特許第6774718号(P6774718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6774718
(24)【登録日】2020年10月7日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】半生麺の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20201019BHJP
【FI】
   A23L7/109 C
   A23L7/109 A
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-23838(P2018-23838)
(22)【出願日】2018年2月14日
(65)【公開番号】特開2019-136001(P2019-136001A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2019年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】日本製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】千田 正敏
【審査官】 堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−158457(JP,A)
【文献】 特開2008−212135(JP,A)
【文献】 特開2007−068478(JP,A)
【文献】 特開平08−317767(JP,A)
【文献】 特開平11−056278(JP,A)
【文献】 特開2011−139662(JP,A)
【文献】 特開2012−191955(JP,A)
【文献】 特開昭60−083552(JP,A)
【文献】 特開平11−137195(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/050430(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109−7/113
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸を使用してpHを4.0以上5.0以下に調製した麺帯から麺線を調製し該麺線を水分19質量%以上23質量%以下になるように乾燥し乾燥後の麺線をガスバリア性の包材を使用して非鉄系脱酸素剤と共に脱気包装することを特徴とする半生麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半生麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半生麺とは、常法で製造した生麺を常温又は加熱空気を使用し乾燥させ水分値を約20質量%〜27質量%に調製した麺をいい、生麺より保存性に優れ乾麺に比べ食感は生麺に近いという特徴がある。
半生麺は、生麺より保存性に優れるが乾麺よりは劣り食感は生麺には及ばないので、食感改良や保存性を高めるために様々な試みがなされている。
例えば、生地原料に食塩と水を加えて麺生地を作製した後、麺線を形成し、次いで得られた麺線に飽和水蒸気を接触させた後、麺の水分含量が20〜25%になるように乾燥することを特徴とする半生麺類の製造方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、生麺をマイクロ波照射処理と調湿乾燥処理とを併用して水分含量18〜29質量%まで乾燥させることを特徴とする半生麺類の製造方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−139662号公報
【特許文献2】特開2012−191955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
常温で保存できる半生麺の製造方法として麺の水分を24質量%以下にして脱酸素剤(鉄系)を封入したバリア製の包材に包装することが一般的に行われている。
また菌数を減らす、又は増殖を抑える目的で酒精やpH調整剤を使用する場合もある。
しかし、上記方法では、常温保存で4ヶ月が限度であった。
特に常温でも30℃を超える場合には4ヶ月を経ずに麺が褐色に変色したり麺から異臭が発生するなどの問題が起きていた。
従って、本発明の目的は、食感に優れ色調の変化が少なく常温で4ヶ月以上保存できる半生麺の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、乳酸を使用してpHを4.0以上5.0以下に調製した麺帯から麺線を調製し該麺線を水分19質量%以上23質量%以下になるように乾燥し乾燥後の麺線をガスバリア性の包材を使用して非鉄系脱酸素剤と共に脱気包装することで、優れた食感を維持したまま、色調の変化が少なく4ヶ月を超える期間、保存可能な半生麺が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、乳酸を使用してpHを4.0以上5.0以下に調製した麺帯から麺線を調製し該麺線を水分19質量%以上23質量%以下になるように乾燥し乾燥後の麺線をガスバリア性の包材を使用して非鉄系脱酸素剤と共に脱気包装することを特徴とする半生麺の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の半生麺の製造方法によれば、優れた食感を維持したまま、色調の変化が少なく4ヶ月を超える期間、保存可能な半生麺が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、まず、乳酸を使用してpHを4.0以上5.0以下に麺帯を調製する。
pHが4.0未満では麺線が褐色に変化するメイラード反応は抑えられるが、弾力の弱い食感となり、pHが5.0を越えると麺線が褐色に変化するメイラード反応が十分に抑えられなくなることから好ましくない。
麺帯の調製は、上記のとおりpHを調整する以外は従来の半生麺と同様でよい。
例えば、穀粉及び又は澱粉を生地原料としこれに水を添加しながらミキシングによってそぼろ生地を調製し、このそぼろ生地をロール圧延機で複合、圧延して麺帯とする。
麺線は得られた麺帯を切刃を用いて切り出すことによって得ることが出来る。
【0008】
麺線の乾燥方法も従来の半生麺と同様でよく、例えば冷風乾燥、熱風乾燥を挙げることができ、乾燥後の水分値が、19質量%以上23質量%以下となるように乾燥する。
水分値が、19質量未満では、麺線が褐色に変化するメイラード反応は抑えられるが食感が硬くなりすぎ、23質量%を越えると麺線が褐色に変化するメイラード反応が起きやすくなることから好ましくない。
乾燥後の麺線は、ガスバリア性の包材を使用して非鉄系脱酸素剤と共に脱気包装する。
ガスバリア性の包材を使用しない場合は、空気中の酸素が包材を透過して入り込むことにより麺線の腐敗が急速に進行する。
また、脱気包装しない場合も同様に包装内中の酸素により麺線が褐色に変化するメイラード反応が起きやすく好ましくない。
脱気包装には、移動中の衝撃による麺の折れ、保存中に麺の水分が袋内の空気中に発散して麺質が硬くなることを抑える効果もある。
なお、脱酸素剤は鉄系のものでは味噌のような発酵臭が発生するため好ましくない。
【実施例】
【0009】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1 半生うどん]
小麦粉100質量部に水35質量部、乳酸0.6質量部、酒精1重量部を麺用ミキサーで15分間混合してそぼろ状の生地を得た。
得られた、そぼろ状の生地を圧延ロールで圧延し厚さ6mmの麺帯とし、圧延方向に2枚重ねて複合圧延して6mmの麺帯を得た。
得られた麺帯をビニール袋で密封して23℃で60分間緩和熟成した。
緩和熟成した麺帯を圧延ロールで段階的に薄くし、最終的に2.0mmの麺帯を得た。
得られた麺帯を切刃#12角刃で切り出し、1食ずつ竿に掛けて35℃、湿度70%の環境下で2時間乾燥して水分22質量%の半生麺を得た。
なお麺帯のpHは4.5であった。
この半生麺を品質保持剤(非鉄系脱酸素剤)を封入したガスバリア製の包材にいれ、脱気して密封包装した。
【0010】
[実施例2〜4 比較例1〜2 半生うどん]
実施例1において、乾燥状態を調整し、麺線の水分を表1に示すとおり変更した以外は実施例1と同様にして密封包装した半生麺を得た。
[実施例5〜6 比較例3〜4 半生うどん]
実施例1において、乳酸添加量を調整し、pHを表1に示すとおり変更した以外は実施例1と同様にして密封包装した半生麺を得た。
[比較例5 半生うどん]
実施例1において、脱酸素剤を鉄系脱酸素剤に変更した以外は実施例1と同様にして密封包装した半生麺を得た。
[比較例6 半生うどん]
実施例1において、空気が入ったままシールして密封包装した以外は実施例1と同様にして密封包装した半生麺を得た。
【0011】
【表1】
【0012】
得られた密封包装した半生麺を30℃で6ヶ月間保管し、密封直後、2ヶ月後、4ヵ月後、6ヵ月後の色調(赤味)を色彩色差計(MINOLTA社製:SPECTROPHOTOMETER CM−3500d)で測定した。
得られた色差計数値は+に近いほど赤味が強く変色が激しいことを示す。
得られた結果を表2に示す。
【0013】
【表2】
【0014】
得られた密封包装した半生麺を30℃で6ヶ月間保管し、密封直後、4ヵ月後、6ヵ月後に開封し下記の評価基準によって10名のパネラーにより臭いを評価した。
・臭い
5点・・・異臭がなく良好
4点・・・ほとんど異臭がなくやや良好
3点・・・すこし異臭があるが普通
2点・・・やや異臭が強く、やや劣る
1点・・・異臭が強く劣る
また、得られた密封包装した半生麺を30℃で6ヶ月間保管し、密封直後、4ヵ月後、6ヵ月後に沸騰水中で14分間、茹でた後、15℃の水で水洗して茹でうどんとし食感を評価した。
得られた結果を表3〜表8に示す。
・食感
5点・・・適度な硬さと弾力・粘りが非常にあり良い
4点・・・適度な硬さで弾力・粘りがありやや良い
3点・・・普通
2点・・・弾力がやや弱く中心に芯がありやや劣る
1点・・・弾力が弱く中心に硬い芯があり劣る
【0015】
【表3】
【0016】
【表4】
【0017】
【表5】
【0018】
【表6】
【0019】
【表7】
【0020】
【表8】
【0021】
評価基準としては食感を最も重要として食感が劣るものは変色や異臭が少なくても不適とした。
比較例1は変色や異臭の発生は少なかったが食感が劣るため不適とした。
比較例3は変色は少なかったが異臭の発生や食感で劣るため不適とした。
鉄系脱酸素剤を使用したものは保存期間が4ヶ月を越えると異臭がかなり発生して劣る評価となった。
麺帯の水分値が少ないものは中心に芯が残り硬く劣った食感となった。