【実施例】
【0053】
以下において、本発明による医療用光源及び医療用光源システムを、実施例により詳細に説明する。なお、
図3〜
図44に示した発光スペクトルの図は、縦軸が発光強度(a.u.)、横軸が波長(nm)を表している。
【0054】
LEDチップとして発光ピーク波長370〜410nmのものを用意した。次に、LEDチップから励起光を照射することにより可視光に発光する蛍光体として、6種類の蛍光体を用意した。具体的には青色蛍光体として、ユーロピウム付活アルカリ土類ハロリン酸塩蛍光体及びユーロピウム付活ストロンチウムパイロ蛍光体、青緑色蛍光体としてユーロピウム付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、緑色蛍光体としてユーロピウム、マンガン付活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、また、黄色蛍光体として、ユーロピウム付活アルカリ土類オルト珪酸マグネシウム蛍光体、そして、赤色蛍光体としては、ユーロピウム付活酸硫化ランタン蛍光体、マンガン付活マグネシウム・フロロ・ゲルマン酸塩蛍光体、及びユーロピウム付活サイアロン蛍光体である。それぞれの蛍光体の具体的な化学組成は以下の通りである。
青色蛍光体1:(Sr
0.9Ba
0.03Ca
0.01Eu
0.06)
5(PO
4)
3・Cl
青色蛍光体2:(Sr
0.9Eu
0.1)
2P
2O
7
青緑蛍光体1:(Sr
0.9Eu
0.1)
4Al
14O
25
緑色蛍光体1:(Ba
0.9Eu
0.1)(Mg
0.4Mn
0.6)Al
10O
17
黄色蛍光体1:(Sr
0.41Ba
0.5Mg
0.03Eu
0.05Mn
0.01)
2SiO
4
赤色蛍光体1:(La
0.9Eu
0.1)
2O
2S
赤色蛍光体2:3.5MgO・0.5MgF
2・(Ge
0.9Mn
0.1)O
2
赤色蛍光体3:(Sr
0.92Eu
0.08)Si
6Al
2O
2N
12
【0055】
以下の実施例では、上記した8種類の蛍光体を様々な比率で混合し、種々の発光スペクトルを有する白色光源を得た。なお各実施例では、各蛍光体の名称を、青1、赤2の様に、発光色と番号の組合せにて呼称するものとする。
【0056】
(実施例A1)
LEDチップとして発光ピーク波長が370nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青2、赤1からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約18μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青2:赤1=30 :70 の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.01mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図3に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.18mmとした。次にJIS−C−8152に準じ、積分球を装備した全光束測定装置により、白色光源の発光スペクトルを測定した。混合蛍光体の発光スペクトルにおいて、黄色域(520〜580nm)における最大発光強度をP3、赤色域(600〜780nm)における最大発光強度をP2とした時、両者の比率(P3/P2)は2%であった。
【0057】
(実施例A2)
LEDチップとして発光ピーク波長が390nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青1、赤1 からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約13μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青1:赤1 =40:60の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.05mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図4に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.15mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は2%であった。
【0058】
(実施例A3)
LEDチップとして発光ピーク波長が400nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青緑1、赤1 からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約26μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青緑1:赤1=35:65の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.5mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図5に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.35mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は18%であった。
【0059】
(実施例A4)
LEDチップとして発光ピーク波長が410nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に緑1、赤1 からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約18μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として緑1:赤1=20:80の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.3mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図6に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.25mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は15%であった。
【0060】
(実施例A5)
LEDチップとして発光ピーク波長が390nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青2、青緑1、赤1からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約10μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青2:青緑1:赤1=20:25:55の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.2mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図7に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.1mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は19%であった。
【0061】
(実施例A6)
LEDチップとして発光ピーク波長が390nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青2、緑1、赤1 からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約10μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青2:緑1:赤1=30:15:55の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.2mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図8に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.12mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は18%であった。
【0062】
(実施例A7)
LEDチップとして発光ピーク波長が400nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青1、青緑1、赤1 からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約15μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青1:青緑1:赤1=20:20:60の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.3mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図9に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.2mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は18%であった。
【0063】
(実施例A8)
LEDチップとして発光ピーク波長が400nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青1、緑1、赤1からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約17μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青1:緑1:赤1=15:15:70の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.3mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図10に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.18mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は18%であった。
【0064】
(実施例A9)
LEDチップとして発光ピーク波長が400nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青緑1、緑1、赤1からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約5μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青緑1:緑1:赤1=20:20:60の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.1mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図11に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.08mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は19%であった。
【0065】
(実施例A10)
LEDチップとして発光ピーク波長が390nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青2、赤2 からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約8μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青2:赤2=40:60の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.15mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図12に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.09mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は5%であった。
【0066】
(実施例A11)
LEDチップとして発光ピーク波長が410nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青1、赤2 からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約20μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青1:赤2=50:50 の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.4mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図13に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.20mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は5%であった。
【0067】
(実施例A12)
LEDチップとして発光ピーク波長が410nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青緑1、赤2 からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約15μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青緑1 :赤2=45:55の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.2mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図14に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.15mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は18%であった。
【0068】
(実施例A13)
LEDチップとして発光ピーク波長が401nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に緑1、赤2 からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約15μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として緑1:赤2=30:70 の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.3mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図15に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.16mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は16%であった。
【0069】
(実施例A14)
LEDチップとして発光ピーク波長が390nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青2、青緑1、赤2 からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約12μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青2:青緑1:赤2=25:30:45の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.3mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図16に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.12mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は19%であった。
【0070】
(実施例A15)
LEDチップとして発光ピーク波長が390nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青2、緑1、赤2 からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約11μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青2:緑1:赤2=35:20:45の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.2mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図17に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.1mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は18%であった。
【0071】
(実施例A16)
LEDチップとして発光ピーク波長が402nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青1、青緑1、赤2からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約9μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青1:青緑1 :赤2=25:25:50の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.1mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図18に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.1mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は9%であった。
【0072】
(実施例A17)
LEDチップとして発光ピーク波長が400nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青1、緑1、赤2からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約16μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青1:緑1:赤2 =20:20:60の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.3mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図19に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.18mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は12%であった。
【0073】
(実施例A18)
LEDチップとして発光ピーク波長が400nmのものを用意し、アルミナ基板上に配置した。次に青緑1 、緑1、赤2からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径は約18μm前後とした。各蛍光体の混合比は重量比(質量比)として青緑1 :緑1:赤2=25:25:50の比率で混合し、透明樹脂(シリコーン樹脂)と混合して、透明樹脂層(厚さ0.4mm)を設けたLEDチップ上に塗布することにより、
図20に示した白色光源を作製した。また蛍光体層の厚さは0.2mmとした。次に実施例A1に準じて、白色光源の発光スペクトルを測定した。白色光源の発光スペクトルにおいて、前記(P3/P2)の値は17%であった。
【0074】
(比較例A1)
市販の白色光源で、青色LEDに、黄色蛍光体と赤色蛍光体を組み合わせた白色光源を用意して、比較例A1とした。青色LEDや蛍光体の化学組成等は不明だが、実施例Aに準じて白色光源の発光スペクトルを測定したところ、
図21に示す形状のデータが得られた。比較例A1の白色光源では、本発明の様にスペクトル形状の調整が行われておらず、前記(P3/P2)の値は64%であった。
【0075】
(比較例A2)
市販の白色光源で、青色LEDに、黄色蛍光体と赤色蛍光体を組み合わせたもので、比較例A1とは異なる種類の光源を用意して、比較例A2とした。青色LEDや蛍光体の化学組成等は不明だが、実施例A1に準じて白色光源の発光スペクトルを測定したところ、
図22に示す形状のデータが得られた。比較例A2の白色光源では、本発明の様にスペクトル形状の調整が行われておらず、前記(P3/P2)の値は71%であった。
【0076】
(実施例A19〜A23)
蛍光膜の膜厚や、透明樹脂層の有無、透明樹脂層の膜厚が、白色光源の明るさに与える効果を確認した。実施例A1で用いたLEDチップや混合蛍光膜と同じものを使用し、蛍光膜及び透明樹脂層の膜厚を変更して白色光源を作製した。得られた光源に電源を接続し、8Wの電力を印加して、各光源の明るさを比較した。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果により、透明樹脂層の有無による効果については、実施例A20と実施例A23を比較すると、透明樹脂層の形成された光源の方が明るく、透明樹脂層が白色光源の輝度向上に効果のあることが明らかである。ただし、実施例A22の様に透明樹脂層が形成されていても膜厚が厚くなりすぎると、LEDチップによるエネルギー損失は低減されても、透明樹脂層自身による光吸収の影響の方がより大きくなり、適正な膜厚を超えた分に応じて明るさは低下する。また蛍光膜の膜厚については、実施例A19の膜厚の様に、適正値以上に薄いと、蛍光膜に向かったLED光が蛍光膜で十分吸収されず、LED光が光源の外部に漏れるために、明るい光源は得られない。実施例A20の様に、蛍光膜の膜厚が適正値以上であれば、明るく発光する光源が得られるが、実施例A21の様に蛍光膜の膜厚が過度に厚くなりすぎると、LED光の損失は生じない変わりに、蛍光体自身の発光が、蛍光膜の外側に取り出されなくなり、明るさの低下し始めることがわかる。
【0079】
上記のようにして得られた白色光源を、実際の医療現場で使用テストを行い、本発明の効果を発揮しうる医療用白色光源として使用可能かどうかを確認した。確認試験に用いた光源は以下の通りである。実施例A1〜A18、比較例A1〜A2で作成した白色光源を、それぞれ10個用意して白色光源システムを作製した。また、医療用光源システムは、1枚の実装基板上に10個の医療用光源を2mm間隔で配置したものである。また、医療用光源システムは、電源と所定のカバーを装着した電球型形状とした。
【0080】
次に、得られた医療用光源システムを用いて、人体の腕を明るく照らし、血管と皮膚を見分けることができるかどうか確認試験を行なった。確認試験においては、病院に来院した患者50名と、5名の看護師の協力を得て、試験を行なった。患者については、15歳以下、16〜35歳代、36〜65歳代、65歳以上の各10名の日本人患者と、36〜65歳代の西欧系白人10名の協力を得た。各10名の選択は無作為に行なったが、男女はほぼ同数となる様に留意した。一方看護師については、経験10年以上の熟練者5名の協力を得た。試験は以下の様に実施した。家庭用の一般蛍光灯で照明された室内において、注射用の机を用意し、机上には卓上型の電気スタンドを用意して、医療用光源システムによる光を患者の腕に照射しながら、腕を観察した。医療用光源システム毎に、50名の患者に対し、5名の看護婦が順不同で観察しながら、血管の見え方を比較した。評価付のランクは以下の3段階とし、まず一次記録として残した。
A: LED電球の使用により、血管と皮膚の色の違いが顕著であり、容易に見分けることができる
B: LED電球の使用により、血管と皮膚を、通常通り見分けることができる
C: LED電球を使用しても、皮膚中の血管を見分けることは容易でない
【0081】
次に、1次記録の結果を再評価し、以下の最終ランク付を行なった。最終評価の基準は以下の3段階とした。
◎:Aの評価結果が90%以上でCが1%未満の光源
○:B以上の評価結果が99%以上の光源
×:Cの評価結果が1%以上存在する光源
視認性評価の結果を、光源の種類と共に、表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
(実施例B1〜B7、比較例B1)
LEDチップをアルミナ基板上に配置した。LEDチップ上にシリコーン樹脂からなる透明樹脂層(厚さ0.2mm)を設けた。次に、青2および赤1からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径18μmとした。混合蛍光体をシリコーン樹脂と混合し、透明樹脂層上に塗布、固化して蛍光体層(厚さ0.03mm)を設けた。これにより実施例B1〜7および比較例B1にかかる医療用光源を作製した。なお、LEDチップの発光ピーク波長、青2および赤1の蛍光体の合計を100質量部とし、混合比(質量比)は表3に示した通りである。
【0084】
(比較例B2)
市販の白色光源で、青色LED(発光ピーク波長450nm)に、黄色蛍光体としてセリウム付活アルミン酸イットリウム蛍光体(YAG:Ce蛍光体)を用いたものである。
【0085】
【表3】
【0086】
実施例および比較例にかかる医療用光源に対し、発光スペクトルの測定を行った。発光スペクトルの測定は、JIS−C−8152に準じ、積分球を装備した全光束測定装置により行った。
【0087】
発光スペクトルの結果から、370nm〜470nmの波長領域における発光スペクトルの最大強度(P1)、600nm〜780nmの波長領域における発光スペクトルの最大強度(P2)、520nm〜580nmの波長領域における発光スペクトルの最大強度(P3)、370nm〜780nmの波長領域における発光スペクトルの面積(S1)、471〜599nmの波長領域における発光スペクトルの面積(S2)を求めた。表4に、比(P1/P2)、比(S2/S1)、比(P3/P2)を示した。
【0088】
【表4】
【0089】
表から分かる通り、青色蛍光体の混合比が小さい比較例B1は(P1/P2)が0.1と本実施形態の0.3以上とはならなかった。また、発光スペクトルは、
図23(実施例B1)、
図24(実施例B2)、
図25(実施例B3)、
図26(実施例B4)、
図27(実施例B5)、
図28(実施例B6)、
図29(実施例B7)、
図44(比較例B2)に示した。また、発光スペクトルの図はいずれも横軸が波長、縦軸が発光強度である。図から分かるように実施例にかかる医療用光源は370nm〜470nmおよび600nm〜780nmの波長領域にピークを有していた。一方、比較例B2は600nm〜780nmの波長領域にピークがないものであった。また、比較例B2の比(P3/P2)はP2を600nmの発光強度で求めたものである。
【0090】
(実施例B8〜B13)
LEDチップをアルミナ基板上に配置した。LEDチップ上にシリコーン樹脂からなる透明樹脂層(厚さ0.3mm)を設けた。次に、青1、黄1および赤1からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径22μmとした。混合蛍光体をシリコーン樹脂と混合し、透明樹脂層上に塗布、固化して蛍光体層(厚さ0.06mm)を設けた。これにより実施例B8〜B13にかかる医療用光源を作製した。なお、LEDチップの発光ピーク波長、青1、黄1および赤1の蛍光体の合計を100質量部とし、混合比(質量比)は表5に示した通りである。
【0091】
【表5】
【0092】
実施例にかかる医療用光源に対し、実施例B1と同様の方法により発光スペクトルの測定を行った。その結果を表6に示す。
【0093】
【表6】
【0094】
表から分かる通り、得られた医療用光源の発光スペクトルは本実施形態に適したものであった。また、発光スペクトルは、
図30(実施例B8)、
図31(実施例B9)、
図32(実施例B10)、
図33(実施例B11)、
図34(実施例B12)、
図35(実施例B13)に示した。また、発光スペクトルの図はいずれも横軸が波長、縦軸が発光強度である。図から分かるように実施例にかかる医療用光源は370nm〜470nmおよび600nm〜780nmの波長領域にピークを有していた。
【0095】
(実施例B14〜B18)
LEDチップをアルミナ基板上に配置した。LEDチップ上にシリコーン樹脂からなる透明樹脂層(厚さ0.3mm)を設けた。次に、青1、緑1および赤3からなる混合蛍光体を用意した。各蛍光体の平均粒径20μmとした。混合蛍光体をシリコーン樹脂と混合し、透明樹脂層上に塗布、固化して蛍光体層(厚さ0.07mm)を設けた。これにより実施例B14〜B18にかかる医療用光源を作製した。なお、LEDチップの発光ピーク波長、青1、黄1および赤3の蛍光体の合計を100質量部とし、混合比(質量比)は表7に示した通りである。
【0096】
【表7】
【0097】
実施例にかかる医療用光源に対し、実施例B1と同様の方法により発光スペクトルの測定を行った。その結果を表8に示す。
【0098】
【表8】
【0099】
表から分かる通り、得られた医療用光源の発光スペクトルは本実施形態に適したものであった。発光スペクトルは、
図36(実施例B14)、
図37(実施例B15)、
図38(実施例B16)、
図39(実施例B17)、
図40(実施例B18)に示した。また、発光スペクトルの図はいずれも横軸が波長、縦軸が発光強度である。図から分かるように実施例にかかる医療用光源は370nm〜470nmおよび600nm〜780nmの波長領域にピークを有していた。
【0100】
(実施例B19〜B21)
青色LED(発光ピーク波長460nm)と赤色LED(発光ピーク波長660nm)をアルミナ基板上に間隔2mmで配置した。青色LEDと赤色LEDに流す電流値を変えることにより、発光スペクトルの異なる医療用光源を作製した。また、実施例B1と同様の方法により、発光スペクトルの測定を行った。その結果を表9に示す。
【0101】
【表9】
【0102】
表から分かる通り、得られた医療用光源の発光スペクトルは本実施形態に適したものであった。また、発光スペクトルは、
図41(実施例B19)、
図42(実施例B20)、
図43(実施例B21)に示した。また、発光スペクトルの図はいずれも横軸が波長、縦軸が発光強度である。図から分かるように実施例にかかる医療用光源は370nm〜470nmおよび600nm〜780nmの波長領域にピークを有していた。
【0103】
実施例B1〜B21、比較例B1〜B2にかかる医療用光源をそれぞれ10個用意して医療用光源システムを作製した。また、医療用光源システムは、1枚の実装基板上に10個の医療用光源を2mm間隔で配置したものである。また、医療用光源システムは、電源と所定のカバーを装着した電球型形状とした。
【0104】
次に、得られた医療用光源システムに対して、血管の視認性と発光のギラツキ感の有無を測定した。血管の視認性は、医療用光源システムを用いて人体の腕を明るく照らし、血管と皮膚を見分けることができるかどうか確認試験を行なった。確認試験においては、病院に来院した患者50名と、5名の看護師の協力を得て、試験を行なった。患者については、20〜30歳、31〜40歳、41〜50歳、51〜60歳、61歳以上の各10名の日本人患者の協力を得た。各10名の選択は無作為に行なったが、男女はほぼ同数となる様に留意した。一方看護師については、経験10年以上の熟練者5名の協力を得た。試験は以下の様に実施した。家庭用の一般蛍光灯で照明された室内において、注射用の机を用意し、机上には卓上型の電気スタンドを用意して、医療用光源システムによる光を患者の腕に照射しながら、腕を観察した。医療用光源システム毎に、50名の患者に対し、5名の看護婦が順不同で観察しながら、血管の見え方を比較した。評価方法は、実施例A1の医療用光源システムと同様にして行った。
【0105】
また、ギラツキ感の測定は、任意の100人に対して、まぶしいなど不快に感じるか否かの感想をアンケートした。その結果、不快に感じる人の割合が20%以下を◎、不快に感じる人の割合が21〜40%を○、不快に感じる人が41%以上の場合を×、とした。
その結果を表10に示す。
【0106】
【表10】
【0107】
表から分かる通り、実施例の医療用光源システムは血管の視認性に優れギラツキ感が低減された光源であった。特に、比(P1/P2)を0.5〜1.2 、比(S2/S1)を0.25〜0.05、比(P3/P2)を0.3以下にしたものは、より特性が向上した。
【0108】
このため、実施例の医療用光源と一般照明(LED照明)をユニット化し、切替可能とすることにより、血管認識作業を行う場合と通常作業を行う場合で光源を切り替えることにより、使い勝手の良い医療用光源システムを構成することができる。
【0109】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。