S1がウェーハ外周縁Waの3点の位置合わせ箇所Pを指し示すため、ウェーハ中心O1がテーブル回転中心O2に一致するまでは、各遮光性ポインタ32の影S1によって3点全ての位置合わせ箇所Pがウェーハ外周縁Waに映し出されない。スピンナーテーブル20に対してウェーハWの位置を微調整することで、ウェーハWの上面で各遮光性ポインタ32の影S1が指し示す3点がウェーハ外周縁Waになるように載置される。
【0031】
このように、オペレータがウェーハWの上面の遮光性ポインタ32の影S1を目視しながら、手作業でスピンナーテーブル20のテーブル回転中心O2にウェーハ中心O1が的確に位置づけられる。スピンナーテーブル20に対してウェーハWが位置合わせし易くなるため、位置合わせ時間を短くすることができると共に、ウェーハWの置き直しが頻繁に起こらないためウェーハWが傷付くことがない。また、スピンナーテーブル20のテーブル回転中心O2にウェーハ中心O1が位置付けられているため、スピンナーテーブル20のウェーハWが偏心回転することがない。
【0032】
次に、図4Cに示すように、ウェーハ載置ステップの後に薬液塗布ステップが実施される。薬液塗布ステップでは第1の投影機構30の各光照射手段31の照射が停止され、スピンナーテーブル20が回転されると共に、第2の投影機構40の光照射手段41からウェーハ中心O1付近に光が照射される。光照射手段41の光が遮光性ポインタ42で遮られて、遮光性ポインタ42の影S2がウェーハWの上面に映し出される。遮光性ポインタ42の先端の影S2がウェーハ中心O1を指し示しているため、遮光性ポインタ42の先端の影S2が指し示す1点を狙って薬液供給部50から薬液Lが垂らされる。
【0033】
スピンナーテーブル20のテーブル回転中心O2にウェーハ中心O1が一致し、ウェーハ中心O1に薬液Lが垂らされ続けるため、ウェーハ中心O1からウェーハWの表面全体に薬液Lが均一に広げられる。このように、オペレータがウェーハWの上面の遮光性ポインタ42の影S2を目視しながら、手作業でウェーハ中心O1に的確に薬液Lを供給することができる。ウェーハWに対して薬液Lを供給し易くなるため、薬液Lの塗布をし直す必要が無くなり薬液Lの無駄を省くことができる。このようにして、ウェーハWの上面全体に均一に供給された薬液Lによって表面膜が形成される。
【0034】
以上のように、本実施の形態の薬液塗布装置1によれば、第1の投影機構30の光照射手段31からの光が遮光性ポインタ32で遮光されて、遮光性ポインタ32の先端の3つの影S1でスピンナーテーブル20に対するウェーハの位置合わせ箇所が指し示される。このため、3つの影S1がウェーハ外周縁Waを指し示すように、オペレータが目視で確認しながらスピンナーテーブル20にウェーハWを載置することで、手作業であってもスピンナーテーブル20のテーブル回転中心O2にウェーハ中心O1を的確に位置づけることができる。スピンナーテーブル20に対してウェーハWが位置合わせし易くなるため、ウェーハWを短時間で載置できると共に、ウェーハWの置き直しが頻繁に起こらないためウェーハWが傷付けられることがない。
【0035】
なお、本実施の形態では、第1の投影機構30の3つの光照射手段31から照射した光が、それぞれ遮光性ポインタ32で遮光された影S1でウェーハ外周縁Waが指し示される構成にしたが、この構成に限定されない。例えば、図5Bに示すように、3つ(2つのみ図示)の光照射手段35は、スピンナーテーブル20上に保持されたウェーハ外周縁Waに向けてレーザー光を照射するレーザーポインタ等で構成されてもよい。3つの光照射手段35は、3つの光のそれぞれが離間してウェーハ外周縁Waを指し示し、且つ3つの光が指し示す位置を結んだ円の中心がテーブル回転中心O2となる位置に配置されている。
【0036】
この場合、スピンナーテーブル20上にウェーハWが仮置きされ、ウェーハWの上面に照射された3点の光を目視で確認しながらウェーハWの位置が微調整される。このような構成であっても、ウェーハ中心O1をテーブル回転中心O2に手動で的確に位置づけて、スピンナーテーブル20に対してウェーハWを載置することができる。また、レーザー光の影響を受けない薬液が用いられている場合には、第2の投影機構40の光照射手段41をレーザーポインタ等で構成することも可能である。
【0037】
また、本実施の形態では、薬液塗布装置1が光照射手段31及び遮光性ポインタ32を3つずつ備える構成にしたが、この構成に限定されない。薬液塗布装置1は、光照射手段31及び遮光性ポインタ32を少なくとも3つずつを備える構成であればよく、例えば、光照射手段31及び遮光性ポインタ32を4つずつ備えてもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、薬液供給部50として薬液Lが入った容器を例示して説明したが、この構成に限定されない。薬液供給部50は、ウェーハWの上面に薬液を供給できるものであればよく、例えば、スポイト、シリンジで構成されてもよい。
【0039】
また、本実施の形態では、遮光性ポインタ32、42は棒状に形成されているが、遮光性ポインタ32、42の先端の影で1点を指し示すことが可能な形状であれば、形状は特に限定されない。
【0040】
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0041】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。
【0042】
また、本実施の形態では、本発明をウェーハの成膜装置に適用した構成について説明したが、ウェーハ外周縁の位置合わせ箇所を指し示す必要がある他の装置に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明は、手作業でスピンナーテーブルの中心にウェーハ中心を精度よく位置づけて載置することができるという効果を有し、特に、ウェーハの上面にPVA等で保護膜を形成する薬液塗布装置に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 薬液塗布装置
20 スピンナーテーブル
30 第1の投影機構
31、35 光照射手段
32 遮光性ポインタ
50 薬液供給部
O1 ウェーハ中心
O2 テーブル回転中心
W ウェーハ
Wa ウェーハ外周縁
図1
図2
図3
図4
図5